NASCAR プレイオフ 第7戦 フェニックス・事前情報

NASCAR Cup Series
Freeway Insurance 500
Phoenix Raceway(Avondale,Arizona)
1mile×312Laps(60/125/127)=312miles
Goodyear Racing Eagle Tire Code
Left:D-5254 , Right:D-5256
Total Sets:11(8 new race/1 qualifying transfer to race/2 practice)


 NASCAR カップ シリーズ、シーズンも終わりが見えてきました。モービル ワン提供・ザ チェイス 第7戦はフェニックス レースウェイ、3月の第4戦以来今年2回目の開催となる1マイルのちょっと変則的なオーバルです。フェニックスは1988年からカップシリーズが開催されて2005年以降は年間2回開催、2020年から昨年までの6年間は最終戦の開催地でその前の15年間は最終戦の1つ前でした。今年はシーズン全体で見て第33戦になりますが、これはフェニックスとしては初めてです。
 フェニックスは2018年に元々あったグランドスタンドを解体して新たな観客席を新設するなど総工費1億7800万ドルとされる大改修工事を行い、この重要部分の工事は同年春と秋のレースの間に終わらせました。この観客席移設に際してスタート/フィニッシュ ラインも移設されたので、それまでフロントストレッチだった部分が秋のレースになったらいきなりバックストレッチになっていて当時の私はちょっと困惑したものです(笑)
 ちょうどこの2018年はトラックの命名権契約が行われてトラック名が『ISM レースウェイ』になったのに、翌2019年にトラックの所有権をNASCARがインターナショナル スピードウェイ コーポレーションから買収すると、10年契約だったはずの命名権契約は破棄されて現名称へ。そして2020年から最終戦開催地になりました。ISCもNASCARと同じフランス家所有の関連企業みたいなものなので買収はグループ内での組織再編に近く、NASCARとして費用をかけて近代化して最終戦開催によってリターンを得る、という長期戦略だったと思われます。

 しかし『プレイオフを勝ち残った4選手のうち最終戦で最上位だった人がチャンピオン』という制度設計に加えて、2024年はシーズンで大したことなかったジョーイ ロガーノがチャンピオンを獲ったことから『長いシーズンの結果が最後の1戦だけで決まり、しかもフェニックスというちょっと特殊な開催地というのはどうなのか』という意見がだいぶ増えた模様。結果、今年の最終戦は2019年以前に定番となっていたホームステッドへの回帰が発表され、プレイオフ制度そのものも旧来の制度に近いものに回帰しました。
 
 そんなわけで普通の1戦に戻ったフェニックスですが、独特の形状と難しさにはもちろん変わりがありません。スタートフィニッシュを通過するとすぐにドッグレッグと呼ばれる緩い曲線がありますが、内側が広大な舗装路なので近道し放題。ただしバンク角のある部分との出入りには段差があるので不安定になりやすく、タイヤ内圧が低い特は小さい傷を付けて後々バーストを起こす原因を生んでいる可能性もあります。近道だったらずっとそこ走ればいいんじゃね?とか思いますが普通に単独で1周するならバンクのある部分を走るか、せいぜい頂点部分をちょっと削るぐらいで走った方が速いです。


 その先のターン1・2は最大バンク角9°と見た目にはかなり平たい印象で、ゆえにエイプロンまで降りてしまって道幅を広く使ってしまう独自のライン取りを使うこともあります。反対側のターン3・4は最大バンク角11°とやや高くなっていますが入り口がけっこう鋭角。そしてそのままフロントストレッチまでバンク角が続いていて曲がりながらスタートフィニッシュを通過してすぐにまたドッグレッグへと続きます。見慣れないとどこで1周したのかが分かりにくいです。
 スタートフィニッシュが曲がってる上にリスタート直後は特に内側の選手がドッグレッグ目指してすぐ左へ行こうとするので、リスタート時に『スタートフィニッシュを通過するまでは走路を変更してはならない』という規則をうっかり破ることがあるのは要注意。また段差を降りるタイミングでたまたま前後の車両と動きが重なったり、加速の鈍い人がいて押してしまったりすると多重事故に繋がるおそれがあります。8ワイドとかに広がってから収束するターン1は案外みんな上手いこと走るので、むしろスタートフィニッシュの近所が危ないです(笑)

