さすがに言いたい、安倍元首相国葬(1)

 今回は普段とは毛色が異なる真面目な話を、しかもかなり長い文章で書きます。2022年7月8日、奈良県奈良市内で演説していた衆議院議員で元内閣総理大臣・安倍 晋三が銃撃されるという悲惨な事件が発生しました。お悔やみ申し上げます。現場で偶然目撃者になってしまった聴衆の方々の精神的なショックも相当なものだと思います。昨今は身勝手で重大な事件が多発する世の中であるという印象があるように感じますが、現職の国会議員が公衆の面前で演説中に殺害される、などということは想像もできないことでした。

 一方で、事件後の世の中の状況にはいささか疑念を感じざるを得ませんでした。やたらと「民主主義に対する挑戦だ」という言葉が繰り返され、安倍氏がまるで聖人君子であったかのように取り上げられ、そして現在の内閣総理大臣・岸田 文雄は事件から1週間も経たない7月14日に安倍氏の国葬を決定、23日に閣議決定されました。
 しかしながら、安倍氏の在任中に行われてきた政治手法には民主主義を軽視するようなものが多く見られ、さらには結果的にこの事件が起こったそもそもの動機と関係することになる、いわゆる統一教会との関係性もまだきちんと整理されているわけではなく、そうした中での拙速な決定には疑問しか浮かびません。また、この選挙を含め、ここ数年世の中に起こっている物事も含め、私は非常に大きな危機感を持ちました。

 ましてや、国葬について自民党の幹事長から

「国民から『国葬はいかがなものか』との指摘があるとは、私は認識していない」「野党の主張は聞かないとわからないが、国民の認識とはかなりずれているのではないか」

 などと言われたら、「そうか、反対している私は国民ではなかったのか(*´▽`*)」なんてジョークで済むはずもありません。正直言ってしまえば危機感というのは遥か前からありました。かといって私は経緯や筋立てというものを大事に考えているので、SNSのたかだか100文字で誰かしらの投稿を引用して一言だけ発したり、突然空に向けて文句だけ呟くようなことはあまりしたくありません。

 今まで何も言ってこなかった自分も卑怯といえば卑怯ですが、別のアカウントを作成して別人のフリをして放言垂れ流すというようなことも卑怯に思えるのでやりたくありません。それゆえにブログという発信箇所がありながらも書かずに来たわけですが、さすがに今声を上げておかないと後々後悔するのではないか、と思ったので、今回この記事を書くに至りました。

 普段あまり政治に関心をお持ちでない方にも興味を持っていただきたいので、ところどころ『そもそもの話』から持ってきたり、たまに話が脱線したりするいつものクオリティーですが、よろしければ最後までお付き合いいただければと思います。というか、これから書く話は政治の1段階前のレベルの常識やモラルの話がほとんどなんですけどね。
 
 なお、記事内に登場する発言等は、可能な限り国会の議事録を参照するなどして正確な表現につとめていますが、原点を探せなかった、あまりに話が長い、などの理由で要約している場合もあります。なにぶん素人ですので内容に荒い部分があると思いますがご容赦願います。
 

・死者に鞭打つな、では済まない

 安倍氏の過去の問題点について指摘する事に対し、いわゆる『死者に鞭を打つな』的な批判があると思います。ですが、それは違うと思います。近親者の葬儀であればそうした考えでとりあえず悪いことは言わないでおこう、というのは理解できますが、彼は政治家という公人であり、ましてや長年にわたって政権のトップを務めた人物です。その功罪については死後であっても検証され、批判されるべき点があれば指摘されるのは当然のことです。

 たとえば「殺されて当然」「地獄で一生苦しんでください」こんな発言は許されるものではないですし、もし思っても人様に見える形で出すものでは決してありませんが、政治家という活動において行った事柄についての批判を「死者に鞭打つな」と批判するのは筋違いだと思います。



・嘘は民主主義の敵

 『人に嘘をついてはいけない』というのは、おそらく大多数の方が子供の頃から教わって来ると思います。ましてや政治ともなれば嘘は最も許されないことの1つです。国家が嘘をつくようになると国民は政策が正しく行われているのか、などの正しい検証を行うことができなくなり、正しくない情報に基づいて選挙が行われていくことになります。

