NASCAR 第20戦 アトランタ

NASCAR Cup Series
Quaker State 400 Available at Walmart
EchoPark Speedway 1.54miles×260Laps(60/100/100)=400.4miles
※Race extended to 263Laps due to NASCAR overtime
winner:Ryan Blaney(Team Penske/BODYARMOR Flash I.V. Ford Mustang Dark Horse)

 
NASCARカップシリーズ第20戦・クエイカー ステイト 400 アベイラブル アット ウォルマート。スタート コマンドを担当するのは元アトランタ ブレーブスのチッパー ジョーンズ。1990年のドラフト会議でブレーブスが全体1位で指名し1993年にMLBデビュー。翌年のスプリング トレーニングで左ひざの前十字靭帯を断裂して1年を怪我で失ったものの、1995年以降主力選手として活躍し、ブレーブス一筋19年間で2499試合に出場して通算2726安打、468本塁打、通算打率.303を記録。
 右投げ両打ちのジョーンズは左右の両打席とも通算打率が3割を超えており、5000打数以上の両打ち選手としては史上2人目の偉業を達成。当然のように2018年に野球殿堂入りを果たしています。ブレーブス黄金自体はアンドリュー ジョーンズと同姓コンビで相手投手陣を震え上がらせました、AJは後に日本の東北楽天ゴールデンイーグルスに所属してチーム史上唯一の優勝・日本一にも貢献してましたね。さあクエイカーステイト400、プレイボール!

・ステージ1

 スタート直後から3ワイドになったり、ミスって失速した人の周辺がごちゃついたりする中で、ブレイニー・ロガーノ・シンドリックの3人が上手いこと抜け出してまるで普通の1.5マイルのように後続を千切ってしまいました。オライリーシリーズだと時々こうなりますけどカップでは比較的珍しい状況。大集団にならず、上手く単独走行してドラフトに入れた人だけがここに連なります。

 25周ほどでようやく先頭集団の参加者は6人ほどへ増加しますが、そこにしれっと入ってきたのはレディック。予選31位からどうやってここまで来たんだという速さ、カムリは基本的に空気抵抗が大きいから予選では遅いけど、決勝はダウンフォースが強くて旋回速度が高いので周回を重ねても全開に近い状態で走れていることを伺わせます。デイトナだとそれじゃあ前に出れないけどここはターンで抜けるのが大きい様子。
 40周を過ぎるとペンスキー3人衆で一番ハンドリングが悪そうなシンドリックが標的にされてレディックが何度も内側に並びかけるように。ターンで並ばれても直線でチームメイトのドラフトに入って引っ張ってもらい何とかしのいでいたシンドリックですがとうとう46周目、レディックと争ってる隙にラーソンに2人まとめて抜かれてしまい1-2-3体制が崩れます。
 弱いところから切り崩されたペンスキー、この後レディックがさらに順位を上げて最後はブレイニーも猛攻撃に遭いましたが、なんとかしのいでステージ1を制しました。レディック、ラーソン、ロガーノ、シンドリックのトップ5にホースバー、ディロン、ブリスコー、エリオット、ウォーレスが続きました。

 予想外の独走劇で既に8人が周回遅れになっており、このうちプリースがフリーパスを得てリードラップに戻りました。チャステイン、ケゼロウスキーあたりは周回遅れのまま取り残される形に。

・ステージ2

 ステージ間コーションで全員ピットへ、ブレイニーは給油量が少し多いようで順位を2つ下げて先頭はレディックに。69周目のリスタートからようやくみんなが見たかったアトランタのレース展開が到来して、まあとにかく出入りのハゲしいこと。ブレイニー、ホースバー、レディック、ラーソンあたりが抜いたり抜かれたり、たまに壁に当たってるけど気にせず走ってます。
 そのままステージは中盤に向かい、これはアンダーグリーンでのピットになるのか?と思ったら108周目に落雷観測によるコーション発生。スタート時点から黒い雲が気になってはいましたがとうとうやってきました。この後は大雨になって完全にレースが中断、YouTubeの動画ではバッサリ切られましたがアベマでは一部の映像を使用しており、路面を強引に乾かすいつもの光景を見ることができます。結局3時間9分18秒の長い長いレッド フラッグ、そもそもスタート時間が午後7時、レースが止まったのは8時半ごろなので、再開時点では既に午後11時30分と深夜残業確定です。なおチャステインはこのコーションでフリーパスを得ており、雷様に感謝。

