ダカールラリー2021終了!

 長いようで短い2週間、2021年のダカール ラリーもあっという間に幕を閉じました。先週は休息日までの話を書いたので、そこから先、後半戦の話を脱線しつつ私なりに振り返っていきたいと思います。

YouTubeの公式ハイライト動画を時々切り取りつつお届けします

 まず最初に、ステージ7でクラッシュしたゼッケン111番、ピエール シャルパン(GDR Cherpin/Husqvarna 450)が死亡したと発表がありました。ダカールは4度目の挑戦、南米の大会ではあまりに過酷な気象条件に屈して一度はダカールを離れたものの、サウジアラビアでの開催に再び意欲を持った2015年以来の参加でした。

 また、1月10日には、ダカールで3度優勝、以後は運営に携わって来たユベール オリオールが死去したことも明らかになりました。COVID-19に感染したとのことですが、元々心臓病を患っていたため、最終的にどちらが主因であるかはやや情報が錯そうしています。

 また、他にも複数の参加者が、深刻なものを含め負傷して病院の搬送されたとのこと。亡くなられたお二方のご冥福と、怪我をした選手たちの回復をお祈り申し上げます。


 バイクは、休息日段階で全く勝者が読めない展開でしたが、後半戦はまさに激動でした。後半戦最初のステージとなるステージ7でトップに立ったのは、ホゼ イグナシオ コルネホ フロリーモ(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)。続くステージ9でも最速を記録します。

 一方、トップで前半戦を折り返したトビー プライス(Red Bull KTM Factory Team/KTM 450 Factory)は、ステージ8を終えてコルネホまで約1分差の2位でしたが、ステージ9でまさかのクラッシュ、リタイアとなります。

 これでコルネホは2位に11分差でチームメイトのケビン ベナバイズ(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)を従える格好となります。ところがステージ10で暗転、3番手スタートだったため、前のライダーをきちんと追走していく予定がまさかのクラッシュ。ステージを走り切ったものの、脳震盪を起こしていたようで医師から続行を認められずリタイアとなります。

 これでベナバイズがステージ5以来の総合トップに返り咲くと、昨年の勝者・リッキー ブラベック(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)、KTMのサム サンダーランド(Red Bull KTM Factory Team/KTM 450 Factory)を抑えて最終的にブラベックに4分56秒差という僅差で初の優勝を手にしました。鼻の骨折、足も少し傷めたはずですが、厳しい2021年大会を制しました。

 ホンダは2連覇と1、2位を達成、ベナバイズはアルゼンチンの選手として初めてダカールを制しました。バイクで南米大陸の選手が優勝すること自体が初めてのことです。

 一方でホンダは、コルネホに続いてホアン バレーダ ボルト(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)もステージ11でリタイア。ステージ9でクラッシュをしたようで、その際のダメージなのかめまいを起こしながら走行した結果、給油地点を通過してガス欠。

 今年もステージ3勝を挙げ、通算で既にスペインの先輩・ジョルディ― アルカロンズと並ぶ歴代3位ですが、未だ優勝に手が届きません。ちなみにアルカロンズも優勝には手が届きませんでした。

 トップ選手の脱落も相次ぎ、ステージ4ではトップにも立ったサビエー ディ スルトレイ(HT Rally Raid Husqvarna Racing/Husqvarna FR 450 Rally)はステージ8でクラッシュ。

 ヤマハ勢も一人、また一人と姿を消し、最後に残ったアドリアン ファン ビフェレン(Monster Energy Yamaha Rally Team/Yamaha WR450F)も最終のステージ12でまさかのトラブル、ヤマハは全滅してしまいました。

 今年のステージはどこも本当に厳しい内容だった印象を受けました。アフリカ時代の大会を思い出しました。フィニッシュしたバイクは101台中63台でした。

 そしてそんな厳しい中、サポート無しに独力で挑むOriginal by MOTULクラス、前半戦はマウリツィオ ゲリーニ(Solarys Racing/Hasqvarna FR 450 Rally)がトップでしたが、ステージ8で転倒。ステージは走り切り、この時点でまだ4分半差の2位でしたが、ステージ後に病院に搬送されてリタイア。

