NASCAR 第26戦 デイトナ

NASCAR Cup Series
Coke Zero Sugar 400
Daytona International Speedway 2.5miles×160Laps(35/60/65)=400miles
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Advance Auto Parts Ford Mustang Dark Horse)

 NASCARカップシリーズ、開幕からおよそ半年を経ていよいよレギュラーシーズン最終戦・コーク ゼロ シュガー 400です。何が起きるか分からないドラフティング トラック、デイトナ インターナショナル スピードウェイでプレイオフ進出ドライバー16人が決定します。と言っても16人中14人は既に決定済みで、残る2枠も比較的分かりやすい構図になっています。
 ご存じデイトナは1周丸々全開の疑似直線レース、よっぽど車がおかしくない限り誰でも先頭集団に入るだけなら可能で、どのドライバーにも勝てる機会があります。とはいえ何も考えなくても勝てる運ゲーなどではなく、運を引き寄せて勝てる場所にいるためには適切な位置取りとチェッカーから逆算した戦略を考え、見えない空気の流れを読み、組むべき仲間を選び、160周目のバックストレッチに最良の場所で走行していなければなりません。
 160周のうち120周ぐらいは完全に最後に向けた準備時間、最後の40周が本格的な戦いで、本気の争いは最後の5周。NASCARを良く知らない人が想像する『スリップストリームに入ったら簡単に抜けて、ぶつけ合いで、ガチャガチャやって走るんでしょ』というようなイメージとは全く違い、40台が集団でドラフティングを使って走ると追い抜きは困難。なぜなら抜きに行く=隊列を外れるので空気抵抗をもろに食らい、入れる場所が無ければ容赦なく隊列の最後尾まで落ちる以外に道はないからです。
 集団ではダウンフォースもすっかすかなのでほんのちょっとしたことでいきなり1500kgの車は軽々と姿勢を乱します。ターンはバンク角で遠心力による垂直荷重がかかっている一方で、特にバックストレッチは平たんなので実はターンより遥かに簡単な接触で突然スピンする罠が待ち受けています。事故ったら元も子もなし、接触を伴う争いが起きるのは最後の最後だけでそこまでは基本的に何も起きません。起きたらそれはだいたい失敗です。
 こうして抜けない状態のレースになりますから、最近はとにかく最終ステージに行う最後の給油作業で時間を短くしてピット内で逆転し先頭に立つ戦略が定番。今回はステージ1が給油不要の35周ですが、ステージ2になると先頭走者ですら全開で走らずに通常より数秒遅いペースのレース展開が訪れるかもしれません。最終ステージの給油の時間帯が訪れるまではそんなに見た目上の順位に大きな意味は無く、誰が上手く節約しているか、どのチームが近接して走行し戦略を成り立たせているか、といった全体を俯瞰した観戦がおススメで、最後のピット作業を終えたら見る側もやる気を出しましょう(笑)

・プレイオフ確定条件

 既に1勝以上している14人はプレイオフ進出枠を確保。ポイントでの出場枠はあと2つで、現在はレディックとボウマンがプレイオフ順位15位、16位に付けています。17位のブッシャーがボウマンから60点も離されていて追いつけないため、ポイント争いによってプレイオフ順位16位争いが起きることは既に無くなっています。焦点はほぼ『レディックとボウマン以外の未勝利ドライバーが勝つかどうか』だけです。既に優勝しているドライバーが勝つ、レディックとボウマンのいずれかが勝つ、というパターンなら波乱なく終了です。
 仮にプレイオフ順位17位以下の選手が優勝すると、唯一残ったポイント進出枠をレディックとボウマンで争うことになりますが、両者には29点の差があります。今シーズン、ボウマンがレディックより29点以上多く獲得したレースと言うのは無く、レディックは序盤のクラッシュで続行不能にでもならない限りは有利な位置にいます。逆から言えばボウマンのプレイオフ進出は自分で勝つか、そうでなければ限りなく他人の結果に左右されます。ただ、トヨタはドラフティングトラックでの単独走行で車が遅い傾向にあるため、レディックはステージ ポイントを獲りにくいのが多少懸念材料でしょうか。
 17位以下の選手は『優勝が最善だけど、でもやっぱりステージポイントも稼がないと・・・』という状況ではないため目標設定がシンプル&失うものが無いので、ある意味でこの2人にとっては警戒すべき点です。それと、RFKレーシングはブッシャー、プリース、ケゼロウスキーの3人が全員圏外で、誰か1人だけでもプレイオフに送り込みたい状況。ドラフティングトラックでのケゼロウスキーは速いですから、チームとして一致団結してくるかもしれませんね。

