NASCAR 第17戦 アイオワ

NASCAR Cup Series
Iowa Corn 350 Powered by Ethanol
Iowa Speedway 0.875miles×350Laps(70/140/140)=306.25miles
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Advance Auto Parts Ford Mustang Dark Horse)


 NASCAR カップ シリーズ、今週は初開催となるアイオワ スピードウェイ。カップシリーズとしては通算176か所目の開催地となるそうです。1周0.875マイル(インディーカー基準の計測だと0.894マイル)、ターンでは12~14度、フロントストレッチにも10度のバンク角が付いており、形状としては0.75マイルのリッチモンドと似たような構成。それもそのはずで、このトラックのデザインを手がけたのはリッチモンドで通算6勝を挙げているラスティー ウォーレスによるもの、トラックの所在地の住所も『アイオワ州ニュートン市 ラスティーウォーレス ドライブ 3333番地』となっています。
 2006年に開場してこれまでにエクスフィニティー シリーズが2009年~2019年に20回開催。回数が妙に多いのは2010年以降年間2回開催だったためで、特に2016年以降は第14戦・19戦と短い間隔で2度開催されていました。他に、今年は来ていませんがクラフツマン トラック シリーズも2009年~2019年に、そしてARCA メナーズ シリーズは2006年からパンデミックを挟んでもずっと開催されています。
 所在地のアイオワ州ジャスパー群ニュートンという場所はアイオワ州の州都・デモインから東へ40マイルほどの位置にありますから州の中心部から比較的近い立地だと思います。アメリカ大陸を東西に突き抜ける州間高速道路80号線を使うとほぼ一直線にたどり着けるので車で移動するにもたぶん苦労しないと思われます。
 時代が古いので参考にもなりませんが、エクスフィニティーで2011年の春からリッキー ステンハウス ジュニアはアイオワ3連勝の記録を持ち、ブラッド ケゼロウスキーも2009年の初レースを含め通算3勝。直近の2019年はクリストファー ベルとチェイス ブリスコーがそれぞれのイベントを制しています。

 今回レースを開催するにあたりトラックの一部には再舗装が行われました。NASCARとしてはできればそのままの舗装でレースを開催したかったようですが、昨年秋の調査でちょっと問題があったので手直し。全面再舗装ではなく主にターンの内側半分だけをやり直したので見た目には正直あまり美しくありません。使用されるタイヤはオールスター戦で『プライム』として使用されたのと同じタイヤが使用されます。

・レース前の話題

 トゥルーエックスの引退というのが今週最大のニュースでしたが、新規参戦を模索する人たちに関する情報も出てきました。エクスフィニティーでJRモータースポーツを手掛けるアーンハートジュニアはこれまで度々カップシリーズへの拡張を目指す意向を示してきましたが、あまりに高すぎるチャーター価格を前にして今のところは動かない意向であると話しました。今となってはチャーター価格が数百万ドルだった際に買わなかったことを後悔しているようです、投資ってそういうもんですよね^^;
 一方でもう1人NASCARに関心を示しているのがマイケル アンドレッティー。F1への参入計画がかなり高い壁になって実現が難しそうな中でNASCAR参入の噂も昨年から続いています。アンドレッティー グローバルの主要スポンサーの1つであるゲインブリッジがこのところスパイアー モータースポーツでスポンサーについており、スパイアーが着々と組織を拡大させていることからスパイアーの活動はアンドレッティー参入の足掛かりではないか?という見方もあります。そんなアンドレッティー グローバルに関し、マイケルの父・マリオ アンドレッティーがジュニアさんのポッドキャストに出演して対談、その中で

「マイケルが私たちのスポーツのあらゆる側面に関わっていることで、私はどこに行っても自分の居場所を見つけることができるんだ。もうすぐカップ戦でも自分の居場所が見つかるかもしれない。その時までまだ生きていることを願ってるよ。」