 使用されるタイヤは昨年の秋、今年の春と使われてきているタイヤです。右のD-5256はマーティンズビル、リッチモンドなどでも使用されるものですが、左のD-5254はグッドイヤーによればフェニックスでしか使わない専用品。ステアリングを切りながらブレーキを踏むことが多いのでタイヤへの負担は大きく、ステージ1の60周を無交換、ステージ2以降を1回のタイヤ交換で走るのはけっこうな苦行、なんですがその前に誰かしらパンクしてコーションが出てしまうことが過去2回のレースでは繰り返されており、複数回タイヤを換えるのとどっちが速いのかがレース結果としては見えていません。
 今回は50分間の練習走行を使って各チームがそれなりにきっちりとセッティングを詰めてくるはずなので、それを踏まえてやっぱりパンク祭りなのか、それとも持久戦になるのかが注目。摩耗が激しいのでコーションが出たら15周程度使ったタイヤでも換える人が多いですが、その場合は2輪交換も視野に入ってきます。リスタート直後はそれなりにタイヤに依存するので2輪交換は抜かれまくる危険性がある一方で、ひとたび流れができて落ち着くと追いかける側はダウンフォースが抜けてけっこう抜きにくいので、有利不利が結果論でしか語れずなかなかセオリーが無いのもクルー チーフを悩ませます。

・ブレーキ規則変更

 そんな中で唯一ドライバーとクルーチーフの助けになりそうな規則変更が行われました。従来NASCARは最初に車検を受けた時点からブレーキのパッドは交換禁止、ローターも亀裂が入るなど明らかな破損が確認された場合のみ交換可能としていましたが、今回のレースに向けて規則を調整し予選後にフロントのローター/パッドは交換が許可されました。リアに関してはレース前にローターの確認が可能で、破損があれば個別対応になります。
 今季は1.5マイル未満のトラックで750馬力/低ダウンフォース仕様の車両になったこともありブレーキへの負担が増加、とりわけブレーキが厳しいゲートウェイのレースでは案の定ブレーキ爆発案件が相次いだほか、練習走行段階からブレーキが明らかにおかしいと感じていたデニー ハムリンは「どんなペナルティーでも受けるから換えさせてくれ」と直談判したものの「規則に無い、換えたきゃレース開始後ガレージへ行け」と突き返されたことを明かしていました。
 ただブレーキの破損は見ている側とすると自己責任で済まされるのはちょっと残念な事案で、特に推しの選手がこれでリタイアするのは納得がいかないところ。細かく飛び散った破片が観客席に入ったり危険な衝突事故を生むなどの重大事案も想定されるため、安全性という理由を持ち出すことでいらん炎上案件を避けた、といったところではないかと思います。さすがにこれでも壊れたら知らん、って感じですかね。

・ちょっとしたデータ

 春のレースではクリストファー ベルが176周をリードしましたが、レース終盤のコーションで4輪交換したことが仇になって2輪交換のライアン ブレイニーに持っていかれました。昨年の最終戦でもオーバータイムに向けてリーダーのハムリンが万全の4輪交換したものの2輪交換が多すぎて埋まってしまい、カイル ラーソンに先行されて手中に収めかけていたチャンピオンがこぼれ落ちています。普通に走って優勢な人によって終盤のコーションにはなにも良いことがありませんね。
 それはそれとしてブレイニーはGen7車両でのフェニックスで圧倒的、9戦でなんと2勝を含めて8回のトップ5フィニッシュ、残る1回はエンジンが壊れました。完走すれば5位以内確定!みたいな恐るべき強さです。一方でベルの方もこの期間に2勝しており、平均順位こそ10.9ですが全ドライバー中最多の474周をリードしています。
 そしてもう1人忘れてはいけないのがロガーノ、2022年、2024年とここを制してチャンピオンを獲得。クラッシュによるリタイアが2回あるので平均順位は悪いですがベルに次ぐ452周のラップ リードを記録しています。一方ドライバー選手権1位のラーソンはGen7のフェニックスでは未勝利ですが、トップ10フィニッシュ7回と安定感は高くて平均順位8.6が全体2番手、216周のリードは6番手。タイヤのもちが今一つに見えるレースが多いんですけどわりとしぶといです。
 昨年涙をのんだハムリンは数字だけ見るとラーソンより全体にちょっと劣るような数字。去年は圧倒的な速さで勝っていたはずなので統計値だけ見ても・・・とは思いますが、最後にここで勝ったのは2019年の第35戦です。ただハムリンに関して凄いのは、フェニックスのレースは2018年以降の17戦全てリード ラップで完走していて1周も取りこぼしていません。Gen7での9戦だけで見ても全周走破はハムリンとクリス ブッシャーの2人だけです。プレイオフ第1シードから選手権2位に落ちて徐々に離されるハムリンですが、今シーズンの第2戦以降全戦全周回走破の記録も継続しており、焦らずに積み上げたいところです。

