NASCAR 第15戦 ミシガン・事前情報

NASCAR Cup Series
FireKeepers Casino 400
Michigan International Speedway(Cambridge Township,Michigan)
2miles×200Laps(45/75/80)=400miles
Goodyear Racing Eagle Tire Code
Left:D-5284 , Right:D-5298
Total Sets:8(6 new race/1 qualifying transfer to race/1 practice)

 NASCAR カップ シリーズ、第15戦は1周2マイルの広大なトラック・ミシガン インターナショナル スピードウェイ、見ての通りカジノが冠スポンサーのファイアーキーパーズ カジノ 400です。2009年にミシガン州エメット チャーター タウンシップという場所で開業したデッカイカジノとホテルの併設施設らしいですね、興味ないから知らんけど(笑)
 ミシガンインターナショナルスピードウェイは当ブログではミシガンと表記しますが、日テレG+では所在地とされる地名・ブルックリン村から取って『ブルックリン』と表記されました。でも実は厳密に言うとスピードウェイがあるのはジャクソン群ブルックリン村ではなくお隣のレナウィー郡ケンブリッジ タウンシップ、というどっちみち聞いたことのない場所になるんだそうです。今回調べものしてて初めて知りました。
 最大バンク角が18°のDシェイプ オーバルで、バンク角だけ見たらそんなに高くはないですが旋回半径が大きいので非常に高速のトラックです。2007年まではNTT インディーカーシリーズも開催されていましたが、これが無くなってからは主要なイベントはほぼNASCARだけって感じですね。そのNASCARは1969年のトラック開業以降1973年を除いてずっと年間2回開催されてきてけっこうな歴史があるんですが、2021年以降は1回開催になりました。今回が通算で109回目のカップシリーズ開催です。
 ちなみに1969年の最初のレースでは決勝レース距離が500マイル、2か月後に開催されたレースは600マイルの設定でした。ただこの600マイルは天候不良で短縮され、翌年以降は400マイルになってミシガン600は幻の存在です。

 ステージ周回数は45/75/80の構成でステージ1だけは給油が不要。ダウンフォースが欲しいのでクリーン エアー重視の戦略を採用したいところですが、そこに今回のグッドイヤーのタイヤが立ちはだかります。左側のタイヤは既に今年の1.5マイルで頻繁に使用され、先週のナッシュビルでも使ったD-5284ですが、右側は新型登場。昨年のレースではデイトナ/タラデガで使用したスーパー スピードウェイ用の転用だったんですが、グッドイヤーの説明だと今回はミシガンに最適化されたほぼ専用品のようです。彼らの説明では

『ミシガンはNASCARのスケジュールの中でも最速のサーキットの一つで、滑らかな路面と複数のレーシング グルーブによりドライバーは様々なライン取りが可能です。高速走行は右側のタイヤに大きな負荷をかけるため、その負荷に耐え、チームの戦略オプションを増やすように設計された新しい右側用タイヤを用意しました。』
 
 ということなんですが、戦略オプションを増やすというのがどういう意味かちょっと謎。元々ミシガンは速度域は高いけど旋回半径自体が大きいので、持続的な高荷重によってタイヤの温度は上がりやすい一方で、無理にこじったり減速荷重がかかったりはあまりしないのでデグラデーションはそれほどでもない、という特性があります。舗装も比較的滑らかです。NASCARとグッドイヤーはあまり柔らかいタイヤにすると壊れまくって困るけど、かといって頑丈すぎると追い抜きができないので可能な範囲でグリップ力向上と摩耗の促進を狙っており、たぶん今回もそういう方向性だろうとは思います。
 摩耗が少なければ、たとえばステージ2以降は燃料がある限りある程度引っ張ってからピットに入って右側だけ交換、みたいな変速戦略も使えることになりますが、逆に摩耗が激しいなら無理に攻めすぎずにロング ランを安定させるセッティングと走り方が必要になります。チーム側にはある程度の事前の情報はあるでしょうが、もちろん初めて使うタイヤですので限られた練習走行でどのぐらい摩耗してどういう戦略が取れるのかをすぐに学び取る必要があります。