と思わせぶりな発言。番組内ではジュニアさんがマリオ御大に対して

「もし方向転換したいなら、アーンハートとアンドレッティーが協力してNASCARのチャーターを2、3個買うというのもいいかもしれませんね。」

と提案する場面もあったそうです。スパイアンドレッティージュニアモータースポーツ、どうでしょうw

 次に、ソノマではキャム ウォータースをスポット参戦で起用したRFK レーシングがシカゴ市街地のレースで再び3台目を出走させ、今度はジョーイ ハンドを起用すると発表しました。かつてはBMW、その後はフォードでGTレースに出場していることでお馴染みのハンド、一昨年はリック ウェアー レーシングからロード コースの6戦に出走しており、それ以来となる久々のNASCAR登場です。

 最後に、前戦で今年のFOXによるカップシリーズ中継は全て終了しましたが、今年の視聴者数は平均336万9000人と昨年より1%増加したとFOXが明らかにしました。今年は最大のイベントであるデイトナ500が月曜日に順延され、インディアナポリス500の遅延によってコカコーラ600も時間重複によりお客をいくらか取られましたが、それでも前年比で増加したので比較的健闘しました。FOXによれば、デイトナ500が月曜日に延期されたシーズンで前年比増加だったのは初めてだったそうです。



・ARCA Menards Series Atlas 150

 珍しく冠スポンサーがジェネラル タイヤではないARCAシリーズ第7戦 兼 ARCA東シリーズの第5戦。コナー ジリッシュとウイリアム サワリッチがレース終盤にかけて激しい争いを見せ、というか内側のラインで不利なサワリッチがゴリゴリやってなんとか接戦に持ち込んでいましたが、残り3周からのリスタートで見事に千切ったジリッシュが優勝。主戦場とする東シリーズではこれで今季5戦で3勝目、同時エントリーという形になる全国シリーズではドーバーに続いて2戦2勝となりました。ちなみに多重事故が多すぎて、出走した26人のうち10人は完走できず、マルコ アンドレッティーもそのうちの1人で24周でリタイアしました。

・Xfinity Series Hy-Vee Perks 250

 どうやら再舗装された部分はタイヤへの負担が大きいようで、エクスフィニティーではタイヤの破損によるクラッシュが多発。ステージ1・2を制したのはチャンドラー スミスでこのレース最多の131周をリードしましたが、最終ステージに入ってリスタートで順位を下げると戻ってこれなくなってしまい8位に終わりました。
 対照的にレース後半に調子が良かったのはサム メイヤーで、オーバータイムでのライリー ハーブストとの争いを制して今季2勝目・通算6勝目を挙げました。過去の5勝はロード コースで3勝、1.5マイルで2勝だったので1マイル以下のトラックでは初勝利となりました。ハーブストはちょっとイライラしていたようで、レース後にメイヤーにぶつけて去っていきましたがそこまで尾を引く感じではなさそうです。


 3連勝を狙ったシェイン バン ギスバーゲンは今回予選が雨で行われなかったので指数予選で2位のはずでしたが、練習走行で事故って車を壊したので後方スタート。そして決勝でも単独スピンして86周でリタイアとなっています。

・カップシリーズ
 予選

 記念すべきアイオワ初のブッシュ ライト ポールはカイル ラーソンが獲得。ライアン ブレイニー、ジョッシュ ベリー、ウイリアム バイロン、ケゼロウスキー、ブリスコーと2位から6位はヘンドリック1人にフォード勢3チームが万遍なく混ざっています。トヨタ車ではタイラー レディックの8位が最上位、引退を表明したトゥルーエックスは31位でした。また、当初はMBMモータースポーツがデイビッド スターを擁して出場する予定でしたが、スポンサーが集まらなかったので不参加となっています。


・ステージ1

 エクスフィニティーの感じからすると外側からのスタートが圧倒的有利かなと思ったらブレイニーが内側で粘り、3周目にラーソンが内側を少し閉めすぎたため接触。これでラーソンが自分で姿勢を乱しブレイニーが前に出ると、翌周にコリー ラジョーイのスピンにより記念すべきアイオワ初コーションが出ました。事故の原因は、カーソン ホースバーが滑って、外にいたゼイン スミスに当たり、そのスミスが今度はラジョーイに当たる、というスパイアー モータースポーツの3人による自己完結型コーションでした(?)

