NASCAR プレイオフ 第7戦 ラスベガス

NASCAR Cup Series
South Point 400
Las Vegas Motor Speedway 1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
winner:Denny Hamlin(Joe Gibbs Racing/ampm Toyota Camry XSE)


 NASCAR カップ シリーズはいよいよ残り4戦、プレイオフ最後の関門・ラウンド オブ 8となりました。まずは今年最後の1.5マイル オーバルのラスベガスです。来週が神に祈るしかないタラデガなので、プレイオフ選手8人はさっさとここで勝ってチャンピオンシップ4進出を決めるか、万一タラデガで事故ってもポイントでどうにかなる範囲には稼いでおきたいレースです。
 プレイオフに残ったのはデニー ハムリン、ライアン ブレイニー、カイル ラーソン、ウイリアム バイロン、クリストファー ベル、チェイス エリオット、チェイス ブリスコー、ジョーイ ロガーノの8人。手持ちのプレイオフ ポイントにもあまり差が無く、開始時点で1位ハムリンと5位ベルの差はたった8点。7位のエリオット/ブリスコーまで18点差、8位のロガーノが唯一ちょっと離れて28点差。ラウンドオブ8開始時点で1位の選手が当落線から8点しか上にいないというのは史上最少差です。

 ラスベガスは1998年初開催、2017年まではずっと第3戦での年1回開催で、2018年以降は2回開催となってシーズン序盤とプレイオフのどこかしらで開催されてきました。プレイオフは全てラウンド初戦での開催で、2018年・2019年はラウンドオブ16初戦、2020年・2021年はラウンドオブ12の初戦、そして2022年からラウンドオブ8の初戦となっています、出世でしょうか。
 第5戦で開催された春のラスベガスではジョッシュ ベリーが参戦53戦目で初優勝、ウッド ブラザーズ レーシングに歓喜をもたらしファンを熱狂させました。このレースでは合計32回のリード チェンジが発生する大混戦でした。高速トラックではクリーン エアーを得ることが重要で、短い間隔でコーションが発生するとピット戦略が分岐していきます。分岐した戦略が速い人と遅い人の混戦を呼び、その混戦がコーションを呼び、という連鎖になって一向に作戦のズレが解消しない時に思わぬ勝者が生まれることがありますね。
 NASCAR国際映像のテロップだとどのドライバーが何周目にタイヤを換えたのか、その時何本換えたのか、というのがテロップでは分かりにくく、実況解説を聞いてたらある程度分かるんですがこれをAbemaで見ていると日本語コメンタリーは情報不足でよく分からなくなったりするので、自分でも注意しながら観戦するとより深く楽しめます。まあそういう展開にならずひたすら同じタイミングで4輪交換するだけ、という方が圧倒的に多いですけどね。

・ちょっとしたデータ

 Gen7導入の2022年以降となるラスベガス直近7戦で優勝を経験したのは5人。上記ベリーの他にラーソンとロガーノが各2勝、アレックス ボウマンとバイロンが各1勝。つまりチームで見るとヘンドリック モータースポーツが4勝、チーム ペンスキーと提携先のウッドブラザーズが合計3勝ということになります。トヨタ系チームは2019年プレイオフでのマーティン トゥルーエックス ジュニアを最後にラスベガスでの優勝者がおらず、今年の1.5マイルオーバル6戦でも未勝利です。2週間前のカンザスではオーバータイムのリスタートで上位4人を占めていたのに潰しあいになってしまい、誰も勝てずにエリオットに持っていかれました^^;
 当然ながらこの期間の平均順位も上に挙げた人の数字が良くてバイロン、引退したトゥルーエックス、ラーソン、ボウマン、ロガーノが並んでいます。しかし彼らは平均順位2~5位、それを上回って平均順位が最も良いのはロス チャステインで7戦中6戦でトップ10フィニッシュ、うち5戦がトップ5と驚異的安定感です。先週は凡ミスでプレイオフ脱落を自ら招いて酷く落ち込んでいましたが、得意のベガスで立て直すことができるでしょうか。過去にラスベガスのプレイオフ戦ではプレイオフ選手しか優勝したことが無いんですが、空気を読まないスイカ男の劇的な復活を期待です。

