NASCAR プレイオフ 第4戦 ニューハンプシャー

NASCAR Cup Series
Mobil 1 301
New Hampshire Motor Speedway 1.058miles×301Laps(70/115/116)=318.458miles
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Menards Libman Ford Mustang Dark Horse)

 NASCAR カップ シリーズ、プレイオフは第2ラウンドとなるラウンド オブ 12になりました。ラウンドオブ16はほとんど泡沫候補のふるい落としみたいな状況なので、ここからがチャンピオンを狙える人たち同士がとてつもない重圧に晒されていく本当の厳しい戦いの幕開けと言えます。その初戦は"ザ マジック マイル"というあだ名を持つニューハンプシャー モーター スピードウェイ。ニューハンプシャーは1997年から2017年まで年間2回開催だったので、その2回目がプレイオフのレースとして開催されていました。以降は年間1回で夏場のレースだったのでプレイオフで開催されるのは2017年以来8年ぶりです。
 1周1.058マイル、バンク角が2度~7度のむっちゃ浅いプログレッシブです。プログレッシブと言っても壁沿いの大外を走ると速いという話ではなく、概ね内側から2~3レーン目あたりが言わばレコード ラインのような認識で、内側を走ってもバンク角が無さすぎて遅いし、あまり外に行っても路面が悪くてやっぱり遅くなります。でもどうせ大したバンク角では無いので、リスタート直後は完全に平坦なエイプロンまで降りて抜こうとする人もいるので時々フェニックスのような状態も起こります。昨年は雨が降ったらウエット ウエザー タイヤでみんな好き放題のラインを走る場面もありました。

 あんまり特徴が無いように見えて、よくよく考えると意外と他所とは違った難しさがあることが『マジックマイル』の名前の由来とされていますが、半分ぐらいは初めてニューハンプシャーでレースを開催する際に目立つ宣伝文句が欲しくて名付けた、的なところがあると思われます。

・ちょっとしたデータ

 ニューハンプシャーではGen7導入以降にジョー ギブス レーシング、とりわけクリストファー ベルが好相性。昨年と2022年に優勝しており、またエクスフィニティー シリーズでも彼は通算4勝と圧倒的な勝率を誇っています。2023年はマーティン トゥルーエックス ジュニアが優勝していてJGRが現在3連勝中、逆にシボレーの選手はなぜかここ10年以上ニューハンプシャーでの結果が振るわず、2016年のケビン ハービックを最後に勝者無し。ハービック以前はまた4年遡って2012年のケイシー ケインまで遡ることになります。それ以前は非常に強かったので、Gen6車両導入以降は2世代の車両に渡ってなぜかほぼ勝てていないことになります。あ、優勝すると特産品のロブスターが進呈されますが、苦手だからわざと勝ってないのかも(笑)

 ベル以外ではカイル ラーソンが昨年4位、一昨年3位。また現在好調のチェイス ブリスコーは昨年スチュワート-ハース レーシングに所属していながら2位を記録し、一昨年もSHRのそんなに速くない車で10位でした。ちなみに昨年、まだ未公表情報だったブリスコーのJGR加入についてベル君がうっかり口を滑らせてしまったのがニューハンプシャーのレース前でした(笑)
 逆にニューハンプシャーを苦手としているのはウイリアム バイロン、現在開催されているトラックの中ではここが唯一トップ10フィニッシュを経験したことがない場所で、最高順位は11位が2度。平均順位がここより悪いのはオーバルだとアトランタとデイトナしかなく、彼にとっては確かにマジックマイルな様子です。今回は攻略となるでしょうか。

 また、今回はプレイオフ全体で見た4戦目になりますが『プレイオフの4戦目』という括りだと昨年まで10年連続で異なるドライバーが優勝しています。現行の脱落式プレイオフが導入されたのは2014年ですが、2014年・2015年とジョーイ ロガーノが連続で勝利して以降は2連勝どころか同じ人が2回優勝してすらいません。この10人にはベルもブリスコーも入っていませんから問題なく優勝できます(謎)なお昨年はカンザスでの開催で、プレイオフに進出できなかったロス チャステインが優勝しました。

