NASCARの初歩的(?)なお話 8 中低速トラック編

 前回の続きで、1.5マイル以下の中~低速のオーバルトラックを見て行きます。と、その前に、今回紹介するトラックの中には舗装がアスファルトではなくコンクリートで行われているトラックがいくつか登場します。ということで、舗装の違いによる特性の差をザックリと先に記してみます。

 アスファルトは我々の日常生活で使う道路にも多く使用されており、日欧のサーキットと言えば普通はアスファルトなので馴染みの存在です。コンクリートはバス停の前の路面部分に用いられているのを目にすることがあるかと思います。
 一般的にアスファルトは低コストで導入できる利点がある代わりに寿命がやや短くて、定期的に再舗装する必要があるので維持費が高くなるとされています。一方コンクリートは導入費用が高いんですが、頑丈で寿命が長いとされています。強い力がかかる場所ではコンクリートの方が耐久性が高くて長持ちなので、後述しますがブリストルやドーバーは適材です。バス停にコンクリートを使うのも、重たいバスによって道路がすごく傷むためです。

 レースにおける差ですが、アスファルトは黒いために熱を吸収しやすく、白いアスファルトに比べると日中に太陽光を受けると路面温度の変化が大きくなりやすいとされています。路面温度に起因するハンドリングの変化はアスファルトが大きく、コンクリートの方が小さいということになります。
 一方、路面には走行を繰り返すことでタイヤのラバーが付着してグリップが向上することが知られていますが、アスファルトは表面の隙間にゴムが付いて行ってどんどんグリップ力が向上するのに対し、コンクリートは表面にサッと乗るようなイメージで、なんと一旦乗ったラバーがコーション中の低速走行であっさりと剥がれてしまい、レース中にも乗ったり剥がれたりを繰り返します。
 そのため、週末に最初の走行を開始してから決勝レースを走行するまでの路面状況変化、という点でもアスファルトの方が大きくなるので、アスファルトのトラックはコンディション変化をかなり先読みして車を仕上げる必要があります。一方でコンクリートは週末を通じてそんなに変化しないわけですが、レース中にラバーによるグリップ力の増減があるので、その微妙な変化に常時対応しないといけません。
 舗装そのもののグリップ力は色んな条件があるので一概には言い切れないかもしれませんが、アスファルトの主成分は石油なので熱を加えるとねばつきます。タイヤの方も過熱して表面をねばつかせて路面にそれをくっつけてグリップ力を生むので、タイヤの熱で路面も熱を持ってお互いにくっつくのでアスファルトの方がグリップ力は高いと考えられます。
 コンクリートはタイヤの方のねばつきはあっても路面にはそれがないので相対的にグリップは低いと考えられます。特に限界付近でグリップ力を失ってしまった時に非常に制御が難しいそうで、少し古いですが2012年にマーク マーティンはコンクリートとアスファルトの違いについてこう説明しています。

「コンクリートははるかに一貫性があるんだ。ドーバーでレースをしているときの天候の変化はトラックにまったく影響を与えないので、それほど心配する必要はない。これは素晴らしいことだ。でも、コンクリートの表面でグリップを失うと、ロープから切り離されたような気分になる。驚くよ。アスファルトでは20〜30%失うけど、コンクリートはグリップの半分を失うようなものさ。」

当時53歳、カップシリーズで30年近く走って来た大ベテランの言葉ですから、きっとその通りなんでしょう。こういう特徴も知っておくと結構面白いです。



ダーリントン レースウェイ(サウスカロライナ州ダーリントン)



全長 1.366マイル
バンク角 ターン1・2:25°
     ターン3・4:23°
 フロントストレッチ:3°
  バックストレッチ:2°
照明設備:あり
所有者:NASCAR
愛称:The Track Too Tough to Tame

