NASCAR Cup Series
Coke Zero Sugar 400
Daytona International Speedway 2.5miles×160Laps(35/60/65)=400miles
NASCARカップシリーズ、開幕からおよそ半年を経ていよいよレギュラーシーズン最終戦・コーク ゼロ シュガー 400です。何が起きるか分からないドラフティング トラック、デイトナ インターナショナル スピードウェイでプレイオフ進出ドライバー16人が決定します。と言っても16人中14人は既に決定済みで、残る2枠も比較的分かりやすい構図になっています。
ご存じデイトナは1周丸々全開の疑似直線レース、よっぽど車がおかしくない限り誰でも先頭集団に入るだけなら可能で、どのドライバーにも勝てる機会があります。とはいえ何も考えなくても勝てる運ゲーなどではなく、運を引き寄せて勝てる場所にいるためには適切な位置取りとチェッカーから逆算した戦略を考え、見えない空気の流れを読み、組むべき仲間を選び、160周目のバックストレッチに最良の場所で走行していなければなりません。
160周のうち120周ぐらいは完全に最後に向けた準備時間、最後の40周が本格的な戦いで、本気の争いは最後の5周。NASCARを良く知らない人が想像する『スリップストリームに入ったら簡単に抜けて、ぶつけ合いで、ガチャガチャやって走るんでしょ』というようなイメージとは全く違い、40台が集団でドラフティングを使って走ると追い抜きは困難。なぜなら抜きに行く=隊列を外れるので空気抵抗をもろに食らい、入れる場所が無ければ容赦なく隊列の最後尾まで落ちる以外に道はないからです。
集団ではダウンフォースもすっかすかなのでほんのちょっとしたことでいきなり1500kgの車は軽々と姿勢を乱します。ターンはバンク角で遠心力による垂直荷重がかかっている一方で、特にバックストレッチは平たんなので実はターンより遥かに簡単な接触で突然スピンする罠が待ち受けています。事故ったら元も子もなし、接触を伴う争いが起きるのは最後の最後だけでそこまでは基本的に何も起きません。起きたらそれはだいたい失敗です。
こうして抜けない状態のレースになりますから、最近はとにかく最終ステージに行う最後の給油作業で時間を短くしてピット内で逆転し先頭に立つ戦略が定番。今回はステージ1が給油不要の35周ですが、ステージ2になると先頭走者ですら全開で走らずに通常より数秒遅いペースのレース展開が訪れるかもしれません。最終ステージの給油の時間帯が訪れるまではそんなに見た目上の順位に大きな意味は無く、誰が上手く節約しているか、どのチームが近接して走行し戦略を成り立たせているか、といった全体を俯瞰した観戦がおススメで、最後のピット作業を終えたら見る側もやる気を出しましょう(笑)
・プレイオフ確定条件
既に1勝以上している14人はプレイオフ進出枠を確保。ポイントでの出場枠はあと2つで、現在はレディックとボウマンがプレイオフ順位15位、16位に付けています。17位のブッシャーがボウマンから60点も離されていて追いつけないため、ポイント争いによってプレイオフ順位16位争いが起きることは既に無くなっています。焦点はほぼ『レディックとボウマン以外の未勝利ドライバーが勝つかどうか』だけです。既に優勝しているドライバーが勝つ、レディックとボウマンのいずれかが勝つ、というパターンなら波乱なく終了です。
仮にプレイオフ順位17位以下の選手が優勝すると、唯一残ったポイント進出枠をレディックとボウマンで争うことになりますが、両者には29点の差があります。今シーズン、ボウマンがレディックより29点以上多く獲得したレースと言うのは無く、レディックは序盤のクラッシュで続行不能にでもならない限りは有利な位置にいます。逆から言えばボウマンのプレイオフ進出は自分で勝つか、そうでなければ限りなく他人の結果に左右されます。ただ、トヨタはドラフティングトラックでの単独走行で車が遅い傾向にあるため、レディックはステージ ポイントを獲りにくいのが多少懸念材料でしょうか。
17位以下の選手は『優勝が最善だけど、でもやっぱりステージポイントも稼がないと・・・』という状況ではないため目標設定がシンプル&失うものが無いので、ある意味でこの2人にとっては警戒すべき点です。それと、RFKレーシングはブッシャー、プリース、ケゼロウスキーの3人が全員圏外で、誰か1人だけでもプレイオフに送り込みたい状況。ドラフティングトラックでのケゼロウスキーは速いですから、チームとして一致団結してくるかもしれませんね。
・ちょっとしたデータ
そんな中で夏のデイトナですが、過去7回の夏のデイトナのうち5回は優勝者がシーズン初優勝でした。昨年は第25戦でしたがハリソン バートンが優勝して17位以下からプレイオフに駆け込み進出、2022年もディロンが優勝しました。また、昨年はデイトナでバートンが優勝し、レギュラーシーズン最終戦のダーリントンではブリスコーが優勝、2戦連続で17位以下からの駆け込みプレイオフが発生する逆転劇がありました。統計的確率で言えば17位以下の選手がレギュラーシーズン最終戦で勝って逆転する可能性は低いですが、流れ、空気感という意味では何か起きそうと感じるのがファン心理でしょう。
