FIA フォーミュラ 1 世界選手権、イラン戦争の影響で4月のレースが無くなって1ヶ月の休みができ、その間に開幕から指摘されていた問題点を緩和すべく矢継ぎ早の規則変更と、さらには新規定の目玉政策だったはずの『なんと内燃機関と電動モーターの比率(約)50:50!』というのも諦めて来年、再来年と段階的にモーターの比率を下げることになりました。柔軟と捉えるべきか拙速と捉えるべきか、な状況で文字通り考えながら走るF1の夏休み前までの雑感です。
マルコというのはアントネッリのお父さんのことでしょうか。海外の投稿者がこれを投稿していたようです。この投稿者曰くイタリアの知り合いからもらった情報だ、というんですが内容がおかしいので偽物ではないかという意見が多数。チーム側にはこうした公式は声明文も一切見られませんでした。そして有力な手掛かりがありました。
オーストラリアのレプコ スーパーカーズ チャンピオンシップに参戦するレッド ブル アンポール レーシング(トリプル エイト レース エンジニアリング)が出した声明文です。上記声明文と酷似しており、どうやらこれを改変して作られた偽物である可能性が極めて高いと考えられます。この投稿者は「あんたが作ったんだろ」と言われて「俺は作ってない」とあくまで"イタリアの知り合い"から教わったとしているようですが、未だに削除も訂正もしていません。
・神童?アントネッリ
ドライバーさんの仕事はどんな状況でも目の前の道具で最善の結果を出すことで、開幕から快走するのはアンドレア キミ アントネッリ。前回第3戦までの感想としては『いずれは経験でも上回るジョージ ラッセルが盛り返すだろう』と思っていましたが、そんな私の予想(呪い)を無視するようにアントネッリは第2戦中国から第6戦モナコまで5連勝、第10戦ベルギーでも勝って既に6勝。方やラッセルは速さでも運でもアントネッリに負けて苦戦中です。
アントネッリは多くのレースで練習走行の段階からラッセルを凌駕するセッションが多く、既にチーム内でもどちらが主戦級なのか分からない状態。第3戦までの段階では完全にメルセデス一強だったので私の中では「そら相手がラッセルしかおらんねんから、その時上手いことハマったら圧倒的な速さで勝ったように見えるだけやんか、当たり前やんそんなん。天才とかそんなん違うよ。」ぐらいの印象で、騒いでいる媒体に対してやや懐疑的な見方をしていました。
しかしその後に他チームも一気に車の改良を進めてきて勢力図が動いて行きメルセデス一強という見立てそのものが誤りであると分かった中でも、アントネッリは常に高い競争力を持ち、速さの面でもタイヤの使い方の面でも才能をいかんなく発揮しています。私の考えは完全に誤っていたと思い知らされました。
第5戦カナダではスプリントから好調のラッセルに対して、チームメイトであるにもかかわらずムキになって仕掛けて行って危うく自滅・共倒れしかけていたので若さが見えた一方で、第9戦イギリスでは車が壊れて入賞が難しくチーム側がリタイアを推奨する中でも1点でも獲りたいと直訴してレースを続ける根性も見せ、単に車が速くて調子に乗ってる若造ではないことも見せてくれました。ただ壊れた車で無理に攻めたからコース外を走りすぎてペナルティーを食らい、しかもSC導入で5秒加算がモロに効いてしまったのはちょっと不要なオチでしたが。
アントネッリは速さに対する感度や反応、車の制御力に優れるだけでなく、タイヤの状態などをきちんと感じ取る力に優れているために周囲と同じような速さでありながらもタイヤを酷使していない、むしろ長持ちさせてしまうのではないかと思います。そんなことあり得るのかと思いますが、グランツーリスモ程度の経験でも言えますがそういう何やってるか分からんけど魔法みたいに走ってしまう人、確かにいます。
・新規則車両独特のクセ
