ABB FIA Formula E World Championship
2026 Hankook Berlin E-Prix
Tempelhof Airport Street Circuit 2.374km×37Laps=87.838km
Race Energy:38.5kWh
Reference Time for SC/FCY 2:45
Attack Mode:480 seconds/2 time
ABBフォーミュラEベルリン、ピンクのポルシェが制した第7戦から一夜明けて第8戦を迎えました。前日に続いて晴天です。ピットブーストのあった第7戦は39周で昨年と同じでしたが、ピットブースト無しの第8戦は昨年より1周少ない37周になりました。それでも1周あたりエナジー量で計算すると第7戦は1.086kWh、第8戦は1.041kWhで4%ほど少ないのでそれなりの節約が必要です。2026 Hankook Berlin E-Prix
Tempelhof Airport Street Circuit 2.374km×37Laps=87.838km
Race Energy:38.5kWh
Reference Time for SC/FCY 2:45
Attack Mode:480 seconds/2 time
winner:Mitch Evans(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 7)
・練習走行
FP3の最速はモルターラ、ただタイムは57秒581とFP2最速のダコスタを下回りました。前日より路面温度が2℃ほど高いのと、タイヤの本数制限の関係もあって頭打ちになっていると思われます。グンター、バーナード、ベアライン、ジャン エリック ベルニュが続きました。昨日の勝者・ミュラーは12位。300kWではベルニュ、ティクタム、キャシディー、グンター、マローニーのトップ5、ミュラーはこっちでは17位。少なくともFP3では全然目立ちませんでした。
・グループ予選
A組ではちょっと意外な光景、今ひとつ記録が伸びないノーマン ナトーが1分30秒以上残した状態でもうピットに引っこんでしまい暫定8位で終了。チームメイトのロウランドも一度はコースに出たものの2周でピットへ引っ込み、改めてじっくり熱入れして最後の1周が唯一のアタック、ただナトーより0.6秒以上遅い9位で脱落しました。
グループ最速はキャシディーの58秒440でしたがこちらも「タイヤを守るならピット入ろうか?」と時間いっぱい使わずピットに引っ込み、ピットでも「タイヤの温度は保った方がいいの?」と質問、よっぽどタイヤの摩耗が厳しくてやりくりが大変と思われます。バーナード、ドルゴビッチ、ベルニュのトップ4。ティクタムはピットで4分以上待機してアウト・プリップ・プリップ・アタックで終了し2.4秒も遅い1分0秒8。明らかに予選を捨てていました。路面温度が既に32℃を超えてるんですね。
B組でもエバンスが2周だけでタイヤに熱を入れて特に速くない9番手、マルティーはピットを出て1周だけ計測しましたが3秒以上遅いタイムで予選を捨てたっぽい戦略。最速はダコスタの58秒439で、ジョエル エリクソン、マローニー、ベアラインのトップ4でした。キャシディーとダコスタは0.001秒差、デュエルス決勝でこういう勝負だったら面白いんですけど。
・デュエルス
全体的にタイヤの温度が上がりすぎてるんだろうなあ、という印象のデュエルス。A組は準々決勝を走った段階でキャシディーが「この週末の350kwの中で最高の走りだった、ありがとう。」と早くもお礼を言ってるのでポールのフラグかと思ったら、準決勝でバーナードの敗れました。一方B組ではグループ1位のダコスタが初戦敗退してしまい、逆にグループ4位のベアラインが勝ち上がり。デュエルス決勝はバーナード対ベアラインとなりました。
デュエルス決勝、どちらも目一杯、どちらも細かく言えばあっちこっちで欲しいグリップ力が得られずに微妙に狙ったラインを外れながらの走りだったと思いますが、先行のバーナードが57秒330だったのに対し、後攻のベアラインは最終コーナー手前までほとんど同タイム。出した記録は57秒292、僅か0.038秒差でベアラインが競り勝ちました。チーム代表のフローリアン モドリンガー、興奮して机を叩いたら置いてあるノートPCのマウスが振動でちょっと宙に浮いてます、そんなに衝撃加えたらPC壊れますよ(笑)
昨日はハンドルが曲がったりタイヤの空気が抜けたりと良いことがなかったベアライン、会心のポールで3点獲得。バーナード、キャシディー、エリクソン、ベルニュ、マローニー、ドルゴビッチ、ダコスタの予選順位となりました。
・決勝
