NASCAR Cup Series Grant Park 165 Chicago Street Course 2.2miles×75Laps(20/25/30)=165miles
winner:Shane van Gisbergen(Trackhouse Racing/WeatherTech Chevrolet Camaro ZL1)
7月4日はアメリカでは独立記念日、祝賀ムードの週末に行われるNASCAR カップ シリーズ第19戦はシーズン唯一の市街地レース・シカゴ、2023年に初めて開催されて今年が3回目です。NASCARでは1987年までは曜日に関係なく祝日である独立記念日当日にレースが開催されており、ファイアークラッカー400などの名称のレースがデイトナで行われていました。1988年以降は独立記念日に近い週末の土曜日夜に開催されるのが通例で長く『独立記念日=夏のデイトナ』が定着していました。
しかし観客動員数の低下やプレイオフ制度に絡んだ日程の思惑から2020年はインディアナポリス、その後の2年間はなぜかロード アメリカでのレース。そして2023年に満を持して登場したのがシカゴでした。ただ古参ファンの中には今でも『独立記念日はデイトナのレースが見たいなあ』という声はそれなりにあるみたいです。
それはさておき、シカゴ市街地コースはシカゴ マラソンの発着地点としても知られるグランド パークの周辺を使った1周2.2マイルで、コーナーの多くを直角コーナーが占めておりまさに『ザ 市街地』という感じのレイアウトです。大阪で例えたら天王寺公園の周辺を走るみたいなもんかな?知らんけど。
元々シカゴでは2001年から2019年までシカゴランド スピードウェイでレースが開催されていましたが、2020年のCOVID-19によるレース中止以降は開催されなくなりました。しかもそもそもシカゴランドは名前はシカゴだけど開催場所はほぼ隣町のジョリエットという町にあり、シカゴからはかなり遠い場所でした。 初開催だった一昨年は100周の予定で開催されましたが、雨によってレースが75周に短縮され、これがオーバータイムが加わったため減らしたところから3周増えて計78周になるというなかなか珍しいパターンでした。そしてそんなレースでNASCAR初登場だったシェイン バン ギスバーゲンがカップシリーズ初出場初優勝という偉業を成し遂げたレースでした。
昨年はというとレースの設定が最初から75周に短縮、というのも初開催の時にあまりにレースの時間が長引いてしまって、これに伴い警備費用などが当初より多くかかってしまい、余分にかかってしまった経費に関して自治体側と運営のどちらがお金を払うべきなのかちょっと揉めてしまったことがありました。そのため大会そのものを少し小規模化する必要があったと思われます。で、開催された昨年のレースはまた雨になってしまい、75周の設定が今度は58周で終了、優勝したのはアレックス ボウマンでした。 過去2年はいずれも雨に祟られて、まだドライ コンディションでのすっきりとしたレースというものを見ることができていません。果たして今年のシカゴの天候はどうなんでしょうか、予報を見たらあんまり良くないんですけど・・・ただレース距離165マイルというのはNASCARとしては非常に短い距離なので、晴れたら晴れたで展開次第では結構あっという間にレースが終わってしまう可能性もあります。燃料的には燃費走行を頑張ったら1回の給油で行けそうな気がしますが、タイヤが古いとたぶん内側に突っ込まれて終わりなのでさすがにそうはならないと思います。 ・参加者満員御礼
今回はスポット参戦のドライバーが5人いるため決勝の上限を上回る41人がエントリーしました。コウリッグ レーシングは3台目としてオーストラリア スーパーカー選手権の昨年のチャンピオン・ウィル ブラウンを起用、昨年のソノマ以来2度目のカップシリーズ挑戦。またリチャード チルドレス レーシングからはオースティン ヒル、23XI レーシングは今季のクラフツマン トラック シリーズで5勝しているコリー ハイムが登場します。
