F1 第21戦 ブラジル(サンパウロ)

Formula 1 LENOVO Grande Prêmio de São Paulo 2024
Autódromo José Carlos Pace 4.309km×71Laps=305.879km
※エクストラ フォーメーション ラップにより69周に減算
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB20-Honda RBPT)

 3週連続開催のF1、アメリカ・メキシコと渡ってきて第21戦はブラジル、イベント名としては『サンパウロGP』です。ブラジルはシーズン最終戦だった時期がわりと長かったことと、最新鋭の設計のコースでなくても短い1周の中に地形を利用して長い直線も小さいターンも抜きどころもちゃんと全部あり、暑いせいでタイヤの摩耗もきっちり管理しないといけないし、天気も変わりやすいし、と欲しいものが全部あってかなりお気に入りのイベントです。今年は再舗装されたので凹凸も減って綺麗に、と思ったら凹凸はわりとそのまま再舗装されていましたw

 一時はリオデジャネイロに新しいサーキットができて移転する、という話があり、移転騒動の話の流れからイベント名が『サンパウロ』に変わった経緯があるわけですが、結局移転話は頓挫したようで昨年末にF1との開催契約が2030年まで延長されています。まだ当分の間はインテルラゴスで楽しむことができそうです。
 ちなみにサーキットの正式名称はアウトドローモ ホセ カルロス パーチェと書くのがたぶん発音としてましなんだと思いますが、F1の全開催サーキットの中で最も正式名で呼ばれなさそうなイメージがあります。日本だと共同通信なんかは英語読みで『アウトドローモ・ジョゼ・カルロス・パセ』って書いたりするから余計に混乱しますw

・レース前の話題
 
 前戦で通算400戦出場を達成したフェルナンド アロンソ。残念ながらこのところアストンマーティンはあまり調子が上がらず成績が伴わない中で、記念すべきこのレースもトラブルにより途中であっさりとリタイアして元気がありませんが、その後にアロンソは腸内の感染症により体調を崩してしまいました。メキシコから一度ヨーロッパに戻り(調べてもどの国に帰ったのか分からんけど)治療を受けてからブラジルに戻ってきましたが、いくら鉄人でもさすがにしんどいぞ・・・
 そしてアロンソを心配していたらなんとマグヌッセンも体調不良になり、こちらは出場が難しいということでまたもやベアマンが代役として起用されることに。先週はフェラーリからFP1に参加してコラピントとぶつかってしまいましたが、今週末は急遽ハースでの出場で2チームを行ったり来たりです。

 また、フェルスタッペンは今回のレースで6基目の内燃機関を投入し、規定上限を超えているので5グリッド降格が事前に決定しています。手持ちの残りでやり繰りして壊れる危険性と、ここで新規に投入して安全かつ性能を発揮したエンジンでやり繰りすべきかを比較した際に後者を選んだとのこと。ですので今回フェルスタッペンは最上位でも6位スタートとなりますが、この決断ができるのもある程度ノリスの進撃を食い止めて余裕が出たからでしょうね。

 そのフェルスタッペンとノリスのドライバー選手権争いが激化するにつれて、日に日に注目度が増しているバトルの際の違反行為の判断基準。『ドライビング スタンダード ガイドライン』と呼ばれるものが2022年に発効されこの考え方に基づいて判断が行われてきましたが、私も記事内で愚痴ったようにガイドラインの考え方をそのまま額面通りに適用した際に公正なレースとは言い難い状況を生み出す場面が散見されるため、内容が改訂される見通しとなりました。
 現行のガイドラインでは、コーナーで先にエイペックスに車両の先端が到達しているドライバーにコーナーでの優先権があると解釈されていることから、フェルスタッペンはとにかくブレーキを深く突っ込んで行って先にエイペックスに到達し、あとは曲がり切れずに相手をコース外に追いやる形になっても優先権は自分なので問題なし、と言わんばかりの走りが見てとれます。特に最近はこれが顕著になっておりこの部分の考え方が見直される模様です。ただ、2022年にガイドラインが公になった際のFIAの説明は、モータースポーツ.comの記事によれば

「疑惑を避けるため、これはスチュワードの決定を支援するための単なるガイドラインであり、拘束力はない。」
「すべてのスチュワードの判断は、F1に適用されるすべての関連レギュレーションと、FIA国際競技規則に従って行なわれる。」
 
