ケゼロウスキー、RFKを離脱

 NASCAR カップ シリーズ、シーズンも佳境に入った9月末に驚きの話題が投下されました。ラウシュ フェンウェイ ケゼロウスキー レーシングとブラッド ケゼロウスキーは9月29日に共同で声明を発表、ケゼロウスキーが2026年限りでドライバーとしてチームを離れることになりました。ケゼロウスキーが所有するチームの所有権については今後の検討とされましたが、現地報道によれば手放す可能性が濃厚とのことです。以下、公式サイトに掲載されている声明文の和訳です。

ラウシュフェンウェイケゼロウスキー(RFK)レーシングとブラッド ケゼロウスキーは本日、ケゼロウスキーが2026年のNASCARカップシリーズのシーズン終了をもってNo.6 フォード ダークホース マスタングのドライバーとしての任期を終えることを発表しました。これにより、ケゼロウスキーとチームの双方にとって重要な一章が幕を閉じることになります。

「私たちは人として、ドライバーとして、そして同僚として、ブラッドを深く尊敬しています。彼がRFKレーシングにもたらした影響はチームに関わるすべての人が実感しています。彼は間違いなくトラックの内外を問わず私たちのチームの取り組みを体現する素晴らしい存在でした。」と、RFKレーシングの社長・チップ バワーズは語りました。「彼は単にNo.6の車を走らせていただけでなく、チームの未来に自らの情熱を注ぎ、RFKレーシングがどのようなチームになり得るかについて新たな視点をもたらしてくれました。私たちはチャンピオン、競技者、そしてリーダーとしてのブラッドに多大な敬意を抱いており、彼がRFKにもたらしてくれたエネルギーと献身に感謝しています。ブラッドは今後も長年にわたってレースを続けたいという意向を明確にしており、私たちは彼がその目標を達成するために最善の道を進むことを尊重し、支持します。まだいくつかのレースが残っていますので、今シーズンの最後まで共に戦えることを楽しみにしています。」

「過去5年間、RFKで成し遂げてきたことを非常に誇りに思いますし、ラウシュ エンタープライジーズやフェンウェイ スポーツ グループを含め、共に働く機会を得たすべての人々に感謝しています」とケゼロウスキーは語りました。「多くの素晴らしい人々がこのチームの競争力と技術力の変革に多大な力を注いでくれました。私たちが築き上げた関係、共に経験したすべてのこと、そして共同オーナーや競技部門の責任者として学んだことを、私はこれからも大切にしていきます。」

「ドライバーとして引退するつもりは全くありません」とケゼロウスキーは付け加えました。「このスポーツにおいて成し遂げたいことはまだたくさんありますし、これからの展開を楽しみにしています。」


ケゼロウスキーは2021年に共同オーナーとしてラウシュフェンウェイレーシングに加わり、2022年シーズンからはチームのドライバーを務めると同時にチーム名はラウシュフェンウェイケゼロウスキーレーシング(RFKレーシング)へと変更されました。過去5年間、彼はプロセスとテクノロジーへの意欲的な取り組みを通じてチームの近代化を推進し、競争力を高めるための方向性を定める上で重要な役割を果たしてきました。

ケゼロウスキーは2026年シーズンの残りの期間も引き続きNo.6 フォード ダークホース マスタングのドライバーを務めます。RFKレーシングとケゼロウスキーは、彼が現在保有するチームの所有権に関する今後の適切な対応について協力して協議していく意向であり、チームは彼が他所でのキャリアの可能性を模索したいという意向を尊重し、支援しています。

RFKレーシングは、2027年もNASCARカップシリーズにおいて3台体制で参戦する方針を堅持し、3つ目のチャーターの獲得に向けて引き続き積極的に取り組んでいきます。No.6チームの今後の計画については適切な時期に発表される予定です。また、これまでケゼロウスキーが担っていた競技部門統括責任者の新たな後任選びも直ちに開始されます。