じゃあチームメイトのラッセルが実は大したことなかったのかというとそんなことはないと思います。2年前にはそのラッセルに勝てず苦戦していたルイス ハミルトンは去年もフェラーリで最悪のシーズンを過ごしていましたが、今季は第7戦バルセロナ-カタルーニャで優勝していますから、ハミルトンより速かったラッセルが遅いということはあり得ません。フェラーリではハミルトンは昨年と一転してシャルル ルクレールと対等以上に戦い、それはマクラーレンのランド ノリス/オスカー ピアストリ、レッド ブルのマックス フェルスタッペン/アイザック ハジャーなど複数のチーム内での力関係でも変化が起きています。
これはやはり昨年までと車がガラッと変わってしまった影響だと思います。2022年から4年間使用されたいわゆるグラウンド エフェクト時代の車両は、とにかく車の下面を路面に近づけた低い車高を維持し、前後にも左右にも姿勢を変化させずに高い速度を維持させて走らせるのが最適解と言えました。いわゆるボトム スピードを上げることが重要です。
ブレーキで前のめりになり過ぎたりすると車高が理想形でなくなり、理想形で無いとダウンフォースが減り、ダウンフォースが減ったら旋回速度が下がり、旋回速度が下がるとダウンフォースが減り、という無限ループのような状態でとにかく車高が大事でした。けっこう特殊な乗り方が必要で、たとえばダウンフォースの低い入門フォーミュラで見に付けるような走らせ方だとたぶん性能を出し切れないと思います。ある意味で変態だけが乗りこなせる車です。
もちろん今年も下面ダウンフォースの有用性が消えるわけでは無いですが、依存度が大きく変わったのでコーナーでの走らせ方が変わります。また、たしかこれは日本GPの際にレッドブルのリザーブ/シミュレーション担当ドライバーの岩佐 歩夢が取材に対して話していた内容だったと記憶していますが、岩佐選手によると今年の車というのはザックリ言うと
『ボトムスピードを上げてコーナーを曲がるのと比べて、ボトムスピードが遅くても奥までブレーキを踏んで向きを変えて立ち上がると、減速時間が長かったぶんだけ回生が行えていてそこから先の直線で長く電動出力を使用することが可能で結果として変わらなかったり、むしろそっちの方が速い場合がある』
というような内容でした。これを見た時になるほど!と私は膝を打ちましたが、電動モーター出力が高められたパワー ユニットとの兼ね合いで単純に1つのコーナーだけの走り方では速さの優劣が決められない、最適な答えが何なのか分かりにくいというのがあります。グラウンドエフェクト車両で速さを見せていた変態さんたちは、同じ感覚で変態ドライブしたらコーナーは速いはずなのになぜかタイムはそうでもない、ということが起こりかねない、というか実際それがラッセルやルクレールやフェルスタッペンが今一つ輝けない、逆にハミルトンが急に復活した要因の1つに挙げられると思います。ぎゅーんと止めてキュッと曲げてバンっと加速したら速いんですね。
このあたりはフォーミュラEと同じで事前のシミュレーションにおいて『規則と照らし合わせてどういう走らせ方が一番速くなるのか』というのをドライビングとMGU-K出力配分の双方から突き詰めて行く必要があるので、レースまでの準備の時間が競争に与える影響は僅差で争うチーム同士であればそれなりにありそうですし、そういうやり方に適合して柔軟に走らせることができる才能も求められると思われます。
そういえば、たしかフェルナンド アロンソはマクラーレン ホンダ時代にスパ フランコルシャンの予選で高速コーナー・プーオンを気迫の全開走行してみたら、PUの設定上はここではスロットルを戻す前提でプログラムが組まれているからエナジー配分が狂ってしまい、大事なコース終盤の全開区間でMGU-Kが仕事をしなくなってむしろ遅くなった、ということがありました。こういう出来事がもっと複雑に色々絡んできてみんな日常的に起きてるような状態が今のパワーユニットという気がします。
・全開=200kW強制力行がもたらす複雑さ