 プレイオフ選手ではベルがGen7ラスベガスで2位を2度記録。春のレースでも速かったんですがピット作業でナットを締め損ねるミスがあり、ブリスコーのピット ボックスに入って代わりに締めてもらうという珍事がありました。これが契機となって『締め損ねたらバックせず誰か他所のクルーに頼む』という流行ができました(笑)
 2週間前に同じ1.5マイルのカンザスで優勝しているエリオットですが、カンザスは数字が良かったんですがGen7のラスベガス6戦(1戦は怪我で欠場)ではトップ5フィニッシュなしとこちらはあまり数字がよろしくありません。また、ブレイニーはラスベガスの直近2戦でいずれもクラッシュに見舞われており、その影響もあって平均順位はプレイオフ選手で下から2番目です。
 一番数字が悪いのはブリスコーですが、そもそも去年までは競争力の低いチームだったのであまり参考になりませんね。春のラスベガスは移籍5戦目ということもあり17位でしたが、2回開催のカンザスはいずれも4位、シャーロットでは3位、1.5マイルで不利には見えません。ブリスコーは勝ち残った8人で唯一チャンピオンシップ4の出場経験が無い選手でもあります。

 ちなみに、『プレイオフの7戦目』で優勝したドライバーは過去4年間で3回がその年のチャンピオンになっています。2021年のラーソン、2022年・2024年のロガーノです。また、面白いことにプレイオフ第7戦の優勝者は2020年以降ロガーノ、ラーソン、ロガーノ、ラーソン、ロガーノ、となっており、順番で言うと今年はラーソンになります(笑)ロガーノは2018年も優勝しており、なぜか『偶数年のプレイオフ第7戦』には4連勝中なんですが、奇数年には勝ったことがありません。

・レース前の話題

 かねてからショート トラックでのエンジン出力増加を求める声が上がっていましたが、NASCARのスティーブ オドネルはラジオ番組の中で、来シーズンの1.5マイル未満のオーバルと全てのロード コースでエンジン出力を向上させる予定であることを明らかにしました。マーティンズビルやフェニックスはもちろんのこと、1.5マイル未満なのでダーリントンとナッシュビルもここに含まれます。現在はドラフティング トラックでは510馬力、それ以外の全てのトラックでは670馬力となっていますが、対象となるトラックでは750馬力になる見込みです。でもどうやら「え?全部じゃないの?たった750馬力なの?」という異論は出ているようで・・・^^;

 そして訃報です。ボストン レッドソックスの名選手として知られたマイク グリーンウェルが甲状腺がんのため10月9日に亡くなりました。62歳でした。グリーンウェルは12年間レッドソックス一筋で通算1400安打を記録、1988年にはアメリカン リーグの最優秀選手投票でホゼ カンセコに次ぐ2位となるなど『ミスター レッドソックス』とも呼ばれ、また春季キャンプ地でワニを捕獲して口をテープでぐるぐる巻きにしてチームメイトのロッカーに入れるいたずらをしたことから『ザ ゲイター』の愛称もありました、シャレにならん(笑)

 怪我の影響で出場機会が減少すると、1997年に日本の阪神タイガースに当時のチーム史上最高年俸で入団。多少落ちたとはいえ実績豊富な現役メジャーリーガーの加入は大きな話題を呼びましたが、春季キャンプ中に私用で帰国すると怪我を理由に再来日が遅れ、5月に意欲満々でいきなりデビューから3戦連続で打点を挙げる活躍を見せるも、なんと出場6試合目に自打球を当て、次の試合も出場しましたがその後の検査で右足甲の骨折が判明。するとこれで骨だけでなく心も折れてしまったのか「野球はもうじゅうぶんだという神様からのお告げ」という趣旨の発言を残して突然『現役選手を引退』しました。
 その発言内容、年俸3億6000万円でたった7試合出場、という衝撃も相まって『珍外国人選手列伝』として語られることも多く、とりわけ阪神ファンの間ではネタになるか、あるいはグリーンウェルは禁句になりました。なお、契約内容の関係で3億6000万円が満額支払われたわけではなく、なおかつ後年の話ではグリーンウェルは年俸の一部返納を申し出たもののそれはチーム側から固辞されたとのことです。『1試合で5000万円』『持ち逃げ』というのは正しい指摘ではありません。

