1回目のワクチン接種を終えました

 先日、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種・1回目を行ってきました。30代の一般人としては幸運にも比較的早いタイミングでの接種に至ったと思いますが、これから接種をされるから、迷っている方に向けまして、多少なりとも何か情報があったら役に立つこともあるかいな、と思い書いてみることにします。
 また、様々な情報が飛び交っていると思いますが、個人的に「ひょっとしてこれは知っておいた方が良いのではないか」と思うような事柄についても同時に触れておきたいと思います。なお、あくまでズラスポーツ的なノリなので、時々いらない方向に話が脱線すると思います。

・まえがき

 私が接種したのは、ファイザー社製のワクチン『コミナティ筋注』です。comirnatyなので、厳密には『コミャナティー』あたりが正しい発音な気がしますが、日本人には難易度が高いですね。なお、モデルナ製の名称は『COVID-19ワクチンモデルナ筋注』、アストラゼネカ製は『バキスゼブリア筋注』だそうです。うーむ覚えられそうにない。

 なお、私はこのブログで多くの場合『COVID-19』と表記しています。COVID-19というのはWHOが名付けたこの感染症の『病名』で、ウイルスについてはSARS-CoV2と呼ばれます。かつて中国などで流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)の原因となったコロナウイルスと似ているために、ざっくり言えば『サーズのコロナウイルスの2番目のやつ』という意味合いで名前が付けられています。
 なぜ『コロナ』と書かないかというと、コロナウイルス自体は比較的ありふれたウイルスで、一般的な風邪の原因としても存在するもので、コロナウイルス自体が何かとてつもない危険物質というわけではない、というのが1つ。
 また、原義としては王冠を表す単語であり、商品の名称や人物名としても使用されている単語ですので、『コロナ=害毒』というような誤った印象が広まると、とりわけ日本では日本語としてそういう単語がありませんし、留学生なんかにそういう名前の子どもがいていじめられる、などの問題を不用意に起こしかねないため、『新型コロナウイルス』ときちんと呼ばないといけないと思っています。でも書き文字にするとCOVID-19の方が短いのでこちらを主に使用しています。(冒頭はあえて変えてみた)

・接種の話

 話をワクチン接種に戻しましょう、仕事を終えてからの接種で、軽いアレルギーを持っている私は接種後30分待機を言い渡されますが、接種会場は椅子に座って待っていたら担当者が順番にやってくる流れ作業方式なので、言われるがままにしていれば特に何もする必要がありませんでした。
 そのアレルギー、予診票では『薬や食品などで、重いアレルギー症状(アナフィラキシーなど)を起こしたことがありますか』と質問されており、ショックで倒れるような重大なアレルギーだけが対象のようにも見えますが、『アナフィラキシーなど』の『など』がどの程度まで該当するのか分かりにくいです。ですが、心当たりがあれば書いた方が良いと思います。
 何せ新しいワクチンなので臨床試験だけでは把握しきれていない何かがある可能性はあり、接種後に万一何かあった場合の因果関係を探る手掛かりとして、情報はあるだけあった方が、自分にも社会にも有用であると考えられるからです。

 注射そのものに関しては、多くの人が言っていると思いますが痛みはほぼないです。私の場合子供の頃はアレルギー注射、大人になってからは献血をしているので問題ありませんでした。献血の時もそうなんですが尖った物が苦手なので目を逸らしていると、その間に終わります。ただ献血と違って、刺したあと少ししたところで違った種類の痛みがピリっと一瞬来たので、筋肉注射であるということが関係しているかもしれません。
 
 ちょっとお腹が空きましたが、30分間特に何もなく経過して退出しました。途中妙な寒気がして『( ゚д゚)ハッ! 急激に何か起きるのか!』と思いましたが、単にエアコンの真下でじっとしていて寒かっただけでした。正直ちょっとした暑い、寒いに敏感に反応してしまう自分がいましたが、みなさんもリラックスはしつつ、変だと思ったらためらわずに伝達した方がよろしいかと思います。



