フォーミュラE 第11戦 三亜

ABB FIA Formula E World Championship
2026 Lianxin Sanya E-Prix
Haitan Bay Circuit 2.52km×37Laps+Zero Lap(0.503km)=93.743km
※Race extended to 39Laps
Race Energy:38.5kWh
Reference Time for SC/FCY 3:00
Attack Mode:480 seconds/2 time
winner:Jake Dennis(Andretti Formula E Team/Porsche 99X Electric)

 ABB フォーミュラ E 世界選手権、第11戦は中国の三亜。J SPORTSでは相互主義に従ってそのまま音読みし「サンア」と紹介していますが、発音的には英語で表記されているのを見ても分かる通りサンヤの方が近い発音です。調べた範囲だと「サァンィア」ぐらいが文字起こしできる最も近い表記になるでしょうか。文字で書いたら三亜なのでどっちでも関係ないんですが、一応私はサンヤだと思いながら文字を入力しています。
 2019年・シーズン5の第6戦として開催されて以来7年ぶり2度目の開催。本当はシーズン6でも開催予定でしたがCOVID-19の影響で中止になって以降は日程に入っていませんでした。ちなみに当時のポールシッターはオリバー ロウランド、優勝者はジャン エリック ベルニュで、ロウランドが2位、3位はアントニオ フェリックス ダ コスタでした。4位にアンドレ ロッテラーがいます、懐かし~。またネルソン ピケ ジュニアはこの年ジャガーに移籍するも、僚友のミッチ エバンスに歯が立たずこのレース限りでチームを離脱。ピケのフォーミュラE人生最後のレースが三亜でした。

 コースのすぐ背後に見える背の高い建物はアトランティス サンヤという高級ホテル、その下に広がるプールやらなんやらの豪華施設はサンヤ アトランティス リゾートという名前でホテルと一体のリゾート施設になっています。アトランティスは元々ドバイにできた超超超高級ホテルで、この名前を冠したホテルは世界でも数件だけのよう。
 三亜は元々『東洋のハワイ』とか『中国のハワイ』とか呼ばれてるらしいんですが、調べてたらとあるサイトには『中国のハワイから中国のドバイに変わった』とまで書かれていました。完成したのは2018年ということで前回フォーミュラEが開催された時には既にあった、というかそういうお金回りから開催に至ったんだろうと思いますが記憶にありません。え~あったかなあ、公式動画見てみよ。

 あ、普通に映ってるわ(笑)まあ庶民には関係ない話なんですが、関係なさすぎるのかGoogleで『アトランティスホテル』と検索すると最初の大阪の大人なホテルとかが出てくるので、間違ってこっちに行かないようにしてください(。∀°)
 コースは当時とちょっと変更されており、ターン1~4はより高速な形状へ。ターン5から先、橋を渡ってクソ狭いヘアピンであるターン9を折り返し、もう1回橋を渡る部分は同じです。その先のターン11は7年前より高速に、最終のターン12も7年前は回生箇所を増やす目的で内側にちょっと出っ張った壁を作って鋭角にされていましたが、これが取っ払われてただの90°コーナーになっています。距離は2.236kmから2.52kmへと少し長くなりました。
 ただコントロール ラインのあるピット前の直線にじゅうぶんな長さのが無いのは従来と変わらないので、スタート時にはダミー グリッドから4/5周ぐらい走ってターン9の先にある橋の上の正規グリッドまで移動。決勝は37周と、グリッドからコントロールラインまでの移動距離503mを足した93.7kmのレース、まあまあ長いです。

 なお大会スポンサーのLianxinですが、聯信国際投資有限公司という観光開発を行う投資会社だと思われます。三亜サーキットの改修や周辺設備に多額の投資をして外国人観光客の呼び込みを行って儲けようとしているみたいですね。情報が少ないので違ってたらごめんなさい。

・レース前の話題

 シーズン11終了後に撤退してしまったマクラーレン、もうシリーズに参戦してはいないわけですがなんとこのたびフォーミュラEから罰金処分を受けました。フォーミュラEはF1と同様に予算制限の規則があって超過すると罰金をはじめいくつかの制裁手段が用意されていますが、シーズン11のマクラーレンは1224万6766ユーロの規定額に対して、4.54%の支出超過となる1280万2394ユーロが支出されたとみなされ、これに対して40万ユーロの罰金が言い渡されました。
 費用超過の主な要因は撤退に伴う一時的な費用計上だということで競争力向上を目的とした予算超過ではなかったようなんですが、突然の撤退の代償として7000万円ほど余分な罰金を払わされたことになります。撤退してるから踏み倒されるんじゃね?とか思われますがチームを運営していたマクラーレン レーシング エレクトリック リミテッドという事業法人はちゃんとまだ存在しており、異議申し立てなどの権利も放棄したとのことで規定通り納付されると思われます。