 そんなグリーンウェルは現役時代からNASCARが好きだったらしく、野球をやめた後にレイト モデルでレース活動を開始。2006年にはなんと2戦だけですがクラフツマン トラック シリーズに出場し、1周0.5マイルのマンスフィールド モータースポーツ スピードウェイでのデビュー戦はリード ラップで完走して26位でした。と言っても18回もコーションが出る荒れまくった展開が影響し、自身も周回遅れの中でミスってリード ラップ車両をスピンさせるなど荒れたレースの中にいました。
 NASCARの出場はこの2戦限り、2010年にはレース活動も引退したようですが、阪神ファンは名前を目にするたび「おー、あいつ今そんなことしてるんか!」と気にせずにはいられない存在だったと思います。まあ色々と破天荒なエピソード満載の人でした。当時の阪神のチームメイトの話では現役メジャーを感じさせない意欲的な姿勢だったという話もあり、5月の復帰は日本の『こどもの日』に試合に出たいという気持ちがあったとも報じられています。引退も、回復を待てばチームの戦略の迷惑になる、という意図があったともされ、むちゃくちゃなおっさんなのか、すごく真面目だったのか、調べるとなかなか味わいのある選手でした。記憶にも記録にも残るお騒がせ最強助っ人(?)、ご冥福をお祈りいたします。

ーーー以下 10月17日更新分 ーーー

・Xfinity Series Focused Health 302

 エクスフィニティーもラウンドオブ8の初戦。エリック アルミローラ、ジェシー ラブ、コナー ジリッチの三つ巴の争いとなり、残り22周のリスタートからリードしていたのはジリッチでした。しかしジリッチはタイヤを酷使してレース終盤にズルズルになってしまい、残り9周でアルミローラが逆転。今季14戦目の出場となった41歳のベテランが今シーズン3勝目を挙げ、オーナー選手権でカー ナンバー19はチャンピオンシップ4進出を決めました。アルミローラ自身はフル参戦ではないのでプレイオフの権利はありません。

 バーンナウト後は子供たちが駆け寄りました。今回のアルミローラの車はドア上部のドライバー名に自分ではなく2019年に他界したJ.D.ギブスの名前を掲げており、特別な意味を持つ勝利となりました。また、ラブは最後のリスタートからの争いでニック サンチェスと絡んで順位を下げてしまい、レース後に口論になったようです。


・カップシリーズ 予選

 ブッシュ ライト ポール賞はハムリンが獲得しました。2位ブリスコー、3位ベルとジョー ギブス レーシングがトップ3独占。4位にエリオット、5位バイロン、6位ラーソンでヘンドリックが続く3人を占めました。7位からバッバ ウォーレス、タイラー レディック、ロガーノ、タイ ギブスのトップ10。ブレイニーは14位でプレイオフ選手としては最も低い順位です。15位にチャステイン、春のベガスではポールを獲って驚かせたマイケル マクダウルですが今回は18位。最近暴れまくりのカーソン ホースバーは22位です。


・ステージ1

 スタートでリードを奪ったのはブリスコー。ハムリンは無線で「スタートで5速に上手く入らんかった。」と伝えており、たまたまなら良いんですが不具合だと非常に困ります。カンザスでパワステやらなんやら壊れて勝利を逃したばかりなので気分的には間違いなく悪いですね。その後ブリスコーを追い回しすぎたせいか、ハムリンは次第にリアのグリップが無くなって29周で4秒近く離されてしまい、ここでバイロンに抜かれて3位に後退。

 そのままブリスコー大量リードで33周目あたりからピット サイクルとなりますが、そのブリスコー陣営がピット作業で失敗。左後輪のナットがなかなか締まらず3秒以上余分に費やしてしまい、3.5秒差を全部吐き出してバイロンに逆転されました。レディック、ラーソンにもアンダーカットされて実質4位からの戻し作業です。ちなみに今回のラーソンは普段の青/白ではなく黒ベースに金文字というJPS的な配色、グランツーリスモで再現するには抜きデカールが必要で面倒なやつです(笑)
 そのままバイロンの快勝で終わりそうだったステージ1でしたが残り9周、