・副反応の話

 副反応としては、接種の2時間後ぐらいから肩を真っすぐ上に上げるのはちょっと痛い感じになってきました。その程度のまま早めに就寝しましたが、起きたら真正面から上に上げるのは無理な感じでした。何と言いましょうか、超久しぶりにバッティングセンターに行ったのでついつい振り回しすぎた翌日の筋肉痛、みたいな感じです。発熱はありませんでした。
 結局一日中そんな状態で、最初は筋肉痛みたいだなあと笑い話でしたが、何をするにも常に何かしら気になるのでだんだんストレスが溜まりました。服を着替えるのが案外厄介でしたね。そして、帰りの地下鉄の車内でうっかり揺れた拍子に肩をドアにぶつけてしまい、思いっきり「あ痛ー!」って言いました^^;
 翌日も回復率は85%ぐらいな感じでたまーに気になりましたが、3日目にはきれいさっぱり消え失せました。


・私の周囲の人たちの副反応の話

 私の周囲で言えば、両親は高齢者なので早めに受けましたが、父は2回とも何も起こらずむしろ食塩水だけうたれてないか心配なレベル、母は1回目が腕の痛み、2回目はこれに頭痛が加わりました。と言ってももともと偏頭痛持ちなので、どっちが原因かはっきりしません。
 会社では、60代男性は2回とも「ちょっと触ったら痛いぐらい」、40代男性は「2回目は翌日の昼頃にちょっと熱が出た」。やや反応が大きかったのは30代女性で、接種翌日に最高で38.2℃の発熱でした。1回目の際も夜にはもう腕が上がらず「リモコンを持つのも大変」だったそうなので、比較的反応が強かったと考えられます。
 熱が出た時は腕の方はどうだったのか聞いてみたら「全身」と言われました。印象としては腕だけがどうというより、全体に熱のせいもあってしんどいので動くのがけっこう大変だったみたいです。しかしその翌日には熱も下がりました。引き続き気分があまりよろしくなかったようですが、元々体調がよろしくない時期だったみたいで、どこまでがワクチンのせいなのかこれまた分かりにくいです。3日目には元気にしてましたね。
 一般的な傾向として言われる、年齢が若いほど、また男性より女性の方が、というのが私の周辺では概ね一致していました。私は周辺の状況から推察するに、2回目は発熱コースな気がするので、既に「仕事は頼んだぞ」と言ってあります。
 GT SPORT界隈の知り合いの方でも、発熱あたりまでは結構な数いらっしゃる様子。中には息子さんが39℃台まで上がってしまったので、市販の解熱剤で体温調節をしたという方もいました。接種翌日にハンコンをどの程度扱えるのか実証されている方もいましたが、千差万別なので「ゲームは無理だ」と思っておいた方が良いでしょうw

 やはり接種の翌日は「活動出来たらラッキー」ぐらいに構えておいた方が無難です。発熱はなくても腕は役にたたない可能性があるので、重たいものを持ち上げる方や、棚の上のものを取るような動作が多い方は、利き腕と逆側に接種するとは思いますが、かなりの制約があるか、事実上無理になります。
 企業経営者や勤務工程を管理される方々は、少なくとも「接種する人は翌日から2~3日は不在かもしれない」という前提で予定を組むことを推奨します。あ、そういえば1名だけ「2度目の接種は拍子抜けするほど副反応は無かったが、注射がめっちゃ痛かった」という人がいました。注射の部位なのか角度なのか、そういうこともあるにはあるようです^^;
 

 と、とりあえず1回目の接種と、既に終わっている方の様子はこういった感じでした。ここからは、COVID-19にまつわる、個人的に「これは知っておいた方が良いかも」と思っている類の情報をいくつか並べてみます。医療の専門家ではありませんので限度がありますが、可能な範囲で情報収集に努めました。


・若者は重症化しないから大丈夫
→そもそも『軽傷・重症』の意味合いを見てみましょう

 私の周囲に若者がいないので実感がないですが、よく言われるのが『若い人は重症化しないから大丈夫』『重症化しないのに、わざわざリスクのあるワクチンを打つ必要が無い』だそうです。しかし、そもそもの話として、この重症というのがどういう状態かを知っておく必要があると思います。医師の安川 康介という方が、Twitterでこういったイラストを投稿しています。
 実際、COVID-19診療の手引きという資料にはこのように記載されています。