 そしてもう1つ罰則の話題、前戦モナコでは2戦連続でジュリアス ベア ポール ポジションを獲得しながら、レースでは冷静さを欠いて大暴れし2戦とも入賞できなかったダニエル ティクタム。チームから戒告処分を受けたことが明らかになりました。これはクープラ キロが数戦毎にレースを総合的に検証して行った評価によるものだそうで、チーム代表のラッセル オヘイガンは

「モナコ以降、我々はダンと多くの問題について率直に話し合い、今シーズン2度目の正式なけん責処分を下すことにしました。」
「今シーズンを振り返ってみたところ2つの明確な教訓が得られました。1つ目は、ダンと共に物事へ包括的に取り組む姿勢を真に理解することです。どのセッションでも1周の速さは圧倒的ですが、ポイントが与えられる決勝レースでは本来のポテンシャルを発揮しきれていません。フォーミュラEのような激しい競争環境のトップ争いにおいて失敗の入り込む余地はありません。そのため、私たちのアプローチや目標、そして評価指標を見直し、必要に応じて微調整していく必要があります。」
「2つ目は、ダンの抱えるフラストレーションやエネルギーを建設的な方向へと活かすことです。彼の心情は理解していますが、チームとしては組織として最良のパフォーマンスを発揮し活動していく上で不可欠な『プロ意識』『敬意』『チームワーク』といった基準を、全員が守ることを求めています。同様に重要なのは、ダンが最高の力を発揮できるよう必要な環境とサポートを提供するというチームとしての責任を認識することです。今シーズン、彼に対してチームとしてもっとうまく対応できたはずの場面が何度かあったからです。彼は極めて才能のあるドライバーであり、チームにとって非常に重要な存在です。現在進めているプロセスを通じて、コースの内外で彼のさらなる成長が促され、シーズン後半を共に力強く戦い抜けると確信しています。」

 と説明しました。具体的にけん責を受けてどうなるのかは分かりませんが、普通に考えると「改善せんかったら最後はクビやで」という警告だろうと思います。とはいえ陣営がティクタムの代役としてすげ替えられる選手を有しているかというとそうでもなく、オヘイガンの言う通りティクタムの才能が活かされるような環境になってくれるのが最も近いチーム力強化でしょう。チームとティクタムの信頼関係が問われます。

 前回のモナコで書きましたけど、そもそも型落ちポルシェで走っているクープラキロは決勝で節約レースをやらされたら道具の面でおそらく不利です。いくら人の後ろに付いて節約しようが、自分で後ろを押さえつけようが、罠にかけようが、どう足掻いても自分より効率よく走ってる人が必ずどこかに出てしまうのは仕方ないので現実的に勝つのはかなり難しいんですが、チームはそれを理解していながらティクタムはそれが受け入れられず、結果として中途半端なレースをしている印象があります。オヘイガンが言ってるのはたぶんそのあたりの話じゃないかと思いますね。

・練習走行

 FP1は金曜日の現地16時30分から始まりましたが、気温は32℃ほどですが路面温度が50℃を超える状態。湿度80%でかなり蒸し暑いと思われます。最速はマヒンドラのエドアルド モルターラで1分5秒616、ジェイク デニス、ニック デ フリース、パスカル ベアライン、ノーマン ナトーが続きました。300kWに限るとデニス、ベアライン、ロウランド、エバンス、ゼイン マローニーの順になっています。なおセバスチャン ブエミは途中で車の不具合によりコース上に車を止めてしまって13周の走行で終了、350kWで走れませんでした。

 土曜日のFP2は朝の8時30分でいつもながら早起きですが、気温は既に31℃、路面温度も40℃ほどと既に暑い。ここではベアラインが1分5秒095まで縮めて最速、2位は0.016秒差でモルターラ、これにデニス、デフリース、ティクタムが続きます。300kWだとモルターラ、デニス、フェリペ ドルゴビッチ、ベアライン、ダコスタのトップ5。顔ぶれはある程度かたまってる感じ?

