いい加減にしよう、大統領選デマ(1)

 2020年最後(のつもり)の投稿はちょっと真面目な話を。11月3日、アメリカで大統領選挙が行われ、ジョー バイデンが第46代のアメリカ大統領に選出されることが現段階で手続き上確定しています。しかしながら、現職のドナルド トランプは「選挙に不正があった」と主張して結果を受け入れず、法廷闘争を行っています。

 しかし、トランプ陣営の主張や訴訟に今のところ具体的根拠のあるものが存在せず、訴訟はほぼ全敗。それでもネット上を中心に「不正の根拠」と主張するものが連日のように出回っています。そして奇妙なことに、アメリカの選挙であるにもかかわらず、日本でも選挙に関するデマが広がり、なおもその流れが続いています。

 どちらの候補者を支持するかは個人の自由ですが、根拠の無い情報で人を貶めるような行為が許されてはなりません。あくまで日本のごく一部で起こっている問題ではありますが、同様の問題が我々の身近なところで起こっても不思議ではなく、そしてそれは非常に恐ろしいことです。

 1995年、日本ではオウム真理教による無差別テロ事件、いわゆる地下鉄サリン事件が発生しましたが、デマを信奉して他人の言うことを信用しない思想は、オウムが事件へと向かっていった思想と似た部分があり、他人事だと思って知らん顔をしていると、気づいた時には取り返しのつかない結果を生む可能性があると感じます。

 デマ発信者の中には、嘘を広めたいと思っている悪質な人、本当に何も考えないで鵜呑みにして信じ込んで広めている人、デマによって何らかの利益を得るので嘘と知っててやってる人、本気にはしてないけど単に面白いからやってる人、など色々いるでしょう。しかし、本人がふざけているつもりでも鵜呑みにする人がいるのが問題であり、広げた時点で加害者です。

 全くデマと接点の無い方はさすがにどうしようもないですが、SNS等を利用していて、フォローしている人や知人がそうしたデマを広げている、いいねを押している、あるいは対面でそういう話をしてくる、なんて経験がある方がもしいらっしゃれば、見てみぬふりではなく、知り合いだからこそ、間違っているものは間違っていると、きちんと指摘していくことが重要だと思うので、啓発の意味を込めて記事にしたいと思います。

 自分の親しい人が、ある日突然、全く意味の分からない主張の人間の荒唐無稽な思想による無差別な殺人の犠牲になったらどう思うか。決して他人事ではないと思います。

※2021 1/7追記
 正式にバイデンが大統領に選任されましたが、その過程でトランプ支持者が連邦議会に乱入して一時議会を停止する騒ぎとなった上に、混乱で4名が死亡する事態となりました。
 死亡の経緯は現時点で不明ですが、どういった経緯であれ、発端は根拠のない情報を広め、支持者を扇動したトランプやデマを拡散した人々に他なりません。恐ろしい事態に直面しているということを、当事者意識を持って一人一人が考えるべきだと思います。
 



 とりあえずどのようなデマがあるかをざっと書いていこうと思います。私個人でイチから書くと限度がありますが、かなりの量の情報をまとめて書いている方のブログがあるので、詳細な内容は都度そちらやそこからさらに先に貼られた検証記事をたどっていただければと思います。

https://datsuaikokukarutonosusume.blog.jp/archives/1078177172.html#midashi29


・投票率が100%を超えている

 いくつかありました。最初はウィスコンシン州で登録有権者数約313万人に対し、投票数が約323万票で上回っている、とするものでした。しかし実際は選挙前の数字と比較したことによるデマ。ウィスコンシン州では選挙当日にも有権者登録ができ、結局は約360万人の登録者のうち約330万人が投票していました

 2つ目は開票率が1%上昇した際に、計算上1%ぶん以上の票が加算されていて100%を超えている、というものですが、データの入力ミスや郵便投票を一度に反映したことが要因で関係ありません。そもそも、一般向けに公表された開票率がそこまで正確に刻まれているわけでもありません。

