フォーミュラE 第14戦 東京

ABB FIA Formula E World Championship
2026 TDK Tokyo E-Prix
東京市街地サーキット 2.575km×36Laps=92.7km
Race Energy:34kWh+3.85kWh Pit Boost
Reference Time for SC/FCY 3:00
Attack Mode:360 seconds/1 time
winner:Daniel Ticktum(Cupra Kiro/Porsche 99X Electric WCG3)

 ABB FIA フォーミュラ E 世界選手権・シーズン12も大詰めとなって来て迎える第14戦・第15戦は東京。今回で3回目の開催となる東京ビッグサイト周辺の市街地レースです。初開催の2024年は3月、昨年は5月の開催でしたが今回は7月末。酷暑を避けることとヨーロッパの視聴者を意識して、日本時間午後8時にレースが始まる日本初の公道夜間レースです。元々東京での開催は費用が高額で赤字だと言われていますが、今回は照明設備も持ってくるのでさらに費用が膨らみます。
 そんな中でも来年の開催契約も既に結ばれて日程が発表されているわけですが、フォーミュラEの最高選手権責任者・アルベルト ロンゴは赤字開催になっていることを認めた上で

「我々はグローバルなシリーズとして、それでも東京でレースを開催することの価値は大きなものがあると考えています。」
「もちろん収支面の損益計算は大事ですし、開催初年度から比べればどんどん改善もしています。希望としては次の契約の最後ぐらいには利益もプラスになるのではないかと期待していますが、まだ赤字であったとしても東京での開催を継続する価値はあります。」

 と開催意義を強調。またGen4車両で走るには狭いのでは?という質問に対しては、確かに懸念はあるけどコースの拡張はできず、入念なシミュレートの結果レース開催は可能であると説明しました。これで来年やってみて狭すぎて珍事が起きたら盛大にバカにしてやりましょう(笑)

 そんな東京市街地、コースの前半は小さいターンがこちゃこちゃと詰まっている一方で、ターン8を過ぎて公道部分に出ると突然豹変して高速化。ターン10・11のシケインは殺人シケイン的な形状で、ターン16は左の高速コーナーながら急な下り坂になっており、おかしな荷重がかかった状態でもう一度減速して最終シケインのターン17・18へと向かうかなりの難コースです。前半は低速すぎて抜けず、後半は全開区間の終盤に微妙な曲線があるためこれまた抜きに行くのが怖く、アタックモードがあっても順位を上げにくい形状です。下手したらモナコより抜けないかも。
 レース距離はピットブーストがある第14戦が36周、ピットブースト無しの第15戦が33周といずれも昨年より1周増加していますが、レース中に使用可能なエナジー量が昨年の32kWhから今年は34kWhに増やされたので1周あたりで考えると節約要素は薄まっています。他方でSC/FCY導入時に周回数が追加される基準が昨年の3分45秒から3分に激減し、延長が起こりやすくなっています。
 通常、この基準タイムはザックリ言って『SC先導周回数>追加周回数』になるようにできており、たとえば2周のSC走行があれば追加は1周に収まって、『1周増えてるけど2周のSC走行中に消費する量は1周レースするより遥かに少ないから全体で見たらちょっと楽になったね』という結果になります。
 ところが東京では初開催の時には3分10秒で設定したら、道が狭くて事故現場を通過する際にSC隊列の速度がかなり落ちてしまって、なんとSC先導1周目に4分10秒もかかって1周しました。その結果、SC走行2周に対して追加周回も2周、事前の想定から言えば『レースする距離は変わって無くて、SC走行2周分の消費がまるまる上乗せされた』という珍しい事態になりました。これがレース終盤のエナジー管理を狂わせ、マキシミリアン グンターの逆転勝利に繋がりました。
 
 おそらくこれを受けて昨年は基準が3分45秒へと大幅に緩和、1年目から2年目にかけてはシケインが1か所削減されてコース自体が高速化されたにもかかわらず大幅に伸ばされていたわけですが、たぶん今年は基本の使用可能エナジーが増やされたことからちょっとまた意地悪をしてきたと思われます。さすがにこんな細かい話はJ SPORTSでもしてないだろう(笑)

