SUPER GT 第2戦 富士

2026 AUTOBACS SUPER GT Round2 FUJI GT 3Hours RACE GW SPECIAL
富士スピードウェイ 4.563km Race time:3hours
GT500 Class winner:au TOM'S GR Supra 坪井 翔/山下 健太
(TGR TEAM au TOM'S/Toyota GR Supra GT500)
GT300 class winner:リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R João Paulo Lima de Oliveira/木村 偉織
(KONDO Racing/Nissan GT-R NISMO GT3)


 2026 オートバックス SUPER GT・第2戦。富士での3時間レースはちょうど旅行に行ってたので1週間遅れての視聴になりました。3時間って長い気がしてましたけどNASCAR見てるからそうでもないなと今さらながら思い始めたり。そして、まあどうせ次戦まで間が空くから新しいオートスポーツが発売されて情報たっぷりにしてから書いてやろう、と思ったらオースポがWRC特集だったのでGTはそんなに新味のある内容がありませんでした(笑)
 3時間レースも回数を重ねるとだいぶパターンができてきて、GT500クラスは基本的には1時間ずつの均等割り作戦になり、航続距離から言うと最大で1時間10分ぐらいは走れるので何か違うことをやりたいなら40分ほどでスパッと切ってしまうのもあり。ただその場合はカードを切ったらもう作戦の幅はゼロになってしまうリスクがある、という流れです。どっかで30分と経たずにピットに入っちゃったら2ストップはほぼ不可能です。

 GT300だと1時間20分近く走れる車もあるので、最初の給油をむちゃくちゃ前倒しにしてとにかく人がいないところを走り続ける、とかいう変則作戦もあるにはありますが、結局勝つのは普通にやってる人になりがちです。ドライバー交替は両クラスとも1時間を待たずにピットに入ったら基本は継続運転で2回目を2時間よりも手前でピットに入ってそこで交替。
 1時間を超えてピットに入るならスタート担当が既に最低1時間走って義務は終えてしまってるので、2番目の人が残りの2時間を走り切ることが多め。これならレース中盤に急に「うわ!これはFCYが出そうだ!」みたいな事案があった時に、発動前にピットに飛び込んでタイヤ交換と給油を急いでやってそのまま走り切れるので、自分が作戦立案者ならこっちの作戦を選びそうです。1時間より手前でそれが起きたらスタート選手で柔軟に作戦変更すれば良いですからね。

 それと知らなかったんですけど、今シーズンはサクセスウエイトに対して名前が同じ繋がりということもあって花王の男性向け製品ブランドであるSUCCESSがスポンサーに付いたんですね。頭皮ケア製品も多いサクセス、もはやこれはSUPER GTまるごとズラスポ化と言っても過言ではないかと()

・GT500クラス

 GT500は予選でENEOS X PRIME GR Supra(16kg)・福住 仁嶺がポール ポジションを獲得、福住は昨年の富士スプリント戦でもポールを獲ってるのでやっぱ速いなあと思うわけですが、そんなことより2位にau TOM'S GR Supra(40kg)・山下 健太がいるのが問題です(笑)auトムスはQ1でも坪井 翔が2位だったのでマジで速いと思われ、40kgのサクセスウエイトを乗せて一体どうなってるんだと思わされます。

 3位は開幕戦でタイヤ選択を外したらしいMOTUL Nittera Z(6kg)・千代 勝正/高星 明誠、4位に開幕戦のポールシッターKeePer CERUMO GR Supra(32kg)・大湯 都史樹/小林 利徠斗。利徠斗くんはQ1で1位でした。HRC プレリュードはModulo HRC PRELUDE-GT・大草 りき/イゴール オオムラ フラガの5位が最上位ですがなんかパッとしない印象。プレリュードは富士テスト初日にボンネットが凹んでましたけど、軽く調べたらテスト初日はへこんで翌日は直ってたらしいので、単なる強度不足か、マジで可変空力機構を狙って怒られたか、真相は不明ですね。


 そして決勝、エネオスルーキー・福住はスタートから快調で少しずつauトムス・山下を引き離す展開。その山下の後ろにはモチュール二テラニスモ(←語感が良い笑)・高星とキーパーセルモ・小林が続いていましたが、14周目の最終コーナーで小林が内側に飛び込もうとしてふらついてしまい、高星を吹っ飛ばす大失敗。高星は不幸中の幸いか10秒ほど失っただけで復帰できましたがトムスは遥か遠く。キーパーセルモはドライブスルーのペナルティーを受け、それでも上位にいましたがレース終盤になってこのぶつけた場所が壊れたためにリタイアになりました。

