さすがに言いたい、安倍元首相国葬(4)

前回の続きです。

 さて、このクソ長ったらしい話をまとめにかかります。ここまで読み進めた貴方、素晴らしい忍耐強さです。御礼申し上げます。誰一人ここに到達せずSASUKEの最終ステージと化しているかもしれません。ここまでは国葬になぜ反対するのかについて書きましたが、最後は現在の社会全体を通して感じる危機感などについてです。

 2022年の参議院議員選挙、銃撃事件が無くても正直怖さを感じるものでした。おそらく巷で有名なのはNHK党から出馬して比例代表で当選したガーシー(東谷 義和)。私は全然知らない人ですが暴露系YouTuberだそうで、選挙前からドバイに出国していて日本におらず、当選後も「不当逮捕されるおそれがある」と帰国しない様子。

 たぶん皆さんの方が詳しいと思いますが、有名YouTuberの名前を勝手に使って企業に売り込み、広告費用等を騙し取る詐欺行為を働いたことが、そのYouTuber本人からの動画による告発で発覚。捕まるまいと知人のつてでドバイへ脱出。元々本業の傍ら芸能関係の付き合いが多く『アテンド』という旅行やらお店やらを手配する雑用みたいな仕事を引き受けていたものが、この一件で芸能人から掌を返されて批判されたために、復讐として芸能人のプライベート暴露を開始したとされています。

 ここにさらに、「BTSに会わせてあげる」という嘘の内容でお金をだまし取る詐欺行為も行っていたことが明らかになり、こちらは他の人に立て替えてもらって弁済したとしていますが、詐欺行為を働いたことが消えるわけではありません。政見放送ではただ自分の動画の延長線上のことをやっているだけ。規則で『政見放送の内容は作成したものはそのまま放送しなければならない』としていることが無法地帯化を招いた形です。

 「品位を損なう言動をしてはならない」とはされているものの、品位を具体的に定義づけられなければ裁量でこうなります。モラルの欠片も感じない『違法でなければ問題無い論』。根本的に詐欺行為を働いておいて国外へ逃げている段階で人として間違っています。
 しかし、野党の国会開会要求を無視するような政党が政権を担当して『違法でなければ問題無い論』を振りかざしていることを考えると、彼らやこの考えを支持する人には批判する権利が無いような気もします。今回の選挙では選挙公報にも「在日朝鮮人に支配されている」という低レベルな妄想を堂々を書き込んでいる候補者もいました。確実にこの国の倫理観は崩壊しています。
  

 『投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる。』をキャッチコピーにし、結果的に1議席を獲得した参政党、一見優しそうな雰囲気に見えますが、党の公式サイトに掲載されたメンバーやアドバイザーには偽科学や陰謀論を主張する面々が複数含まれています。
 党の5つの公約には『自民党、統一教会・幸福の科学等の信仰宗教、グローバル勢力の手先になるような政策は進めない』、別の記事で『嘘をつくのはいけないし、それに乗せられ、ちゃんと調べもせずにそれを拡散するのも、やった人が業を積むことになる』と書いてありますが、中身を見ると疑問だらけ。

 党の設立者である(既に党を離れている)渡瀬 裕哉という人は、ワシントンタイムズの日本語版サイト・ワシントンタイムズジャパンが2019年に設立された際に『エグゼクティブ ディレクター』として起用されており、2020年にUPFが開いた『インターナショナル メディア アソシエイション オブ ピース』という式典にも出席して講演しています。UPFの公式サイトを見ると、このイベントは『文鮮明氏の生誕100周年記念式典と同時に開催された』そうです。

 今回議席を獲得した神谷 宗幣(かみや そうへい)は、こうした騒ぎが起きる前からSNS等で統一教会がどうのと複数回書かれていたんでしょうが、2022年6月の段階で、自身の公式サイトで