・レース前の話題

 東京開催を前にした7月20日、シトロエン レーシングはチーム代表のシリル ブレイスが急逝したと発表しました。43歳の若さでした。ブレイスさんはキングストン大学で車両力学を学んだ技術者で、マノー モータースポーツ、アーデン インターナショナルでF3、GP3、F2などのカテゴリーでエンジニアを務めました。アーデンでF2の要職を担っていた時代に所属していた選手にはノーマン ナトー、ダニエル ティクタム、グンター、福住 仁嶺などがいたと思います。
 その後2019年にマヒンドラ レーシングに加入してフォーミュラEに転身、2022年にベンチュリー レーシング(の運営会社であるモナコ スポーツ グループ)へと移籍すると、チームがマセラティーMSGと名前を変え、シーズン9で苦戦してジェイムス ロシターがチーム代表を退いたところで、後任としてチーム代表になりました。
 ブレイスは人柄においてパドック内外で信頼を集める人物として知られていたそうで、フォーミュラEにおいてもその能力を発揮。先ほども書いた通りグンターとはF2時代にも共に仕事をした仲です。ただグンターは勝利をもたらす一方で数台の車をぶっ壊したので、これが経営難の引き金を引いたとも・・・それでもブレイスはマセラティーに変わってシトロエンという名称を使用し、MSGからステランティスへとなんとかかんとかお金を繋いでチームを存続させるために奔走しました。

 ザ レースの記者・サム スミスによると、このチームが新たな投資家に売却されるはずの取引が頓挫した、という2025年2月の報道をめぐってブレイスとは現場でかなり厳しい言葉のやりとりになったようなんですが、1時間も話すと丸くおさまったとのこと。同じような話をしたのはマヒンドラ時代にブレイスのお世話になった選手・アレックス リンで

「もしあなたがその日をあまり良い日ではないと感じていたり、人生のある面であまりやる気が出なかったりしても、彼と30分過ごせばまるでレンガの壁を突き破って走り出せるかのような気分になれる人でした。」

 と語りました。真面目で誠実、レースに情熱を注ぎ、技術者としてはドライバーのためにできることを常に探し、チーム代表としても謙虚さを失わず実直に必要な成果を求めて地道な努力を続けていた、報道からはそうした話が多く書かれていました。ブレイスさんのご冥福をお祈りいたします。

 もう1つ、日産にとっての母国レースということもあって発表があり、既に報じられていた通り日産が来シーズンからアンドレッティーにパワートレインを供給する契約を締結したと正式に発表されました。また、この週末の日産はニスモをイメージした特別スキームでの参戦です。アンドレッティーもこれとは別に日本のカスタム車両ブランド・リバティーウォークと連携した今回だけの特別スキームになっています。調べたらリバティーウォークは2年前にもフォーミュラEとの連携で特別色の展示車両を作ったことがあるみたいですね。


・練習走行

 金曜日のFP1は決勝以外で唯一の夜間走行が行えるセッションですが、雨上がりの濡れた路面でした。昨年のレースでよく分かりましたが、駐車場を使用しているターン1のあたりは波打った路面に川が流れたようになって周辺の水が流れ込んでくるらしく、一度水たまりができる状態になったらいつまでも乾いてくれません。他にも何か所かそういう場所がありますね。
 他の部分はセッション終盤にはほぼ乾いており万一レースでも降った場合の良い練習にはなりそうでしたが、最速はエドアルド モルターラで1分13秒094。これにグンター、ジェイク デニス、パスカル ベアライン、アントニオ フェリックス ダ コスタが続きました。ベアラインはマヒンドラ時代にブレイスさんと一緒に仕事をしているドライバーですね。

 日付が変わって土曜日13時30分開始のFP2、気温35度・路面温度47度、暑すぎます。
サービスカット

 これはこれであんまり参考になら無さそうですが、最速はこれまたモルターラで1分12秒491。ティクタム、ベアライン、ニコ ミュラー、デニスが続きました。このFP2では超危険コーナー・ターン16でフェリペ ドルゴビッチが大クラッシュ。徐行と書いてあるすぐ横の壁に強烈にぶち当たって、どうやらモノコックまで壊れたようです。予選に出走できず、酷暑の中でクルーは車を組み立て直すことになりました。
痛そう・・・