 と説明していて、そもそも『絶対的基準』ではなかったはずです。書いてある内容と事情が合わなければ総合的に勘案しての判断が行われて然るべきところを、ガイドラインの内容が全てであるかのような判断にかなり傾いて運用してきたFIAとスチュワードにも問題があると思います。先ほどの記事によれば、このガイドラインが公表されたのは

『FIAは第4戦エミリア・ロマーニャGPを前に、F3ドライバーたちに自分たちがやっていいことと悪いことを改めて思い出させるために、ガイドラインを公開した。これは、すでにF1チームとF1ドライバーたちに配布されていたモノだ。』

 とされているんですが、正直な印象としては、チャーリー ホワイティングがレース ディレクターを務めていた際にはチャーリーへの長年の信頼によってみんなが付いて行ったので、わざわざガチガチに文章で縛る必要性は乏しかったと思います。彼の死後、後任のマイケル マシがあれやこれやと批判の的になり、信頼を得られない中で2021年にはハミルトンとフェルスタッペンのチャンピオン争いが泥仕合のようになり、FIAとすると判定のたびにケチを付けられて一貫性が無いだのなんだの言われるので、ほんなら具体的な線引きしたるわい、文言書いたったからこれで文句ないやろ、と思って作ったんじゃないかと思えてなりません。
 たしかに文言で内容を縛ると『一貫性』は出ますが、それは『妥当性』があることを必ずしも保証しません。モータースポーツのような競技では一定の基準を示すことは重要でも、結局は基準に基づいて様々な状況から判断を下さないといけないわけですが、その最も大事な部分が今の運用は欠落しているように思います。ガイドラインの内容をどう変えようが、運用側が『これはあくまでも指針で絶対的存在ではない』という部分を大事にしなければ同じことが繰り返されるのではないかと思うので、規則だけの問題に論点を逸らさないでほしいとは思いますね。

・スプリント予選

 3連戦で2回もスプリントをやる地獄の日程ですが久々にノリスが無双モード。FP1もSQ1もSQ2も速い!SQ3の1回目のアタックも速い!これはもうポール決まり!とか思ってたら、最後のアタックでピアストリが0.029秒差でひっくり返してしまいました。1位・2位を独占するのは良いけどピアストリが前にいると何かとドライバー選手権の都合上苦労が増えるマクラーレン、どうしたものか。
記念の盾みたいなのもらえるんですね

 3位からルクレール、フェルスタッペン、サインツ、ラッセルのトップ6。ローソンが8位と頑張った一方で、感覚のわりに全然記録が伸びない角田はSQ1敗退の18位。ペレスも13位でSQ2の段階で落とされましたが、エンジニアのヒュー バードが走行後にペレスに言った無線「足らんかった、ピット戻ってきて。」という声がなんか(あーあ、また脱落かい、もうこいつ何言うてもあかんわ)みたいなちょっと憤ったトーンに聞こえたのは私だけでしょうか^^;

・スプリント

 24周のスプリントは全員がミディアムを選択、午後に予選が控えていることもあってか比較的落ち着いたスタート。どうもノリスは事前にチームと約束をしていたようで「俺、近いんだけど。」と早く入れ替えてくれるよう伝えますが、チーム側はすぐには動きません。ピアストリの後ろを走りすぎたせいか、無線交渉に神経を使いすぎたせいか、ノリスは7周目のターン10入り口で滑ってピアストリのDRS圏から離れてしまい、ここから暫しルクレールの脅威にさらされました。ピアストリはチームの指示に従ってペースを落とし、ノリスをDRS圏に拾ってあげます。
 その後しばらくはトップ4のあまり無理しない接近戦でしたが、今度はルクレールのタイヤが落ちて来たのか13周目のターン1で失敗してノリスから離され、18周目にとうとうフェルスタッペンに抜かれました。
 この間マクラーレン側は最終周に入れ替えてレースを終える方向性で話をまとめたようですが、20周目にヒュルケンベルグの車両から白煙が出始めてターン10の先で停止。もしSCでも出ようものなら順位を入れ替えられないままレースが終わってしまうので、マクラーレンは急いで順番を入れ替えました。急いで入れ替えたせいでピアストリの真後ろにフェルスタッペンが迫ってワンツー体制が崩壊しかけますが、VSCが出たので一安心。