 この結果auトムスは追ってくる人がいなくなってむちゃくちゃ助かりましたが、前を行く福住だけは別次元の速さ。スタートからの1時間あまりで山下を20秒ほぼ引き離してしまい、さすがにこれは変な外的要因が無ければエネオス圧勝パターン。セオリー通り1時間1分ほど走って40周目にいずれもピットに入りました。ドライバーはそれぞれ大嶋と坪井に交代。
 ちょっとトムスの方が給油時間は短かった気がするけど両者にはピット後も15秒ほどの差があり、15周ほど走ってもこれは変化しなかったのでまあ何も起きないだろうと思うわけですが、このあたりから坪井が徐々に追い上げ始めて61周目には10秒差、最大差から見て半減しました。1分30秒台で安定して走る坪井に対して大嶋はなんとなくペースの上下幅が大きめで、基調的に差が縮小し続けているということは一時的な周回遅れ要因ではなさそうです。どこまで追いつくんや。

 中継映像では細かくタイム差を拾ってはくれないですが、73周目にターン1側のカメラで捉えた姿は推定5.3秒差。たぶんそこからさらに追いついて76周目・ちょうど残り1時間でauトムスが先にピットに入り、坪井のまま最後の1時間へ。エネオスルーキーはこの2周後にピットに入り福住に交代してピットを出ますが、出たらもう坪井は真後ろにいました。静止時間がトムスより2秒長かったことと、たぶん2周引っ張ったことも影響して差を詰められ、もちろんタイヤに熱が入る前に順位逆転。

 タイヤに2周の履歴差があるものの、ここから先は一方的な展開になってそのままauトムスが開幕2連勝。これで昨年の最終戦からGT500クラス3連勝です。2023年第7戦~2024年開幕戦でGT500史上初の3連勝を達成したばかりなのに、もう自分たちで2例目を作りました。前回は坪井はずっと乗っていた一方で相方が宮田 莉朋から山下になっていたので個人3連勝でしたが、今回はコンビで3連勝です。auトムスの勝率が異常すぎます(笑)


 あ、FIAカテゴリーの『制限時間+1周』に慣れすぎたか、サッシャがもう1周あるのかないのかちょっと曖昧な実況になってしまったために締めの実況がなんかすごい中途半端になってしまいましたね。サッシャさん、この連休はFODのF1実況とGTを掛け持ちしてすごく変な生活リズムだったと思いますが、さすがに頭が疲れてしゃべりたいことと口の動きが噛み合っていない様子も感じたので、体を壊さないかちょっと心配になりました。アナウンサーオタクなのでわりとこういうの気になって、体調が悪そうだなと心配する余計なお世話オジサンです(笑)

 エネオスは8秒差で2位。3位は当てられたけど調子自体はよかったモチュール二テラZが守り、12位スタートからめっちゃ追い上げたDENSO KOBELCO SARD GR Supra(12kg)・関口 雄飛/サッシャ フェネストラズが4位になりました。サードはニスモに追いつくところまでは行ったけどさすがに抜くには3時間ではちょっと足りませんでした。
 
・やはり勝敗を分けるタイヤ

 事後情報によると、トムスはスタートからの3セットを全て同じ種類のタイヤで通し、ヤマケンが乗っていた最初のタイヤには何かしら問題があって速く走れなかったものの、タイヤ交換後は調子が良かった模様。坪井も大嶋もタイヤにゴミが付いてペースが上下動することに手を焼いたようですが、影響が大きかったのは大嶋だったと考えられています。
 さらに、路面温度が下がって来るレース終盤はタイヤをソフト側に変更することがけっこう多いですが、トムスは同じタイヤで通してエネオスルーキーはソフトへ。結果的にソフトはよりゴミを拾いやすくて再度の反攻機会を作る足かせにもなったようです。トムスはたしかジェイムス ロシターがいた頃から彼の助言で『ピックアップが起きにくいセッティング』のような考えを徹底しており、まあとにかく車の基礎的な部分でまず半歩どころか一歩前に出ているのが最大の強みですね。

