さすがに言いたい、安倍元首相国葬(2)

前回の続きです

・森友学園・加計学園問題

 おそらく多くの方が、安倍政権における大きな話題として認識しているものはこれだと思います。大阪府豊中市の国有地が不当に安い値段で売却されたのではないかという疑念が持たれた森友学園問題と、特別な計らいによって開学が許可されたのではないかとされる加計学園問題です。

 まず森友学園について振り返りましょう。国は大阪国際空港(伊丹空港)近くに国有地を保有していました。元々は田畑や住宅でしたが、伊丹というのは町のど真ん中に空港があるような立地なので、空港近くの土地は騒音対策地に指定されて国が順次土地を購入していました。しかし、航空機の性能向上などでだんだんと対策地域が必要なくなって指定から外れる土地が多くなり、この土地も1993年に普通の国有地に戻りました。

 2001年には総務省が『空港の整備等に関する行政評価・監視結果に基づく勧告』というものを出し、騒音対策などで用意して不要になった土地は売却を進めるよう勧告。特に伊丹の国有地は名指しされています^^; 

『その処分等に当たっては、公用又は公共用への利用に充てることを最優先とし、有効利活用の方策を勘案の上、利用方針を策定し留保財産と処分等対象財産に区分すること』と書かれています。その後この区画については2009年からの土壌調査で土壌汚染や地下埋設物が発見され、売り先に困ったとのことです。

 2013年にこの土地を売りに出すことになると、手を挙げたのが学校法人 森友学園でした。この土地に『瑞穂の國記念小學院』を開校したいとして2015年から工事を開始。ところがこの土地売買契約について、2017年2月に朝日新聞が『異常に安い値段で売られている』と報じ、契約の適正さに疑義が投げかけられ、ここから騒動となりました。そして、少しずつ実態が明かされて行きました。

 土地の鑑定価格は9億5400万円と算定されていました。しかし学園側はこれでは高すぎて払えないので、10年間の定期借地契約を結んでいました。上記のようにここには汚染土やゴミがあるので作業はまず埋設物撤去などから始まり、この費用は一旦学園側が払った後に国から補填される契約でした。ところが学園側は2016年に「新たな埋設物が深さ3.8mのところから見つかったので、撤去費用を差し引いて欲しい」と主張。

 これを受けて国土交通省大阪航空局は、ゴミは深さ9.9mまで存在すると試算し、撤去費用は8億2000万円だと近畿財務局に通達。これを根拠に土地の価格は再算定されて、9億5400万円から8億2000万円を引いた1億3400万円となり、大幅に値引きされたので学園は土地を購入することになりました。

 この取り引きは学園側が「ゴミがあると言ったら生徒募集に影響するので非公表にしてほしい」という要請により売買金額は非公表とされていましたが、普通は公表される金額が非公表になっていたところを『おかしいのでは?』と思った豊中市の市議会議員が裁判所に訴えて、金額を開示させたことが後の報道のきっかけとなりました。
 後から見て行くと、この購入契約も10年間の分割払いで、この当時の直近5年間に行われた1200件あまりの土地売買で分割払いはこの1件だけ、金額が非公表なのもこの取り引きだけ、当初の定期借地契約からして他では行われていない内容の契約でした。

 かなり異例の土地売買だった様子が見て取れますが、ここにさらに疑惑を深めたのが安倍首相の妻・安倍 昭恵の存在でした。というのも、森友学園の理事長・籠池 泰典と昭恵氏は知り合いだったからです。森友学園は大阪市淀川区で『塚本幼稚園』を運営していました。塚本幼稚園は愛国教育を掲げており、教育勅語や軍歌を教育に取り入れるなどその筋では以前から知られた存在だったそうです。親がどう考えるかは自由とはいえ、子供が気の毒だなと私なんかは思いますね。。。

 私の感想はどうでも良いんですが、これを知った昭恵氏がえらく教育方針に共感したらしく、幼稚園に講演に行くなどそれなりの交流があり、籠池理事長から『小学校建設予定地』に招待されて一緒に写真を撮ったりしていました。土地取引の交渉の際に籠池理事長は夫人の名前を時々出していたことが音声記録等から明らかになっています。 昭恵夫人はなんとこの小学校の名誉校長となる予定だったことも発覚しました。

