NCS オールスター戦 テキサス

NASCAR Cup Series
NASCAR All-Star Race
Texas Motor Speedway 1.5miles×125Laps(25/25/25/50)=187.5miles
(あれこれ特殊なルールのため140周に延長)
winner:Ryan Blaney(Team Penske/Menards / Wrangler Ford Mustang)

 NASCAR カップ シリーズはレギュラー シーズンの半分を終えたところで今週は中休み。優勝賞金100万ドルを賭けた非選手権レースのオール-スター レースです。毎年変わるワケの分からない複雑なルールは以前に書いた記事を参照してください、また書くのが非常に面倒くさいw
 そもそも何で複雑怪奇になったのかというと、オールスター戦だけはレースをいくつかの区切りで分けるセグメント制レースだったのに、通常のレースをステージ制にしたために、それ以外の箇所で普段との違いを出さざるを得なくなった、というのが大きいわけです。いっそのことオールスターだけぶっ通しの300マイルとかにしたら盛り上がるんじゃないだろうか。

 カップはお祭りですが、他の2シリーズは通常営業。キャンピング ワールド トラック シリーズはステージ1・2をスポット参戦のライアン プリースが制しますが、両ステージとも2位だったスチュワート フリーズンがこのレース最多の60周をリード。オーバータイムの争いを制した39歳のカナダ人ドライバーが2019年以来の勝利を挙げました。クリスチャン アッカス、プリース、カーソン ホースバー、タイ マジェスキーのトップ5でした。

 エクスフィニティー シリーズは多重事故がやたらと多く合計11回のコーションが出る荒れ模様。JRモータースポーツが強さを見せていたものの、10回目のコーションからのリスタートでリードを奪ったタイラー レディックが残りのレースでリードを守り切って優勝。2018・2019年のチャンピオンが、2021年に設立されたビッグ マシーン レーシングに初勝利をもたらしました。ウイリアム バイロン、サム メイヤー、ジャスティン オールガイアー、オースティン ヒルと続きました。
レディックにとっても2019年以来の優勝

 
 そしてカップシリーズのオールスター、まずは本戦への最後の出場権を賭けた50周のオールスター オープンから。本戦出場権を持っている人が既に20人もいるので、オープンの参加者は16人とやや寂しい台数です。
 予選1位はレディックでしたが、部品交換によって最後尾に降格したためダニエル スアレスが繰り上げで先頭スタート。しかし内側の先頭となったリッキー ステンハウス ジュニアがスアレスをかわすと、一時クリス ブッシャーが迫ったもののステージ1の20周全てをリードし、本選進出を決めました。

 ステージ間コーションではコリー ラジョーイがステイ アウト、スアレスとランドン カッシルは2輪、他は全員4輪を交換しステージ2へ。スアレス、ブッシャー、レディックの3人で2~4位を争ったことも手伝ってラジョーイが意外とリードを守り続けていましたが、26周目にカッシルがスピンしてクラッシュ、コーションとなります。
 32周目にリスタート、ラジョーイとスアレスがサイド バイ サイドで争うその内側に入ったブッシャーがターン4で2台をかわし、そのままステージ2を制して本戦出場となりました。 
 10周しかない最終ステージはスアレスとレディックの1列目、新品タイヤをここへ持ってきたラジョーイが8位から一発逆転を狙っています。スアレスはリスタートの争いを制してリード。すると42周目のターン4でレディックがスピン。運悪く避けきれなかったハリソン バートンが正面衝突し、双方リタイアとなりました。

 最終ステージはコーション周回を数えないので43周目からリスタート、リプレイ検証が入るほどにリスタートで一人抜け出したスアレスがそのまま逃げ切って本戦出場を決めました。
 そしてファン投票で選出される残りの1人はエリック ジョーンズとなりました。レディックの進出を信じて疑わなかった私とすると彼が本戦にいないのはけっこうショック。レディックはエクスフィニティーでの優勝だけを手にしてテキサスを後にすることになりました。

 そして夕方になってオールスター本戦。特殊な予選でPPを獲得したのはカイル ブッシュでした。カイル陣営は先週のレースでピット作業時間が史上初めて9秒を切った、ということになっています。2位からライアン ブレイニー、バイロン、カイル ラーソン、カート ブッシュ、ロス チャステイン。

 ブレイク シェルトンの掛け声でエンジン始動、テキサス州知事・グレッグ アボットのグリーン フラッグでレースが始まりました。まずはカイルがスタートで一歩抜け出し、そのまま何の問題もなくステージ1を制しました。これで最終ステージを1位でスタートする権利獲得。オープン組ではスアレスが13位まで順位を上げました。

