NASCAR 第17戦 サンディエゴ・事前情報

NASCAR Cup Series
Anduril 250 Race the Base
Qualcomm Circuit(San Diego,California)
3.4miles×75Laps(20/20/35)=255miles
Goodyear Racing Eagle Tire Code
D-5242(both sides)
Total Sets:10(6 new race/1 qualifying transfer to race/3 practice)

 NASCAR カップ シリーズ、第17戦はサンディエゴ。アメリカ合衆国建国250周年記念、カリフォルニア州サンディエゴの西端にあるコロナド海軍基地内に作った特設サーキットを走るロード コース戦です。コロナド海軍基地はちょっと調べた感じや地図の見た目からすると元々砂州だったような場所を埋め立てて造った土地でしょうかね。
 軍用施設で自動車レース!?なんて思いますが調べてみるとここでは1997年~2016年にコロナド スピード フェスティバルというクラシックカーのイベントを開催していて、2回だけですがイベントの一環でマツダ MX-5 カップの公式戦も開催したことがあるので実はすでにレース開催実績があります。今回使用されるサーキットは当時よりも大きくて1周が3.4マイルもある仕様、命名権契約がなされているのでクアルコム サーキットという名称になっています。

 本物より一足お先にeNASCAR Coca-Cola iRacing Seriesでレースが開催されました。形状としてはザ・市街地サーキットという形状をしており、スタート/フィニッシュ直後のターン1は右の高速コーナー、これを出ると短い直線が急激な下り坂になっていて車が前につんのめりながら減速し左の90°コーナーであるターン2に入ります。この急な下り坂、走り方によっては車が4輪とも宙に浮いてしまうのでなかなかカッコいい写真が撮れると思います(笑)

 それはさておき不安定な中でコースの左端から右端に移動してターン2のブレーキングに移るのでかなり厄介ですし、タイヤが減ってくるとターン1自体が難易度の高いコーナーになります。これを抜けると短い直線を経てまた鋭角な左90°のターン3、次のターン4は右の90°ですがこちらは角が取れた形状で中速コーナーになっています。
 続く左のターン5はこれまたおおよそ90°ですが長く回り込む形状の中速、ここからまた短い全開区間を挟んでターン6は右の鋭角な90°コーナーですが、減速開始地点は少しだけ道路が左に曲がってるのでヨーが残ったまま減速する地味~に面倒な設計です。そのターン6~9は小さなコーナーがこちゃこちゃと続いており、10・11は壁スレスレをできるだけ直線的に抜けたい高速コーナー。ここで変に仕掛けると絶対事故ります。
 その先も似たような90°コーナーとシケインがあり、ターン15の先にはバスストップ状のシケイン、これはターン数に含まれていません。ターン1を逆さ向きにしたような左高速コーナー・ターン16が最終コーナーとなっており、ピットはターン16の手前で右に分岐。シケインが無いとスタートフィニッシュ前後が高速になりすぎるのと、右側ピットでレコード ラインも右にあるからシケインが無ければピット入り口での衝突事故も懸念されるので、設置の必要性が出たと思われます。ピットはワトキンスグレンと同じ右側ピットになるのでクルーは普段と動きが逆になってややぎこちなくなります。

 時々すごく幅の広い空間もあったかと思えばまた道幅が狭くなり、路面の凹凸も激しくて舗装もコロコロと切り替わるのでドライバーにとっては1周に渡って全く気が抜けないレイアウトとなっています。抜けずにイラッとしてくるとついつい内側に飛び込みたくなる形状でもあるので、終盤は荒れるおそれがあります。カップシリーズの決勝はここを75周、航続距離は不明ですが加減速の多いロードコースでは90マイルも走れないと思うので23~25周ぐらいかなとザックリ考えています。
 ただそれよりもタイヤの摩耗が問題になると予想されています。グッドイヤーはロードコースで昨年からずっと使っている同じタイヤ・D-5242を持ち込みますが、けっこうタイヤがキツイ模様。ロードコースならステージ終了の2~3周前にピットに入ってステージをフリップするのがお馴染みですが、今回は『そもそもステージ終了前までタイヤがもたないのでは?』『1周3.4マイルもあるから2~3周古いタイヤを使うだけでもリスクでは?』という見解もあり、練習走行でどこまで見極められるかが重要です。
 でも練習走行は50分のセッションが1回だけ、初開催でもわりと制約は厳しくなっています。結果としてその1回の練習の結果を受けて、NASCARは当初予定よりも決勝で使える新品タイヤを1セット追加すると発表し、当初5セットだった新品が6セットに増量。これに中古から持ち越した1セットを加えた計7セットが決勝で使えるタイヤ総数になります。練習用に3セットも渡されてるけど使い切ることってあったんだろうか(笑)

