NASCAR、新予選制度を発表、他オフ情報

 NASCARは2020年に発生したCOVID-19の感染拡大を受けてシリーズを中断、シーズン再開後も感染防止のためにできるだけトラックでの滞在時間を減らすことを目的として、基本的に練習走行と予選を全てのレースで停止してきました。しかし2022年、NASCARにこれらの要素が戻ることになりました。それも、従来通りに戻すのではなく、新しい制度として導入されることになりました。

2021年のデイトナ500予選より

 11月19日にNASCARは2022年の練習/予選のフォーマットを発表しました。全てのレースで練習と予選が行われるようになります。『パンデミック以前』の規則では、予選はオーバルは1台ずつのアタックで1.25マイル以上のトラックなら1周、それ以下なら2周の計測。ロード コースは2ラウンドのノックアウト方式で、25分間のQ1で上位12台が10分間のQ2に進出してグリッドを決めました。
 練習走行は普段から見ないもんですっかり制度を忘れてしまいましたが、予選を挟んで2回のセッションがだいたい60分で行われていましたね。

 2022年は車が完全に新しくなるので、60分の練習がさぞかし重要だろうと思ったら、そうはなりませんでした。基本的には2ラウンド制のノックアウト方式の予選となり、練習走行の時間はそれほど多くありません。トラックの種類などによって分類されていて、なおかつシリーズによっても異なるために、ここではカップ シリーズに絞ってみます。

・オーバル
 
 前戦での結果に従って奇数(A組)と偶数(B組)の2つのグループに分けた上で、ラウンド1はそれぞれの組が15分の練習をした後に1台ずつの1周のタイム アタックを行い、各組の上位5名がラウンド2に進出。ラウンド2では1台ずつがタイムアタックし、最速のドライバーがブッシュ ポール アワード(ポール ポジション)を獲得する。

※ブリストル、マーティンズビル、リッチモンド、ドーバーでは1周ではなく2周のアタック

・スーパー スピードウェイ

 練習走行は設定されずいきなり予選から開始。各車が1台ずつ1周のアタックを行い、上位10台がラウンド2へ進出。ラウンド2もまた各車がアタックを行い、最速のドライバーがブッシュ ポールを獲得する。

・ロードコース

 前戦での結果に従って奇数(A組)と偶数(B組)の2つのグループに分けた上で、ラウンド1はそれぞれの組が20分の練習をした後に15分の予選セッションを行い、各組の上位5名がラウンド2に進出。ラウンド2では10台が10分のセッションを行い、最速のドライバーがブッシュ ポールを獲得する。

・ブリストル ダート

 50分間の練習走行が2回設けられた後、4つに分かれた予選レースを行い予選順位を決定する。

・デイトナ500

 例年通りに予選で1列目だけを決定、2列目以降は予選レースで決定する。

 上記に加えて、デイトナ500、アトランタの1回目、ゲートウェイ、ナッシュビル、最終戦のフェニックス、の5つのイベントには50分間の練習走行枠が設けられる。このうちデイトナ500以外はグループ予選前に設定されている練習走行枠が置き換えられる。


 と、こうなっています。参考までに、Xfinity SeriesとCamping World Truck Seriesでは、基本的にオーバルは20分の練習と1台ずつの予選による1ラウンド制、ロードコースはグループ練習&予選方式の2ラウンド制となっています。

 予選をどういったスケジュールで組むのかや、ラウンド1で脱落したドライバーの順位をどう決定するかについては後日発表されることになっています。今回の発表では『最速の人がポール』としか書いていないので、厳密には2位以降のドライバーの予選順位をどうするかも発表されていません。

 NASCARの上級副社長・スコット ミラーは「NASCARが練習と予選をレースの週末に戻すことに興奮しています。我々は週末中ずっと自動車やトラックが走行しているのを見ることができず、ファンのみなさんにとってもそうでした。我々は業界全体がパンデミックをうまく乗り切るために役立った効率を維持しつつも、放送局、チーム、レーストラックと緊密に協力してエキサイティングでユニークな予選方式を作成しました。」