 現地コマーシャル中の悲劇、ブレイニーが左フロントタイヤのパンクでクラッシュ。右前のサスペンションが完全に壊れており、ピットに戻ると粘ることなくブレイニーは車を降りました。またもやラスベガスでクラッシュのブレイニー、今年もマーティンズビルでの一発逆転に賭けることになるんでしょうか、それと左側のパンクというのはちょっと気になりますね。
 コーションでリード ラップ選手が全員ピットに入り、上位勢に奇策はなく4輪交換。ステージ残り3周でリスタートすると、バイロンは意図的か偶然かゆっくりした出足で後ろのブリスコーにドーン!と押してもらい、その勢いで抜け出して危なげなくステージ1を制しました。2位以下はけっこう激しい争いでしたがラーソン、ブリスコー、ハムリン、エリオット、バッバ ウォーレス、ベル、レディック、タイ ギブス、ロガーノのトップ10でした。プレイオフ選手、ブレイニー以外全員得点。シェイン バン ギスバーゲンが12位と健闘しています。

・ステージ2

 上位勢はステイアウトして87周目にリスタート。またバイロンはブリスコーに押してもらえるかと思ったら、位置関係が悪かったかふらついてスピンする寸前でした。勢いを失ったバイロンは3位に後退しラーソンがリーダーとなります、ごっつぁん。
 リスタート後しばらくは上位5人ほどが等間隔でしたが、徐々にラーソンが引き離していって25周で約1.8秒差を構築。そのまま115周目/ステージ残り50周あたりからピットサイクルとなり、サイクル後もラーソンが実質リードを守ります。一方このピットではエリオットのピットクルーが失敗、外した右前輪が思ったより右に転がってしまい、お隣さんまで行ってしまったのでアンコントロール タイヤでパススルーのペナルティーです。最近はわりと運営の判断が緩いこともあってアンコントロールタイヤを受ける人って少なかったですけどねえ。

 JPSラーソンがそのまま残る周回を快調に走ってステージ2を制し、レディック、バイロン、ハムリン、ブリスコー、ベル、ギブス、ボウマン、ロガーノ、ホースバーのトップ10。ボウマンはステージ終盤に非常に力強い走りを見せ、ロガーノの方は逆にタイヤが潰れる寸前でズルズル、放送席では「ブレイニーと同じことになるのでは。」とかなり心配されていました。

 またエリオットは必死に走ってなんとかフリー パスを手にし、ギスバーゲンはステージ2も引き続き安定して11位に入りました。チャステインが意気消沈したように全然上がってこないので、今日は常にトラックハウスの3人で最上位ですね。

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションで当然みんなピットへ。大きな動き無く173周目にリスタートしました。リスタート直後にハムリンがラーソンを狙いましたが、失うもののないレディックがこの争いに加わるとなんとなーくハムリンにとって邪魔な存在になってる感。ハムリンはこれで一歩後退、レディックも数周にわたってラーソンを煽った後に攻めすぎた反動かバイロンに抜かれました。攻めすぎるとすぐタイヤの温度が上がってる感じがレースを通じて見受けられます。一旦温度が上がったら5周以上は丁寧に使って温度を下げてあげないといけない様子ですね。
 陽が傾いてきてターン1~2が日陰となる中でラーソン、バイロン、レディック、ハムリン、ベルのトップ5が1秒ほどの差でひしめく争い、ブリスコーはリスタート時の争いで軽く壁に当たってしまい、車の感触が変わってしまってここについていくことができません。それにしてもラーソンの車、日陰だと見にくいな(笑)

 ステージ2までと比べると接戦のまま周回を重ねますが、それでも30周ほど走行するとロング ランでの差が見え始めてラーソンが後続を引き離し、ここでもやはり2秒ほどの差を築きました。そして210周目あたりから最後のピットサイクルとなります。調子が悪いブリスコーが早めに動いたので前の人も反応せざるを得ず、まだ50周以上あるけど入るしかないという感じです。
 ラーソンも後ろが動いたのを見て215周目にピットに入りますが、隣のエリック ジョーンズがピット作業中だったので自身はピット ボックスに斜めに入ることになり、これが響いたかバイロンにアンダーカットされてしまいました。実はラーソンは1周前にピットに呼ばれていたのに無線を聞き取れず「何て言ったの!?」と聞き返してる間に入り損ねたことが後に明らかになります。F1など他のカテゴリーでは『ピット』は単語が短くて聞き逃しやすいため『ボックス』というちょっと長くて聞き間違いしにくい単語を選ぶんですけど、NASCARはみんな「ピット」と指示を出してますね。急いで連呼すると「ピッピッピッピッ!」みたいになります。

