NASCAR プレイオフ 第6戦 シャーロット

NASCAR Cup Series
Bank of America ROVAL 400
Charlotte Motor Speedway ROVAL 2.28miles×109Laps(25/25/59)=248.52miles
winner:Shane van Gisbergen(Trackhouse Racimg/WeatherTech Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR カップシリーズ プレイオフ・ラウンドオブ12の最終戦はシャーロット。オーバル部分と内側のロードコースを組み合わせた冗談のような正式名称ローバルです。2018年に初開催されて今回で8回目、最初の3年間はラウンドオブ16の最終戦、以降はラウンドオブ12の最終戦となっており、せっかく長い時間をかけて苦労して戦ってきたプレイオフの大事な積み重ねをロードコースでぶっ壊すという大役を担っています(?)
 ローバルは昨年にレイアウトが一部変更されて、ロードコースからオーバルに戻るターン7と、最終シケインであるターン16・17がいずれも鋭角になりました。特にターン7はミサイルしてくださいと言わんばかりのコーナーで、ドライバーの自制心が問われます(笑)
いや絶対曲がられへんて・・・

 運営の狙い通りにこの鋭角ターンで色々と発生して昨年のレースは事故だらけという感じ、縁石やら他人の車やらで車がジャンプしまくりました(笑)ちなみに昨年の自分の記事を見たらどうやら風邪を引いて、SARS-CoV-2だったらヤバいとかなり焦っていた頃だったようです。今はインフルエンザが早くも流行しているそうですのでみなさんお気を付けください。
ミスるとジャンプするターン10

・ちょっとしたデータ

 昨年のレースはラーソンがかなりの圧勝でした。ローバルでは2021年にも勝っており通算2勝。ただ今シーズンのロードコースはシカゴ市街地の13位以外全て32位以下とプレイオフ選手で最低の成績になっています。チェイスエリオットもローバルは2勝していますが2019年・2020年の話なのでちょっと古め、ここ数年繰り返し書いていますが、Gen6時代は圧倒的にロードコースで強かったのに、Gen7のロードは平均順位は良いんですが1勝もしていません。一昨年の優勝者はA.J.アルメンディンガー、2022年はベルでした。
 直近3回のローバルで全てトップ10フィニッシュしたのはアルメンディンガーだけ。トップ5フィニッシュは彼とベル、カイル、バイロンの3人が2回記録して最多タイ、当然平均順位でも上の方に来ています。プレイオフ選手ではハムリンがあまりローバルと相性がよろしくなくて、昨年はレディックに体当たりを食らった影響もあって14位、一昨年37位、2022年も13位。2021年に5位だったのが唯一のトップ10フィニッシュです。安定感が光るブレイニーもロードコースはそこまで得意ではなく、現在ロードコースで23戦連続トップ5フィニッシュなし。既に勝ち抜けが決まっていてよかった。
 

 現在プレイオフ争いはこうなっていますが、過去にラウンドオブ12の最終戦で『優勝無し』でポイントによって9位以下から逆転して次ラウンドに進んだ最大の得点差はチェイスが2019年に記録した22点差。また19点以上離された状態から優勝して逆転進出したのは2014年のケゼロウスキーと2022年のベルでした。ただ、ここまで大差で無ければけっこうこのラウンドでは逆転が起きており、過去11シーズン中8シーズンでラウンドオブ12は誰かしら1人が9位以下から逆転で8位以内に滑り込んでいます。今年の場合ウォーレス以下はかなりの奇跡的、チャステインはまだ現実的に見こみありという数字ですかね。

 そして何と言っても今シーズンのロードコースはギスバーゲン。ロードコースが今年6戦ありますが、最初のレースとなったオースティンを落としたものの以降のレースは無敵の4連勝中。カップシリーズ歴代最長、ジェフ ゴードンが記録した6連勝に迫っており、記録を伸ばした状態で今年のロードコースを終えられるのかが注目です。なお今週使用されるタイヤはシーズンを通してロードコースで使用されてきた実績のあるタイヤです。