・グループ予選

 ドライバー選手権順に偶数と奇数で振り分ける制度なのに、たまたま前戦終了時点で全チームが偶数順位と奇数順位の選手を1名ずつ抱えていたため、グループ予選はチーム被りなしで綺麗に分配されました、初めてちゃう?(笑)A組は大袈裟ではなく1分7秒5近傍で0.01秒を争う戦いになりましたが、なんと最後にドルゴビッチがその流れをぶったぎって1分7秒337で最速。テイラー バーナード、エバンス、ニック キャシディーが続きました。グループ2位から7位までが0.137秒差、各順位間の差は0.05秒未満の僅差です。あ、後から流れた映像を見るとドルゴビッチは壁に当ててタイム出してますね、事故寸前^^;

 続くB組はベアラインが最初に出した1分7秒506がえらい高い壁として立ちはだかることに。ベアライン自身も2回目の挑戦ではこれを0.02秒しか更新できませんでしたが、他のドライバーは誰もベアラインを超えられませんでした。最後はマローニーがクラッシュしてイエロー フラッグが振られたこともあり尻すぼみで終了。デフリース、ティクタム、デニスが続きました。こちらも1位から4位まで0.083秒しかありませんでした。現地時間11時ごろにやってる予選ですが、路面温度が55℃を超えてきていて2回目の計測はもうヘロヘロになってるっぽかったですね。

・デュエルス

 A組はドルゴビッチが引き続き快調、準決勝ではエバンスをわずか0.025秒差で下して決勝に進みました。一方B組の準決勝はデニスとティクタムの対戦、準々決勝では全くの同タイムだったのでここも接戦が期待されましたが、ティクタムがターン9を曲がり損ねたのであっさりと決着。これでデュエルス決勝はドルゴビッチとデニスのアンドレッティー先輩後輩対決になります。ちなみに曲がり損ねて退避路に出たティクタムはちょっとヤケになったようにアクセルターンで出ていきましたけど、もうこのタイヤは決勝で使わない予定ってことでいいんでしょうかね、使う予定のタイヤだとまたチームからむっちゃ怒られますけど^^;
 冗談抜きで分刻みで路面温度が上がっているようでとうとう60℃に到達したデュエルス決勝、先攻のドルゴビッチはターン4〜5でいきなりミスってしまい、この段階で既に勝ち目なし。デニスが後輩の状況をどの程度教えてもらいながら走ったかは分かりませんが、1分5秒502を記録してジュリアスベアポールポジションを獲得しました。デュエルス全体を見てもこれより速かったのはデニス自身が準決勝で出したタイムだけなので、いかにデニスが毎回きちっとまとめて走っていたかが分かります。

 前戦モナコでペナルティーを受けてグリッド降格になる人がいるのでスタート順位は予選順位から少し変動、デュエルス進出組ではバーナードが10グリッド降格になっており、デニス、ドルゴビッチ、エバンス、ティクタム、デフリース、キャシディー、ベアライン、ジョエル エリクソンのトップ8。ロウランドは10位、バーナードは15位スタートになりました。

・決勝

 引き続き路面温度60℃オーバー、特にピット前辺りは再舗装された真っ黒な路面だから余計に暑そうです。普段はバーンナウトしながら真っ直ぐ2列移動するだけなので久々にゼロラップがあるレースでうっかりしたのか、ベアラインは間違ったグリッドに停止しかけて慌てて移動。ポールシッターのデニスも無線で「左?右?」と確認してたようです。さらにさっきまでみんながいたダミーグリッドには何かしら落とし物。事後情報でベルニュのクルーが回収し忘れたものだと判明し、罰金は2500ユーロです。
 この回収作業でスタート手順が一時的に止まって国際映像もカメラを色々切り替えていたら、回収後にすぐ手順が再開したので映像も実況もなんかちょっと置いてけぼり。もうちょっと分かりやすい何かが欲しかった。まあそれはドライバーには関係のない話で出遅れるようなことも無くスタートし、まずデニス、ドルゴビッチ、エバンス、ティクタムのトップ4が変わらないまま1周ちょいを走って落ち着いた走り出し。デニスがブロックラインを通ってドルゴビッチが外から伺う場面が多く、これは争ってるというよりアンドレッティーが2人で道を塞いでる感じです。
 7周目にベアラインがようやくこの壁に穴を開けて2位に割り込み、ただリーダーのデニスはなおもベアラインをブロックして順位は明け渡したくない様子。それでも9周目にようやくベアラインが前に出ますが、ここで公開されたエナジー残量ではベアラインの消費量がわずかながら多め。この展開に痺れを切らしたか10周目にティクタムが上位勢で最初のアタック4分を使用すると、このあたりから前に出たい人と節約したい人が混在してターン9での接触が増えはじめます。モルターラは追突でウイングを派手に壊し、脱落しそうな車でお構いなしにアタックモードを使い爆走、ずっとウイングが路面を叩いて「ジャジャジャジャジャジャジャジャ・・・」と音を立てながら走っておりちょっと気持ち悪い(笑)
エドアルド キモルターラ
ジャジャジャジャジャジャジャジャ・・・・