・ちょっとしたデータ

 Gen7車両導入以降の4年間、ミシガンの優勝者は2022年から順にケビン ハービック、クリス ブッシャー、タイラー レディック、デニー ハムリン。ミシガンの現役最多勝利はハムリン、カイル ラーソン、ジョーイ ロガーノがそれぞれ3勝ですが、このうちGen7で勝ってるのはハムリンだけです。ラーソンは2016年秋のレースで優勝し、これがカップシリーズ初勝利。ミシガンで初勝利を挙げた選手は過去にラーソンと1991年のデイル ジャレットしかいません。ラーソンはここからミシガンで3連勝を達成し、当時は『2マイル=ラーソン』を印象付けました。
 ただ現在のミシガン最強はハムリンで、過去4回のレースで優勝1回、3位が2回、最も悪いのが9位。唯一の4戦全てトップ10フィニッシュで平均順位は驚異の4.0です。続いて成績が良いのはブッシャーで、4戦中3戦が6位以内となって平均順位6.3。RFK レーシングはここで良いセッティングを見つけているのか、共同オーナー・ブラッド ケゼロウスキーも4戦中3度のトップ10で平均8.5と好成績を挙げています。
 ちょっと意外なのはタイ ギブス、昨年までパッとしない成績だったわけですがミシガンは2年連続で3位に入っており平均順位が6.8、今年になってやっと覚醒した感がある中でここだけは突出して好成績でした。また、先週も似た話を書きましたがゼイン スミスは2年連続で7位に入っています。

 逆に不思議と相性が悪いのはクリストファー ベル、ミシガンは通算7回出場して最高位が13位、しかもなぜか3度も記録。彼が一度も10位以内に入ったことが無い開催地はミシガン以外にシカゴ市街地とフォンタナしかなく、通算の平均順位でもミシガンより悪いのはこの2か所とタラデガ、デイトナのみ。フォンタナはもう使ってませんので事実上普通のオーバルでミシガンが最も苦手です、予選ではちゃんと速いから展開なんでしょうけどね。チェイス ブリスコーとアレックス ボウマンも似たような話で過去の成績が非常に悪いです。

 クリーンエアーが重要なのは優勝者の予選順位からもなんとなく見てとれ、これまでの108戦ではポールシッターが22勝して勝率約20%。予選4位以内からの優勝が合計で59回・勝率54%ほどと半数を占めます。ポール トゥー ウイン自体は2019年のロガーノを最後に出ていませんが、Gen6車両になった2013年以降の21戦で見てもPtoWが6回、これを含めて4位以内からの優勝が13回もあり、過去3年間も全て予選4位以内の人が優勝しています。予選上位はけっこう有利です。

・レース前の話題

 まずは訃報です。先ほどデイル ジャレットの名前を出しましたが、彼の父であり1961年・1965年のカップシリーズ チャンピオンであるネッド ジャレットが現地6月4日に亡くなりました。93歳でした。

 WikipediaやNASCAR公式サイトによると、1932年生まれのジャレットは父親の製材所で働きつつもレーシング ドライバーに憧れ、近隣にヒッコリー モーター スピードウェイが建設されてNASCAR最高峰シリーズが来ることになるぞ、というのを耳にして参加を画策。義理の兄弟であるジョン レンスと共同所有していた車両で1952年に初めてヒッコリーでの地方レースに出場し10位になるも、父親はネッドがレースをすることに反対していました。
 それでもレースをやめたくないネッド青年、ある日レンスが体調を崩して代役を頼まれたのでレンスの名前を借りて出場し2位を記録。この経験からその後もレンスの名前を使った偽名出場でこっそりレースに出ていましたが、当然ながら父親にバレました。ただこの時点ではさすがにお父さんも諦めたようで「せめて自分の名前を使うように」と言ったとのこと。
 これで本格的にレース活動する下地を整えたジャレット、お金は無いですが1955年にはヒッコリーのチャンピオン、1957年にはNASCARの下部カテゴリーでチャンピオンを獲得して翌年も連覇、と才能を発揮。この間に年間2戦程度ながらカップシリーズにも出場はしていました。ただ、それでも最高峰シリーズへの出場には大きな壁が存在する中で転機が訪れたのは1959年でした。当時カップシリーズで活躍していたジュニア ジョンソンが使用した実績のあるフォードの車両が2000ドルで地元ディーラーから販売されていたのです。
 この車なら勝てるはずだ、だが買う金がない、という中でジャレットはあり得ない奇策に出ました。金曜日の夜にレースがあって優勝賞金が950ドル、日曜日も別のレースがあって賞金950ドル。どっちも勝ったら1900ドル。どっちも勝てば賄える。というわけで金曜日の銀行営業時間終了後に小切手を使って2000ドルを自動車屋に支払い、速攻でレースに出場。ここで勝って、日曜も勝って、マジで実力で金を稼いで月曜日にはちゃんと代金を賄いました。ジャレットは2011年のNASCAR殿堂入りに際した取材で当時について