・利徠斗君、大反省

 開幕戦では当ブログで絶賛した、というか昨年のGT300時代から絶賛している小林利徠斗。注目度急上昇と言う感じでしたが今回はやらかしてしまい、レース後も反省の言葉だらけ。車の調子が良いので最終コーナーで不意打ちのように飛び込もうとしたんだと思いますが、飛び込み方がちょっと大げさに言うとカート的な車の動かし方に見えたので、少し車として無理があったのではないかとも感じました。
 GT500は大柄でそこそこの重量はあって、高速ではフォーミュラに近い動きなのに低速だとまあ箱車ですよね、という車の挙動なので、ダウンフォースはあんまりないけど軽いFIA-F4とか、全体にそれなりの鈍重な動きのGT3車両と比べるとけっこう特殊な部類だと思います。彼からするとじゅうぶんなグリップ力があるから行けると思ったら、ステアを入れてブレーキを踏んだ瞬間いきなり後ろが軽くなって『この動きは滑るんかい!』という、本人が挙動に不意打ちを食らったような状態だったのではないかと推察します。こんな動きは練習でやるわけがないし、開幕戦でも実質は他の人と争って無くて基本ずっと単独走行していたと思いますしね。
 ほとんどのドライバーは何かしらやらかして成長するものだし、ましてや彼のキャラクターですので多分当てられたニスモの人、結果としてリタイアで損したセルモの人を含めて注意はするでしょうけどたぶん今回は許してくれてるでしょう。デビュー戦で2位になったレース後にこんな車ぶっ壊したみたいな顔してる20歳なかなかいないですよ。ニスモの監督になった松田 次生も現役時代を考えるとあんまり人のこと言え、ゲフンゲフン。もちろん大事なのは繰り返さないことですし、たぶんそれをできる人間だと周りが思ってくれてる雰囲気ですが、次の実践機会がGTに限れば3か月も開いてしまうのは本人としてもちょっと残念でしょうかね。
※2位になった開幕戦のレース直後です

・Zはそれなり、プレリュードは・・・

 ニスモは3位とはいえトムスから40秒も離されてしまい、リード ラップでレースを終えられたのは8位まででした。プレリュードはというと#16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT(10kg)・野尻 智紀/佐藤 蓮の5位が最上位で、1位とは約55秒差。2024年の投入直後の状態のシビックは『とりあえずダウンフォースはどうやっても足らんからウイングを寝かせて直線番長で行こう!』というある種の開き直りで局所的な速さがありましたが、より総合的な強さを目指したプレリュードは今のところ熟成不足で何にもなれずただ中途半端な状態に見えます。

 『熟成って外観だけで全部同じ車でしょ』と思う方もいるでしょうが、GT500は基本的に外装ぐらいしか開発できる箇所が無いからこそ、逆にそこを起点に全ての車の動きが決まっていると言っても過言ではなく、車の最適化は簡単ではありません。例えばトヨタが『GRスープラ 坪井スペシャル』を限定販売し、それをベース車両にしたとして、坪井スペシャルのせいでGT500車両のノーズに数mmの違いが出たらもうそれで今のセッティングは全部パーになる、それぐらい繊細です。
 特に今のGT500は床下で多くのダウンフォースを生み出すため車高が重要ですが、空力特性が変化すれば走行中の車両にかかる荷重が変わり、接地荷重が変われば動的姿勢が変わるので最適な車高を実現するためのサスペンションのセッティングが変わり、サスペンションのセッティングが変わると路面の凹凸に対する車両の運動特性が変わり、運動特性が変わると旋回中の車高が変わり、旋回中の車高が変わるとダウンフォース量が変わり、、、と無限ループで話が繋がります。ここにさらに弾性体でもあるタイヤの構造も関係します。
 ここに絶対の答えはなくセッティングは常に何かを獲ると何かを失う関係ではありますが、より理想に近い最適範囲の値はある程度あります。みんながゼロからスタートしてれば手探りなので毎回誰かがあたりを引く、ぐらいの感じになりますが、既に正解に近い人が存在しているとそれに勝つには自分たちも毎回正解を引き当てないといけません。そのためにはデータと解析を繰り返す必要があるわけで、要するにこれが熟成です。
 GRスープラはベース車両を変更していないのでデザインライン以外の部分は空力特性が変化せず、開発が解禁された際にも変更した部分だけに集中してデータ比較・検証が可能だと思います。欲しい部分だけ手直しし、上手く行かなかったデザインは没にして最悪従来と同じ空力部品形状で型式認証を取ってしまっても大きく競争力は落ちない、データにブレも少ないからタイヤ評価・シミュレートに集中できて、予測が立つから持ち込みセットを外さない、こういう好循環がずっと続いてるように思いますね。その中で特にトムスが際立っています。