・グループ予選

 今回は日本でのレースなので気合が入ったJ SPORTS、放送席にはゲスト解説で松下 信治、現地にはサッシャ&竹内 志麻、そして中継では出て来ずインタビュアーとして声だけしか出てないけど、たぶんデータアナリスト・川崎 亮輔。独自取材のインタビューとピットからの電話での情報、たまに自社カメラの映像も挿入。ただそのせいか、普段は英語との2か国語放送なのに今回はステレオ放送で英語無しでした。私はできるだけ情報が欲しくていつも二重音声で聞いてるので英語が無いのは残念でもありましたが、結果として松下選手が時々解説内容を拾ってくれたのでありがたかったですね。
 そんな独自映像で驚いたのはぺぺ マルティーで、日本のアニメなどが好きだということで本人によるとオンライン語学学習アプリケーション・デュオリンゴで628日間にわたって日本語を勉強したとのこと。YOUは何しに日本へ?で取材する日本好き外国人ぐらいにすごい日本語を扱えていたのでびっくりしました。この日からマルティーを応援することにしました、将来SUPER GT来ないかなっ(笑)

 さてトラック上に戻りましょう、A組はデニスが早々に1分13秒719とかなりの好記録を出し、結果としてこれが最速に。最後の駆け込みアタックで2位以下は大きく順位が変動してミュラー、ニック キャシディー、テイラー バーナードが続きました。ベアラインは最後のアタックでターン10に突っ込みすぎて危うく事故になりそうで、記録が伸ばせず5位で敗退しました。
 またこのグループでは日産の2人とルーカス ディ グラッシがセッション中にタイヤ交換する最近では珍しい戦略を採りましたが、オリバー ロウランドはタイヤの温度が全く適正ではなかったようで8位、ナトーもあんまり速くなくて6位、ディグラッシは9位と見た感じ上手く行かなかったようです。たぶん路面温度が高いから同じタイヤでの2発は上手く行かないと予想したんでしょうね。
 
 そんな流れを踏まえてのB組、あっちゃこっちゃで壁に擦ったりミスったりしてる映像が見えますが、そんな中でダコスタは一発目のアタックをシケインを曲がり損ねる失敗で台無しにしながらも、その翌周に1分13秒652を記録して取り返しました、デニスより速いやん。モルターラ、ジャン エリック ベルニュ、ティクタムがデュエルスへ。東京ではまだ1点も獲ったことが無いエバンスはタイヤが上手く作動しなかったようで8位、日本大好きマルティーも9位でした。

 日産2台落ちの後にシマシマが日産応援席にインタビューに行って、話しかけた相手がうっかり日産社員だったので微妙な反応になって困惑してるのが面白かったです。そして日産応援コメントで世界一速い鉄道オタク(?)松田 次生も録画映像で出てきましたが、えーっと次生さん、"グランプリ"じゃないです(笑)


・デュエルス

 準決勝のデニス vs ミュラーではターン10・11でミュラーがクラッシュ、デュエルスにしては珍しいレッドフラッグになりました。国際映像ではデニスが勝利だと出ていますが、デニスは1周できていないのでこの時点では不成立、決勝の出走順を決めるためにもちゃんともう1回走って準決勝の記録が必要です。しかしさっき半分は攻めたタイヤ、なおかつ対戦相手もいないのに好記録なんて望めないのでデニスはかるーく流しました。そらそうやね。
 中断の影響は続く対戦にも当然影響、予定していた状況とはタイヤの冷却時間が変わってしまい、その間に路面温度も下がるのでチームは予測力、ドライバーにはいわゆる"アドリブ力"がより試されるわけですが、サッシャさんからの情報では

「ジャガーは外したタイヤを一度ケースに入れて丁寧にピットの奥へ運んだが、マヒンドラはタイヤを外したら足で蹴って雑にピット奥まで転がした。」

 これは普段のレースでは手に入らない情報、しかもサッシャさんの視点じゃないとたぶん気づかないやつです、いい話を聞きました(笑)デニスが不戦勝だと思って一旦タイヤを取り付けたら、やっぱりもう1回走るというからまた外して、とシミュレートしようがない状態になってきましたが、ようやく始まった対戦ではそんな中でも先攻のダコスタが1分11秒963とここまでのデュエルス最速を記録。しかし後攻のモルターラはこれをさらに0.074秒上回ってデュエルス決勝へ進みました。
 だいぶ日が傾いて迎えたデュエルス決勝、先行のデニスはセクター1でさっきの準決勝でのモルターラより0.2秒ほど遅いので、これはそんなに速くないのかなと思ったらなんと1分11秒863と驚速。後攻のモルターラはセクター1で0.21秒ほどデニスより速く、セクター2はほぼ同じ。しかしタイヤの温度が上がりすぎていたのかターン15で明らかに失敗し、これでセクター3だけで0.25秒ほど失ってデニスに0.052秒届きませんでした。マヒンドラのチーム代表・フレデリック ベルトランが無茶苦茶悔しがるミスにより、デニスが通算9回目のジュリアス ベア ポール ポジションを獲得しました。タイヤを雑に扱った報いでしょうか。
スーツも特別仕様の東京カスタム