・Craftsman Truck Series Ecosave 250

 裁判の話題ぐらいしか今週はなさそうだったので早速併催レースへ、クラフツマン トラック シリーズはここからプレイオフ・ラウンドオブ8です。レースはポールシッターのコリー ハイムがいきなりターン1で貰い事故によりクラッシュ^^;
 以降はチームメイトのブレント クルーズがレースを優勢に進め、ロードコース作戦で順調にレースを支配して初優勝は目前。ところが残り3周で「燃料が切れた。」と不吉な無線、さらにチームメイトのトニ ブライディンガーがターン5の外側、高速で危険な箇所で車を停めてしまいコーション発生、オーバータイムになりました。もちろんクルーズは給油とタイヤ交換でピットに入りますが、ボロボロの車で順位を挽回してきていたハイムはステイアウト。そしてオーバータイムをリスタートから逃げ切って優勝しました。

 これでハイムはトラックシリーズ年間10勝の最多記録を樹立するとともに、3年連続のチャンピオンシップ4進出を決めました。2位にクルーズ、3位はジオ ルジェーロでトライコン ガレージが1-2-3フィニッシュでした。

・Xfinity Series Blue Cross NC 250

 エクスフィニティーはラウンドオブ12の最終戦ですが、今週もジリッチ強すぎ。レースの大半をリードしてこちらも今季10勝目、プレイオフ ポイントをさらに上乗せしました。怪我人なので屋根から外に出て、降りる時もフロント ウインドウを滑り台のように滑り降りてとても慎重でした(笑)

 一方で次ラウンド進出を巡る争いには最後に大きなドラマ。10位を走っていたサミー スミスはこのままだと点数が足りないので残り4周で大博打。『もしコーションが出てオーバータイムになったら有利』と先回りして何も起きていないのにピットに入ってタイヤを交換しますが、信じられないことにその直後にセイジ カラムがクラッシュしてマジでコーション発生。これで新しいタイヤで4列目からリスタートできたスミス、優勝は無理でしたが3位に入り、ポイントを争っていたテイラー グレイを1点差で下してポイント8位、次ラウンドに滑り込みました。JRモータースポーツは4人が全員勝ち抜いています。
 一方でグレイの他にニック サンチェス、オースティン ヒル、ハリソン バートンの4人はここでチャンピオン争いから脱落。ヒルは開幕からの15戦中11戦で7位以内に入っていたのに、以降の13戦では4回だけ。インディアナポリスでの危険行為でプレイオフポイント没収&出場停止処分を食らったこともあり、なんか一気にしぼんであっさり敗退しましたね。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュライトポールはレディックが獲得、今季2度目・通算11度目でした。レディックについては生後4か月となる第2子・ルーキーが病気を患っていることが判明し、現在集中治療室で入院中と報じられています。妻のアレクサがインスタグラムに投稿した内容によれば腎臓に問題があって片方が機能しておらず、機能していない腎臓を動かそうと脳が指令を出した結果心臓に異常な負荷がかかって心不全に近い状態になっているとのこと。書いているだけで手が震えてきますが、腎臓の摘出手術を受ける方向であるとしています。
 2位は0.032秒差でギスバーゲン、3位からギブス、ラーソン、ブッシャー、マクダウル、ベル、ブリスコー、アルメンディンガー、チャステインのトップ10。11位ブレイニー、12位ウォーレス、13位バイロン、14位ハムリン、15位チェイス、となぜかここにプレイオフ選手が集中し、17位ロガーノ、19位シンドリックとプレイオフ選手は全員19位以内からのスタートです。情報によると予選でも予想外にタイヤの性能低下が激しかった、とのことで決勝はタイヤを丁寧に使い、かつ作戦上もタイヤの劣化を上手く織り込む必要がありそうです。


・ステージ1

 素晴らしい曇り空()の下でスタート、まずはレディック、SVG、ラーソンのトップ3で落ち着いた展開。後方ではカイルがいきなりターン1の外壁、しかもSAFERバリアではなくコンクリート壁に右前部をぶつけてガレージ送りになりました、カイルファンはレースが5秒で終わって涙目。カイルは9周遅れの34位でした。
 予選は僅差の2位だったとはいえSVGの速さは相変わらず。レディックを追い回すと4周目のターン10・裏シケインでレディックの方がミスって突っ込みすぎました。シケインの脱出速度が鈍ったところをギスバーゲンは見逃さず、最終シケインでレディックをかわしました。
失敗した!