 日産は2024年にZからZニスモに僅かなベース車両変更を行いましたが、ニスモのタイヤ変更もあって2つを同時にやってしまったことで出遅れの一因になった気がします。2年経って、空力開発解禁で直したい部分は直して、ニスモがタイヤを理解して、開発車がちゃんとするからインパルもその恩恵を受けて、とようやくある程度のところまでは来れたように見えます。じゃあ何でGT-RからZの変更は効果抜群の即戦力だったんだ、というと今から思えばGT-Rの形状が素性として不利すぎて、車両形状変更の利益が大きすぎたんでしょうね^^;

 それと比べるとホンダHRCは車体が短い期間に2度も変わってそのたびにデータ蓄積の面で後退しているような状態。あの凹むノーズ、真相は分かりませんが実戦ではへこまないのであれば、へこんだ状態で走った富士テスト初日の走行データにはいくらか『使えない』ものが混じってしまった可能性もゼロではないと思います。
 ちょっと気が早いですが来年からタイヤがワンメイクになってタイヤ側の様々な数字が今までと全部変わってしまってゼロからの部分が増えるので、ホンダHRCはなんとか今年のうちに車体側の課題を最低限片付けておかないと戦えていない原因がどこにあるのか問題の切り分けがますます難しくなってしまう可能性を感じます。
 テスト機会が少ない中で3時間レースを全てのプレリュードが完走できた、というのは好材料ですがセパンが中止になったので中高速サーキットでのデータ収集機会が減ってしまいました。そのぶん遠征に時間と人手を取られることなく解析作業はできると思いますが、次戦までの長い時間でどこまで精度よく車づくりを考えられるのかは重要だと思います。

・GT300

 GT300は今回も読めないレースでした。予選ではSUBARU BRZ R&D SPORT(0kg)・山内 英輝が通算17回目のポールポジション獲得。2位のapr LC500h GT(32kg)・小高 一斗を0.748秒も上回るコース レコードでした。Q1でも井口卓人がA組2位のapr LC500h・小山 美姫に対して0.428秒差。B組最速だったSyntium LMcorsa LC500 GT(12kg)・河野 駿佑と比較しても0.24秒速く誰も届きそうにない速さでした。
 最高速で288km/hとかいうものすごい数字が出ていてかつてのHSV-010GTと直線で並べるんじゃないかとすら思えますが、まあ新しい6気筒エンジンと現状のBoP、前面投影面積の小さい車体はすごい最高速を生み出した感じです。

 ところが決勝当日の練習走行で左前輪がパンクするというちょっと不安な出来事が発生。富士で左側のタイヤがパンクする車って同じ症状を繰り返すことが多いんですが、練習で見つかったからどうにか対処して『先に発症しててよかった~』になるのか嫌でも注目になりました。そしていざレースが始まると山内は最初に小山を2秒以上引き離したものの、そこからは逆に差を詰められて15周目あたりにはもう背後に付けられる状況へ。直線が速いのでLC500hですら近寄らせてもらえなさそうでなんとか1位を守っていましたが、25周目

 やはりパンクしてしまいました。その前からタイヤはおかしかったようなので車両状態としてこのタイヤではどうやってもパンクしてしまう"穴"にハマっていたと推定できます。パンクした場所が悪かったのでまるまる1周ゆっくり走ったBRZ、結局は別件で駆動系が壊れて93周を走ったところでレースから脱落、27位で終えました。事実上新車みたいなもんなので色々起きるのは仕方ないですかね。。。