 これでアルナス ゲラスニンカス(Zigmas Dakar Team/KTM KTM Rally Replica)がクラストップとなり、そのまま優勝しました。総合でも21位と大健闘です。


 クワッド部門は休息日をトップで終えたニコラス カビグリアッソ(Drag'on Rally Team/YAMAHA YFM700R)がステージ7終盤でまさかのクラッチ故障によりリタイア。これでマヌエル アンドゥハル(7240 Team/Yamaha 700)がトップとなり、そのまま優勝しました。4度目のダカールで初優勝です。
 彼のスポンサーには、アルゼンチンの有名なサッカー チーム・クラブ アトレティコ ボカ ジュニアーズがついています。クワッドは16台のうち11台が完走しました。



 一方、自動車では休息日をトップで迎えたステファン ペテランセル(X-Raid MINI JCW Team/MINI John Cooper Works Buggy)がナッサ― アル アティアー(Toyota Gazoo Racing/Toyota Hylux)との差を巧みに維持。自動車では8度目、バイクを含めると通算14度目のダカール優勝を手にしました。初優勝したのはちょうど30年前の1991年。アフリカ、南米、サウジアラビアの3つの時代で優勝しているのは彼だけです。

 昨年は元々夫婦で組んでの出場を予定しており、結局奥さんがメディカル チェックを通過できず急きょコ ドライバーを変更。なんかバタバタしていたし、夫婦で出るぐらいだからさすがに優勝を争う舞台からは身を引くつもりなのかな?と思っていたんですが、大間違いでした(;・∀・)
 ステージの難易度が高ければ高いほど、彼の正確な判断力が光って来るように思えます。ダカールの申し子という言葉がこれほど当てはまる人は他にいないでしょう。アルアティアーはこれから東京オリンピックに向けてクレー射撃の練習でしょうか?

 一方、WRCの申し子だったカルロス サインツ(X-Raid MINI JCW Team/MINI John Cooper Works Buggy)はポロポロとタイムを失って総合3位。
 同じく元WRC王者・セバスチャン ロウブ(Bahrain Raid Xtreme/Prodrive Hunter)は何度かトラブルやらぶつけたりやらでリタイア。道中、左リアのサスペンションを壊したのでサポートを待っていたら、「トラックになぜか右リアの部品が2個あって、左リアの部品が無い」という謎の不運にも見舞われ、砂漠で延々とトラックが戻ってくるのを待たされていました^^;
 ただ、チームメイトのナニ ロマ(Bahrain Raid Xtreme/Prodrive Hunter)は休息日から変わらず5位でラリーを終え、新車のハンターが既に高い競争力を備えていることを証明しました。
 新人ではルー ビンロン(BAIC ORV/BAIC BJ40)が最上位の13位。漢字表記が分からなかったのでカタカナで失礼します^^; BAIC(北京汽車)はチーム自体が初出場ですが、13~15位に参加した新人3人が仲良く並びました。

 そして市販車ことT2クラスは、参加した3台中、既にトヨタ車体の2台しかいませんでしたが、三浦 昴(Toyota Auto Body/Toyoya VDJ200)が優勝しました。かなり厳しいコース設定でしたが、この車の走破性能は大したものだなと毎年思います。総合では38位、自動車は64台でスタートして48台がゴールしました。
 なんかトヨタがスポンサーになって、共通のランドクルーザーで挑戦するカテゴリーみたいなものを作ってもいいなと勝手に思いました。

 タイム的には自動車クラスの中団の選手に匹敵するライト ウエイト ビークル部門。休息日を目前にトラブルで1時間以上失って陥落したフランシスコ ロペス コンタルド(South Racing CAN-AM/CAN-AM XRS)でしたが、後半いきなり3連続ベストを記録しあっさりと奪還。そのまま優勝しました。