スポッター「77が71に当たって、71が君に当たったよ。」
ラジョーイ「完璧やん。」

 10周目、ブレイニーが意外なことに内側を選んでリスタートしましたが、ラーソンが豪快に外からぶち抜きました、何で内側を選んだのか私にはよく分かりません。ここからラーソンが単独で後続を引き離して独走となります。一方で信じられないことに、デニー ハムリンは致命的に何かセッティングを間違えたらしく逆走してるんじゃないかと思うぐらいに順位が下がって30周目には31位まで転落しました。逆にさっきスピンしたラジョーイは新しいタイヤで後方勢を軽々と抜いていき、スピン前の20位付近を自力で取り返しました。

 ラーソンは周回遅れを量産しながら快走していましたが、52周目にA.J.アルメンディンガーがクラッシュ。タイヤが壊れたのが原因とみられますが、彼は前日のエクスフィニティーでも同様にクラッシュしており、2日連続で同じような形でリタイアとなりました。2戦で合計86周しかできませんでした。
 ダニエル スアレスとケゼロウスキー以外のリード ラップ車両はここでピットに入ってタイヤ交換。ステージ残り12周でリスタートされ、ターン3つでラーソンがリード奪還。ところが2周後、ブレイニーがすごい勢いでラーソンをかわしました。映像ではなぜ急にそんなに差が出たのか分からなかったので後から見直したところ、ターン2の出口をラーソンは丁寧に脱出しようとしていたら、ブレイニーが1本外側のラインで思いっきり踏み込んで、ラーソンが外へ膨らむよりも前に壁との隙間に思い切って飛び込んでいました。ちょっとリスキーな動きですが一瞬の隙を衝いたすごい動きだったと思います。
 ラーソンはしつこく食い下がりましたが、ステージ1の勝者はブレイニー。2位からラーソン、スアレス、バイロン、ベリー、ジョーイ ロガーノと続きました。7位にはさっきのコーションで2輪交換したラジョーイが食い込みケゼロウスキーが8位。ポイント狙いで変速的な戦略に出た3人は作戦成功ですね。

・ステージ2

 多くのドライバーはさっきタイヤを換えたばかりなのでステイ アウトを選択して78周目にステージ2が始まりました。ブレイニーは最初のリスタートで内側から出て失敗しているので当然外を選びましたが、あっさりと内側からラーソンに抜かれてしまいました。うーん、スティント序盤は遅い傾向の車なのかな?その後80周目にジョン ハンター ネメチェックがちょっと無理な突っ込みでノア グレッグソンを回してしまいコーションとなります。いや、厳密にはグレッグソンは90度横向いた体制から立て直したので回りませんでしたw
ここからちゃんと前を向いたグレッグソン、バンク角の恩恵は大きい

 と、ここでラーソンがなんとピットに入ってタイヤ交換。ラーソンの方から左後輪に違和感があると情報が上がり、ピット側では特に問題は認識していなかったものの、何かあったら怖いのでピットに呼び戻しました。その場で調べた範囲では特に異常が無く、気のせいだったのか見えない何かがあったのか不明でした。これでラーソンが一旦いなくなって87周目にリスタート、強敵がいないためブレイニーがようやくリスタートでリードを守ることに成功しました。ラーソンはドケオラ走法で急いで挽回中。
 