直近4回のドラフティングトラックのレースは全て最終周の追い抜きで勝者が決まり、夏のデイトナは過去17戦中12戦がオーバータイム(17回中2回は悪天候で短縮された)。最多ラップ リードを獲得したドライバーは過去8回の夏のデイトナで全て17位以下、またステージ制導入以降夏のデイトナではステージ優勝した選手がそのレースで勝ったことがありません。いかにレース途中の順位が役に立たないか、前を走っていると最後にひっくり返されているかが数字からも分かります。じゃあ単純にずっと2位を走れば良いかと言うと、みんなその『ベスポジ』を巡って争うわけですから簡単な話ではありません。
・レース前の話題
カップシリーズに次ぐ第2層シリーズの位置づけとなるエクスフィニティー シリーズ。エクスフィニティーとの冠スポンサー契約が今季までということで後継のスポンサーが求められていましたが、NASCARはオライリー オート パーツが新たな冠スポンサーに就くと発表しました。来年からは『NASCAR O'Reilly Auto Parts Series』という名称になります。オライリーはこれまでもいくつかのレースに冠スポンサーとして名を連ねており、たぶんトラック脇のデッカイ看板が置いてあることもあったと思います。
そしてNASCARはカップシリーズ、オライリーシリーズ、クラフツマントラックシリーズの2026年の全ての日程を発表しました。詳しくはまた後日ページを立てるつもりですが、メキシコでのレースは行われない一方でサンディエゴのコロナド空軍基地特設コースで3シリーズ全てを開催。シカゴランド スピードウェイも日程に復活し、オールスター戦はドーバーで開催されることになりました。ドーバーにオールスターを移すことで、ノースウィルクスボロ スピードウェイが公式戦に組み込まれました。
開催期日の再編もいくつかあり、ほぼ8月にしか開催したことのなかったワトキンスグレンがオールスターの前週・5月10日に移動。カップシリーズのレースが開催されないお休みの週が4月5日と8月2日の2度設定されており、第23戦・24戦はアイオワとリッチモンドの似た者同士2連戦。レギュラーシーズン最終戦はデイトナです。最終戦は11月8日、既に発表されている通りホームステッド-マイアミ スピードウェイで開催されます。オライリー、トラックを含めてカナダでの開催は無く、メキシコも無いので来年は全てアメリカ国内での開催です。
また、来年の日程には入っていませんがナッシュビル フェアグラウンド スピードウェイがカップシリーズ開催に向けて色々と動いてはいるようで、再来年以降もめまぐるしく開催地は変わっていきそうな雰囲気です。メキシコやシカゴ市街地を戻すのか、カナダへ行くのか、という話も残っていますしね。
・Xfinity Series Wawa 250 Powered by Coca-Cola
エクスフィニティーシリーズ第24戦、2週間前に鎖骨を骨折したジリッチは先週のエクスフィニティーがちょうどレースの無い週末だったことにも助けられて復帰の許可を貰い参加。予選は悪天候で中止で指数予選となったのでなんとポールシッターにもなりました。しかし彼はこの高速トラックで走行することの危険性を認識しており、スタート順位を捨てて最後尾スタートを選択すると、12周目に発生した雨によるコーションの際に待機していたパーカー クリガーマンと交代しました。
するとここからパーカーが快進撃、レースの終盤にかけて先頭集団に浮上すると、オーバータイムにもつれ込んだレースでJRモータースポーツのチームメイト2人を巧みに抑え込んで最終周へ。ターン3で発生した多重事故によってコーションが発生し、この瞬間にパーカーの優勝が決まりました。ただしジリッチでスタートしているので記録上は全てジリッチが走行した扱いとなり、パーカーは記録に残らない影の優勝者となりました。代役ドライバーが優勝するのはエクスフィニティーの2007年第17戦・ミルウォーキー以来だとのことです。
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影の勝者・パーカー(左)を迎える記録上の勝者・ジリッチ |
その2007年のレース、ハムリンがカップシリーズと同時参加していましたが、カップはミルウォーキーから遠く離れたソノマでレースしていて移動が全然間に合いません。一応この車に決勝で乗る予定なのはハムリンですが、実際は練習も予選もエリック アルミローラが走ってポールを獲得。決勝もハムリンが間に合わないのでアルミローラが走っていましたが、途中でハムリンが合流しました。ハムリンはドライバー交代で1周遅れになったものの挽回して優勝。
記録上はアルミローラの勝利とされましたが、当時は新参者のアルミローラからしたら自分でポールを獲って優勝争いしていたのに、ハムリンに残りを持っていかれてあまり納得がいかなかったらしく、当時は放送席でもこの交代が酷評されていたとのこと。スポンサーの都合上ハムリンが走らないわけにはいかず、ぶっちゃハムリン本人もそんな無理してミルウォーキーで走りたいとは思っていなかったようで大人の事情だったんですが、今回の出来事でそんな歴史も掘り起こされました。
・カップシリーズ
予選
カップの予選も雨で中止、指数予選方式でポールシッターはブレイニーとなりました。ボウマンがありがたい2位、以下ラーソン、ロガーノ、シンドリック、ハムリン、ディロン、バイロン、ブリスコー、ケゼロウスキーのトップ10。レディックは27位スタートです。
・・・続きは決勝視聴後に・・・
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