 3つ目は、サイバーセキュリティー分析家のラッセル ラムズランドという人が作成した宣誓供述書に示されたもので、多くの地区で投票率が100%を超えているとしていました。しかし、ミシガン州について書いているのにミネソタ州の地名が書かれていたり、明らかに小数点の位置が1つズレているなど数字の根拠も不明という明らかにおかしものでした。

 
・バイデンの票が急に増えた

 郵便投票の開票ぶんを一度にまとめてデータに反映させたことと、ミシガン州では単純に公表データの数字を打ち間違えたせいでした。ミシガン州のミスは、公式Twitterアカウントを見ると、急に増えた票がそのあと減っていることで訂正されたことが確認できます。


・不正疑惑のため州兵が導入された

 ウィスコンシン州では開票作業が大変なので州兵にお手伝いしていただいた箇所がありましたが、日本ではこれを曲解して「不正により州兵が投入」というでたらめな情報として拡散されました。どうも日本オリジナルデマの可能性があります。


・死者や1900年1月1日生まれの人が大量に投票した

 同姓同名の別人や親子のケースが大半でした。中には期日前投票後選挙日までに死亡した方も実際にいましたが稀なケース、州によっては規定で無効となるケースもあります。死者の投票がゼロとは断言できませんが、このケースは常に発生する可能性があり、誰に投票したかも関係なく起こります。

 また、誕生日の件は、データ上仮に置いたデフォルト設定の数字が1900年1月1日や1850年1月1日なだけで、その日に生まれた故人の票ではありません。中にはデータの入力ミスで変な生年月日だったり、誤って投票用紙が交付された例もありますが実際の票にはつながっていないとされています。

 トランプ自身も加担している情報ですが、いずれも根拠の無い情報です。データの不具合とかはこの後もちょこちょこと出てきますが、もうちょっとしっかりしてほしいなとは思いますけどね^^;


・トランプの票が山に運ばれて埋められた、捨てられた、燃やされた

 いずれも別の関係ない画像を用いたり、偽の投票用紙を燃やしたデマ動画でした。中には実際に捨てられた投票用紙もありましたが、記入前の白紙の用紙でした。白紙でも捨てるようなことが起こらないようにきちんと管理してもらいたいですが。。。


・トランプ支持者にサインペンを使わせて投票を無効にさせた

 共和党が地盤の地域で、機械で読み取れないサインペンをわざと使わせてトランプ票を減らそうとした、という主張ですが、サインペンでも集計可能でデマでした。


・郵便投票で機械的に製造されたバイデン票が見つかった

 選挙の投票日前ですが、メディアで論説を担当している人物が「ニューヨークの住民が、事前にバイデンのところに印がされた投票用紙が届いたと言っている」と発信。

 しかしニューヨークの選挙当局が投稿に映ったIDを調べると、カリフォルニア州の人物が郵便投票を行うつもりが、返信用封筒ではなく誤って自分に届けられた封筒に入れて投函したことが原因と判明しました。

 ただ、それなら本来送り主の手元にまた送られてきて終わりなので、なぜ別人の手元にあるのかは続報を調べたものの分かりませんでした。それはそれでもうちょっと調べてもらいたいなとは思います。。。


・不正を防ぐために投票用紙にはGPSや透かしがある

 GPSを薄い紙に埋め込むことなんてできません。また、ブロックチェーンを利用したコードが埋め込まれているというのもありましたが同じくデマ。

 透かしに関しては、投票用紙は州単位で権限があり仕様はバラバラです。偽造防止のための透かしを入れた投票用紙がある州は存在しますが、全米単位では存在しません。

 『不正があることを先読みして国土安全保障省と連携して透かしを入れた』などとする情報が出ましたが、州に権限のある用紙に勝手に政権が介入してしまったらトランプの選挙不正になります。


・ミシガン州アントリム郡で共和党6,000票が民主党にカウントされていた

 実際は速報データにだけ現れたミスでした。簡単に言うと、1か所の開票所で、2つ1セットで使う集計機と速報データ提供機のうち、データ提供機のソフトのアップデートをうっかり忘れたためにデータに不整合が出ておかしな結果を出力しただけで、正式な開票には元々影響がありませんでした。使う道具の確認はしっかりしてもらいたいですね。