 中国、ロシアなどのいわゆる強権国家を見れば一目瞭然ですが、国家は自分にとって都合の良い情報しか流さない、問題が起きるても敵対勢力のせいにする、異論を唱えるメディアや言論を封殺する、などの手法を採ってさらに統制を強化していきます。ある段階から国民は騙されているという意識も持てなくなります。
 嘘で国民を誘導して権力を握り、みんなのためになると言って実際には自分たちにとって都合の良い規則、都合の悪いものを排除する規則を作っていくことで、最後には自由や民主的というものは崩壊します。こうなると、もはや反対しようが何をしようが手遅れです。というか、反対を口にすると社会から消されるので反対すらできない世の中になります。

 そんなの中国やロシアの話でしょ、とはいかないのはつい最近我々も目の当たりにしました。2020年に行われたアメリカでの大統領選挙。敗北したドナルド トランプは「選挙で大規模な不正があった」と根拠の無い嘘を繰り返し、2021年1月6日に『連邦議事堂襲撃事件』が発生。同年5月にロイターとイプソスが行った世論調査では、共和党員の53%が「真の大統領はトランプだと考え」「敗因はジョー バイデンの不正だと考えている」としています。(この調査では民主党員の3%も「トランプが真の大統領だ』と答えた)

 トランプは常々自分にとって都合の悪い情報は『偽ニュース』だとして切り捨て、会見に自分の気に入らない質問をする記者を入れさせない、都合の悪いことは対抗勢力のせいにする、といった行動を繰り返し、そして大きな嘘を平気で未だについています。どこかで読みましたね、ハイ、中国やロシアと同じです。

 支持者受けする嘘を繰り返し、それを信じ込ませることで民主主義は容易に崩壊するということが示された恐ろしい出来事だと思います。なぜか日本でもトランプや支持者が次々生み出すデマを一生懸命広める人がいましたね。なぜかみんな「バイデンは中国の手先!」などと主張していましたが、自分やトランプのやっていることこそまさに中国と同じであるという矛盾すら理解しない、論理的でない返答を繰り返す、こういったことの繰り返しでした。『陰謀論者はそもそも事実であるかどうかに興味が無いんだ』という分析に納得がいく、というかそうでもしないと理解不能な状態です。

 翻って日本ではまだそんなことは起こっていない、かというと私はそうは思いません。アメリカほど酷くはありませんが、安倍氏も在任中にたびたび嘘をついていました。『「自分は嘘をついたことがない」という人間は信じるな』なんて言い回しがあるぐらいで、人間誰でも嘘をつくことぐらいあるでしょうが、総理大臣をはじめとした政府側がその場しのぎの嘘を何度も繰り返すというのは大問題です。いくつか取り上げます。

・テロ等準備罪を巡る嘘


 2017年に成立したいわゆる『テロ等準備罪』、組織的犯罪を行おうとする者がいた場合に、実際に犯行に及ぶ前の準備段階での摘発を可能とする法律ですが、審議の過程でデタラメな説明が繰り返されました。

 元々この法案は『共謀罪』と呼ばれていたもので、小泉政権の頃に法案が提出されていたものの廃案になっていました。理由の1つが『何かしら話し合いをしているだけで、難癖付けて摘発される可能性がある』という、戦前のような運用がされてしまう懸念があったからです。権力者が自分たちにとって不都合な集会を摘発できるようになると、まさに強権国家になってしまいます。
 で、2017年には名称が変更された上で改めて国会に提出されましたが、当初の法案には名称に『テロ等』と書いてあるのに内容には『テロ』という表記がありませんでした。この件を指摘されると法案には修正が加えられてテロの文言が加えられましたが、内容として『テロ対策』に絞った内容ではありませんでした。

 政府側は対象範囲を厳格化し、一般庶民が対象になることは無い、と説明する一方で、明記された『組織的犯罪集団』の定義が依然として曖昧であり、安倍氏は当初「そもそも犯罪を目的とした組織でなければ処罰対象にはならない」と答弁しながら、1か月後には「そもそもの目的が正常であっても、一変すれば組織的犯罪集団と認める」と矛盾した発言。
 結局、組織的犯罪集団と認めるかどうかは裁量の余地があり、何らかの抗議デモを考えている集団でも、恣意的に「この集団はこの後業務妨害罪を犯す可能性がある」とでも考えると範囲に入ってしまう=一般庶民でも対象となることになります。