 そして先週はレースの主役になってしまったタイヤですが、今回グッドイヤーが持ち込んだのはリッチモンドで使用したものと同じタイヤです。かなり柔らかくて消耗が激しいタイプのタイヤなので、リッチモンドほど鬼の消耗にはならないでしょうがそれなりにうまくマネージメントする必要はありそうです。

・レース前の話題

 チャーターの売買交渉を巡って裁判沙汰になっていたリック ウェアー レーシングとレガシー モーター クラブ。裁判の最中に別の投資家が話に割り込んできてさらにややこしくなっていましたが、9月19日に両チームから売買契約と和解の成立が発表されました。リックウェアーからレガシーMCへチャーターが1つ売却されることで合意しましたが、和解の内容は非公開となっています。揉め事ばっかり増えるから1つ片付いてよかったです(笑)

・Whelen Modified Tour Mohegun Sun 100

 今回はウィーレン モディファイド ツアーが併催、このシリーズはショート トラックで戦うシリーズなので1周が1マイルを超えるトラックはこのニューハンプシャーだけです。そのためモディファイドやレイト モデルのような車両にとってはこのトラックは最も大きなトラックでデイトナのような存在だ、という表現も検索すると出てきました。なお今回の大会スポンサーは、えーっと、統合型リゾート施設です(笑)
 100周のレースは7回のコーションが出てオーバータイムに突入。レースの終盤から主導権を握っていたジャスティン ボンシニョーアに対し、最終周にタイラー リプケマーが猛追。ボンシニョーアはターン3に向けて内側をガッチガチに固めますが、後ろからリプケマーがゴツンと一発お見舞いして逆転。そしてターン4を立ち上がりますが、

 ちょっとリプケマーのブロックが過剰でボンシニョーアと接触。壁にぶつかったリプケマーの車は右前のサスペンションがぶっ壊れましたが、そのままボンシニョーアに押されながら1位でチェッカーを受けました。リプケマーは8年目・通算83戦目でモディファイドツアー初勝利。ビクトリー レーンには壊れた車が外れたタイヤを添えた状態で置かれたようです。

・Craftsman Truck Series EJP 175

 ニューハンプシャーに8年ぶりにクラフツマン トラック シリーズ降臨、プレイオフ ラウンド オブ 10の最終戦です。ステージ1だけで5回もコーションが出る荒れた出だしでしたが、今週ももちろんコリー ハイムが速くてステージ1・2を連取。そのまま最終ステージも主導権を離さず、最後はチャンドラー スミスが追い上げたものの届きませんでした。ハイムが今季9勝目を挙げてグレッグ ビッフルが持つ年間最多勝利記録に並びました。

 このレースの結果、チャンドラースミスとジェイク ガルシアがプレイオフから脱落しました。残る8人はシャーロット ローバル、タラデガ、マーティンズビルの3戦で争って最終戦でチャンピオンを争う4人に絞り込まれます。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュ ライト ポール賞はロガーノが獲得、第18戦アトランタ以来今季2度目・通算33度目。2位は0.17秒差でライアン ブレイニー、3位にジョッシュ ベリーとペンスキー/ウッド ブラザーズ レーシングがトップ3独占。4位からタイラー レディック、バイロン、カーソン ホースバー、アレックス ボウマン、チャステイン、ハムリン、シェイン バン ギスバーゲンと続きました。前ラウンドで落とされたボウマンとSVGがいるってちょっと皮肉な結果ですね。
 プレイオフ選手ではバッバ ウォーレスが14位、16位にラーソン、18位ブリスコー、19位ベル、22位オースティン シンドリック、そして27位にチェイス エリオットです。なおロガーノはポールを獲った直近6戦中4戦で21位以下、というちょびっとだけ不吉なデータもあります。ポール トゥー ウインは過去に7回経験しており、直近は2023年のアトランタです。