・CNNやRCPがアリゾナ州などのバイデン当確を取り下げた

 単にメディアによって当選確実の基準が違い、元々当確が出ていないだけでした。

 また、CNNが『バイデン次期大統領』ではなく当確を取り消して『バイデン元副大統領』と書いていた、というのもありましたが、元々文脈によって『元副大統領』『次期大統領』『候補』をそれぞれ使っているだけで取り消しなどしていません。


・CNNがトランプ再選の可能性を報道

 選挙前の9月の段階で「トランプが負けた場合どんなシナリオがあるか」というのを解説した番組に、さも新しいニュース番組であるかのように見せかけて釣りの題名を付けた完全なデマでした。

 この手の人たちは『CNNは反トランプのフェイクばかり』などと批判するわりに、なぜかこういうデマに乗っかって『CNNですら報じたのだからトランプの勝ちは決まり』などと妄想します。今までの論法から言えば『CNNが再選と報じたのだからデマだ。トランプは落選だ』とすべきなのに、いかに『自分にとって都合の良いものだけ見ているか』が分かります。


・不正が確認されて、ジョージア州で再集計が決定した

 単に規定で僅差だと再集計が自動的に行われることになっているだけで、不正が確認されたからではありません。


・ネバダ州で引っ越した人が投票している

 州の規定で州外に引っ越しても30日以内ならネバダ州での投票を選択することも可能なだけで合法でした。軍の海外派遣などでアメリカを離れた人でも同様です。


・中国のSF Expressで投票用紙が運ばれた

 さも中国から偽の投票用紙が届いたかのような言い方ですが、中国にいるアメリカ人が海外から郵便投票を行って中国の会社からの輸送で届いただけで普通の出来事でした。


・ネバダ州で不正集計が発覚し、15万票が無効になった

 大統領選挙ではなく同時に行われた地方選挙の話であり、しかも無効でもなければ不正ではなくあまりに僅差だったため再集計しただけで、デマだらけです。 


・ワシントンのトランプ応援デモに100万人集まったが報道されていない

 マスコミが伝えているデモの人数はおかしい、実際はこんなに人が集まっている、という主張ですが、NBAトロント ラプターズの優勝パレードなど別の画像でした。

 ちなみにこの手の話では以前から日本で「主催者発表の参加者は警察発表より遥かに多くて水増し」といったものがありますが、これ自体誤りです。警察はデモの参加人数を発表していません。

 デモ参加人数、というのはその日に訪れた全員の数、初詣に例えるならお参りした人全員の数です。

 一方、メディア等が報じる「警察関係者への取材」という数字は、そもそも警察が公式に発表していないので曖昧な数字ですが、1つ挙げられるのは、『警備範囲とする空間内にいる総人数』と考えられます。初詣で言えば、ある時間に参道にいる人たちです。

 例えば、参道にびっしり並んで1000人だとしたら警察取材情報では1000人、しかしその集団の人が10サイクル入れ替わっていれば、参拝者の延べは1万人です。主催者も当然てきとーに盛るでしょうが、基準が違うので警察発表(とされている非公式な数字)と比較してどうのという話じたいが誤りです。


・ドミニオン社の集計機によるバイデン票の水増しやトランプ票の削除があった

 全米で多くの採用実績があるDominion Voting Systemsという企業が不正に加担したという主張は数多く登場。アントリム群での一件がドミニオンの機械だったせいもあってか、延々と続くことになります。 

『ドミニオンは全国で270万のトランプ投票を削除。221,000のペンシルベニア州の投票がトランプからバイデンに切り替えられ、 941,000票のトランプ票が削除され、435,000票をトランプからバイデンに切り替えた』や
『バイデン票は1.25倍、トランプ票は0.75倍にするようにプログラムされている』といった荒唐無稽な話が飛びだし、トランプ自身も同調していました。

 しかし根拠は全く示されず、それどころか州の一部でドミニオンが使用されたペンシルベニア州では当該地域だけ見ればトランプ票の方が多く、全域でドミニオンを使用しているジョージア州では手集計しても結果はほとんど変わりませんでした。