 要約すると、練習日、予選日、決勝日、という従来の方式はさすがに長ったらしいしコストもかかるので、練習無しとまでは言わないけどできるだけ削減した、ということだと思います。そのために、練習と予選のラウンド1をくっつけてしまい、視聴者も現場にいるお客さんも、イベントが始まったらすぐに本気で走る車を見ることができる、ということになります。
 じゃあ予選の視聴者が増えるかというと、予選順位があまり大事ではない競技の特性上そうはならない気がしますが、毎回指数予選で同じ人が前に来てしまうような状態は避けて話題性とドライバーの実力の見せ場に繋げるために考え出したというころでしょう。各車両のスポンサーにとっては、1台ずつの予選って画面に車が単独で大きく映るので結構大事なんですよね。
 全然違う車になったのにそんなに練習を削ってセッティングは大丈夫なのかと見ているこっちが不安になりますが、なんとかなるんでしょうね^^; なお、ダートレースの4ラウンド制予選レースについては詳細は発表されていませんが、昨年の仕様は一応この記事内で触れています。実際は大雨によって開催されなかったんですけどね。


 さて、その他のNASCAR関係の情報です。まず、売りに出されていたスターコム レーシングのチャーターは23XIレーシングが購入したことが明らかになりました。23XIはカート ブッシュを加入させて2台体制への拡充を発表しておきながら、チャーターを入手できずに宙ぶらりんになっていました。
 スターコムはスパイアー モータースポーツにチャーターを売るのではないか、という噂も出ていましたが、11月16日に23XIがチャーターを購入したことを認めました。購入額は当然非公表ですが、最近スポーツ ビジネス ジャーナルが報じた内容によれば、チャーターの価格は以前に私が少し取り上げた際よりもさらに高騰しており、1200万ドル(約13億5000万円)にも上っていると報じています。実際の取得費用は分かりませんが、かなりの額を払ったことは容易に想像できます。


 一方、こちらはブラッド ケゼロウスキーが加入し、オーナー権の一部も取得したラウシュ フェンウェイ レーシング。チーム名が『ラウシュ フェンウェイ ケゼロウスキー レーシング』と改称されることが発表されました。
妙にこじんまりした会場で披露された
新しいイメージをまとうNo.6 Ford Mustang


「チームの歴史が次の章となることに興奮しています」とチームプレジデントのスティーブ ニューマーク。
「私たちのチーム全体にとって、組織として前進するにあたって、私たちが誰であるかについての正しいメッセージを捉えるため、このプロセスに時間とエネルギーを費やすことが非常に重要でした。」

 一方ケゼロウスキーは
「今日の発表は派手なロゴ以上のものだよ。これは僕らの伝統に対する認識であり、人々の新たな取り組みであり、NASCARで一流のレース チームを今後数十年に渡って運営するためにここにいる、ということを示している。ジャック ラウシュとジョン ヘンリーと共に次の章に加われることにワクワクしているよ。」

 ケゼロウスキーはNo.6のフォード マスタングのドライバーとして2022年のシリーズに参戦し、チームメイトにはNo.17のクリス ブッシャーが引き続き搭乗します。

 最後に、シャーロット モーター スピードウェイではNext Gen Carのテストが行われました。スポイラー高を下げてエンジン出力を少し上げるなど、来年の仕様のテストやピット作業の練習も行われています。ナットが一本になったカップシリーズですが、まだクルーが慣れてないせいもあって、作業はむしろ5穴の方が早そうに見えますね^^; 
 こちらはそこそこ上手く行ったらしき作業です。今までの5穴ナットを次々と脱着する「ピーー、ピーピーピーピー」という音が無いのはまだ違和感がありますねえ。結局、一本ぐらい締め損ねてもいいので勢いでやっていた今までと違って、きちんと正面からきっちり締めないとどうしようもないのと、ウエッジのアジャストには手を取られるので、全体でそこまで作業が極端に早くはならないかもしれません。

コメント

まっさ さんの投稿…
そういえばトラックハウスのチャーターはガナッシのを引き継ぎですか? 99号車って今シーズンチャーターありましたっけ? デイトナ500以外でチャーターって意味あるのか疑問に思いつつ、はるか昔のため記憶にございません。もし、持ってたら42号車のチャーターが余るような....。
謎が深まります。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 No.99の2021年のチャーターはスパイアーからのレンタルですね。来年はガナッシのチャーター2つが売買契約に含まれているので、そのまま2台分のチャーターを保有しています。
 チャーターのレンタルって確かにデイトナ500以外だとわざわざお金をだすほどでも、とは思いますけど、スポンサーとの交渉をする上で『予選落ちして出ないかもしれません』では話がまとまらなかったり安く見られたりするので、出せる範囲のお金ならやっぱり借りたいんでしょうね。貸し出し契約の内容次第ですが、多少は分配金を貰えるかもしれませんし。