気温29℃・路面温度35℃、もう夏ですね。今日もほぼみんなバーンナウトせずにグリッドへ移動、やってる側も無線で「マジでバーンナウト誰もやってねえな。」みたいなやりとりをしてたようです、スタートがすぐにできて円滑運営♪
で、いざレースが始まるとペロトン スタイルのレースが幕開け。去年は38周のレースで1分5秒台あたりで入ったのに、今年は1周少ないのに1分11秒、1分12秒、とむっちゃくちゃ遅いペースから始まりました。おかげで順位はコロコロと入れ替わり、あっちこっちでガッシャガッシャ接触して何人か脱落者も発生しました。ただ後方の5人ぐらいは集団に加わらず間隔を空けて走行、ロウランドはスタートで車がちゃんと動かなくてビリになったんですが、同じく後方にいるティクタムは不具合を装って自分の後ろについて節約している、と無線で疑ってました(笑)いや真実は分からんけども。
| ガシャーン(デフリースリタイア) |
4ワイドで発生した接触では大外にいたキャシディーが危うく回りかけ、そのキャシディーに当たったデフリースがサスペンション破損でリタイア。キャシディーは無線でデフリースを
「マジでバカだろ、何であんな運転しかできねえんだ。ブレーキングで動いで完全にこっちにぶつけてきやがった。40周のレースの2周目だぞ!WECではイモラの件についてグダグダ言ってきて『俺はミスしねえ』とか言ってるくせに。」
と他カテゴリーの話までもちだしてバカ呼ばわり。イモラというのはイモラのWECのレースでキャシディーがミスってぶつけた件があったんですね。ただ、客観映像としてはデフリースも4ワイドの状態でもはや何もできず、間に挟まれて内側から連鎖的に弾かれただけで不可抗力という色合いが強い接触だったと思います。なお40周のレースの2周目ではなく、正確には37周のレースの4周目です()
6周目でようやく1分6秒後半ぐらいのペースになってきましたが、まだ2ワイド3ワイドは当たり前。10周を終えて概ねエナジー残量が78%ぐらいで、つまり1周平均で2.2%ほどの消費ペース。単純に100%を37周で割ると1周あたり2.7%となりますから、それを遥かに下回る節約ぶりでとにかく後半に残してある段階から全力で走って出し抜こうという意図が伺えます。
そんな中で12周目あたりからロウランドが動きを見せて、それまでの後方待機作戦で稼いだエナジーを使って一気に順位を上げてきました。10周目はまだ17位でしたが2周後は9位、14周目に5位、そして16周目にはもう1位です。しかもこの状態でエナジー残量が周囲よりも2~4%多く残っているという圧倒的な優位性。スタートで動かなかったのが不具合か芝居かはさておき後方待機作戦が完全に機能しました。いや、本当に動かなかったんだと思いますけどね。
17周目あたりから1回目のアタックモードを使うドライバーが出始めますが、ロウランドはそのまま走り続けたのでここから一時的にリードを明け渡す時間帯になります、ここで一時的に出てきた人とは実質的な順位争いはしてないですからね。とはいえタイミングを逃すと代償も大きいアタックモード、抜かれる流れで自分もアタックに入るのかな、と思ったらなかなか動かずに周回を重ね、2位だった22周目にようやく1回目のアタック4分を使いました。ただ後ろには車が連なっていたので2位から一気に8位まで落ちてしまいます。
ここからもちろんアタックを使って順位を取り戻すロウランドでしたが、抜く台数がちょっと多かったせいか2位まで戻したところで時間切れ、前には17周目に先にアタックを使っていたチームメイト・ノーマン ナトーが残ってしまいました。しかもこの一連の流れでだいぶエナジーは使ってしまったので、もう周囲とは1%程度の差しかなくなっています。
と、ここでロウランドの背後にアタックを使ってやってきた人がいました、エバンスでした。エバンスもまた後方待機作戦していた1人ですが、なんか気づいたらここにいたようです。最初にアタック6分を使っていて、アタックチャンス終了間際の27周目にナトーを抜いて先頭へ。昨日のミュラーに続いてどこから来たのかよく分かっておらず見てるこっちは困惑(笑)
エバンスは次のアタックが2分しかありませんが、何せエナジーもタイヤも温存してきたのでここから1分00秒後半で快走、他の人たちは300kWモードだと1分1秒台が大半で通常モードでのエバンスは最速でした。その後2回目のアタックモードサイクルで31周目にベアラインが追いついてきましたが、このタイミングでエバンスはターン2を遠回りして2回目のアタックへ。ベアラインに抜かれただけのほぼ損失無しで合流し、33周目にリードを奪い返せばもう敵はいませんでした。
そのベアラインはアタックが切れたところで今度は後ろからアタックモード中のロウランドが接近、ちょうど33周目から34周目に入るコントロール ライン付近で抜きに行きます、が、ちょうどそこで大きな破片が原因のイエロー フラッグが出ている様子、あ!抜いちゃった!
