2度目のワクチン接種を終えました

 先日、新型コロナウイルスワクチンの2回目の接種を行いました。今回もその後の様子や、前回の1回目の記事以降の周囲で見聞きした反応等を少し取り扱ってみたいと思います。何かしら参考にしていただければ幸いです。

 既に接種を終えた方々の情報から、高熱になった場合なかなか動くのも大変、特に今は夏場なので脱水症状に陥りやすいこともあり、食欲が落ちる可能性もあるため
・水分
・簡単に摂取できる栄養源
の2点は用意しておいた方が絶対に良いと判断。ゼリー状の栄養補給食品、食べやすそうで元気も出そうなのでアイスクリーム(力が入らないと固いカップのやつは食べにくいかもしれない、とわざわざクーリッシュにした)、ポカリスエット1Lを準備しておきました。
 発熱した場合、『副反応だと思ったけど実は運悪く数日前に感染していてCOVID-19の症状だった』ということも稀にあるので、ご家族がいても念のため可能な範囲で隔離しておいた方が最悪の事態を免れる可能性が高まります。頭の片隅に入れておくとよろしいかと思います。いざ、2回目!


 2回目の接種も前回と全く同じ時間帯で、仕事を終えた後の18時予定でした。前回より多少前にいる人たちの人数が少なかったのであっという間に順番が回ってきて接種終了。前回はアレルギー持ちにより30分待機を指示されましたが、元々些細なアレルギーで前回特に問題が無かったからか、今回は15分で良しとなりました。おかげで全体で前回より30分ほど早く帰宅することに成功。

 当日の経過は前回とほぼ同じで、接種後3時間前後で腕の上がり方に徐々に影響が出始めた、というぐらいでした。唯一異なるのは、心境として「お、俺はこの後きっと高熱が出るんだ、40℃とかは勘弁してほしいな。。。」という心理的重圧があることぐらいでした。


 てきとーに就寝し、トイレに行きたくなって深夜の3時ごろに一旦起床。用を足して戻ってきたらどうもちょっと寒い気がしたので、「ひょっとして熱が出て来たか!?」と計測してみたら、出て来た数字は『35.5℃』。
 私、元々体温が非常に低いタイプで35℃台はザラにある方だったんですが、昨年来のこの状況で気になった時に測ったりしていたらどうもいつの間にかそうでもなくなっていたらしく、この数字はちょっと意外。まあ寝ているときは低いのも当然な気がするので、布団をかぶって寝ました。

 朝6時、一応仕事に行く前提でいつも通りに行動しおよそ1時間。。。なんか寒いな。もちろん熱が出ている状況で家を出るなんてことあってはいけませんので計測したら『35.7℃』。朝食食べてるし、既に室温は29℃に近いこの状況でまだ35℃台ってちょっと低くないすか、ていうかマジで寒いぞ。あ、腕はもうこの時点で正面までしか上がりません。
 発熱すると思っていたらまさかの低体温。改めてコミナティの説明を読んでみたら、副反応の項目には確かに『寒気』というものも書かれていました。調べてもあまり『体温が下がった』というのは見当たらなかったんですが、寒気と書いてあるのだから該当するかもしれないし、ひょっとして下がってからの~、高熱ドカーン、かもしれないし、そもそもホント寒いので予定通り仕事は休みました。ていうか行くって言ったもたぶん怒られます。


 室温が30℃に達しようかという部屋で寒がって長袖で布団をかぶるという想定外の状況でしたが、この後は寒いので寝て、しばらくしたら暑くなってきて半袖に戻して体温が戻って、しばらくして寒いと思ったらまた35℃台で、を3回ほど繰り返しながら半日ほど経過しました。
 15時ごろになると落ち着いた感じがしてきたのでこれで終わりかなと思いましたが、17時ごろになると今度は頭痛がしてなんだか熱っぽくなってきました。頭痛は、数回に分けて普段寝ていない時間寝たせいかもしれないですが、体温の方は測ると37.3℃。少しダルい感じもしてきました。以後数時間は37.2~37.5℃を行ったり来たりしていたので、さっさと寝ることにしました。
 ここで問題だったのは、私は元々長時間寝ると腰が痛くなってしまってその姿勢では寝れなくなってくることで、既に何回か寝ているせいで普段の仰向けは『使用不能』になっていました。ただでさえ昼にも寝ているから寝にくいのに、これではなかなか寝付ける状況ではありません。ただ、夜中に結石発症した苦しみと比較したら遥かにマシだ、と意味不明なことを自分に言い聞かせます^^;