「私も自民党の支部長の時に、議員の方に誘われて行ったら統一教会のイベントだったことがある」「団体の名前が統一教会と書いていなかったので、行って初めて気がついた」「保守系の議員は呼ばれる」としていますが、党の設立者が統一教会系メディアに率先して関わっていた件についてはどうお考えなんでしょうか?
 なお、神谷氏自身も世界日報の関連サイト・ビューポイントにライターとして名前が記載されており3本の記事が掲載されていました。いずれも自身のブログに書いた海外での体験記をそのまま転載しただけのようで、これを指摘されると「勝手に転載されている」としてその後に丸ごと削除されていますが、もしそうなら統一教会系メディアって勝手に他人の名前と記事を盗むひどい組織ですね。
 そうすると、余計にワシントンタイムズジャパンの創設メンバーが参政党の立ち上げに関わっていることが問題になると思いますが、渡瀬氏とのつながりはどうなっているんでしょうか?
 つい最近、参政党には『外部アドバイザー』として、我那覇 真子という人が就任することが本人の動画で明らかにされています。アメリカ大統領選挙の際に、わざわざアメリカから複数のデマを日本向けに垂れ流していたデマ発信源の1人です。そして代表の松田 学という人は、最近安倍氏殺害犯は別にいるとする陰謀論を匂わせています。
 どう見ても党の公約とやっていることが明らかに矛盾していますが、神谷氏がきちんと説明しているとは、私が情報を探した範囲では見受けられません。ちなみに渡瀬氏と、同じく参政党の設立に携わった保守系YouTuberのKAZUYAという人はいずれも2021年に党を離れました。理由はいくつかあるみたいですが『陰謀論に走った』ことが要因の1つだそうです。統一教会と関係あるとかないとかいう話以前に、調べて行くとあまりにおかしな点が多すぎると思います。


 ネチネチと書く私の悪い癖が最後まで出ましたが、それはさておきこうした政党が支持を集めた理由というのは、「政策的には与党寄りの考えだが、何らかの不満があって別の投票先を探したい」という有権者層であろうというのは専門家の解説を見ずともなんとなく想像はつきます。今回で言えば、ワクチン接種反対、行動規制反対、といったあたり。また複数の媒体は「オーガニック信仰」という単語を用いています。すごくザックリしたイメージですけどね。

 つまるところ「既成の政党は信用できない」という単語に収束されるかと思います。日本でウイルス関連の虚偽情報・陰謀論が流布される要因の1つに、公文書改ざんや統計不正が重なって、政府の出してくるデータなど信用できない、という不信感が一定程度は関係したのではないかと私は感じます。2022年8月5日には、統計数値が正しく算出されていないと報じられていた建設工事受注動態統計について、8年間で累計34兆円の過大になっていたことが明らかになりました。

 個人的には、さすがに政権が故意にここまで改ざんを指示したとも、良く見せようとして役人が忖度したとまでも思えないので、単純に組織の疲弊、責任感の欠如、そもそもの統計に対する脆弱な体制、など組織的な構図が重なった結果だろうとは思いますが(ただしそこへ対応することができずこの状況を招いたことに対する政治的責任はあると考えます)、主因がどこであれ、ここ数年で公的な数値すらロクに信用できない物事が多発したのは事実です。

 アメリカではパンデミック後に民主党が政権を奪ったため、いわゆる保守系の陰謀論では専ら「抗寄生虫薬・イベルメクチンが新型コロナウイルスに効くのに製薬業界の陰謀で隠されている」というような主張が広まったとされますが(なんと日本で2021年秋に急速に陽性確認者が減ったのは、日本がワクチン接種を注視してイベルメクチンを配ったからだ、というデタラメを主張する人が現れて拡散されました)、日本では野党の議員でイベルメクチン推しの人が複数確認できるあたりにも、なんとなく『政府がワクチン接種を薦めているということは、ワクチン接種が政府にとって都合の良いもので真実は別にあるんだ』という発想、党派や政治的思想ではなく、単に『政府に対してどちらの立ち位置か』に影響している様子が大雑把なイメージですが感じられます。

 与党は疑惑を追及されても嘘、論点のすり替え、はぐらかしでやり過ごそうとし話を聞かない。話を聞く気の無い相手に正面から向かえず、やがて追求する側の手法も雑になる。日本の政治はなんというか学級崩壊を起こしているように感じます。

 これが政界から1つ広がって言論、と言って良いのかどうか分からないSNSという放言の海へ出ると、もはや目も当てられない状態だなというのが正直なところ。与党を批判するだけで「朝鮮へ帰れ」などと罵られ(インターネット上の僅かな文字数から出身地を判断できる特殊な才能を持ったエスパーがたくさんいるらしい)、具体的な内容も言わず「安倍死ね!」などと暴言を吐く。そしてそれをあげつらって「自民党を批判するのは総理大臣に死ねというような野蛮人」と一からげに扱い、それを傍から見ている人間が「どっちもどっちで酷い」と言いながらトンデモ論に飛びつく。まさに学級崩壊です。