 少しずつ各陣営がアタックを使っていきますがアンドレッティーの2人は全然動きを見せず、ようやく動いたのは16周目。この時点でデニスは9位まで下がっていたのでリスクも多そうに見えましたが、2人ははぐれることなく19周目にワンツー体制を再構築。狭い区間では全く抜けないけど、橋の上の2本の全開区間はアタックがあるとかなり抜けるんですね。するとそれから程なく問題が発生
・・・・・・・

 ターン9で多重事故が起きて通せんぼ状態、初期のフォーミュラEでは『あるある』だったやつでレース ディレクターは即座にレッド フラッグを出しました。理由はターン9のバリアの状態確認ということで橋が近いので安全性の問題から万全を期したんだと思いますが、誰かが激しくぶつかったようには全く見えず、せめて先頭集団が戻って来るまで様子を見るとか、FCYで時間を稼いでレッドフラッグが必要かの検証をするとか、そういう工程もすっ飛ばして即刻レッドにした理由があんまり良く分かりません。ちなみに7年前も・・・
ガシャーン

 この多重事故の前の周にはティクタムがエバンスに追突して乗り上げる事故が発生しており、これで順位を下げていたエバンスが今度はターン9でブエミにツンツン押されてしまい、それがきっかけで外にいたマローニーと絡み合ってタイヤ同士がガッチリ引っかかって操舵不能。そこにまた不運にもティクタムなどが突っ込んで誰も動けなくなりました。選手権1位のエバンス、今回さらに2位以下との差を広げられそうだったのにまさかの0点。ピットで見ていたクルーが激怒して手袋を投げ捨てます。

 特に何か修理をするわけでもないのに20分近く待たされてようやくレッドフラッグ解除、スタンディングでのリスタートということでドライバーはまた半周してスタート位置へ。残り約17周+延長周回でエナジー残量は50%以上あるのでオリジナルのスタートと比べればいくらか楽になっており、スタート直後から激しい争いになります。中断時点でまだアタックを1回も使っていなかったロウランドとダコスタがいずれもすぐに1回目を使用、ロウランドは4分でしたがダコスタは先に6分を使ったので、24周目にダコスタがリーダーとなりました。ただこの段階では4分残しでエナジー残量も多いロウランドがかなり有利に見えます。
 しかしまだ終わらない波乱、27周目、4位にいてロウランドの絶好の援護役という位置にいたナトーが後ろからベアラインに軽く当てられたことを起因にクラッシュ、これでFCYになりました。このFCY中にダコスタとティクタムにはペナルティーが発行され、ダコスタはリスタート直後の争いでナトーに対して減速中に進路変更を行って接触を引き起こしたとして5秒加算、ティクタムはエバンスへの追突事故で10秒加算です。なおティクタムは別件でレッドフラッグ中の速度違反に対する5秒加算も受けました。そしてベアラインはナトーとの接触でこれまた5秒加算のペナルティーが後ほど課せられます。
画面後方で突然クラッシュ

 29周目、FCYが解除されると2位のロウランドはちょうど目の前にアタックのアクティベーションがあったので2回目を使用、なんかモナコでもこういうのを見た気が。これでロウランドは少ない損失ですぐに前を追いかけて先頭へ。そもそもダコスタには5秒ペナがあるので実質はここにいないわけですが、だからと言って諦めるわけにもいかないのでこの後アタックを使用し時間切れギリギリでロウランドを抜き返しました。これはロウランド的には無駄な争いになってあまりおいしくありませんね。
 一方レッドフラッグのせいで損した感じのあるアンドレッティー2人はというと32周目に2回目のアタックを使用。この時点ではロウランドから3秒ほど離されてるし節約要素も薄まってるので優勝には遠いのかなと思ってたんですが、前を行く人たちが軒並みアタックを終えて車間距離も適度に開いていたので思った以上にサクサクと抜いていきました。33周目の段階でダコスタまで全部抜いて1位を奪還します。思ったほどロウランドが速くないぞ・・・?