 コーション周回とピット オープンを経て124周目にリスタート、5周ほどするとブレイニー・ロガーノのコンビが復活し、ステージ1ほど圧倒的ではないもののなんとなーく3位以下が置き去りの兆候。近くまでは追いついても体制を崩せる状況がなかなか訪れません。ロガーノは一旦切り崩されたものの、隙を見て必死にブレイニーの後ろを取り戻すとそのまま最後まで2人で協力して走り切りました。ステージ2もブレイニーが制し、レディック、ロガーノ、シンドリック、スアレス、ギブス、ベル、ジョーンズ、ハムリン、ギスバーゲンのトップ10となりました。

 ウォーレスはターン3の段階で4~5位を争っていましたが、ターン4でタイトになってスロットルを戻したところにタイギブスが追突、スピンしてステージポイント圏外になりました。前が急に失速するのは不可抗力ではあるんですけど、たぶん上手い人ならその直前の攻防からウォーレスがスロットルを戻して降りてきそうなのをなんとなく察知できるようにも思うので、こういう瞬時の反応と読みの差ってやっぱり超一流と一流の差じゃないかとちょっと感じましたね。またホースバーもステージ残り3周でパンクが発生、ノロノロ走り切ってリードラップ最後尾になりました。なおステージ2終了時点でケゼロウスキーはフリーパスを獲得。

・ファイナルステージ

 全員ピットに入って4輪交換と給油、ブレイニーはながーーーーい給油待ちでむちゃくちゃ順位が下がりました。ギブス/シンドリックの1列目で168周目にリスタート、ギブス・ベルのJGRコンビが隊列を引っ張ります。途中ハムリンも加入してJGR1-2-3になりますが長続きはしませんでした。ペンスキーの3人は後ろを見てチームメイトがドラフトに入って抜かれないように気を付けてるのが感じられたんですが、この3人はそういう連携があんまり見えませんでしたね。
 ラーソンがトップ2に対して何度も仕掛けに行きますが、どう見ても車がタイトで内側に飛び込んだら全然曲がらず抜けない様子。トップ2が崩れるのが早いか、ラーソンが自滅するのが早いか、という感じでしたが194周目に後方でアルメンディンガーがスピンしてコーション発生。ターン4出口でタイトになって自分からマイケル マクダウルに当たってしまいました。
 このコーションでリードラップ選手がピットへ、これで最後まで走り切る燃料は手に入るので、満タンまで給油しつつ今ここで少しでも順位を上げたいところ。作戦が入り乱れてベル/ラーソンの1列目になり201周目にリスタートしました、残りがちょうど60周。
 リスタートでは2列目のブレイニーがラーソンをゴリゴリ押しまくって道を切り開きまたもやリーダーに。ここまであまり目立たなかったエリオットが208周目にこれを抜いてリードすると大歓声が沸き起こりますが、どう転んでもブレイニーは単独走行で速いようですぐに前に戻ってきます。というか日付が変わってますけどお客さん多いですね。
 その後も何度かリードチェンジを繰り返しウォーレスがリーダーで迎えた232周目、ターン1で外から抜き返そうとしたブレイニーをウォーレスがブロックに動き、行き場もダウンフォースも失ったブレイニーが壁に接触。「おーい、ふざけんなよ。」と怒るブレイニーでしたが、ちょうど同じころに後方でアルメンディンガーがふたたびクラッシュしてコーション発生、コーション前の最終計測地点が基準なので、ブレイニーは2位が戻ってきました。
 ウォーレスはウォーレスで、リスタートのチューズで自分の考えとは違うクルーチーフの意見に従ったら全く上手く行かなかったため無線で激怒しており「何がデータだバカ野郎!もうレースの残りは全部俺に選ばせろボケが!」と悪態つきまくってクルーチーフを黙らせました、ババちゃん調子が良いと走りながら冗談言ったりするけど基本は短気やからなあ・・・

