NCS 第13戦 ドーバー

NASCAR Cup Series
Drydene 400
Dover International Speedway 1mile×400Laps(120/120/160)=400miles
competition caution:Lap35
winner:Alex Bowman(Hendrick Motorsports/Ally Chevrolet Camaro ZL1 1LE)

※記事終盤に誤りを見つけたので修正しました

 NASCAR Cup Series、第13戦はドーバー。スポンサーのドライディーンは潤滑油の会社ですね。コリー ラジョーイのスポンサーでもあります。
 NASCARは5月13日にプロトコルを更新し、イベント会場において屋外ではマスクの装着を不要としました。ワクチン接種が進んでいるためでしょうね。屋内では引き続きマスク着用が求められています。お客さんの方も、人数制限がある中で販売されたグランドスタンドのチケットは完売との情報です。正式発表はありませんがUSA todayによれば約20000人の観衆だったとのことです。


 一方で、スパイアー モータースポーツはジャスティン ヘイリーがCOVID-19感染予防プロトコルに基づいてこのレースへの出場ができなくなり、代理としてジョッシュ ベリーがカップ戦デビュー。30歳のベリーは今季JRモータースポーツからXfinity Seriesに参戦し、マーティンズビルで初勝利。
 元々レイト モデルでの活動が中心でショート トラックが得意な選手のようですが、どうも調べていると優勝争いの中で熱くなりすぎて他者と接触しかなり非難されたり、わざとクラッシュさせて出場停止処分を受けたりとかなりワイルドな方のようにも見えます^^; 昨年はNASCAR Advance Auto Parts Weekly Seriesという地方選手権でチャンピオンでした。
 また、ブラッド ケゼロウスキーのクルー チーフ・ジェレミー ボリンズも2戦連続の欠場ですが、こちらも放送ではっきりと『COVID-19プロトコル』と言っているので、隔離対象になっているため欠場しているようです。
 チーム側のコメントにはっきりと書いて無いから他の理由があるのかと思いましたが、日本でもニュース速報のテロップなんかで『兵庫県で〇〇人の感染を確認』って、何に感染したのかまったく書かずにこれだけ書いて、もうそれはCOVID-19のことだという合意形成が勝手になされているので、それと同じような話で、『プロトコルにより』と書いてたらそれはCOVID-19のことなんですね。

 さて、レースの方はマーティン トゥルーエックス ジュニアとデニー ハムリンの1列目でスタート。トゥルーエックスは序盤の15周をリードしましたが、これをウイリアム バイロンが16周目にかわします。バイロンは現在10戦連続トップ10と絶好調。史上最年少での10連続トップ10だそうです。
 ここにカイル ラーソンが追いついてヘンドリック モータースポーツの1、2位でコンペティション コーションを迎えました。トゥルーエックスの方はフロントのグリップ不足に悩み、4位まで滑り落ちます。さらに深刻だったのはカイル ブッシュで、エンジンに問題が起きたようで明らかに遅い速度で走行。ピットで修復できる類の問題なのかが気になるところです。

 コーション中のピットではラーソンが僅差でバイロンを逆転しステージ1後半戦へ。トゥルーエックスはピット作業でジャッキにナットが引っかかってしまう問題が発生して12位に後退しました。デブリーをフロントで撥ねてちょっと損傷があったのでそれは修復したとのことです。

 ラーソンはトップを快走、追うのはケビン ハービック。ブレーキがスカスカになったと訴えるドライバーが早くも出てきたり、画面に映ってないところで横を向いている車がいたり、なかなかタフなレースになりそうです。
 
 70周目、せっかくの冠スポンサーなのにラジョーイはタイヤが壊れたかバリアに当たって緊急ピット。ラジョーイはこのレース26位でした。

 この後特に何も起きず、ラーソンが独走して周回遅れを量産。リード ラップ車両18台で最終周に入りますが、これに続く19位=フリー パスの位置にいたチェイス ブリスコーが、リードラップでステージを終えようと頑張りすぎてクラッシュ。これでコーションとなってステージ1は終了しました。
 ラーソンがステージ勝利、大差で2位にハムリンが長い時間をかけて上がってきました。トゥルーエックスは車のバランスが悪いままでトップ10圏外、ステージ後のコーションで時間をかけて修復作業を行いました。修復と言っても、グリルのあたりが壊れているので、丁寧に拭いた後に銀色のテープを貼るだけなんですがw 結局今日は最後まで調子が戻らずなんと1周遅れの19位でした。


 カイルは車が直らないようで7周遅れの最下位、しかしこちらも諦めずにピットで修復作業を続けます、ってあれ!?