 これでリーダーはapr・小山になりますが、6位スタートから順位を上げていたリアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(4kg)・ジョアン パオロ デ オリベイラが真後ろに付いており、巨体の車両同士の1位争い。とはいえLC500hも直線は速いのでオリベイラは無理せずじっくり構えている様子で、開始から55分が経過した33周目に先に小山がピットに入って一旦この争いは終わりました。その直前の最終コーナーでオリベイラが内側に飛び込みましたが、ピットに入るから無理に抑えなかったためでしょうね。あ、aprのリポート見たら無理せんかったって書いてあったわ、当たっててよかった(笑)


 aprはここで第3ドライバー登録されているチャーリー ブルツがSUPER GTデビュー、元F1ドライバー・アレクサンダー ブルツの息子さんですね。ここからGT300はピット サイクルがバラバラなので実質的な順位はしばらく分からなくなりますが、ブルツにとってはデビュー早々に大事な仕事です。
 aprと争っていたリアライズGT-Rは1時間8分ほど経過した41周目にようやくピットに入ってオリベイラから木村 偉織に交代、映像検証から推定する給油時間はいずれも34秒程度で差が無かったと思いますが、aprはGT300でよくある給油→4輪交換の順序。リアライズ近藤さんチームはGT500と同じタイヤ→給油→タイヤの順で移動時間の無駄がなく、交換作業自体もちょっと早いので静止時間全体ではたぶん6秒ぐらいこっちの方が早かったと思います。aprの事後情報だとタイヤ交換は何かしら失敗したらしく、この静止時間の差が影響して木村がコースに戻ったらブルツのだいぶ前方にいました。
 ただこの時点でまだ分からなかったのは、ピット前の時点でオリベイラの数秒後方にいたGreen Brave GR Supra GT(16kg)・野中 誠太がまだピットに入らず走り続けていたことで、ここは何か作戦を持ってそうだし周回タイムも良いため優勝争いの中に入っていそうという印象でした。ところが彼らがようやくピットに入ろうと考え始めた45周目にGT500車両の停止に起因したFCYが出てしまいピット入り口閉鎖。グリーンブレイブはこの時には燃料が無くなる寸前だったのでFCY解除まで待てず翌周にピットへ、ペナルティー確定。
 ところが運の悪いことにピットに入った約15秒後にFCYは解除。FCYピットによる損失逓減の恩恵をめいっぱい受けられない上に60秒停止のペナルティーを食らうという泣きっ面にハチの状況になりました。結局グリーンブレイブは一生懸命に追い上げてこのレースを9位で終えましたが、外的波乱が無ければ勝ってたような気もしますね。タラレバですがガス欠を装ってFCY中にわざとコース端を低速走行して待ってたら、、、というのは結果論。まあFCY中の不必要な減速もペナルティー対象ですけど。

 これで競争相手が1台消えたリアライズGT-R、木村偉織もまた1時間6分ほど走って残りが47分を切った76周目に2回目のピットへ。大エース・オリベイラが2度目の登場となって、その後も最後まで安定した走りを見せました。最後はたまたま2位との間にauトムスがいる状態でチェッカーを受けてくれたので2位以下が記録上は全員周回遅れ。GT300で唯一107周を走ってリアライズ日産メカニックチャレンジGT-Rが優勝、気づいたら2023年第2戦富士以来3年ぶりの優勝でした。

 2位でチェッカーを受けたのは8位スタートだったseven × seven PORSCHE GT3R EVO(8kg)・スヴェン ミュラー/藤波 清斗でしたが、ミュラーが1周目のターン13で前を走るLMコルサLC500・河野をコツンと押してしまったため10秒加算のペナルティー。SUPER GTにはピット時に加算ペナルティーを消化する仕組みが無いのでこれを2時間半以上持ったまま走った結果、2位チェッカーながら10秒足したら僅差の4位になりました。
 押されたLMコルサはこのレース16位。押された際には4つ順位を下げただけでしたが、LMコルサ発信のレース後情報を見てみるとタイヤがよろしくないのかセクター3で遅くてこの後も抜かれまくる展開になり、最後にはタイヤ内圧低下の異常が認められたため予定より早く1回目のピットへ。これで戦略的にも制約を受け、あまりペースも上がらずの16位だったようです。当てられた件の恨みつらみは特に書いてなかったですね。ミュラーからするとひょっとしたら『当たったのは悪かったけどスピンさせたわけでもないし10秒加算されるほど?』と思ったかもしれません、完全に想像ですけど。