 ステージ間コーションは上位8台がステイアウトし2台が2輪交換。ケビン ハービックはボンネットを開けて何か作業しているようで、エンジン周りに何か不具合発生の様子。
 ステージ2、1列目はカイルとブレイニー、2列目にチャステインとラーソン。チャステインはカイルの後ろにくっついてターン1に入った後、たぶん思ったほど曲がらなくて外に流れました。ここにちょうどブレイニーが詰まって急失速、この混乱の間にラーソンが2位となります。
 31周目、ブレイニーはチャステインに追いつくとフロントストレッチで軽くバンプしてから内側へ。さっきのお返しに軽く挨拶したつもりだったんでしょうが、ターン1で滑ってしまってラインを外れ、チャステインに抜き返されるどころか6位まで再度後退。これはちょっとカッコ悪いぞブレイニーw

 ステージ2もカイルがリードしていて何も起こらないのかと思いましたが、FOXがコマーシャルに入ったその瞬間・36周目にコーション発生。放送に乗らないところで「ターン4でトラブルだ」と言ってるマイク ジョイの声が聞こえますが、なんと2位のラーソンがターン4で単独クラッシュ。明らかにタイヤが壊れて真っ直ぐ壁に突っ込んだ動きで、これでラーソンは一発リタイア。2019年・2021年と出場したオールスターでは2連勝中の本命が消えました。

 ステージ残り7周、カイルとチャステインの1列目でリスタート。リスタート直後から乱気流の影響かラインを外れる人が複数見えてすごく難しそうです。この辺は秋のテキサスに向けて参考になりそうですね。チャステインはカイルと並走したものの攻略はできず。
 この後オースティン シンドリックが2位となりますが相変わらず速いカイルを誰も止められず、ステージ2もカイルが制するとたぶん大半の人が思いました。ところがステージ残り4周、ターン4でいきなりカイルがふらつきました。右後輪がパンクした模様。
 カイルは後ろを確認して内側に下りましたが、3位に落ちていたチャステインは内側に避けようとしたためにまともに衝突。大ジャンプしたチャステインはさらに通りがかりのエリオットも巻き込みました。3台とも大破です。

 
 数世代前の車だったらもっと酷い事故になっていたんじゃないか、と考えるとゾッとする事故でした。そして、当ブログ読者様の推しドライバー3人が一度のクラッシュで全員いなくなってしまいました。時系列で言えばこの数時間前にF1スペインGPでフェラーリが撃沈しているわけで、なんか私がハゲの呪いをかけたみたいになりました。
 とりあえず謝ります、なんかごめんなさい(。∀°)
 レッカー移動3台とバリアの破損でレースは一旦レッド フラッグ。ラーソンがクラッシュした時点で嫌な予感はしていましたが、この車ではまだあんまりデータが無い高速1.5マイル、今日も内圧やアライメントで攻めすぎてタイヤを壊しかねない人が複数潜んでいるような雰囲気です。

 オールスター特別規則でステージ3までは普段のオーバータイムに相当する規則が1回だけ適用されるため、周回数としてはステージ2が延長される形となりステージ残り2周でリスタート。リーダーのシンドリックがそのまま逃げ切ってステージ2を制し、カイルの脱落により最終ステージでの1位スタート権を得ました。
 リスタート後の争いでシンドリックの動きが少し気に入らなかったようで、ステージが終わるとブレイニーがシンドリックに軽くコツン。チャステインに続いてまたも軽く報復するブレイニーですが、こちらはチームメイトですよ・・・^^;
 
 ステージ2終了後は4輪交換義務付けのピット勝負。シンドリックはホースを車で踏んでしまう失敗で順位を下げ、先頭でピットを出たのはバイロン。しかしバイロンはタイムでは最速ではなく、ピット滞在時間最短はジョーイ ロガーノのクルーでした。これでロガーノは最終ステージの3位スタート権を獲得、クルーは賞金を手にしました。
最速ピット賞となったロガーノのクルー

 ステージ3、バイロンとブレイニーの1列目でリスタート。ステージ3周目にブレイニーがバイロンをかわし、本日初めてコース上の争いによってリード チェンジが起こりました。
 ブレイニーはそのままリード、2位にはクリストファー ベルが浮上。ステージ残り8周でステンハウスの右後輪がパンクするもコーションは出ず。しかし残り4周で今度は2位のベルがやはり右リアと思われる問題でターン4でドリフト大会を開催し、今度こそコーションとなりました。やっぱりタイヤがもたない問題起きてますね・・・これでステージ3もオーバータイムへ。

 どうせオーバータイムの2周を終えたらコーションになるので2位以下の車は多くがピットへ。ステイアウトしたのは、クリーンエアーが欲しいリーダーのブレイニーと、既に切符を手にしているシンドリック、ロガーノ、そして何か違うことをしたいマイケル マクダウルの4台でした。
 ステージ残り2周でリスタート、シンドリックが良い感じに壁になったのでブレイニーは楽々と逃げ切ってステージ3を制しました。これで最終ステージはシンドリック、ブレイニー、ロガーノまでが確定、4位以下も基本的にみんなステージ間コーションでピットに入らないのでステージ終了時の順位のままになりそうで、スアレス、バイロン、ハムリン、ブッシャーの順です。