 レディックは2周目から既に「タイヤに気を付けろよ。」と言われていたようですが、見るからに後ろがズルズルしておりタイヤを守れてはいない模様。8周目にまたターン10で失敗してラーソンに抜かれました。そのラーソン陣営も前を行くSVGの走りを注視、とにかく真っ直ぐに車を走らせて滑らせない、という基本を再確認しています。ギスバーゲンはシケインで縁石に乗って、着地した時に横に力を逃がさずにすぐ車が前に進んでるから速いように見えますね。
 しかしタイヤの摩耗はギスバーゲンを含めて全体的に非常に酷いようで、10周目から順にけっこうなドライバーがピットに入ってタイヤを交換。ローバルはフロントストレッチにシケインがあり、ピット ロードは内側を真っ直ぐ走るだけの近道、そのためピットに入って4輪交換しても25秒ほどの損失で済んでしまい、新しいタイヤで取り返すのが比較的容易です。後ろが次々と動くのでギスバーゲンとラーソンも14周目にピットに入りました。
 古いタイヤの選手とは1周で4秒程度ペースが違うようで、SVGは数人のステイアウト組を抜いて20周目には先頭に戻りました。そのままステージを走り切って悠々とステージ1を制し、ラーソン、ギブス、ベル、チャステインのトップ5。マクダウル、ブリスコー、チェイス、バイロン、タイ ディロンのトップ10でした。チャステインはステージポイント6点でロガーノとの差を7点に縮めました。

 アルメンディンガー、ブッシャー、レディックなどはステージ残り3周まで引っ張ってからピットに入る通常のロードコース作戦で上位勢とは違う道を歩んでいます。

・ステージ2

 ステージ中盤でタイヤを換えた選手はステージ間コーションでピットへ、ここでチャステインがピット出口の90度コーナーを曲がり損ねて急停止する珍事が発生し、復帰までの間に15人ほどに抜かれました。ピットを出た順位の基準となる黄色い線より先での出来事ですが、規則ではコーション中に何らかの理由で隊列走行の速度を維持できず順位を下げた場合には、速度を取り戻した際にいた場所がリスタート順位となる規定なので落ちた順位は戻ってきませんでした。とてつもなくもったいない。
あ、曲がれなかった・・・

 30周目、ロードコース作戦のアルメンディンガーを先頭にリスタート、ギスバーゲンとラーソンは6列目から。新旧のタイヤが入り混じって中団の争いが激しくなる中、32周目の最終シケインでホースバーが完全にタイヤをロックさせて止まれずにほぼ暴走、これがシンドリックに命中しました。シンドリックはステージ1でジャスティン ヘイリーに当てられてスピンし既に窮地に追い込まれていましたが、これでサスペンションを壊してしまいガレージ送り。22周遅れの36位でもちろんプレイオフ脱落です。ホースバー、またやっちゃいましたね^^;
サスが曲がって車輪が外れない!

 アルメンディンガーがリーダーのままステージ2も中盤の38周目・ステージ13周目からピットが大忙し、けっこうなドライバーがタイヤ交換に動きました。アルメンディンガーはそのまま走り続けますが、ちょうどこのあたりから明らかにタイヤ摩耗の影響でブレーキ時の安定性が無くなっており、ブッシャーに煽られていました。そして41周目、ブッシャーに抜かれる、前にここに追いついたギスバーゲンに抜かれました。抜かれたところで諦めてアルメンディンガーはピットへ、前を走るとペース配分が分からなくてタイヤを潰す、というのはわりとNASCARあるあるです。
 ステージ終盤にもロードコース作戦で再びピットに賑わい、ベルに対する無線はこの作戦を象徴しており「争ってないからな、丁寧に行けよ。」ロードコース作戦の場合、ステージ終了までの残り周回は順位を下げたり周回遅れにならない範囲でできるだけ遅く走ってタイヤを新鮮な状態で維持するのが大事なお仕事です。