 1950年開場と長い歴史を持つトラックで左右非対称のエッグシェイプ。別にこうしたくてなったのではなく、建設時に農民の方から土地を購入した際に『西側にある池には手を付けない』と約束をしていたので、池を避けたらターン3側を窮屈にするしかなかったからだそうです。
 最大バンク角自体は高いですが、ターンの外側だけが大きく持ち上がった独特の形状をしていて、内側に行くとほとんど平坦になってしまいます。そのため壁沿いギリギリを攻めたくなりますが、そうすると壁にこする危険性が高くなり、追い抜きも難しくなっています。
 内側から勢いよく飛び込んでもバンクが無いので外からすぐ抜き返されたり、無理をしたら外へ流されて曲がり切れなかったり相手と接触したり。こうして失敗した結果壁にこすってしまい車体側についてしまう接触痕は、俗に『ダーリントン ストライプ』と呼ばれます。
 非常に攻略が難しく難易度が高いトラックなので、The Track Too Tough To Tame=手懐けるのがとても難しいトラック、という愛称を持ち、9月の第1月曜日の祝日・レイバー デー(勤労感謝の日)に併せて行われるイベント・サザン500が有名です。また、歴史ある場所ということで、近年は昔のドライバーのペイントスキームをモチーフにした特別なデザインをみんなで施す『スロウバック スキーム』のレースを行うことでもお馴染みです。
 車両性能が向上した結果、大外を使わなくてもそこそこ走れてしまってダーリントンらしさが失われた時期があったため、NASCARはダウンフォースの削減等で運転するのが難しい、ダーリントンではセオリー通り大外を走って壁に擦りながら走るのが速い、そんなレースになるように制度設計することが近年のお題目になっています。


ナッシュビル スーパースピードウェイ(テネシー州レバノン)



全長 1.333マイル
バンク角 ターン:14°
フロントストレッチ:9°
バックストレッチ:6°
照明設備:あり
所有者:スピードウェイ モータースポーツ


 ナッシュビルは2001年に開場しながらカップシリーズのレースを開催できず2011年末に閉鎖、長くレースすら行われていませんでしたが、なんとかお金を工面して再開し2021年にカップシリーズ初開催にこぎつけたトラックです。ドーバー モータースポーツが所有していましたが、2021年末にスピードウェイモータースポーツ社がドーバー社を買収したのでスピードウェイ社の所有となりました。
 コンクリート舗装のトラックで、コンクリート舗装としてはカップシリーズ開催トラックで最長を誇ります。外から見た感じからして1.5マイルよりちょっと小さいイメージですが、見た目通り『そこそこ速度は出るけどブレーキも多用するし、ターンではタイヤも酷使する』という高速オーバルと低速オーバルの課題を混ぜた難しさがあります。コンクリート舗装と相まってタイヤの扱いなどがかなり難しく独特の難易度を有していると考えられます。
 名前に『スーパースピードウェイ』とついているのは、ナッシュビルにはこことは別に0.596マイルの通称『フェアグラウンド スピードウェイ』というのが大昔から存在しているのと、昔は1マイル以上をスーパースピードウェイと呼んでいた、というある種のレトロ感から来ています。
 ナッシュビルという街は『ミュージック シティー』と呼ばれるアメリカ音楽の聖地とされており、優勝トロフィーとしてギブソン社のギターが授与されることでも知られています。


ワールド ワイド テクノロジー レースウェイ(イリノイ州マディソン)

全長 1.25マイル
バンク角 ターン1・2:11°
     ターン3・4:9°
照明設備:あり
所有者:カーティス フランソワ

 WWTRは、近隣にゲートウェイ アーチという有名な記念碑があることから、命名権を販売する以前は『ゲートウェイ モータースポーツ パーク』など常にゲートウェイという名称を用いていました。そのため、多くの場合ゲートウェイと呼ばれます。ワールドワイドテクノロジーはミズーリ州に拠点を置くテクノロジー企業で、2019年から命名権を取得しています。下部カテゴリーでは1997年以降レースが開催されていましたが、カップシリーズは2022年が初開催です。
 ミズーリ州の都市・セントルイスから近いのでセントルイスと呼ばれることもあるんですが、トラックがあるのはセントルイスから見て川を挟んだ対岸、ミシシッピ川の東側にあります。川が州境なので場所としては『イリノイ州』マディソンとなっています。ゲートウェイアーチもミズーリ州側にあるので、どうやってもイリノイにあるのにミズーリの有名地名で読んでいる、という非常にややこしい話があります。
 1.25マイルのエッグシェイプで、ターン1・2はニューハンプシャー、3・4はフェニックスに似ている、と形容されますが、非対称でバンク角も低いテクニカルなトラック、ターンの内側にロードコースのような幅が広くて平たい縁石が用いられているため、見た目にも独特です。
 追い抜きが難しいのでトラックポジションを重視した戦略が効果的、またピットがカップシリーズ開催地では特に狭い部類に入るため、ピット内での接触事故にもじゅうぶん気を付けないといけません。気を付けてもぶつかります。