・ちょっとしたデータ

 そんな中で夏のデイトナですが、過去7回の夏のデイトナのうち5回は優勝者がシーズン初優勝でした。昨年は第25戦でしたがハリソン バートンが優勝して17位以下からプレイオフに駆け込み進出、2022年もディロンが優勝しました。また、昨年はデイトナでバートンが優勝し、レギュラーシーズン最終戦のダーリントンではブリスコーが優勝、2戦連続で17位以下からの駆け込みプレイオフが発生する逆転劇がありました。統計的確率で言えば17位以下の選手がレギュラーシーズン最終戦で勝って逆転する可能性は低いですが、流れ、空気感という意味では何か起きそうと感じるのがファン心理でしょう。
 直近4回のドラフティングトラックのレースは全て最終周の追い抜きで勝者が決まり、夏のデイトナは過去17戦中12戦がオーバータイム(17回中2回は悪天候で短縮された)。最多ラップ リードを獲得したドライバーは過去8回の夏のデイトナで全て17位以下、またステージ制導入以降夏のデイトナではステージ優勝した選手がそのレースで勝ったことがありません。いかにレース途中の順位が役に立たないか、前を走っていると最後にひっくり返されているかが数字からも分かります。じゃあ単純にずっと2位を走れば良いかと言うと、みんなその『ベスポジ』を巡って争うわけですから簡単な話ではありません。

・レース前の話題

 カップシリーズに次ぐ第2層シリーズの位置づけとなるエクスフィニティー シリーズ。エクスフィニティーとの冠スポンサー契約が今季までということで後継のスポンサーが求められていましたが、NASCARはオライリー オート パーツが新たな冠スポンサーに就くと発表しました。来年からは『NASCAR O'Reilly Auto Parts Series』という名称になります。オライリーはこれまでもいくつかのレースに冠スポンサーとして名を連ねており、たぶんトラック脇のデッカイ看板が置いてあることもあったと思います。

 そしてNASCARはカップシリーズ、オライリーシリーズ、クラフツマントラックシリーズの2026年の全ての日程を発表しました。詳しくはまた後日ページを立てるつもりですが、メキシコでのレースは行われない一方でサンディエゴのコロナド空軍基地特設コースで3シリーズ全てを開催。シカゴランド スピードウェイも日程に復活し、オールスター戦はドーバーで開催されることになりました。ドーバーにオールスターを移すことで、ノースウィルクスボロ スピードウェイが公式戦に組み込まれました。
 開催期日の再編もいくつかあり、ほぼ8月にしか開催したことのなかったワトキンスグレンがオールスターの前週・5月10日に移動。カップシリーズのレースが開催されないお休みの週が4月5日と8月2日の2度設定されており、第23戦・24戦はアイオワとリッチモンドの似た者同士2連戦。レギュラーシーズン最終戦はデイトナです。最終戦は11月8日、既に発表されている通りホームステッド-マイアミ スピードウェイで開催されます。オライリー、トラックを含めてカナダでの開催は無く、メキシコも無いので来年は全てアメリカ国内での開催です。
 また、来年の日程には入っていませんがナッシュビル フェアグラウンド スピードウェイがカップシリーズ開催に向けて色々と動いてはいるようで、再来年以降もめまぐるしく開催地は変わっていきそうな雰囲気です。メキシコやシカゴ市街地を戻すのか、カナダへ行くのか、という話も残っていますしね。