RFKレーシングは今後も、NASCARにおけるジャック ラウシュの長年にわたる成功を基盤とするラウシュエンタープライジーズと、多角的な事業を展開するグローバル スポーツ プラットフォームであるフェンウェイスポーツグループの共同所有体制の下で運営を継続します。両オーナーグループは、RFKレーシングとその長期的な成功に向けて引き続き強固なコミットメントを維持しています。

 ケゼロウスキーは2010年からの12シーズンをチーム ペンスキーで過ごして2012年にはカップシリーズのチャンピオンを獲得、ペンスキーで通算34勝を挙げ12シーズン中9シーズンで年間選手権順位8位以内に入りました。元々オライリー オート パーツ シリーズではJR モータースポーツと契約して頭角を現し、ヘンドリック モータースポーツからカップシリーズにスポット参戦もしていましたが、かなり危ない走りとヘンドリックのドライバーの枠が空いていないことがシボレー以外で契約先を探すことになり、ダッジのペンスキーになりました。ただケゼロウスキーがチャンピオンを獲った2012年を最後にダッジはNASCARを去ることになり、以降はフォード陣営の顔になります。

 若い頃は悪童で『バッド ブラッド』の愛称が付き、もうそういうキャラではないのにアベマで中継が始まったころは増田さんがやたらとバッドブラッド言ってましたね(笑)そんなペンスキーで12年を過ごすも、2021年のシーズン途中にオースティン シンドリックが翌年から加入することが発表され、そしてその5日後にケゼロウスキーはラウシュフェンウェイにオーナー権を取得した上で加入するという異例の決断を行ったことが発表されました。ラウシュフェンウェイケゼロウスキーレーシング、長すぎるから屋号はRFKレーシング、合併しまくった日本の銀行みたいです。

 個人成績としては移籍後の5年間で僅か1勝にとどまりますが、チーム加入時は資金難で低迷期だったチームの競技部門を自ら率い、ドライバーとしての発信力も活かして多くのスポンサー獲得とチームの強化に貢献したと考えられます。クリス ブッシャーは2022年以降に5勝を記録、2023年はケゼロウスキーとともに揃ってプレイオフにも出場しました。今年もブッシャーはプレイオフを戦い、ライアン プリースもプレイオフに滑り込んでいます。ブッシャーは来年以降の契約も発表されましたが、残留に際してもケゼロウスキーは「他チームからオファーがあって簡単ではなかった」と自ら説明するなど現在まで競技部門の責任を担っていたことがうかがえますが、今回まさかの発表で突然の離脱となりました。

 言われなくてもなんとなくわかりますが決別の理由はケゼロウスキーとその他のチーム首脳陣との方向性の違いだそうで、何が具体的に合わなくなったのかは分かりませんが声明からしても大きな要因の1つは『ドライバー・ケゼロウスキー』の扱いと思われます。どうやら現地報道では数週間前から『ケゼロウスキーが来年のチームとの契約をまだ結んでいないのでは?』という噂がまことしやかにささやかれていたみたいなんですが、それでも『共同オーナーだから降りることはないだろう』という受け止めで、発表までに報道が先行して報じたような姿はなく、この規模の話としては異例とすら言える『情報漏れなし』の出来事でした。
 声明にもありましたが、RFKは来シーズンも3台体制での参戦を目指すとする一方で来年使えるチャーターが2つしか確保できていません。チームで3番目の成績、42歳で年俸も高いであろうケゼロウスキーに言わば引退勧告があったとしても不思議ではなく、しかしまだ現役でいたいケゼロウスキーとの溝が埋まらなかった、というのは分かりやすい要因です。プロ野球でもよくあるやつですね。
 