 ブレイニーの後ろにはロガーノがつけていましたが、すこーしずつ差が開いて115周目には1秒差。ちょうどそのころ、中団ではマイケル マクダウルがタイヤのパンクでピットに入っており、20周ほどするとスミスも右前のパンクで緊急ピット。引き続きタイヤ破損は大きなカギとなりそうです。
 NASCAR公式仕様のテロップが130周目の時点で固まってしまって、周回数もタイム差も順位も分からない問題が起きたのでこの後暫くは見ていて困ることになりました。でも走ってる方には関係ないのでレースは続きます。ステージ2は給油しないと走り切れないので、タイヤ爆弾が怖いし均等割りするだろうと思っていたら上位勢は意外と動きがありません。
 記録を見ると上手い人は70周走ってもペースが0.2秒ほどしか落ちないのでタイヤの摩耗が少なく、むしろ1周が短くて平均速度が速い=ピットに入ると2周遅れになり、誰かしらのタイヤ爆発でいきなりコーションが出て大損する危険性を避けたいようです。この間、ロガーノが少し順位を下げて2位にはチェイス、3位バイロン、そして気づいたら4位までラーソンが戻っていました。ヘンドリック恐るべし。
 そのラーソンがついにバイロンに追いついた164周目、争うぐらいならもう換え時と考えたかバイロンが上位勢で最初にピットに入りました。バイロンは1.8秒ほど後方にいたのでアンダーカット警戒なら動くかと思ったらブレイニーはなおもピットに入らず。しかしとうとう真後ろにチェイスが接近し、これ以上引っ張っても抜かれるだけなので172周目にようやくピットに入りました。
サイクル前にテロップが戻ってよかった

 
 この後チェイス、ラーソンもピットに入り、バイロンはアンダーカットに成功してピット組で先頭。ブレイニーは相変わらず寝起きが悪いのかピット後にチェイスとラーソンに抜かれて実質4位まで下がりました。このサイクルの間もロス チャステイン、エリック ジョーンズがパンクでうなだれていましたが、幸い壁にはぶつけずに安全にピットに戻ったのでノーコーション。
 しかしこう連発するといずれコーションが出るんじゃないかと期待してなおピットに入らない人もいる中、182周目にダニエル ヘムリックもパンクでこちらは壁に当ててしまいとうとうコーションとなりました。まだピットに入っていなかった人が得をしてここでピットに入ります。
 逆にすごく損をしたのはベルで、サイクル前は5位を走行し上位勢に少し遅れてさっきピットに入ったところでしたが、ピットを出るころコーションが出たのでこの時点では運悪く周回遅れ扱い。ウエイブ アラウンドを受けてリード ラップ後方からのリスタートを余儀なくされて、クルー チーフのアダム スティーブンスは「人生で最悪のコーションだ。臆病者が」と、さっきまでのパンク車両ではコーションが出なかったのに、ちょっと壁に当たっただけの今回コーションが出たことに怒り爆発です。

 189周目/ステージ残り22周でリスタート。リーダーはなんとピットに入らずステイアウトしたステンハウス。ステージ2開始直後のコーション中に複数回ピットに入っており、給油しなくても走り切れる状態だったようです、でもタイヤは100周以上使った中古品。詰まりたくないバイロンは焦ってやや強引になってしまい、ステンハウスとターン3で接触しました。2人とも姿勢を乱してしまい、その隙にラーソンがリードを奪いステージ序盤での緊急ピットを早くも帳消しにします。
 そのままステージ2の勝者はラーソンとなり、2位はベリー、ベリーを攻撃し続けたものの抜けなかったチェイスが3位でした。ブレイニー、バッバ ウオーレス、そしてコーション待ち作戦になっていたハムリンが幸運をつかんでなんと6位でした。

・ファイナル ステージ

 クリス ブッシャーとトッド ギリランドがステイアウトを選択、ピット組ではケゼロウスキーが2輪交換して219周目にリスタート。彼らはさっきコーション待ち作戦していた人なので比較的新しいタイヤです。そしてこの混戦が悲劇を呼びました、リスタート後の争いで3ワイドの真ん中に入ってターン4を立ち上がってきたラーソンでしたが、内側のスアレスがふらついて接触され、カウンターを当てたものの外へ吹っ飛んでハムリンを巻き添えにクラッシュ。被害者ではあるんですが、元々ラーソンは自分から狭い隙間に入って行ったので、ちょっとこれも先を急ぎすぎてリスクを増やした部分はありそうですね。ラーソンはこのレース34位、ハムリンも24位で終えました、幸運は一瞬だけでしたね^^;