 再集計の過程で未集計の票が見つかるという雑なことが起こっているのでこれまたちゃんとしてほしいですが、不正の証拠はない一方で、不正が無いと思われる根拠はこうして存在し、これに関連した訴訟も敗訴しています。

・ドミニオンの機械がエラー率68%と証明された

 件のミシガン州アントリム群では手集計も行い、トランプの票が11票だけ増えてバイデンが1票減りましたが結果に大差なし。ところがこの調査に関して「68%のエラー率があったことを裁判所が認めた」「通常のエラー率の数万倍」などとする情報が拡散。

 この数字は調査した人物が機械の調査をした上で出してきたと主張する数字。ところが68%の根拠が不明で、何のエラーを何を分母にして計算したのかが全く分からず、一般に出されているエラー率とそもそも比較できるわけがありません。調べたのは上にも登場した、ミシガンの話にミネソタの地名を持って来たラムズランドです。 
 例えるなら、駅の自動改札機で接触不良、他の会社のカードをかざした、切符が折れている、などの理由で発生した読み取りエラーを全部集計し「68%のエラー率だ。我々のICカードから不正に金銭をだまし取っている証拠だ」と言っているようなものです。


・米軍がドイツにあったドミニオン社のサーバーを強襲して奪取・銃撃戦になった

 もはや話が荒唐無稽すぎて当然ながら客観的に検証不能。しかし日本に置き換えて考えたら、堺市にある日本企業の建物にいきなりアメリカ軍が突入するとかあり得ないことはすぐ分かります。

 サーバーのデータを解析したらトランプが選挙人410人を獲得して大勝、というものも出回りましたが、そんな重要情報をなぜよくわからんメディアが手にできるのかを考えればおかしいのは明らか。

 さらに話が広がって、この際にアメリカ軍とCIAが銃撃戦になって死者まででたそうなですが、自衛隊と警察がドイツで銃撃戦することがあるかと考えたらあり得ない作り話だと分かります。

 デマとして考えればよく考えられているとは思います。まず他国のことなのですぐ検証しにくい、ドイツはドイツ語圏だからアメリカ人は情報を集めにくい。軍隊の作戦だからメディアが軍に聞いて「そんな事実ありません」と答えても「秘密の作戦だから言えない」とかてきとーに反論可。

 ドミニオンはそもそもフランクフルトにサーバーを持っていないとしていますが、「自分からやりましたという犯人はいない」とまたてきとーに反論できます。

 銃撃戦の話はあとから出てきたうえに、フランクフルトで銃撃戦やって誰も知らないなどあり得ないだろうと言えば、また後から「施設の内部で行われたらしい」とかてきとーに反論していきます。外部から検証できないようにしたら創作が進んでいる、と考えるのが妥当です。


・バイデン派が一般調達局(GSA)の長官の家族の死体袋を並べて脅迫した

 GSAの前に死体袋を並べる抗議行動が行われたのは事実ですが、これはBody Bag Protestsという抗議活動で、行政の不作為で亡くなったと思われる人について「こういう人たちがいることを認識しろ」「対応しろ」という抗議です。

 趣味が良いかどうかは置いておいて、元々海外で行われていたもので、この場合「政権移行を進めないせいでCOVID-19で亡くなる人がどんどん増えている、ちゃんと対応しろ」という意味です。死体袋は空袋、貼ってある名前はCOVID-19で亡くなった方の名前で脅迫ではありません。

 GSA長官が「脅迫を受けた」と言っているのは事実かもしれませんしそれは許されることではありませんが、死体袋とは関係ありません。


・ペンシルベニア州は州議会が選挙人を選ぶことに決定した。

 共和党の議員がそういう議案を出した、というだけで採決すらされずに議会は閉会されています。また、この手の話でよく「公聴会」という単語が出てきますが、その中には共和党の自分たちの集会がかなり含まれており、”公”聴会でないものが多数あります。