 ロング ランでのタイヤの使い方が大事ではありますが統計的には予選順位も非常に重要で、2013年のGen6車両導入以降は秋のフェニックスに限ると優勝者は全て予選9位以内からスタートしており、春のレースも含めた過去17回のフェニックスで予選11位以下から優勝した事例は3回しかありません。2020年のチェイス エリオットはペナルティーのため記録上は予選1位でも実際は最後尾からスタートして勝ってるんですが、ピット位置選択も含めて予選で速いことは重要と考えられます。

・レース前の話題

 まず契約の話題をいくつか。まずダニエル スアレスが来シーズンもスパイアー モータースポーツに残留することを発表しました。昨年限りでトラックハウス レーシングとの契約が終わりスパイアーに移籍したスアレス、当初の期待はそれほど高くなかったようですがプレイオフに進出して現時点でドライバー/オーナー選手権で14位と健闘。ちょうど今回の大会スポンサーであるフリーウェイ インシュアランスがスアレスの主要スポンサーでもあるので今週発表したのかもしれませんね。

 スポンサーと言えば、2012年からRFK レーシングのスポンサーを継続してクリス ブッシャーの主要スポンサーとして多く目にするフィフス サード バンクが、今シーズン限りで契約を終えてチームを離れる見込みであるとスポーツ ビジネス ジャーナルが伝えました。ブラッド ケゼロウスキーがチームを離れることとは関係ないとみられます。フィフスサードは今年になって同業のコメリカ バンクを買収しており、事業構造の変化が一因の可能性があります。

 オライリーシリーズではJR モータースポーツが16歳の期待の若手・トリスタン マキーとの参戦計画を発表しました。17歳の誕生日を迎えた後となる来年8月のブリストルで9号車のドライバーとしてデビューし、2028年終了までは年齢制限の関係でスポット参戦。そして2029年からフル参戦するというえらく先走った話です。マキーは既に来年のクラフツマン トラック シリーズにスパイアーからスポット参戦することが発表されています。トリスタンマキー、この名前を覚えておきましょう。

 来年からフォードを使用することになっているアルファ プライム レーシングはライアン エリスと複数年契約を結んだことを発表、11月で37歳になるエリスは過去3年間シリーズにフル参戦していますが、2024年以来3年ぶりにAPRに復帰することになりました。一方で現在APRのドライバーであったブレナン プールは残留せず今季限りであることを発表しました。
 
 カップシリーズ優勝経験者でもあるハリソン バートンはサム ハント レーシングを離れ、来シーズンはピーターソン レーシングと複数年の契約を結んで78号車に乗ると発表しました。あんまり聞いた覚えのないチームだと思ったら2020年設立で当初はジョーダン アンダーソン レーシングとの共同で参戦、今年からはリチャード チルドレス レーシングと技術提携した上で自分たちの名前でフル参戦しはじめたばかりでした。
 ピーターソンは既にNASCAR地方シリーズで4度チャンピオンを獲得した38歳・リー プリアムがフル参戦契約して87号車に乗ると発表しており来年は2台体制となりますが、なんかこの手のチームが頓挫する姿を見てきてるのでハリソン君もちょっとだけ心配です^^;
 ハリソンが抜けるサムハントはブレイン パーキンスと複数年契約を結んだことを発表して24号車の後任になりました。2023年からフル参戦するパーキンスはここ2年はジョーダンアンダーソンの31号車に乗って過去最高順位は6位。2000年2月28日生まれというなんかちょっとレアな選手です。なおサムハントは26号車のドライバーとして既にシェルドン クリードとの契約を発表済み、現在26号車に乗っているディーン トンプソンはハース ファクトリー チームと契約し、この2人は契約が入れ替わりになりました。
 