 228周目、ブッシャー/ベリーでリスタート。非常にフェアーな争いを4周に渡って繰り広げた末にベリーが前に出ました。チーム消滅で来年の仕事を探さないといけないベリーですから、こういう走りは非常に重要です。ステージ2でせっかく速かったチェイスは集団に埋まってしまい、この後2位に付けてベリーを追いかけるのはバイロンとなりました。
 この2人の差は2.2秒を挟んでずーっと平行移動でしたが、250周目にブレイニーがバイロンをかわすとベリーより速いようで毎周0.1秒ほど差を詰めていきます。ベリーにとって踏ん張りどころ、と思ったら260周目にブッシャーが単独で壁にぶつけてしまいコーション。80周近く使ったタイヤなので限界だったでしょうか。
 残りが90周を切っているのでこれで最後のつもりでみんな迷わずピットへ。ここでブレイニー、ロガーノ、ステンハウスの3人が2輪交換の勝負に出て、ベリーは4輪交換組としては最上位でしたがピットを出たのは4番目でした。

 残り84周、ブレイニー/ロガーノの1列目でリスタート。ステンハウスは蹴り出しが遅くて後ろにいたベリーは詰まってしまい撃沈。一方でステンハウスは出足が悪かった割には盛り返してロガーノを抜く奮闘を見せます。どうもロガーノにはトップ3級の速さが無い雰囲気です。
 275周目にバイロンがステンハウスを苦労して抜き2位浮上、ブレイニーとの差は1.1秒。バイロンはこれを0.7秒までは詰めましたが、ここから先が一進一退となって残り周回数だけが減っていきます。ブレイニーは周回遅れもわりとサクサク捌いていくのでバイロンの助けにはなってくれません。
 残り22周、マクダウルが本日2度目のパンクに見舞われたのでこれはバースト祭りでもう一波乱あるか!?と思ったらその後は特に何も起こらずそのまま最終周へ。最後までブレイニーとバイロンの差は0.7秒のままで、2輪交換の勝負手を使って見事に逃げ切ったブレイニーが今季初勝利を挙げました。


 バイロン、チェイス、ベル、ステンハウスのトップ5。ステンハウスは今季ここまでアトランタとタラデガの2回しかトップ10フィニッシュがなく、それ以外ではカンザスの16位が最上位でしたが今日は巧みな戦略で見事な結果でした。6位ロガーノ、7位ベリー、33位スタートだったアレックス ボウマンが8位で、スアレス、ケゼロウスキーのトップ10でした。ギリランドが12位、ジャスティン ヘイリーがステージ2では10位に入る奮闘で13位でした。

 昨年のチャンピオンであるブレイニーがようやく初勝利、ガス欠で優勝を手放した時は穴にハマるんじゃないかと思いましたが、ショート トラックではペンスキーがかなり手ごたえを掴んでいる様子ですね。ブレイニーとジョナサン ハスラーは、序盤のリスタートでのレーン選択は多少謎な部分がありましたが、タイヤが全然へたらない安定した車を仕上げ、ブレイニーは的確なライン取りで周回遅れを全然苦にしない落ち着いた走り。そして最後のコーションでの2輪交換は見事でした。
 まだ80周以上残してのリスタートになるので当然4輪交換が主流と予想が付く中で、直近の目標であるベリーは経験値から言っても絶対に4輪交換で来ると考えられます。ここで、同じ戦略にしてしまうと後ろにはヘンドリック勢もいますし自分たちはちょっとリスタート直後が弱いので、だったら先頭からリスタートさえしてしまえばあとは行ける、という読みが大正解でした。そこに、同じ2輪交換でチームメイトのロガーノだけでなく、ステンハウスという不確定要素も混じってくれたのはボーナスでした。

 バイロンはせっかくステンハウスがリスタートで出遅れてくれたのでここで3位を確保していたらまた違った展開になったと思うんですが、チームメイトのチェイスが「リスタートから最初の10周ぐらいはタイヤに気を付けて抑えろ、そしたらその先は行って良い」という指示を受けて走っていたそうなので、バイロンも同様にタイヤを気にして無茶しないようにしたのではないかと思いました。残り30周のリスタートならもっと積極的な走りだったかもしれません。
 これで今季の優勝者は10人目、レギュラー シーズンはあと9戦。カイルだけでなくロガーノも現在はポイントでプレイオフ圏外になっていますが、チームも本人も調子は上がってきているのでまだ全然分かりませんね。
 