 なんとか寝て翌朝。接種日から見て2日後。相変わらず頭は痛いし、前日よりも疲労感が多くありますが体温は平常に戻りました。これ以上家でおとなしくしていても仕方ないので、ぼちぼち仕事をすべく出勤。腕はまだ大して上がりません。
 仕事では階段で1階~3階を往復する機会が多いもので、頭痛&倦怠感がある中ではけっこう厄介でしたが、15時ぐらいからようやく少し回復傾向となり、帰宅したらネイションズカップに出場してニュル北を走りました。まあニュルは最悪半分寝てても走れるぐらいには染みついてますからねw

 3日目には頭痛も消えてほぼ平常通り、肩は真上に上げるとそこで痛い、ぐらいなのでほぼ問題無く、4日目にはもう全回復という感じでした。影響としては比較的軽かったと思いますが、それでも「何で寒いんだ」「ひょっとしてこの後に発熱が来るのかも」とか思ってると気になりますし、仕事的には結局1日は穴が開いたので、前回も書きましたが『接種後2日間ぐらいはいないものと考える』ぐらいの割り切りは必要だと思います。中には「朝は大丈夫だったけど昼から熱が出て来た」という人もいるので、油断して仕事に出かけて職場でダウンするリスクも考慮した方が確実です。

 何の情報もなくいきなり高熱が出たらパニックになるでしょうが、実際はかなりの情報があって、いつ何が起きるのか、がある程度想定できます。言ってみれば台風に備えるようなものですから、事前に面倒くさがらずにきちんと一定の準備をしておくことが重要だろうと思います。
 私は結局用意したものが必ず必要!という事態にはなりませんでしたから、ポカリスエットは普通に飲んで、クーリッシュは後日おやつに、ゼリーに至ってはいつ飲むか出番に困りますが、いずれもあっても困らないものですし、今後万一何かの病気になった際にも役立ちますから、余裕があればそのまま在庫にしておいても大丈夫です。
 高熱の場合大量の汗をかく可能性があるので、できれば多くの着替えを用意できるとより望ましいと思います。ただ、腕が上がらないので着替えがけっこう大変かもしれません。
 中には、「本当に打ったのか分からないぐらい何も無くて、接種翌日も10kmのランニングをした」という方もいるので、全然何も起きなくて拍子抜けすることもありますが、これまでに公表されているデータからすると、『何か起きる』と思った方が明らかに確実です。私の体験談と伝えられるアドバイスはこういったところです。


・モデルナでモロに影響が出たマッキーさん

 私はファイザー製ワクチンでしたが、モデルナ製を接種する方もいらっしゃると思います。モデルナの方が副反応がキツイ、なんて話もありますが、個人差も大きいのでどっちがどうというのは断言しにくいところではあります。
 アメリカの国立アレルギー感染症研究所などのグループによる調査では、今世界的に主流となりつつあるデルタ型に対する有効性についてはモデルナがファイザーを上回り有効性が高いのではないか、とする論文が発表されていますので、現状ではモデルナの方がやや優秀かも?という風に見えます。
 ただ、あらゆることが途上であり現在進行形なので、例えばファイザーなら来週、モデルナは6週間後に接種機会がある、となった時に、待ってモデルナにするところまで必要か、というとなかなか難しい判断だなと思います。待ってる間に感染してしまったら意味がないですし、変異も検証も続きますからね。