 バイロンは路面温度が下がるこの時間帯に向けて車を合わせこんでいるという話ですが、アンダーカットを成功させるためにけっこう攻めたはずなのでロングランでタイヤ性能が落ちないかが注目点、と思ってたら232周目に画面に映ってない中でリード チェンジが起こってしまいました。バイロンがターン2でズルっと滑っており、本人も無線で「事故りかけたけど、まだ行ける。」やっぱり攻めすぎてリアがちょっとオーバーヒート気味でしょうか。
 USAネットワークはバイロンがさっき滑った時のリプレイを繰り返し放送、

リー ディフィー「ウイリアム バイロンは『事故りそうだった』と言ってました、しかし・・・」
ジェフ バートン「ターン4でまさに今事故だ!大事故だ!」


・・・は?(;・∀・)

 映っていないところでバイロンがクラッシュ。ピットに入ろうとしたタイ ディロンに、まさか入るとは思っていなかったバイロンがほとんど減速せずに衝突していました、衝突音がヤバい。信じられない形でプレイオフ選手に本日2人目の脱落者です。バイロンからするとピットサイクルはとっくに終わっているので、今頃ピットに入る選手がいるとは想定してなかったし情報も無かったとのこと。
 ウインカーもピット誘導路もないNASCARでは、まずドライバーが窓から手を出して後続に合図するのが基本原則。ここにスポッター同士で連絡を取り合って事故を防ぐことが習慣としてあるようですが、今回はディロンが手で合図を出さずライン取りとしてもブレーキを詰めに行ったためインベタではありませんでした。そして最後の砦となるはずのスポッター・ジョー ホワイトは「あっちのスポッターに入るって伝えたけど全然通じてなかった!」。何が原因で話が通らなかったのか分かりませんが、結果としてシボレー同士でチャンピオン候補を潰してしまったわけですから間違いなく反省会でしょう。

 このコーションでリードラップ選手がピットに入りますが、ここでいよいよ勝負とばかりブリスコー、ロガーノなど複数が2輪交換に打って出ました。ラーソンは4輪交換で2列目から。
 245周目/残り23周でリスタート、しかしタイヤ戦略が入り混じる中で2列目がいきなり3ワイドになってしまい、その後ろのこれまた3ワイドの争いで連鎖的な接触が発生。ギブス、ギスバーゲンの車両が中破する多重事故になり、遠く離れた場所にいたコディー ウェアーはバンクを落ちてきたギブスの車が直撃して一番酷い壊れ方をしました^^;

 ちょっと上位勢の人数が減って残り14周でリスタート、1列目のブリスコー/ロガーノに対して2列目は4輪が新しいボウマン/ラーソン。この2人は出遅れたのか意図的か分かりませんが、前の2人と少し距離を空けてのリスタートでした。これは変に近寄って乱気流の影響を受けないようにしつつ、有利なタイヤを活かしてターン2から先で勝負するような雰囲気でしたが、なんと3列目のハムリンが大外ラインでラーソンに並びかけました。これで道幅を自由に使えないラーソンは前を追うことができません。ボウマンも翌周にロガーノの乱気流を食らってターン4で失速し、ブリスコーにとっては後ろが争ってくれる絶好の展開です。
 この後は自力で勝るラーソンが2位まで挽回しますが、ブリスコーに仕掛ける前にハムリンがまたもやちょっかいを出してくるのでまずは残り7周で2位争いが先に勃発。やたらと外ラインで速いハムリンは2周ほどかけてラーソンをかわすことに成功すると、そこからたった半周でブリスコーを捕まえました。そして残り4周、ターン2の出口で完全にブリスコーを振り切ってハムリンがリードを奪い返すと、そのままチェッカー フラッグを受けました。ハムリンがチャンピオンシップ4進出を決定するとともに、節目の通算60勝目を挙げました。
 

マーティー スナイダー「60回目の優勝、ラスベガスで達成しました。チャンピオンシップ4へようこそ、デニー ハムリン。レーストラックを一周しながら目に涙が浮かんでいましたね。まだ涙が残っていますけども、60回目の優勝を祝った時、お父さんのデニスさんのことをどれくらい考えていましたか?お父さんのためにこの優勝を成し遂げたかったですよね?」