 上位勢はここに来て順位を失いたくないのでピットに入ったのは主に中団以降の人たち、ブレイニーは壁に擦ったけどピットには入りませんでした。クリーンエアーが勝つか、新品タイヤが勝つか、238周目/残り23周でリスタート。ブレイニーはホースバーに押されてすぐにリードを奪いますが、無線で「酷い振動!」とさっきの壁接触の影響を示唆する情報。それでもホースバーを引き連れてリードを続けていると、

 あ~、み~や~た~さ~~ん。242周目、前で急に車が詰まって運悪くラーソンが煽りを受けました。これで247周目/残り14周からのさらなる短距離戦でリスタート、なおもブレイニーとホースバーが色んな人に押してもらいながら激しく争いを続けますが、

 あ~、まただ~。バックストレッチで接触が起きてラーソンが弾き飛ばされクラッシュ、他にもブリスコー、ハーブスト、ハムリンなどが巻き込まれました。ラーソンはジョージア州に寄付でもした方がいいんじゃないだろうか、このレースを5周遅れの34位で終えました。残り6周で起きた多重事故によりレースはオーバータイムへ。そのリスタートへと向かうコーション中、深夜でおかしなテンションになったのかホースバーが無線で謎の行動に。

ホースバー「今、あの曲が頭から離れないんだけど。」
タイラー グリーン(スポッター)「どの曲?」
ホースバー「ちゃんとした歌詞は分かんないけど、"If I died in your arms tonight... Woahh WAAOhhh." みたいなやつ。どうしても頭から離れなくて。」

 イギリスのロックバンド・カッティング クルーの『(I Just) Died In Your Arms』という曲でした。チームはすぐに音源を探して無線で流し、本物を聞いたホースバーは大爆笑。放送席も「ホースバーバージョンより良いですね。」といじります。ホースバーバージョンを聞いても全くピンと来なかったけど公式MVを見たら聞いたことぐらいはある曲だったので、せっかくだから置いときますね(笑)



 ホースバーの名誉のために言っておくと、リスタートのチューズをどうするかとかいう真面目な話の間のちょっとした息抜きみたいな感じで、前後では普通にレースの大事な話をしてますので誤解なきよう。それにしても世界のモータースポーツ史に残る迷無線になりそうです、「後ろから正面衝突されましたよ!」に匹敵する破壊力でした(笑)
 さあオーバータイム、1列目はブレイニー/ホースバー、2列目がウォーレス/レディック。23XIのチームメイトが横に並んでしまってますが、これを上手く連携させることができるかどうか。リスタートではまずウォーレスがブレイニーを押してバックストレッチで先行、ブレイニーはホースバーをブロックしに外へ動こうとしましたが、ホースバーがレディックに強く押されてすごい勢いだったので対応が遅れてブロック失敗。
 これでホースバーがリード、2位はタイヤの新しいギスバーゲンが割り込む3ワイドの争いになりますが、結果的にこれでホースバーだけが前方に放り出された状態でホワイト フラッグを迎えました。追いかけるブレイニーはウォーレスに押されてターン1で外から仕掛け、今度はホースバーがブロックに失敗。そのままバックストレッチを2人で並走すると、さらにウォーレスが内側から並びかけて3ワイドでターン3に進入し全員一歩も引かない激戦でターン4へ。最後は

 この3人の後ろに付けていたベルが外を走ってブレイニーを押しました。結果的にブレイニーがポールポジションから全ステージ制覇のアトランタ完全制覇で第4戦フェニックス以来の今季2勝目・通算19勝目を挙げました。この時間まで残っていたお客さんには見ごたえのあるレース、ブレイニーのバーンナウトはたぶんスロットル操作が丁寧すぎて他の選手と比べると本当に前輪を軸に車の後ろだけが円を描くドーナツ型ですね。路面に描かれた塗装のせいなのかやたらチュルチュルとタイヤが擦る音がしてる・・・(笑)