規則が複雑怪奇で規則書を読んでも意味不明な部分が多い、というか川井 一仁によると「チームの連中も正確に分かってない」ので我々には理解しようもない2026年のパワーユニット規則。「知らない方が幸せ」と川井ちゃんが言うのがわりとその通りだったりするわけですが、バーチャル レーサーの端くれ程度でもドライバーから見て難しそうだなと思うのがパワーユニットの出力に関する規定です。
規定ではスロットルを95%だか98%だか以上まで踏み込んだ『全開』状態にすると、エナジーに残量がある限りは最低でも200kWの出力をMGU-Kから必ず出力しなければならない、とされています。これが素直にそういう書かれ方がされてなくて『ドライバーの最大出力要求はフルスロットル期間の開始時に150kWを超えて低減することはできず、その出力低減は最低1秒間維持されなければならない。』みたいな表現になっていて、そういう規則を平易にしてまとめていった結果が『全開にすると最低200kWを出力しなければならない』という"意訳"になってるっぽいので、一応何でも一次情報で規則を読む癖を付けている私でももう理解が不能で報道頼りです。
それはさておき、全開ではない中間域のスロットル操作で各陣営がどの程度MGU-Kの出力を出しているのかは分かりませんが、中間域であまり放出させる設定にしておくとコーナーで無駄にエナジーを消耗してしまうので綺麗にスロットル開度に合わせて電動アシストを増やしているわけではないと思います。ということは、全開になった瞬間にわりと突然モーターの出力が乗っかってきます。極端な話さっきまで500馬力だった車が瞬時に800馬力になるわけです。
普通の車ではなかなか無いような変なクセのある車なので明らかに自然な動作ではなく扱いにくさがあると思います。開幕戦オーストラリアではピアストリがレコノサンス周回でクラッシュ、スタートすらできず母国レースを去りましたが、これもおそらく急激なMGU-Kの出力がまだ感覚として身についていないので対応できなかったためではないかと思われます。
どこでどう出力するかは基本的に事前に設定されていてプログラム通りに動きますが、全開時に出された電動アシスト出力は最低1秒間保持された後に1秒ごとに段階的に50kW、ないしは100kWずつ低下していきます。川井ちゃんがいう『ランプ ダウン』というやつですね。一方で、規則によると全開時のこの出力はランプダウン以外には事前のプログラミングとして増減する設定ができません。細かく調整できると疑似トラクション コントロールになるおそれがあるので規制されてるみたいです。
ということは、さっき『最低200kW』と書きましたが長い直線に向かうところでは当然ながら最高出力である350kWを出す設定を作ると思います。そうするとそのコーナーの立ち上がりで『最初は200kWでコーナーを立ち上がって少ししてから350kWに増やして乗りやすさを重視』みたいな設定ができませんので、350kWを使いたい区間なら全開=350kW設定が必須です。
中国ではSC明けのリスタートでルクレールあたりが冷えたタイヤで加速した瞬間ズルっと滑って離されてる場面がありましたが、このある意味で『ドッカン電動ターボ』とでもいうべき車両特性が影響していると思われます。この特性に馴染めるかどうかはタイヤの摩耗にも勝負所での速さにも関係してくるでしょうね。あ、この辺の話は調べられた範囲の情報から想像して書いたので、実際はもっといろんな制約が絡んで全然違う話だったらごめんなさい。
また解説で稀に出てくる『0kWゾーン』とか呼ばれているものは、この全開=200kW強制の規則を免除してくれる区間のことです。鈴鹿のS字が代表例ですが、急に出力が追加されたらあまりに操作が難しくてヤバそうな区間等で事前に設定されていて、200kW強制パワーの縛りがなくなるので内燃機関だけで走っても構わないことになります。鈴鹿のS字は内燃機関の出力だけで走っても抜かれることはあり得ないので、みんなS字ではひたすら内燃機関の余剰出力で回生しまくる『充電ゾーン』になってました。1に充電2に充電3に充電。
・クセ強の話に戻ります...