そっくりさんがスタンドにいましたw そっくりさんの期待に応えたか、このコーションで車を直したようで、ペースが戻りました。プラグ ワイヤーの問題だったので交換したという情報です。

 
 ステージ2、ラーソンとハムリンの1列目でリスタートしますが、ハムリンはすぐ4位に転落、代わってチェイス エリオットが2位となります。放送席でも言ってましたが、今日は明らかに外側が有利なので、2位のハムリンは2列目外側を選ぶと思いましたが、1列目のインに並んで、そして出足で抜かれました。

 このランもラーソンが独走、唯一エリオットがついていきますが、1秒前後を行ったり来たりで勝負する状況ではありません。
 171周目、ベリーがウォールに当たりコーション。ここでライアン ブレイニーはまだピットが開いていない中で緊急ピット。どうもボロボロで走り続けているブリスコーが破片を撒き、それが右前に命中してブレーキのホースを切った挙句タイヤも切ってフェンダーも壊れた、という結構な被害を受けたようで修復作業でした。まあ修復と言っても(ry


 177周目にリスタート、エリオットは2列目外側を選んで2位を維持、やっぱりこれがセオリーですね。結果的に今回も1列目のインからリスタートしたハムリンが3位。しかしヘンドリックの2台を追うことができません。

 
 204周目、トラック上はラーソン、エリオットの後にバイロン、さらにアレックス ボウマンとヘンドリックがトップ4独占。バイロンとボウマンは序盤にブレーキの不調を訴えていましたが、おそらくテープを剥がして調子が戻ったものと思われます。
 このままステージ2もラーソンが勝利、エリオット、ボウマン、バイロンとヘンドリック勢が4位まで独占し、その後ろにハムリンとケビン ハービックが続きました。昨年シリーズを圧倒したこの2人は未だに今季勝利無し。
 リードラップ車両は19台で、フリー パスを得たのはライアン プリース。1周遅れがなんと1台もいなくて、プリースは2周から1周遅れへのラップ バックです。これで他の2周遅れのドライバーはラップバックするのがかなり難しくなってきました。

 さて、トラック上のカイルはペースを取り戻して孤独に1つずつ順位を上げている状況。実はそこそこペースが速いのでトラブルが勿体ないです。で、もう1人のカイルは
お馴染み勝利のポーズ
 
「パパ!あれ見て!カイルだよ!」 ※想像です

 ステージ間コーションではボウマンがエリオットを逆転して2位に割り込みファイナル ステージ開始。ボウマンは内側の1列目を選びましたがきちんと2位を維持しました。なんかリスタート早々に『ヘンドリック4台とそれ以外』にパックが分断された気がします^^;

 ラーソンはボウマンを引き離してまたもや独走状態。いつもなら各コメンタリーが別々のドライバーを紹介するCredit One Bank One’s to watchのコーナーも、全員が「カイル ラーソン」と発言する状態ですw(たぶん史上初ではないだろうか)

 コーションが出なければ残るピットは1回、次回のピットでのアジャストについてのケゼロウスキーの無線が流れていましたが、ピットがコーションかグリーンかで欲しい車のセッティングが異なっているというのが非常に面白い内容でした。
 グリーンであれば車はばらけているので基本的にはクリーン エアーなことが多く、それゆえ旋回性能が欲しい。一方コーションであればリスタートが待ち構えているので集団走行となるため安定性を足してほしいというリクエストです。
 クルーチーフはこれを受けて、この場合こうする、というアジャストの方法を考えて行くわけですね。ケゼロウスキーは結局このレース16位でなんかパッとしませんでした。ちょっと驚きのニュースも入ってきましたが別記事にて後ほど