 で、そんなモデルナを接種したマッキーさんがGT SPORTのコミュニティー上に経過を公開してくださいました。元々インフルエンザの予防接種でも副反応がけっこう出てしまうタイプなのでキツメに出るんじゃないか、とは想定していたそうです。
 これによると、職域接種なので勤務中の15時30分ごろに接種したマッキーさんは、わずか1時間後には腕の痛みを感じ始めて定時退社。腕の痛みだけなので余裕をぶっこいてパチンコ屋に立ち寄るという謎の行動に出たこの50歳手前のおじさんは、このあと19時ごろに腕の痛みが増加した上に頭痛と倦怠感に襲われて急ぎ撤退。
 ここで、駅まで奥さんが迎えにきてくれたはいいものの「ラーメン食べて帰ろう。家には何も用意してないし」というなんともほほえましい(?)提案によりラーメン屋を一件こなしてからようやくのご帰宅。なぜか風呂に入る前にちょろっとグランツーリスモで遊んだそうですが、まだ発熱には至らないまま就寝。

 翌朝5時、37℃台で始まった発熱は8時には38℃突入。解熱剤を2度使用しながらも結局この後夜までずっと38℃を超える時間帯が続いたようで、下がったのは翌朝のこと。この2日目も微熱はずっと続き、完全に平熱になったのは3日目だったそうです。
 マッキーさんは「ビビらせようという意図は全く無く、ヒドい人はこうなることもあるよということで書きました。これから打つ人は、仕事や学校等々、翌日以降の予定は調整してから臨んでくださいねw」と書き残しました。とりあえず『余裕ぶっこいで寄り道してはいけない」というのは参考になりますね、って普通行かねえよ!w

 ちょっと良くなった気がするな、と思って計ったら全然熱が下がってない、を2度繰り返したそうなので、長いこと熱が出てると感覚が分からなくなってくるのかもしれませんね、ていうかパチンコに行ってる時点で既に微熱で思考力が落ちてるのでは^^;
 モデルナに関しては、接種後一週間ほど経過してから接種部位にかゆみや痛みが遅れて出て来るという現象もあるようですが、こちらは接種翌日の強烈なものと比べてさほど警戒すべきものではないようです。『モデルナアーム』と表現されていますが、腕が赤く腫れあがる現象を『モデルナアーム』と呼んでいるケースもあるので定義がよう分かりません。なお遅延する反応はファイザーでも稀にあるそうです。

 では、ここからは前回同様個人的に少し気になった話をいくつか取り上げてみます。

・第3の矢・アストラゼネカ製ワクチン

 アストラゼネカ製のワクチン・バキスゼブリア筋注は、日本では3番目に承認されたワクチンである一方、稀に血栓が生じるリスクがあるとして国内の公的接種では使用されず、海外への輸出に回されていました。しかし、依然として接種が進まない状況が続いていることから8月の下旬になって一部の自治体で年齢を制限するなどしながら使用が開始されました。
 臨床試験による有効性は約70%と、数字上は90%を超えているファイザー、モデルナより低く見えますが、デルタ型に対する持続的な有効性ではファイザーと同等か上回るぐらいではないか、とする研究もありますので『性能は低いけどしゃあなしに使う』とか思いこまないようにしましょう。
 ファイザーとモデルナのワクチンはmRNAという仕組みでしたが、アストラゼネカは『ウイルスベクター』という別の仕組みを用いて作られています。ウイルスベクターは人間に対して害が無いとされるウイルスを運び屋として利用し、その中に免疫を獲得したいウイルスの情報を組み込んで体内に取り込み免疫の獲得を目指すものです。
 mRNAの場合、情報を格納している物質がとても壊れやすいので冷凍庫での保管が必要となる点が課題ですが、それと比較するとウイルスベクターは保管が容易で2~8℃と冷蔵保管するように求められており、保管や搬送がより容易であるとされています。
 これまでは『冷凍庫のプラグが抜けていた』というような問題が時々出てきましたが、アストラゼネカが増えてきたら『間違ってファイザーと一緒に冷凍庫に入れちまった』みたいなことが起きないかちょっと心配^^;
 アストラゼネカ製の場合2回接種が必要で接種間隔は4~12週間、推奨は8週間となっていて現在日本で承認されている3種類の中では期間が最も長くなっています。海外の臨床試験での副反応では、頭痛や腕の痛みは多いものの発熱の割合はファイザー、モデルナと比較すると低く、なおかつ2回目の方が副反応の程度は軽い傾向にあると見られています。
 
