NASCAR 第9戦 カンザス

NASCAR Cup Series
AdventHealth 400
Kansas Speedway 
1.5miles×267Laps(80/85/102)=400.5miles
※Race extended to 274Laps due to NASCAR overtime
winner:Tyler Reddick(23XI Racing/SupplyHouse Toyota Camry XSE)


 NASCARカップシリーズ第9戦・アドベントヘルス 400。今週はわりと春らしい陽気だったと思われ、すっきりとした天候で決勝が始まりました。YouTube公式では相変わらずグリーン フラッグ直前からいきなり動画が始まりますが、Abemaではその前のラリー マクレイノルズによる解説映像までちゃんと入っていますね。今回はタイヤの内圧設定に関する話で、下げた方が速く走れるけどやりすぎたらぶっ壊れるよ、というお馴染みのやつです。

・ステージ1

 スタートから激しく争ったレディックとハムリン、まるまる1周争って2周目のターン1で軽く横どうしが接触したのでビビらされました。この争いはレディックが一旦競り勝ったものの、ほどなくハムリンが抜き返してまずはハムリンが主導権を握ります。

 ハムリンは徐々にレディックを引き離して30周で1.7秒差まで拡大。3位はスタートからブリスコーでしたがこちらは6秒ほど離されてしまい、28周目にはラーソンに抜かれてタイヤがだんだん落ちて行ってる様子です。逆に前が空いた後のラーソンはハムリンと同等か少し速い様子なので近くからリスタートできれば勝負権がありそう。
 でもそんなこと言ってる間に33周目あたりからピット サイクル到来、ハムリンは定石通り後ろの動きを見てから38周目にピットに入りサイクル後もリードを維持しました。ここではラーソンがレディックをアンダーカットして2位となり、ブレイニーはピット内でA.J.アルメンディンガーとわりとまともに接触しました。アンダー グリーンの4輪交換でこんなに見事にぶつかるのは割と珍しい気もしますね。ピット作業が上手く行かないだけでなく今回は連携ミスの様子で、スポッターのティム フィディワからクルーチーフのジョナサン ハスラーへは

「これ言ってなかったっけ? それとも無線通じてないかジョナサン。自分的には言ったつもりだったけど、ひょっとしたら間違ったボタンを押してたかもしれん。」

 だとしたら凡ミスです。レースを終えるごとにブレイニーのクルーがどんどん下手になっている(笑)またこのサイクルではホースバーも不運で、せっかくピット前まで8位だったのにレンチが壊れたらしくピット後は17位に落ちました。

 54周目、ハムリンはカイルを周回遅れにしますが特にカイルは地獄に落とすような行為も無くすんなり通過、そりゃそうだ。実際問題カイルにとってはそんなことより、ピット前に使っていたタイヤがほとんど崩壊寸前になるほど摩耗してしまったのでタイヤを気にする方がよほど重要でした。
 ステージ後半のハムリンは周回遅れ以外に対戦相手がいない独走、最後はトッド ギリランドに少し譲ってラップ バックさせてあげたようにも見える堂々のステージ1勝利を飾りました。2位のラーソンは3秒差、3位のレディックはなんと9秒差。ギブス、ベル、エリオット、ブリスコー、ホースバー、ウォーレス、ハイムのトップ10でした。ハイムすげえな。

 惜しかったのはブッシャーで、大胆なアンダーカットが成功して8位で80周目に入りましたが、最後にタイヤがくたびれてしまい12位に落ちてステージ1を終了しました。またコーションが出なかったのでリードラップ選手はギリランドを含めて22人まで減少、フリー パスを得たのはリッキー ステンハウス ジュニアで、ロガーノ、チャステイン、ギスバーゲンなどはカイル同様周回遅れになりました。

・ステージ2

 ピットでボロボロのタイヤをリフレッシュ。89周目にリスタートしたので実質は77周のステージ2、リスタートに勝負を賭けたであろうラーソンがターン3・4で内側からせり上がって行ってハムリンの行く手とダウンフォースを奪いリード チェンジ。勢いを失ったハムリンはエリオット、レディックにも抜かれて4位という不本意な立ち上がりになりました。
 解説のクリント ボイヤーが「おっと残念なお知らせ。」と言うので何かと思ったらラーソンが25周以上リードしたのでハービックのもつカンザス最多ラップリード記録を更新(笑)エリオットは速さが足りてないのか早々に4位に下がってレディックとハムリンが追いかけています。先に接近して争いになったのは2位・3位争いの方で、レディックはちょっとタイヤのもちが悪そうに見えます。
 そのまま120周目あたりからピットサイクル、ステージ1でアンダーカットを狙って45周以上の長旅に挑戦した人はけっこうタイヤが厳しかったので今回は大胆な策に出る人はやや少なめでした。そして124周目にトップ3が同時にピットに入ると、ハムリン陣営が会心のピット作業でレディックを逆転。ただそのハムリンに対して先に入っていたエリオットがアンダーカットに成功し実質的な順位はラーソン、エリオット、ハムリン、レディックの順となりました。
 その後はさしたる出来事もなくステージ2もまたスピーディーに終了、ラーソンがステージ2を制しハムリン、レディック、エリオット、ベルのトップ5。「勝てる車だ。」と無線でピットを鼓舞したウォーレスが6位でブラッド ケゼロウスキー、ギブス、ブッシャー、ホースバーのトップ10でした。リードラップ選手は微減して19人となり20位のスアレスがフリー パスを獲得、ブレイニーはピットでぶつけた影響があるのか周回遅れです。