 また、色々検索してるうちにどの媒体の記事だったか忘れてしまいましたが、オーナーの数が増えて名前が長くなり、長すぎて頭文字で略さないといけなくなったチームがまとまり続けるのは簡単ではない、と皮肉っぽく伝えた記事もありました。チーム強化方針でも一枚岩ではなかったかもしれません。ケゼロウスキーは過去に繰り返し規模の利益を口にしており、チャンピオンを争うには4台は必要だという考えを持っていました。
 2023年からは弱小リック ウェアー レーシングと提携してチームの施設内に拠点を間借りさせる形にして擬似的に体制強化を目論みましたが、結果としてRWRはたった3年で離れて今年からシボレー陣営に映ってしまいましたので、期待されたほどの効果はなかった可能性があります。余談ですがRWRの設備は未だにRFKと同居しているそうです(笑)
 これは私の推察ですが、チャーターが無い車両は出場しても運営からの分配金が雀の涙なので、チャーターがないままの3台体制というのはチーム財政としては厳しく、予算を考えると2台に絞りたい、3台動かすなら一番成績が下のケゼロウスキーをオープン車両にしたい、というような考えが他の経営陣に浮かんでいても不思議ではなく、こうした複数の要因が重なった結果の離脱ではないかと想像しました。
 RFKは2010年から社長を務めていたスティーブ ニューマークがノースカロライナ州立大学チャペルヒル校の運動部長に就任するために昨年9月で退任し、先ほど声明で名前が出てきましたチップ バワーズが新たな社長に就任していますので新体制になってちょうど1年余り。そういった点も判断に影響した可能性は考えられます。

 ちなみにケゼロウスキー、つい最近ゲートウェイでのレース中にロガーノに抜かれた際に同じフォードでもエンジン性能に差があると感じでブチ切れてしまい

「俺もまともなエンジンを積んでもらえるだけのフォードとして認められていればよかったのにな。そうすりゃとっくに前の連中を抜いてんのに。それなのに、俺たちはクソ車チーム扱いされて、クソみたいな機材をあてがわれる始末だ。やってらんねえよ。あいつら明らかに性能のいいエンジンを積んで、俺の横をあっという間にぶち抜いていきやがった。ふざけんな、もし俺があのエンジンを積んでたらとっくに連中を抜き去ってぶっちぎってんのによ。」

 とあんまり言っちゃいけないことをズケズケ言っていました。一時の感情的な発言だとしてそこまで問題視もされてはおらず、これが今回の件と関係しているという話も出てはいないんですが、ケゼロウスキーの中で組織について色々と溜まっていた不満のうちの1つだったと捉えると全くの無関係とも言い切れない話です。



・ケゼロウスキー、現役続行は可能か?

 離脱は双方にとって楽な道ではありません、まずケゼロウスキーですが現役を続けようにもカップシリーズに彼の移籍先となりそうな空きがもうほぼありません。もちろん、今の契約を破棄してでもケゼロウスキーを雇いたい!と思うチームがあれば話は別ですが、自分がオーナーだったとしてやりたいかというと答えはNOです。

 でもNASCARファンならすぐに頭に浮かぶチームが1つあります、コウリッグ レーシングです。コウリッグはステランティスと組んで今年からクラフツマン トラック シリーズにラム 1500で参戦しており、近い将来のカップシリーズでのダッジ復活を望んでいます。ケゼロウスキーがチャンピオンを獲ったのはダッジ、コウリッグはタイ ディロンの来年の契約が決まっていない、ハッ( ゚Д゚)これはもう既に契約が済んでるに違いない!みたいな想像はすぐに成り立ちます、実際SNSではそうなってるみたいです。
 現地報道でもケゼロウスキーの現実的な移籍先の1つとして名前が挙げられてはいるものの、素人と同じレベルで状況から推測しただけの何の取材による根拠もない話、コウリッグはケゼロウスキーとの接触を否定しています。ダッジがカップシリーズに来年から復帰するにはエンジン開発が進んでおらず、10月になって車体の姿すら見えていない状況ではさすがに無理だろうという意見も多いです。じゃあケゼロウスキーが競争力の無いシボレーでコウリッグとともに戦うのか、あるいはトラックシリーズまで降りてラムに乗るのか、という話になると、うーん、という感じです。
 でもそもそも弱体化したラウシュに出資するという常識外れの行動を採ったケゼロウスキーですから、今度はコウリッグにいくらか出資してダッジのワークス活動に自分が直接関わってもう1回栄光を獲るぞ!というぐらいの壮大な目標があったとしても決して驚きではありません。保有するRFKの株式がお金に変わるのでそれなりのまとまったお金は手に入ると思われます。
 当然ながら他のチームでオライリーやトラックに乗る機会を探すというのもあまり考えにくく、しかしそんなことぐらいケゼロウスキーが分からないわけが無いので、どういう考えを持っての決断だったのか、どういう選択をするのか、色々な面で関心を集めることになり、そして想像すればするほどダッジと繋がってしまうので、まあ無いだろうと冷静に思いつつも期待してしまうのがファンの性ですね(笑)

・RFK、次の一手は?