 レースは累積SC/FCY時間から2周の追加が発表されて計39周へ、ギリギリまでアタックを温存していた人たちがこの終盤に来て突然追い上げ始めたのでさらに順位が大きく変動してもうわけがわからなくなりますが、そんな中で残り2周、ターン4で突然に画面後方でどこかに消えていくロウランドの姿。なんとベアライン相手に仕掛けようとしてミスってしまい壁に突っ込んでしまいました。ベアラインは5秒ペナが出ていたので無理する必要はなかったのに、まさかの自滅。
また日産が画面の隅っこでいきなり消える

 この事故でFCYとなって最終周は半分以上がFCY下での走行、もしそのまま行ったら5秒ペナ勢は後方とのタイム差が開いた状態でチェッカーを受けられるのでペナルティーを実質的に弱体化させることが出来ますが、レースディレクターは最後だけちゃんとFCYを解除してそれを許しませんでした(笑)


 混乱し続けた上に、色が似ているティクタムがほぼ1周遅れでデニスの前方にいたせいか、デニスに対してどうもチェッカード フラッグがちゃんと振られていなかった様子。というか国際映像のカメラさんがそもそも間違ってティクタムを追ってる・・・デニスは念のためそのまま手を緩めずに走り続けていたように見えて最後までグダグダのレースでしたが、旗が振られてなくてもレースは成立してるのでデニスが波乱万丈のポール トゥー ウインで開幕戦以来の今季2勝目、通算8勝目を挙げました。そして着順で言えば2位はダコスタですが5秒加算によってドルゴビッチが2位に繰り上がりアンドレッティーがワンツーを達成しました。

 3位は終盤のアタックで順位を急激に上げたペペ マルティー、4位も同じパターンのデフリース。デフリースは焦らなくて良いのにベアラインに追突してウイングが折れましたけど構わず走り切りました。マヒンドラはこのレースでウイングを壊しまくってます。ダコスタは5秒加算されたので2位から5位への降格となりました。


・ステージ レースコントロール室

 ところが大混乱の三亜はこれで終わりませんでした。レース後にもさらにペナルティーを巡る混乱が続いて、レースでの着順と正式結果が全くかみ合わないフォーミュラEあるあるに見舞われます。

〇ダコスタ、ダコウシタ

 まずダコスタが5秒加算で2位から5位の落ちましたが、これにダコスタは不満。レース後に公表された文書ではダコスタはそれ以前にも蛇行したとして警告を受けていたとされており、ところがその警告は『技術的な問題により正式には表示されていなかった』という謎の説明がなされています。例えるなら、反則で審判がイエローカードと判断したけどカードをどっかに落としてたから内々でカウントだけしておいて、次の反則でいきなりレッドカードを出した、みたいな話ではないかと。
 また、この件についてはダコスタが前の車を避けようとしてナトーを幅寄せしたことが原因で、スチュワードが記した文書にも『この操作が前方の車両を避けようとして行われたとしても、最終的にはドライバーは前方の状況に応じて適切にブレーキをかける責任がある』と書かれています。追突回避のために急に進路変更して接触しても、そもそも急な追突が起きないようにするのがドライバーの務めだからそれは言い訳になりません、ということですね。
 ところが被害者側であるナトーはどちらかというとダコスタに同情的で不可抗力だったと感じたようで、ますますダコスタ的には納得いかない裁定だったと思われます。というかナトーからすると、レースの続行には支障が無かったダコスタとの接触と、自分をリタイアさせやがったベアラインの接触が同じ5秒加算という量刑で処理されることに最も納得がいっていません。

〇幻のワンツーに

 最悪だったのは2位のドルゴビッチ、レース後に5秒加算ペナルティーを食らいました。理由はターン9でベアラインに追突し、2人の位置関係は変わらなかったもののベアラインが失速して立て直している間にダコスタに抜かれてしまったこと。ドルゴビッチは自分の過失によってベアラインが本来失う必要が無かった順位を奪ったということでペナルティー対象になりました。中継映像には映っておらず、後にフォーミュラE公式のSNSで車載映像だけが公開されています。

〇デフリースにも謎ペナ

 着順5位からダコスタの5秒加算で4位に繰り上がったと思っていたデフリース、なんとこっちもレース後に減速中の進路変更に対するペナルティーで5秒加算され4位から6位へ降格とされました。ところがその後に再審理されてペナルティーが取り下げられ元通りに。こちらは公式文書に

