ダカールラリー2021 前半戦終了

  毎年モータースポーツの幕開けを告げるのがダカール ラリー。この社会情勢でも今年も開催されています。2021年も昨年に続いてサウジアラビアでの開催で、バイク101台、クワッド16台、自動車64台、ライト ウエイト ビークル61台、トラック44台の計276台が参加。ここに、今年新設されたダカール クラシック部門の24台が加わり、計310台の参加となりました。

(参加台数はエントリー台数ではなく、実際にプロローグのステージを走行してラリーを開始した数で計算しています)

 今年はロード ブックが全てのステージでスタート前の配布となりました。近年は技術の著しい進歩により、上位チームでは事前に配布すると、スタッフがGoogle Earth的なやつを使って情報を集め、速い人ほど予習ができてしまって格差が広がる一方。自身で道を切り拓くというダカールの基本精神とも合わないので、全員が予習できないようにされました。

 また、バイクでは後輪の使用本数を最大6本に制限、ペナルティーなくエンジンのピストンを交換できるのは一度限りにするなど、スプリント化に歯止めをかけに行きました。

 そうした制限の代わりに安全面はより強化され、ライダーには一定以上の衝撃で作動するエアバッグ式スーツの着用義務ができた他、スロー ゾーンの導入で危険地域とされる箇所は速度制限90km/hが適用されます。

 また、地図上では元々危険度が3段階に分けられて示されており、すんごい溝があるとかジャンプするとかの場所は危険度2や3が示されていますが、この2つの危険個所では手元のGPSシステムから音が鳴って警告してくれることになりました。どうしてもうっかり注意を見落としてクラッシュするケースがあり、それもまた競技、それを回避してこその競技ではありましたが、安全面を優先した形です。

 昨年はパウロ ゴンサルベスがステージ中の事故で死去。ダカールでは毎年のように死亡事故は起きてしまいますが、大半は下位のプライベーターたち。上位を争うワークス級ライダーの死はやはり衝撃で、言い方は悪いですが、有名な人が亡くなって、運営も大きく動き必要性を感じたと思います。


 バイク部門はナビゲーションの難しさがやはりレース展開に大きく影響していると感じます。ステージ毎に順位の変動が非常に激しく、十分単位の抜いた抜かれたが日常のような感じ。そんな中、ステージ5でケビン ベナバイズ(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)がステージ最速を出して総合トップに立ちますが、なんとステージ中に転倒して鼻を骨折。


顔をハンドル部分のGPSにぶつけて画面のガラスを破壊して鼻を折ったようですが、ラリーを続行。そしてステージ6ではトビー プライス(Red Bull KTM Factory Team/KTM 450 Factory)がこれを逆転し、プライスがトップで休養日を迎えました。プライスは2019年に、途中で手首を骨折しながらもなんと続行して優勝を手にしており、ベナバイズの続行は驚きではないでしょう。


 しかしながら、総合7位のホアン バレーダ ボルト(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)まで6分25秒差、総合13位・昨年の勝者であるリッキー ブラベック(Monster Energy Honda Team 2021/Honda CRF 450 Rally)まで20分差と全く展開が読めません。

 トップ10にホンダとKTMが各3台、ハスクバーナが2台、シェルコとヤマハが各1台とメーカーで見ても非常に接戦です。

 なお、支援を受けずにゴールを目指すダカールの原点と言える部門・Original by MOTULの部門では、マウリツィオ ゲリーニ(Solarys Racing/Hasqvarna FR 450 Rally)がトップ、総合でも29位と健闘。78台が休養日に辿り着きました。


 クワッドはニコラス カビグリアッソ(Drag'on Rally Team/YAMAHA YFM700R)がステージ4でトップに立ちそのまま差を拡大、2位に33分の差をつけています。クワッドは二輪駆動で750ccのG3.1と、四輪駆動で900ccのG3.2の2つの部門がありますが、大半が二輪駆動です。ハマったり転倒したりが少ないので、クワッドは14台が休息日に辿り着きました。

 自動車では大ベテランのステファン ペテランセル(X-Raid MINI JCW Team/MINI John Cooper Works Buggy)とナッサ― アル アティアー(Toyota Gazoo Racing/Toyota Hylux)のハゲしい争いが展開され、ペテランセルがステージ2でトップに立つとそのまま維持。最速タイムは一度もなくとも、プロローグ以外全て4位以内のタイムを記録し5分53秒差のトップで休息日を迎えました。


 ダカールラリーは上位勢は3分間隔のスタートで前日のステージ順位の順番でスタート。従って、前の日に速いと次の日は前に人がいないため道を間違えやすくなります。追う側はそれに追いつけば3分差を詰めたことになり、仮に迷っても一緒に走れば相手より3分詰めてゴールできるため、このあたりからは相手との位置関係も大事。そのあたりの経験でペテランセルの右に出る者はおらず、彼との5分差は近くて遠い数字です。