 スタート順位はデニス、モルターラ、ダコスタ、ミュラー、バーナード、ティクタム、キャシディー、ベアラインのトップ8。ただミュラーの車は修理が必要です。

・決勝

 レースに詳しくてフォーミュラEの戦略にも精通してレース実況もできる気象予報士、サッシャさん不在、FODのF1に行っちゃいましたね。ていうか夕方にこっちにいたことの方が驚きなんですけど・・・サッシャさんと同様に猛烈に働いたのはアンドレッティーのクルーで、数時間でドルゴビッチの車を組み立て直してグリッドに並べました。

 また、ミュラーの車もやっぱり前を強くぶつけたから駆動系部品がサバイバルセルを破壊してモノコックが使用不能になっており、ポルシェのクルーは予選終了後の僅か3時間程度の間に車を組み立て直す作業に取り掛かりました。作業開始時点では間に合うか分からないと言われていたようですが、こちらもなんとか間に合わせました。
 雨の懸念もある東京熱帯夜、スタートからみんなかなり慎重に走っていたと思うんですが、ターン6でミュラーがダコスタと壁に挟まれる形になってしまい、車が壊れてピットへ。せっかく修理したのに・・・さらに映像には映ってないとこでブエミがニック デ フリースと接触、ナトーはベアラインに追突していずれも5秒ペナルティー、とやっぱり色々起こってしまいます。ちなみにブエミはレース前のピットで禁止事項である車輪の空転を行ってしまったのでけん責も受けています。いやそれにしても日本のレースとは思えないなあこの見た目。スポンサーの看板がアラビア語なせいもあるけどさ。

 リーダーのデニスはさすがの節約力を見せて、風よけを担いながらもエナジー残量は上位12人ほどが大差ない状況。グループ予選の6秒落ちぐらいのペースなので、後ろにいる人はここに付き合うべきか仕掛けていくべきか悩む微妙なところです。これより遅いといくらでも抜ける展開なんですけど、このぐらいだと抜きに行っても抑えらえる可能性があり、仕掛けてダメだと無駄遣いしたエナジーは帰って来ないので安易に動けないんですよね、絶妙なペースです。
 そのまま大きな動きがないまま16周目、ポツポツと雨が降り始めたという情報が上がる中でレースエナジーは60%を下回り始め、17周目にSoCも60%を下まわったようでついにピットブースト許可、18周目以降にピットサイクルとなりました。19周目にはちょっと白熱しすぎたベアラインとダコスタの争いで接触事故発生。ダコスタは壁に突っ込んでなんとか脱出、ベアラインは損傷でガレージ送り。ベアラインには10秒加算ペナルティーが発行されますが、どっちみちリタイアして無得点に終わりました。なんか取りこぼしが多いですね。

 リーダーのデニスは飛ばしまくって21周目にピットへ、ピットを出るとティクタムにアンダーカットされていました。ティクタムは6位の状態で18周目にピットブーストを終えるとすぐにアタックを使用、この周にピットに入った中では先頭だったので遮るものがありませんでした。そしてデニスにとって面倒だったのは、後ろから先にピットに入ったモルターラがアタックモードで迫っている上に、前にはまだピットに入っていないデフリースがいること。マヒンドラに挟まれています。
 映像には無いもののデニスは3周ほどデフリースに詰まってちょっと損した模様、その後25周目にアタックモードを使って29周目にティクタムまで全員きっちり抜き先頭に戻りましたが、ティクタムは今回きちんとチーム側との連携が取れているのかエナジー残量もしっかり残っていて、なおかつデニスを無理には抑えずに前に出して、抜かれた後もきちんと後ろについています。いつも無理に順位を守ろうとして後手後手に回るのに、クビになりそうだからちょっと冷静になったでしょうか。