 もちろん、こんなやり取りはごく一部の限られた界隈の話でしかありませんが、そのごく一部に発言力のある有名人が混ざることで少しずつその範囲が広がることはじゅうぶんに考えられます。YouTuberが国会議員になって海外から芸能人のスキャンダルを暴露する活動だけし、「居眠りしている議員とどう違うんだ」と居直られる姿を見ると、いつまで「ごく一部」で済む話なのか、私には確証が持てません。現に、アメリカでは根拠の無い選挙不正を大統領が言い出す事態が起きているわけです。

 本来こんな話はモータースポーツオタクのおっさんが何時間もかけて書くことでもなくメディアの役割だと思うのですが、残念ながらこれまでそうしたことがきちんと行われたとは私には思えません。メディアは仮に全うな政権批判をしても「反日メディア」などと言われ、何もしないと「政権に忖度して批判すらできない能無し」と言われ、どうやっても絶対批判されるので気の毒だなとは思いますが、じゃあ役割を果たしているかと言われるとそうは思えません。
 あ、メディアの主な役割の1つは権力者がその権力を正しく行使しているかを監視することにあるので、政権に対して批判的報道になるのは当たり前の話なので、これを理解できず頭ごなしに批判している人はまず入り口から物事を学んでから発言すべきだと思います。

 例えばアメリカ大統領選挙に関するデマが広がった時、日本メディアはその事実確認や反証の報道にきちんと時間を割いたでしょうか?新型コロナウイルスではどうだったでしょうか?デマは1秒で作れますが、反論するための証拠集めは時間がかかるので、人材と情報量が豊富なメディアが担うべき役割のはずですが、個別に調査力と高い意識を持った個人の方が情報発信している例が非常に多かったです。
 アメリカの選挙について日本で吠えてるバカなんていちいち相手にしてられるか、と放置した結果、どれだけデマが広がって、未だにSNSやyahooコメントに陰謀論者が蔓延っていることか。明らかに嘘なのに利用を停止させていない運営企業も同じです。
 それどころか、メディアは偽医療の情報を発信している医者やSNSでデマ投稿を繰り返す人間の書籍を広告欄に記載したり、専門家として番組に呼んでいるんですから話になりません。掲載内容に問題が含まれていなければ問題がない、そんなレベルでお金をもらって広告を掲載する、出演させるのは極めて無責任です。カルト宗教の広告塔になっているのと何も変わりません。

 昔から俗に「荒らしは相手にするな」なんて考え方があり、これは相手をしても元々矛を収める気なんてないし、相手をすれば喜ぶだけなので放置した方が利口だ、というものですが、残念ながらインターネットの片隅の掲示板で数名だけが盛り上がっていたような時代と違い、今は世界に一斉に発信されてしまいます。きっかけが片隅のデタラメな1人のデマでも、それが簡単に広まる時代となった今、この考え方は改めるべきだと思います。しかし残念ながら、そういった考えに未だに至っていないのではないか?と感じます。

 また、そのやり方も重要で、単にデータを提示して「デマです」と言うと、この手の方は「5年後にどうなっているか分からないんだから、それを今デマだというのがデマだ!」と反論することがあります。これ、論理的に物事を考える人からすると、全く会話にすらならないものだというのが分かるのですが、そもそも「なぜこれが論理的ではないか」を理解できていない場合、ここで齟齬が生じます。

 いくら言ってもそもそも自分に都合の良い情報以外耳に入れる気が無い人はもうどうしようもないですが、そうでないけれどもデマにどっぷり浸かってしまっている、という方もおそらくいらっしゃるはず。そうした層に対しては、表層的な問題からさらに一歩引いた、ここで言う「なぜこれが論理的ではないか」にも進んで反証が必要なことが多々あると思うんですが、このあたりまで説明しているメディアを見たことがありません。
 これをせずに「これが分からんようなバカなやつはほっとけ」という態度を取ることが、より問題を深刻化させてしまうのではないかと思います。「なんか偉そうな奴に上から目線で押し付けられている」という感情を抱いてしまうと、ますます信用されなくなるでしょう。