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションでヘンドリックに少し災難、ラーソンはピット作業が少し遅かっただけで3番手に後退し、エリオットはお隣さんに行く手を阻まれて発進に時間を要し12番手まで転落。174周目にハムリン/ベルの1列目でリスタートし、ベルがかっ飛ばしてハムリンをかわしました。レディック、ウォーレスが続いてカムリがトップ4独占、今回は誰か勝てよ(笑)
 解説陣は面白いことを言っていて、ハービック曰くカンザスは速いラインがけっこう頻繁に変わるので常にどこが速いのかを探りながら走らないといけない、とのこと。これに呼応したボイヤーは「それが上手いのは誰かと言えばダート レーサー。」と続けました。ダートレーサー、つまり今リーダーになったベルです。こういうのが日欧のレースを見てても絶対に分からない知識でありオーバルの面白いところですね。

 その後のリーダー争いはベルとハムリンが0.7秒前後の差で延々と追いかけっこ。これにすこーしずつレディックが追いついてるような・・・と思ってたら現地コマーシャル中の207周目に急にハムリンが離されてレディックにかわされました。何か失敗してるんだと思いますが詳細が確認できず。
 レディックはさらにベルに迫る一方でハムリンはその後も引き離されており、これは勝負を賭けるべきと判断したようで215周目にピットへ、まだ50周以上残っています。さすがにこれは終盤のタイヤを考えると上位勢には反応しにくく、2位のレディックは220周目、ベルは続く221周目にピットへ。これでピット後は順位が反転して実質順位がハムリン、レディック、ベルになります。あとはハムリンのタイヤがどのぐらい耐えられるのか。

 しかしこの後レースは意外な展開に、ハムリンは5周古いタイヤでもレディックと同等の速さを維持して3秒程度の差を維持すると、最もタイヤの新しいベルは230周目のターン1・2でミスって壁に当ててしまいラーソン、ウォーレスに抜かれ5位に後退。さらにその直後、ピットに入ろうとしたチャステインがライン上で減速したためウォーレスが衝突しそうになり緊急回避。これにベルが詰まって失速し、ハムリンを追うどころか大きな差になってしまいました。これはさすがにもう自力では追いつかない。
 残り30周を切るとハムリンとレディックの差は少しずつ縮み始め、残り20周で1.8秒差、残り15周では1.1秒に。ここまで来ると1周で0.2秒ずつ追いつき始めて4周後にはついに真後ろに来ました。ここで時間を食ってしまうとタイヤがくたびれるので一発で仕留めたいところですが、レディックは見事にこの周のうちにハムリンの内側に並びかけて残り10周でリードを取り返しました。
 しかしハムリンも諦めずにレディックを追撃。周回遅れのディロンが邪魔になってレディックは後方乱気流で苦戦、「どけよ!!」と無線で怒号が聞こえてきます。この間にハムリンが何度かレディックに仕掛けようとしましたがギリギリで凌ぎ、3周ほどかけてどうにかディロンも処理して一安心。
 これでもう邪魔になるものはない、と思いきや残り3周、レディックはターン1への飛び込みが明らかに緩くてハムリンがまたもや急接近。そしてターン3に入ったところで突然壁スレスレどころか擦りつつ放送に流れてきた無線は「燃料ねえよ!!!」という怒号。ハムリンがやすやすとリードを奪い返し、今日はハムリンの日やったか~。ともう見てるこっちも終わった気になりますが

 まだ終わりませんでした。残り2周、コディー ウェアーがターン4でスピンしてホワイト フラッグ直前にまさかのコーション、しかもハムリンの目の前で。これでオーバータイム確定、今までの265周は何やったんや、NASCARはウェアーに札束積んでスピンしてもろたんちゃうやろな。ハムリンのファンから陰謀論が聞こえてきそうです。もちろんこれでリードラップ選手がピットに入り、さりとて順位は下げたくないので上位10人が2輪交換しました。レディックはガス欠を回避して命拾い。4輪交換最上位は11番手のブリスコーですが、昨年秋のカンザスは似たような形で4輪交換したエリオットがごっつぁんしています。