 こうなってくると、「首相夫人の知り合いだから特別扱いしたのではないか?」という疑惑が噴出して国会で連日の追及が行われ、安倍首相は

「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います。」と発言。

 この取り引きについての責任者となる財務省理財局の局長・佐川 宣寿は「撤去費用は適正に算定されたもの」「政治家の方々の関与は一切ない」「価格を提示したことも、先方からいくらで買いたいと希望があったこともない」といった趣旨の答弁しました。

 結局小学校の認可申請は取り下げられて、建物がそこそこ完成した状態でそのまま放置されて行くことになり、籠池理事長は幼稚園の運営において補助金を不正受給した疑いで2017年7月に逮捕、後に起訴されて1審、2審とも実刑判決を受けることになります。(現時点で上告を行っているため確定はしていない)。一方、籠池理事長が捕まった7月に、佐川理財局長は国税庁長官に就任しました(;・∀・)
ほぼ出来た校舎はそのまま取り残された
(Google ストリートビュー 2020年撮影)

 ところが、2018年3月にまたしても朝日新聞が『財務省の決裁文書が書き換えられた疑いがある』と報じ事態が再燃。なんと、佐川理財局長が国会答弁を行った後の時期に、国と森友学園が契約を交わしたことを示す大事な公文書である決裁文書の内容が改ざんされていたのです。改ざんされたのは、学園側による価格提示や、昭恵夫人、政治家に関する記載でした。

 さらに、国会答弁では「廃棄した」とされていた学園と国との面会記録についても、実際にはこの答弁の時点では存在していたのに、答弁後に廃棄していたことも明らかになります。つまり、佐川氏は国会で嘘をつき、その嘘にあわせて財務省が一生懸命証拠隠滅作業を行っていたわけです。はっきりいって、まともな国家としてあり得ないです。
 また、この公文書改ざんに際し、実際に担当に当たっていた近畿財務局の男性職員が、上からのこの非道徳な指示で多大な精神的苦痛を受けて自殺していたことも判明しました。一連の問題を受けて、国税庁長官に昇進していた佐川氏は辞任しました。

 また、元々の問題点である「8億円の値引きは適正なのか」という点は、結局この金額に相当するだけのゴミがあったわけでも、学園が8億円をかけてゴミを運び出したわけでもなく、それどころか「深い場所から新たにゴミが見つかった」という説明自体がずさんで、業者と口裏合わせまでしていたことが明らかになり、適正とは言えないものだったことが分かってきます。

 あ、すごくどうでも良いですが、国会の議事録を調べたり、各種資料を探す際に多くのものが『平成二十九年』みたいな年号表記、かつ漢数字になっていたりするので、他の資料と突き合せる際に西暦と年号をいちいち換算しないといけなかったり、算用数字にしたせいで検索にかからなかったりしてものすごく面倒だなと思いました、もうちょっとどうにかならんか・・・^^;  



 加計学園についても似たような話でした。2017年に岡山理科大学が愛媛県今治市に獣医学部を新設される見通しとなりましたが、運営する加計学園の理事長・加計 晃太郎と安倍首相が大学時代からの知人であったため、便宜を図ったのではないか、とするものでした。
 ちなみに、アナウンサーでも稀に「かけぇがくえん」みたいな中途半端な発音をする人がいるので「かけい」だと思っている方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれませんが、加計は「かけ」と読みます。苗字由来netによれば全国におよそ280人しかいない珍しい苗字で、安芸国山県郡加計村が起源とされており広島県、岡山県に多くがいらっしゃるみたいですね。すいませんただの余談です。

 元々獣医学部は1966年の北里大学を最後に文部科学省が新設を認めていませんでした。主に獣医師の側から「獣医師の数は不足しておらず、これ以上増やすと質の低下や、需要が無いから卒業生が全然獣医師になれない」といった問題が起きることを懸念している、というのが理由です。

 安倍政権では岩盤規制の破壊を成長戦略に掲げており、その1つとして『条件を満たした場合に規制を特例で緩和できる』という仕組み・国家戦略特区が設けられました。これを受けて、元々獣医学部新設を2007年から働きかけていた愛媛県と今治市がこの制度を利用することを決め、最終的に手を挙げたのが加計学園グループでした。