 話を2ページ遡って、国と森友学園の土地取引では『不正でないという証拠を出す義務が政府にあるから悪魔の証明論はおかしい』というのが大前提としてあるわけですが、残念ながらこの大前提を理解されていない方もいらっしゃるわけです。では、追求しこの問題を発信するメディア、もっと言えば国会で追及する当事者の野党がここまできちんと伝えてくれていたかというと、たぶんできていないです。
 さらに言えば「国有地は国のものなんだからどう売るかは政府の自由」「友達の学校建設に尽力してあげることの何がおかしいのか」という、「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者で はない」「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、 公共の利益のために勤務しなければならない」という国家公務員法の基本原則の時点で理解していない意見すら見られたので、本当に入り口から丁寧に「何について問題になっているのか」を説明する気持ちが大事ではないかと思います。

 そして統一教会の問題。見たところやたらと『ミヤネ屋』『報道1930』といった番組がかなり気合いを入れて報じている様子ですが、しかし立ち止まって考えると統一教会についてはずっと問題視して取材活動を続けてこられた方、被害者の相談、救済にあたって来られた方というのがいらっしゃるわけです。しかし、こうした活動は全くと言って良いほど話題になってきませんでしたし、安倍氏がUPFにビデオメッセージを送っていたことも特に大きく報じられていなかったと思います。
 視聴者に興味が無い、お金にならないからやらないのか、批判して自分たちに何か不都合があると嫌だからなのか分かりませんが、こうしたことを、今のように連日連夜延々と報じなくても、時々話題に上げる、批判する、ということをするだけでも、積み重ねれば全く違う様相になったはずです。

 見られている、という緊張感があれば、安易に祝電を送ることも、動画出演することもしにくくなるはずですし、説明を求める声が大きくなれば対応を迫られるはずです。「霊感商法で騒動になったのは昔の話に思えますが、まだ終わっていないんですよ、両親とも信者のご家庭ではお子さんが苦しんでいることもあるんですよ」、ということが社会的に発信されていれば、銃撃犯は安易に殺害など考えず、誰かに相談できたかもしれません。

 また、安倍氏の周囲には「安倍さん、さすがにUPFのイベントに動画出演するのは良くないんじゃないですか?」「関係があるならあるで、はっきりそう言うべきではないですか?」等の意見・助言をできるような人はいなかったんでしょうか?政権の人事などを見れば、自分に対して反対意見を述べる人は外して、賛同する人で固めているんだろうなという様子は見て取れますが、そのやり方自体にも「ノーを言える人を置かないとダメですよ」と指摘できる人はいなかったんでしょうか?

 嘘をつき、話を逸らし、問題点は覆い隠す。これを繰り返し、国民もメディアもそれに慣れ切ってしまっていったことの積み重ねが、凶行に走らせる遠因ではないかと私には思えてなりません。
 ものすごく悪い言い方をしますが、取り調べの内容として伝えられている話からすると、山上徹也という人物が「爆発物は巻き添えが多いからやめよう」と考えて自作銃を選択し、しかもやたらと研究熱心で、きっちりと道具を作ることができてちゃんと動作したので、犠牲者は安倍氏一人だけで済んだと言えるのではないかと思います。もし暴発していたら、狙いを外していたら、そもそも爆発物で自爆するお手軽な方法を選んでいたら、無関係の多くの人が犠牲となっていても何ら不思議ではなかったはずです。

 『選挙期間中に・元総理大臣が・公衆の面前で・演説中に』殺害されたことで、話が民主主義だとか、警備計画だとか、そちらの方向にややもすれば傾きがち、もっと言えば政権側からするとそれで終わりにしたい雰囲気すら感じますが、もっと根本的に大事なのは『多数の人が集まる場所で殺人事件を、それもわざわざ自作兵器を作ってまで行おうとする者を生み出してしまった』社会全体にあるのではないかと思います。

 もちろんそんな存在を完全に無くすことは不可能ですが、減らす努力はできるはずですし、しなければなりません。そこに、政治やメディアという国民にとって影響力の大きい存在が果たす役割は極めて大きいはずです。そこに目を向けずに、単に統一教会と、なんか逃げ回っている怪しい議員を追いかけ回して叩いて面白がり、視聴者が飽きたら、議員をクビにしたら、それで終わりでは意味がありません。