 なお今週は全国シリーズが全て開催されますが、255マイルのカップシリーズだけでなく他のレースもイベント名は250になっています。当然250マイルではなく、250kmというわけでもなくて単に建国250周年に引っかけてるだけです。

・ちょっとしたデータ

 初開催なので過去のデータはありませんが、2022年のGen7車両導入以降に開催されたロードコース戦で平均順位が最も良い選手は、言うまでもないですがシェイン バン ギスバーゲン、平均6.71はぶっちぎり。平均順位が15を下回っている選手は彼を含めて9人で、上から順にクリス ブッシャー、タイラー レディック、チェイス エリオット、クリストファー ベル、マイケル マクダウル、ウイリアム バイロン、A.J.アルメンディンガー、タイ ギブスとなっています。10を下回ってる優秀な人はレディックまでの3人、またベルは左手首を骨折していることから代役としてブレント クルーズが控えており、クルーズは練習走行でもベルの車でちょびっと走行しています。
 一般的なロードコースとは性質が明らかに異なり、しいて言えば一番シカゴ市街地に似てるんじゃないか、というところで昨年のシカゴのレース結果を見てみると、優勝はもちろんSVG。2位からギブス、レディック、ハムリン、そして亡きカイル ブッシュが続いていました。6位からアルメンディンガー、ライアン プリース、アレックス ボウマン、オースティン ヒル、ロス チャステインのトップ10。この時マクダウルは31周をリードしたものの、スロットルが引っかかって戻らなくなる不具合で離脱、バイロンもクラッチの不具合で開始早々にリタイアでした。
 3回だけ開催されたシカゴで全てトップ10フィニッシュだったのは現役選手でギブス君だけ、シカゴの成績上位は概ねここまでに挙げた名前の人たちなので、やはりロードコース常連組による『SVG対その他全員』という構図になりそうです。
 
・レース前の話題

 契約の話を2つ。まずRFKレーシングがブッシャーと複数年の契約延長で合意したと発表しました。ブッシャーは若い頃に地方レースで結果を出してドライバーとしての成功を望みながらも、一時はラウシュ フェンウェイ レーシングで練習走行の際の作業を手伝うなどステアリングではなく工具を持っていた時期もあり、そこからデイビッド レーガンの指導も受けつつ育成ドライバーとして契約、ARCAシリーズへ参戦できるようになって、その後は順調に上級カテゴリーへと進んで行きました。

 2020年にチームに戻って来て今年で既に7年目ですが、さらなる契約延長で若い頃からお世話になったRFKとともに戦い続けることになります。ちなみに共同オーナーのブラッド ケゼロウスキーによればブッシャーに対しては他陣営からもけっこう興味が示されていたので契約延長は簡単ではなかったそうです。

 次に、先週ジョッシュ ベリーと契約を延長しないと発表していたウッド ブラザーズ レーシング、来シーズンのドライバーとしてジェシー ラブと契約したことを発表しました。昨年のオライリー オート パーツ シリーズでチャンピオンを獲得、遡れば2020年のARCA メナーズ シリーズ ウエストで史上最年少となる15歳でチャンピオンを獲得するなど数多くの記録を打ち立てて来たラブ。リチャード チルドレス レーシング期待の若手として来年からカップシリーズに昇格するのでは、という噂がありましたが、まさかのウッドブラザーズでした。
 RCRはラブと何かこじれたというよりは、彼らの交渉術や将来的な展望がウッドブラザーズが提示したそれに及ばなかった、という感じではないかと思います。RCRはレディックも大事に育てて来たのに23XI レーシングにサッと横取りされてしまい、入れ替わりでカイルが加入することにはなったものの将来性ある若手を1人流出してしまいました。
 RCRはもしカイルの急逝が無ければ契約延長を発表する予定だったということですので、ラブとすれば2027年もRCRからカップシリーズにフル参戦することはできなかったと考えられます。カップフル参戦をまずは達成したいラブに対してウッドブラザーズが声をかけ、結果としてRCRのシートが空いてしまったいましたが、その前にはもう大筋で話が固まってたかもしれません。それなら空いた33号車にラブではなく中堅のヒルが乗ってるのも合点が行きますね。
 RCRも現実問題としていつまでもカイルの追悼の気持ちだけでは従業員さんも食べていけませんので来年に向けて前に進まないといけませんが、現状ではヒルをそのまま起用し続けるのか、あるいは誰か引っ張ってくるのか、その場合は実績ある選手か、思い切って夢のある若手か、そういった戦略を考えないといけません。オライリーでいくら速くてもコナー ジリッシュみたいに苦戦する人もおり、一方でオライリーをすっ飛ばしたカーソン ホースバーが活躍してますから、今のカップで力を発揮できる選手というのをどうやって見極めるのかは全チームにとって共通の課題ではありますね。
 余談ですがラブとジリッシュは個人的にはけっこう仲良しらしく、CWネットワークの企画で一緒にユニバーサルスタジオに行ってました。たぶんカップシリーズの大変さも教えてくれてる、というか下手したら愚痴られてるんじゃないかと思います。