 リーダーのギスバーゲンも残り2周でピットに入ってその座を一旦退き、ステージ勝者はブレイニー。2位にレディック、3位チェイス、そしてまさかの大失敗を取り返すべくピットに入らず走ったチャステインが4位に入り7点を追加しました。ギスバーゲン、ラーソン、ベル、ロガーノ、スアレス、コール カスターのトップ10。
スイカ イズ バック!

 この結果、ロガーノとチャステインの差は3点まで縮まりました。ロガーノはニューハンプシャーで4位に入ってタイ ブレイカーを握っており、チャステインはロガーノより4つ以上上位でレースを終えたら逆転、それより少なければロガーノがポイント8位を守る、ただしチャステインが3位以上ならその差は3つで良いという計算になります。誰か新しい人が勝たなければ、ですが。

・ファイナル ステージ

 ステイアウトしたギスバーゲンを先頭に56周目にリスタート、チャステインとロガーノはともにピットに入って11列目あたりからリスタートです。残り54周もありますのでいつ、何回タイヤを交換するのかが注目。
 リスタートでラーソンを抜いて2位となったベルがSVGに対してギャンギャンに攻め込んでいましたが、58周目のターン5でオースティンディロンがまあまあ派手なクラッシュ、車は動いたんですがタイヤ バリアーがかなり動いてしまったのでコーションとなりました。トッド ギリランドとガシガシやり合った末に押されて事故った模様、速度のわりに痛そうな音がしています^^;
修理作業

 62周目にリスタート、さっきリスタートでベルに抜かれたラーソンがやり返して2位となりSVGへの挑戦権を得ます。SVGはタイヤを守っているのかバランスが変わったのかすごく曲がりにくそうな動きで、翌周の裏シケインでラーソンが前に出ました。しかもギスバーゲンはちょっと抵抗しすぎて失速しベルにも抜かれてしまいます。
 最終ステージは2ストップか3ストップか、というところですが69周目あたりの微妙なタイミングでピットサイクルが始まりました。優勝争いでは71周目にようやくギスバーゲンがベルを抜いて2位となり、ここでベルはピットへ。アンダーカットを狙ったベルですが集団の中に戻ってしまってやや誤算、翌周にラーソンがピットに入ってアンダーカットを阻止します。
 ギスバーゲンはさらにタイヤ交換を遅らせて73周目にピットに入り、当然ながらラーソン、ベルの後ろに回りました。リーダーのラーソンから約6秒差、残りは35周ほど。ここから80周目にベルをわりとあっさり抜いて2位に浮上すると、抜かれたベルはたった13周でタイヤを捨てて84周目にまたピットに入りました、これは3ストップですね。あ、作業にちょっと失敗したぞ^^;
 これに対してギスバーゲンとラーソンは2ストップを考えているようで無反応、トラック上での争いとなります。ギスバーゲンはラーソンを遥かに上回るペースであっという間に追いつき、87周目のターン7でリードを奪い返しました。
 
 ラーソンは89周目にようやくピットへ、このタイヤで17周の走行、残り20周なので基本は最後まで走り切り、あとは展開を見て開き直ってもう1回ピットに入るかどうかを決めれば良い立場です。ギスバーゲンは2周待って91周目にピットへ。ディロンと交錯しそうになりますが冷静に回避しました。ピットを出たらまたラーソン、ベルの後ろに回ってしまいますが、ベルは作戦がズレてるので実質は対象外、ラーソンは3秒ほど前方なのでさっきのタイヤ交換後より遥かに近い場所にいます。これはもう勝てる流れ。
 