・Xfinity Series Wawa 250 Powered by Coca-Cola

 エクスフィニティーシリーズ第24戦、2週間前に鎖骨を骨折したジリッチは先週のエクスフィニティーがちょうどレースの無い週末だったことにも助けられて復帰の許可を貰い参加。予選は悪天候で中止で指数予選となったのでなんとポールシッターにもなりました。しかし彼はこの高速トラックで走行することの危険性を認識しており、スタート順位を捨てて最後尾スタートを選択すると、12周目に発生した雨によるコーションの際に待機していたパーカー クリガーマンと交代しました。
 するとここからパーカーが快進撃、レースの終盤にかけて先頭集団に浮上すると、オーバータイムにもつれ込んだレースでJRモータースポーツのチームメイト2人を巧みに抑え込んで最終周へ。ターン3で発生した多重事故によってコーションが発生し、この瞬間にパーカーの優勝が決まりました。ただしジリッチでスタートしているので記録上は全てジリッチが走行した扱いとなり、パーカーは記録に残らない影の優勝者となりました。代役ドライバーが優勝するのはエクスフィニティーの2007年第17戦・ミルウォーキー以来だとのことです。
影の勝者・パーカー(左)を迎える記録上の勝者・ジリッチ

 その2007年のレース、ハムリンがカップシリーズと同時参加していましたが、カップはミルウォーキーから遠く離れたソノマでレースしていて移動が全然間に合いません。一応この車に決勝で乗る予定なのはハムリンですが、実際は練習も予選もエリック アルミローラが走ってポールを獲得。決勝もハムリンが間に合わないのでアルミローラが走っていましたが、途中でハムリンが合流しました。ハムリンはドライバー交代で1周遅れになったものの挽回して優勝。
 記録上はアルミローラの勝利とされましたが、当時は新参者のアルミローラからしたら自分でポールを獲って優勝争いしていたのに、ハムリンに残りを持っていかれてあまり納得がいかなかったらしく、当時は放送席でもこの交代が酷評されていたとのこと。スポンサーの都合上ハムリンが走らないわけにはいかず、ぶっちゃハムリン本人もそんな無理してミルウォーキーで走りたいとは思っていなかったようで大人の事情だったんですが、今回の出来事でそんな歴史も掘り起こされました。

・カップシリーズ
 予選

 カップの予選も雨で中止、指数予選方式でポールシッターはブレイニーとなりました。ボウマンがありがたい2位、以下ラーソン、ロガーノ、シンドリック、ハムリン、ディロン、バイロン、ブリスコー、ケゼロウスキーのトップ10。レディックは27位スタートです。

・ステージ1

 指数予選8位のバイロンですが、レース前の車検を通過した後に車両に調整を行ったことが分かり、改めて車検すると不合格でした。ザックリ言うと車検を無効化するインチキを働いたとみなされ、クルーチーフのルディー フューグルは退場、バイロンはピット選択権を失うとともに、決勝スタート後にパス スルーのペナルティーを受けることになりました。なおフューグルはチームの本拠地から遠隔でバイロンを支援するために移動を必要としましたが、さすがに彼一人を運ぶのにチームの自家用飛行機は飛ばせないので、デイトナから自分で車を運転してノースカロライナ州コンコードに帰ったそうです。たぶん8時間ぐらいかかります。

 レースはペンスキー勢が上位に固まっているためスタートからブレイニーが仲間を引き連れて優勢な立場。ボウマンは伸びを欠いているのか人気が無いのか、ラーソンを従えて後方に下がっていきました。まあステージ1は何も起きないだろうと思ったら11周目にケイシー メアーズがタイヤのパンクかいきなりスピンしてコーションとなりバイロンがリードラップ復帰。16周目にリスタートしますが、2周後にまさかの事態が発生しました。

 ターン4でレディックがトッド ギリランドと軽く接触してそのままクラッシュ。一発リタイアとまでは行かないものの、真正面からぶつけてノーズがグシャリ。レディックの真後ろをボウマンが走っていたので、レディックの心境としてはどうせなら巻き添えになってほしかったかもしれません^^;

 24周目にリスタートするとウォーレスがブレイニーの前に飛び出してここから混戦に。ステージ1なのにそんなに動き回らんでも、と思いながら見ていたら、あー危ない!