 軽症は『肺炎ではない』ものの、この段階ですんごい咳や熱が出るような状態まで含んでおり、中等症は呼吸が困難な状態に入ります。重症というのは、いわゆる重篤な状態、死ぬかも、という範囲に入ります。『軽症』と『無症状』はまるで別物です。
 また、まだ詳細なメカニズムは不明ですがSARS-CoV2というウイルスは味覚障害、嗅覚障害を妙に起こしやすい可能性があり、これは症状の重さとあまり関係なく影響が出ることも指摘されています。ウイルスがいなくなる数週間後には必然的に直る、という風にはならないこともあるため、楽観視はできないと思います。

・ワクチン接種後に既に800人以上死亡している!
→内容を精査しましょう

 この記事を書こうかと思っていた矢先、悲しい情報がありました。中日ドラゴンズの投手・木下 雄介が8月3日に死亡したことが明らかになりました。享年27、チーム側の発表によれば、7月6日の練習中に突然意識を失い救急搬送されたものの、意識が戻ることは無かった、とのことです。
 そして、彼はこの8日前となる6月28日にワクチン接種を受けていた(COVID-19ワクチンモデルナ筋注と思われる)ため、否が応でも関連性が無いのか気になるところです。

 この件に限らず、厚生労働省が公開している資料によれば、2021年8月4日の段階で、ワクチン接種後に死亡した事例について、コミナティ筋注で828件、COVID-19ワクチンモデルナ筋注で6件が確認されています。
 この数字だけを見ると驚かれる方が多いと思われます。「マスコミは真実を報じていない!」とか毎回のようにマスコミ批判をする人も多いです。その話は後にしますが、この数字は『有害事象』と呼ばれているもので、ワクチン接種後一定期間内に死亡した人がいれば、とにかく何でもいいので報告して数字を上げるものです。極端な話、接種の2週間後に餅を喉に詰まらせて亡くなったとしても有害事象として報告されます。(明確に因果関係が否定されれば行く行くは除外されると思います)

 コミナティ筋注について報告書を見てみると、ワクチンと因果関係が無いとされたものが3件、あるとされたものはゼロ、不明が825件となっています。因果関係なしとされたものは死因が、大動脈瘤破裂、大動脈破裂、誤嚥性肺炎で、このうち大動脈瘤で亡くなった方については、既にかなり危険な状態になっていたため、ワクチンとの関連付けをするのは困難である、という理由が添付されています。
 一方で大半が不明となるわけですが、これを見て短絡的に「本当は関係あるのに無いと言い張っている!」とかいうのは早計です。例えば、死因として溺死は12件報告されており、うち11件は高齢者でした。風呂場などでの溺死とみられます。
 溺死された方には持病のある方などもおられますが、じゃあ関係あるのか無いのかと考えた時に、『溺れる原因となった意識障害などにワクチンが影響したか』を考えることは困難です。消費者庁の資料によれば高齢者の浴槽内での死亡事故は2019年に4900件報告されています。症例が少ない8月、9月ですら1日あたり3人以上、冬場には1日あたり30人が亡くなっている計算で、死因として近年増加しています。稀な死因ならまだしも、起こりやすいものでは判断がつかないのです。
 1件は交通事故という記録があり、81歳の男性が接種の20日後に自動車を運転していて壁に衝突し亡くなられたとのこと。高齢ドライバーが何らかの事故を起こすというのも現代の日本では起こりがちです。現段階では『評価中』ですが、踏み間違いや意識障害だったとして、その症状がワクチンに起因したものか、というのは、ほぼ関係無いように思いますが、因果関係不明とされるようにも思います。
 他の事例をざっと眺めても、そもそも最初に接種したのは高齢や基礎疾患を抱えている方が多数いらっしゃるため、言い方はあまりよろしくないですが『毎日何人かは自然と亡くなられても仕方がない』状態の方でもあります。そして、そうした方々の死因とワクチンの因果関係は、多くの場合証明のしようがありません。

 現時点で接種人数あたりのファイザーとモデルナのワクチンの死亡者数ではモデルナの方が比率が低いのですが、これもそもそもファイザーは高齢者、基礎疾患を有する方に対して優先的に投入されたのに対し、モデルナは自衛隊の大規模接種センターや職域接種で使用されていることから、接種対象の方の中で年齢層の低い方が相当程度含まれている可能性が考えられます。