もちろんこういう変なクセは減速時も回生ブレーキの兼ね合いで起こりますし、俗にスーパー クリッピングと呼ばれる全開区間終盤でのブレーキを踏んでもいないのに起こる減速や、スロットルの中間領域で操作している際のパーシャル回生と呼ばれる余剰エンジン出力による回生など、従来の車の動きとは根本的に違う箇所が非常に多いです。決勝だとエナジー残量の具合でコーナーへの進入速度が全然違うので、ブレーキをどこで踏んだらよいのかも一定ではなくバラバラなはずです。車載映像にブレーキ踏力の表示があると分かりますが、鈴鹿でも全然ブレーキに触らずスロットルを戻すだけでシステム側による回生がかかって減速して車が走ってるんですよね。
コーナーでの走らせ方は去年とは全然違う、スロットル操作に対する車の動きも今まで乗っていた車の常識と違いすぎて何か変、ブレーキを踏んだら気持ち悪い、というかコーナーでブレーキ踏んでないのになんか勝手に減速して普通に曲がってる、そういう車にいきなり変わってしまいましたから、これは一般論になりますが去年までの車を深く理解して馴染んでいた人ほどなかなか適応が難しいし、見方を変えると去年までの車がその人の運転と相性が良かったから速かったという場合には、今年の車はどうやっても全然上手く乗れない最悪の相棒になっているおそれもあります。
アントネッリは若いのでたぶんシミュレーターにも慣れ親しんだ世代、グラウンドエフェクト車両にそこまで走り方を引っ張られておらず、新しい車への適応もすごく上手かったしひょっとしたら元々こういう車の方があっている走らせ方だったかもしれないので、これがそのまま選手権でのラッセルとの明暗になっているというのはいくらか関係しているだろうと思います。高速コーナーの手前やコーナーの中で回生を行うので、そもそも去年までは腕が問われた高速コーナーが全然つまんないコーナーに変わって腕の差が出にくい、というのもあるでしょう。
アントネッリに関して言えば去年の段階から予選を見ていて、他の選手と比べるとシフトダウンの際に回転数が高い、昔のNAエンジン時代のドライバーみたいな使い方をしているような印象があったんですが、今年からの規則だととにかく回生のためにやたらと高回転を維持することが求められるので、そういう部分でも今年の規則が合っているように思います。燃料を少しでも無駄にしないために低回転域で変速するリズムに慣れた人には、意外とこういうのはリズムが狂って乗りにくいです。
細かい規則の条文は知らない方が幸せだと私も思い始めましたが、実際にトラック上で起きている出来事の背景にどういったことが関係しているのか、というのを考察するのは好きなのでやっぱり多少の知識が必要でした。ところが規則がどんどん変わる上に解説も微妙に合ってるのか正しいのか分からん場合があり、その一次情報を求めて規則書を読んでも該当箇所が分からないので非常に困ります()とはいえ、ご覧になる方も多少なりともこういうことは知っておいて観戦した方がより面白いのと同時に、短絡的に選手やチームを批判するような人に惑わされずに済むのではないかと思います。
・他にもあるぞヘンテコムーブ
俗にヨーヨーゲームと呼ばれる事象、基本的には事前設定された電動アシストの理想的な配分を無視してドライバーがブーストのボタンを押すことで電動出力を一気に使って追い抜き、しかし抜いた時にエナジーを使い切ったので今度は相手が同じことをしたら抵抗できないから『行って来い』になるところから生じています。
ただどうもこれだけではなくさっき書いた200kW強制規則も絡んでいて、追いかけてるドライバーが前に追いつき、お、これは次のコーナーの立ち上がりで狙いたいな、近寄りすぎてるからちょっと距離を開けて、、、とやった時にスロットルを一度戻してまた踏みなおしたら、本人はそんなこと望んでないのにフルスロットルを一旦やめてまたフルスロットルにしたことで勝手にまた200kWアシストが強制的に始まってしまいます。