 そして迎えたクレディット ワン バンク提供NASCARオーバータイムのリスタート。ハムリンは出足が良かったものの、後ろのラーソンがわざとなのか全然押してくれませんでした。ラーソンはケゼロウスキーに押してもらって勢いを付けるとハムリンの下に潜り込んでターン1で強制3ワイドの勝負手。ハムリンは外にレディックもいるのであまり無茶はできず、そのレディックは2列目から大外刈りを狙ってきたベルの抑止に失敗。
 ハムリンがせり上がり、レディックも外へ逃げるしか無く、そして外から前に出ようとしていたベルをレディックが引っかけました。ベルは壁に当たるわレディックは失速するわ、挙げ句の果てに壁に当たってふらついたベルがそのままよろけてハムリンにぶつかっていくわで、ラーソンの罠に全員引っかかったみたいになってカムリの壁崩壊。
 ベルが危険を察知して引いたのでハムリンは最小限の損害で済み、とりあえず2位ではあるもののラーソンから6車身近い差。こりゃあもう誰もラーソンに追いつかないだろう、と思ったらさっき失速してエリオットにすら抜かれかけていたレディックが外ラインで復活。最終周のターン1で探り探り真ん中のラインを取るラーソンに対して迷いなく内側に飛び込んでバックストレッチでは既に真横へ。ここまで来たらもうレースはレディックのものでした。
 タイラー レディックが早くも今季5度目の優勝で通算13勝目、開幕からの9戦で5勝以上挙げたのは1987年のデイル アーンハート以来39年ぶりの記録だそうです。レディックはもはや伝説のドライバーと肩を並べたわけですね( ゚Д゚)でもアーンハートの記録はもっとえげつないもので、第8戦までになんと6勝しました。アーンハートはこの年に彼の通算で唯一の2ケタ勝利となる11勝を挙げて2年連続3度目のチャンピオンを獲得しました。


ジェイミー リトル「タイラー レディックのチームが芝生を横切ってドライバーを祝福しに駆け寄っています。タイラー、どこから話せばいいでしょうか。残り数周でつまづいて、イエロー フラッグが出て。ピットに入って、デニー ハムリンや他のドライバーたちと競り合うことになりました。どうやって勝ち抜いたんでしょうか?」

レディック「いやあ、本当に終盤のイエローフラッグに恵まれましたよ。(客席に向かって)見ました?ヤバかったっしょ?信じられないですよ。まず最初に、もちろん自分の気持ちを正直に言うとイン側にいるのはいつも嫌なんですよ。クリストファー ベルには本当に申し訳なかったですね。でも本当にすごいレースで、11番が前に出てきて、こっちはタイトになって。だから、あまりいい気分じゃないですね、クリストファーを引っかけてしまって。彼はいい一日を過ごしてましたから本当に気の毒でした。まあとにかく終盤のリスタートは厄介で、もうホントぐちゃぐちゃで、当然5番を抜かないといけなかったんですけど本当にびっくりしましたね。なんとか彼のイン側に追いつくことができて。サプライハウス トヨタ カムリは一日中最高でした。本当に感謝しています。最後のコーションもですけど。」

ジェイミー「昨日、カンザスでビクトリー レーンに戻ることを目標にしているとおっしゃっていましたが、このチームはこの瞬間を取り戻すためにどれだけの時間と労力を費やしてきたのでしょうか?」

レディック「もう山ほどですよ。去年の秋はここで本当に安定した走りができましたし、今週末も車は同じような状態でした。残念ながらあまりラップ リードはできなくて、ステージ1でデニーに先行を許してしまってほとんどの時間彼らの後ろを走っていました。でも、そこで正しい判断ができて、ビリーがタイヤを2本交換するという素晴らしい判断をしてくれて。綺麗なリスタートができなくて20番をカバーしようとしたんですけど彼がアウト側に出て3ワイドになってしまって、スペースがなくなってしまいました。」

ジェイミー「ボスのMJはどうですか?彼が現れると、練習から圧倒的な強さを見せてポールポジションを獲得する。彼の存在には何か特別な力があるのでしょうか?みなさんはいつもレベルアップしているように見えます。」

レディック「ボスが僕らと一緒に過ごすために来てくれるなら、期待に応えないと、彼に勝利をもたらさないと、それだけですね。」

(ここでマイケル ジョーダン登場)