 ウイルスベクター方式の課題として指摘されているのは、運び屋として使うものが無害なものとはいえウイルス(アストラゼネカ製ワクチンの場合アデノウイルス)であるために、複数回接種していると運び屋さんに対しても人間が免疫を獲得してしまい、そもそも運び屋をやっつけてしまって本来の目的を果たさなくなる可能性がある、ということだそうです。
 世界的には、時間経過とともに抗体が減少して有効性が薄れるワクチンを補強するために3回目の追加接種をする動きがありますし、変異の状況によっては毎年必要になるようなケースもあると思いますが、ウイルスベクターではこれがやりにくい可能性があります。同じウイルスベクター方式でもジョンソン エンド ジョンソンが開発したものは接種が1回だけになっていますが、要因の1つはこの特性が関係しているみたいですね。
 もっとも、イギリスではとにかく色々試そうと異なるメーカーを組み合わせた接種も少数ながら研究されており、その範囲内では混ぜても問題は無かった模様。アストラゼネカ→ファイザー、といったパターンでも有効性があるどころかこっちの方が強いんじゃね?みたいな話も出たぐらいなので、3回目以降は別の方式のものを接種して対応することはおそらく可能になるのではないかと思います。
 現状では日本でアストラゼネカの接種機会がある人がそもそも限られていますが、mRNAの下位互換でも安物でもなく別の仕組みで作った別のものですので、もしたまたま接種する権利を得る機会が訪れた場合には、その時の最新の情報を精査して決断するのが良いかなと思います。


・ワクチンは臨床試験が終わっていない
→完全にデマです

 私の2回目の接種日は日本時間の8月23日でしたが、ちょうどその半日ほど後・アメリカ時間での8月23日に、ファイザー製のワクチンがFDA(アメリカ食品医薬品局)から正式承認されました。
 アメリカではこれまで『緊急使用許可』という制度を用いて使用されており、これに起因して『ワクチンはまだ臨床試験が終わっていない未完成品』と書いている人がいますがデマです。臨床試験には第1相から第4相までの4段階があり、3つ目までをクリアすると安全性の基本的な情報収集は完了したことになります。
 その後の第4相は市販化に向けて、実際に市場で大規模供給されることで第3相までの臨床試験では見つけられなかった問題が起きないかさらに調べることが主な目的で、安全性の評価を下すためのものではありません。
 今回は緊急使用許可制度の下、通常であれば第3相臨床試験での接種後の追跡評価期間の中央値を6ヶ月としているところを2か月に短縮し、その後の審査過程も迅速化したもので、『緊急だから何の根拠も揃ってないけどとにかく許可した』というものでは全くありません。

 なお余談ですが、日本では事前に接種券とともに送られてくる説明書に『コミナティ筋注』という名称が記載されているという話を前回書きましたが、制度が異なるのかアメリカでは正式承認をもって、商品名『コミナティ』としての流通が可能となるみたいですね。
 スペルはcomirnatyだから厳密にいうとコミャナティーだけど、日本人には難しいから簡素化されたんですかね、なんて言ってたら、どうもアメリカの方でも呼びにくいらしくなんだかあまり評判が良くないみたいです。とはいえ薬の名前って調べるとたいてい呼びにくいものだったりするので今に始まった話ではないですけどね。
 なおモデルナ製の名称は『spikevax』と名付けられており、こちらも正式承認されたら『スパイクバックス』となるはずです。決まるのが遅かったから我々が持ってる説明書では名前がついてなかったんですね。えーっと、アストラ ゼネカのやつの名前は、、、もう忘れた!


・陽性者=感染者ではない
→今の状況においてはあまり関係ないのでは?