そうなると無駄にエナジーを消費して次のコーナーを立ち上がったら思ったほどエナジーが残ってないとか、急に200kW足されて加速したからなんかよく分からんけど追いついて、一方で前の選手はスーパークリッピングで回生してるもんだから追突を避けたら間違って抜いちゃってヨーヨーになった、とかいうことも起こるようです。ヨーヨーゲームは詳しくない人には追い抜きがたくさん見れて単純に面白く見える反面、詳しい人には茶番にしか見えないので、何を大事にするのかで意見が180度変わっちゃうんですよねえ。
また、どうやらエナジーストアが満充電状態になってしまうと、それ以上MGU-Kに向かって余剰な出力を回すことができないので破損を防ぐため内燃機関の出力に制限がかかってしまう仕組みらしく、たとえばスタートでは当然ながら満充電状態にしておきたいんですが、ヨーイドンの瞬間に本当に100%になってると内燃出力が落ちていて加速が悪い、ということが起こります。100%に届かないギリギリで上手く調整するという意味の分からん仕事が必要です。
またレース中でも、たとえばスパではターン1から先で全放出してやろうと4MJを貯め込みたくなりますがこれをやると内燃機関だけで走っている部分の加速が鈍く、むしろ最終シケイン前後でもちょろちょろと電力を使って満充電を避けた方が内燃機関も目いっぱい仕事してくれて全体で速い、ということがあるようです。F1GPニュースでの川井ちゃんの受け売りですけど川井ちゃんの説明が拙いので意味分からんかった人もいると思います()
このあたりの仕組みや最適な使い方に関してまだ全チームがきちんと把握しきれているわけではなく、走ってるうちに「あれ?こっちの方が速くね??なんで???」みたいな状態と思われますが、本来F1ってこういう規則を巡る化かし合いとかを面白がって見る人も多い競技なので、そういう部分が伝わればまた違う側面から楽しめる方も増えるんじゃないかと個人的には思います。それを通り過ぎてあまりに複雑で熱心なファンにすら『細かすぎて伝わらないF1選手権』になっているのも今のF1の課題かなあと思います。
あ、ちなみにメルセデスはパワーユニットのランプダウンをなんとか避けて予選で最大限MGU-Kを回すために、最初は規則が想定していなかったような緊急的な条項を利用して少しだけ利益を得る方法を編みだし、これがバレて封じられたら今度はスロットルを一旦戻してまた踏むさっきの話で利益を得られないか探ってるみたいですね。
満充電状態で最終コーナーを立ち上がってアタックに向かい、普通に走ると途中からランプダウンで出力が落ちて行くところ、途中の程よいタイミングで一度スロットルを全閉して踏みなおしたらまた強制200kWルールに従ってMGU-Kの出力が復活するので、普通に走るよりも長い時間電動アシストに頼れる、という冷静に考えたら単純な考えです。これは一度スロットルを戻すせいで利益がかなり微妙らしいですが、たぶんシミュレーションして上手く使える開催地の目星を探ってるんじゃないかと思います。
・RBPTフォード最強説
パワーユニットの規定でもう1つ注目されたのはADUOと呼ばれる言ってみれば救済措置、2014年にV6ターボ+ハイブリッドのパワーユニットが登場した際にメルセデスAMGが圧倒的な性能を誇ってしまって数年間は全く他社が太刀打ちできなかったことから、今回の規則では運営側が性能を測定して遅いメーカーには追加の開発と予算枠を与えるというもの。そしてある種の懸念通りまたもや開幕からまずぶっちぎったのはメルセデスだったので、当然メルセデス最強!と思ったら最初の測定結果公表で1番と評価されたのはRBPT-フォードでした。普通は「あなたのエンジンが最高評価ですよ」と言われたら嬉しいものですが、これにはレッドブルも困惑。
性能はトルク センサーなどを用いて実際の走行中に測定した数字を分析し、あくまで内燃機関の出力に限って出されたものなので電動アシスト機能を効率的に使っているかどうかは関係しません。たしかにRBPTは想像以上に開幕からよく走っており、ホンダと一緒に戦っていた時代に得ていた知見もきっとうまく活用したんだろうなと思うので遅いことはないと思うんですが、さすがに1番だと言われたら疑問の声が噴出。