 また、この食い違いを指摘された際に安倍首相は「『そもそも』という言葉には、『はじめから』という意味と思っておられるかもしれないが、辞書を調べてみると『基本的に』という意味もある」と答弁。しかし、どう調べてもそのような意味は辞書には載っておらず、後日辞書では調べていないと認める羽目に。まあ、仮にそうでも質問と答えが噛み合っておらず正面から答えているとは言い難いものです。

 この法案では他にも、国際条約(国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約、パレルモ条約やTOC条約と呼ばれる)を締結するには必要だ、と説明されていたものの現行法でじゅうぶんだとも言われており、根本的に条約が求めている内容とこの法案の内容が違うので筋違いだともされています。法務省のサイトでは、テロ等準備罪の法案成立をもってTOC条約批准が行われたことが記載されていますが、事実関係が曖昧です。

 さらに、安倍首相は東京オリンピック・パラリンピック開催にあたってテロ対策法案が必要であるという見解を繰り返してきましたが、そうすると法律が存在もしないのに招致活動を行い、安全な東京での開催をアピールしていたことと整合性が取れません。


・デタラメな増税延期

 2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられ、当初予定では2015年10月に10%へ引き上げられる予定でした。2014年の11月に安倍首相はこれを18か月間延期し2017年4月にすると表明、この際には「リーマンショック並みの危機がない限り、消費増税は再延期しない 」としていました。

 しかし2016年5月の主要7か国首脳会議で「世界経済はリスクに直面しているという認識で一致した」と、リーマン危機時の商品価格の推移等を引き合いに出して、当時と似た状況でこの危機を回避しないといけない、としました。(余談ですが、日本では『オイルショック』『リーマンショック』などと危機に対して『ショック』という単語を使いますが、英語では普通『クライシス』を使います)
 しかし、『G7各国で一致した』などという事実は存在しませんでした。さらに、リーマン危機時の状況を引き合いに出したはずなのに、自民党の役員会で「私がリーマンショック前の状況に似ているとの認識を示したとの報道があるが、まったくの誤りである」と発言。

 結局「現時点ではリーマン級のショックは発生していないが、これは従来の約束とは異なる新しい判断だ」と説明して増税延期を表明し、国民の信を問うとして衆議院を解散しましたが、現に世界経済に数字上の問題点は見られず、むしろ日本の経済成長率だけが停滞状態。
 にも関わらず経済政策については、内閣不信任案が提出された際に自民党が「『アベノミクス』で雇用や所得環境は改善を続け、日本経済は着実に回復に向かっている。実績は多くの国民から高い評価を得ており、国民の意思に反した決議案の提出は、まさに党利党略、パフォーマンス政治そのものだ」と反論。

 まとめると、『日本経済はアベノミクスの成功で良好だけど、 世界経済には今は何の問題も起きていないけどリスクがある気がするので増税を延期する』という意味不明な理由でした。別に相応の理由があれば方針が変わるのは構わないですが、だったら嘘をつく必要はないはずです。延期しないと言ったことを嘘にしたくない、というところを起点に言い訳を重ねたようにしか見えません。


・経済政策によって雇用が増えて年金の支え手も増えた

 2019年ごろに安倍首相が選挙演説等で語っていたものですが、たしかに2013年からの6年間で就業者数は約340万人増加しました。しかしそのうち65歳以上の高齢者が225万人と2/3を占めました。全体に高齢化が進んでいますので、なお働く意欲のある方が多かったり、企業による再雇用があったりと理由は一律では無いでしょうが、年金では足りないから働いている方も多いでしょう。少なくともこの数字を持って声高に『年金の支え手が増えた』というのは事実とは言い難いものです。

 他にも、2019年あたりから安倍首相は『悪夢の民主党政権』という単語を盛んに用いて、自身の政権在任中に経済状況が好転したような主張を繰り返していますが、2009年にリーマン危機が発生して極端に落ち込んだ後に民主党政権が始まっており、なおかつ2011年には東日本大震災が発生したという特殊な点があるので比較が容易ではありません。
 しかも、統計数値を見ると、自殺者数、企業倒産件数、GDP値、失業率は基本的にどれもリーマン危機で急激な悪化を起こした後に底を打って改善しています。具体的に何かの数字を引き合いに出したわけでは無いのでデマだとは言えない事案ですが、ほとんど印象操作に近い行為です。