「そんなことを試みるほど愚かな人間はいないと思いますが私はやってのけました。何の疑いもなかったんです。ジュニア ジョンソンがあの車でレースに勝てるなら自分にも勝てるはずだと、自信過剰になっていました。」

 今ならあり得ないマンガみたいな展開でこの年の中盤ぐらいからカップシリーズにも数多く参戦できるようになり初優勝も記録。翌年からはフル参戦して2度のチャンピオンに繋げました。1965年にダーリントンで開催されたサザン 500はビューレン スキーンの死亡事故が発生し、ケイル ヤーボローも接触の弾みで車がコース外に飛び出す大事故も発生したかなり悲惨なレースとして記録されていますが、このレースでジャレットは『2位に14周と2車身=19.25マイル差で優勝』という今も破られない記録を残しました。というか更新ほぼ無理。
 ただこの1965年、2度目のチャンピオンを獲る一方で事故による負傷もあり、さらにキャリアの多くを共に戦ったフォードが翌1966年途中にNASCARからの撤退を発表すると、ジャレットも34歳ながらスパッと引退しました。ただ、ジャレットは現役時代から地元でラジオ番組をやっており、結果としてこれが引退後にもラジオ番組を持ち、テレビ中継の実況・解説・リポーターとして幅広く活動することに繋がっていき多くの人に親しまれました。

 またジャレットは1961年に使用していたシボレーの車両を、自身はフォードに乗り換えて不要になったことから他の選手に売却。その相手がNASCAR史上初のアフリカ系アメリカ人選手・ウェンデル スコットで、スコットは1963年にこのジャレットから購入した車両でカップシリーズ初優勝を挙げています。
 1953年から1966年までカップシリーズに出場してはいましたが、フル参戦期間は僅か6シーズンほど。通算352戦の間に50勝を記録したその圧倒的な勝率に加えて、スコットの話からも分かるように人柄もまた信用され『ジェントルマン ネッド ジャレット』の愛称で親しまれました。改めてご冥福をお祈りいたします。


 次にこれも明るい話題では無いですが、カイル ブッシュが急逝したリチャード チルドレス レーシング、今季の残るレースでも引き続き33号車シボレー カマロ ZL1はオースティン ヒルがドライバーを務めることを発表しました。カイルが亡くなって2週間あまり、リチャード チルドレスはこの週末に取材に応じてカイルについて語り、チルドレスによればカイルとは死去の2日前に会話していて、その際カイルが

「ここ3週間のような車を用意してくれれば今年はプレイオフに行ける。」

と自信を見せていたことを明らかにしました。加えて、本来であれば2027年への1年の契約延長合意を発表する予定だったそうです。また、カイルの妻・サマンサ ブッシュもおよそ2週間が経過したところで家族として声明を発表し、数多くの声援・支援に対する感謝の意を示しました。

 最後に、2週間後に迫った第17戦サンディエゴにおいて、トラックハウス レーシングが91号車を投入しドライバーになんとケビン マグヌッセンを起用すると発表しました。2024年までF1世界選手権に通算187戦(スタートしたのは185戦)出場し、現在はBMWから耐久レースに出場しているマグヌッセンですが、NASCARとのかかわりと言えばちょっとしたハースの企画でスチュワート-ハース レーシングのマスタングに体験で乗せてもらったぐらい。