 そうして尻すぼみになり、また嘘、はぐらかし、やり過ごしを繰り返す行為を容認していけば、社会のどこかにある影をまた見落とし、増幅させ、第2、第3の事件をいずれ生み出すことに繋がるのではないかと思います。その時、怒りの対象は個人とは限らないですし、個人を狙ったからと言って単一の被害者で済むとも限りません。
 責任ある立場の方々にはそこまでを考えた上で行動していただきたいと思いますし、その中で国葬という大々的な形でバッサリと区切りをつけてしまうようなやり方には私は全く賛同できません。(なんだか『弔問外交』『国葬は外交の機会』みたいな単語も目にしますが、これって殺人を政治に利用していてものすごく故人に失礼な気もします)
 山上の目的が統一協会への復讐であるのなら、この混乱というのはひょっとしたら意図した通りの痛快な状況に映っているかもしれません。これは非常に恐ろしいことで、要するに『自分に納得のいかないことがあったら殺人は有効なんだ』『回りくどいことをするより誰か1人殺せば良いんだ』という、テロの有効性を結果的に見事に示してしまっていると考えられるからです。

 一番悪いのは殺人犯です。しかしそこに至ってしまった過程には、警備計画なんていう問題以前に、そんな事件を起こそうと思わせないで済んだはずの要因がたくさんあったはずです。そこには、安倍氏本人の振る舞い、周囲の人の振る舞い、追及する側の振る舞い、そして権力に長くとどめてそれを良しとしてきた有権者にもそれぞれ何かしら関わって来ると思います。
 じゃあどうすればよかったんだ、というと、嘘をつかない、おかしいものはおかしいと言う、間違えたら謝る、こんな当たり前のことが行われているかどうか、その1点だけでも全然違うように思います。逆に、私が言うところの学級崩壊状態に加担することは、最もやってはいけない行動の1つだと思います。

 調べ物をする過程で、細かい情報ソースのヒントを求めてSNSで検索をすることも結構多かったですが(SNSの投稿を鵜呑みにするのではなく、情報源を示しているものを探して、大元の情報源をあたってます)、「文鮮明が祝福をするポーズと安倍のポーズが同じだ」とか、批判の領域を超えてただの中傷で喜んでいる人も見受けられました。
 権力者に対するブラックジョーク、揶揄、といった類は許容されてしかるべきだとは思いますが、さすがに亡くなった方をそんな一部分だけで馬鹿にして遊ぶのは度が過ぎていると思わざるを得ませんでした。そんな写真、探したらそりゃあ誰でも出て来るでしょう。
 もちろん許容度の範囲は人それぞれでしょうから、これまでの行いを考えればそのぐらいの揶揄はされて然るべきだ、という方もいらっしゃるでしょうが、そうやってネタにする→いいねを貰う→もっと面白い揶揄を考える、というサイクルが、見境の無い中傷の温床になります。
 別々の見方をする人間が、それぞれそうやって自分の気に入らない対象を根拠や議論に基づく批判ではなく単に中傷、侮辱、揶揄し、お互いにその行動を罵りあう、という学級崩壊状態を繰り返していれば物事に解決も妥協も着地もあるはずがありません。

 話のオチをどう付けるのか自分でも分からなくなってしまいましたが、次の悲劇を生まないためにも1人1人が自覚をもって行動しなければいけない、ちょっと極端な言い方をすれば、安倍氏が殺害された原因の一端はひょっとして自分の行いにもあったんじゃないか、というぐらいの気持ちを0.01%でも頭の片隅に入れて日々を過ごしていかなければいけないのではないか、そんな風に私は思いました。
いらすとやより
学級崩壊のイラスト(小学校)


 安倍応援団の言論人の皆さんの中にはデマで擁護したり、この事件を『何でもかんでも安倍のせいにして中傷していた人間のせいだ』という態度の方もいるわけですが、自分たちの「嘘をついてでも擁護する」という姿勢が安倍氏をいわば裸の王様にしてしまって、恨みを買うような行為を防ぐことができなかったのではないか、という反省を真摯に行うべきではないでしょうか。

 今、一生懸命統一教会と政治の問題を追いかけているマスコミさん、もちろんそれは継続していただきたいですが、じゃあ今までなぜそれを言わなかったのか、その反省もきちんとすべきですし、それをきちんと見ている人に示すべきではないでしょうか。お金にならないから、だったら正直にそう言うべきですし、圧力があったのなら誰からどういう圧力があったのか、報じると都合が悪くなる、黙っている方が得策だと思っていたのなら、なぜそう思ったのか、きちんと示すべきではないでしょうか。
 広告料さえもらえれば胡散臭い内容の本でも商品でも宣伝していた態度、なぜその広告を載せても良いと思ったのか、今後もその姿勢を変えるつもりは無いのか、きちんと説明、検証、反省すべきです。SNSでデマを流しているような人物をコメンテーターとして番組で起用しているのも同じです。