 最終ステージ、シンドリックとブレイニーの1列目でリスタートしますが、さすがにまた先輩を怒らせるわけにはいかないシンドリックはそれなりに争ったものの結局ブレイニーにリードを奪われます。ブレイニー、シンドリック、ロガーノ、スアレス、ハムリンのトップ5。
 15~25周目にコーションが出なければコンペティション コーションを出す、という特別規則で、このトップ5は変動が無いまま25周が近づいていましたが、ステージ23周目、ジョーンズがターン4で単独スピン。右後部をぶつけてかなり壊してしまいました。これも右後輪のパンクっぽい雰囲気。コンプコーション導入よりタイヤの寿命が僅かに早く訪れました。
 このコーションで上位4台を含む7台はステイアウト、5位のハムリン以降がピットに入りました。ピット組のうち4台は2輪交換で作戦がバラバラです。

 残り21周でリスタート、2列目のロガーノがターン1でかなりスロットルを戻したためにブレイニーとシンドリックの2台が大きなリードを築きました。もたついたのは2輪を交換したハムリンに好都合で、数周で3位に浮上。このまま行くなら優勝はブレイニーかハムリンになりそうです。
 ハムリンは残り14周でシンドリックをかわして2位へ。ブレイニーとは2秒ほどの差でした。しかしここから速かったのはむしろブレイニーの方で、ハムリンは徐々に離され、シンドリックを離すこともできなくて打つ手が無くなります。
 日没後のコンディションに車もばっちり合っていたと思われるブレイニー、単独走行とはいえ走りたいラインをがっちり捉える抜群の動きで最終周へ。そのままブレイニーがトップでチェッカーを受けた、と多くの人は思いました。ところが、ブレイニーがターン4を立ち上がったあたり。ターン2でステンハウスが事故って壁走りしており、コーションが出ていました。
 普通のレースならホワイト フラッグ後にコーションが出るとレースはそのまま終了ですが、ここでまたもやオールスター特別ルール、コーションが出ていたらレースは終われません。ということで、ブレイニーが受けたのがチェッカーではなくコーションのフラッグでした。しかし本人はまさかそんなことになっているとは思っておらず、無線は大混乱。

ブレイニー「よっしゃあぁぁぁぁ!やったなみんな!」
ジョッシュ ウイリアムス(スポッター)「まだ終わってないで」
ブレイニー「マジで!?レース終わってないん!?なんでやねん。」
 さらにブレイニーにはレースが終わったと勘違いしたことで大きな問題が起きていました。

ブレイニー「ウインドウ ネット外してもうた。戻されへん。」

 レースが終わったと思ったのでウインドウネットを外してしまっており、レースをするならこれはきちんと装着されているのが義務です。しかしこいつは取り外しは簡単ですが、装着は片手で簡単にできるようなものではなく、ブレイニーはコーション周回をこなしながらではなかなかネットを戻すことができません。
一生懸命ネットを引っ掛けようとするブレイニー

 とうとうレーン選択の時間となり、ブレイニーはとりあえず何かしらネットを引っ掛けはしたものの、余ったゴムがピロピロしていてちゃんと装備できていないような気もする状態で内側を選択。ハムリンとの並びでオーバータイムです。
 ネットのことで手一杯になっていたのでタイヤの熱入れも不十分だろうし集中力も切れてるんじゃないかと思いましたが、リスタートするとブレイニーは力強い走りでハムリンを退けて今度こそトップでチェッカー。初のオールスター戦勝利を挙げました。ハムリン、シンドリック、ロガーノ、スアレスのトップ5でした。

 複雑なルールの良し悪しはさておき、最後の結末はお祭りに水を差すようなごたごたでした。NASCARの上級副社長・スコット ミラーは、そもそもの発端となったコーションに関して、レース後の囲み取材で、事後的な感想として「コーションを出すべきではなかったと思う」と発言しました。
 また、規則上ネットは必須で、装着されていないのであれば、自主的にピットに入って直すか、そうでなければオフィシャルが黒旗を出さないといけません。実際にはそうならずにリーダーでリスタートしたことについて聞かれると
「明らかにライアン ブレイニーはレースに勝ったと思っていました。オールスターの特別ルールによる副産物ですが、これ以外のすべてのレースでは彼が勝者だからです。」

「しかし、グリーンに向かう中で、彼はタイヤを暖めていました。彼が両手でハンドルを握っていることがはっきりとわかりました。彼がウィンドウネットを完全に固定したかどうかを100%確認する方法はありません。そのため、私たちには彼をピットへ呼ぶことはできませんでした。」