 身内で根拠の無い情報で盛り上がった集会を「公聴会でこれだけの不正が取り上げられた」という言い方をしていることがありますがデマです。


・ジョージア州で不正が監視カメラに捉えられていた

 12月に入って現れた話。フルトン群の開票作業が行われているステイト ファーム アリーナ(NBA アトランタ ホークスの本拠地)で、夜に立会人やスタッフが施設の水漏れを理由に帰らされたのに、4人だけ居残ってその間にスーツケースから不正な票が取り出されてバイデン票が水増しされた、何度も同じ票をスキャンしている、などと主張する動画でした。

 しかし当局側は映像の全体を見た上で通常の開票作業と説明。スーツケースとされているものはただの一般的な保管用ケース、スタッフは帰らされたのではなく自主的に帰っただけで、水漏れはこの日の朝に起きた出来事でスタッフの帰宅とは無関係でした。

 そして、不正を主張したジャッキー ピックという弁護士は、この間に最大で18000票がカウントされて、選挙結果を覆した可能性があるとしましたが、このスタッフが減った時間を含む約4時間で、総開票数は約9700票増えたにすぎないと検証されています。
(ミシガン州と違ってリアルタイムの開票速報はある程度探しても出て来なかったため個人での検証は私には不可でした)

 そもそも、ジョージア州は手作業で再集計が行われており、結果はほとんど変わらなかったので、ここでバイデン票の不正集計があったのなら数字の辻褄が合いません。
 おそらくそうすると「この時に不正な票を混ぜたしまったんだから、再集計しても不正票が入っていて意味がない」というでしょうが、そうすると何度もスキャンした話と辻褄が合いません。

 
・バイデンが8000万票も取るなんておかしい

 それを言えばトランプも今回は前回以上に票が入っているし、前回のトランプの票もおかしいと思えばおかしいことになります。幼稚です。


・ミシガン州がバイデン勝利の認定を拒否した

 そういう主張をした人がいただけでちゃんと認定されています。


・ミシガン州で共和党の選挙人投票が妨害された

 選挙人による投票は大統領選挙で勝った側の選挙人だけが投票する仕組みなので、ミシガン州で敗北した共和党の選挙人に投票する権利など無く、部外者なので入れなくて当たり前でした。


・複数の州で二重に選挙人投票が行われた

 ペンシルべニア、ジョージアなどのバイデンが勝った州で、共和党側もトランプに票を入れた、とする内容。当然そんなはずはなく、自分たちで勝手に集まって勝手に投票するパフォーマンスを行っただけでした。

 リチャード ニクソンとジョン F ケネディーが争った1960年の大統領選挙のハワイ州では実際に選挙人による投票が二重に行われ、当初選挙人が確定したニクソンから後にケネディーへと結果が変わりました。しかしこの際は、当初ニクソンが141票リードしていたものの選挙人投票の時点でまだ再集計の途中。

 そのため、いわば念のためケネディーの投票も行われ、実際に再集計ではケネディーが勝利をしたため州知事が”2番目の選挙結果”にもサインし、2つの選挙結果両方が連邦議会へ送付。ニクソン自身が敗北を認めて、民主党側の投票を有効とするようにしたために”2番目”が有効となったので、今回とはケースが異なります。

 今回は州が完全に選挙結果を確定させており、民主党の投票しか認めていないため、この投票には何の効力もありません。

 ちなみに私がたまたま見た投稿には『民主党がバイデン、共和党がトランプに投票したので、両方の候補者が過半数を超えた。これで議会による投票になるのでトランプが有利』というものすごいものがありました。両方が過半数を超える、もはや数学の基本的概念すら通用しないようですw


・バー司法長官の『選挙不正はなかった』はフェイクニュースだと司法省が発表

 司法省が言ったのは「不正が無かったと結論が出た」と、調査が完全に終わったかのような主張に対するもので、司法長官の発言自体は否定していません。


・副大統領は選挙人投票結果を拒否することができる

 そんな権限副大統領にはありません。さすがにそれではおかしいと思ったのか『普通は無いが、選挙で不正があった場合にはできる』というような内容もありますがもちろんそんなはずはなく、そもそも認められた不正が無いので意味が通っていません。不正かどうかを副大統領が勝手に決めていたら選挙の意味も民主主義も成立しません。