マーティー スナイダー「深夜2時のレーストラック、何が起こるかは誰にも分かりません。ここアトランタで最後まで残っていたファンは特別な瞬間の目撃者になりました。NASCAR屈指の人気ドライバー・ライアン ブレイニーが3ワイドのフィニッシュを制し、ここアトランタで再びビクトリーレーンに向かいます。
素晴らしい走りでした、12号車にとってこれ以上ない最大ポイント獲得の一日となりました。ポールポジション獲得、ステージ1優勝、ステージ2優勝、そしてレース優勝。そして恒例ですが、ライアンブレイニーがチェッカー フラッグを手に取り、スタンドの若いファンを見つけて指名し、そのファンがチェッカーフラッグを持ち帰ります。まさに今、それが行われています。ライアンブレイニー選手、最高の夜になりましたね。ものすごいレースでした、あのオーバータイムでのリスタートの様子を教えてください。」

ブレイニー「いやあ、本当に激しかったですね。2番手リスタートというのは悪くない状況で、フロント ロウに並んで、後ろに誰かがついてくれるのを待っていました。リスタートではバッバがすごくいい感じで押してくれてうまく噛み合いましたね。そしてバッバと一緒にフロントストレッチで猛烈な加速ができました。カーソンのアウトサイドに並びかけましたが完全に前に出ることはできず、一方でバッバはバックストレッチで内側から3ワイドの形に持ち込んできて。それでフィニッシュでのすごい結末につながりました。それから、ターン3から4にかけてずっと僕のバンパーに張り付いて力強く押してくれたクリストファー ベルには本当に感謝しています。彼のおかげで勝てたと言っても過言ではないですね。クリストファー、本当にありがとう。そしてファンの皆さん、遅くまで残ってくれてありがとうございます。」

マーティー「午前2時ですよ。」

ブレイニー「え、2時ですか!?」

マーティー「もうすぐね。」

ブレイニー「僕ならもう寝てる時間ですね。でも皆さんは起きていてくれました、ここに残って僕らに付き合ってくれて本当にありがとうございました。」

マーティー「レース終盤、壁に接触して振動がある中で走るのは大変だったんじゃないですか?」

ブレイニー「そうですね、仕掛けようとした時にルースになってフェンスに当たってしまって、ホイールにコンクリート片や壁の塗料なんかは付いたと思うんですけど幸いなことにその後もまずまずの走りができました。ですからそこから挽回できて嬉しいです。バックストレッチで上のラインをブロックし損ねて離されてしまった場面もありましたが、まあ、それほど悪くはなかったですね。幸い、走行不能になるようなダメージではありませんでした。
ボディーアーマー フラッシュ IVに感謝します、このペイント スキームは最高にかっこいいですね。フォード レーシング、フォード モーター カンパニー、メナーズ、アドバンス オート パーツ、それから、デックス イメイジング、ビュルト グループ、ワバッシュ、この機会を与えていただいたすべての皆さんに感謝します。ここで勝てて最高です。」

マーティー「圧倒的な速さを見せた車、ライアンブレイニーとチーム ペンスキーにとってアトランタでの素晴らしい勝利となりました。スタジオのアダムにお返しします。」


 ベルにはお中元でボディーアーマー詰め合わせを送っておきましょう。2位は着順としてはウォーレスでしたが、バックストレッチで黄色い線の内側まではみ出して走っていました。ドラフティングトラックではダブル イエロー ラインを超えての走行で利益を得てはいけない規定、これに抵触したと見做されてリードラップ最後尾降格のペナルティーが課せられて、正式なレース結果は29位になりました。

 これでブレイニー以外のリードラップ選手は全員が繰り上げ、2位はベル、3位裏声ホースバー、4位ギブス、5位ジョーンズとなりました。6位は右側だけとはいえタイヤ交換したのがハマったギスバーゲンで、ディロン、レディック、ロガーノ、ブッシャーのトップ10でした。チャステインもタイヤ交換が効いたか周回遅れから戻って来ての11位、12位ハムリン、エリオットは13位で深夜まで残ってくれたファンの期待には応えられず。ハンドリングが悪すぎて、かつて見たことないほど無線で怒りまくっていたバイロンが16位、ボウマンは22位でした。