 これにより繰り上がりの2位は毎度おなじみLEON PYRAMID AMG(22kg)・蒲生 尚弥/菅波 冬悟/(黒沢 治樹)、ここはもう『タイヤ戦略やって来るぞ!』みたいな思い込みを持たれすぎてる感じがありますが、基本的にはリアライズコンドーと同じ発想で前に人がいたら無理せず、いなくなったら頑張って空いた場所を走り引っ張り気味にする作戦。43周目・83周目といずれも他陣営と比べてかなり遅らせたタイミングでピット作業を行いました。2回目は残り40分を切ってたので見ていて『さすがにそこまで引っ張らなくてもいいのでは?』とは思いましたが、たぶん今日のGT-Rにはどのみち追いつけなかったと思うので最善の結果だったと思います。
 そして3位は2戦連続でapr LC500h。小山からブルツ、そして小高 一斗に繋いで3人で回しペース自体は良かったんですが、2回目のピット作業もまた何かしらタイヤ交換で失敗したらしく、たぶん2回で合計10秒は失っているでしょうからわりと大きな影響になりました。ドライバー選手権は16点×2回で32点、現在2位です。ブルツの走りは全然映らなかったし、映っててもほぼ単独でどっちみちよく分からんかったでしょうけど、どんな選手かもうちょっと見てみたかったですね、次の出番に期待。

 じゃあ2連続3位よりもポイントが上なのは誰だ、というと開幕戦勝者のD'station Vantage GT3(50kg/給油-1)・藤井 誠暢/チャーリー ファグで35点。サクセスウエイトが既に51kgを超えているためサクセス給油リストリクターが適用されましたが、予選11位から決勝は4つ順位を上げて7位。去年はタイヤに負担がかかりすぎたっぽくてパンクした富士で今回はしぶといレースを見せました。こういうレースができるようになるとチャンピオンを獲れるようになるんですよね。
 あとGT300で何が凄かったって、健康ケーズフロンティアWMニルズGT-R(0kg)・井田 太陽/ジェイムス プル/藤原 大暉が15位で走り切ってドライバー選手権ポイントを1点獲得したこと。チームとして2016年の第7戦(公式表記上は第3戦=中止となった大会の代替レース)で10位に入って以来ほぼ10年ぶりの快挙です。何で中継でもっと健康GT-Rを取り上げないのか不思議で仕方ないですね、スーパーアグリが入賞するぐらいの大騒ぎですよ()
 健康という名称がまだしっくりこないですが、植毛→脱毛と来て、アーツ銀座クリニックがスポンサーではなくなったところで次のネタを考えた際に『みんなの健康を願おう』という、全然面白くない七夕のお願いみたいな結論にたどり着いたようです。七夕飾りや神社の絵馬では平凡ですがレース業界では1周回ってなかなかの記憶に残る名称、なのかスベってるのかはあんまりよく分かりません、あ、この記事もスベりましたね(笑)

・円熟のGT3

 とうとう市販車も販売が終了した日産GT-R、GT3車両をいつまでサポートしてくれるのか気がかりではありますが、そんな年季の入った車でもきちんと優勝できるのは長年の経験・安定感によるものでしょう。レオンAMGもそうですが、セッティングの知見という点では誰よりも多くを有しており長時間レースでは特に効いてきます。車の信頼性も高いですし、特にGT-Rはそうですけど奇策を使うことが少ない、というかそういう選択肢がない車なので普通に戦って、結局それが一番速いですね。
 もっとも、これもまた気の早い話にはなりますけど今はコンドーレーシングはヨコハマタイヤの開発担当という側面もあって、良い物があればどんどん入れて行くのでタイヤで戦えている面もありますが、これが来年にワンメイクとなるとそういうわけにも行かず、いくらBoPがあるとは言ってもGT-Rでどのぐらい戦えるのかなというのは気になるところです。
 ちなみに、ひと昔前のイメージだと『GT3車両=直線が速い』『GTA-GT300=コーナーが速い』というのがありますが、実際はだんだんとGT300のBoPを重くてパワーのあるGT3寄りの数値に寄せて行ったこともあり、今のGTA-GT300は多くが軽量で俊敏というかつてのイメージから遠くなりつつあります。車高の制限等もあってダウンフォースをそこまで稼げないので、特に富士ではそれよりも空気抵抗を減らして最高速で稼ぎに行きたいので、エンジン性能がモノを言う中間加速は別として最高速だとGT300規定の方が伸びが良くて速い傾向にあります。
 逆にGT3車両は車体がデカい車が増えたせいもあって、大排気量ターボとかで加速は良くても高速域で空気の壁に当たってしまい、逆にデカい分だけダウンフォースを稼ぎやすいので高速コーナーは速くなっています。GT300規定は開発ができる分だけ伸びしろ込みでBoPで押さえつけられる部分もあるので、もちろん車を作る方も色々手を加えてくるわけですがそうすると過去のデータでは捕捉しきれない新しい問題が起きることもあり、このあたりが結果が安定するGT3ユーザーと、速かったり遅かったりするGT300ユーザーの差になっているのかなと思います。
 もっとも、GT300ユーザーは基本的にみなさんそういうのを込みで作るのが面白いからやっているわけで、今のBoPは一時期の極端に車両規定で個性が出すぎている時代からすると、ある程度個性を残しつつもけっこう良い勝負になるようになってきてるように私は思いますね。まあそれもほんのちょっとした匙加減ですぐ崩れもするんですけど。
 