 安倍首相は、「加計学園が獣医学部を新設すると知ったのは2017年1月20日に国家戦略特区の事業者に選定された時が初めて」と、事前に計画を明かされたり、ましてや働きかけをしたようなことは無いとしました。ところが、愛媛県の職員が2015年に記録していた文書に、「加計理事長は安倍首相に獣医学部新設について話し、安倍氏から『新しい獣医大学の考えはいいね』と言ってもらった」という旨の記載があることが判明。辻褄が合いません。

 他にも、「総理のご意向」と書かれた文書が作成されるなど、無いと言っていた文書が出て来る、会議の議事録、面会記録などが詳細に残っていない、関係者の記憶もなぜか妙に忘れっぽい方々が多い、などの問題が次々発生。言うなれば「とりあえず誰かは確実に嘘をついている」状態でした。
 そもそも、新設のためには

現在の提案主体による既存の獣医師養成でない構想が具体化し、ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき分野における具体的な需要が明らかになり、かつ、既存の大学・学部では対応が困難な場合には、近年の獣医師の需要の動向も考慮しつつ、全国的見地から本年度内に検討を行う。

という内容が閣議決定されており、この条件に沿った議論が進められる必要があるはずです。ところが公開されている議事録で確認できる範囲では、きちんとこれらを精査した上で話を進めずに、大雑把に言うと『獣医学部新設の提案が上がってきています→よしでは新設決定』ぐらいに随分と話が飛んでいるように思える経緯をたどっています。
 さすがに内容が細かすぎて全て辿れませんが、議事録や質問主意書の内容を見る限り『条件を満たしたとする具体的な根拠はどこにありますか?』という質問に『これまでに私たちが「条件を満たしている」と答えてきたことが根拠です』『条件を満たしていないというのはどこが満たしていないのですか?』という、禅問答や質問に質問で答える感じのやり取りが目に付いて、具体的に「この日のこの会議の議事録に詳細が記されています」という回答が見当たりません。
 
 この問題、根底に「獣医学部新設を認めないという方針が妥当なのか」という議論があり、「規制を守りたい文部科学省・獣医師業界 vs 規制を緩和させたい政権」という対立構図とも相まって語られるために、論点がバラケてしまっているのがより話をややこしくしている側面があります。「この条件自体が不当に新規参入を阻む条件で問題だ」といった話もありますが、この条件は政権が自分たちで作った決まり事です。
 問題があるならまずそこから改めて内容を練り直す必要があるはずで、仮に参入規制に問題があったからといって、それは閣議決定を無視して良い理由にはなりません。また、例えて言えば、外観上高い壁が設置されているはずなのに、特定の相手にだけ実は隠し通路が設けられていたのでは大きな問題があります。適正に規則が運用されているのか、という話と、その規制が妥当な存在なのかどうか、は別の話です。


・前後で言うことが変わる安倍首相

 これらの問題が議論される中で、安倍首相の発言には自分自身の過去の発言を真っ向から否定するようなものが複数ありました。

 
〇森友学園の土地売却に際して、ゴミの撤去費用として8億円を値引きしたことが適正であったかどうかはこの問題の根幹ですが、安倍首相は「適正であった」旨の答弁を繰り返していました。ところが2017年11月に会計検査院が値引きの根拠が不透明であるとする旨の調査報告を出すと、国会答弁では「基本的に処分を担当している財務省や国土交通省から適切に処理していたとの答弁があったところであり、私もそのように報告を受けていたところであります」と微妙に軌道修正。
 そりゃあ、安倍さんが自分で土地鑑定するわけではないので当然といえば当然なんですが、さらにゴミの不存在が濃厚となって来た2018年になると「今私が適正か適切でないかということを行政府の長として決めつけるわけにはいかない」と答弁しました。
 調べるのは自分ではなく財務省・国土交通省・会計検査院といった組織だから自分から良いとも悪いとも言えない、というのは分からんでもないですが、じゃあどうして1年前には「適切」と答えたのか、話が矛盾します。


〇昭恵夫人を証人喚問に呼ぶべきではないか、という主張に対し、安倍首相は「なぜ籠池さんが証人として呼ばれたかと言えば、刑事罰に関わることをやっているかどうかで、私は妻はそうではない」と否定。ところが、自民党が籠池理事長の証人喚問を行った際、国会対策委員長の竹下 亘はその理由を「総理を侮辱した」からだとしていました。
 籠池理事長は、簡単に言えば「安倍さんのおかげで学校を作れたのに、明るみに出た途端に足蹴にされた」というような感じで逆恨みしてベラベラと喋り、「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じ100万円の寄付を受けた」と発言したことが発端でした。そんな理由で証人喚問がまかり通ること事態が恐ろしい事柄ではないかとも思いますが、籠池さんは刑事罰に関わることをやっていたから呼ばれたわけではありません。