・Craftsman Truck Series Navy 250

 いよいよ始まるNASCAR基地祭り(?)、クラフツマン トラック シリーズはレイン リッグス、ケイデン ハニーカット、チャンドラー スミスの3人を軸にした優勝争い。レースは残り3周、タイラー アンクラムが最終のターン16を曲がり切れずピット ウォールに衝突。ここはSAFER バリアーではないので車がぶっ壊れる上に、この時はピットウォールも壊れてしまったので修理のためレッド フラッグに。
 再開後の残り2周でのリスタートもターン3の先で多重事故のグッダグダになってオーバータイムとなると、そのオーバータイムではリスタート直後のターン1でハニーカットがルースになって壁に当たり、これに詰まったスミスもスピンしてクラッシュする惨劇。これでリッグスがリーダーになりますが燃料が少ない上にタイヤも厳しくて防戦一方。ここにさっきまで上位にいなかった普段は見ない顔ぶれが相次いで攻勢をかけ、シリーズ通算7戦目の19歳・タイラー ライフがリーダーとなっていよいよ最後の1周へ。
 リッグスとの激しい争いによりライフの車はフェンダーとタイヤが干渉してものすごい白煙を上げつつもリードを守り、リッグスは至近距離で当てるぞ~当てるぞ~、という感じの威圧感。そして迎えたターン15の先のシケイン、リッグスが内側に飛び込むと見せかけるフェイントをかけるとライフは意識しすぎてしまい、シケインをきちんと曲がれず不通過に。これでライフはシケイン出口でペナルティー消化のため一時停止することになり、車はだいぶボロボロですがリッグスが逆転して優勝、今季4勝目を挙げました。ここ4戦で3勝です。


 レース後のリッグスは「"レイン バン リグスバーゲン"がやってきましたよ!」と、セント.ピーターズバーグに続いての初開催市街地レース連勝でご機嫌なようでした。2位からダニエル ヘムリック、カズ グラーラ、ランドン ルイス、タイ マジェスキーのトップ5。ルイスはトラックシリーズ初のトップ5フィニッシュでした。
 またジミー ジョンソンは途中ラップ リードも記録しましたが最終ステージに入って苦戦、結局電気系トラブルで30位、ラムに乗ったジェイミー マクマーリーもクラッシュで消えて34位でした。ジャスティン マークスはターン16でぶつけてしまい2周遅れの25位、まあなかなか車を無傷で持ち帰るのが困難なレースでした。

・O'Reilly Auto Parts Series United Rentals Drive to Serve 250

 1周目にいきなりマンホールの蓋が外れる市街地レースあるある、なんて笑ってもいられずコリー デイの車に命中してグリルを突き破り、中にあるラジエーター関係の部品が破壊されました。NASCARはコーションを出して修理を試みますが、そんな簡単に直るはずもなくレッド フラッグを出す羽目に。ここでNASCARは例外的な措置としてデイの車にだけレッドフラッグ中の修理を認め、さらにコーション中に失われた周回を取り戻してリードラップに戻ることも許可しました。
 完全に運営側の落ち度であるため認められた例外には他陣営も称賛したようですが、デイは周回を取り戻すために走行していたところ、ちょうどコースを逆走して撤収するところだった作業車両と正面衝突しそうになり肝を冷やす場面も。デイはこの後に別件でスピンしたり、ピット速度違反でペナルティーを食らったりむちゃくちゃでしたがそれでもこのレースを10位で終えました。
 大荒れのレースはこれで終わらず、ポールシッターのクルーズは序盤をリードしていたもののグリルに付着した大きなゴミが原因で緊急ピット。35周目のリスタートではターン1でサム メイヤーがうっかり内側の壁に当ててしまい、弾かれて外壁に突っ込んだので後続の大多数が巻き添えになる多重事故も発生。ターン16とターン1が危なすぎる(笑)