 逆に、トップで後半戦を迎えたアローン ドムザラ(Monster Energy CAN-AM/CAN-AM XRS)は最初の2ステージでミスが続いて計50分近く失い、結局3位に終わりました。
 史上最年少でステージ勝利を挙げた超新星・セス キンテーロ(Red Bull Off Road Team USA/OT3 OT3-02)はステージ9でギアボックスが壊れて優勝争いから脱落。ただステージ11でもう1勝してうっぷんをいくらか晴らし、18位で初のダカールを終えました。
 ライトウエイトは61台中41台が完走、最下位は元WRCドライバーのクリス ミーク(PH-Sport/PH-Sport Zephyr)。ステージ9でハブを壊してサポート待ちとなり、仕方なくとても眺めの良い場所で時間を過ごしましたが、最終のステージ12で初のステージ勝利を記録しています。
 このクラス、去年はJ SPORTSだとほとんど放送されてなかったですが、スタート間隔が短いせいもあってかみんなで固まって攻めていてなかなか面白いですね。

 トラックはカマズが圧倒、ステージ1から一度もトップを譲らなかったドミトリー ソトニコフ(Kamaz-Master/Kamaz 43509)が初のダカール優勝。カマズは5連覇、過去20大会で17度目の優勝です。何回やっても何回やってもカマズ勢が倒せ~ないよ~
 カマズはたくさんいるドライバーから毎年4人を選抜していて出場枠は競争らしく、チーム内はかなりの厳しい戦いがありそうですね。。。

 排気量10L未満では菅原 照仁(Hino Team Sugawara/Hino 500)が優勝、結局3台いた10L未満の車で完走したのはこの1台でした。今年は1台体制で社員メカニックの派遣を中止、現場メカニックも僅かな人数と大幅に縮小していたそうで、そんな中で珍しく横転して車体がぐっしゃりへこんで簡単ではありませんでしたが、たまにパネルを一部落っことしながらも総合で12位と見事でした。トラックは44台中20台が完走しました。

 そして、楽しく走ろうダカール クラシックは、マーク ドゥートン(Team Sunhill/Buggy Sunhill 1979)が記念すべき初代勝者に。
映像を見てもいつも元気そうに走ってました。2位はホアン ドナシュー(Doria Racing/Mitsubishi Montero V6)でした。
往年の三菱石油カラーな一方で、リアに『緑の星』と書いてあるのがちょっと気になるところ。
 これは、リアの部分の『GS-OUTDOOR.com』を見ると合点がいきます。このチームのスポンサーですが、GS=Green Starという意味なようで、当時のカラーリングの雰囲気に近づけるため、おそらく自動翻訳か何かで日本語にしてくれたんだと思います。
 この車、2005年大会でジュリア ガルシア/ベアトリス ガルシアの姉妹が使用した車。ガルシア姉妹はこの大会でモーリタニアの砂漠でトラブルにより車が二輪駆動になったそうで苦戦。通りすがりのトラックからの牽引のお誘いを断り、なんとか独力での続行を望みましたが、砂嵐がひどく結局続行不能となり、ガルシア姉妹は車中で一夜を過ごしてリタイアしました。
 今回この車で出場したドナシューは、そんな姉妹の使ったものだということを車両を入手して直している過程で気付いたようなんですが、無事にゴールまで運んでこの車にダカールの完走を16年越しに届けました。
 なお、モンテーロというのはパジェロのスペイン語圏での車両名。パジェロがややアレな単語と音が似ているので別の名前があてられました。ガルシア姉妹はプライベーターでしたので、当時のカラーリングはもちろんこんなワークスの色ではありません。


 こうやって書いてると気になってちょこちょこと調べるので、ただJ SPORTの放送を見るだけでは分からないことも色々分かって楽しいですね。自己満足!来年もダカールが開催されることを祈ります。

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