 やっぱダメでした。ロガーノを挟んでウォーレスとカイルが狭い場所で3ワイド。ウォーレスはラーソンにやや斜め後ろを押されて不安定になりロガーノに寄りかかりますが、ロガーノの左にはカイルがいるので行き場が無くまとめて接触、両脇の2人がごっつんこ。こうなったらもう誰も止められず後続を巻き込む多重事故に発展。そして最悪なことにボウマンがここに巻き込まれて、レディックの壊れ方なんて目じゃないほど車がぶっ壊れました。とりあえずガレージまで移動したボウマンでしたが、チームは修理を断念したためこの時点でレディックのプレイオフ進出が決まりました。

 ボウマンを含めて6人がこの事故で即リタイア、事故車が多かったため8分30秒のレッドフラッグを挟んでコーションに戻ると、ステージは残りわずかということで多くのドライバーはピットに入り34周目にリスタートしました。プレイオフポイントとレギュラーシーズン順位を争う人たちがステイアウトして2周の短期戦に挑み、ステージ1を制したのはラーソンでした。ディフィーの「みなさん、まだステージ1ですよ。」という一言が刺さります(笑)

・ステージ2

 ステージ間コーションで大半のドライバーはピットに入りますが、ここまで2回のコーションで既に戦略がばらけているためピット作業時間がバラバラ。コディー ウェアーはステイアウトして42周目にリスタートし、事実上のチームメイトであるケゼロウスキーが後ろから押してくれます。そのケゼロウスキーはさっきの給油時に停止位置が手前過ぎた影響で給油が適切に行えず、ちょっと燃料が少ない模様。じゃあ後ろに付いて節約し続けるしかないですね。
 一旦はウェアーを先頭にほぼシングル ファイルになりかけましたが、56周目にはタイ ディロンが押し上げられてきて再びの2ワイド、さらに64周目には3ワイドに展開が移り変わっていきました。こうなると上位の顔ぶれは周替わり定食で、ここから75周目あたりになるとピットに向けてみんな位置取りを探り始めました。ボロボロになって単独で走っている周回遅れがこういうタイミングと重なると、速度差が大きいので見ていて非常に怖いです。
 
 79周目、ここまで常時先頭にいたウェアーでしたが後ろのドライバーがことごとくラインを変えて素通りし、誰も押してくれない問題発生。ウェアーはステージ間コーションで給油していないため燃料切れが迫っており、後ろを走りたい人がいなかったと思われます。この後80周目にウェアーを含めた4人だけがピットへ、寂しい。
 同じころ、トラック上ではホースバーの車にエンジンの不具合が生じたようで白煙を上げると、ピットまで戻れずエイプロン上に車を停めてしまいました。さすがにこれではコーションを出すしかありません。給油が必要な人がピットに入りますが、ここでタイヤまで換えるかどうかは判断が分かれました。ケゼロウスキーは給油だけのはずがエンストしたようで順位を下げてしまい、なんか今日はピットで上手く行きません。

 88周目/ステージ残り8周でリスタート。バイロン、チェイス、ラーソンのヘンドリック3人衆がステイアウトして前方に来ましたが、ロガーノやマクダウルもいてヘンドリックの自由にはさせてもらえません。と思ったらマクダウルは隊列から絵に描いたように外されて後方に下がりました(笑)その後もステージ残り3周からブリスコーとラーソンが立て続けに隊列外しの罠にハメられて後退し、最終的にステージ2を制したのはしれっとそこにいたチャステインでした。

 なんかこの紫色のセイフティー カルチャーのスキーム、以前のリック ウェアー レーシングのNurtec ODTスキームに見えて「あれ?コディーウェアー?」って戸惑います(笑)

・ファイナル ステージ

 バイロンとチェイスはステージ2を給油無しで約60周ぶっ続けたので燃料がカツカツ、ピットが開く前に給油しました。むしろコーションが挟まれば60周走れたことが驚きです。他の人はちゃんと開いてからピットに入り、コーションが出なければ基本的にこれが最後のタイヤ交換でもあります。10人ほどのドライバーはチューズを行わずに燃料を継ぎ足したので、102周目のリスタートは最初の10列ぐらいまで2列、あとは長い1列になりました。
 しかし2周後にメアーズがまたパンク自損事故を起こすと、さらに108周目にはハムリンの車もパンクしてけっこう破片を撒き散らしました。ハムリンは破片を撒き散らしながらピットに入らずトラック上を走行、彼曰く「ハンドルが効かない!」ということで左折できないみたいなんですが、他の陣営はコーション目当てだろうとバカにしている様子です。
 さすがに破片だらけなのでコーションが発生し、これで給油すればギリギリ最後まで走り切れるはずなので当然全員ピットへ。しかし、リスタートから先頭を走っていたジョン ハンター ネメチェックは給油缶が上手く抜けずに発進してしまい、給油缶は倒れ込んだクルーとともに隣のピットボックスへ。人間だけならギリギリセーフなんですが道具が隣の領域に落ちたらアウト、ジョンハンターは優勝の大チャンスが一転して最後尾へ。ちなみにジョンハンターのスポンサー・パイ バーカーは消火器や火災報知機を取り扱う会社です、給油缶を雑に扱うとか絶対ダメ(笑)