 それ以前の問題としては、政治的に異なる意見を持つ者同士が意見をかわし妥協点を探るのが民主主義のはずですが、相手の、それも過去の物事を「悪夢」などと何度も繰り返し言い放つのは国のトップとしてあり得ない非常識な行為だと思います。


・夫婦別姓は左翼的かつ共産主義のドグマ

 これはデマな上にほとんど妄想世界。野党時代の2010年ですが、月刊WiLLという雑誌の対談の中で

「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義のドグマだ」

と主張。全く意味が分かりません。夫婦同姓が法的に義務付けられている国は先進国で日本しかなく、もしこの主張通りなら世界の主要国はこぞってみんな共産主義国だったことになり、それらの国家の別姓家族は崩壊していることになります。どれだけ海外の家族の方々に失礼なんでしょうか。


・虚偽答弁118回

 内閣総理大臣が主催して、皇族や各国大使、国会議員、各界の代表者等を招待し新宿御苑で開催されている『桜を見る会』。1952年から始まったこの行事、安倍政権になってから参加者の増加率が顕著で、予算も膨らんだことで問題視されました。
 『各界で顕著な功績を挙げた人』を招待するとしつつ、基準があるわけではないので自分を持ち上げてくれる言論人や後援会など、明らかにお友達を呼んでいる傾向が強まった他、いわゆる反社会的勢力とされる人物まで参加、悪質なマルチ商法を行っている会社の人物が一緒に写真を撮って宣伝に使うなど、道義的にもかなり問題が出ていました。

 さらに、後援会の人たちは前日にホテルで前夜祭を行いましたが、会費が1人5000円となっており、明らかに安いのでおかしいのではないか?料金の一部は首相側から補填されており、これは自身の選挙区に有権者に寄付することを禁じた公職選挙法違反や、収支報告書に記載すべき事項でありながら記載していない政治資金規正法違反ではないか?と問題になりました。

 この前夜祭の問題を巡って、安倍首相は国会で「ホテルが設定した額を参加者が払った」「契約はホテル側と個々の参加者」「後援会としての収入支出が一切ないので、政治資金収支報告書への記載は必要ない」「明細書は無い」といった趣旨の答弁を行いました。しかし、その後に検察が秘書に対する捜査を行った過程で、こうした内容は事実ではないことが明らかとなり、虚偽答弁は118回に上ったとされました。

 自分ではなく秘書がやっていたことで答弁していた時は知らなかったんだ、同じ質問をして同じ答えをするんだから回数が増えるのは当然だ、ということになるんでしょうが、答える前にきちんと調べるのは最低限の責務。800人の参加者がホテルとそれぞれ個人で契約している、なんてことが現実にあるのかぐらいはちゃんと調べれば分かるはずですし、問いただしてなお秘書が嘘の答えを重ねていたとしても、上に立つ者には道義的責任があります。

 桜を見る会では、参加者の推薦について当初「取りまとめには関与していない」としていながら、その後に「事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と数日で話が一転するという嘘もありました。

・マスク配布に関する嘘

 2020年に急拡大する新型コロナウイルス対策として政府が配布した布マスク・通称アベノマスク。配布を開始すると不良品があることが判明し検品が必要になってしまいました。検品費用について官房長官・菅 義偉は「予算を追加的に投入するものではないと聞いております」と説明しましたが、実際は不良品を公表した後の期日で検品の契約をしており、当初予算ではなく追加費用であったことが明らかになりました。
 また、菅官房長官は「マスク配布によって市場でのマスクの価格が下がった」という趣旨の発言をしていましたが、その時点でまだ配布率は僅か。「配布すると言ったから業者が在庫を手放したんだ」とする擁護論もありますが、普通に考えて供給が追い付きだして在庫がだぶついていただけで、マスク配布のおかげと言えるような根拠は存在せず、具体的に政府が示すこともできていません。


・国会開会要求無視

 こちらは嘘ではなく規則無視。憲法53条では

「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」

とあります。しかし安倍政権は「具体的にいつまでにとは書いていない」という理屈で、2015年に野党が開会要求を行った際これに応じずに翌年の通常国会まで国会を開きませんでした。