ハムリン「ええ、本当に大きな意味があります。こういう時はだいたいファンの皆さんにあれこれ文句を言うところですが、今日は違いますね。皆さんには本当に感謝しています。(普段よりも歓声が多くブーイングは少な目、ハムリンは涙ぐむ)いやあ、もちろん、父と故郷の家族に報告したいですね。ラスベガスに駆けつけて60回目の優勝を願ってくれた友人たちにも。まさかこんなことになるとは思っていませんでしたよ。最後の10周、全力で走り続けて優勝を成し遂げました。」

マーティー「どうやって成し遂げたんでしょうか?できないかもしれないと思っていたわけですよね?」

ハムリン「本当に、クリス(クルー チーフのクリス ゲイル)は最後のピット ストップで素晴らしい仕事をしてくれて、車を完璧な状態に仕上げてくれました。僕にできることはただ車の力を出し切って、ただひたすら突き進むだけでしたね。失うものは何もないって感じでした。とにかく突き進んで、今すぐチケットを手にしようと。いやあ、最高です。」

マーティー「チャンピオンシップ獲得のチャンスがまさに今だというところで、献身的な姿勢についてお話を聞いてたんですけども、今週はシミュレーターで7時間も練習し、あらゆる努力を注ぎ込んできました。でも、このトラックはこれまで当たり外れが激しい場所でした、今日実現するなんて思ってなかったんじゃないですか?」

ハムリン「もし昨日聞かれたらできないと答えていたでしょう。ただ、このチームの見事なアジャストを本当に誇りに思います。ピットクルーは一日中素晴らしい仕事をしてくれました。ampm、彼らと組んでレースをするのはまだ2回目なんですけど、新しいスポンサーが付くと大抵は一緒に勝てるんですよね。トヨタ、ジョーダン ブランド、シェイディー レイズ、コカ-コーラ、スポート クリップス、プログレッシブ。ええーっと・・・もう何と言ったらいいか分からないですね。本当に予想外で、最後の15周は勝てるとは思ってなかったんでね。もうとにかく行くだけでした。」


 2位は速すぎるハムリンに脱帽したものの、最大に近い点数は獲れて手ごたえはあったラーソン。3位からベル、ブリスコー、レディック、ロガーノ、ボウマンと続き、8位には地元ラスベガス出身のカイル ブッシュ。ダーリントン以来6戦ぶり・今季9度目のトップ10フィニッシュでした。9位ライアン プリース、10位はなんと34位スタートから追い上げたブラッド ケゼロウスキー。RFK レーシングはクリス ブッシャーも12位にいて上々の結果でした。
 チェイスはピット作業の失敗で集団に入ってしまった流れを取り戻すことが出来ず、終盤のリスタートも上手く行かずに18位止まり。チャステインは撮れ高なく23位、春の勝者・ベリーも影が薄く1周遅れの26位。スポット参戦のキャサリン レッグは6周遅れですが事故リタイアが多かったので31位となりました。このレースを終えてプレイオフの争いはこうなりました。NASCAR公式ではせっかくなので次戦の開催地・タラデガの春のレースで各ドライバーが何点獲ったかを併記していました。


 ブレイニーとロガーノあかんやん(笑)バイロンもトップ5は確実なレースが一転、ステージ ポイントを稼いだとはいえここまで来るとプレイオフ選手はみんなそつなくステージで同じように稼いでいるので、レース結果がそのまんま点差に表れて15点差となりました。

 ある程度想定された通り、ヘンドリック vs JGRというレースでしたがハムリンの最後の速さは圧巻でした。ハムリンはアンダーグリーンでのピット作業ミスが響いて順位を少し下げており、その前のリスタートでは5列目でした。しかし前方の多重事故を避けたことで3列目、そして異様に大外ラインで速さを見せて同じタイヤ条件のラーソンをぶち抜きました。見ていて私はリスタート数周で「あ、これはブリスコー逃げ切ったな。」と思っていたので、こんなにあっさりと追いついて抜いてしまったのはけっこう衝撃でした。
 なかなか3列目からリスタートして、しかも速いラーソンが前にいてそこそこ乱気流を受ける状態から前には出れないので「勝てると思っていなかった」という話になるんだと思いますが、その前の10列目リスタートならさすがに無理だったでしょう。ラスベガスは周囲が砂漠なのであまり走行していないラインは砂っぽくてグリップも低いですし、大外はけっこう賭けに近いライン取りだったと思います。レディックがちょっと使ってた気もするので、ひょっとしたら従業員が走っていてくれたのも効果があったでしょうか。