 そして最後に大きな動きを3つ。まずダッジが来年のカップシリーズ復帰に近づいているとジ アスレティックが報じました。懸念となっているエンジンについてシボレーのエンジンを製造しているECRエンジンズとの契約が間近になっており、当面の間はECRがシボレーとダッジの両方のエンジン供給を担う方向性で最終調整に入っているとのことです。本当にそれで大丈夫なのか^^;
 一方フォードはシャーロットで実際されたグッドイヤーのタイヤ試験走行に青い偽装ラッピングが施された車両を持ち込んだと報じられました。来年の参戦車両としてマスタング ダーク ホース SCという最新の高性能車両をベースとした新しい外観のものを投入するとみられています。フォードはこれによってとりわけ高速トラックで優位性を発揮するトヨタ カムリ XSEに対抗する性能を得ることを目指しているようです。
 最後に、NASCARの最高経営責任者・スティーブ オドネルは大手放送局CBSの社長・デイビッド バーソンと会談し、現在の放映権契約の下でTNTが放送している5戦についてCBSで放送できないか交渉することを明らかにしました。アメリカではスカイダンスがワーナー ブラザーズ ディスカバリーを買収した巨大な業界再編があり、TNTとCBSは同じ親会社の傘下に収まるグループ企業の立ち位置になっていました。TNTが有料ケーブルテレビであるのに対してCBSは地上波放送であるため視聴世帯数が多く、かつては長年NASCARを放送していたので今回の話に繋がったようですが、実現するかどうかは不明です。

・Craftsman Truck Series Zero Carbon Bioethanol 150 Powered by POET

 トラックシリーズのプレイオフ折り返しとなる第4戦、ポールシッターのレイン リッグスがぶっちぎっていて今日は圧勝、かと思ったら6位スタートのタイ マジェスキーがステージ1終盤にこれをかわしてステージを制し、勢いそのままにステージ2も連勝。ところがステージ間コーションでケイデン ハニーカットに先行されると路面状況の変化もあるのか勢いが止まりました。98周目以降一度もリードを明け渡さなかったハニーカットが今季4勝目を挙げました。

 コーションが2回しか出なかったので1時間24分27秒のスピード決着、2位はクリスチャン エッケスで3位にリッグス、マジェスキーは4位でした。ドライバー選手権1位ハニーカットと2位リッグスの差は39点に広がりました。

・O'Reilly Auto Parts Series Timberland Pro 200

 ゲンバで働く人のための靴、みたいなのがスポンサーになったオライリーシリーズはステージ1で雨がぱらつきました。そのステージ1はジェシー ラブが制してクリードが2位、でしたがクリードはステージ後に車に不具合が出てしまい3周遅れに。続くステージ2もラブが制してジャスティン オールガイアーが2位、でしたがオールガイアーはステージ間コーションのピット作業で失敗しました。
 しかし最終ステージではラブに対して新たな挑戦者・サム メイヤーが登場。練習走行でエンジンが壊れて予選不参加の35位スタートから猛烈な追い上げを見せてきたメイヤー、レースの終盤は常にラブに対して仕掛ける動きを見せました。しかしそう簡単には抜けず、最後はギャンブル的にターン4で攻めてみましたがラブに見事に抑えられました。昨年のシリーズ王者・ラブが今季2勝目を挙げてついにドライバー選手権1位に浮上しました。

 3位のオールガイアーが選手権ではラブから36点差の2位、このレース4位のコリー デイが同39点差の3位。そしてレース前には僅差ながら1位だったクリード、自分ではどうしようもない問題によりこのレース32位で選手権では59点差の4位とという天国から地獄のようなフェニックスになってしまいました。
 ちなみにステージ1の雨では新たな規則によって2名がコーション中にウエット ウエザー タイヤに交換する判断を行い、オーバルでは史上初めてドライとウエットのタイヤが混在しました。ただ残念ながら路面はほとんど乾いてしまいこの作戦は不発に終わっています。

・カップシリーズ予選

 カップの予選は幸い雨に遭いませんでした。ブッシュ ライト ポール賞はブレイニーが獲得、僅か0.032秒差でロガーノが続きました。現在2連勝中と波に乗るチェイス ブリスコーが3位でハムリン、ベル、タイラー レディック、タイ ギブス、と3位から7位はトヨタ勢。マイケル マクダウル、ジョッシュ ベリーを挟んで10位にウイリアム バイロンが入りました。ラーソンは練習走行からハンドリングに満足がいかず予選22位、統計的に今回は勝て無さそうです(笑)

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