・ステージ1

 ブレイニーがスタート後の争いで出遅れてしまい、まずはロガーノ、ベリー、ホースバーのトップ3。ここから20周もするとブレイニーは3位を取り戻し、ホースバーは徐々に下がっています。そんな中でギスバーゲンが順位を下げるどころか上げていて感心。
 周回を重ねると周回遅れの影響もあって思うようには走れない上位2人に対し、2秒以上あった差を詰めたブレイニーが44周目にあっさりベリーをかわして予選順位に戻ると、53周目にロガーノも仕留めました。そのままステージ1は終わりかなと思った63周目、

 ブレイニーの目の前でコディー ウェアーがスピン。オースティン ディロンに軽く押されたら回ってしまい、ブレイニーは急ブレーキで難を逃れました。完全にブレーキで白煙を上げるほどにタイヤを削りましたが、どのみちこのコーションでリード ラップ選手は全員ピットでタイヤを交換です。
 ちなみに初心者の方にはなかなかテレビに映らないので分かりづらいですが、こういう『ステージ間コーション目前に発生したコーション』でリードラップ選手がピットに入ったなら、周回遅れの人はウエイブ アラウンドで1周取り戻すのが鉄則です。たとえタイヤがボロ雑巾で1周10秒遅くても、周回遅れにならずにすぐにステージ終了で次のコーションを拾いえさえすればステージ間コーションでタイヤを換えれるからです。仮に今タイヤを交換して周回遅れを挽回しないままリスタートすると、どれだけ速くてもステージ間コーションは周回遅れのまま迎えることになり、リードラップ選手はさっき換えたタイヤをすぐには換えないのでほぼ全員ステイアウト、そうするとウエイブアラウンドはできず1周遅れのままステージ2に入ってしまいます。

 たまにこういう基礎知識を振り返ったところでステージ1は残り1周でリスタート、ブレイニーがそのままステージ1を制しました。2位はロガーノ、3位はリスタートで外からするすると順位を上げたバイロンが入りました。ベリー、ホースバー、ラーソン、ギスバーゲン、ボウマン、レディック、マイケル マクダウルのトップ10。あれ、ベルが上がってこないな・・・

・ステージ2

 ブレイニー快走、放送ではベリーと5位を争っているギスバーゲンが絶賛されていましたが、82周目のターン2でなんと接触してベリーがスピンしました。「ごめん、当てるつもりなかったけど向こうが下りてくるから・・・」とSVG、ベリーは外ラインでややV字の走り方をしており、ギスバーゲンは普通に弧を描いて立ち上がったのでラインが交錯して押してしまいました。この辺は経験を積まないといけませんね。ちなみにその後ろを走るラーソン、レディック、ハムリンはみんな青/白で遠目で見るとよく似たスキームだと話のタネになっています。似てるとたま~にマジでスポッターが見間違えたりするんですよね・・・(笑)

 ギスバーゲンを含め上位勢ステイアウトで88周目にリスタート、ブレイニーが独走してそれ以外の人はけっこう激しい争いを常に展開していました。そんな中でJGR3選手が同じ位置で争う展開となりますが、プレイオフ選手ではないタイ ギブスが先輩でプレイオフ選手のハムリン、ベルを抑えこむ展開となり、ハムリンは「俺がチャンピオン争ってるって分かってんのか!?」と激怒。イライラが頂点に達したか、最後は110周目にハムリンがギブスを突き飛ばしました。まあまあでっかい衝撃でギブス君が壁に突っ込んでコーション発生、これは色々と物議を醸しそうな。あ、オーナー様が険しい顔してる^^;


 ギブスの車は牽引もなかなか上手く行かず、チームに微妙な空気が流れる中でリードラップ選手がピットへ。ここでJGRのもう1人・ブリスコーが2輪交換して集団から一気に抜け出し先頭でピットを出て行きました。ブレイニーは逆に少し作業に手間取って2列目に下がり118周目にリスタート。しかしここは後方で多重事故が発生してすぐにコーション。ブラッド ケゼロウスキーがターン2でいくらなんでも内側を走りすぎて壁にぶつけてしまい、弾みで外にいたギスバーゲンと接触、回ったギスバーゲンが通りすがりのカイル ブッシュ、ダニエル スアレスなどを巻き込みました。なんかグランツーリスモで見るような事故(笑)