ジェイミー「すべては勝利のためですね。MJ、今シーズン5勝目です。この瞬間、いかがでしょうか?あの終盤の戦い、どんなお気持ちだったでしょうか?」

マイケル ジョーダン「そうですね、まあ、僕はデニーと戦ってましたからね。だから、ぶっちゃけ彼には勝ちたかったわけですよ、後で彼とたくさん言い争うことになるのは分かってますからね(笑)でもまあ、良いレースだったんですけど燃料が無くなって、何が起こっているのか分かりませんでした。でも今日の23XIはみんなよく走ってくれました。おそらく4人ともトップ15に入ったと思います。このプログラムの素晴らしさを物語っていますね。それにこの若者は絶好調です。何と言っていいか分かりません。彼を落ち着かせることができるかどうか分からないですね。信じられないヤツですよ。最後の数周は本当にすごかった。彼を誇りに思いますしチーム全体を誇りに思います。」

ジェイミー「マイケル、今シーズンの皆さんの活躍ぶりを見て、どれほど楽しいですか?」

MJ「そうですね、勝つのはいつも楽しいものです。そして今、23XIの全員が楽しんでいます。ですからここにいて、すべての勝利を目の前で見るがことができて、チームとしても本当に嬉しいです。そして、間違いなくこの勢いを維持し続けなければならないと思っています。」

ジェイミー「おめでとうございますMJ、タイラーレディックが優勝旗を受け取り、今シーズン5勝目です。」

 勝ちすぎて心なしかブーイングが出てきた気がするレディック&バスケの神様でした。レディックの言う通り、このレースでのラップリードは僅か10周でしたね。2位は78周をリードしたラーソン、リスタートを決めて逃げれるかと思ったけど2輪交換はすごくタイトだった、とぶっつけ本番のハンドリングは今一つだった模様。3位は4輪交換が上手く行ったブリスコー、4位にこのレース最多・131周をリードしたハムリンでした。レース後にMJと言い争いしたかどうかは知りません(笑)
 5位のウォーレスは「彼が勝って腹立たしい、もううんざりだ(笑)」と冗談を飛ばし、ケゼロウスキー、バイロン、エリオット、ギブス、ブッシャーのトップ10。ブッシャーはステージ1でのタイヤ崖到来問題の後にピット作業の失敗もあったんですけど手堅いレースしましたね。MJの言う通りハーブスト14位、ハイム15位で23XIの4人はトップ15に入りました。レース中盤にハイムとハーブストにヒヤリハット案件があってちょっとハーブストが怒ってましたけど^^;
 チーム ペンスキーの最上位は12位のシンドリック。ブレイニーは接触でスプリッターを曲げたせいか1周遅れの24位、ロガーノは2周遅れの30位。ペンスキー、特にロガーノは高速トラックでセッティング迷子気味でしょうか。ボウマンは復帰2戦目でリードラップでの完走を果たし18位、序盤戦は無線の不具合で情報が全然聞き取れずに困っていたスアレスが19位。ベルはハムリンとの接触後にターン4でスピンしてダイナミックピットインしたため1周遅れの20位でした。カイルは4周遅れの35位、地獄を見たのは自分の方でした。

 
 今回は結果としてはレディックの優勝でしたが、ハムリン、ラーソン、ベルを含めた4人は誰が勝っても不思議ではない内容だったと思います。コーションが全然出なかったのでちょっとした状況や戦略の判断が大きな差になり、それがまさかのオーバータイムで最後だけ凝縮されてああなりました。普通に行ったら勝ってたのは間違いなくハムリンで、でもガス欠という予想外の要因が無ければレディックのものでしたからここも何をもってタラレバとするかで結論が変わりますね。まあハムリンは6周遅れのドライバーが残り2周でスピンして勝利を奪われたことに不満みたいですけど^^;
 オーバータイムではレディックの好調さがそのまま出た印象で、使い古した左側のタイヤと新しい右側のタイヤ、ターンに飛び込んでみるまでどういう状態か分からない中でラーソンはその直前のハンドリングが決して抜群とは言えなかったので自信をもってラインを定められないし踏むこともできない、方やレディックはちょっと捨て身にも見えましたけどタイトだったという1周目である程度感覚を掴んで2周目は車を限界近くまで扱えていたのではないかと思います。
 ベルもリスタートでの大外刈りは成功寸前だったので不運でしたが、そもそもアンダーグリーンのピットで簡単にアンダーカットを許してしまったのがもったいなかったと思います。周回数的には220周目が頃合いだと思って見ていたのでレディックが不意打ちで早く動いた!という感じでもなかったですし、1周遅れたらレディックにひっくり返される差なのは分かってたはずですからあの1周は必要なかったように見えます、そこから悪い方悪い方へ向かってしまいましたね。一方トヨタ陣営とすると、上位を独占しながら同士討ちして誰も勝てなかった昨年秋のレースを再現する寸前まで言ってましたからレディックが勝ってホッとしてるでしょう。

 さて、次戦はドラフティング トラックのタラデガ登場。ステージ周回数が燃費レース対策で98/45/45という特殊設定です。また想像の斜め上を行く変な問題が起こらないといいですね!

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