 さらに32周目には「デニスに対して争う意図はないと伝えてくれ。」とチームに伝言を依頼して1.5秒後方にいる3位キャシディーとの差を守る姿勢。ただ無線でどうにもできないのはお天気で、ちょうどこの頃から雨脚は少し強くなったようです。土砂降りならもうそんなこと言ってられない。
 ティクタムは争う気は無いと言いつつも随分と近い距離でついてくるのでデニスからするとあんまり信用できない隣人という状態、幸い雨はそんなに強くならずについに最終周へ、3位のキャシディーも追いついてきてティクタムはますますデニスに張り付いており接触寸前です。チームからは無線で「無線は了承されてるけど前が明らかに失敗したらその限りではないぞ、でも基本は順位維持な。」と念を押されました。いや、そのミスの度合いとやらを誰がどうやって判断するのかg

 抜いたぞ!(笑)僅かなエナジー残量の差でデニスの方が早くスロットルを戻した、その一瞬を見逃さなかったと言うか、ぶつかるわけにもいかんし相手に合わせたらキャシディーにやられるから回避して抜くしか無かったというか、いずれもしてもティクタムが見事な裏切り行為()で最後の最後にレースをひっくり返し、契約延長に望みをつなぐ通算2勝目を挙げました、昨年のジャカルタ以来です。

 2位のデニスは裏切られて怒ってるかと思ったらレース後はちゃんと祝福。2位の点数は獲れたからいいじゃない、という感じですがレース後の話を聞くとレース終盤の車が酷かったという話なので、雨で路面温度が下がってタイヤが作動温度領域から外れたとか何か速く走れない要因があったように思いますね。というかデフリースに引っかかった数周が時間的にもエナジー的にもトドメになった可能性も・・・
 3位はキャシディー、亡くなったブレイスさんに捧げる素晴らしいレースで第9戦モナコ以来の入賞。レース終盤に猛烈に追い上げたエバンスが16位スタートから4位に入ってドライバー選手権でベアラインを逆転し1位へ。モルターラ、ベルニュ、ロウランド、マルティー、ダコスタ、バーナードのトップ10でした。

 ティクタムの優勝は全く想像もしていませんでしたが、本当に面白いレースでした。勝利の決め手はやはりピット後のアタックモード。最初にも書きましたがこのコースはアタックを使っても抜きにくいレイアウトになっていて、下手したら1周でたった2人ぐらいしか抜けなかったりします。ティクタムは最初にピットに入り、誰にも引っかからない立場でアタックを使って性能を最大限に生かすことに成功。
 気づいたら2位と大差が付いていたのでペース配分を間違えたのではないか、エナジーを使いすぎではないか、とすら思いましたが、他の人はアタックを使ってもだいたい何かしら引っかかってしまい、特にターン15の手前の直線あたりで抜こうとして出力を出したのに抜けなかった、というようなパターンはすごく無駄な走りになっています。ティクタムのやり方は理想的、効率でやや劣る型落ちポルシェですが、ライバルが無駄遣いしてるぶんだけ対等の戦いに持ち込んだと言えます。
 どこであろうとアタックモードをどうせ使うなら引っかからない状態が最高、ピットブースト後に誰にも引っかからない状態ですぐに使ってしまうのが理路上で得策である、というのは誰もが分かっているはずですが、後からSCが出たら飛ばした利益は無駄になるし、この段階ではレースが延長される可能性も残っているのである程度ゆとりを持った見積もりでエナジーを使うことにもなります。そして何よりピット後の即アタックは最近の傾向としてわりと抜かれまくってじり貧パターンが多かったので、たぶんそういう経験則から『自分からやりたくない』という陣営が多かったんじゃないかと思います。
 そういうちょっとした心理的に空いてしまった抜け穴みたいなところを的確に衝いたチームの判断は見事でしたし、エンジニアの指示、必要な時に完璧に飛ばしたティクタムの腕、デニスに抜かれた後にびっちり付いて行って僅かなエナジー残量差を生み出した走り、全てが機能しており、たぶんもう1回同じことやれと言われてもできないぐらいの会心のレース、全てが完璧だったのではないかと思いました。何でいつもそれができないのか、とついつい言いたくなります。藤浪 晋太郎の投球みたいですね()
 クープラキロとしてはティクタムと契約しない方針はどうも概ね決定事項だとも報じられてるんですが、160km/hの速球でビャンビャン三振を取る藤浪を見ているとやっぱり期待したくなってしまうのと同じで、今回のレースを見てチームが何か心変わりするのかどうか。まあ真価は次のイニング、もとい次のレースまで見てみないと分かりませんからね。継続が大事、次の試合で8四死球とかだと評価は元に戻ります。

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