NASCAR 第11戦 テキサス・事前情報

NASCAR Cup Series
Würth 400 presented by LIQUI MOLY
Texas Motor Speedway(Fort Worth,Texas)
1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
Goodyear Racing Eagle Tire Code
Left:D-5284 , Right:D-5290
Total Sets:10(8 new race/1 qualifying transfer to race/1 practice)


 NASCAR カップ シリーズ、第11戦はテキサス。ドイツが誇る世界的な自動車関連部品会社・日本法人の読みだと『ウルト』、ドイツ語読みだと『ビュルト』、アメリカだと『ワース』と発音される、えーっとこの場合NASCARだからアメリカに合わせるとワース フォーハンドレッド プレゼンティッド バイ リキ モリーです。
 テキサス モーター スピードウェイは1997年開場、元々はバンク角24度でしたが2016年オフの再舗装工事に合わせてターン1・2側だけ20度に削り取られた左右非対称バンク角のクワッド オーバルというちょっと珍しいトラック。トラックが完成して間もない頃はたくさんお客さんが入っていたものの、レースの質に対して不満が多かったこともあり最近はなんか経営側の顔ぶれがコロコロと入れ替わったりして苦労しているようです。
 テキサスは開業当初にNASCARと年間2回開催を行うことで契約に合意していたようなんですが、それが履行されていないとして2002年に運営会社の少数株主が訴訟を起こし、結果として和解によって2005年から2回開催になりました。その際に入れ替わりで落とされたのがロッキングハム スピードウェイでした。ただ上記の通りあんまり評判がよくなかったことに加えて、同じテキサス州にあるサーキット オブ ジ アメリカズが開催に名乗りを上げたこともあって今度は開催権を奪われる側になってしまい、2021年からは1回だけの開催になりました。
 見る側にとっては面白くないレースかもしれませんが個人的には技術面からテキサスは結構気に入っています。バンク角が異なっているとセッティングが非常に難しくなり、とりわけダウンフォースに影響するタイヤ内圧とサスペンションのセッティングを上手く合わせこんでいかないと速く走れない上に、攻めすぎるとタイヤがバーストするなど大損するため難易度がなかなか高いからです。ターン1に合わせて内圧を下げるとターン3で負荷がかかりすぎるんですね。
 細かすぎて伝わらない部分の競争なので、見る側からするとお気に入りの選手がトップ快走中にバーストして一発リタイア、なんてクソつまんないレースは見たくないわけですが、エンジニアリングとそれに適合したドライビングが合致しないと勝てないという点で考えると私はそういうレースがあっても面白いと思いますね。
 さらに頭を悩ませるのが、舗装がだいぶ古くなってきたこともあって特にターン4の外側にやや大きい凹凸が存在することで、バンク角が高いから外まで使って走れるだろうと思ったら跳ねてしまって滑る、底を打つ、なんて事態に見舞われてスピンに繋がることも割と多いです。道幅のわりに実際に使えるラインが少ないことは追い抜きを難しくしてしまい、しかも高速でクリーン エアーを得ることが大事なのでピット戦略としてけっこう2輪交換が有効になります。ただ2輪交換して滑ってターン4で外へ行ったら地獄です(笑)

 バーストするとすぐやり玉に挙げられるタイヤですが、今回持ち込まれるのは既に今年のラスベガスなどで使われているタイヤ。この仕様は昨年の終盤から投入されたタイヤなので前回が昨年春の開催であるテキサスでは使用経験が無いものですが、基本はもう理解しているはずなのでおかしなことにはならないでしょう。タイヤが爆発したらだいたいは内圧を下げて攻めすぎた技術陣の側の問題です。

 なお資料によると今回のレース、グランド マーシャルはスラッシュ メタル バンド・スレイヤーのボーカリスト兼ベーシストのトム アラヤ、ペース カー ドライバーはNBAで新人王を獲得したダラス マーベリックスのクーパー フラッグが務めます。国歌斉唱は第2次世界大戦で硫黄島の戦いから生き残った退役軍人・トム グレイブス、101歳。マジか。