 木下投手の事例、8日後に倒れて救急搬送、その約1か月後に死去、という事例が有害事象として報告されることになるのか分かりませんが、接種後わずか8日ということで「普通27歳の元気なスポーツ選手が倒れるなんてありえない」と思いたくなります。しかしながら、スポーツ界では過去にも急に倒れた方というのはいらっしゃいます。
 2011年8月2日、サッカー・松本山雅FCの選手だった松田 直樹は練習中に突然倒れ、わずかその2日後に亡くなりました。現役サッカー選手の急逝という事件は極めてショッキングであったほか、練習場に自動体外式除細動器(AED)が設置されておらず、「あればひょっとして助かったかもしれない」との思いから、全国にAEDが広がるきっかけとなったと言われています。
 世界的に見てもサッカー選手の突然死というのはすぐにいくらかの事例が見つかる程度には発生しており、スポーツ選手だから健康で死にっこない、というわけではありません。ですので、極めて稀なケースで突然死に至ったのか、極めて稀なケースでワクチンが何か問題を起こしたのか、これも判別をするのは難しい問題になると思われます。

 で、話を少し巻き戻しますが、確かにこうした数字が出ている、という話は普通にニュースを見ている程度ではまず目にしないと思います。起こった事実を伝えるのは大事ですので、逐一報じられても不思議ではないとも言えますが、しかしながらこの話をすると、上記のように『そもそも有害事象とは何か』から毎回説明し、実際にどういった内容が含まれているかの例示等も併せて行わないと正確な意図が伝わりません。
 これを報道として成り立たせるのはなかなか骨が折れる上に、それを途中から見た人や話を聞かない人が「ワクチンで1000人も死んでるって!」と言いふらしたら結局意味が無いので、扱いづらい話であろうというのも見当がつきます。
 もちろん『不安を煽る報道はしたくない』といった編集意図もあるでしょうから取り扱いにそもそもバイアスがかかっているでしょう。透明性が無いことが不信感を呼ぶぐらいなら、堂々と明かした上で一部を切り取って誤情報を煽る人もきっちり取り上げた方が社会にとって建設的だと思うので、報道とはそうあるべきだと個人的には思いますけどね。
 しかし「マスゴミが報じないから悪いんだ」と居直って、「半年で1000人も死んでるワクチンは危険だ」と、具体的な内容が伴っていない情報を無責任に拡散する行為が容認されるわけはありませんし、その人がやってることは、その人が大変大変お嫌いな『マスゴミ』の行動そのものです。

 木下選手の件について、ご遺族がどういった心境であるのかはもちろん分かりませんが、この件を利用して「だから危険だ」という論調を貼るのは危険だと思います。ご遺族の方がそう感じるのは自由だと思いますが、単に数字として取り扱えば、非常に冷酷な表現になりますが現時点では『たまたま接種した後に運動中に心停止した人が1人亡くなりそれがたまたま有名な人だった』という以上の事柄は存在しません。周囲が勝手にそれを飛び越えてああだこうだ言うのは筋違いであると思います。
 接種後に亡くなった方は『接種・死亡』という2つの要素が常に明らかなので衝撃を与えがちですが、他方で『接種したおかげで助かっている人』というのは、統計値として全体的な傾向には現れる一方で、個としては現れないために把握することができません。
 例えば(その時にはまだ存在していなかったので間に合いませんでしたが)『ワクチンがあれば志村 けんも岡江 久美子も生きていたかもしれない』と考えると多少はイメージが沸くかもしれません。もちろんあくまで仮定の話でしかなく、絶対と言い切れるものでもないので限度はありますが。
 もちろん亡くなった方の周囲にとっては、原因が何であれ1人は1人でしか無いですが、仮に極めて低い確率でワクチンによる害が発生していたとしても、それを上回る有用性が存在しているのであれば接種には意味があるのではないか、という点は、迷っている方には考える要素の1つとして頭の片隅に入れていただければと思います。
 例えば、何をどうやっても交通事故で死者は出るので、その点で考えると自動車なんててなく全部徒歩にした方が死者の数は減るかもしれませんが、自動車による社会的便益が発生する死者を上回る効果をもたらしていると、意識しているかは別にして一定程度の社会的合意形成が成されているために、自動車は普及していると考えることができます。
 医療行為、薬の類というのは、リスクが全く無いというとはあり得ない(市販の風邪薬ですら死亡事故や重篤な副作用は起こる)ので、新しいワクチンに限らずそういった視点から世の中に取り入れられています。