 ちょっとでも燃料を万全にしたいので多くのドライバーが繰り返し給油、A.ディロン/ロガーノの1列目で残り45周のリスタート、9列目以降が1列になってすんごい長い隊列です。もしロガーノの後ろにフォードの仲間が数人いれば前方に大きく抜け出した隊列を作る展開もありそうですが、実際に後ろにいるのがトヨタのエリック ジョーンズなので2列の状態で牽制の投げ合いになります。
 そんな中でもロガーノは10周ほどかけてブッシャーを従えることに成功し、フォード2台で常に主導権を握った状態で周回を重ねて行きます。ところが残り13周、ターン4出口でロガーノがルースになり、そこにブッシャーが不可抗力で接触してとどめを刺しました。ロガーノは芝生上で車を停めたためコーション。ロガーノはジョーンズに押されたと感じたようですが、実際は物理的な接触は起きていないようで空力的な影響によるダウンフォース抜けと思われます。

 これでレースは残り8周からの短距離戦、ジョーンズ/ヘイリーの1列目でリスタートしました。もう始まった瞬間から優勝目指して仁義なき争い、ジョーンズはリスタート2周後に後ろから押された拍子にふらついて隊列を外れてしまい後方に落ちました、無念。ここからはヘイリーvsプリースになって3周ほど膠着した後、残り2周になろうかというタイミングでプリースの後ろにいたラーソンが押すのをやめて大外へ動き、後続もラーソンに続いたのでプリースが仲間外れにされました。
 ラーソンはすぐに外から真ん中に移動して中央に陣取りましたが、5列目にいたコール カスターはこの流れに従わずブレイニーの支援を受けて外側へ、完全に3列目を築き上げに行きました。この動きが大正解で、カスターは一気に大外から先頭に飛び出してホワイトフラッグが振られました。さあ、我々はこの最後の1周のために3時間待ったんだ!
 カスターは前方に大きく放り出されたのでターン1で失速、真ん中のラーソンは左右から乱流を浴びる形であまり伸びない様子のため、内側から再度ヘイリーが伸びてきてバックストレッチで先行しました。ヘイリーはカスターを鬼ブロックしようと外へ動き、カスターは当然逆の動きで内側にいきなり動きます。デイトナではお馴染みのパターンで軽く接触し、ああこれは多重事故のやつ、と思ったらカスターはダブル イエロー ラインを跨ぎつつもスピンせず踏ん張り、しかもヘイリーを抜きました。スロットル踏み続けてますね( ゚Д゚)

 ただその間に外ラインを真っ直ぐ走っているだけのブレイニーが先行すると、残る1マイルは押させゲーム。しかし3ワイドで綺麗に密集しすぎているせいか、意外とドラフトで伸びてきてゴツーン!という出来事が起こらず、前方で左右に動いて牽制するブレイニーがそのまま逃げ切りました。第14戦ナッシュビル以来の今季2勝目・通算15勝目。直近6戦を全て8位以内と非常に良い状態でプレイオフに進むことになりました。デイトナでは2021年夏以来2度目の優勝です。そして、17位以下の選手から優勝者が出なかったのでボウマンは辛くもプレイオフに進出が決定しました。

ー最後のリスタートでコール カスターと「一緒にやろうぜ」と計画を立てていましたね。でも、まさか勝利につながるとは夢にも思っていませんでしたか?