・BRZ、確かに速いが・・・

 そんなGT300規定でも孤高の存在、結果には繋がりませんでしたがこのレースはやはりBRZが話題の中心だったと思います。最高速や予選タイムを見る限り、富士では単独だとちょっと速すぎてBoPがもうちょっと厳しくなっても不思議ではないように見えました。一方でその増えた負荷が諸刃の件になっているであろうことは想像に難くなく、まず完走できないんだからこれでいきなりBoPを厳しくもしにくそう。私なんかが言うまでもない当たり前の話ですが、次戦もまた富士なので次こそはまず勝ちたいところです。
 そもそも車体が小さいBRZは挙動が神経質でちょっとしたセッティングやタイヤ選択、路面温度の変化で別物のように早くも遅くもなる癖があると思います。今回のタイヤパンク問題もそうした中でテストや事前のシミュレートでは把握しきれなかった課題が出たんじゃないかと思いますが、エンジン変更で速度域や挙動が変わったことでほとんど新車だと思うので、ファンの方からすると我慢の時間にはなりますが結果を出すのは言うほど簡単ではないかもしれません。
 それと、またまたまた来年の話に飛びますけど、BRZって車両特性が違いすぎるのでワンメイクのタイヤでちゃんと性能を発揮できる車になるのか、これまたちょびっと気にはなってるんですよね。今は事実上BRZ専用になってるダンロップのタイヤがハマったりハマらなかったりしてるわけですが、既に決まっているという来年からのタイヤ屋さんもかなり難しい仕事になりそうです。チャンピオンに手が届くかどうかは別にして、とりあえず6気筒化+ツボにハマったダンロップによる「いや~これはGT300じゃなくてGT400、いやGT450ですね。」ぐらいのレースを残りのシーズンで1回は見てみたいなと思います。

・FCYでガス欠

 最後に、今回グリーンブレイブはピットに入ろうとしたらFCYが出てしまい、結局FCY中にペナルティー覚悟でピットに入るしかありませんでした。これを見て「不公平では?」「せめてFCY中は5Lだけ給油可とか救済すべきでは?」といった意見を持った方もいらっしゃると思います。もちろんそうした別の制度設計も大事なんですが、現状としてはリスク管理の一環として『万が一に備えて燃料空っぽの数周前、ピットが閉鎖されても詰まない時点でピットに入っておく』というのはセオリーになっています。
 過去にも2016年の富士でセルモがSC導入でピットに入り損ね、この時はそこに計算違いやら諸々重なってSC解除後にガス欠した、ということがありました。何度かのこうした経験から『万が一に備える』というのはある程度みんな意識として持っているはずなので、グリーンブレイブの受けたペナルティーは不可抗力で理不尽に見えますが、一方でそういうリスクを背負った結果、あるいは内情は分かりませんがひょっとしたらリスクを安易に見てしまった結果とも言えます。
 さらに良い規則を求める意見をするのは当然良いことだと思いますが、それとは別に背景としてそういう話はありますし、それなりに過去に色んな規則でその都度色んな課題を解決しようとしては別の問題が浮上して、それをある程度包括していく中で設定・定着したのが今の規則なので、一方的に運営だけ非難している方がいらっしゃればそれは違うよということはお伝えしておきたいですね。

 次戦は間がめちゃくちゃ空いて8月1日・2日に富士スピードウェイでの300kmレース。スプリントはとりあえず昨年1回限りで元に戻りました、もしまたウエイト無しのスプリント、とかやってたらトムスのチャンピオンがここで決まってしまうところでしたね(笑)

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