 一方でまた今回も苦しいレースとなったのはカイル ブッシュでした。レース全体を通して苦戦し、他のドライバーの動きに対して無線で文句を言いつつなんとか最終ステージを10位で走っていましたが、270周目に突然ラインを外れて急失速。原因はパンクではなく左後部の何かしらの破損で、後の情報ではコントロール アームが外れていました。これでまともに走れなくなりピットへ。
 その後ガレージで修復してなんとか復帰、したら今度はパワステが壊れてまたすぐガレージ送りとなってリタイア。現在プレイオフ順位で18位と圏外になっています。レース中のインタビューでの「ネクストジェン部品が壊れた」という言い回しも、かつてのケビン ハービックのように「出来の悪い車のせいで俺のレースが壊された」という意図を含んでいるように聞こえてしまいましたね・・・

 ということで初開催のアイオワでございました。元々NASCARはモントリオールでのレース開催を目標としており、期限までの合意ができなかったから保険として用意していたアイオワを日程に入れた、ともされているので、じゃあ来年こそカナダで開催したらここは1回限りで終わるのか?と思ってしまいますが、容量は大きくないですが観客席は満員御礼で土曜日のエクスフィニティーですら

 一時期のブリックヤード400よりよっぽど客が入ってますw 視聴率も上々、バトルも多くて非常に好印象を持たれた様子です。NASCARの公式サイトに掲載された記事には、ちょっと皮肉めいた書き方で面白いことを書いていました。
 5月末に開催されたグッドイヤーのタイヤ用テストにはベル、ラーソン、ケゼロウスキーが参加しており、その時の感触としては再舗装で速度域が上がり、内側のグリップが高いのでみんな1列になってしまって外からは抜けずに追い抜きは難しくなるだろうと予想していました。そしてこのレース後、ベルは「トラックには手直しが必要だね。全面的に再舗装されれば、15年後には本当に良いトラックになるだろう。」と発言。
 しかし、ベルはその手直しが必要で追い抜きが難しいトラックで48回のクオリティー パス(アンダー グリーンで15位以内の順位での追い抜き)を記録し、自分で言っていることに自分のレース結果で反証。チェイスにいたってはクオリティーパス72回を記録しました。ラバーが乗ると各ドライバーは外側のラインも積極的に活用し、2ワイド・3ワイドの争いを展開してショート トラックではなく1.5マイルのレースを見ているようなレースを見せてくれました。
 ハムリンもまた、翌日に全面再舗装を支持する発言をしたそうで、大外まで全部綺麗な路面になったらもっとみんな幅広く使えるようになるのでもっと面白いレースになる、と考えているそう。しかし、プログレッシブバンクのここで大外を使いやすくしすぎると、今度はブリストルのように大外最強理論になってしまって内側を誰も通らなくなるという真逆の副作用を生む恐れがあると記事では指摘、そしてこう結びました。

したがって、アイオワ スピードウェイでは何もしないことが最善の策かもしれません。

壊れていないのであれば、修理しようとする理由はありません。

 どっちが正しいのかは分かりませんが、アイオワがカップシリーズを開催するに値する面白いトラックであり、来年もこのトラックでのレースを見たいと思わせてくれたのは間違いないと思います。次戦はマジック マイル・ニューハンプシャー、トラックシリーズはもう1週間お休みです。

コメント

アールグレイ さんの投稿…
アイオワは2011年のエクスフィニティーのレースで、ステンハウスが最終ラップでエンジンブローしてチームメイトのカールエドワーズに追突されながらも勝利したイメージが強いです。

下部シリーズで頑張っているマルコアンドレッティのカップデビューもスパイアーからになるのかな?と思うとワクワクします。
実際去年はスパイアーからゲインブリッジのスキームでトラックシリーズにスポット参戦していますし。