・NASCAR In-Season Challenge

 8人から4人に絞られる準々決勝、上位シードで唯一破れたのはハムリンでした。準決勝は

ギリランド(25) vs エリオット(4)
ベル(10) vs ブレイニー(3)

 ギリランドが唯一の下位シード選手として期待を一身に背負っている、かもしれません。

・ウォーレスのペナルティーをめぐって議論

 ウォーレスのペナルティーは規則の解釈がなかなか微妙だったので、評論家によっても見解が分かれるものとなり妥当かどうかが各所で議論となりました。報道によれば、NASCAR競技規則8.3.2にはこう書かれているそうです。

“If NASCAR determines that a vehicle goes beneath the double painted lines to improve its position it will be black-flagged. If NASCAR determines that a vehicle forces another vehicle beneath the double painted lines in an effort to advance its own position, the vehicle may be black-flagged.”

NASCARは、車両が位置を向上させる目的で二重のペイント ラインより内側に入ったと判断した場合、その車両はブラックフラッグの対象となる。また、NASCAR が、車両が自らの位置を上げるために他の車両を二重のペイントラインより内側へ押しやったと判断した場合、その車両もブラックフラッグの対象となり得る。

 ターン2の脱出でウォーレスは外のラインを勢いよく立ち上がり、目の前にいるブレイニーとホースバーを避けて内側に急に動いたことで勢いがありすぎてイエローラインを超えました。ただ、ウォーレスはここで線を超えた状態で順位を上げないようにするためスロットルを戻してブレーキも踏み、ホースバーの前に出ないようにしていたと主張、実際データ上でもそれは見てとれました。
 そのため、ダブルイエローラインを超えて走行して利益を得たわけではないのでペナルティーは不服でした。そしてレース終了直後で正確な情報が無い中、彼は最終的に2位に上がったことがペナルティーを受ける原因になったと考えて、最後の最後にギブスが後ろから押してきたから自分に順位を上げる意図は無かったのに2位になってペナルティーを受けてしまった、というような発言をしたため物議を醸すことに。ギブスとはステージ2の最終周で絡んだこともあってレース後に何か言葉を交わす場面もありました。

 ただ、NASCAR側が後日行った説明ではウォーレスにペナルティーを与えた要因は単に2位だったからではなく、ダブルイエローラインを超えた走りをしていなければウォーレスはそもそもその位置で争ってはいなかったはずで、ターン3~4では一時的に先行している場面もあったためだ、と指摘。仮にチェッカー前にコーションが出るような事案があったならウォーレスは規則を守って走った場合と比べて利益を得ていた潜在的な可能性があったと解釈しました。

 レース観戦とゲーム知識しか私にはないですが、ウォーレスは外から内に勢いよく動き、なおかつその過程でホースバーにぶつけないようにしようとすると、線を超えずに走ることは極めて難しかったと思います。この場面で見てもウォーレスだけ明らかに車が内側を向いてます。線内に収めようとしたら極端な話ホースバーの車の脇を通過するよりも前にもう右にステアリングを切るぐらいの動きをしないと間に合わず、それをやったらほとんどの場合タイミングが合わず角が当たるか、ウォーレス自身がルースになって暴れるかでどっちみち事故です。
 日欧のレースで例えれば最初から止まらない位置でブレーキを踏んでシケインを通過し、抜きはしてないけど明らかにその直前と比べたら前との差が詰まって、その先のコーナーで前の車を抜いたようなものと考えると良いと思います。そもそも白線を守ってたらその先のコーナーで抜ける機会も無かったはず、だから広範に捉えるとコース外を使って利益を得た、ということになる。これがNASCAR側の見解と考えられます。
 規則に則った厳格な対応か、拡大解釈か、そもそもダブルイエローラインなんて走路制限がNASCARに必要なのか、色んな意見が出たようですが意外な反応を見せた人がいました。現在ドライバー選手権1位であり、23XIレーシングの共同オーナーでもあるハムリンです。ご意見番オジサンはいつも通りポッドキャスト番組で持論を述べましたが、その中でウォーレスの走りについてドライバーとして理解を示す一方で、規則を適用したNASCARの判断を支持。過去にも同様の理由でペナルティーが出されていることからNASCARの裁定は一貫性があるとした上で、規則の文言における to improve its position の"to"の部分に着目。