 時折目にする主張の中の1つが『感染者と陽性者は違う。マスゴミは感染者だと言って陽性者の数を強調し不安を煽っている』的な主張です。では本当にそうなのか、1つずつ検証してみます。
 連日のように報じられている『新規感染者数』、ニュース速報のテロップなんかだとこれしか書いて無くて、本来なら『何の新規感染者数なのか』をちゃんと書かないといけないはずですが、もはや『感染者数』と書いただけで、もうそれは『新型コロナウイルス』だという暗黙のルールすらできている感があります。
 で、この感染者数というのは、検査によって新規にSARS-CoV-2ウイルスが検出された人のことを指します。大半がPCR検査、他に抗原検査などもありますが、こうした検査で陽性反応が出た人です。
 一方で医学的に見て『感染者』という単語は、生きているウイルスが細胞内に実際に入ってしまった状態を指すとのこと。で、この後にウイルスによって悪さをされてしまい、実際に咳が出る、熱が出る、肺に炎症が起きる、といった症状が出て来ることを『発症』と呼びます。

 代表的なPCR検査で言えば、これはウイルスが検体の中にあるかどうかを探す検査なので、この検査ではウイルスが生きているのか死んでいるのか、その人の体内にどのぐらいの量があるのか、ということを調べることはできません。極端に言えば『知らん間にもう罹患して、風邪だと思って治してしまい、そのタイミングで検査を受けたら陽性だった』ということもあります。
 会社に言われて検査を受けに行ったら、直前にすれ違ったおっさんが盛大にくしゃみをして、そのおっさんが実は発症している人だったのでウイルスがちょうどタイミングよく粘膜の表面に付着してしまい検査で陽性だった、なんてことも絶対無いとは言い切れないでしょう、まあほぼ無いですけどw
 この場合死骸を検出していたり、ウイルスは残存しているけどピークはとっくに過ぎていいたり、調べた時たまたまそこにいたけど、鼻うがいできれいさっぱり洗い流して体内に入りすらしていないかもしれません。ですので、上記の主張の通り、検査で見つけた人は『新規陽性者』であって『感染者』ではない、という主張そのものは妥当と言えます。

 ですが、このウイルスの厄介なところは、一般的に今まで人類が知りえた感染症と違ってウイルス量のピークを迎えるタイミングが早く、症状が出た場合にはその初期にかなりの量を拡散させてしまっている可能性がある、ということです。
 無症状で何も起こらない人もいますが、無症状でもウイルスに感染はしていることはあります。一般的には『無症状感染』医学的には『不顕性感染』と呼ばれるそうですが、SARS-CoV-2というやつは巧妙な生き残り策を考えたのか、無症状感染でもかなり増殖しておいて、宿主が無自覚な間に周囲に拡散させてしまう危険性が高いとみられています。
 何か症状が出たと気付いた時にはもう既にかなり周囲の人に広めた後だった、ということが日常的に繰り返されており、だからこそ症状のない人にも徹底的に検査をして広がり方を把握することが、まだ根本的に効果的な治療法がないこの感染症の対策として重要視されているわけです。

 で、話を元に戻すと、PCR検査で陽性だからといって感染しているとは限らないわけですが、症状が出ていなくても感染している可能性があり、かつその状態でも広げてしまう可能性も高い強い感染力を持っていて、陽性判定が出た後に症状が出てその時点ではもうかなりの量のウイルスを保有・拡散させてしまう可能性があるわけですから、言い方はあまり良くないですが『陽性になった人は全員怪しいと思え』ぐらいの扱いをまず初期対応として取らざるを得ないわけです。
 また後程登場しますが、感染症法では第1類、2類、新型インフルエンザ等に指定された感染症について、第8条の条文では次のように規定されています。

第八条 一類感染症の疑似症患者又は二類感染症のうち政令で定めるものの疑似症患者については、それぞれ一類感染症の患者又は二類感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。
2 新型インフルエンザ等感染症の疑似症患者であって当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のあるものについては、新型インフルエンザ等感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。
3 一類感染症の無症状病原体保有者又は新型インフルエンザ等感染症の無症状病原体保有者については、それぞれ一類感染症の患者又は新型インフルエンザ等感染症の患者とみなして、この法律の規定を適用する。