| 左前方の電子パネル、黄色の表示 |
ロウランドはペナルティーを受けそうな気がしますが、とりあえずエバンス、ロウランド、ベアラインのトップ3に。35周目には破片処理のためにFCYが50秒ほど導入されましたが、もはやFCYがあろうとなかろうとエバンスの優位性は揺るぎませんでした。17位スタートのエバンスが後方待機作戦大成功で今季2勝目・フォーミュラE最多記録を更新する通算16勝目を挙げました。ドライバー選手権ではレース前の4位から2位へと急浮上、何度目の正直か分からないチャンピオン争いに割り込みました。なんか国際映像の表示はFCY明けからエナジー残量の表示がハングしたっぽいですね、一切エナジーを使わずに1周以上したことになってます^^;
2位は実質ビリスタートのロウランド、3位ベアライン。ベアラインのエンジニアはレース後の無線で「キャシディーとロウランドが勝者だな、あの作戦。」と後方待機作戦がハマったことをたぶんちょっと皮肉を込めて伝えましたが、そんな回りくどい話がさっきまでレースしてた運転手さんに通じるはずもなく、ベアラインは「え、両方勝ったの?」と返答。「いや(苦笑)作戦ハマったって話でな、とにかくよくやった。」とエンジニアは自分のボケ(?)を訂正させられました。
・"黄旗"追い越しの件
でもロウランドには黄旗区間追い越しのペナルティーが、、、出ませんでした。それどころか審議対象ですらありませんでした。国際映像の放送席もJ SPORTSの放送席も「黄旗で抜いた」と言っていて、たぶん見ていた人も大半が同じ感想を持ったんじゃないかと思うんですが、一体なぜだったのか。実は黄旗で抜いたと思っていたあの場面、コマ送りすると新しい事実が見えてきます。
| お分かりだろうか・・・ |
黄色だと思っていた左側の電子フラッグ、ここではなんと赤と黄色の縞模様、いわゆるオイル旗になっています。そう、ロウランドがベアラインを抜いた時にここは追い越し禁止区間ではなかったのです。中継を見て初見で気付いた人はけっこうすごい。じゃあそもそも黄色だと思ってたのが勘違いで最初からオイル旗だった?というと、おそらくそうではないことも分かっています。ザレースによるとこの時のレース コントロール メッセージでは16時39分19秒にターン0(コントロールライン付近)でイエローの表示。
これが1秒後にダブル イエロー、さらに1秒後にまたイエロー、そして16時39分25秒、つまり最初にイエローが出てからわずか6秒後にトラック クリアー表示とイエロー表示が同時刻に並ぶおかしな状態、瞬間的に黄旗が消えてまた出たことになります。16時39分38秒にはスリップリー サーフェス、つまりオイル旗が出て、その2秒後にはクリアーになって、そのまた10秒後にもう1回スリップリーサーフェスが出ました。この頻繁に切り替わってるタイミングでロウランドが通ったと思われます。
何年か前のF1バーレーンでも似たような出来事、短時間にイエローとクリアーが異常な回数繰り返されたことがありましたけど、ストレート部分で大きな破片があるとこういうことが起こりやすいんでしょうか。それはともかく、こうした情報はドライバーにもステアリングの表示を通じて伝えられるんですが、ロウランドによるとオイル旗の表示しか無かったのでそもそもイエローの認識が無かったとのこと。
一方ポルシェとベアラインはあそこを追い越し禁止だと認識していたため、2位に繰り上がると思っていたので何も起きずにがっかり。しかも調査の結果として処分されなかったのではなく、そもそも調査されていないので抗議や再審査の要求をすることもできず、けっこう落胆しているとザレースは報じています。
ロウランドが抜けたのは単に結果論で運が良かったたまたまだった気はしますし、直前までイエローだったのなら抜きに行くのをやめないといけないから実際には黄旗見落としに近いことをやらかしたことになります。電子フラッグやレースコントロールメッセージに何か問題があったのならそれを運営側からちゃんと説明していただかないといけないわけですが、もし現場を通過する人の相当数が黄旗区間だと認識できる状況になっていたのなら、違反行為はしてないから問題なし!で終わらせずに日産とロウランドも反省と検証すべき点はちゃんと振り返らないとだめじゃないかと思いますね。
ということで2位ロウランド、3位ベアラインは変わらず。ブエミ、ナトー、ジェイク デニス、モルターラ、ベルニュ、ドルゴビッチ、エリクソンのトップ10でした。1位から10位を予選順位の数字で並べてみると、
17、18、1、13、16、12、10、5、7、4
予選のトップ10は決勝で半分しか入賞できず、2位スタートのバーナードが11位、6位スタートのマローニーは17位。ダコスタとキャシディーは接触で後退しました。上位勢はスタートからの大混戦を無傷で乗り切る必要があった上に争いが多くてエナジーを消費、後方待機の人はこれを回避してある程度ばらけた状態になってから勝負を仕掛けまんまと成功させました。たぶん上位勢があそこまで遅いペースでレースに入っていなければもうちょっと違った結果だったと思うので、にらみ合いをやりすぎて策士策に溺れる、な結果を招いたんじゃないでしょうか。
・エバンスは何位にいたのか?