「文字通りに順位を上げるという意味ではありません。順位を上げるための『動き』をする、ということです。そこには結果がどうなるかは重要ではない、という非常に明確な言葉があります。重要なのは『意図』なんです。そこには壁があるんだと想定しなければなりません。あのイエローラインは実質的に壁と同じものです。コンクリートの壁ではないにしてもね。ラインの外側に足を踏み出した瞬間、有利になったかどうかは関係なく違反と判定されてしまうのです。ですから、最終的な順位上では順位を上げられなかったように見えたとしてもです。ターン3からターン4にかけての動きを見ればバッバが最も前方に位置していましたしね。」

 『線は実質的には壁であり、超えること自体が違反である』というのはF1でのトラック リミット違反について、堂々と違反しておいて制度に文句を言う選手に対して私も全く同じ感想を持っているのでなかなか適格だなと思いましたが、ハムリンの指摘は明瞭で現実的でした。彼が意図を持っていたのか、言いたいことをいっただけなのかは分かりませんが、これだとウォーレスはオーナーに選手として同情してもらったので一定の安心感をありつつも、これ以上この問題についてガタガタも言いにくくくなって次のレースに集中するしかないので、そういう点でも結構意義があるなと思いました。そしてNASCARファン的にもしっくり来る内容で、運営からしても助かる話だったと思います。
 それとダブルイエローライン規則そのものは、解決陣なんかはやはりこれがないと最後が無法地帯になりかねないので競技として歯止めは必要という考えを示していたようです、反対意見までは調べきれてないですけど。


 終わってみればコーションは7回、しかもステージ間2回、雨1回、アルメンディンガー2回、ラーソン2回、と偏った内容でした()春先のレースと比べて気温が高いせいもありますが、ドラフティングトラック方式のレースでありながらハンドリングが重要で普通の1.5マイル的な要素が20%ぐらい混ざった展開でした。ブレイニーは単独での車の速さとハンドリングが両立しており、後方では同じフォードでもRFKレーシングが苦戦していたことから、けっこう難しいバランスを成り立たせていたのではないかと思います。
 逆にレディック、ウォーレス、ベルなど予選ではダメでもトヨタはハンドリングの良さであっさり取り返しており、僅かに存在する車両特性の差が出ていたように見えました。こんなに『車のキャラクター』が際立つのも珍しいですが、あんまり際立ちすぎるとNASCARらしさが減るので難しいところですね。ちなみにNASCARループ データによるとレディックはグリーンフラッグ中に伸べ289人を抜き、249人に抜かれたそうです。抜いた延べ人数はこのレースで最多。
 ステージ1での展開はちょっと予想外でコーションも少な目でしたが、随所に『おお!そんな隙間に綺麗に割り込むか!』というカップ選手だからこその技が見えて面白いレースでした。変に絡んでレースが止まらないのも最高峰シリーズの見せ場ですからね。ホースバーはグリーンフラッグ中の緊張感が続いたからこそコーション中にふと音楽が頭をよぎったんでしょう(笑)

 今季のフォードはまだブレイニーによる2勝しか記録されておらず、ペンスキーは高速トラックでのバランス取りに苦戦している様子、RFKレーシングはどこに行ってもそこそこですが勝つだけの圧倒的な速さがありません。ここから先はショート トラックのレースがやや増加しますが、ここはペンスキーの得意分野なので強みが出るのかどうかが見どころです。次戦はノースウィルクスボロ、選手権レースとしては1996年以来30年ぶりの開催です。

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