「いやあ最後の数周は本当にワイルドだった。僕はコールと一緒にいて、リスタート時に彼に『もし君が上に行くなら僕も一緒に行くよ』と誘ったんだ。ただひたすら待ち続け、そしてついにチャンスが訪れ、彼が上に出てくれた。おかげで本当に素晴らしいレースができたよ。後ろには数人の素晴らしい選手がいて、7番と41番が争ったことで道が開けてギリギリで勝利を掴むことができたよ。」
「みんな、来てくれてありがとう。最高だよ。今夜は素晴らしい観客、最高の夜だ。アドバンス オート パーツ、メナーズ、フォード、ラウシュ イェイツ エンジンズ、デックス イメイジング、ワバッシュ、ビュルト グループ、ボディー アーマーのみんな、本当に感謝している。アドバンスオートパーツがビクトリーレーンに来てくれて本当に嬉しいし、CEOのシェーンも来ているので彼に会えるのが待ち遠しいよ。」

ースーパースピードウェイのレースとは思えないような戦い方でしたね。ほとんどの時間後方を走っていましたがどんなフラストレーションを感じましたか?

「与えられたものをそのまま受け入れただけだと思う。ステージ1の展開のように、ステージ2でも燃料を多く積んで、順位を上げるつもりはなかったので他の選手よりも給油時間を縮めるために、燃料を最大限に節約していた。これは僕らが好む伝統的な走り方ではないね。ラップをリードするのが好きなので、最後までリードすることはできなかったけど肝心なところでリードすることができた。またここで勝てて嬉しいし、数年前にもここで勝ったことがあるので、また戻ってこられて嬉しい。」

ー昨日彼と話した際には「第1目標は感想だ」と言っていました。それを遥かに上回って彼は優勝しました。12番のチームは絶好調でプレイオフを迎えます。


 2位からスアレス、ヘイリー、カスター、ジョーンズといずれもあと少しでプレイオフに大逆転進出できたのに!という面々。6位からラーソン、ブッシャー、ギブス、ジョッシュ ベリー、チェイスでした。上位10人中6人が勝てばプレイオフという選手でボウマンは本当にギリギリ助かった感じです。

 また、レギュラーシーズン順位ではバイロンのチャンピオンは既に前戦で決定しボーナスのプレイオフポイント15点を得ていますが、僅差だった2位争いは今回52点を稼いだブレイニーがレース前の5位から一気に浮上して制しました。選手権2位でプレイオフポイントを10点獲得、ブレイニーはプレイオフを2026点から開始する『第4シード』になりました。選手権3位がラーソン、4位チェイス、5位ベル、6位にハムリンでした。ハムリンはレース前は3位だったんですが今回25位だったのが痛かったです。テープだらけでもはや何の車か分からなかったレディックはこのレース21位で選手権7位でした。ただ、どうやら怖いのはテープだらけのカムリだけではなかったようで、

A.J.アルメンディンガー「ところで45番の側面に描いてあるロナルド マクドナルドがむちゃくちゃ怖いんだけど。」
スポッター「映画『It』(邦題:IT/イット “それ”が見えたら、終わり。)に出てくるピエロみたい。」

 音からしてもコーション中の無線ではなくレース中っぽいので、いくら疑似直線レースとはいえドライバーでもこんなゲーム実況みたいなこと呟きながら走ってるんだなと思って笑わされつつ仲間意識を抱きました。なお悪口を言ったせいかアルメンディンガーは1周遅れの26位でした(笑)

 今回のデイトナはステージ1でいきなり数人が撃沈しましたが、あとはクリーンでありつつも勝負所で質の高い争いが見られて、そんなに長時間にもならず良いレースでした。最後はカスターの後ろにブッシャーがいて一番押してもらえそうだったので、これはカスター行ったなと思ったんですけど一押しが来ませんでしたね。ブッシャーの後ろがギブスであんまり上手く押せていなかったことが影響したのかなあと思いました。まあブッシャーが押したら押したでブロックに動いたブレイニーと絡んでぐっちゃぐちゃになっただろうし、カスターが勝つと『ダブルイエローラインを超えたかどうか』で揉めた気もしますけど。