 302周目、エリック アルミローラが右側のタイヤのブローが原因と思われる単独クラッシュ。ピットまであと20周ほどというところでしたがもちませんでした。見た目よりも激しく当たったようでアルミローラはやや苦しそうな動作を見せます。以前大クラッシュで重傷を負ったこともありますので、後々影響は出ないか心配ですが、本人は成績が悪すぎるのが心配でしょう。。。


 フリーパスはプリースが得ましたが、また2周遅れに戻ってたのでこれで1周遅れ^^; 他の人からしたら、いっそのことさっさとリードラップに戻ってくれた方が自分たちにフリーパスのお鉢が回ってくるんですが、これだと無限ループです。

 ピットではボウマンのクルーがまた早い作業を見せて先頭でピットを出ることに成功。ラーソンは外したナットがブレーキのキャリパーのあたりで挟まってタイヤ交換の邪魔をしたようで右後輪で時間をかけてしまいました。ただ、それでなくてもボウマン陣営は今季全体のピット作業(おそらく平均作業時間)で最速だそうです。

 309周目にリスタート、外側に並んだボウマンとラーソンがそのまま1、2位となりますが、5周後のターン2でリッキー ステンハウス ジュニアがアンソニー アルフレードを押して回してしまい6回目のコーション。短くて高速なドーバーは誰か回ると後続がエライことになりがちですが、奇跡的にみんな回避しました。
 ここで上位勢を除いてリード ラップ車の多くはピットへ。何せヘンドリック勢は速すぎるので、どうせ失うものが無いですからタイヤの履歴差とアジャストぐらいやりたいところです。

 320周目、8台がステイアウトしてリスタート。なんと3列目からハービックがいきなりヘンドリック編隊に割って入って3位に割り込みますが、すぐに追い返されます。
 そして326周目、デブリーにより立て続けの7回目のコーション。さすがに今度は下位だけがピットへ向かいました。プリースはリードラップへ復帰です。

 331周目、残り70周でリスタート。ヘンドリック勢は綺麗な1-2-3-4体制。6回目のコーションでタイヤを換えた組では最上位のハムリンですが、新品タイヤのおいしいところを使えなかったので9位からなかなか抜け出せず。一方ダニエル スアレスはステイアウト組で7位を走行しています。ホントすごいわこのチーム。

 ボウマンとラーソンは無線制御されてるんじゃないかと思うぐらい見事に0.5秒ほどの差で走行していましたが、やはりクリーンエアーの方がタイヤには優しいのか、周回を重ねるとラーソンは徐々に離されて行き、残り25周でその差は1.4秒にまで拡大。5位以降も離れていてヘンドリックの1-2-3-4フィニッシュへの期待も高まります。


 トレンド的にもドーバーでは終盤にコーションは出ないらしく、ボウマンはそのままトップでチェッカー。今季2勝目を挙げました。そしてラーソン、エリオット、バイロンと続きヘンドリックは史上3チーム目(4度目)となる同一チームによる1-2-3-4フィニッシュを達成しました。
 3人からちょっと離されてしまったバイロンに対し、新しいタイヤのロガーノが2秒差まで追い上げてきていたのでリック ヘンドリックもちょっと緊張して見守っている様子でしたが、見事偉業を達成しました。


 過去に同一チームが1位から4位までに入ったことがあるのは僅かに2チーム。1956年と1957年に二度達成したディパオロ エンジニアリングと、2005年のラウシュ フェンウェイ レーシングだけです。
 ディパオロエンジニアリングはピート ディパオロという人が1955~1957年に所有していたチーム。ディパオロは1925年のインディアナポリス500の勝者で、インディー500で史上初めて平均速度100mphを超えたドライバーとして記録されています。
 このレース、彼は圧倒的は速さを見せ、途中手にひどい水ぶくれができたらしく21周に渡って他のドライバーと交代していましたが、再び車に乗ると交代中に落とした順位を取り戻して優勝したという話です。
 ディパオロエンジニアリングではグランド ナショナル シリーズで通算21勝。その後チームはホルマン-ムーディーへと変わり、1968、1969年とデービッド ピアソンがグランドナショナルで2連覇を達成しました。
 現在はレースチームではないホルマンムーディーですが、なんとあの伝説の名車・フォードGT40マークIIを製造しています。レプリカではなく、権利を引き継いで新車として生産しているということになるみたいです。