・〇〇デマだとは言い切れないはずだ
→もう少し論理的に考えましょう

 ワクチン関連のデマは日々生み出されていると言っても過言ではありませんが、全て書いているとキリがないので割愛します。そんな中で『ワクチン接種で不妊になる、というのはデマ』といった指摘に対して散見されるのが『誕生したばかりのワクチンなのだから数年後のことは分からないはずだ、だからデマではない』『デマだ、ではなく、分からない、が正しい』といった反論です。
 一見正しい主張に見えますが、細かく考えて行くと問題点が見えてきます。確かに、10年も20年も経過した時のことは分かりませんから、絶対に何も起きないと言い切ることは不可能だとは思います。また、そう思って接種をしない、というのは個人の自由ではあります。
 ですが、例えば電磁波は人体に影響を与えると言われています。昔は無かった無線通信が世の中に発達してどんどん進化していますが、3G電波が普及した時、4Gの時、そして現在の5Gの普及、『安全だという根拠が無い!』と反対されますでしょうか?
 鉄道で採用が始まっているSiC-MOSFET素子のVVVFインバーター、当然採用されたばかりなので、毎日通勤に利用して電磁波を受けた場合の影響は誰も実験していませんが、導入に反対するでしょうか?食品に含まれる香料の世界は日々進歩しており、合成香料では様々な化合物によって新たなものが生み出されていますが、どうでしょうか?
 病気にかかって医者にかかった時に処方される薬、いったい何年前に生み出されたものなのか毎回精査して、5年やそこらのものだったら拒否されているのでしょうか?

 もちろん、それら全てに反対する生き方をしている、というのも1つの選択ですし素晴らしいことかもしれませんが、こと今回のワクチンについてだけ極端にこの理屈を主張する、というのであれば論理に少々無理があるように思います。
 mRNAワクチンというのはものすごく大雑把に例えると、『この後こういう形をしたウイルスがやって来るかもしれないから、先に設計図を見せるので備えておいてね』という情報を体内に与え、人間が本来持つ免疫反応によって免疫を得るという仕組みです。そしてこのmRNAというのは2週間ほどで分解して消えてしまうので、消えてしまったものが1年も5年も10年も影響するとは考えにくい仕組みとなっています。
 また、ワクチンとして使用されるのは初めての技術ですが、研究自体は10年以上前から継続的に行われているため、全くもって何も知見を有していないというわけではありません。
 もちろんこれらをもって断定することはできず、未知の何かしらが起こる可能性が無いと言い切ることは不可能ですが、過去の研究、大規模な調査、理論、といった要素から、長期的影響は相当程度に問題がないとされているからこそ投入されています。
 不安に思うのは仕方ないですが、『分からないんだからデマだと指摘するのがデマだ』というのは適切とは言えません。例えるなら『明日東京でマグニチュード8の地震が起きる』と言ったら、偶然本当に起きる可能性はありますし、明日起きないことを保証する科学的根拠は今の人類にはありませんが、根本的に明日起きることを断定できる根拠はありません。
 「あいつは明日車に轢かれて死ぬ」なんて言ったら、そうなる可能性はありますが、根拠もなく主張すれば単なる嫌がらせでしかありません。
 『不妊になる可能性は何年もたたないと分からないんだからデマだというのがデマだ』は、そこに一定程度妥当と見られる具体的根拠が伴っていない限り、単に自分の信じたいものを信じるために屁理屈の域を出ないと思います。
 加えて言うと、この理屈では『無症状や軽症だった人が5年や10年後に悪影響を受ける可能性』も考慮しないといけなくなってしまうので、結局は接種しないことによる利点を、全く想定のしようもないウイルスの影響性によって自ら否定することになってしまい自己矛盾を起こしてしまいます。


・CDC(アメリカ疾病対策センター)がPCR検査を廃止すると決定

 現時点で新しめのデマも1つ。ウイルス感染を調べるために主に使用されるPCR検査、当初からデマが多い印象で、これまでにも『普通の風邪でも検出する』『インフルエンザでも何でも全部陽性になる』『開発者が「ウイルスを検出するのに不向きだ」と言っている』『ワクチン接種をしたら陽性が出まくる』といったものがありました。