 国会で議論を通じて問題点を指摘すべき立場の野党も、見た目に目立ちそうなパフォーマンスと権力闘争にばかり労力を割いて、本来の国民のための仕事というのを忘れてはいなかったでしょうか?野党もまた大事な仕事の1つは権力監視です。大雑把に言えば、権力を持つとそれを恣意的に利用したり、嘘をついたりするようになるのが残念ながら人間の悪いところなので、それをきちんと追求し、嘘を事実で正させることが大事なはずです。(なお、野党は批判と反対ばかり、というのはデマで、実際は多くの法案が与野党の賛成多数で可決されています)
 ところが、たとえば立憲民主党では衆議院議員の原口 一博が未だにイベルメクチンをやたらと推奨し、何のお咎めもなくSNSで発信を続けています。権力者の嘘を追求すべき立場の人間がデタラメを広め、それも昨日今日の話ではなくずっと行っているのに未だに処分されないのは恥ずべきだと思います。まさか「イベルメクチンが効かないというのなら効かない証拠を出せ」とでも仰るんでしょうか?いや、世界で様々な臨床試験が行われて有効性を示せなかったという立派な根拠がありますけど。これでは追求なんてできるはずがありません。

 書いているだけで、大きな部屋の中で誰も相手の話を聞かずに好き放題に言いたいことを大声で叫んでいるうるさい様子が頭に浮かんでくるんですが、こういう学級崩壊状態を止めない限り、また同じ悲劇は繰り返されるのではないかと思います。8月18日、衆議院議員・高市 早苗の事務所に脅迫状が届いたことが明らかになりましたが、最低の行為です。
 統一教会に敵意を向けて信者を罵る人もおそらくいると思いますが、そもそも何か不幸があったところに付け込まれて取り込まれた被害者も大勢いるはずですし、親が信者で自分ではどうしようもない、いわゆる『宗教2世』の人もいますから、施設に出入りしているだけで俗物のように扱うのも筋違い。きっと起こるんじゃないかと思いますが、国葬当日に妨害を企てたり、周囲で騒ぐのも学級崩壊を助長するだけだと思います。
いらすとやより
学級崩壊のイラスト(中学校・高校)


 SNSの普及で誰もが簡単に情報を発信できるようになり、その中に常識、モラル、知性を持ち合わせていないのに声だけは大きい人、あるいは組織がデタラメな情報を広げることで学級崩壊状態が生み出されているんだろうと思います。
 今さら国葬が取りやめられることはないでしょうが、国のトップが今すべきことは、もちろん感染症対策、経済対策、外交、防衛などという話は当然ありますが、それとは別にまず
「嘘をつくのはやめなさい」「嘘つきを称えるのはやめなさい」「今まで嘘をついてきた人はちゃんと謝って反省しなさい」「差別をやめなさい」「侮辱・中傷をやめなさい」と、それが自陣営でも相手陣営でも関係無く全ての人に向けて発進し、学級崩壊を止めてまず一度教室を静かにすることではないでしょうか。
 小学校みたいな話ですが、小学生並みのことが出来ていない人が多すぎるから今こうなっていると言っても過言ではないと思います。かなりキツイ物言いですみませんね。もちろん実際に権力者がそんなことを自分から言った例なんて見たことが無いのでそんなことは起きないと思いますが、ならば逆に個々人が取り組んでいくしかありません。
 「私は全部ちゃんとできてる聖人君子です」なんて言う気はさらさらありませんが、嘘をつかない、悪口を言わない、おかしいものはおかしいと言う、自分の行動に責任を持つ、こうしたことを、みなさん絶対に忘れないように日々を過ごしましょう。そうしないと、本当に日本は、もっと言えば世界は簡単に崩れ去ると思います。