理想的なのは、どこかで相手がステージ最速、自分はそれよりちょっと遅いけど間に3~4人入ってステージ5位ぐらい→次の日相手にステージ上で追いつく、の展開。これだと一気に10分以上詰め寄ることができます。四輪駆動でNAエンジンを積むハイラックスと、二輪駆動でディーゼル エンジンのミニJCWバギー、車両規則では色々と真逆な2台のハゲしい戦いが続きます。
 このクラスは他にもいろいろな車種が参加しており、元WRCチャンピオンのセバスチャン ロウブ(Bahrain Raid Xtreme/Prodrive Hunter)はBRXハンターという車両で2年ぶり5度目の参加。この車両はWRCなどでもおなじみのプロドライブが手掛けた新車で今年デビューの新車。エンジンはフォードの3.5L V型6気筒ターボだそうです。ただ、ロウブはトラブルに見舞われ44位。
ただチームメイトのナニ ロマ(Bahrain Raid Xtreme/Prodrive Hunter)は総合5位で、新車ながら素晴らしい走りを見せています。
 こうした改造車両はT1と言われるカテゴリーで、さらにここから駆動方式と燃料の種類で4つに細分化されていますが、いわゆる市販車クラスと言われるのがT2クラス。トヨタ車体がランドクルーザーで参戦しており、市販車部門〇連覇!と毎年謳っていますが、年々このクラスは参加者が減っているように思います。今年はとうとうトヨタ車体以外は1台だけになりました^^;
 しかももう1台はFIAのホモロゲーションが失効した特認車両のようなT2.Cカテゴリーの型落ちランドクルーザーのため、ほぼ走り切ればクラス1、2位ですが、三浦 昴(Toyota Auto Body/Toyoya VDJ200)が総合39位につけています。自動車は全部で53台が生き残っています。

 ライトウエイトビークルはフランシスコ ロペス コンタルド(South Racing CAN-AM/CAN-AM XRS)がトップでしたが、休養日を目前にステージ6でトラブル。1時間以上失ってしまいました。
これでアロン ドムザラ(Monster Energy CAN-AM/CAN-AM XRS)がトップに立ちますが、オースティン ジョーンズ(Monster Energy CAN-AM/CAN-AM XRS)は僅か40秒差で2位。
セス キンテーロ(Red Bull Off Road Team USA/OT3 OT3-02)が3位に続きます。キンテーロは18歳と180日で史上最年少ステージ勝利を記録、昨年は年齢制限に引っかかって出ることができなかったとか。コンタルドも36分差の4位ですがまだ可能性は残されています。

 このクラスはSSVと呼ばれるものを含めて色々な車両がいて詳しく知るのは大変そうですが、元DTMチャンピオンのマティアス エクストロームや、元F1ドライバーのトーマス エンゲ、元WRCドライバーのクリス ミークなども参加してラリーを継続中、合計49台が休養日に辿り着きました。
 上位を争うのはカンナムとOT3ですが、OT3を作っているのはオーバードライブ社。オーバードライブはトヨタのハイラックスも作っていますが、調べると他にも同じ自動車部門でBAIC(北京汽車)のBJ40という車両も手掛けているようです。

 トラック部門は相変わらずカマズが圧倒。ドミトリー ソトニコフ(Kamaz-Master/Kamaz 43509)が4度のステージ勝利でステージ1以降トップを堅持し初優勝へ視界良好。2位にアントン シバロフ(Kamaz-Master/Kamaz 43509)、3位がアイラット マルデフ(Kamaz-Master/Kamaz 43509)とカマズがトップ3独占です。

 クワッドで3度優勝したイグナシオ カサレがトラックで初参加し8位と健闘しています。例年カマズとともにこのクラスの象徴であったIVECO Team De Rooyが今年は不参加のためちょっと寂しいですね。
 そしてこちらは排気量10L以下の部門に日野が今年も参加。今年は1台だけのエントリーですが、菅原 照仁(Hino Team Sugawara/Hino 500)が総合14位、排気量10L以下では1位です。とはいえ、今年の10L以下も3台だけ、そのうち1台は市販車クラスと呼ばれるT5.1クラスなので、相手は1台だけです^^;
 照仁選手、今年は珍しく横転してしまって荷台がぐちゃっと潰れてしまい、見た目かなりすごい状態でラリーを継続しています。幸い走りには特に影響がないそうなんですが、荷台の応急処置したカバーがまた脱落したり大変そうで、休息日はメカニックが大変になりそうです。トラックは24台が生き残っています。

 そしてクラシックですが、こちらは1999年以前の車両を使ったレースで、ラリー本編とはSSは別の場所を走り、競技も速さを競うのではなく、区間ごとに定められた時間といかに差がなく走るか、という平均速度で争います。往年の名車、ロスマンズカラーのポルシェ911ものーーーーんびりと砂漠を走りますw

 後半戦も大事故なく、ハゲしい争いを期待したいですね。

 ダカールラリーのデイリー ハイライトはJ SPORTSで放送されていますが、連日公式YouTubeチャンネルに上がっています。英語版ならなんとか見れると思うので、興味のある方はこちらもどうぞ。
 今年のJ SPORTSは、現地に取材に行けないせいもあってスポンサー関係コーナーが少なくて国際映像が多いので、プライベーターの様子も多く見られて個人的にはいい感じです^^

コメント