 そんなPCR検査について『CDCが2021年末での廃止を決めた』という情報が流れています。元々PCR懐疑論を唱えている人は鬼の首をとったように『CDCがインフルエンザとCOVID-19の区別がついていないことをとうとう認めた』などと言っているようですが、デマです。
 CDCの発表した内容は、感染拡大にともなってFDA(アメリカ食品医薬品局)に緊急使用許可を出していたものを年末で取り下げる、というもので、PCR検査をやめる、とは一言も書いていません。
 簡単に言えば、感染拡大時にSARS-CoV2に対応したキットは無く、とにかく急ぐのでCDCが急きょ用意して使用を申請して今まで使ってきたけれど、今となっては他にたくさん民間企業が作った良いものができたので、そっちにしてください、役目を終えたので緊急使用申請はもう終わりにします、ということです。
 代替としてSARS-CoV2とインフルエンザを同時に調べられるキットを推奨しており、むしろデマとは逆で『両方をいっぺんに調べられる便利なPCR検査の利用が促進されている』ことになります。


・ワクチン接種で死亡しても死亡保険が出ない
→デマ、保険会社が支払い対象としていれば出る

 広がっているかどうかは知りませんがこういうことを言っている人がいました。『ワクチン接種が原因で死亡しても死亡保険金は支払われない』。
 しかし、保険会社のサイトを見れば、大抵の場合支払い対象であると書いてあります。当然そういう指摘を受けているわけですが、主張する人はこう反論しました。「死亡しても因果関係無しになっているんだから支払われない」
 一見理屈が成り立っているように見えますが論理破綻しています。上の方で書きましたが、因果関係が認められないのであれば、死因は脳内出血だとか、心筋梗塞だとか、普通にあり得る症状です。普通にありえる症状で死亡したんですから、『ワクチン接種による因果関係が認められた時のみ支払われる超絶限定死亡保険』でもない限り普通に支払われないとおかしいですね。
 せめてデマを流すなら『接種が原因なら払わないと書いてあり、関係無しと判断されたものまで保険会社が独自に関係あると判定して事実を捻じ曲げている』ならまだ多少理屈が通っていてマシですが、どっちみち調べたらすぐ嘘と分かります。


・ワクチンよりもイベルメクチンを投与すれば良い
→根拠となるだけのデータがありません

 ワクチンに反対する方で妙に多いように感じるのが、イベルメクチンという薬への期待です。イベルメクチンは北里大学とメルク社の共同研究で1980年代に開発された寄生虫などに対抗するための薬で、当初は家畜向けだったようですがその後人間にも範囲が広がり、主にアフリカ・中東・中南米などで使用されるようになり、寄生虫に起因した恐ろしい病気に大きな効果を上げました。
 COVID-19の感染が急拡大すると、何か既存の薬で効くものが無いかと世界中が片っ端から試していきましたが、そんな中でイベルメクチンを使った国で効果があったのではないか、という話になり注目を集めました。
 以後イベルメクチンは有望ではないかという話になり、また『日本発』であることもあってか日本での注目度も高く、それでいて積極的に使用が進んでいないため「安価な既存薬で解決すると企業が困るから妨害されている」といった考えが並行して広がっていったと思われます。

 実際、効果があるとする論文も発表されており、特にアーメッド エルガザールという博士が中心となって出した研究データは規模が大きく有効性を示すものだったので、他の論文にも多く引用されるなど、イベルメクチン優位説の中軸を担うような存在でした。
 この論文はまだ正式発表前の『プレプリント』と呼ばれる査読(専門家の人が内容を読んで、学術誌に掲載するにあたって誤りなどが無いか調べること)前のものでしたが、7月15日にニック ブラウンという数字を分析して詐欺を暴くプロの人が「内容がでたらめの可能性がある」と指摘。するとこの論文は撤回されました。
 内容を軽く読んでみると、患者の名前が同じ文字列で構成されていてやたら似ている、コピー&ペーストしたらしきセルが多い、患者の年齢が妙に偏っている、試験の開始日よりも前や、存在しない6月31日に退院した人がいる、といった不自然な点が見られたとのこと。
 数字の0(零)をアルファベットのO(オー)で入力していてセルが数字として機能していないなど、素人目には『エクセルに不慣れ?』と思われるような入力データも目に付くとのことです。