 さっきのリスタートではブリスコーが2列目のホースバーに外から抜かれる寸前でした。それを踏まえた124周目のリスタート、ブリスコーは明らかにさっきより外を警戒したライン取りでホースバー封じに成功、しかし今回は内側から一気にラーソンが2位に浮上して新たな脅威登場。2輪交換のブリスコーはやはり劣勢になってしまい、134周目にリード チェンジとなります。
 ただラーソンのリードは短命で、4周後にはロガーノに抜かれてロング ランには課題があることが見えてきました。この後ブレイニーが2位となってステージ1と同じ流れかと思ったら、148周目にジョン ハンター ネメチェックが大クラッシュしてコーション。ターン3手前の凹凸で姿勢が乱れ、変速が上手く行かずにギアが噛んで減速できずに制御不能になった、という感じです。けっこう痛そうなぶつかり方。
 ここでまたリードラップ選手がピットに入るとけっこうな人数が2輪交換を選択。ロガーノ、ラーソンは2輪交換でトップ2なり、一方でブレイニー、ブリスコーは4輪交換したので集団の中へ。154周目/ステージ残り32周でリスタートすると、やはりラーソンにはロガーノを追う力は無くロガーノの独走に。そのままロガーノがステージ2を制しラーソン、バイロンと2輪交換勢がトップ3。4位にブレイニーが入りホースバー、ベル、チェイス、ハムリン、ブリスコーの順。そして10位には見た目わりとボロボロなベリーが入りました、ターンでかなり車が綺麗に曲がってるように見えます、見た目のわりに走行性能には支障なくスタートからの速さが続いている様子です。

 リタイアして車を降りたギブスには報道陣が殺到、しかしNBCのインタビューに対して

キム クーン「ハムリンは貴方の走りに不満を持っていました。誰かが正しくて誰かが間違えてるということになりますが見解はいかがでしょう?」
「不運でしたけど、来週良いレースができることを期待してます。」

キム「ハムリンは「チームの誰かしらが彼と話をすべきだ」とも言ってましたけど、何か話し合いがあると考えますか?」
「来週良いレースができることを期待してます。」

 有野課長なら「RPGの村人か!」って突っ込むでしょう(笑)

・ファイナル ステージ

 さっきとは逆になって大半は4輪交換、シンドリックだけが2輪交換で一気に2位に浮上しました。ブレイニーはまたピットで時間を食ってしまい3列目へ、193周目にリスタート。ここもまたロガーノは敵なしという感じで、唯一の対抗馬であるブレイニーが徐々に挽回。209周目に2位までたどり着いてロガーノとの差は約1.5秒。ここから215周目には1秒差、その4周後にはもう真後ろに付きました。スポッター・コールマン プレスリーからブレイニーのラップ タイムを伝え聞いたロガーノは「そんなに速く走れんわ。」と即答。228周目に降参という感じでブレイニーがリーダーになりました。この間にベリーが気づけば3位( ゚Д゚)

 すると232周目、アンダーカット警戒か前を行くブレイニーが真っ先にピットへ。ピットのロスが28秒ぐらいのようでロガーノの目の前=リードラップのままトラックに戻ります。ロガーノは履歴差を作るために6周待ってからピットへ、これで両者の差は約4秒となり、残り約60周の持久戦となる、と思いきや254周目にウェアーのクラッシュでコーション発生、話は振り出しに。ウェアーはレース序盤に自分にぶつけてきたディロンに仕返ししようとして失敗したようにも見えるんですが真相は不明、もちろんディロンはそう解釈しました。ウェアーはこのレース31位、多くは語らずもチームには謝ったとか。
 このコーションでリードラップ選手がピットに入り、上位勢は順位を下げたらもう取り返せないので2輪交換。ベリーとチェイスはそれぞれ241周目/243周目までアンダー グリーンでのピットを遅らせていたので比較的タイヤが新しく、どうせピットに入っても何も起こせないので一発逆転を狙ってステイアウトを選択しました。