 2019年秋のリッチモンドではジョー ギブス レーシングが達成したかに思われましたが、4位のエリック ジョーンズが車検に引っかかって失格になったので幻になってたんですよね。今回4位のバイロンはレース後にラグ ナットの違反がありましたがこれは罰金で済むやつです。置いて行かれた原因もナットが足りてなくて微妙に振動とかあったかもしれませんね。

 今日は本当に「ヘンドリックさん参りましたm(_ _)m」という感じでした。No.48とドーバーといえば、ジミー ジョンソンは通算11勝という恐ろしい相性。ドライバーが変わりましたが、2017年以来となる48番のドーバーでの勝利です。その2017年のレースで2位だったのはラーソンでした。
 番号で見ればジョンソンの48を引き継いだのはボウマンですが、体制としては48は昨年の88のチームで、ラーソンの5番のチームが昨年の48番のチーム。そのためこの車がドーバーで速いというのはなんとなく分かりますが、それ以上にどこへ行ってもラーソンが速いというのが、今年のチャンピオン争いにおいて非常に重要な点だと思います。

 エリオットは今回またもや、というべきか、車検で複数回引っかかって後方スタートからの3位。車検で頻繁にひっかかるチームというのは、だいたい規則上のギリギリの部分を狙って、NASCARのレーザー計測車検の誤差の範囲を出るか出ないかのせめぎ合いに負けているのではないかと思います。
 逆から言えば、ヘンドリックは今年何かしらの部分でかなり有効なものを見つけている可能性があり、他チームはその理由を見つけて同じ部分を突いて行かないと、ヘンドリックにシーズンをさらわれる可能性がありそうです。

 優勝争いの陰に隠れましたが、タイラー レディックが8位、スアレスが9位とロング ランでこの2人は安定。新規チームのトラックハウスがこれほど結果を出すとは恐らく誰も想像していなかったことでしょう。次戦のCoTAを楽しみにしているというスアレスですが、これでスタート順位がいくらか前になります。
(訂正)ごめんなさい、最近の流れでうっかり忘れていましたが、CoTAは初開催なので練習走行、予選が開催されるのでレース結果はグリッドに影響しません。お詫びして訂正いたします。

 さて、次戦はいよいよサーキット オブ ジ アメリカズでのレースです。一体どんなレースになるんでしょうか。その翌週はシャーロットでの600マイルです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
ヘンドリック強かったですねぇ。2018年タラデガのSHRの無双っぷりを思い出しました。ま、ガス欠でファイナルステージではカートとハーヴィックは脱落しましたが。とにかく、次のCOTAでのエリオットの初勝利を期待します。ダニエル・リカルドがNASCARオフィシャルの動画にリモート出演していてびっくりしました。インディ500より、デイトナ500が好きだと言っていて、NASCAR好きなんですかね。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 何年前だか忘れましたけどホームステッドにハミルトンが来てたこともあったと思うので、案外F1ドライバーでストックカーを気に入ってる人は多い印象がありますね。グロージャンも興味を持ってましたし。
スーパーカーシリーズが大人気のオーストラリアの出身ですから、ひょっとしたらその流れからストックカーに興味があるのかもしれません。
ChaseFun9 さんのコメント…
HMS強過ぎでしたね!やっぱ自分が応援してるチームだと嬉しい結果ですw
日日不穏日記 さんの投稿…
2015年、ジェフ・ゴードンラストイヤーですね。インディカードライバーのエリオ、ニューガーデン、マルコだったかな。たくさん来てました。ハミルトンはチャンピオン決めてたから、プライベートジェットで来たんでしょう。今はビーガンだから、手放したんでしょうが。ハミルトンがNASCARに興味を示した時に、ロガーノが歓迎のツイートしたのを覚えています。
SCfromLA さんの投稿…
>ChaseFun9さん

 なんかペンスキーやSHRが独占するよりヘンドリックの方が好感がもてますw