 もちろん、単に入力が下手くそだっただけでちゃんと実験と結果が出ていれば問題は無いんですが、他の論文に引用されていてイベルメクチン優位説の有力な根拠とされている論文だっただけに、これがデータとして使えないとその根拠は大きく揺らぎます。
 『使用した国で感染が抑えられたという実績があるんだからどのみち影響は無い』というような言質も見られますが、他の要因が関与している可能性があるので客観性に乏しく、あるいは最初は効いたけど変異したウイルスに効かなくてもう今は使えない、といった可能性も当然あります。
 他にも研究は行われていますが規模が小さかったりして、既に臨床試験を終えて各国で一定程度のデータが出ているワクチンと比較して、ワクチンをわざわざ今取り下げるほどの有効性を示す根拠は示されていません。
 また、『大きな副作用が無い』という言葉が独り歩きしている様子ですが、それはあくまで本来の使い方をした際の使用量に対するものですし、副作用の無い薬というのは無いので当然副作用が出る可能性はありきちんと記載されています。そして、本来の目的ではないCOVID-19の治療薬としては投与量が増やす必要があるとする見解もあり、そうすると副作用の出方も変化します。
 こうなると当然試したことが無い方法なので、古くからある薬だから影響が無い、とは言えないことになるわけですが、ワクチンで問題がある、と言っていながらこちらを問題が無い、と言ってしまうというのは二重基準に思えます。
 もちろん1つの論文が否定されただけで全てが否定されるわけではもちろんないですし有効な可能性もありますが、現時点では『有効かもしれないが、わざわざ積極的に推進するほどの根拠は無い』という程度のものだと解釈するのが妥当です。

 イベルメクチンは日本でも糞線虫症や疥癬という、やはり寄生虫に起因した症状の治療薬として使用されていますが、COVID-19の治療薬としては承認されていません。医師の判断で使用は可能ですが限定的です。
 それ故に通常はなかなか使用はできないんですが、ネット上では個人で輸入したり、医師が個人輸入を支援しているようなサイトも散見されます。しかし、何か起きても一切誰も責任をとってはくれませんので、危険なことはしない方が良いと思います。
 また、『予防に飲んでいる』などとする投稿も散見されますが、治療以上に予防薬としては想定されていないですし、そもそも輸入品ともなると本物である保証すらなく中身が一体何なのか分からないのではっきり言って危険です。
(なお、医師が譲渡・販売目的で未承認役を輸入した場合薬事法違反に問われます)


・イギリスではワクチンを2回接種した方が死亡率が高い
→その数字では実態は見えません

 イギリスでワクチンを2回接種した人と未接種の人の死亡率を比較したデータを見ると、2回接種した人の方が死亡率が高いデータが公表された、という記事がありました。イギリスのPHE(Public Health England=イギリス公衆衛生庁)というところが公表したデータです。どこにそれが置いてあるのか分からなくて探すのに時間がかかりましたがこれです
 PHEのテクニカル ブリーフィング、という内容の文章で、この中でデルタ型の陽性が確認された患者についての統計が示されています。リンク先のテクニカルブリーフィング19では2021年 2月1日~7月19日の患者について、50歳を境界とした年代区分と、ワクチン接種なし、接種1回目から21日以下、21日以上、2回目の接種を終了、の分類で統計を取っています。
 この統計によれば、2回接種した人では28773人が感染し224人が死亡、未接種の人では121402人が感染して165人が死亡し、死亡率は前者が0.779%、後者は0.136%となっています。一見すると接種した方がむしろ死亡率が高く見えます。死亡とは、この場合陽性が確認されてから28日以内に亡くなった方を定義している模様です。