 一方ポイント8位争いはチャステインが引き続きなかなか好調で、ちょうどロガーノより4~5つ上位を走っていて逆転も視野に入っていました。ところが87周目に入ったこのステージ2度目のピットで大失敗、ピット速度違反によりペナルティーを受けてしまい順位を下げました。作業を終えて発進した際にギアを選び間違えたせいで完全に走行速度を見誤り、急ブレーキを踏んだものの違反を回避できませんでした。
 念のため補足しておくと、NASCARにはピット速度のリミッターというものは装備されておらず、全て選手が自分の足で自力で速度を合わせています。速度は『〇速で×回転』という形で速度から逆算したエンジン回転数で判断し、ステアリング上のインジケーターを見て『緑色が4つ点灯』といった予め決めた目安に合わせます。ギアを間違えたら当然ながら全然違う速度になり、どうも映像を見ると2速で走るはずが間違って3速に入れた様子。本日2度目の凡ミスですが、パススルーの損失が15秒ほどしか無いのはせめてもの救いでまだここから追い上げるチャンスが残っています。

 優勝争い、96周目にギスバーゲンがわりと強引にラーソンを抜いて前に出ますが、さすがにこれは頭に来たのか最終シケインでラーソンも後ろから小突いて反撃、抜き返しました。ただラーソンが車を使って出したメッセージはわりと明確で、98周目に今度はバックストレッチまで綺麗についていくと、ラーソンはもう内側を空けてリードを譲りました。抜くのは構わん、クリーンに行け、ということですね。
ゴリゴリ・・・


 そしてポイント8位争いにも動き、99周目にチャステインがロガーノを抜いてとりあえず前に出ることに成功すると、ロガーノはタイヤを換えることを決断。チャステインはステイアウトを選択し、作戦が全ての運命を握ることになりました。
 同じ流れは優勝争いにも、2位のラーソンが残り8周でピットに入ってタイヤ交換、元々3ストップのベルにアンダーカットされるので3位に後退します。ギスバーゲンは今さら動けないのでコーションが出ないことを祈りながら走り切るだけ、「右リアタイヤが壊れかけてる。」と無線で伝えてはいるものの、タイヤを換えた2人とのペース差は1周1秒ちょっとなので到底追いつきそうもありません。そのまま2位に17秒もの大差を付けてホワイトフラッグを受けたギスバーゲン、ターン7の立ち上がりでタイヤから白煙が上がったのでパンクでもしたのかとチームは冷や汗をかいたでしょうがアホみたいに滑っただけで、何の問題もなく最終的に15.6秒差を付けての圧勝で今季5勝目を挙げました。いや、問題大ありなんだが(笑)


 一方プレイオフ8位争い、古いタイヤで徐々に順位を下げたチャステインはもうあと1人に抜かれたらアウトの状況、背後にはハムリンが迫ります。ハムリンはなんとなくそんなに無理をしていないので「実はロガーノを勝たせないようにしてたり・・・?」とか一瞬思ったんですが、ターン7で内側を伺うとチャステインがミスりました。この時点で同点=ロガーノが勝ち抜けの状況。仮にチャステインがハムリンを撃墜しても、事故ったハムリンが自分とロガーノの間でチェッカーを受けてくれないと全く意味がありませんので、さすがにやらないだろうと思っていました、

 やるなよと言われるとやりたくなるのか、スイカアタックをかまして最終シケインでハムリンを撃破。当たり前ですが自分もスピンしました。スイカ男はすぐにギアをリバースに入れてバック走でチェッカーを目指しますが、そんなに上手く行くわけがありませんでした。自分ですらロガーノに抜かれて終戦、ピットでの凡ミスが全てでした。


マーティー「5連勝ですよシェイン、でも右リアタイヤに問題があると仰ってましたね。最終周に見えた白煙がそれでしょうか?」

SVG「いやあ、温度が上がり始めてて滑りまくってたんですけど、素晴らしいレースでしたね。カイルとクリストファーの運転は素晴らしかったですし、ちょっと荒っぽくはなりましたけど、いやあ、バトルは最高でした。ウェザーテック シェビーはステージ3の序盤でちょっと出遅れたんですけど、その後のレースでの彼らの働きはすごかったですね。本当に楽しかったですし、イエローが出ないことを長い時間ずっと祈ってましたよ。」