・ナバロ報告書によって不正が認定された

 トランプ政権が設立した通商製造政策局のトップで大統領補佐官でもある、ピーター ナバーロが12月に36ページに及ぶ報告書を作成。選挙不正について書き連ねられていました。これを「国が正式に不正選挙を認める報告書を公表」とした人がいますが、ナバーロの個人的な報告書で国としての正式なものではありません。

 しかもその内容は、既にデマと指摘されたり、裁判所に棄却されているもので占められ、投票率が100%を超えている、という主張の根拠として、地名を間違えているラムズランドの宣誓供述書をソースとするなど滅茶苦茶な内容で、これまでのデマをまとめたような内容でした。


・CNNが「スムーズな政権移行のためにテロが必要」と発言

 ただの曲解で、実際は「政権移行の空白が9.11テロを招いたということを思い起こしてもらおう」という趣旨でした。


・ハリスは不正を知っているから議員を辞職しない

 副大統領候補となっているカマラ ハリスはバイデンの大統領就任に伴って副大統領となるため現在の職である上院議員を辞職する必要がありますが、現時点ではまだです。これをもって「不正がないならどうして辞職しないのか」といった嘲笑や不正の根拠だとするものがありますが印象操作です。

 現在の副大統領であるマイク ペンスがインディアナ州知事を辞めたのは2017年1月9日。

 バイデンが前回バラク オバマの副大統領として就任するために議員を辞職したのは2009年1月15日。

 時代が古いですが、ジョージ H W ブッシュ政権の副大統領となったダン クエイルが上院議員を辞職したのは1989年1月3日です。この論理だとトランプもブッシュも不正していたので副大統領候補は辞任しなかったことになります。調べれば分かるデマです。


・オバマが逮捕された

 選挙に不正がある前提で、その黒幕扱いされる前大統領・バラク オバマ。逮捕されたという情報が出回りました。捜査に関する情報がえらく詳細に書いてあるので信ぴょう性が高いなどと主張されましたが、それもそのはず、8月に実際にあった、CIAの元職員が逮捕されたという司法省の公式発表の人物名をオバマに取り換えただけでした。


・元大統領は逮捕されない特権がある

 もちろんそんなものありません。オバマ逮捕はデマだと指摘するために別のデマを盛るという意味不明なパターンでした。


・トランプ陣営がアダルトショップの隣で会見

 選挙不正を訴えるトランプ陣営の集会が、なぜか造園業者の前で行われた際に同時に出た話。いかにもトランプ陣営がアホであるかのように言われましたが、アダルト店は数軒離れており、印象操作系のデマでした。

 
・コロナワクチンによって世界支配を企んでいる

 これは選挙前からの陰謀論。ビル ゲイツがCOVID-19のワクチン開発に多額の資金を投じたことに関し「ワクチンと一緒にDNAチップを埋め込まれる」と意味不明な話が発生。

 さすがに鵜呑みにしている人は少ないでしょうが、依然として「COVID-19はでっちあげ」とうの主張は根強く残ります。ところが不思議なことにこうした人にはトランプ支持者が多く、そのトランプは多額の予算をかけてワクチン開発を促進・完成した成果を誇っています。

 本来はコロナでっちあげ派から批判するべきはずですがそうはなりません。こうした矛盾はしばしば起こりますが、だいたい無視or超絶謎理論で相手にされません。おそろしい話です。


・ワクチンを接種された人が失神してその後死亡した

 ワクチン接種を受けた看護師の女性がテレビカメラの前で突如倒れたもので、ワクチンに懐疑的な人を中心に、ワクチンが危険だとする根拠として拡散。しかし接種された看護師の女性は、元々失神しやすい体質で、死亡などしていませんでした。



 選挙と関連しそうな話題を少し広めに拾いましたが、これ以外にもどんどんデマが新造されていますし、私が知らないものもあるでしょう。しかしながら、トランプ陣営の主張には1か月半が経過してもなお具体的なものが無いどころか、否定されているものが多く、また支持者が広めたものにも明らかなデマが多数あったことが分かります。

 次の項で、これらからぜひ学びたい、肝に銘じたい事柄を考えていこうと思います。

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