〇また、この証人喚問について、後日の国会で安倍首相は「100万円の問題などについて、密室でのやりとりなど反証できないことばかりを並べ立て、事実と反することが述べられたことは誠に遺憾であります」など、真っ向から反論する姿勢を見せましたが、佐川理財局長の証人喚問が行われた際には「証人喚問のやりとりにコメントしないのが政府の一貫した立場」と発言。全く一貫しておらず完全に矛盾しています。


〇2017年2月に「私や妻が関与していることが明らかになれば総理大臣も国会議員もやめる」と発言したことについて、複数の状況から昭恵夫人がやり取りに全然カスリもしていないとは言い難くなっていきました。しかし2018年、この辞める発言に関して聞かれると

「不正というのは、例えば金品を授受をして、行政にこれはこういうふうに政策を変えろと、こういうこと。これが今まで政治の世界においては贈収賄として問題になってきた。それでは全くないということは申し上げておきたい、そういう文脈の中において、一切関わっていないということを申し上げている」

と、関与=贈収賄罪に問われるようなことだ、としました。しかし、最初の答弁の際に聞かれていたやり取りから贈収賄を想像することは難しく、あらためて矛盾点を質されると、2017年3月にあった答弁の中での一節

「問題の本質は、まさになぜ安くなったのかということについて、そこに政治の関与があったのかなかったのか。政治に籠池さん側から依頼があって、そこに何かお金の流れ、籠池さん側が政治家等に対して様々な便宜を図る中において政治家が応えたのではないかという疑惑だったはず。ですから、その中において私も妻も一切関わっていないと言ったのは事実」

を持ってきて「最初から関与=贈収賄のことだと言っていて、いきなり話を変えたわけではない」と返答しました。しかしこの一連の流れは複数の観点から変です。もし関与=贈収賄だと捉えたとすると、首相は「贈収賄罪に問われたら辞めます!」という当たり前すぎることを言ったことになります。逆から言えば「贈収賄罪にでもならない限り辞めません」と言ったようなことにすらなります。

 さらに、この問題の本質は安倍首相本人が言う通り「なぜ安くなったのかということについて、そこに政治の関与があったのかなかったのか」ですが、それは「安倍首相に裏金が渡ったか」ではなく、国有地という我々国民の共有財産が、特定の利害関係によって不当に安く売られてしまった=国民が損をさせられたかもしれないことが問題なわけで、贈収賄の有無ではありません。
 私や妻が関わっていれば辞める→贈収賄という意味で関わっていないとはっきり申し上げたい、という流れは、斜めから見れば「贈収賄ではない部分では関わっていても話の対象外」と言っていることになります。口出しするぐらいは問題無いと思っているのならそれ自体が総理大臣にあるまじき態度です。問題の本質を分かっていないように思いますし、分かっていてわざと逃げているなら非常に卑怯に思います。


〇2018年3月の答弁で、安倍首相は「妻が名誉校長を務めているところはあまたの数あるわけでございますが、それが、そのものが今まで行政等に影響を及ぼしたことはない」と説明。ところがその2日後、具体的にどこの名誉校長を務めているのか問われると

「ちょっと訂正させていただきますが、名誉校長ではなくて名誉職ということでありまして、名誉職については相当多くの数がある」
「校長と園長ということで今ちょっといきなり御質問がございましたので、それは間違えであったということでございまして、会長職等の件数は合計五十五件ということでございまして。」
「いや、これは時間稼ぎではなくて、このようにたくさんあるものでございますから、その中で、今見ますと、もう既に現在はそれを、あと二つあったわけでございますが、既に辞めているということでございます。これは、学校としては御影インターナショナルと瑞穂の国記念小学院ですか。」

と、かなりしどろもどろな感じで答弁し、結局のところ
×名誉校長はあまたの数ある
〇名誉職は55件あったが、名誉校長・園長は2件
と、全然違いました。御影インターナショナルというのは加計学園が運営する認可外保育園で、要するに加計と森友だけでした。普段誠実に受け答えしている人がたまたま間違えたのならまだしも、幼稚な嘘を繰り返してきている人の答えでは、とりあえずその場しのぎで答えたけどバレたので話した、と思われても仕方ない答弁です。