 そのままVSCでレースが終わるかと思ったら、24周目=最終周のターン4あたりでなんとVSC終了。フェルスタッペンは再開直後にピアストリをかわそうと動いたものの抜けず、そのままノリス、ピアストリ、フェルスタッペンのトップ3で終えました。

 ところが、フェルスタッペンがVSC解除早押しゲームに参加したのはヤブヘビでした。間合いを詰めに行くのが早すぎてVSC中の指定タイムを超過した、いわば速度違反になってしまいレース結果に5秒加算のペナルティー。これによりスプリントの3位はルクレール、フェルスタッペンは4位に降着となりました。
 ただちょっと気になったのは、ヒュルケンベルグの車両が停止してからVSCまでかなり間が空いていたこと。理由としては自力で動ける可能性があった、その努力をしていた、ということになるんでしょうが、正直マクラーレンが入れ替えを完了するまでにVSCを出したらよろしくないので待った、と言われかねない運用に思えました。ターンの内側とはいえ走路とはわりと近い場所でしたし、白煙を上げていて停車したなら再度動かす可能性は低いでしょうから、もっと早くてよかった気がしました。

・予選

 スプリントの後に行うはずだった予選、数時間のうちに天気が悪くなって開始できません。SUPER GTの予選できない病がうつったようになってしまい、日曜日に予選と決勝を行う設定へと急遽変更されました。

 そして日曜日、朝7時30分から予選をやり、決勝も天気予報が悪いので当初予定より1時間半繰り上げて12時30分開始にするという異例の日程となりました。とりあえずQ1が始まりますが全員が迷わずウエットを履いて走らないといけない、というかそもそも開始直前まで運営車両がコース上を走って少しでも水をはけさせようとしているのでだいぶ悪条件です。
 あっちこっちでコース外に飛び出す人がいてイエロー フラッグだらけ、でもこの後また雨が強くなるという予報があるのでもうとにかく走るしか無い状態となります。水煙が多すぎて高速区間では車がよく見えませんw
 Q1ではハミルトンがチームメイトより2秒も遅い記録しか出すことができずに16位でQ1敗退、ノリスもギリギリの15位通過で肝を冷やしました。波乱は続き、雨が一旦止んでようやくインターの出番が来たQ2ではセッション中盤でサインツが、終了間際にはランス ストロールがクラッシュ。この時フェルスタッペンは12位にとどまっており、更新できないままレッド フラッグになってQ2脱落となりました。ただ、ここもストロールのクラッシュから赤旗まで40秒近くかかっており判断の遅さが感じられました。

 Q3もアルボンとアロンソのクラッシュで2度の中断を強いられ、その間にも雨がまた降っていて路面状況は目まぐるしく変わって行きましたが、Q2以降は安定して速かったノリスが最後まで好記録を継続して出し続けピレリポールを獲得。2位にラッセル、そして3位になんと角田が入りました。エステバン オコン、ローソン、ルクレールが続き、予選順位としては事故ったアルボンが7位、こちらも危うく事故りかけたピアストリが8位となりました。
一瞬だけ夢を見た時間

・栄光の車が走る

 アイルトン セナの死去から30年ということで、決勝前にハミルトンがマクラーレンMP4/5Bに乗って走行しセナへの敬意を示す、ということが事前に告知されていました(実際はドライバーは当日まで秘密のはずだったが情報が出てしまった)。ただ急な予定変更で7時半から始まった予選が9時すぎまでかかり、12時30分にはもうレースですからさすがに中止やろうと私は思ったんですが、なんとハミルトンは走行して、しかも結構踏み込んで滑りながらもホンダの軽快なエンジン音を響かせて観衆を沸かせました。

 なんかスポンサーロゴが少なすぎるとちょっと違和感。それとレース前のセレモニーにいた女性シンガー・アンナ ド フェランって昨年末に急逝したジル ド フェランの娘さんですよね。いや、当たり前のように書いてますけどこれを調べていてジルドフェランが亡くなっていたことを知りました。チャンプカーで2度のチャンピオン、2003年のインディアナポリス 500優勝者、見ていたわけではないけど彼がアメリカン オープン ホイールの偉大な選手であることはもちろん知ってますので「あ、ひょっとしてジルドフェランの娘さん?歌手やってはるんかあ、え、ご本人亡くなってはったんか…」という感じでした。