フェラーリは結果発表からほどなく最初の改良型パワーユニットを投入しており、最初から自分たちが恩恵を受けられるとある程度認識していた可能性が指摘されています。彼らは小径ターボを使用していて操縦性に優れる、と言われていましたが実際は出力をあえて上げないことで追加開発の機会を得ることが最初からの目的だったのではないかという説まで浮上しているようです。
そしてメルセデスに関しても、性能で圧倒しているからわざと性能を下げて走ってたんじゃないかとか、いやいや開幕前の圧縮比騒動で規則に対応したから性能が落ちたんだとか色々言われています。また開幕からしばらくすると、排気管の後部に規則上の解釈でなんやら上手いことすると小型の空力部品が置けることにみんな気が付き始め、排気を利用してダウンフォースを稼ぐような衝立みたいな部品が登場してきましたが、ひょっとしたらこれもダウンフォースを得つつ排気効率を下げてわざとエンジン性能下げてるんじゃないか、なんて話まで浮上しました。
いつの時代も性能調整のような制度があれば必ず駆け引きがあり、そしてその駆け引きは性能の高い人ほど自由度があるものです。どれにどの程度の信ぴょう性があるのかはさておき、こういうのはいかにもF1らしくてちょっと笑えますね。ホンダは三味線など弾いておらずマジで遅いだけです。
・酷評、AMR26
アストン マーティン ホンダが期待を込めるAMR26ですがご存じの通り開幕からまともに走れず『ついにレースを完走できた(≧▽≦)』レベルからのスタート。車体が悪いのかパワーユニットが悪いのか、というのは前回のF1雑感記事でも色々と書きましたが、4月28日に発売されたオートスポーツ No.1620では各チームの開幕直後の時点での車体について様々な考察をした特集記事がありました。この中で競争力に大きな影響を与えるフロント サスペンションに関して識者の方の意見はというと
「リンクレイアウトの読み解きにかかったところで『どう動くのか?』と首をかしげてしまった」
「作動効率がおそろしく悪く、機構学として非常識」
「サスペンション設計者としてありえないミスを犯している、失敗作である」
と酷評されていました。私はサスペンションに関してはプッシュ ロッドとプル ロッドの違いが何回聞いても覚えられないレベルのド素人ですが、エイドリアン ニューエイの車両設計が空力性能第一であることは良く知られているのでさもありなんという感じ。異常振動問題の一端がサスペンション側にありそうなことがうかがえます。
そんなアストンマーティンはちまちま改良してもしゃあないのでほとんど開幕から車体の改良を行わないままシーズンを進めてビリを彷徨い、そして第11戦ハンガリーでようやく車体側の改良版を大量投入。ウイング、フロア、リア サスペンションなど大規模な手直しをした車両は低速サーキットのハンガリーということもありましたが他者との差が明らかに縮まりました。といっても実態は他所が開発を進めて開いていた差が開幕の状態に戻ったぐらいの感じなんですけどね。なおフロントサスペンションは変わっていないよう模様。
大規模な設計変更で車両全体に影響するからフロントサスは失敗作でもそうやすやすと変えられないのか、それとも日本の評論家風情には全く理解できない素晴らしい性能を備えているので変える必要が無いのか、理由はもちろん分かりませんがぜひまたオートスポーツさんには解説をお願いしたいですね。第12戦オランダで今度はパワーユニットも新型が投入されることになり、これでどの程度まで近づいて行けるのかが注目ですが全部ごっそり変えるとまた予想していない問題が起きるのは世の常なので、あんまり期待しないで中期的なトレンドを見た方が良いでしょう。さすがにここから下はしれてるので、期間を分散しつつ投資しておけば中期リターンはそれなりに期待できます(謎)
・後半戦への期待
開幕からの3戦ではマクラーレンは完全に出遅れてるしメルセデスのワークスが圧倒的に強いので、表彰台は時々争えても優勝争いはグラウンドエフェクト時代と同じぐらいの時間軸で来年か下手したら再来年ぐらいまでかかるんじゃないか、とか思ってたら第11戦ハンガリーで早くもノリスが優勝してしまって、もう私の想像はことごとく全部裏切られています。