・悪魔の証明理論

 この問題で安倍首相が主張したのが「問題があるというなら証拠を出せ。無いものは無いと証明できない悪魔の証明だ」という理論。これを根拠に擁護している人も多かったと思います。しかし結論から言うとこれは誤りです。

 確かに刑事事件であればこの通りです。被告人の有罪を立証する責任は検察側にある、いわゆる推定無罪の原則が適用されます。2019年12月に国外逃亡し、日本の刑事司法制度を外野から批判してきたカルロス ゴーンに対し、当時の法務大臣だった森 雅子が「司法の場で無罪を証明すべきだ」と、推定無罪の原則を無視した発言をして、「そら見たことか、日本の制度はおかしい」と馬鹿にされたのは記憶に新しいところです。

 ですが、今回の話はこれとは内容が異なります。今回の問題は、たとえば『森友学園に国有地を売却する際に8億円の値引きをしたのは正当であったか』といった内容ですが、こうした行政の行為というのは、正当であったという証拠を保管しておかなければいけません。簡単に言えば、お金を渡されて買い物を頼まれたら、ちゃんとレシートをもらって「この金額で買ったからおつりがこれですよ」と依頼主に返すのと同じです。

 行政は国民からお預かりした大切なお金を適切に管理、使用する義務があります。そして、それらの行為が正当であったかどうか聞かれた際には「ほら、これが証拠ですよ」と提示できないといけません。これができないようでは、行政が一体どういうお金の使いかたをしているのか、本当に我々の税金は正しく使われているのか知ることができず、権力者のやりたい放題になってしまいます。
 そして森友学園にしろ、加計学園にしろ、後年問題となりほとんど同じ構図の桜を見る会にしろ、追求する側が求めているのは「不正が無いという根拠を出せ」ではなく「取り引きが正当であったという根拠を出せ」です。

 上記の通り、こうした証拠はきちんと残しているべきものですから、聞かれたらすぐに出てきて提示できるもののはずです。ところが、これが「残っていない」「廃棄した」そして挙句の果てに内容の改ざん。この問題は「いくら追求しても不正の証拠を出せない追求側がおかしい」のではなく「あって当然の正当性を示す証拠を出せない」側の問題です。もう記録は無いから、おかしいというならおかしい証拠を出せ、なんて意味が分かりません。それなら行政はテキトーな理由を付けて文書を破棄すれば不正し放題になります。

 またたとえ話をしてみましょう。あなたは会社に勤めていて、社員でお金を積み立てて社員旅行に行く事にしました。それなりのお金が貯まって旅行に行く事になり、積み立てた額から考えて1泊4万円ぐらいのホテルに泊まれると考えられました。

 ところが、予約されてきたのはどう見ても1泊10000円程度の安い宿。
「もっと予算はあったよね?」「4万円した」
「でもネットで調べてもその宿は10000円前後の金額で取れる宿だけど?」「団体は高いと言われた」
「見積書は?」「捨てた」
「友達の会社は去年ここに1万円で泊ったって言ってたよ?」「だってそう言われた」

 で、調べたら社長の奥さんの友達が経営しているホテルでした。あなたは会社の態度、許せますか?会社が何のやり取りも残していないですが、証拠がないから問題ないですか?同じ話だと思います。なぜそう決まったのか?と聞かれたら記録を提示して「こういう経緯です」と提示する、当たり前のことができていればそもそもこんな問題は起こりません。悪魔の証明理論はここでは通用しないんです。
 極端なことを言えば、どれだけ安倍首相や昭恵夫人が関与していようとも、物事の決定に至る過程が透明性のある形で確保されており、その根拠がきちんと提示されて、その内容に瑕疵が無ければ何の問題もありません。逆から言えば、一点の曇りも見当たらないような取り引きでも証拠が無ければアウトです。些細な買い物でもレシートをもらい忘れたら怒られますよね?