さらにリブ ファスト モータースポーツからはお馴染みの女性ドライバー・キャサリン レッグ。そしてガレージ66からジョシュ ビリッキーがエントリーしています。ブラウンは『国際的に知名度のある選手に対して予選落ちを免除する救済制度』の適用を申請しておらず、誰か1人は必ず予選落ちします。ブラウンはこのレースが終わったらすぐオーストラリアに帰ってスーパーカー選手権に出ないといけないのでめっちゃ忙しく、予選落ちして何もせず帰るわけにはいかないようです。 ・レース前の話題 トラックハウス レーシングのダニエル スアレスが今シーズン限りでチームを離れることが発表されました。2016年のエクスフィニティー シリーズ チャンピオン、翌年から2年間はジョー ギブス レーシングでカップシリーズに参戦したものの、わずか2年で見切られて2019年はスチュワート-ハース レーシングへ。しかしSHRも1年で切られてしまい、翌年は弱小ゴーント ブラザーズ レーシングで我慢のシーズン。 しかし転機が訪れたのは2021年、新たに設立されたトラックハウスのドライバーとして起用され、翌年のチーム体制強化の恩恵も受けて第16戦ソノマでカップシリーズ初優勝。昨シーズンも第2戦アトランタで劇的な僅差のレースを制して優勝し、過去4年間で2度プレイオフに進出しました。今シーズンはここまでトップ10フィニッシュが3回、ドライバー選手権29位と苦戦しており、一方でトラックハウスは若手のコナー ジリッチが有望視されています。スアレス自身も2年契約が切れる今シーズン限りになることはある程度覚悟していたようで、
「数ヶ月前からこうなるだろうと分かっていたので、本当にホッとしたよ。」「人生におけるあらゆることと同じように、物事も人も会社も変わるものさ。でもそれでいいんだ。何も悪いことじゃないよ、ただ、もう愛はなかったんだ。恨みは全くない。」
と心境を語りました。スアレスとすればまずは今シーズン残りのレギュラー シーズンで1勝しプレイオフへ進出し来年につなげたいところでしょうか。
・Xfinity Series The Loop 110
ポールシッターのギスバーゲンが圧倒的な速さを見せましたが、チームの戦略が今一つで最終ステージは中団から追い上げるレース。残り13周でリーダーはJRモータースポーツのチームメイトであり、おそらく来年はカップシリーズでチームメイトになるであろうジリッチ。ギスバーゲンは1人ずつ抜いて行って残り9周で2位となるもジリッチとの差は3秒弱、追いつくか微妙な情勢でした。ところが残り6周でコーションが発生して差が無くなると、残り2周のリスタートでかなりジリッチに対して厳しい攻めを披露しリードを奪い返しました。ギスバーゲンが昨年に続いてエクスフィニティーのシカゴを2連覇です。
・カップシリーズ
予選
ブッシュ ライト ポール賞はこれまたギスバーゲン。1分29秒656と唯一の29秒台で、2位のマイケル マクダウルに0.468秒の大差を付けました。3位からカーソン ホースバー、タイラー レディック、チェイス ブリスコー、カイル ブッシュ、ライアン プリース、クリス ブッシャー、タイ ギブス、オースティン ディロンのトップ10でした。マクダウル、カイル、ギブスの3人はシカゴでの過去2戦をいずれもトップ10フィニッシュしています、他に同様の選手はいないので限られた事例ながら相性は良いことになります。
そして決勝進出を賭けたオープン枠選手の結果ですが、ブラウンは見事19位でオープン選手最上位となって決勝進出。ヒルが30位、ビリッキーが31位、そしてレッグが33位、ハイムはこれに0.138秒届かず34位でオープン勢で最下位となり、なんとトラックシリーズの選手権リーダーが予選落ちするちょっとした波乱が起こりました。ハイムは壁にぶつけてトー リンクを曲げてしまう致命的な失敗があったようです。
・ステージ1
曇ってはいますが3年目にして初めてドライ コンディションでシカゴのレースがスタート。予選や練習で壁にぶつけた選手が結構多く、ハムリンに至っては練習走行の1周目でエンジンが壊れたため合計で10人が後方スタートとなりました。しかしその中の1人、ウイリアム バイロンはパレード周回の段階でクラッチに不具合、結局まともに走れずに1周でガレージ送りとなってそのままリタイアとなりました。レギュラー シーズン選手権で現在1位のバイロンですがこれで大きく2位以下との差が縮まることになります。
グリーン フラッグが振られるとターン1で前に出たのはマクダウル、これでレースが少しは面白くなりそうだと思ったら、3周目に笑うしかない大問題が発生。7位を走っていたホースバーがターン10で内側の壁にぶつけてしまい単独クラッシュ、道幅が狭い場所で見通しも悪いので後続の6人が回避できず次々と衝突してしまい、右端の車1台分しか通れる場所がなくなって当たり前ですがコーションとなりました。