じゃあその中で大成功だったエバンスはどっから来たのか、記録を見返すと中継を見ていて理解が追いつかないのも無理はなく、20周目の段階でまだ1位から7秒差の18位でした。19位のキャシディーはピットに入ったためはるか後方、デフリースはリタイア済みでしたから18位はこの時点で事実上の最下位です。
エバンスはここから21周目、後ろに誰もいない状態でアタックを使って山盛りのライバルをサクサクと抜いて行き、22周目に11位、24周目に7位、27周目はもう1位でした。最後尾からのアタックは抜くのにけっこうエナジーを浪費しますし、速い状態の車で引っかかりまくって本来の効力を発揮しきれずレース時間という点では得策になりにくいんですが、エバンスはそこまでのかくれんぼ作戦でタイヤもエナジーもしっかり温存し、しかも思い切って6分のアタックを使って一気に1位まで突き抜けたことが勝利に繋がりました。さすがにこれはやろうと思ってもなかなかハマらない作戦だと思います。
その頃に一足お先に前に出ていたロウランドですが、アタックモードのタイミングを見誤ったんじゃないかと、これはエバンスと違ってレースを見ている時点で感じました。19周目に入ったところでアタック切れ寸前のベルニュが抜きに来て、次の周にはチームメイトのナトーも来ました。このいずれかで抜かれながら自分もアタックに入っていたら、後ろはこの時少しだけ車間距離が開いていたので大きく順位を下げることなく合流できたように思います。
ロウランドは結果的に1回目のアタックでナトーにアンダーカットされたことになり、エバンスはそのナトーを抜いて1.5秒以上引き離しました。逆から言えばロウランドは1回目のサイクルで最低でもナトーの前までちゃんと戻っていればエバンスを抑えられる位置関係だったと相対的な状況から推察できるので、アタックを遅らせた結果8位まで落ちて戻せなかったことは勝敗に影響したと思われます。
かなりの混戦だったのでSC/FCYを警戒してある程度の様子見をしておきたかった、というのがあまり早く動かなかった理由なのかなと思いますが、後から振り返ってちょっと悔いが残る判断だったのではないかと思います。それでも2位を確保できたのは好材料でしたし、ナトーも5位に入ってロウランドがファステスト ラップも記録、日産はこのレースでチームとして29点を獲得しました。
日産はロウランド1人が点数を稼いでしまう構図がすっかり定着しており、ロウランドが優勝して25点を獲ってもチームとして点数が伸びていない場面が多数見られました。1レースでチームとして29点を獲ったのは、なんとパンデミックでベルリン6連戦になったシーズン6・第10戦のベルリンで30点を獲得して以来の最高得点、それ以降も28点というのは何度かありましたが29点以上が一度もありませんでした。チームとすれば100点満点でなくてもまあ85点ぐらいのレースにはなったと思いますね。
逆にチームとして思ったほどの結果を残せなかったのはポルシェで、第7戦はミュラーが勝ったけどベアラインはパンクで脱落、このレースはベアラインが3位だったけどミュラーが接触で入賞圏外で2人がうまく揃いませんでした。それでもジャガーもまたダコスタが2レースとも苦戦、マヒンドラもモルターラが思ったほど結果を残せず、クープラキロはティクタムの車がバグったりして、とそれぞれに問題があったので、チーム選手権としてポルシェの取りこぼしはあまり大きな存在感にはなりませんでした。
最後にそろそろ気になり始めるドライバー選手権を見ておくと
ベアライン、エバンス、モルターラ、ロウランドの4人が18点差の範囲に収まっておりなかなか役者がそろってきましたね。ミュラーは状況次第でベアラインに譲る場面が出てくるでしょうし、キャシディーはステランティス勢全体の課題と言える週末ごとにばらつく一貫性の無さがあるので、チャンピオンはこの上位4人の中での争いになるんじゃないかと思います。次戦はモナコでの2連戦です。
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