というわけでここからの後半戦も想像を裏切るような出来事がまだまだ起きるでしょうから、もう私は心を無にして変な呪いをかけないように楽しもうと思います(笑)冗談はさておき、2チームの3~4人で優勝争いするのと3チーム絡むのとではレースの複雑さがまるで変わってきますし、レッドブルも含めた4チームは今のところけっこう車両ごとの個性が出ていてレースごとでも予選と決勝でも、なんなら決勝中に使ってるタイヤの種類だけでも勢力図が入れ替わることがありますから観戦中も全然油断できなくて面白いです。
できればアストンマーティンも中団争いに加わってくれると良いなと思いますし、車体の開発が他のチームと比べるとやや停滞しているハースも同様。キャディラックはちょっとオーナーさんのお金の方の問題でアメリカがざわついてるので、チームが突然つぶれたりしないことを祈ります。。。
・虚偽声明文に注意
最後に、たまたまXを見ていたらメルセデスの声明文を騙ったニセ画像が出回っているというのを目にしたので念のため注意喚起です。一応投稿者の名前は隠しときましょう。
開幕からラッセルが時々出力不足で順位を下げて困っていた、その原因は共通バッテリーパックが不良品だったと突き止めた、という内容で信じた人もいたようですが、そもそもバッテリーは各メーカーの製造する部品なので共通ではありません。よく見ると右下にGoogle GeminiのロゴがあるのでAI生成のニセ情報かと思われますが、たぶんこれは元画像に翻訳を依頼したために付いた印、元になった画像がありました。
| マルコがこれを承認したなんて信じられない |
マルコというのはアントネッリのお父さんのことでしょうか。海外の投稿者がこれを投稿していたようです。この投稿者曰くイタリアの知り合いからもらった情報だ、というんですが内容がおかしいので偽物ではないかという意見が多数。チーム側にはこうした公式は声明文も一切見られませんでした。そして有力な手掛かりがありました。
オーストラリアのレプコ スーパーカーズ チャンピオンシップに参戦するレッド ブル アンポール レーシング(トリプル エイト レース エンジニアリング)が出した声明文です。上記声明文と酷似しており、どうやらこれを改変して作られた偽物である可能性が極めて高いと考えられます。この投稿者は「あんたが作ったんだろ」と言われて「俺は作ってない」とあくまで"イタリアの知り合い"から教わったとしているようですが、未だに削除も訂正もしていません。
翻って先ほどのジェミニで和訳したらしき投稿者ですが、もちろん虚偽情報だという指摘が多く寄せられてコミュニティーノートまで付けられたので今見るとまあ信じる人は減ったとは思います。ただ、偽物ではないか、また人によっては元画像を知らないのでジェミニのロゴからこの人自身がAIで作ったデマじゃないかという指摘もなされるなかで『元画像はこれだが、フェイクニュースなのか?』と先ほどの英語版の画像を投稿し、以降この件について触れている様子は感じられません。削除も訂正もされていないと思われます。
間違うことは誰でもあるので仕方ないですが、この方はXではフォロワー約1000人の一方でYouTubeでは約2万人のチャンネル登録者を有して一定程度の影響力を有している可能性があるので、間違えたことはきちんと謝罪・訂正・削除すべきではないかなと思いました。ちなみにこの方はこういう投稿もしていました。
ブラタモリもミュージックステーションも終わっていません。日常的な投稿を見ると承認欲求で年中デタラメ吐いてる人ではないようですが、思い込みできちんと調べないまま書いてしまう人の可能性はあるので、みなさんも安易に人の話を鵜呑みにしたり書いたり広めたりしないように気を付けましょうね。というわけで今回私が書いたこれらすべての内容も、みなさんはきちんと裏取りをした上でご覧ください()


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