遠路はるばるやってきたブラウンはこれに巻き込まれてリタイア、すいませんねえうちの若いもんがご迷惑おかけして。これに懲りずにまた来てくださいね。ブラウンの走りを見たかったのでマジで残念でした。
道が塞がっていますので15分ほどレッドフラッグ、この間にもブッシャーの車はどうやらエンジンがおかしいらしいという情報が入ります。この激しい凹凸のあるコースが車に悪さをしているのではないか、という話も。なおレッドフラッグ解除後にラーソンも出遅れましたが単純にスターターが回らなかったみたいです。
7周目にリスタート、ギスバーゲンはマクダウルを追いかけながらもこの2人だけが明らかに他を圧倒する速さで3位以下をぶっちぎります。マクダウルに大きなミスはないのでギスバーゲンは後ろからじっくりと追走している様子。現地放送ではロードコース作戦で2ピット作戦にする定番のやり方で行くか、それともステージ1をステイ アウトした上で1ピットで走り切ってしまうか、戦略の分かれ目であるという話が出ています。1ストップはステージ2でタイヤが古くて追い回される上に給油時間の長さも不利に働きやすいので、おすすめはやはり2ストップだそうです、私もそう思います。 そして迎えたステージ残り2周、リーダーのマクダウルはステイアウトした一方で、2位のギスバーゲンは逆をついてピットへ、作戦が分かれました。マクダウルはこれで2位と9秒以上の大差になったので残る2周を徹底的に手抜き走行してタイヤと燃料を節約。ステージ1をマクダウルが制し、カイル、レディック、ブリスコー、プリース、ロス チャステイン、ジョン ハンター ネメチェック、ゼイン スミス、ヒル、ノア グレッグソンと続きました。ギスバーゲンはピットに入りながらステージ11位でした。
・ステージ2 マクダウルを先頭に25周目にリスタート、1ピットで行くならピットに入る目安は40周目あたりになります。どうやら雨が降ってくる可能性も多少あるようで、それも考慮に入れて1ピットを考えている陣営もある様子。ステイアウト組の中にはマクダウルに対抗する速さを持ったドライバーはおらず、やはり焦点はギスバーゲンがどこまで追い上げてくるかになりました。リスタート直後は順位を下げてしまったギスバーゲンですが、元々の速さとタイヤ履歴差で次々と前のドライバーをかわしていきます。28周目には早くも5位、29周目には3位、31周目にはもう2位となります。 ちょうどその頃、トラック上の別の場所ではジョッシュ ベリーがターン7で後ろから当てられてスピンした後コンクリート壁に前部をけっこう派手にぶつけて止まっていました。自力で動けそうな、やっぱり壊れて動かなさそうな微妙な雰囲気だったので、コーションが出るんじゃないかと先読みした陣営がピットに入っていました。すると31周目に入ったところでとうとう3回目のコーションが発生し、ここまで一生懸命考えた作戦とレース展開は全部リセット、1ピット組にとっては中途半端に距離が残っており有り難くないものでした。
1ピット組はどうするか悩みどころでしたが、なんとここでマクダウルはスロットルが引っかかって戻らなくなる問題が発生。一歩間違えたらペース カーに突っ込んで事故るところでしたが、なんとかブレーキを引きずってピットへと帰還。ただこの問題によりマクダウルはこのレースを22周遅れの32位で終える無念の結果となりました。マクダウルおじさんに勝ってほしかったのでマジで残念でした。
というわけで34周目にギスバーゲンを先頭にリスタート、彼と同じ戦略のA.J.アルメンディンガーが食い下がりましたが、周回を重ねるとやがて突き放されてしまいました。もはや時代はAJではなくSVGなんでしょうか。結局AJはSVGから3秒以上離されてステージは終盤へ。42周目/ステージ残り3周で余分なリスクを背負わないようSVGはピットに入り、AJも翌周に入ってSVGと真っ向勝負の戦略を採りました。
上位陣のロードコース作戦によりステージ2を制したのはブレイニーでした。ブリスコー、レディック、ボウマン、バッバ ウォーレス、ハムリン、チェイス エリオット、ネメチェック、エリック ジョーンズ、クリストファー ベルのトップ10でした。ギスバーゲンはステージ12位ですがもう給油の必要はありません。前を行くドライバーはもう1回の給油が必須か、あるいは必死で燃費走行して何回かコーションが出ればひょっとしたら、、、ぐらいの状態にある選手です。