・決勝

 異例の日程変更でフジテレビも急いでCSフジテレビの番組を再編して予選・決勝の放送枠を確保し電子番組表も更新しましたが、うちのレコーダーは予選は行けたのに決勝の録画が『番組表検索無限ループ現象』に見舞われてF1の放送を見つけられず録画失敗、リタイアとなりました。仕方なく画質を諦めてスカパー番組配信で視聴するプランBです。これとは別に、最近レコーダーに不良セクターができたのかSUPER GTの予選の冒頭で酷いコマ落ちが発生していて買い替えを検討し始めています。とりあえず不良部分は消さずに残すことで不良セクターに書き込まないように封印してるんですけど、このやり方で理屈はあってるのかしらw
 運営さんもとっ散らかってるのか国際映像のグリッド紹介が途中で止まってしまうハプニングもありましたが、とりあえず予選で車を壊したアルボンは修理が間に合わず欠場、フェルスタッペンは5グリッド降格を追加して17位から、サインツはピットからのスタートとなりました。全員がインターミディエイトを選択しての決勝です。

 待望のフォーメーション周回に入りましたが、ストロールがターン4でスピンして砂場にハマり出れなくなったので重機が出てきて回収作業開始。これでスタートはもちろん順延となり、追加フォーメーションで各車がもう1周。いや、状況考えたらたとえ低速でも現場を車両が通過するのは危険では。。。
 しかし数名のドライバーはグリッド位置で停止したままで何だか混乱している状態。実はレースディレクターは『"ABORTED START"=スタート中断』を指示したのでグリッド上で待機しないといけなかったのに、ノリスが追加フォーメーションと誤解して勝手に発進し、後ろの人も付いて行って『赤信号、みんなで渡れば怖くない』状態だったというのが真実でした。運営はちゃんと重機の横を車が通らないように取り仕切ったはずだったわけですね、間違った批判してすまん。
 これで上位4人はスタート手順違反で審議になってしまいますが、指示を無視して勝手に走ったら理屈としてはけっこう重罪ですね・・・

 せっかく1時間半も繰り上げたのに12時47分に改めてスタート手順開始ということで15分ほど押してしまい、各車がフォーメーションから帰ってくるころにはもう雨が降ってきました。1周の追加フォーメーションがあったので決勝は71周から70周に減らされています。
 スタートではもごもごしているノリスを抜いてラッセルがターン1で先行。ターン10でペレスがスピンした以外は大きな混乱は無かったようで、フェルスタッペンは透明化機能でも入ってるのか2周目にはもう10位になっています。ところで雨でインターミディエイトを履いて直線で床下から火花が出るメルセデスって車高設定どうなってんだ。

 4周目にはベアマンがコース外に飛び出しているようで一時的に黄旗の表示、その後コラピントとの接触の件で審議が出ていたので「ああ、コラピントに当てられたんか。」と思ったら、なんとベアマンはコラピントに追突して自分で回っていました。ところがレース スチュワードは事故を起こしたとしてベアマンに10秒加算のペナルティー、損したのは明らかにベアマンだしコラピントに大きな問題は無さそうなんですが、オカマを掘ったという事実に対してえらく厳しい対応が取られました^^;
 現状そこまでの大雨では無いのでみんなタイヤとしては温度が上がりすぎているようで、7周もすると直線では水のあるところを求めに行く状況。ラッセルとノリスがほぼ1秒差でにらみ合い、少し離れて角田、オコン、ルクレールのトップ5でフェルスタッペンはもう8位、目の前にいるのはピアストリです。ここはさすがに抜くのに時間がかかるのかと思ったら、10周目のターン1で慎重にレコード ラインを走るピアストリを全く相手にせず、『え、何で止まれるんですか』というラインであっさり内側から抜いてしまいました。過去にも雨のインテルラゴスで一人だけ全然違うラインで速かったことありましたよね。

 13周目あたりからはまた雨が強くなってきたようで、ちょっと画質が悪くて見にくいんですけどさっきより大きな雨粒が映像でも確認でき、ドライバーも直線で水を拾いには行っていない様子。この後も強い雨が来る予想みたいですが、タイヤの溝が減ってきている状況下で路面水量が増えることで段々滑りやすくなってきたようです。
 さらに雨が増えてきたっぽい21周目、突然こっそりと周回数表示が70周から69周に書き換えられ、その後にテロップでも69周のレースだというあまり見かけないものが登場。ということはノリスが間違えて勝手にやった幻のフォーメーションラップも存在としては認知されたということでしょうか。これは「えー、責任審判の白井です。」とマイクで説明してほしいですね。マジで規則上はあれどういう扱いなんでしょう、ざっと競技規則を読んでも勝手に走った場合の規定なんて見つけられなかったんですけどw
 