 ミラーはあくまで組織として上にいる立場なのでレース進行に直接かかわっているわけではないと思いますが、多少レース コントロールの側でも、不要なコーションに不運が重なった結果、勝てたはずの人を最後尾に突き落とすような状況にしてしまったことへの悔いのようなものがあって、ブレイニーに配慮するような運営がなされた雰囲気を感じます。
 ちょっと面白くないのは2位のハムリンで、
「彼は勝利に値するから難しいところだけど、でももし規則を破ったら、それが意図的でなかったとしても、それは規則であって僕らには安全のために規則があるんだ。僕のクルー チーフは安全を理由に4週間休んでるんだよ。」
(ハムリンのクルーチーフはピット内でホイールが外れた件で出場停止処分を受けている)
とコメント。たしかに原理原則論としてハムリンの言い分は正しいと思います。

 実際問題、ウインドウネットの装着が不十分だったことで残りの2周で何かが起きる可能性はそれほど大きくないとは思います。が、もし万が一リスタート後に多重事故が起きてブレイニーの命に関わるような事故が起きていたら、その時にNASCAR側は
「こっちとしては装着できていると思っていたから、もしそうでなかったのならピットに入らなかったチームとドライバーの自己責任」で済ますことができるでしょうか?
 ハムリンの件とこの件での大きな違いは、脱輪は他人を死傷させる危険があるのに対して、ネットの装備不十分は自分だけの問題で、これによって誰かを死傷させる可能性はゼロに等しいということです。そのため、必ずしも同列に並べられるものではありませんが、NASCARとしてはきちんと論点を整理して、改めて説明をすべきではないかと思います。
 今回はどこまで行ってもオールスター戦ですし、オールスターゆえの規則がもたらした問題ですが、たとえば普段のレースでもオーバータイムに向けたコーション周回中に、手のストレッチをしていたら偶然手が引っかかってネットが外れてしまった、みたいなことが万に一つも起こらないとは言えません。ポイントを争うレースの中で、NASCARは同じように対処するんでしょうか?
 他にも安全に関する規則は複数あると思いますが、それぞれに規則に関して、レース中に意図的ではない事情で安全規則を破る状態になった際、どの規則がどういった問題をもたらし、どういった判断を下すのか。今回はたまたまオールスターで、たまたま何も起きなかったことに感謝しつつ、漏れが無いように点検し、今後の運用方針も明確に示しておく必要があるのではないかと感じました。

 レースとしては、クリーンエアー至上主義で、プレイオフの第2ラウンドで走ることになるテキサスのレースに向けて予習にはなったな、という感じでした。タイヤが壊れるレースはカンザスに続いて2戦連続になってしまったので、まだこの新しい車とタイヤの組み合わせを理解しきれておらず攻めすぎている印象を受けますが、これは要改善ですね。
 わざとではないとはいえ、走ったらタイヤがボコボコ壊れる、ピットに入ったら頻繁にホイールがどっかへ転がっていく、ではさすがにカテゴリーの品位が下がります^^;

 次戦はシャーロットでのコカ-コーラ600。ニュル24時間?インディー500?何それ、美味いの?

コメント

カイル・プッシュ さんのコメント…
ファン投票はレディックだと思ってました。エリック・ジョーンズは43番パワーでしょうか。

それから、あのアクシデントの時、私も推しが一気に消えてしまった!って思いました。
原因を作ったのが私の推しだったようで、なんかごめんなさい(~_~;)
ChaseFun9 さんのコメント…
今年はJJがIndy500出場なので覚えておきましょうw
まあCoca-Cola600がメモリアルデーウィークエンドのメインイベントですけどね!
モナコ?ちょっと分からないですね(*´ω`*)
首跡 さんの投稿…
色々な事が起こったオールスターでしたね。
やはりオールスターの開催地はシャーロットの方が良いかな...と思ってしまいました!

モナコはペレスの勝利、インディ500は琢磨とJJの奮闘に期待して、コカ コーラ600は...今季未勝利ドライバーなら誰でも良いか!
SCfromLA さんの投稿…
>カイル・プッシュさん

 レディックは自力で出れると思われて票が伸びなかったのか、良い人すぎて人気はそこまででもないのか、日本から見ていてもそのへんの雰囲気が分からないですよね~。結果発表後にも具体的な票数とかが公表されないので、どのぐらいの差があったのかとかさっぱり分からないのが毎年もやっとしますw
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん

 JJのインディー500はライコネンのカップ戦スポット参戦の話題で私の中でかき消されましたw
SCfromLA さんの投稿…
>首跡さん

 モナコでペレス、コカコーラ600でスアレスが活躍したら盛り上がりそうですね~。