 260周目にリスタート、ベリーは3周粘りましたがブレイニーに抜かれて2位後退。それでも3位のバイロンに対しては高い競争力を発揮して順位を明け渡さず、ブレイニーにとって強力な援護となります。チェイスはリスタートが決まらず、そのチェイスに前を抑えられてロガーノも停滞、今のところブレイニーの勝利を妨げる要素無し。
 と思ったらなんとベリーが9周古い右タイヤでも残り25周あたりからブレイニーを追い上げ始めました。ブレイニーもスポッターに対して「あっちがどう走ってるのか教えて。」と要請し、どうやらマジでベリーが速い模様。ただ事実上のチームメイトであるこの2人、プレイオフ選手で"ワークス"のブレイニーを脱落した"サテライト"のベリーがおいそれと抜いて良いのかという問題もあります。下手するとギブス/ハムリン問題と同じ結末になりかねません。

 2人は0.3秒ほどの差で10周以上にらみ合いを続けましたが、残り12周で先に崩れたのはベリーでした。ターン3の飛び込みでちょっと突っ込みすぎて姿勢を乱し、0.6秒差に開いただけでなくおそらくこれでタイヤが過熱してしまいました。ここから再度差を詰めることができず、残り5周で0.8秒差が残りました。
 最後にタックルをかまされる心配がなくなったブレイニー、最後まで安定した走りを見せてそのまま優勝。第26戦デイトナ以来の今季3勝目・通算16勝目でプレイオフ次ラウンド進出を決めました。ブレイニーは直近10戦中9戦で8位以内、うち6戦が2勝を含む4位以内と絶好調です。チェッカー後はベリー、ロガーノが車体でコツンと祝福しにきました。綺麗に争ってると自然とライバルも祝ってくれます、NASCARのレース後のこの光景が好き。なおブレイニーが年間3勝を挙げるのはこれが4度目ですが、まだ1シーズンで4勝したことがありません。

マーティー スナイダー「この12番のチームにとって今シーズン最大の勝利です。ライアン、ジョッシュ ベリーとの争いはどうでしたか?最後の数周はどれくらい警戒していましたか?」

ブレイニー「いや、もうおそらくあれはレース人生で一番きつい20周でしたよ。自分のペースを保ちながらジョッシュを少し引き離そうとしたんですけど、彼がどんどん追い上げてきて、僕はむちゃくちゃフリーになってきたんですよ。彼を抑えつつ新しいレーンを試すので精一杯でしたね。良いレースでしたしクリーンなレースでした。ジョッシュは僕にぶつけようと思えばできたと思うんですけど、そうしなかったのは本当にありがたかったです。最高の一日で最高の週末でした。週末を通して車はむちゃくちゃ速ったです。12番のチームは本当に信じられないほど凄いですよ。プレイオフに入ってずっと強いですし、このラウンドの初戦で勝てて最高です。メナーズ、リブマン、フォード、ラウシュ イェイツ エンジンズ、デックス イメイジング、アドバンス オート パーツ、この機会をもたらしていただいたみなさんに感謝します。ここに来ていただいたみなさん、本当にありがとうございました。」

マーティー「ジョッシュに『おいチームメイトなんだから、そんなに激しくかかってこないでくれよ』と心の中で考えたりしましたか?

ブレイニー「いや、彼は勝ちに来ると思ってましたから。勝ちを譲ってくれるとは思っていませんでしたし、でもバンパーを当てられるとも思ってませんでした。とにかくクリーンなレースでしたね。僕が彼の立場でも同じようにしたでしょうね。レースに出て優勝を狙うのが全てですから。幸いにも僕は彼より少しだけ粘り強く走ることができて良かったです。しばらくの間はストレスと疲労を感じましたけど、全体的には最高の週末でした。来週のカンザス行きが楽しみですね。」

マーティー「先ほど実況のリーも言ってましたけど、先週甥っ子さんが『ライアンおじさん、僕のために1つ勝ってね』と言ってましたね(※)。ライアンおじさん、1週間遅れでも大丈夫でしょうか?」

※先週のブリストルのレース中、突然無線に4歳の甥っ子・ボディー君が現れて「ライアンおじさん僕のために勝って~」と伝えた。

ブレイニー「いやいや、彼にはもうちょっとたくさん無線に出てきてもらわないといけないですね(笑)ルイとボディーが見てるでしょうから、1週間遅れでも実現できてよかったですよ。」