 24周目、3位はなお角田が守り続けてオコン、ルクレール、フェルスタッペンが続いていました。するとこの周を終えてルクレールがピットへ、どしゃっと雨が来そうなこのタイミングで新しいインターミディエイトに交換です。ノリスの方も雨が強くなってきたので『ラッセルをアンダーカットするためピットに入りたい』と主張しますが、入ったら集団に埋まるしまだタイヤは行けるから、とジョセフからなだめられます。雨のレースでインターからインターでの作戦レースってなかなか貴重ですね。 
 27周目、さらに強まる雨の中でヒュルケンベルグがターン1で飛び出して停止。ちょうどリーダーのラッセルは最終コーナーを立ち上がったあたりなので、VSCを読んでピットに入るか注目でしたがノリスと共にそのままとどまりました。その後VSCが宣言され、中団の人たちは安心してみんなピットに飛び込みます。
 後ろの動きを見てからラッセル、ノリス、角田がピットに入りますが、ヒュルケンベルグは自力でその場を立ち去れたのでなんとピットに入る前にVSC終了のお知らせ。そしてこの2周のいずれでもピットに入らなかったオコン、フェルスタッペン、ガスリーが見た目上のトップ3となります。ここにタイヤを換えたラッセル、ノリス、角田が続いてるのでVSC終了による損失はそこまで大きくなかったっぽいですね。

 ここで角田だけはインターではなくウエットを選択しており今の条件では合っている模様ですが、ウエットが役に立つような状況ってだいたいレース続行不能の一歩手前です。雨が強すぎて赤旗でも出たらオコン優勝やなあ、とか思ってたんですが、30周目に悪天候によりSCが導入されてしまいなんか笑い話ではなくなってしまいます。SC直前にノリスはラッセルをえらくあっさりとターン4で抜いて4位に浮上していましたが、このまま終わられると大損。
 まだタイヤを換えていない3人はSC導入でピットに入る機会でもありましたが、やはりレッドフラッグで労せずしてタイヤを換える、あるいはそのまま終わってしまうことも視野に入れているのかそのままステイアウト、するとSC中になんとコラピントがターン13あたりでスピンしてクラッシュ。どう見てもSC走行継続は無理で本当にレッドフラッグになりました。ラッセルは無線で「せやからステイアウトやって言うたやろ!」と激怒。私もこういう状況はVSCの時点で想像したんですが、悪天候で赤旗にまで至るのかを予測するのは困難なので結果論ですかねえ。

 中断している間にみんなタイヤや壊れたウイングなど交換も行い、そしてさっき自力で復帰したと思ってたヒュルケンベルグが実は神の手によって助けられていた、という笑うしかないリプレイと共に失格の表示が出ました。運悪くカメの子状態で動けなかったので見かねたマーシャルさんが助けてくれたっぽく、まあひょっとしたらニコも失格だとは分かってるけど危ないしその場を離れるための手段として『最高ではないが出来得る最善』という感じだったのかもしれません。

 助けたマーシャルさんがすんごい喜んでるっぽいんですけど、ラリーじゃないんで助けたらだめですよ、いやラリーも厳密にはダメなんですけどw

 現地14時2分というほぼ本来のレース開始予定時刻にレース再開。引き続き混乱しているっぽい運営は14時2分と書いたりいきなり14時6分という情報が混ざったりバタバタです、見ながらこの文章下書きしてるんだから無茶苦茶な情報を次々放り込まないでw
 さすがにこの状況でスタンディングによるリスタートを採用するほどアホではなかったのでローリングで34周目にリスタート、おそらく全員が新品のインターミディエイトへ交換しています。後方ではリスタート前からターン12でベアマンと周 冠宇がスピンしたらしくコース外でおたおた。ちょっと車が走らないとすぐにやってくる鳥さんがけっこう近い距離で眺めていますが、もうレース始まるので撥ねられないよう早めに逃げてね。
 正直視界もむちゃくちゃ悪くてまだ難しい状況となっており、ノリスがいきなりターン4で飛び出してせっかく抜いたラッセルに抜き返されると、36周目にはまたベアマンがターン6でスピンし、おかわりでターン12も止まれずはみ出す大暴れ。さらに39周目にはサインツがターン8のブレーキで回ってしまい、壁に突っ込んで即座にまたSCとなりました。白線踏んで回ったっぽいので凡ミスと言えば凡ミス。
 