『当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由』をどこで解釈するかによりますが、大雑把に条文を解釈すれば先ほど書いたように『陽性になった人は全員怪しいと思え』という具合になるでしょう。

 丁寧に棲み分けして、陽性の人をさらに顕性感染者・不顕性感染者・無感染者、とやっていられるだけの時間的猶予があればいいですが、現状そうではないわけですからそこにこだわる必要性ってあるんでしょうか?
 現実問題としては、検査を受ける人の多くは既に発熱など何かしらの症状が出ている人と、陽性と判定された人の周辺の人なわけですから、ここで陽性と判定される人は『これからまさにウイルス量がピークになって周囲に広めるかもしれない人達』が相当程度含まれていると考えるのが妥当です。そして、そうした人の人数が多いのか少ないのかは、感染症の流行状況を知る上での分かりやすい物差しであることもまた明白でしょう。
 
 ですから、感染者という言葉が嫌なら陽性者に切り替えても別に問題ないでしょうし、これらの言葉の意味の違いは知っておいて損はないと思いますが、呼び方を変えたらウイルスがおとなしくしてくれるわけでも、人々の感染症対策が強化されるわけでもありませんから、はっきり言って無意味な話だと思います。
 ましてや、こうした一連の話をすっ飛ばして「不安を煽っているだけで本当は大したことない」みたいな論調になっている人は、結局のところ「大したことがない」という自分にとって都合の良い結論を出したいがために、表現方法という単語に噛みついて、いかにも自分こそが正しいことを知っているんだ、と自己陶酔・現実逃避したいだけだと考えるのが妥当です。


・5類感染症に引き下げるべきだ
→それをやるとどうなるか本当に理解していますか?

 流行すると危険な感染症はそこらへんの風邪やら花粉症らやとはワケが違うので、『感染症法』という法律によって取り扱いが決められます。感染症には危険度によって1類~5類の5段階と『新型インフルエンザ等』『指定感染症』『新感染症』という別枠3つの計8つのカテゴリーに棲み分けされています。
 COVID-19は当初は上から2番目の『2類』に指定され、2021年2月に『新型インフルエンザ等』に変更されました。形式上は変更されましたが、実質的には従来の2類と同等の取り扱いになっています。2類にはH5N1型の鳥インフルエンザや、今回の感染症と同様にコロナウイルスが原因となる重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)も指定されています。
 簡単に言うと、2類は上から2番目の『けっこうヤバいやつ』に該当するので、診療や入院といった対応を行えるのは感染症に対応した指定医療機関、陽性者は隔離措置がとられます。職場で発症した人がいる、なんか俺も熱が出て来た、こんな時にいきなり近くの馴染みの町医者に駆け込むことはできず、保健所を通じて指定された病院へ行かないといけない、というようなことが起こります。
 保健所は濃厚接触者を特定したり、集団感染が起きていないか調べたり、といった調査を一生懸命行う必要が出て多数の仕事をこなす必要が出ます。入院先の調整、経過観察、などなど、キリが無い仕事を抱えてしまい、これほど広まるような感染症に対して完全に組織力が負けてしまってパンク状態です。
 対応にあたれるのが決められた病院に限られてしまいますので、診てもらうにも具合が悪くなって入院するにしても狭き門に多くの人が殺到する形となるために医療もまた同様にパンク状態になってしまいます。いわゆる医療崩壊という状態で、今もまさに起こっている物事です。