 ちなみにブレイニーはニューハンプシャー初勝利でロブスターを手にしましたが、レース後の記者会館では「ロブスターってクソかっこいいっすよね。」と言ってたようです、ロブスター平気なタイプ。ベリー、バイロン、ロガーノ、チェイス、ベル、ラーソンと続き、8位にはマクダウル。9位チャステイン、10位ブリスコーでした。ギブスとレース後にもう1勝負ありそうなハムリンは12位、シンドリックが17位。レディックはブレーキの不調とバランスの悪化に加え、最後のピットでは他車との交錯もあって21位、チームメイトのウォーレスも序盤からずっと苦戦し最終ステージでとうとう周回遅れ、プレイオフ選手最下位となる26位でした。
 最初に書いたデータと絡めれば、ブレイニーは"プレイオフ4戦目"で初優勝なので記録更新、バイロンはニューハンプシャーで初のトップ10どころかトップ5を記録し、ロガーノはポールスタートで5位に入って負のデータを払拭。統計はあんまりアテになりませんでしたがシボレーが勝てないというのは継続しました。

 ショート トラックで速いブレイニーらしいレースだったと思います。ちょっとリスタート直後は遅くて苦戦するけど、30周もすると誰よりも速くてしかも絶対変なことをしない、という彼の良さが詰め込まれていました。ただ今回はベリーが強敵で想像以上、映像を見ているとターンではやや深く飛び込んで、ボトム スピードは少し犠牲にしてもV字のラインを取って小さく曲げて旋回を終えてしまい、あとは真っ直ぐ立ち上がるようなイメージの走り方でタイヤをすごく縦に上手く使っているように見えました。ギスバーゲンもロード コースでそういう走り方をしていますので、ここで速かった理由も走り方にあったのかなと想像します。
 ブレイニーとすると、見た目上はターンの入り口でえらいミラーに大きく映るので重圧がかかりやすい相手だったと思いますし、下手するとマーティーのインタビューの通り「おいおい勘弁してくれよ。」と思いたくなるところですが全く動じていませんでした、さすが。逆にベリーはターンの入り口で接近して急にダウンフォースが抜けるような動きになるので、いきなりズルっと行ってしまったのかなという印象です。それにしても面白かったですね。
 最初に書いた通り今回のタイヤはかなり柔らかいので、一回滑らせたり無駄な力を加えると一気に温度が上がって戻ってこない、という特徴があったと思われます。これはレース後の会見でブレイニーも触れていましたし、ベリーが離れた後もクルー チーフから「右リアを守れよ。」と重ねて注意を促されていました。今回みたいな塩梅だとリスタート直後の激しい争いと、タイヤを上手く使う力量という2つの要素が上手いこと見れて面白い一方で、ちょっと条件がズレるとただのタイヤ交換が多い鬼消耗レースになるのでなかなか難しいですね。少なくともこのレースに対してはすごく良いタイヤだったと思います。

・JGRはどうなった?

 ところで内輪もめのハムリンとギブス、ハムリンはレース後には「自分のミス」とひとまず表面上は矛を収めた形ではありますが、同時に「全員が家族(ジョーギブス)のために戦っている。」として不満も表し、レース翌日となる月曜日のポッドキャスト番組では「僕としては、リーダーシップが介入して『僕らに何をしてほしいのか』を教えてくれることを希望しますね。」と、プレイオフ選手を優先するチーム内の取り決めをきちんと決めてほしい意向を同時に発信しました。相手がオーナーの孫だろうと気にせず噛みつく、そこにシビれるあこがれるゥ。
 オーナーのジョー ギブスはと言うと同じく月曜日に「車を運転するのは彼らなんですから、彼らは自分たちで集まって解決策を見つけるでしょう。」と現場に任せる発言をしていたとのこと。長年NFLでヘッドコーチをしていた彼からすればチーム内の揉め事なんて日常茶飯事なので、過度の介入はしない派かもしれません。今のマクラーレンとは真逆ですねえ。
困ったのお・・・