〇ショート トラック

 ショートトラックは概ね1マイル以下のトラックで、小さくて距離が短いので基本的には低速・低バンク角になります。この場合、ブレーキの技術とメカニカル グリップがより重要になります。遅いとつまらないのではないか?というとそうではなく、軽くゴリゴリと接触もありつつの接近戦、タイヤとブレーキ管理の巧緻が生み出す順位変動があり、追い抜きが難しいためピットで変則的なことをする人も出てきて、高速トラックと違う面白さがあります。
 また、通常オーバルのレースは雨天時には開催しないものですが、2023年からは低バンクのショートオーバルに対して、これまでは存在しなかった雨天用タイヤとワイパーが導入され、少量の雨であればレースの開催や続行が可能となりました。実際に使用するのか、それともやはり天候回復を待つためレースを止めるのかはその時の運営側の判断によります。


ニューハンプシャー モーター スピードウェイ(ニューハンプシャー州ロウドン)

全長 1.058マイル
バンク角 ターン:2~7°
   ストレート:1°
照明設備:なし
所有者:スピードウェイ モータースポーツ
愛称:The Magic Mile

 ニューハンプシャーは1マイルよりちょびっとだけ長いペーパークリップのトラックです。非常にバンク角の低いトラックですが2002年に最大バンク角を7°にするプログレッシブに変更しました。これにより、内側を少し開けてバンクを活かした走りと、思い切って内側に飛び込む車との争いが見どころになります。
 マジックマイルという愛称が具体的になぜどう付けられたのかは意外と根拠が見当たらないのですが、1マイルをちょびっとだけ超えていたり、簡単そうに見えてラインの選び方が難しかったりするあたりからそう呼ばれているものと思われます。
 優勝者には地元の特産品ということでロブスターが進呈されることでも有名。近年はトラクションコンパウンドが内側から3レーン目あたりに使用されて、外側のラインで粘れるように仕込まれていることが多いです。


フェニックス レースウェイ(アリゾナ州アボンデール)



全長 1マイル
バンク角 フロントストレッチ:9°
        ドッグレッグ:11°
          ターン1・2:8~9°
          ターン3・4:10~11°
      バックストレッチ:3°
照明設備:あり
所有者:NASCAR


 フェニックスは1マイルのトラックで、トライオーバルかと思いきや、ドッグレッグオーバルと呼ばれます。ひずんでて綺麗な三角形になっていないからでしょうね。ドッグレッグというのは犬の足=くの字に曲がっているさまを指す単語です。
 元々は真っすぐな部分、この図で言えば上の部分がフロントストレッチで、ターン1・2→ドッグレッグ→ターン3・4、という形状だったんですが、大規模な設備改修を行って立派な観客席を従来のドッグレッグ手前に新設。これにあわせて2019年からスタート位置も変更してしまい、スタートしたらいきなりドッグレッグを通る一風変わった形状になりました。NASCAR自らが高い改修費用をかけて改築したので、2020年からはここで最終戦が開催されています。
 そのドッグレッグは2011年までは内側に芝生がありましたがこれが撤去され、以後は自由に内側を走ることができるようになりました。本来の道幅より遥かに広大な場所があるため、特にリスタート直後は多くの車が近道をしようとここへ突っ込んでいくため、フェニックスの名物となっています。
 スタートしたらいきなり広大な空間を自在に走り、その先がようやくターン1なので、旧レイアウトを知っているともう頭が混乱して今ターンいくつを走っているのか未だに分からなくなる時がありますw
 そしてターンもまた左右非対称で僅かに上の方が高くなっている上に、道幅を目一杯使うためにエイプロンまで使ってターン2を曲がるのが速いこともあり、本来の道幅はお構いなしの争いが展開されます。
 とはいえ、ドッグレッグの内側に飛び込むとバンクのあるところからないところに行くので車が跳ねて不安定になったり、タイヤ内圧が低いと損傷の原因になったりもするため、近道できるからどう考えても近道しない手はない、と言い切れるわけでもないのがまた面白いところです。
 