 そこで最初の頃から声高に主張されるのが『新型インフルエンザ等(≒2類)から5類に引き下げるべきだ』という主張です。5類は季節性インフルエンザ、風疹などが該当しているもので、格付けとしては一番下なのでかなり措置が緩くなります。
 指定された医療機関以外でも診療が可能となり、無症状の人を隔離する義務も無くなります。保健所による追跡調査などの対象からも外れるのでかなりの負担軽減になりますし、患者は自由に普段通りのお医者さんで診てもらえるので、『熱が出たから診てもらいたいのにそもそも医者にすら行けない!』てなことが減少します。
 5類引き下げの根拠としては、2類に指定されている他の感染症ほど致死率が高くないわりに過剰に重大視されており、しかも絶対数が多くてこれをゼロにすることなんてできないので、一件一件を大騒ぎしてたらキリが無い、とザックリ言えばこういうことになります。

 では、5類に下げたら何もかも解決するかというともちろんそんなことはありません。確かに一時的にはひっ迫した状態は解消されると思いますが、現在流行するデルタ型のウイルスは非常に感染力が強いとされています。医療機関はみんながみんな万全の感染症対策ができているわけではないですから、具合の悪い人が待合室や診察室を往来すれば、それに従って病院きっかけの感染者が出ると考えるのは自然です。
 今は無症状の人でも『全部怪しいと思え』という方針なので取り囲んでいますが、5類だとそうなりません。自宅待機や入院の要請もできなくなってしまうので、軽症程度だとゴホゴホ咳をしながら外出する人が出て来るかもしれませんし、そうなると今でも感染経路が分からないものが多いのに、それが増加するであろうことは容易に想像できます。しかも保健所はその調査をしないわけです。
 感染者の絶対数が増加すれば、割合は低くても中等症・重症の人も当然増加しますから、結局高度な治療を受ける人の数は増えてしまいます。その人たちは5類格下げで診ることができるようになる小さい医者では対応できるわけありませんので、結局全国的に具合の悪い人が増加して行って、時間と共に大きな病院は結局さらに負担が増えることも考えられます。
 なおかつ、現在は検査・入院・治療、全て公費負担になっているので我々の財布は傷みませんが(もちろん後年何かしらの税金で帳尻を合わせる必要はあるが)、5類では自己負担なので、今話題の抗体カクテル療法、入院代などあらゆるものを患者が負担する必要が出てきます。日本には高額医療費制度というものがあるのである程度は戻ってきますがそれでも入院レベルになったらそれなりの金額になるでしょう。
 果たして、こうした状況が想定されることまで全て織り込んだうえで『今すぐ5類に引き下げることが解決策だ』と言えるでしょうか?私には全くそうは思えませんね。

 引き下げ論の人の中には、残念ながら根本的に言ってることが滅茶苦茶で『致死率がインフルエンザより低い』など、そもそも科学的根拠としてウイルスに対する情報が誤っているようなケースも見られます。
 専門家の中でも5類への引き下げを提言する方はいますが、デルタ型の感染力が考慮されていない段階でのものであったり、あるいはイベルメクチンが治療に有効であることが前提条件となっているようなこともあります。前回の記事で書きましたが、イベルメクチンがCOVID-19に対して有効であるという根拠はありません。
 また、「医師会が反対しているからだ」「医療崩壊はコロナ患者を診たくない医者のせいだ」というようなまるで医者が悪くて政策は悪くない、みたいな言質も見られますが、こうやってあからさまな二元論は基本的に疑った方が良いです。物事を敵味方に分けるやり方は"ウケ"がよくて分かりやすいので人目を容易に惹きつけますが0か100かで語れる物事なんて多くはありません。
 とりわけ、大規模な災害や事件などでこうしたことを声高に主張しているケースでは必ず一度疑ってかかるべきですし、真偽の判断が自分の中でつかないようなら、拡散するような行為はすべきではないと思います。

 現状、SARS-CoV-2は世の中から根絶させられる類のウイルスではなさそうですので、いずれワクチンと治療薬によってある程度『普通の風邪の中でちょっと良くないインフルエンザみたいなやつ』に近づいていけば5類にするのは必然でしょうが、今声高に主張してまるでそれが今できる最高の対処であるかのように言うのが適切だとは私には思えません。


・マスコミは今頃になって研究所流出を言い出した
→ちゃんとニュースを見てますか?