ブレイニーのカップ戦初開催トラックでの勝利は2018年のシャーロットローバル以来ですが、元々アイオワではエクスフィニティー、トラックシリーズで勝利経験があるんですね。
見事に1回目のチャンスで3シリーズでの同一トラック制覇を成し遂げる辺り、やっぱり持っているドライバーですね。
今回のトップ5の中でもチェイス以外はアイオワのエクスフィニティー戦で勝利を挙げていますし、アイオワにNASCARが帰ってきたのが5年ぶりでもこのトラックを経験していることは大きいんだなと思いました。

そろそろロガーノ、カイルは勝たないとプレイオフ進出も怪しくなりますね。
いつかは勝つだろうと思っても、どちらも1年以上勝利から遠ざかっていますし、ポイント的にも当落線上になっているので、ちょっと今の状況が信じられないです。
この時期はカップシリーズに近年追加されたトラックでの開催も多いので、それまでに勝っていないと結構苦しくなってしまうと思います。

次戦でもうシーズンの折り返しを迎えますね。
今戦は通常はお休みのはずの父の日の週で開催していますし、今年は五輪での夏休みがあるとはいえイースター週もレースを行うようになってからはシーズンの流れが早く感じます。
来年はイースター開催は無いようですが、父の日週でのアイオワ戦は定着できるといいなとも思います。今回面白かったですし。

エクスフィニティーやトラックシリーズでは海外開催がありましたが、調べてみるとカップ戦の公式戦では1958年にトロントのエキシビションスタジアムで行われたのが最後なんですね。
今のLAコロシアムみたいな特設会場でレースを行った様ですが、リチャードぺティのデビュー戦でもあったのを知って、驚きました。
日日不穏日記 さんの投稿…
アイオワは、インディカー・シリーズで何度も観てましたし、武藤英紀が、日本人初表彰台、佐藤琢磨がPP獲得と、割と日本人には馴染みのあるトラックなので、カップ戦で観たいと思ってました。が・・・<推しの子>(いい加減に止めろ!)アルメンディンガーとカイルが消えてしまい、ガックリです。まさに「ステンハウスの呪い」と言いたくなります。今年はもうダメかも、と思い始め、トップに立った求職中のベリーを応援してました。ルーキー枠ですが、今のスチュワートの中では、かなり健闘していると思っています。カナダでの開催がそんなに前と知ってビックリしているんですが、特にペティやピアソンの全盛期だった1960年代は60戦以上レースをしていたようですから、その頃なのかな、と思ってました。キャパはそれほど大きくないとは言え、インディでも観客は入ってるし、今年もダブルヘッダーやるみたいで、アイオワは、オートクラブが改修中、ジル・ビルヌーブサーキットでの開催が頓挫した状況で開催したと聞いていますが、引き続き開催して欲しいと思ってます。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 カナダのレースは全然知らなかったので調べてみたら、後のトロントブルージェイズの本拠地球場になる場所なんですね。U2とかポールマッカートニーとか有名人のライブでも使われてるし、日本で言うと後楽園球場でレースやった、みたいな感じでしょうか。1952年にもダートトラックで1回だけ開催されてこれが初の海外戦だったみたいですが、出走した17人のうち3人しかチェッカーを受けられなかったそうでw

 残る日程を考えるとデイトナはその時次第、シカゴはロードで上手い人が勝つから現実的に捨てレースと考えると、プレイオフ当落線上のベテラン勢が勝負できるトラック限られてきてますね。ロガーノはまだポイントでどうにかなりそう、と言ってもデイトナで変な人が勝ったら当選ラインが上がってしまうし、まだ6月ですがそんなに時間が無いなと思います。オリンピック休みは転機にはなるかもしれませんけど。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 私もひょっとしてベリー行けるんじゃないかと期待して応援してましたよ~、そう甘くは無かったですけどw
 いわゆる近代NASCAR以前の初期の時代って日程を見たら前年末からシーズンが始まっていた李、2日連続で別の場所でレースしてたりおそろしい日程(その上ストックカーなので自走して現場へ行く必要がある模様)が組んでありましたからね。一体当時のレース現場はどんな雰囲気だったんでしょうね~、なんか壮大な草レースという印象を受けてしまいますけど。