ドーバー モーター スピードウェイ(デラウェア州ドーバー)

全長 1マイル
バンク角 ターン:24°
   ストレート:9°
照明設備:なし
所有者:スピードウェイ モータースポーツ
愛称:The Monster Mile

 ドーバーはフェニックスと同じ1マイルですがバンク角が高くて高速です。元々はアスファルト舗装でしたが1995年からはコンクリート舗装へ変更、またバンクはたいてい土を盛り上げて作りますが、ドーバーは掘り下げるように作られているために、これらが相まって他には無い独自の雰囲気を生み出しています。見た瞬間にドーバーと分かるトラックです。
 特殊な部類に入るトラックなのでドライバーの得手不得手がはっきりしやすいトラックの1つと言えます。短いのに高速で、ストレート部分ですら9°もバンクがあるのでひとたび何か起きると車があっちこっちトラックを横断して多重事故に繋がるので一発リタイアの危険性が高く、そんな特殊なトラックについた愛称が『モンスター マイル』。
 そしてこの愛称をもとにした、ザ マイルズ モンスターというキャラクターも存在し、トラックの前には巨大なモニュメントも置かれていてトロフィーもこのデザインです。中継映像を見ているとジョークかと思いますが、googleストリートビューで調べてもちゃんと出て来るので、マジでこのデカいヤツが置いてあります。
 ナッシュビルと同様、2021年末にドーバー社がスピードウェイ社に買収されたためにオーナーが変わりました。これにあわせてトラック名から『インターナショナル』が消えて名称も小変更となっています。
高さは14mほどあるらしい・・・


リッチモンド レースウェイ(バージニア州リッチモンド)


全長 0.75マイル
バンク角 ターン:14°
フロントストレッチ:8°
バックストレッチ:2°
照明設備:あり
所有者:NASCAR

 リッチモンドは1マイルよりさらに小さい0.75マイルのトラックです。3/4なので『クオーター マイル』と呼ばれます。元々は1946年にダートトラックとして開場しており、非常に歴史のあるトラックです。
 短いトラックなのにDシェイプであるためほとんど1周ずっとステアリングを切っているような感覚になりますがバンク角は14°とやや高く、状況によっては内側から2レーン目あたりが速くて、サイドバイサイドでの争いが見られます。ショートトラックでありながら流れるような車の動き、そしてナイトレースの美しさも映像的には楽しみなトラックです。


ブリストル モーター スピードウェイ(テネシー州ブリストル)


全長 0.533マイル
バンク角 ターン:26~30°
   ストレート:6~10°
照明設備:あり
所有者:スピードウェイ モータースポーツ
愛称:Thunder Valley
The Last Great Colosseum
The World's Fastest Half-Mile


 ブリストルは1周僅か0.5マイルほどのコンクリート舗装のトラック。バンク角が最大30°というとんでもない設計で、グランツーリスモに収録されているノーザンアイルの元ネタです。1周はわずか15秒ほどしかありません。昔はバンク角を35°とか36°とか宣伝していたものの、後年サバを読んでいたことがバレたそうですw
 旋回半径そのものは0.5マイルのトラックですから非常に小さく、そこにバリアブルな最大30°のバンクがあるためライン取りもまちまち。内側のラインは旋回速度が低いために、抜きに行っても外ラインの人をなかなか抜けないのが特徴だったんですが、近年はトラクションコンパウンドを使用してインベタで速く曲がれるように運営側から介入されています。とはいえ、追い抜きは簡単ではありません。
 たった15秒で1周するのであっという間に周回遅れが現れることになり、そうすると周回遅れを抜くのも非常に難しくて、レースは常に順位を争うライバルと周回遅れ、両方との戦いになります。
 高いバンク、狭いトラック、という条件からひとたび何か起きると貰い事故に遭う危険性も非常に高く、クラッシュで一発アウトになる危険性の高さではそこらの1.5マイルよりもむしろ大きいとすら言えます。ゆえに、事故に起因したもめ事も起こりやすいトラックです。1周が短いのでピットロードがぐるっと1周回り込んでおり、ピットの入り口が2か所ある、というのもまた特徴と言えます。
 トラックに付けられた有名な愛称も複数存在し、The Last Great Colosseum=最後の偉大な闘技場、The World's Fastest Half-Mile=世界最速の0.5マイル、は見たまんまの意味。
 Thunder Valleyというのは、ここは闘技場と呼ぶにふさわしくトラックをぐるっと取り囲むように観客席が設置されていて音があちこち反響しやすく、そこにコンクリート舗装から生み出される音と、その振動で金網が振動する音が相まって、まるで雷がこだましているかのようにすごい音が鳴り響くことから名づけられたと言われています。開催トラック中いちばんうるさい、という話ですw
 私がもし現地に行けるなら、いちばん観戦したいと思えるのがここです。同じオーバルでも、インディーカーでは絶対に見れない、NASCARだからこそのレースが展開されます。