 41周目にはこの時点で2位を走っていたパーカー レツラフがピットに入ろうとしていたのに、シケインのタイヤ バリアが接触で動いたために発生したコーションでピットが閉まってガス欠、最後尾リスタートに転落する不運。お腹いっぱいなぐらいに色々起きたレースは残り14周、カーソン クワポーがテイラー グレイを抜いてリードを奪いますが、コーションを挟んで残り3周、グレイが今度はクワポーを狙って激しい争いとなり、ターン12で当ててしまいました(´・ω・`)
 これでクワポーは4位転落、一方グレイに対してはヒルが迫りました。最終周まで持ちこたえたグレイ、しかしターン3の入り口でヒルが内側に飛び込むと、ちょっと当てつつも抜き去って行ってこれで勝負あり。ヒルが今季2勝目・通算16勝目、ロードコースでは自身初の勝利を挙げました。あまりに喜びすぎてチェッカー後に広い場所でバーンナウトしてたらパンクして自走不能になってしまい、レッカー移動でビクトリー レーンにやってきて喜びを爆発させました。

 RCRにとってもカイルの急逝後初めての勝利。ラブも抜けちゃうのでヒルとするとレース人生における千載一遇のチャンスであることも事実なので、この勝利には様々な意味があっただろうと思います。2位テイラーグレイ、3位シェルドン クリード、押されたクワポーは仕返しすることが出来ず4位、5位はサミー スミスでした。ラブが6位、レツラフがガス欠の悪夢から挽回して7位に入っています。
 また、このレースを15位で終えたジェレミー クレメンツはこれがオライリーシリーズ通算548戦目でした。これはケニー ウォーレスを抜いてシリーズ史上最多出場記録を更新する偉業、家族経営であるジェレミー クレメンツ レーシングからその大半のレースに出場。通算2勝、トップ5フィニッシュすらたった7回しかなくドライバー選手権15位前後の選手ですが、父親とともに歩み続けて達成された大記録です。ちなみに現役ではオールガイアーも522戦出場で歴代4位なんですが、オールガイアーの方が先に引退しそうですね^^;

・カップシリーズ予選

 ブッシュ ライト ポール賞はやっぱりギスバーゲンでした。2分14秒788はオライリーでポールだったクルーズより0.5秒ぐらい遅く、トラックシリーズのハニーカットよりも0.06秒遅くてこの週末3シリーズで最も遅いポールタイムです、いかに今の最高峰シリーズが単純な車の速さを求めて設計された車ではないのかがよく分かります(笑)
 2位は0.156秒差でホースバー、3位からライアン ブレイニー、ゼイン スミス、トッド ギリランド、ダニエル スアレス、ライアン プリース、ジリッシュ、マクダウル、ヒルのトップ10。ギブスが11位、スポット参戦のコリー ハイムが13位、アルメンディンガー、ブッシャー、レディックが15位~17位に並びます。
 注目の元F1ドライバー・ケビン マグヌッセンは21位とまずまず、ハムリンは26位、ジョンソンは完全にミスったため36位、ベルはそこからさらに1.2秒離された37位でした。本人はまたとない機会であるレースを欠場することが残念でできれば走りたいようですが、さすがに運転の制約が大きすぎるのと2シリーズを見ても事故るとけっこうヤバいトラックなので、さすがに出場は厳しい気がします・・・

 決勝ではやはりタイヤの摩耗が大きな焦点で、オライリーのレースまで多くの車両が周回を重ねたことで路面にラバーが乗ってタイヤ摩耗が抑えられているのかが戦略に影響すると予想されています。練習走行では『6周したらタイヤのコードが出て来た』というぐらい摩耗が酷くてステージフリップとか考えてる場合じゃなかったですが、オライリーのレースではわりと行けてしまったドライバーもいたということで、車のハンドリングバランスを含めて練習走行段階との違いにも適応していく必要があります。

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