 で、ハムリンが回避した多重事故は誰が悪いというものでもなく起こってしまう類の接触でしたが、その中心付近にはギブスがいました。ギブスとハムリンと言えばニューハンプシャーではチームメイト同士で足を引っ張り合って内紛一歩手前の状態になりましたが、今回はギブス君の積極的すぎる走りが結果としてハムリンの役に立ったわけです。でも、事故原因の5%ぐらいは、ターン1に向かってベルが左に切り始めている時に、ギブスが前方の争いに意識が行き過ぎて車が右を向いていて接触した点にもあると思うので、今度はベルから小言が飛んでくるかもしれません。おじいちゃんの不安は尽きませんね

 そして次戦は今年最後のドラフティング トラック・タラデガがやってきます。タラデガはネタバレしたらなーんにも面白く無いので、情報管理はくれぐれも徹底しておきましょう。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ハムリンは、60勝を逃したカンザスではレース後うなだれてましたが、最高のタイミングでメモリアルウイン。とは言え、ブレイニーとバイロンのリタイアは衝撃で、バイロンは思わず「痛いッ!」と思わず叫んでしまいました。それにしても、ゼイン・スミス、チャステイン、バイロンと今後、散々こすられるであろう、クラッシュが続いて、タラデガでは、どんなクラッシュが出るのか(おい)と無責任に思いますが、いくらハムリンが強いとは言え、44歳。ここまでの流れからすれば、ここでチャンピオンになるしかない、と思いますね。マーク・マーティンが40勝で、無冠。オーナーとして著名なジュニア・ジョンソンを除けば、マーティンから上は、全てチャンピオン経験者。37勝のロガーノが3度チャンピオンになっているのを考えれば、今年こそ、と繰り返し強調しておきたいです。SVGが潰れ、しれっとカイルが8位に入っていたのには、少し笑いました。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 バイロンは見ていて「いてえ!」と言わずにはいられない衝撃と音でした。タラデガも最初から遺恨持ちが多いせいでなんか無駄な接触とかありそうでそれが気になりますね。ハーブストとかもけっこうあっちこっちでやらかして恨み買ってる雰囲気がありますし。
 ハムリンは雰囲気からするとお父さんの状態があまり思わしくないように見えるので、そういう点でも今年は冗談抜きに勝ってほしいかなと、ちょっと残り3戦は初めて彼を本気で応援したい気分になってきました。もちろんレディックのお子さんも心配なんですけどプレイオフからは脱落してしまってますし・・・
アールグレイ さんの投稿…
最近コメントが遅れがちになり申し訳ありません。

グリーンウェルさんもダメ外人の代表格扱いをされていますが、確かに日本球界を舐めていたなどの悪い印象はほとんど聞かれないことに対してはまだ救いが残ると思います。

ラーソンのスキームはZac Brown Bandいうバンドとのコラボスキームの様ですがいつものトリコロール以外にもお洒落で良いですね。
確かにJPSに見えますし、そのままダーリントン戦のスローバックスキームになってもおかしくないです。

ハムリンはこういう終盤に強いのが大ベテランの経験を生かしているんでしょうね。
カップ戦通算60勝はハービックと並んで、歴代10位になりましたしそろそろチャンピオン未経験者での最多勝という記録を卒業しても良い頃でしょう。
これでチャンピオンシップ4まで行ったのは4回目ですし、前も書きましたがオーナーとの両立を考えても本当に今年が「アレ」のラストチャンスになってもおかしくないかもしれないと思うので、本当に応援したいです。

ちなみにハムリンの今回のスポンサースキームであるam/pmのコンビニは昔東京で1回見た記憶がありますが、JGRではたまにケンゼスのスキームになっていたサークルKと一緒で、日本ではファミリーマートに統合されてしまったのは残念でした。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 いえいえご自由に参加してください、こちらはコメントがあるだけで大満足ですので(・∀・)
 ampmはどっかにお店があって見ていたような気がするんですけど、調べるとミニストップとかサークルKとかと勘違いしてたりして「ありそうで実は無い気もするコンビニ」という印象でしたね~、テレビCMでは見てたはずなんですけど。
 ハムリンはお父さんのことも心配なので今年はさすがに勝ってほしいんですよねえ、そう甘くない世界ですけど、時にはそういう巡りあわせも起こる世界なので祈るような気持ちです。