 また、この問題を擁護している人は、自分の支持しない政党の政権で全く同じ事があっても、政権を擁護して追求する側がおかしいと非難するんでしょうか?私なら、何党の誰政権であろうと問題外だと思いますね。
 ここまでに挙げてきたような問題、よくあるのが『安倍が憎いから言っているんだ』『安倍政権だと都合が悪いんだ』というような内容ですが逆です。安倍だから問題を追及しているのではなく、追及されるようなことをことごとく安倍がしている、というだけの話です。
 F1ではケビン マグヌッセンがたびたび評論家や他のドライバーから批判されています。みんなマグヌッセン憎しで、マグヌッセンの評判を不当に貶めるために彼ばかり批判しているんでしょうか?違いますよね?危険な進路変更、強引な追い抜きを、何度言われても同じように繰り返しているから批判されているわけです。
 全然関係無い貰い事故でまでマグヌッセンを批判していたら、それは完全に誤った批判、最初から「どうせマグヌッセンが悪い」という結論ありきの不当に貶める行為で断じて許されませんが、何度も批判されているのは「マグヌッセンだから」ではなく「批判されることを何度もしているから」のはずです。これと同じだと思います。

 2ページ分使って書いてきましたが、これでも安倍政権の嘘やデタラメのほんの一部です。もちろん、安倍氏が自分で取り引きをするわけでも文書を書いてるわけでもないですし、完璧な人間なんていないので、うっかり誤って必要なものを破棄することも、記録が漏れることも0ではないでしょう。
 ですが、行政全体として妙に証拠を大事に扱っていない、しかも、疑惑が向けれらたものに限って不思議なことに見事にたくさん記録がない、桜を見る会では出席者名簿の提示を求めたら、その日に名簿が廃棄されるということまでありました。今までこんなことはあったでしょうか?

 指摘されるとすぐにバレる嘘をつく、話を逸らす、資料を出さない、こんなことを繰り返す人が自分の身の回りにいたらどうでしょうか?「経済も外交も良くなったんだからそれぐらいのことは問題では無い」と擁護する人もいるでしょうが、経済が伸びれば嘘をつこうが行政を私物化しようが許されるのであれば、中国の国家主席・習 近平も、ロシアの大統領・ウラジミール プーチンも偉大な指導者だということになりますね。

 「この社長になってから業績好調で我々の給料も伸びたんだから、セクハラぐらいで文句言うな」。こんなことを言う企業があったとすれば、それって健全でしょうか?そういうレベルの話だと思います。

 在任中に多くの嘘をついてきた人物を国葬するということは、もはや国家として嘘つきを称えているも同然です。自民党からすればそもそも「嘘など一度もついていない」とでもいうことになるんでしょうが、これだけの出来事が起こってきて嘘をついていないと考えているのなら、今いる人たち自体が民主主義を破壊する行為を追認していることに他なりません。とても容認できるものではないと思います。


・野田中央公園

 ところで、森友学園の話題を出すと「野田中央公園も取り上げろ」と返している人を時々見かけます。実は森友学園の土地の道路を挟んだお隣には野田中央公園という豊中市が管理する公園があり、ここも騒音対策区域から外れたことで売却されたものでした。いわく、「野田中央公園も民主党政権時代に格安で売却されたから森友を取り上げるならこれも取り上げろ」という話らしいです。本当なんでしょうか?


 後に野田中央公園となる土地は2010年、豊中市に14億2300万円で売却されました。しかし、実際に豊中市が支払ったのは約2000万円だけでした。なんと14億円も値引きされている!森友よりもむしろ酷い!!!・・・って飛びついた人がいたんだと思いますが、全然違います。

 豊中市では土地を購入するにあたって2つの補助金を申請しました。『住宅市街地総合整備事業補助金』と『地域活性化公共投資臨時交付金』です。ざっくりそれぞれから7億円ずつ充当されて合計で14億円の補助がついたので支払額が減ったんです。前者の補助金は元からある制度、後者はリーマン危機を受けて作られた経済対策の補助金で、全国の自治体が申請できます。また、売却や補助金が決まったのも、公共投資臨時交付金制度を作ったのも、政権交代前の自民党・麻生 太郎が首相だった時代です。

 豊中市は「14億円の買い物に、全国の自治体が申請して利用できる補助金が認められてたくさんついたので安くなった」、森友学園は「他所ではほとんど行われていない土地取引形態だった上に、土地の値段自体が値引きされた」で、全然意味合いが異なります。『隣地も格安で払い下げられていた!』みたいな書き方をしたサイトを見かけますが、内容を見ると全然違うんですね。それに、防災公園として整備するために自治体が購入するのと、小学校を建設するのに民間人が購入するのではそもそも意義も目的も異なります。

次回に続きます。

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