 この3日間で一体どれだけの修理費用がかかっているんだろうかとちょっと気になるので『突撃カネオくん』で特集してもらいたい気持ちになってきましたが43周目にリスタート、こんな状況だからやめといたら良いのにオコンがかなり加速のタイミングで駆け引きをします。しかし駆け引きもむなしく、フェルスタッペンはターン1でまた『どうやって止まってるねんライン』でオコンをかわしました。そして後ろではノリスがターン1で止まれず飛び出して7位に落ち損失が拡大、前がピアストリになったので後ほど道を譲ってもらい6位には戻しますが、フェルスタッペンが遥か遠くになってしまいました。

 前に誰もいなくなったフェルスタッペン、少しずつ路面状況が改善していることもあって最速をひたすら塗り替えながらオコンを置いてけぼりにしました。アルピーヌとすると勝てなくても2位、3位だったらコンストラクターズ選手権で大阪城の石垣を池に投げ込むぐらい状況が激変しますが、4位になったラッセルが徐々に追い上げてガスリーに迫ります。ノリスはルクレールを抜けず6位で完全に停滞モード。もうこうなるとフェルスタッペンを呪うしかありません。
 しかしここからは急にレースは落ち着いてしまい、誰もミスらないし抜けないしで終盤へ。目立ったのはペレスとローソンがまたやり合い、ローソンが「アイツ俺の側面にぶつけてきやがった。」とまた怒られそうなことを言ったぐらい。フェルスタッペンは最終的にオコンに20秒近い大差を付けて第10戦スペイン以来約5か月ぶりの今季8勝目を挙げました。今ブラジルでレースしてるのにずっと広告で『次はラスベガス』って出てるのがちょっと個人的にはくどいですw

 フェルスタッペンは17位から優勝しましたが、延べ1121戦が開催されたF1世界選手権の歴史でも17位以下からスタートして勝ったのは史上5回目だそうです。さすがに勝てませんでしたが2位にオコン、3位にガスリーが入ってアルピーヌが2人で表彰台。仲の悪い2人がレース後に車を並べたのでぶつけ合いでも始まるのかと思ったらちゃんとお互いに健闘を称え合いました。

 フランス人選手2人が表彰台に並ぶのは1997年スペインでオリビエ パニスとジャン アレジが記録して以来。またこのチームによる2人の表彰台はロータスと名乗っていた2013年の韓国でロマン グロージャンとキミ ライコネンによって記録されて以来11年ぶりで、つまり2014年のハイブリッド時代では初めて、当然アルピーヌという名称のチームでも初めてでした。フランス籍のチームのフランス人ドライバー2人が表彰台、っていうといつ以来になるのかは分かりませんでしたがひょっとして初めてだったり?何にせよ、一気に33点も稼いだアルピーヌはコンストラクターズ選手権で9位からいきなり6位になりました( ゚Д゚)

 最初のスタートの際に指示を無視して勝手に走ってしまったことで審議となった面々は、審議の結果1列目のノリスとラッセルは問題の主因だったとして5000ユーロの罰金と戒告、後ろにいた角田とローソンは釣られただけで問題を引き起こした主因ではないので罰則なしとなりました。いずれもしてもレース結果への影響はなく、4位からラッセル、ルクレール、ノリス、そして角田と続きました。角田はSC運が無かったうちの1人ですが、リスタート後に続けて抜かれた部分以外は大きな失敗も無く得られる最大限の結果を持ち帰ったと思います。8位にローソンを回して10秒ペナルティーを食らったピアストリ、9位にピアストリにやられたローソン、そして10位はMP4/5Bでレースに出られたらいいのに、と冗談を言っていたハミルトンでした。
 チャンピオン争いは、結局フェルスタッペンがスプリントで4位になって3点を獲りこぼしただけでほぼ満点に近い結果を出したためノリスとの差が一気にレース前の47から62に開きました。そして今回の優勝で年間優勝回数でノリスが並ぶ可能性が無くなったのでタイ ブレイカーもフェルスタッペンのものとなり、フェルスタッペンの優勝マジックはおそらく24となっています。つまり次戦で優勝したらチャンピオン決定、残りの3戦で8点ずつ取るだけでもチャンピオンですからもう王手と言える状況です。