マーティー「5番と20番との激しい争いについてお聞きします。体を張った争いが必要だったと思いますが、あなたはブリストルで『プレイオフを争っていない選手にあんな競り合いをされるのは気に入らない』と仰ってましたよね?」

SVG「ええーっとターン7で軽く当ててしまったら向こうからもぶつけられて、それがきっかけになりましたね。でも全然構わないですよ、楽しかったですしね。彼があまり怒っていなければいいんですけど、見ているみなさんにとっては面白いレースになったんじゃないですかね。」


 マーティーの質問に正面から答えていないSVGでした(笑)2位のラーソンは「2位を獲れてうれしい、ギスバーゲンは本当に素晴らしい。クリストファーとの争いも楽しかった。」とSVGの願い通りそんなに怒っていない様子でした。3位からベル、ブッシャー、そして5位にはなんとマクダウル。2ストップ戦略で上手くタイヤをもたせるあたりはさすがの走りです。プリース、スアレス、チェイス、アルメンディンガー、レディックのトップ10。ロガーノが20位、バック走のチャステインが21位、なんかよく分からんけどぶつけられたハムリンは23位でした。
 プレイオフからはチャステイン、レディック、シンドリック、ウォーレスの4人が脱落。チャステイン以外の3人はレース中も特に「お、これは行けるか!?」という雰囲気を出すこともなく終わってしまいました。
さ、さすがに気の毒に見えてくる・・・

チャステイン「1日をやり直したいですよ。トラックハウス レーシングは僕に多くの期待をかけています。なのにピットロードの速度から戻ろうとして、ピット出口でラインを外れて曲がれなかったんです。もっと余裕があると思って、イエロー ラインまで行こうとしただけなんですけど、それが完全に転落の始まりでした。ピットから出て、2つギアを上げて3速に入れてしまいました。まさに自滅したミスです。本当にひどいですよ。トラックハウスの約200人の従業員、チームメイト、ECRエンジン、この状況を作り上げたすべての人にとって、これは本当に辛いことです。ジャスティンは僕を1番の車のために契約し、運転し、リーダーになるために雇ったのに、僕はその日を完全に台無しにしてしまいました。だから、本当に受け入れられない、受け入れられないです。」
「自分は自動運転じゃないんだから正しい判断をしなければいけないのに、ピットストールから出て目安のライトに近づいたところで2回変速する、ピットロードの端に行ったときに、イエローラインで順位を取ろうとして曲がれない。ただハンドルを切るだけ、すごく単純なことですね。このレベルに到達したのに実力を発揮できないのはひどいですね。ここまで来るために人生の半分をかけて見て、学んで、勉強してきたのに失敗するというのは最悪の気分です。明日は起きてすぐに仕事に戻りますけど、私たちのパートナーや、今私に腹を立てているチームメイト全員にとっては何の励みにもなりません。ハムリンが怒っているのは分かってます、自分がその立場でもきっと同じでしょう。彼は綺麗に僕を抜いて、ちゃんと場所を残してくれていたのに、僕は彼を弾き飛ばした。でも、、、明日は起きて仕事に戻るしかないです。」

守りたい、この笑顔()

ロガーノ「いやあ、みんなが接戦になるって言ってたんでね、もう、ファンのみんなが(大ブーイング)、ん。俺か?誰にブーイングしてるの?やあ、俺まだ生き残ってるよ~。まだ行けるしすごく興奮してますよ。本当に僅差のフィニッシュでした。1ポイント差だったことは分かっていました。最後は同点になるだろうと思っていましたし、ロスはそれを実現するために全力を尽くしてくれるだろうと思っていました。ただ、今日は速さが足りませんでした。プレイオフはドラマチックですよね?ドラマを求めるなら、プレイオフはいつでもドラマに溢れてますよ。
 面白いフィニッシュを期待してましたし、クラッシュする前に同点に追いつくんですからね。だからポール ウォルフを誇りに思います。今日は本当に難しい判断を下してくれました。最後は3ストップでした。最後はオーディブル(アメリカン フットボールでプレイ開始直前に瞬時に作戦が変更されること)みたいな感じで、ちょっとペースの落ち込みが酷かったですね。でも、最後にあの判断を下したことで我々は争いに留まることができました。チームのチャンピオンシップ パフォーマンスとしてもう少し速ければよかったんですけど、全体的にはチームを誇りに思います。まだチャンスはあります。」