・ちょっとしたデータ

 年間1回開催のためGen7ではまだ4回しか開催されていないテキサスですが優勝者は全て異なっており、2022年から順にタイラー レディック、ウィリアム バイロン、チェイス エリオット、ジョーイ ロガーノ。レディックはリチャード チルドレス レーシング時代の優勝なので、この4年間でトヨタはまだテキサスで優勝無し、最後に勝ったのは2020年秋のカイル ブッシュまで遡ります。今はカイルがRCRですね。
 Gen7優勝者4人の中でもバイロンは特に好成績で、4戦中3戦でトップ10フィニッシュして平均順位6.0。この4戦を全てトップ10フィニッシュした人は誰もおらず、同じく3回記録しているのがダニエル スアレス、チェイス ブリスコー、ブラッド ケゼロウスキー。スアレスは平均順位8.75でバイロンに次ぐ2番目の数字。スアレスは通算でもテキサスがオーバルで自身3番目に平均順位の高いトラックで比較的得意なようです。ロガーノも同じ8.75なんですが、2位、21位、11位、優勝、と極端な数字で、全て12位以内でまとまっているスアレスとはかなり違う中身になっています。
 
 今度は今シーズンの流れを見て行くと、今季の1.5マイルはラスベガス、カンザスに次ぐ3度目の登場ですが、なんとラスベガスでトップ10フィニッシュしたドライバーのうちクリストファー ベル以外の9人は全てカンザスでもトップ10フィニッシュしました。唯一の例外はレディックで、ラスベガスでは13位でしたがカンザスは勝ちました。もう今年のこの人にはあらゆる数字が通用しないんでしょう(笑)
 この9人で平均順位を出すと最も良いのはデニー ハムリンでラスベガス優勝・カンザス4位。ハムリンはテキサス通算3勝ですが最後に勝ったのが2019年、昨年のレースはエンジンが壊れました。続くのはラーソンでラスベガス7位・カンザス2位です。去年のカンザス以来勝ってないですね、という質問をたぶん毎週のように受けるようになっているラーソン、テキサスは2021年のレースが唯一の勝利ですが車も本人も速さには申し分ないので、まあいつも通り上位で戦うことでしょう。定石通りハムリン、バイロン、レディック、ラーソンあたりが上位を走り、そこにスアレスや今年好調のタイ ギブスあたりが絡むと面白いかな、とか勝手に想像。

・レース前の話題

 今シーズンは既に5勝を挙げているレディック、先週のタラデガでのレース前の取材で23XI レーシングと契約延長したことを明らかにしました。既に契約延長の見込みであることは報じられていましたがこれを正式に認めた形で、残念ながら具体的な内容は明らかにされていません。まあ普通に考えて複数年契約でしょうし2年なんて短いもんじゃあないとは思いますけど。
 一方チームメイトのバッバ ウォーレスには新たなスポンサー、コカ-コーラが就くことに。コカコーラが支援するドライバーは総称して『コカコーラ レーシング ファミリー』と呼ばれており今はハムリン、ロガーノ、エリオットが仲間にいると思いますが、ウォーレスはリチャード ペティー モータースポーツ時代の2018年から2020年までレーシングファミリーになっていたので6年ぶりに戻ってきました。23XIはモンスター エナジーとロックスター エナジーとコカコーラの支援を受けた選手が一緒に参戦するなんかもうお腹がちゃぽちゃぽになりそうな顔ぶれ、オーナー陣はうかつにどこかの飲料を好んで飲めないのでは(笑)
 
 新しいクルーチーフの話題もありました。先週のレースでようやく今季初のトップ10フィニッシュとなったカイルですが、レース後にクルーチーフの交替が発表され、今年就任したばかりのジム ポールマンが担当を外れてアンディー ストリートが新たに就任すると発表しました。ストリートは昨年の最後の5戦で、それまでのランドール バーネットに替わって暫定的なクルーチーフになっていましたが、今年もまたシーズン途中からカイル担当に戻ってきたことになります。カイルは

「ポイント ランキングを見れば状況は明らかです。」「我々は目標とする地点に到達していません。どこかで変化が必要です。私の理解では、ジムとの話し合いは好意的に受け止められ、彼も納得してくれたと思います。」

 ポールマンは競技部門を統括する立場になってRCRの2台の車を全体として取りまとめる立場になるようですが、うーん、降格に近いような人事に見えますね。

 最後に、先週のレース後にハムリンが自身のポッドキャストで現行車両は空気抵抗が大きすぎてドラフティングトラックで全然抜けない、と課題を指摘していた点。どうやらNASCARにもご連絡差し上げたそうなんですが、NASCAR側も真剣に取り扱うことを検討しているようでスポイラーの小型化が議論されるようです。元々NASCARは来年の1月にデイトナで大規模テストを開催して色々比較検証を行う予定ですが、スポイラーの件はこれを待たず早ければ夏のデイトナで変更される可能性もあるとの情報で、今後の発表が待たれます。ただ抵抗を減らすと当然ながら速度域が向上するので安全性との兼ね合いをきちんと検証する必要があります。