・ファイナル ステージ ステージ間コーションでブレイニーはピットに入ったのでブリスコーを先頭に49周目にリスタート、SVGは4列目からリスタートでしたがもちろんここから順位を上げて行き、57周目/残り19周の段階でリーダーが視界に入る3位まで到達。この周のうちに2位のレディックをかわすと、3周後にはブリスコーをかわしてリーダーに戻りました。するとなんとびっくり、ほどなくして突然にコーションが発生しました。雨雲が近づいてきていたので落雷か!?と思ったら
原因は急病のお客さんを救急車で運ぶ必要が発生し、コースを救急車が通るためでした。このコーションでは普通にやったら勝てないだろうと考えたか3位のレディックが一発逆転の可能性にかけてピットへ、ただ多くのドライバーはステイアウトを選択したので8列目あたりに埋もれてしまいました。まあ誰が何をしようがどうせSVGの勝ちだろうとは思いつつ残り13周でリスタート、そうだ、こういう時こそイン シーズン チャレンジのトーナメント対戦表で遊ぶんだ!(・∀・)
ドライバーはそんなことをかけらも考えてないとは思うんですが、ターン1でオースティン シンドリックが全く止まれずミサイルになって多重事故を巻き起こすと、この事故では被害者だったチャステインは続くターン2で今度は加害者になってジョーイ ロガーノにぶつけました。
ロガーノの巻き添えになったリッキー ステンハウス ジュニアはサスペンションが完全に折れてどう見ても自走不能な状況でしたが、何とかフェンスの切れ目からコース外に自主退出する素晴らしい動きを見せてくれます。ただこの努力もむなしく、最初に問題を起こしたシンドリックがコースの途中で止まってしまったのでやっぱりコーションとなりました。
これで残り9周でのリスタート、1列目でSVGと相対するギブスはリスタート前にクルー チーフからかなり細かく助言を受けていましたが、オーバルほど言われてすぐにどうにかなるわけもないのでリスタート後すぐに離されました。ただギブスの後ろ、3位にいるAJはインシーズンチャレンジの対戦相手となっており、仮に1位になれなくても賞金のためにAJには負けたくありません。おお、良い感じでトーナメントが機能してるじゃないか(←TNTの話に無理やり乗っかる)
同じくトーナメントの対戦相手であるボウマンとウォーレスの7位争いも残り7周からヒートアップ、しかもこの2人は去年のシカゴのレースでそもそも遺恨があったというテレビ局垂涎の対戦カードです。複数のターンにわたって並走し抜きつ抜かれつ、当てつ当てられつという展開でちょっと熱くなりすぎたらしいこの2人、最終的には翌周にボウマンがウォーレスを引っ掛ける形になってウォーレスがクラッシュして決着。でもこれはもうどちらが良いの悪いの言える状況ではなさそうでしたね。
残り3周、2位のギブスに1.7秒の差をつけて独走するギスバーゲンでしたが、最後にもう1人の刺客が登場。先ほどギャンブルでタイヤを換えていたレディックが8列目あたりからリスタートしたにもかかわらず4位に上がっており、このレースのファステスト ラップを更新しながら追いかけてきます。3位はハムリンオーナー様だったので完全に道を譲ってくれ、2位のギブス君も実質チームメイトだし、と思ったらこっちは意外と道を譲ってくません。これじゃあもう追いつかないな、時間切れだ
と思ったらターン6でコディー ウェアーがタイヤ バリアに刺さっていました。どう見てもコーション案件なのでホワイト フラッグとコーション フラッグのどちらが先に振られるかが注目されましたが、先に出たのはギスバーゲンに対するホワイトフラッグでした。そこからターンをいくつか通過してようやくコーション発令、この時点でレースは決着しました。シェイン バン ギス バーゲンが前日のエクフィニティーに続く2日連続のポール トゥー ウィン、かつシカゴ市街地3戦で2度目の優勝です。もうここに家を買ったらどうだろうか(笑)
「この場所が大好きさ。本当に素晴らしい週末だった。素晴らしい車を運転できて幸運だよ、トラックハウス、ウェザーテック、シボレー、そしてここにいるすべての人たちに感謝したい。本当に素晴らしい週末だった。来てくれたみんな、ありがとう。素晴らしいショーになっていたことを願うよ。」