 2017年も6月に行われた要求に3ヶ月にわたって応じず、ようやく開いた9月の臨時国会は冒頭で衆議院の解散を宣言。形式上は国会を開いたけど、国会開会の目的である議論を一切行いませんでした。2020年は要求から1か月半ほど経過してようやく開会しますが、これは主に安倍首相の辞任に伴う次の内閣総理大臣指名選挙が主な内容で3日間だけでした。

 身の回りのことに置き換えてみましょう。「急がないから、この資料まとめておいて」と頼んで3か月後に「資料まとめてくれた?」と聞いたら「急がないと言われたのでやっていない。期限がいつとは言われていない」と答えられたり、クリップで紙を留めて「まとめた。まとめるというのが具体的にどういう内容かは指示されていない」と言われたらどうでしょうか?モータースポーツの技術規則解釈ならともかく、社会では普通こんなの通用しませんね。

 多すぎて書けませんが、安倍政権やその後の政権ではこうした閣僚の嘘やデタラメが多数見られました。それも、ごめんなさいと謝れば済んだ話を、どうしても認めたくないので子供のように場当たり的に嘘をついている場面が多々見られます。一般的な企業で考えてみた時、何かあるたびに保身のためのすぐバレる嘘ばっかりつく人が上層部に集まってたらどうでしょうか?
 言い間違え、誤解、ミス、出来心、嘘にもいろいろあるでしょうが、長年にわたって同じことが繰り返されているというのは明らかに普通ではありません。

 掲げている、行われている政策について賛否があるのは当たり前ですし、それぞれ意見があるのが当たり前です。法人税を下げて企業を招いた方が税収は上がるという人もいれば、いやいやそうやって下げると企業ばっかり儲かるんだ、上げるべきだ、という人もいる。いやいや、法人税ってそもそも企業は払おうとする分だけ従業員の給料が実質削られているんだから、そもそも課税する必要がない、という意見もあるでしょう。
 ですが、『嘘をついて良いか』なんて議論に賛否はありません、ダメに決まっています。「嘘つきが治める裕福な国と、正直者が治める貧しい国なら前者の方が良い」とでもいうような言質も時折目にしますが、なぜ『正直で裕福にできる人』が存在しない前提なんでしょうか?自民党には『嘘つきで有能な人』と『嘘をつかない無能な人』しかいないんでしょうか?だったら嘘つきにしか頼れない組織なんて人材が少なすぎですね。
 また一般の会社に例えて考えたら、会社の業績は在任中に確かに向上したけど、セクハラ、パワハラ、えこひいきが明らかに増加し、これを「社長のおかげでお前も給料が上がっているんだ。セクハラぐらい我慢しろ」などと言われたらどうでしょうか?たぶんそういう組織は実際にあると思いますけど、組織として明らかに間違えてますよね?
 本当に有能で国民のために働ける人なら嘘をつく必要なんてないはずです。なぜ嘘をつくのか、考えてみれば分かると思います。


・『国会を開くと1日3億円かかって税金の無駄』はデマ

 ところで、野党が臨時国会を要求した際などに『国会を開くと1日で3億円かかって税金の無駄』『その金を他に回せ』といったことを主張する人がいます。結論から言うとデマです。
 この『1日3億円』というのは、国会にかかる年間費用を単純に365で割って算出したものです。たとえば2021年だと衆議院で約691億円、参議院は約416億円で、合計約1107億円。これを365で割るとまさに3億ちょっとです。ですが、この費用の多くは国会議員の給与等の固定費、つまり国会が開いていようがいまいが発生するものです。

 たとえば、令和3年度国会所管 一般会計歳出予算各目明細書を見ると、衆議院の議員と秘書に支払われる給与が約226億、参議院が118億です。国会議員には給料とは別に文書交通通信滞在費(いわゆる文通費、翌2022年4月に法改正により調査研究広報滞在費に名称を変更)が月額100万円、立法事務費が月額65万円払われており、この総額が約140億円です。

 両議院には職員さんも大勢いますので、こうした方々の給料と手当にも総額250億円以上、これに退職手当、国家公務員共済組合の負担金、議員宿舎の維持管理や、もちろん全てにおける光熱水費もかかります。国会を1日開くたびに、エンジンをかけるようにお金が出て行って、開かないと節約できるわけではありません。会議がなければ会議場の空調設備も照明も不要ですが、全体から言えば小さな割合です。言うなれば『国会を開かなくても3億近くかかっている』というのが正しい解釈です。騙されないようにしましょう。

次回へ続きます。

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