・Craftsman Truck Series SpeedyCash.com 250

 ブリストル以来3週間ぶりのクラフツマン トラック シリーズ、主役は先週のカップシリーズ勝者・カーソン ホースバーでした。予選11位からステージ2以降は主導権を奪いつつもピット作業で相次いで失敗があり上下動のあるレース展開。それでもハリケーンの愛称に相応しい怖いもの知らずのリスタートを見せて盛り上げると、迎えたオーバータイムのリスタートでジオ ルジェーロを退けて激戦を制しました。トラックシリーズでは昨年のカンザス以来となる通算6勝目です。

 2位にはここではチームメイトのカイルブッシュ。レース序盤に壁にぶつけて緊急ピットしたもののリード ラップに復帰し、残り17周からのリスタートの攻防ではホースバーを後ろから押して援護して自らも優勝争いへ。最後も混戦を潜り抜けて2位を手にしましたがさすがにホースバーには届きませんでした。3位にケイデン ハニーカット、4位ブレンダン ジョーンズ、5位にポールシッターのベン ローズでした。今回コウリッグ レーシングから出走してラムを駆ったパーカー クリガーマンが11位に入っています。

・O'Reilly Auto Parts Series Andy's Frozon Custard 340

 むちゃくちゃ甘い飲み物・アンディーズ フローズン カスタードがスポンサーのオライリー オート パーツ シリーズ、340というイベント名ですがレース距離は300マイルで、アンディーズフローズンが40周年と言うことで記念に題名をちょっといじったようです。
 レースはどうも外ラインの路面が無茶苦茶滑りやすかったらしくスタート直後のターン2でいきなり事故発生。先週の勝者・コリー デイと先々週の勝者・テイラー グレイがいきなり撃沈しました。その後もコーション連発でステージ1がなかなか終わりませんでしたが、ステージ2以降は多彩なドライバーが車をズリズリ滑らせながら各所で好バトルを展開。
※高速でターン4を立ち上がる場面です

 最後は残り17周のリスタートからラーソンとジャスティン オールガイアーが激しい争いを繰り広げ、僅差でラーソンが制して今季2勝目、オライリーシリーズ通算19勝目を挙げました。ちなみにヘンドリックカーズドットコムのスキームは最近3台も出場している時があって放送席泣かせでもあるんですが、ラーソンが優勝した一方でデイが1周目にクラッシュ、ラジャ カルースも180周目にクラッシュしてリタイアしており、完走したのはこの1台だけでした。

 2位のオールガイアーはドライバー選手権でシェルドン クリードに121点差とかなりの差を付けてポイント リーダーを快走中。3位に大会スポンサーを背負ったサム メイヤー、4位にブレント クルーズ、5位はパーカー レツラフでした。クルーズが今季最後のダッシュ フォー キャッシュを手にして賞金10万ドルを手にしています。

 来週末はトラック、オライリーともカップと同様にワトキンスグレンで開催されます。

・カップシリーズ予選

 カップシリーズの予選はなんとホースバーがブッシュ ライト ポール賞を獲得しました。昨年のここで初ポールを獲っており2年連続で通算2度目。僅か0.003秒差でチームメイトのスアレスが2位。スパイアーモータースポーツにとって初の予選1列目独占という快挙です。3位からクリス ブッシャー、ハムリン、ブリスコー、そして6位にはカイルブッシュ。ベル、レディック、アレックス ボウマン、タイ ギブスが続くトップ10でした。
 ラーソンが11位、デビュー時の期待感から一転してめっきり影が薄い気がするコナー ジリッシュが12位。14位にエリオット、15位バイロンとヘンドリック モータースポーツは15位以内に全員が入りました。なおバイロンは練習走行で最速を記録しています。9列目にはコリー ハイムとライリー ハーブストが並び、昨年惜しいところまで行ったマイケル マクダウルが19位。ウォーレスは練習走行でクラッシュしたため、オースティン ディロンはエンジンが壊れたためいずれも予選を走れず最後列スタートになっています。

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