 RFKレーシング、から毛が抜けて、じゃなくてKが抜けてラウシュフェンウェイ(仮)とかになると思いますが、まずはケゼロウスキーの持ち分について清算しないといけません。チーム側が株式を買い取るのか、ケゼロウスキーから新しい投資家へ直接売却するのか、それともケゼロウスキーが共同オーナーであり続けるという想定外の展開パート2が待っているのか。
 その上で、声明にもある通りケゼロウスキーが担っていた競技部門の責任者を決める必要があります。ケゼロウスキーは技術面をはじめ組織横断で競争力の底上げを行っていたと考えられるため、同じように組織を引っ張るだけの求心力がある人が求められます。1人で担いきれないなら部門を切り分ける必要もあるでしょうね。
 RFKの過去数年の競争力がケゼロウスキーの恩恵なのか、全然関係ないのかは定量的に調べる術が無いので全く分からないわけですが、『ケゼロウスキー抜けて弱くなったね』とは働いてる人間なら絶対言われたくないはずなので違う意味で気合は入ると思います。モータースポーツってどこまで行っても多くの人が集まって同じ方向を向かないと成績に繋がらないチーム競技、正しい方向性を示す人がいて、働く人が「この人の言う通りやったら上手く行くぞ!付いて行こう!」と思うことが強さに繋がるのは間違いないので、ケゼロウスキーがどう思われてたのか知りませんけど新しい責任者さんは同等かそれ以上に従業員さんを惹きつける必要があるので、楽な仕事ではない気がしますね。
 それはスポンサー営業も同じで、やっぱりある程度ケゼロウスキーという名前に期待してお金を出してくれる企業もいたと思うので、彼が抜けて成績が落ちたりなんかしたら「ああ、やっぱケゼロウスキーに主導権握られたくなくて内紛で追い出したのね。」とか思われたらもう広告を出してくれなくなってしまいますから、暗黒の時代に戻らないためには早い段階でちゃんと結果を出す必要があります。

 そしてもう1つはもう何度も出てきましたけどチャーターで、声明では3台体制を改めて示してはいましたが実現性はまだ不透明といったところです。仮に3台でフル参戦ならドライバーが必要ですが、その場合に手を挙げそうな人も何人か名前が出ています。1人はジョン ハンター ネメチェック、本当なら来年もレガシー モーター クラブに残留するはずだったのに、急転チームがジョッシュ ベリーと契約したために弾き出されてしまいました。おそらくレガシーからいくらか保証金はもらったでしょうし彼に付いてるスポンサーもあって給料もそんなに高くないと思うので、もう既に代理人からRFKに電話してても不思議じゃないと思います。
 そしてもう1人名前が挙がっていたのがトラックシリーズで戦うレイン リッグス、カップシリーズに出たいけど機会が無くてフロント ロウ モータースポーツとの契約延長を発表したばかりですが、ひょっとしたら「しまった!早かった!」と思ってるかもしれません。もしラウシュにその気があるなら、こっちはラウシュからフロントロウに電話してるかもしれませんね。いや、でも契約を買い取るカネが無いか。。。

 まだこの先しばらくは決別に関する新しい情報が真偽の怪しいものを含めて出てくるでしょうし、そしてその後にたぶん来年の動向について形が見えてくるんじゃないかと思います。スポーツではあんまり優勝争いが佳境の時に外から別の話題を放り込んでそれをかき消すな、みたいな話もありますが、まあNASCARファンならたぶん両方楽しむでしょう(笑)

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