 COVID-19の感染拡大が発生した初期の頃から、原因は中国の武漢にあるウイルス研究所からの流出ではないか?とする説があります。残念ながらこれは検証が非常に難しい上に、当事者である中国が海外からの調査に非協力的ですので、結論を出すことはほぼ不可能であると思われます。
 ちょうどアメリカでは8月27日に情報機関が調査結果を公表しました。これば大統領のジョー バイデンが求めた、COVID-19の起源がどこであるか調査するよう指示したものに対する結果ですが、起源については動物からの媒介、研究所からの流出、情報不足で結論を出せず、と見解が分かれ結論は当然ながら出ませんでした。
 この手の情報が出るたびに散見されるのが『マスゴミや専門家は当初無関係だと言っていたのに今頃になって研究所から流出したと言い始めた。トランプは最初からそう言っていたのに、トランプを貶めるために嘘をついた』『マスゴミもWHOも中国の手先』などの論調です。まあだいたいこういう言い方をする人はロクなこと言ってないですね。
 当初から否定され、今も特に相手にされていないのは『研究所で作った人工的なウイルス』『意図的に流出された』などとする中国故意犯説であり、研究所からの流出そのものを否定していたわけではありません。今回のバイデン政権の報告書でも『人為説』は否定されています。
 流出、というのが、研究で置いていたものをばらまくようなイメージか、調べるためにコウモリなんかを調べていて知らず知らず変なものに所員が感染して広めてしまった、というようなものか、流出の考え方も色々だとは思いますが、流出説自体を疑っている人は専門家でも多いでしょう。
 結局のところ、研究所に対する見方、スタンスは基本的には何も変わっていないのです。最低限の読解力があれば『人工的流出説』と『研究所流出説』が異なるものであって前者はほぼ否定、後者は証拠が無いけど疑わしいと感じても仕方ない、というような立ち位置であることは判別がつくと思うんですが、自分に興味のある情報だけを診たり、内容を精査せずに見出しだけで判断しようとすると、『去年否定していたものを今頃肯定している」というおかしな解釈が出来上がるのではないかと思います。


 大統領選挙の時もそうですが、情報は世の中にいくらでもありますが故意に虚偽情報を広める人は残念ながらいますし、わざわざ広めようとする人はそれが目的であるために非常にその力が強いことがあります。
 本来なら複数の意見があり、それぞれに利点や欠点があってそれらを整理して話すべきものごとが、善悪の二元論で語られてしまっているようなケースもよく見受けられます。
 賛同コメントが多ければそれが正しいとは限らないですし、その賛同自体が作り物のアカウントで固められた虚偽の賛同だったり、否定する人は片っ端からブロックして賛同意見しかないように見せかけているかもしれません。普通の人なら相手にもしないようなロクでもない陰謀論なんてことになると、わざわざ好き好んで見に行って懇切丁寧に否定する人間なんてそういませんしね。
 くれぐれも情報の取り扱いは慎重に行いましょう。私もかなり気を付けて書いたつもりですが、誤った内容等ありましたらご指摘ください。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
大変だったみたいですね。僕は1回目同様、筋肉注射をした部分が痛くなっただけで、何も起きませんでした。過度ではない程度の飲酒もしましたが。程度の低い陰謀論では、ワクチンで5年後に死ぬ、接種したマウスは2年後に全部死んだ、触れた電球が点灯するようになる、接種したところから、トマトが生える・・・などという荒唐無稽なものがあるようで。トマトが生えるかは、確認してみたいと思いますw。接種率の高いイスラエルでも聞いたことありませんが。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 熱が出ると思って構えていたので冷えるのはさすがに想定外すぎて動揺した面もありますが、まあこの程度で済んでよかったです。
トマトはさすがに初めて聞きましたが、この手のデマって「さすがにトマトとかは信じないけど〇〇は~」とかいう、相対比較によってどう見ても筋の通らないデマが正しそうに見えるという一種のデマのセット販売を目論んでるのもあるんじゃないかと疑ってしまいますね。何でトマトなんやろう、バナナとかブドウではあかんのか・・・w