 色々ありすぎて何がなんだか分からなかったサンパウロ、私は個人的にチャンピオン争いの山場は『秋休みの間の開発を経てアメリカでフェルスタッペンが一定の歯止めをかけられるか』『最後の6戦中最も不確定要素が多く配点も多いサンパウロをどちらが有利に進めるか』の2点じゃないかと思っていたんですが、不確定要素と予選でのまさかの低迷をひっくり返してしまったのはもうお見事としか言いようがなく、上記2点とも見事にクリアしたフェルスタッペンおめでとう、とフライングで勝手にお祝いしておきます(?)
 ノリスにとっては運がないレースでしたが、じゃあ例えばノリス1位、フェルスタッペン6位の状態で悪天候で一回中断しました、タイヤを換えてあと30周レースやりました、という状況があったと仮定してもノリスとフェルスタッペンの勝利確率は五分五分ぐらいではないかという印象です。フェルスタッペンはそのぐらい図抜けており、抜かないといけないという状況なら隙を見つけて仕掛けていったことでしょう。
 両者の明暗を分けた要素として30周目に出された悪天候を理由とするSC導入があり、ノリスや角田のファンからすると「おかしい」という声や、「ウエットいらない」「安全ばかり言いすぎ」といった意見が目に入りました。私も個人的な見解があるんですが、長すぎるので別記事を起こしてそっちに任せますw

 次戦は2週間のお休みを経てラスベガス、カタール、アブダビと続くシーズン締めくくりの3連戦。ラスベガスの決勝は現地時間で土曜日の22時スタートなので、日本だとちょうど日曜日の昼間になります。私はまたどっかに写真を撮りに行っていてライブで見ていないかもしれませんw

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
普段はF1記事にはコメントしないんですが・・・ってか、NASCARの観戦記の終盤を書いているところだけども、中断して。僕はセナの活躍をリアルタイムで観ていた世代なので、主さんよりは大分年上です。1993年のブラジルが、まさに大雨でプロストがリタイア、ペナルティがありながら、ウェット、ドライにいち早く履き替え、経験不足のヒルを逆転して優勝。ハミルトンはセナファンを公言しているけど、かなり子どもの頃の記憶なんでしょうね。当時は地上波なので、マニアックな解説もなく、ハードルが低かった気がします(各ドライバーにテーマ曲あったし)。この状況で勝てるのはさすがマックス。それだけ書きたかったので、またNASCARに戻ります。それではっ!
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 私はセナが最後の年でもまだ8歳でしたから見ていたと言えば見ていたし見ていないといえば見ていないレベルですけど、それでも雨のセナ、マクラーレンホンダ、というのは物心ついた6歳の子供に多大な影響を与えましたね。直接レースをテレビ越しに熱心に見ていたわけではなくても、その存在自体がF1そのものであるかのように今のドライバーにも何かしら影響を与えていると思います。
 ちなみに「セナのテーマ」とかは名前だけは後年知ることになりますがどんな曲なのかは全然覚えていません、オープニングのTRUTHと、あとは放送が終わった後に出てくる「凍ったバナナで釘が打てる」のCMぐらいですw
カイル・プッシュ さんのコメント…
横入り失礼します。セナのラストイヤー、ボクは27才でした。主さんより相当年上ですね。
セナの名前を初めて知ったのはまだF3に乗ってた頃で、その頃の雑誌は「アイルトン・セナ」ではなく「ダ・シルバ」って呼んでました。
ボローニャのニュースが流れた時に、試合中にも関わらずのブラジルのサッカースタジアムで、” OLE OLE OLE OLE, Senna, Senna ! " って観客が大合唱を始めたんです。それを日本のニュースが取り上げてました。
ブラジルはもちろん、日本でもどれだけセナが受け入れられていたのかがわかりますよね。
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 たまたまセナとホンダという存在が結びついたことから生まれた日本との縁ですが、彼が亡くなり時間が経過していく中で、本田宗一郎との出会いというのも全て最初から決まっていた運命ではないかと思ってしまうぐらい、本当に何年経って振り返っても大きな存在だと思います。