 さあ、次戦からいよいよプレイオフがダーリントンから始まります。アベマで初めてNASCARを見始めた人は色々面食らうであろう短期決戦、番狂わせは起きるのか。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ラストバトルは、これぞデイトナ、と思った名勝負でした。余程のことがなければ、ボウマンがレディックを逆転するのは無理だったとは思ってましたが、レディックが序盤でハードクラッシュ!ボウマンは序盤で潰れてしまい、レディックがプレーオフ行きを決めて、ブッシャーやプリースなどのRFKにチャンスあり、と思っていたら、最後にヘイリーやカスターが出てきて、15人目出るか、と思っていたら、まさかのブレイニーでした。ボウマンは、間一髪でのプレーオフ進出。今年は混戦だけあって、プレーオフポイントで群を抜いた存在は出ませんでした。ブレイニーもチャンピオンを十分狙えるポジションで、よもやのペンスキー4連覇あるのか、と注目(ロガーノも出てるんだけど)。2014年のラウンド制のプレーオフフォーマットになってからの連覇はいませんから、このまま1勝で、ロガーノが2連覇したら、2003年のケンゼス同様、物議を醸す気が。今のフォーマットで一番上手く戦っているのがロガーノですからね。好き嫌いを別にして、ロガーノのチャンピオンを観てみたい気もします(笑)。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 NASCARは現時点で来年のプレイオフ制度が現状維持になるとは明言していないようで今も考えている最中だと思いますから、ロガーノのこの先の結果次第では本当に影響力ありそうです(笑)
 最終戦がフェニックスである以上はペンスキーの2人は残りさえすれば可能性がけっこう高いですから、ライバルとすると少なくともロガーノにはできれば最初のラウンドでさっさと落っこちてもらいたいと思っていることでしょう。
アールグレイ さんの投稿…
本当に今年のJRモータースポーツは色々イレギュラーなことが起きますね。
解説者としてのイメージが強くなったクリガーマンはカップ戦でもかつてスワンレーシングの財政難による閉鎖でフル参戦出来なくなるなど苦労人の面がありましたが、たとえ今回の勝利がジリッシュの方に付くとしても、クリガーマンはラーソンと同じく88号車を助けた事はオーナーズポイント面でも大きな役割を果たしたと言っていいでしょう。
エクスフィニィティーでの優勝経験がないのが意外なぐらいですが、エクスフィニィティーのデビュー戦でもある2009年カンザス戦でいきなりポールを獲得しているのを見ると、ペンスキーの育成選手ということもあって期待されていたドライバーだったんだなと感じました。

カップ戦は2位から5位までがプレーオフ進出を決められていなかったドライバーなのを見ると、本当に全員がこのデイトナに懸けている部分が見られて熱かったです。
久しぶりのSTPのスローバックスキーム、リチャードペティ最後の優勝が1984年の夏のデイトナ、エリックジョーンズのカップ戦初優勝もデイトナといろんな要素を踏まえて43番を今回応援していましたが、ラスト数周で外されて終わったと思ったらトップ5まで戻ってきていたのは驚きでした。
それでもブレイニーが勝利を持っていくのを見ると、不確定要素が大きいトラックとはいえデイトナの平均順位が18.2位、タラデガも16.9位と全トラックでは低い方なのに結構ドラフティングトラックで勝っているイメージがあるのも不思議です。
そしてペンスキーが勝つたびにいつも思っていますが、今ではチーム・ペンスキー表記になっていますが、G+で観ていたころはペンスキー・レーシングと紹介されていたイメージが強いので2013年に表記が変更されたと言っても、未だにピンときていない自分がいます。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ちょうどフォードパフォーマンスがフォードレーシングに名称変更したという発表がありましたが、ガラッと変わるのと比べるとちょろっと変わるのは逆に馴染みにくい時ありますよね。トラック名でもリッチモンドやドーバーは癖で『インターナショナル』と書きそうになる時があります。
 
 ブレイニー、というかフォードの有力者に総じて言えることですけど、ドラフティングトラックに来ると速いがゆえに狙いすぎてどっかでやらかすので、フォード全体としても統計的にラップリード周回数は圧倒的に多いのに勝率が悪いんですよね。普段ロングランで落ち着いて走ってるブレイニーが何でここに来ると焦ったレースをするのかはわりと自分の中で謎なんですけど、今回はすごく冷静に勝ったのでインタビューにもあった通りじっと待てるレースがやっぱり大事なんだなと思いました。