「いくつかミスはしたと思う。本当に速い車が何台かあったけど、僕たちは正しい判断をしてミスなく、毎周スムーズに走れたと思う、本当にクールだった。」
「今週末はとても暑かったんだ。路面は滑りやすく、タイムもかなり遅く、ミスを許す余地はほとんどなかった。とにかくうまくやらなければいけなかったけど、上手くまとめられたよ。」
2位はメキシコに続いてまたもSVGの壁に阻まれたギブス、3位はコーションが出ていたらというレディック。4位は最後尾スタート、ほぼ練習無しのぶっつけだったハムリンでした。ハムリンは30周目にコーションを先読みしてピットに入り、そのまま給油無しで走り切る思い切った戦略が成功しました。でも本人はとにかく車が良かったと絶賛していました。
5位からカイル、アルメンディンガー、プリース、ボウマン、ヒル、チャステインのトップ10。ヒルはカップシリーズ通算12戦目で自己最高の順位でした。ネメチェックが15位、チェイスは16位、レッグが自己最高位の19位でした。
・In-Season Challenge presented by DraftKings Sportsbook
たぶん企画が空回りしているインシーズンチャレンジ。ベスト16からベスト8へのふるい落としでしたが、なんと第32シードのタイ ディロンは対戦相手のブラッド ケゼロウスキーが早々にクラッシュしてリタイアしたのでここも勝ち進みました、もはや呪いレベルで次の対戦相手はボウマンです(笑)
第12シードのネメチェックは第5シードのチェイスに競り勝った形でこちらも番狂わせ、次戦の相手は第20シードのエリック ジョーンズ。残る2カードは第15シード・プリース vs 第23シード・レディック、第6シード・ギブス vs 第14シード・スミスとなっています。第5シード以上の選手が全滅して最もシード順位が若いのがギブスとなりました。
・コーションはなぜすぐに出なかったのか?
見ている方が気になったのはおそらく最後の場面、ウェアーがクラッシュしてホワイトフラッグが出てからコーションが出てレースが終わった場面だったかと思います。まず、クラッシュからギスバーゲンがスタート/フィニッシュに到達するまでの時間ですが、中継映像では13秒ほどでしたが実際の事故はもう少し早く起きていると思われます。ウェアーはその前の周にSVGの30秒弱後方にいました。ここは1周90秒ぐらいのコースなので推定で事故の瞬間から見てSVGがホワイトフラッグを受けるまでの30秒ほどの時間があったと考えられます。
NASCARというと基本は『事故=即コーション』のイメージですが、ロードコースの場合は事故が起きてから後続の車両が現場を通過して潜在的に大きな危険があるとみなされるまでに時間的な猶予があり、タイヤ バリアに刺さっただけなら自力での脱出もできるので様子見することはよくあります。というか厳密にはオーバルも基本方針は同じで、ただオーバルの場合1周30秒だと考える猶予が少ない上に走行車両の速度が速く、そして動いていない車は大抵自力で動けませんから、安全を考えるとコーションを即断することが大多数である、というのは実際の理屈だと思います。
ですから今回も同様の方針を守っただけなんだろうな、と思ったんですが、レース後にマネージング ディレクターのブラッド モーランはこう説明しました。
「残念ながら車両がタイヤバリアに衝突した際の実際の映像はありませんでした。これは持ち帰ります。もしシカゴに戻ってくるならより注視し、レース トラックの特定のエリアを調査し、状況を確実に改善します。」
「もしコディーの衝突場面をそこで捉えていればすぐにコーションが出ていたでしょう。しかし、実際は彼がウインドウ ネットを下ろした瞬間にコーションが出されました。我々は相手にタイヤバリアから抜け出す機会を与えましたが、もし最初の状況を捉えていたなら車が抜け出そうとしていないことが分かっていたはずです。ですから、これは我々の責任です。戻って検証します。」
えーっと、運営ミスを事実上認めてしまいました。実はSNS上にはウェアーのクラッシュの映像だとするものが投稿されていまして、それがこちらです。