『レース中の内部通信上の問題により、この件に関して既にドライバーに白黒旗が提示されていたことをスチュワードは確認した。こうした状況を踏まえ、また既にレースディレクターによってこの問題が対処されていることを考慮し、スチュワードはこれ以上の制裁は不要と判断した』

とこれまた分かりにくい文章。おそらくですが、事案に対してブラック/ホワイト フラッグを出して警告したことで既にこの案件は処理済みだったのに、それがちゃんと情報共有できずに同じ事案についてもう1回審議して5秒加算の決断をしてしまった、言うなれば一事不再理の原則を無視して同じ事案を2回裁いてしまった、みたいな話じゃないかと思います。調べたけどこれ以上のことはあんまり分かりませんでした。

 これらの結果、結局は着順で2位と3位だったダコスタとドルゴビッチの双方が5秒加算になってセットで降着。繰り上がった2位はマルティーで、3位にデフリースとなりました。4位ダコスタ、5位ドルゴビッチ。6位からマキシミリアン グンター、ニコ ミュラー、ベルニュ、バーナード、ルーカス ディ グラッシのトップ10。ベアラインは終盤に順位を下げて7位でチェッカーを受けたところからの5秒加算で14位。
 さらにドライバー選手権3位のモルターラはウイング破損でそもそも苦しい立場でしたが、リスタート後に破片がキル スイッチに当たって車が誤作動により機能停止。そのままリタイアとなり、結局このレースではドライバー選手権で上位にいた4人=エバンス、ロウランド、モルターラ、ベアラインが1点も獲れないレースになりました。選手権的には面白くなりましたが陣営とすると大誤算です。優勝したデニスはポールポジションの3点を含めて28点を荒稼ぎ、ドライバー選手権でエバンスから34点差の5位に急浮上です。

・戦略も混乱か?

 レッドフラッグ前まではアンドレッティーが上手くレースを制御下に置いて優勢でしたが、中断によってアタックを2回残している人が有利になって流れが変わった、と私は思っていました。ただ以外にもレース後のデニスの話を聞いているとそうでもなく、もちろん結果を見てもデニスは圧倒。ドルゴビッチも本来なら2位でしたからアンドレッティーにとって完璧なレースでした。
 事後情報によると、レッドからの再開後に快調に走っていたロウランドはエナジー消費量を巡って情報に混乱があったということで、レースの追加周回を含めた残りレース距離とエナジー残量の管理が何か間違った設定で勢いよく突っ走ってしまったようです。また、気温32℃前後、路面温度は終盤に向けて50℃に下がっていったものの開始時点では62℃という暑さでしたので、終盤にアタックを2回残した選手は額面上は有利に見えても短期間で2度のアタックはタイヤやパワートレインに大きな負担をかけた可能性もありそうです。
 結局は上手く配分して丁寧な走りを継続した、無駄なことをできるだけ避けた人が勝つように上手いことできていたレースだった、ということになりそうですが、まあでもドガチャガしない普通のレースでどういう結果になったのかを見たかったですね。ペナルティーはありましたけどアンドレッティーとデニスにあっぱれ!

・三亜はGen4でも開催できるのか?

 このレースの数日後にシーズン13の日程とレース形式について一気に公表され、三亜は来年も第7戦で開催されることになりました。ちなみに最終は第20戦・第21戦と東京で2連戦になっています。しかしあの狭いターン9は少し車が大きくなるGen4でもちゃんと走れるのか、ちょっと気になるところです。また別の機会に書くことになりますが、レース形式は1戦だけのイベントの場合には従来通りの効率的な走りが求められる45分間の時間制レースとなります。
 狭いコースを全力疾走するよりはいくらか安全ではありますが、代わりに玉突き事故というフォーミュラEあるあるが起こりがちなので、結局どっちに転んでも懸念材料は残ります。コースの形状に変更の余地があるならそれがいちばん手っ取り早いですが、とりあえずGen4になって通せんぼレッドフラッグ案件はさすがに勘弁してもらいたいですね。

 さて次戦も中国国内を移動して7月4日・5日に上海での2連戦。上海国際サーキットを大胆に省略してピット前の裏道みたいなところから戻って来るやつです。Gen4になったら普通のコースを走ってもらいたいんですけど、どうする予定なんでしょうねえ。

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