 もうこれ以上私が感想を言うことも無さそうですが、SVGはもう見事としか言いようがありませんね。見ている側は「もうSVGええって、ていうかロードコースいらんって。」という感じかもしれませんが、ラーソンもベルも自分より遥かに高い次元にいるSVGにどうすれば追いつけるのか、というのがすごく向上心に繋がって敬意を払っている様子なので、私はそういう刺激というのも大事にしたら良いとは思いますね、ロードコース年間6戦は多いので4~5戦にしてほしいとは思いますが(笑)

 そのSVGの助言によってスアレスもチャステインも明らかに恩恵を受けており、凡ミスが無ければチャステインはたぶんトップ5の車だったと思います。そして2人の助言はSVGのオーバルでの改善に繋がっており、来年スアレスと入れ替わるジリッチを含めてトラックハウスは扱いは難しいけど面白い人材が揃ってますね。当面はチャステインの精神面をみんなで助けてあげないと、なんか明日にも引退しそうなぐらい深刻な顔してましたけど。。。

 作戦的にはチャステインも3ストップが正解だったのかなあと思います。ペース的にチャステインは速かったですから、どっちに可能性があるかと言われたらコーション発生時のリスクも踏まえてタイヤを換えた方が良いと私は思ったんですが、ロガーノの1周後だとアンダーカットされてピット後はまた後ろに戻ってしまうので、できれば絡みたくないというリスク回避もあったのかもしれません。ピットで2回失敗してるからあんまり呼びたくない、というのもひょっとしたらあったでしょうか。まあ何を言っても後の祭り、そもそもピット出口をちゃんと曲がってたらこうはなっていません。自分のミスで生んだ状況で関係ないハムリンを巻き込んだのは、レース後に冷静になって間違いに気づいたのがインタビューから分かりますね。
 そのハムリン、ぶつけられるぐらいなら大人しくチャステインの後ろで安全運転した方がマシで、そうすればロガーノをプレイオフから消すこともできたわけですが、余計な打算までしないし、ちゃんとフェアーに争ったのはなかなか良かったですね。まあ仮にチャステインを抜かずに走ってロガーノを蹴落とした場合、恨みを買ってマーティンズビルで突然の自爆攻撃を受ける可能性があるので危険性はどうやっても完全除去できないかもしれませんけど(笑)
 なお、レース終盤にはハムリンと違って順位を操作するための無線が色々とやり取りされていて数人のドライバーに嫌疑がかけられましたが、今回は競技の公平性に重大な影響を与える行為は確認できなかったとして誰も処分対象にはなりませんでした。ただNASCARは引き続き公平性を阻害するような順位の操作行為は違反行為であると改めて周知しています。昨年のマーティンズビルでも同じメーカーの車両が結託してライバルの行く手を遮る露骨な場面がありました。

 さあ、ロガーノ大監督も絶賛のドラマ溢れるプレイオフはいよいよチャンピオンシップ進出の4人を決める最後の関門・ラウンド オブ 8に入ります。次戦がラスベガス、続いてこんなシーズン佳境には走りたくないタラデガ、そしてブレイニーの家・マーティンズビルの3戦で争われます。私はハムリン、ブレイニー、ラーソン、ロガーノの4人が残ると予想します!全員落ちたらそれはハゲの呪いです!