むっちゃ怖い( ゚Д゚)NASCARはもちろん各所にカメラを設置し、それを複数の人員で監視してレースを運営しているわけでここも当然カメラがあったと思うんですが、全部の画面を1人1カメラでかじりついて見るわけでは無いので瞬間の映像を見落とし、ウェアーの事故がどの程度のものであったか初期判断を誤ってしまったということのようです。ロードコースにおける運営の課題が浮かび上がりました。 ただ、適切に判断していたらコーションが出てオーバータイム、だったかというとそうとも限りませんでした。オーバータイムにするならウェアーの車両の撤去が必須ですが、現地では雷雨が接近しておりレースの終了後に雨が降り始めました。雷が鳴ればレースは行うことができない規定なので、どっちみちそのまま終了していた可能性があるのです。 何にせよギスバーゲンがこのレースの優勝に値する選手であることに疑いの余地はないからまあ良いだろう、と思うか、その後の状態がどうであろうとちゃんと運営できずにオーバータイムの機会を奪ったのは事実だからそりゃダメでしょ、と考えるかは人それぞれでしょうかね。私は原則論から言えば後者なんですが、運営にも限度はあるのは事実なので心情としては前者です。もちろん起こった問題は次からきちんと対処する体制は必要なので、反省と改善はすべきですしそれをきちんと説明するだけNASCARは組織としてはきちんとしてるなと思いました。 ちなみにクラッシュしたウェアーのスポンサー・アービーズはお肉を使ったサンドイッチのお店でこの大会の協賛企業、レース期間には無料配布キャンペーンもやっていたようで宣伝にかなり気合を入れていましたが、最後の最後に変な目立ち方をしてしまいましたね^^; そしてシカゴでの開催ですが、NASCARとシカゴ市の契約は3年で2年の延長オプションが存在するとされています。延長するかどうかはNASCAR側がレース終了後90日以内に日程を表明して通知する取り決めになっていると報じられていますが、現時点で見通しは不明。ただもし来年開催するなら、独立記念日の祝日を家族でグラントパークで過ごしたい人のために開放したいので、日程を変更する方向性だと報じられています。 もし来年も開催された場合、おそらく優勝者はバイロンです。なぜかって?1年目の優勝はギスバーゲンでしたが、2年目は序盤のクラッシュで最下位でした。2年目の優勝はボウマンでしたが、彼は1年目のイベントは序盤のクラッシュで最下位でした。そして今年、去年クラッシュで最下位だったギスバーゲンが優勝しました、ということは来年優勝するのは今年最下位だった選手、つまりバイロンなのです(笑) そんな冗談を言いつつ次戦もまたロードコース、NASCARのロードコースと言えばここ!なソノマ レースウェイです。
VIDEO
コメント
確かにカイルは1回ぶつけられて回ってましたから「いつ戻ってきたっけ?」という感じでした。さすがにSVGほどの速さは無いですけどロードのカイルは大きな欠点が無くてまとめるのが上手いですね。ソノマではベテラン陣に頑張って欲しいですかねえ、若手はグレンでガシガシやってくれれば良いかと(←テキトー)
エクスフィニティーではジリッシュ、カップではマクドウェルなど目立つドライバーがいたことは、必ずしもロードコースでのギスバーゲン1強ムードにはまだならないと思っています。
ただ、SVGも複数勝利を挙げたことでプレーオフをより確実な物にした事ので、フル参戦1年目から期待通りを活躍を見せているのは嬉しいです。
AJを突き放したシーンは、ロードコーススペシャリストの世代交代にも思えてしまいました。
ウェアーのクラッシュは結構ドライバーも衝撃ある様に見えますね。
これでコーションがすぐ出せなかったのも、サーキットのロードコースだったら単独スピンとぐらいだと出していないイメージとはいえ、ストリートだとどうしてもすぐに動かないと混乱も招くだろうし、難しいところだと思います。
車載映像を見返すとウェアーはほとんど減速できずにまず右の壁にぶつかって(もしくはわざとぶつけて)からタイヤバリアの奥に貫通するぐらいの刺さり方してるので怪我してなかったのが不思議なぐらいすごい衝撃でした。
ぶっちゃけ下手な人も多いので市街地だからと言ってバリアに突っ込むたびにレースを止めていられないので原則常設サーキットと同じ考え方、ということだと思いますが、仰る通りCoTAみたいな広々したところと市街地で考え方の切り替えは必要だったんでしょうね。ちゃんと全部見れないのならなおのことだなと書いていて思いました。