 しかし、この表では分かりにくいので自力で数字を拾って計算してみたところ

 こうなりました。50歳未満に限って言えば死亡率が拮抗しています。そして、未接種の人の大半は50歳未満です。従って未接種の数字の分母はこちらの数字にかなり引きずられます。一方で50歳以上で見てみると、未接種の方の死亡率は5.6%とかなり高い数字になっています。『2回接種の方が死亡率が高い』という全体の数字とはかなり印象が異なるのではないでしょうか。
 では50歳未満なら大して効果が無いのかというとそういう結論でもありません。そもそもこれは起こった事象を統計として出しただけで効果を計測するための実験ではありません。数字を比較検討するだけの条件が、もちろん50歳以上のものもそうですが揃っていません。
 例えば、2回接種した人はよほど何か自覚症状が出ないと検査を受けに行くケースは少ないですが、未接種の人は何かの理由で自主的に検査を受けに行って陽性と判断されるようなケースも多く存在すると考えられます。そうすると、未接種グループでは無症状などの軽微な症状の人が多く含まれて分母は大きくなっている可能性があります。
 接種した人は症状が出るようなケースでようやっと検査することが多いとしたら、無症状の人は未接種組より少ない可能性があります。上の方でも書いた通り、そもそも優先的に接種した人は死亡リスクが相対的に高い方々である可能性があります。
 救急搬送されて一晩入院した人の比率なんかもデータ(だと思う)が出ていますが、結局土台部分の数字を揃えているわけではないので異なるカテゴリーを比較対象にするのは適切ではありません。ただ、数字上はワクチン接種をした方が被害が少ない傾向が出ているので、少なくともこの統計を見て『ワクチン接種をした方が死亡しやすい』という結論は導き出しようがありません。
 曖昧に書いている人をどうするかはさておき、接種した方が死亡率が高いから接種しない方が良い、と言い切っているようなケースはデマと言っても差し支えないと思います。そもそもPHEはそんな結論を出していないし、もしそうならとっくに大々的に報じられています。


・あとがき

 いくつか最近の気になる情報もご紹介しましたが、世の中にあふれている情報は玉石混合です。私の話が長いせいもありますが、基本的にこういったデリケートな情報を2~3行の文章で説明なんてできっこありません。ですので、個人的にはSNSの短い情報で物事を知ろうとするのがそもそも間違いだと思いますし、題名だけ見て知った気になるのは危険です。
 その上に、内容を精査せずに広める、というのは場合によっては人命にも関わる問題ですので、それが出来ないという方は、本当は見ること自体一度やめて常識を学んだ方が良いと思いますが、見ても広めるようなことはしてはいけません。
 
 面白い、というと語弊がありますが、マスコミから世の中に発信されているニュースなんて日本ではだいたい似たり寄ったりなのに、あるグループは「ワクチンを推奨することばかり言っている!」と怒り、ところがもう一方のグループは「不安をあおるような報道ばかりするな!」と言っている姿を目にしました。見えている世界が全く違うんですね。
 正直そこまでもろ手を挙げて賛美しているようには見えないし、起こった副反応を紹介するのは当たり前のことなので、それを「不安を煽る報道だ」と言われたら何も言えなくなります。こうした人たちにとっては『自分の思っている報道内容が無い・違う=世界が間違えていて自分こそが正しい』という歪んだ思考に既に陥っていて、これはアメリカの大統領選挙のデマでも触れましたが危険な状態です。
 結局どんな報道をしても受け取り手の理解力が無ければ同じことで、我々が利口にならないといけません。いちいち海外の公衆衛生局のPDFファイルを探せとは言いませんが、1を見たら10とは行かなくても3か4ぐらいは別の視点を疑い、本当に解釈が正しいのか考える時間を持つことが必要でしょう。特に、世の中の方向性と逆のことを言っている内容は慎重に見極める必要があります。

 ワクチン接種は任意ですからしないという決断をするのも自由ですが、決断をする根拠がそもそも間違った情報に基づいていればそれはやはり問題。間違った情報をさらに広めて相手の意見を変えさせようとするのも同じです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ワクチン接種の1回目は、先月でお盆明けに2回目を打ちます。基礎疾患があるので早かったと思いますが、2回目の方が副反応が大きいと聞いてるので、翌日休みを取る、とは伝えてあります。1回目は、腕の痛みはあった(3日目で完治)ものの、特にそれ以外のものはなかったです。
ワクチン陰謀説は、クラスターフェスとかやってる集団を追っかけてるブログを読んでるので、良くも悪くも興味があります。この記事に載ってるものとは比較出来ないような酷い陰謀論ですが。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 大当たりにならないようにお祈りしています。もうぶっ飛んだ陰謀論はQアノンと同様相手にする価値もないし手遅れの人たちなので、いかにも尤もらしいことを言っていて実はそうでもない、という類のものを自分が知っている範囲で取り上げてみました。