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
カイルが一瞬で消えたものの、ローバルではいい思い出がないので、瞬時に諦めました。SVGに対して、ラーソンがあそこまで食い下がったのは予想外でした。ただ、エクスフィニティのロードで無双していたAJをスポット参戦であっけなく優勝をさらった記憶はあった(何処かは忘れた)ので、ロードでは「出来る子」と思っていたので、SVGとのバトルは面白かったと。あそこまでやっても、SVGに勝てないのは恐るべき強さだと驚嘆。チャステインは、ピットロードでのやらかしが痛すぎで、ファイナルラップでオーバーシュート。ハムリンが何もしないまま、先行して最後は道連れに。そりゃ、スイカ男も落ち込むでしょう。生き残ったロガーノのインタヴュー冒頭に大ブーイング。さすがにあれは理不尽とは思いましたが。2022、2024とカンザスで優勝して、フェニックスに行き、そのままチャンピオンになっているので、今年もそれを再現したら、完全に脱帽。アンチ・ロガーノを取り下げましょう。推しには出来ませんがw。
まっさ さんのコメント…
今シーズン終了のお知らせ....。
流石に悔しいなぁ...。
昔っから最後の最後やらかす癖は変わらずなのが彼の魅力でもありますが....。
天敵ハーヴィック居なくなってもハムリン居るとまぁ相性が悪すぎまして...。
まだまだチャンスはあるでしょう。
信じて来年もNASCARを観ます!
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ロガーノは今年も成績のわりにしぶとく生きてますが、現地ではプレイオフ制度の変更を検討する会議の中で小規模な制度の手直しではなく「プレイオフ制度廃止」を主張する人が数名いて以前より増えている、という話が報じられています。今年もまたロガーノが勝ったら、プレイオフ終了のお知らせですね(笑)
 プレイオフ制度を作った男・ケンゼスの対極として「プレイオフ制度を終わらせた男・ロガーノ」ってものも彼に合った異名だなとか思わなくも無かったり。
SCfromLA さんの投稿…
>まっささん

 車の速さだけなら確実に勝ち抜けるレベルだったのに、何をあんなに焦ってしまったのか、それこそが彼なのか。たぶんやらかしてるイメージとは対照的に、実は色々考えすぎて失敗しちゃう繊細な人なのかなと思いましたね。とりあえず心置きなく空気読まずにフェニックスで勝ちましょう🍉
アールグレイ さんの投稿…
JRモータースポーツは今シーズンのロードコース全勝という形になりましたね。
ギスバーゲンとスアレスがスポット参戦して勝利したレースもありましたが、ジリッシュが2度の怪我をものともしない勢いで勝ち続けているのは恐ろしいです。

まさかSVGがロードコース5連勝を飾るとまでは思った人は少ないでしょうね。
ラーソンやベルでも敵わないのは驚きましたし、15秒差はいくらロードコースと言ってもNASCARでは滅多に見られない記録だと思います。
本当に来年カップシリーズに昇格するジリッシュに止めてもらわないといけないレベルになりつつありますね。
ただSVGのロードコース完全制覇を見てみたい気持ちもあるだけに複雑です。

チャステインとハムリンの事故はローバル初年度のジョンソンとトゥレックスの優勝争いを思い出しました。
なんかチャステインは勿体無い感じが毎年どこかでありますね。
もう直ぐヘイルメロンから3年経ちますが、浮き沈みの激しさは魅力でもありますが、そろそろムラっ気を克服して欲しい気持ちもあります。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 いくらSVGが速いとはいえ、NASCARなんだしどこかではコーション運とかミサイルとかあるだろう、という予想を見事に覆してもうお手上げです(笑)あのシカゴでの勝利が無ければ彼はここにいなかったでしょうし、何ならあの日晴れてたらさすがに勝ってない気もするので、めぐりあわせって恐ろしいなと改めて思い返します。

 チャステインはこのレースで、最後のスイカアタックを含めて3回、後から冷静に考えて「どうしてそんなことしたんだろう」と自分でも信じられない間違いを犯したと思いますし、レース後の発言はかつてのWRCのラトバラ的な追い詰められ方に見えたので、メンタルトレーナーとか何かガラッと違うことやった方が良いんじゃないかと思いましたね。