 普通なら下部カテゴリーも一切経験していないと、たとえロード コースでもカップシリーズのライセンスってそう簡単には出してもらえないんですが、IMSA ウェザーテック スポーツカー 選手権に出場していますので、IMSAとNASCARの関係からライセンスが発給されやすいと思われます。小林 可夢偉と同じパターンですね。
 トラックハウスの91号車が稼働するのは昨年の開幕戦デイトナでエリオ カストロネベスが乗って以来、スポンサーはクアルコム、クルー チーフはフィル サージェンが担当します。マグヌッセンの場合は重たいGTカーの経験もそんなに無いので苦労するんじゃないかと思いますけど、せっかく出場するんですから健闘を祈ります。


・ARCA Menards Series Henry Ford Health 200
 
 今週は開幕以来初めてオライリー オート パーツ シリーズがお休み、こちらARCA メナーズ シリーズの第7戦です。レース中盤の最初から設定されていたコーションまではコナー モザックがリードしていましたが、リスタートで誰にも押してもらえずリード喪失。これで19歳のジェイク ボルマンが自身初のラップ リードを記録しましたが翌周にはまたコーション発生。続く50周目のリスタートではジオ ルジェーロがリードを奪いました。
 するとまた複数が絡む事故でコーションが発生し、コーション周回中に雨が降って来たので残念ながらそのままレースは終了。現在の本職はクラフツマン トラック シリーズにあるルジェーロ、並行してスポット参戦するARCAシリーズで今季3勝目を挙げました。これで今年は4戦3勝です。なお古賀 琢麻は3周遅れの18位でした。
 

・Craftsman Truck Series DQS Solutions & Staffing 250


 自動車産業の地・ミシガン。それなら自動車系YouTuberがうってつけだろうということで、なんとドライバーであるクリータス マクファーランドがグランド マーシャルを兼務するという珍しい演出がありました。車に乗ってヘルメットをかぶって、今からレースする人が自分で「スタート ユア エンジンズ!」
 優勝争いの中心はベル、カーソン ホースバー、ケイデン ハニーカット、そして昨年のシリーズチャンピオン・コリー ハイム。残り26周のリスタートでリーダーはホースバーでしたが、ほどなく彼の77号車シボレー シルバラードはグリルにビニール袋っぽいゴミが付着、エンジンの水温が上がってしまって問題になります。そんな中、ハイムは4位走行から1人ずつ捌いていって残り15周でホースバーを抜いて先頭へ。その後はハニーカットの猛追を受けましたが、これを鬼ブロックして逃げ切り今季3勝目・トラックシリーズ通算26勝目を挙げました。

 勝ちまくってるハイムですがミシガンでの勝利は今回が初めて、これで彼がトラックシリーズで優勝を記録した開催地は22か所になりました。あと勝って無さそうなのはホームステッド、ルーカス オイル インディアナポリス レースウェイ パーク、タラデガ、ナッシュビル、ぐらいですかねえ。2位からハニーカット、ホースバー、レイン リッグス、チャンドラー スミス、ベル、リッキー ステンハウス ジュニア、モザック、ジェイク ガルシア、タイラー アンクラムのトップ10でした。クリータスもリード ラップの25位でチェッカーを受けて健闘しています。

・カップシリーズ予選

 さあやっと走れたぞカップシリーズの予選、ブッシュ ライト ポール賞はハムリンが獲得しました、節目の通算50回目。ハムリンは練習走行でタイヤに問題が発生して11周しかできておらず、修復した車両の状態も走ってみないと分かりませんでしたが、暫定1位だったホースバーを0.018秒上回りました。
 地元ミシガン出身のホースバー、あと一歩で地元ポールを逃して予選2位。3位からレディック、ギブス、ブリスコー、チェイス エリオット、ラーソン、ベル、ウイリアム バイロン、エリック ジョーンズのトップ10でした。最近すごく運が良いダニエル スアレスが11位、ブッシャーが14位。ここ2戦は驚きの走りを披露してきたシェイン バン ギスバーゲンは30位に沈みましたが、悲しいかなチームメイトのロス チャステインが32位、コナー ジリッシュが34位、チーム内では最上位です。

コメント