 最後に1つ、これは2020年の話ですが、書店で本を探している際に、高齢の女性が店内に入って来られました。そして、店員さんにこう尋ねました。

女性「あの~、カドタなんとかという人の本は置いて無いですか?」
店員「カドタ・・・?」
女性「カドタリューショーとかいう、コロナの、コロナの専門家の・・・」

 おそらくこの方が言っているのは作家の門田 隆将のことだと思います。映画『Fukushima50』の原作となる書籍を書いた人ですね。当然ですが、この方は作家であって医療の専門家ではありません。
 私はこの前年あたりには、門田氏がでたらめな政権擁護を行う信用できない人物ではないかと既に知っていて『要注意』だと認識していましたが、このころ門田氏は新型コロナウイルスに関して事実と異なる偽医療系の内容を何度かSNSで発信して批判されていました。そして、アメリカ大統領選挙に関するデマを繰り返し投稿するのはその数か月後のことでした。安倍氏の死去後に『安倍氏と統一教会は天敵だった』というデマを主張した人です。
 高齢の女性がうわごとのように店員に聞く様子を耳にして、私は「もはや一部の界隈で済むような問題では無い」と思いゾッとしました。危機感を抱いた出来事の1つで、その後の大統領選陰謀論は「やっぱりな」という印象でした。ミヤネ屋では統一教会を追求して叩きまくる読売テレビですが、『そこまで言って委員会』という番組には、門田氏はたびたび出演しています。メディアのこういう姿勢も恐ろしいですし、ふざけていると思います。

 長い話にお付き合いいただいた方、いるのかどうかすら分かりませんが、ありがとうございました。

コメント

NF9 さんのコメント…
正直ここまでは読めていないので、自分の考えだけ言っておきます。自分は安倍元総理国葬に反対ですが、これは考えるのも無駄な事です。なぜなら共産系の集団が熱心に反対の金切声を上げ、民族系のイカレた奴らが賛成しなければ非国民だと怒鳴り散らかす中に飛び込むのは酷い徒労以外の何物も産み出さないからです。
CF9 さんのコメント…
NF9じゃなくてCF9だった(笑)
匿名 さんのコメント…
https://jp.motorsport.com/motogp/news/quartararo-yamaha-playing-too-far-from-the-rules-against-its-motogp-rivals/10354496/
↑のように日本人はルールを気にしすぎている気がしますが
SCfromLA さんの投稿…
>CF9さん

 コメントありがとうございます。仰る通りですね。私もさすがにSNSでそのど真ん中に突っ込んで行こうとは思わないので、あくまで自分の表現の場としてこうして投稿しました。できればこんな厄介なことになる前にもう少しどうにかならなかったのか・・・という思いがあります。
SCfromLA さんの投稿…
>匿名さん

 わざわざモタスポ関係のものを持ってきていただきありがとうございます。確かに国際交渉の場などでそういったこともあるのかな、という印象がありますが、今回の話とはまた違う分野の話に思います。MotoGPのヤマハの話はあくまで『規則の中でどこまで攻めるか』ですが、嘘をつく、なんていうのは完全にルールの外へ出てしまって規則違反をごまかしているような状態だったり、あるいはレーススチュワードが明らかに恣意的なレース運営をして有利不利を作ってしまっているようなものに近いと思います。
日日不穏日記 さんの投稿…
安倍政権は非常に長かったけれども、コアな岩盤保守層(保守かどうかも怪しいんだけども)に支えられ、オピニオン雑誌に頻繁に登場し、対談をたくさんこなし、それらの雑誌は、他の記事を殆どなくし、安倍追悼号に加え、増刊号、ムックを発刊し、神格化しているように思えます。次号は、国葬反対派への罵倒でしょう。
安倍氏は国会で2020年までに憲法を改正して施行したいという質問に対し、「掲載されている読売新聞を熟読されては」と答えたのが印象的です、憲法改正は国の根幹にかかわる問題で、それに正面から答えないのは、国会軽視としか思えません。
国会答弁が良い加減になったのは、小泉政権以降が顕著だと思いますが、自分の言いたいことを言い、批判には耳を貸さない、嘘をつく、悪態をつく、改竄をする。外交が成果と言われるけども、ただ、会ってるだけ、国内の追求から逃げているというようにしか思えませんでした。皮肉なことに彼が退場したことで、オリンピックスキャンダルが出てきました。追悼はしつつも、国葬には賛成出来ません。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 私も、遡ると小泉政権の自衛隊イラク派遣で「どこが戦闘地域で、どこが非戦闘地域か、今、私に聞かれたって分かるわけがない」「自衛隊の派遣されている地域は非戦闘地域だ」という答弁のあたりに国会軽視の源流があるんじゃないかと今でも思っています。あの時、郵政解散選挙で「小泉劇場」と持ち上げたのはメディアなんですよね・・・