ブリストル モーター スピードウェイ(ダート)

 2021年に初開催されたもので、コンクリート舗装のブリストルにわざわざ大量の砂を運び込んで特設のダートトラックとして使用するものです。ただ砂だけ撒くのではなく、固い岩盤層から始まって、数層の路面を重ねて最上部に見栄えしそうな柔らかい砂を撒いたものすごく手間のかかっているトラックです。
 ブリストルは元々春と秋の2回開催が慣例なんですが、春は肌寒くて天気が荒れることも多いために近年は観客動員が低迷していて、これを解決するための策だとされています。が、天気が荒れるということは、ダートにしたところに雨が降ってしまうわけで、実際2021年は開催を前に大雨が降ってトラックシリーズの予選が一瞬で打ち切り、2022年のカップも途中雨でレースが止まり、あまりにズルズルな路面で低速走行すら困難になり、バンクを車が滑り落ちる珍事がおきました。


マーティンズビル スピードウェイ(バージニア州リッジウェイ)


全長 0.526マイル
バンク角 ターン:12°
   ストレート:0°
照明設備:あり
所有者:NASCAR


 マーティンズビルはカップシリーズで最短・1周0.526マイルのペーパークリップオーバルです。ブリストルと長さは似たようなものですがバンク角はわずか12°、それも車ギリギリ3台分ぐらいの幅だけがコンクリート舗装されたバンク部分、そこから外は平たんになっているという、ニュルブルクリンク北コースのカルッセルのような設計になっています。1947年開場、1949年からカップシリーズのレースを開催し続けているという伝統あるトラックです。
 開催トラックの中では珍しく基本的にライン取りが内側に入ったもん勝ちの一択。リスタートで外側になったら、前の車を抜くよりもとにかく内側に下りることを考えた方がリスクは小さくなります。外側で粘ることもできますが、外から相手を抜き切ることは容易ではなく、展開が悪いと延々と車に入られて際限なく順位が落ちて行きます。
 NASCARドライバーのバトルの流儀として、外ラインでターンを出た後に、内側に進路を変えてブロックするような走り方というのは好ましくないという考え方があるようで、日欧の感覚だと『何でイン側を閉めないの?』と思うような場面でも相手に内側の1レーンを残して、外側のラインで勝負するのが基本的な戦い方。
 逆に、ペースで劣るのに鬼ブロックした場合には、相手から真後ろをコツンと押されて「遅いならどいてね」とばかりに挨拶されてしまうので、下手なブロックは損だというのが各ドライバーの基本的な共通認識です。私がグランツーリスモで基本的にブロックしない理由の1つはこのNASCARドライバー的な争い方をずっと見てしまっているせいというのも少なからずあります。
 ブレーキにもタイヤにも厳しいトラックで、マネージメントのために無理せず順位を譲る光景も多く目にします。ドライバーの力量が試される難トラックです。


ロサンゼルス メモリアル コロシアム(カリフォルニア州ロサンゼルス)


全長 0.25マイル
所有者:ロサンゼルス メモリアル コロシアム委員会

 毎年開幕戦の前に開催されるエキシビション戦・ザ クラッシュのマンネリ化を避けるべく2022年に初開催されたトラックです。ロサンゼルスオリンピックで開会式に使用され、2028年にも使用される予定の有名なスタジアム内に特設の0.25マイルのトラックが設けられたという、日本で言えば国立競技場にアスファルトを敷いてレースしているようなもので、マーティンズビルよりさらに小さいので外側にいたら勝負権はほぼ無し。接触するなというのが無理な話でとにかく狭いですw

 次回はロードコースとオマケです。

NASCARの初歩的(?)なお話シリーズ

コメント