 ちなみにハムリンはウェアーの仕返しっぽいクラッシュについて「バカ」と一蹴。というのも、コーション前の時点でハムリンは6位にいましたが、リスタート後の混戦で順位を下げてしまったので、コーション無しで終わってくれた方がよっぽど良かったからです。いくつかのサイトを見てもウェアーのクラッシュは『もし仕返ししようとしたのなら自爆して間抜け』という感じの見出しで、もはやこの件について話す気にはなれなさそうです。
 次戦は1.5マイルのカンザス、良いレースができることを楽しみにしています(笑)

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ハムリンとギブスは不穏な雰囲気でしたが、ギブスのコメントは、昔、ロガーノ陣営で殴り込みに行き、返り討ちに遭って、その後お灸を据えられた、カイルみたいで、面白かったり。あのセリフのTシャツが売られていたとか何とか。ギブスに関して言えば、いくら若いにせよ、100戦を超えても、まともに優勝を争うレースが出来ていないことに、いくら孫であっても、不満はあるでしょうね。移籍早々に、ブリスコーが結果を出し、予選でも速いのを見れば・・・。ブレイニーが、と言うより、ベリーもロガーノも速かったので、共通の何かがあったんでしょう。最後にプレレースでのスタートコマンドは、カートでした(アベマで視聴)が、23Ⅺレーシングで何かやってるんですかね。出来れば、キャリア最後の勝利を飾ったカンザスに出た方が良いのに、とは思いますが。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ギブスおじいちゃんの何とも言えない固まった様子が非常にシュールでした。孫を批判もできないけどハムリンを怒るわけにもいかず、こういう時やっぱりオーナー関係者のドライバーってお互いに立場が難しいなと思いますね。エクスフィニティーをJGRで戦ってるドライバーって車が良すぎるからちょっと過大評価というか、自信過剰でカップに来ちゃうところがあるのかな、と歴代の面々を振り返ると感じてしまう面もあります。。。

 そしてカートがグランドマーシャルだった理由なんですが、細かすぎて伝わらない感じのもので
「プレイオフ制度が開始された2004年最初のレースであったニューハンプシャーで優勝し、これによってニューハンプシャー年間2勝の偉業を達成し、かつその年のカップシリーズチャンピオンになった」ことに敬意を表したからだそうです。SHR時代にモービル1がスポンサーでしたしね。
アールグレイ さんの投稿…
体調が思わしくなくコメントするのが久しぶりになってしまいました。

ロードンは2011年の夏開催が今でも記憶に残っています。
カイルやケセロウスキーがタイヤのパンクで序盤から脱落するなどタイヤに厳しいトラックのイメージが自分的にも強いです。

JGRはラウンドオブ16を3人それぞれの勝利で飾ってプレーオフ良いスタートを切ったと思いきや、嫌な流れが出てきましたね。
ギブスはチームメイトのサポートに徹することが出来るかも見ていきたいです。

ブレイニーも割とどこでも勝てるようになってきましたね。
ベリーは惜しかったですが、ウッドブラザーズのフル参戦復帰はペンスキーとの提携やブレイニーの活躍から始まったと考えると、伝統の21番がチャンピオンと優勝を争えるまでになった事が嬉しく感じます。

ウッドブラザーズやレガシーモータークラブの様に、オーナーグループの変更や提携により体制が大きく変わったとても、21番や43番が今でも走り続けていることが大切なんでしょうね。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 お体お大事にしてください、先日うちの会社の社長も(病名は教えてもらってないんですが)以前からずっと何か調子悪い、何か調子悪い、とずって言っていたものがよろしくなくて、ちょっと面倒な手術をしまして、今日退院したばかりです。
 ブレイニーは元々ウッドブラザーズでスポット参戦だった時期から1.5マイルでかっ飛んでいる、今のホースバーみたいな輝きを放っていたので高速が得意だというのが最初の印象でしたから、今の平たいトラック大得意キャラはかなり驚きですね。でも案外ロードコースはあんまり結果が出てないんだなとデータで確認したので、どこにその差があるのかまだちょっと謎です。