NASCAR 開幕戦 デイトナ・事前情報

NASCAR Cup Series
Daytona 500
Daytona International Speedway(Daytona Beach,Florida)
2.5miles×200Laps(60/60/80)=500miles
Goodyear Racing Eagle Tire Code:D-5142(L),D-5218(R)


 さあやってきましたNASCARの正月・開幕戦のデイトナ500、これが68回目の開催。なんですが当方風邪を引いてしまって体温が37℃~38℃を行ったり来たり。デイトナのバンク角・31°より遥かに高いですな、ハハハハハ・・・はあ。開幕戦にして最大のイベント、昨年のレースは平均676万人の視聴者数を記録しており、今年もFOXの広告枠はどうやら売り切れたようでウハウハです。
 デイトナ インターナショナル スピードウェイは言わずと知れた存在なので細かい説明不要かと思いますが、レースはとにかく目に見えない風の流れを読んでドラフティングを巧みに使う必要があります。車両の航続距離は50周ももたないので、各ステージ距離はいずれも1回給油しないと走り切ることができません。基本はアンダー グリーンのピットはできるだけ集団で入って給油のみ、ステージ間コーションでタイヤも換える、というパターンになります。
 近年はこの給油が戦略の鍵を握る場面が多く、とにかく最終ステージに行う最後の給油時間をできるだけ短くして前に出る、という前提で逆算して戦略を組み立てることが増えています。そのため、特にステージ序盤などは後続車が燃費を稼ぐために前の人を風よけにするのは当然のこと、後ろが抜いて来ないから先頭走者ですらスロットルを全開にしない、というフォーミュラEみたいな巧みな心理戦がけっこう起こります。何をやってるのか分からないと意味不明で単調な展開になりますが、全ては最後の15周に向けての準備なのでそこまでの180周は見る側とすると全体を大まかに見ておくのが得策です。目先の順位はそこまで関係ありません。

 そしてデイトナ500は年間で唯一決勝レースへ向かう手順が他とは異なっており、予選→予選レース→決勝、の流れになっています。予選では上位2人がそのまま決勝スタート1位・2位の1列目が確定。予選順位はそのまま予選レースのスタート順位に適用され、奇数順位/偶数順位に分かれてそれぞれでデュエル1、デュエル2と呼ばれる60周の予選レースを走行。予選レースの順位で2列目以降のスタート順位が決まります。
 この過程で注目を集めるのはスポット参戦の人たち。普段のレースの倍以上のテレビ視聴者数を誇る=注目度が高く、しかも基本はスロットルを踏み続けるだけの疑似直線レースであるデイトナは小規模チームや単発参戦でも予算が付けやすいし勝負権が無いとは言い切れないので、普段と違って予選落ちするほどの参加申請が集まります。有力チームも年間通じて動かしている車両以外に、スポット参戦で陣営の抱える若手や話題性のある選手をスポンサーと共に引っ張ってくることが多いですね。
 チャーターを保有している36台の車両は予選落ちが無いのでフル参戦36選手はうっかり車を全損させても決勝には車さえ直ったら出られますが、チャーターを持たないスポット参戦の車両・通称オープン枠は数少ない出場枠をここで争うことになるので、数が多ければむしろこっちの方が注目点になります。逆にスポット参戦する人が少なくて予選落ちがほぼ無い、みたいな状態のときはだいたい景気が悪い時なので、デイトナ500のエントリー リストが寂しいとちょっと運営さんは困ります。

 なお、今回使用されるタイヤは左右とも昨年と同じ、決勝で使えるのは新品7セットと予選から持ち越し1セットの計8セットです。デュエルはこれと別にふんだんに使えます。

・スポット参戦選手

 結果として今回は9人のスポット参戦選手が集まりました。顔ぶれを見て行くと

36 チャンドラー スミス(フロント ロウ モータースポーツ)
40 ジャスティン オールガイアー(JR モータースポーツ)
44 J.J.イェリー(NY レーシング チーム)
62 アンソニー アルフレード(ビアード モータースポーツ)
66 ケイシー メアーズ(ガレージ 66)
67 コリー ハイム(23XI レーシング)
78 B.J.マクラウド(リブ ファスト モータースポーツ)
84 ジミー ジョンソン(レガシー モーター クラブ)
99 コリー ラジョーイ(RFK レーシング)

 C.スミス、ハイム、ジョンソン、ラジョーイの4人はフル参戦チームから追加で出てくる車両ですね。この中でジョンソンだけは、知名度が高い・実績を残した選手が予選落ちせず決勝に出場できる特例制度『オープン特例免除』の適用を受けるため無条件で決勝に進むことができます。自力で出場権を得られれば問題ないですが、ダメだった場合はジョンソンは例外的な41人目として出場が可能です。
 ラジョーイはザ クラッシュにブラッド ケゼロウスキーの代役で出場していましたが、デイトナにもチームの4台目として参加。99番は昨年までトラックハウス レーシングのダニエル スアレスが使っていましたが、99番を今季は使わず権利を放棄したので『ラウシュの99番』が戻ってきました。ケゼロウスキー自身もこのレースには出場しますが、まだ車の乗り降りでけっこう苦労するレベルで足が直っていないそうなので、場合によっては途中交代する可能性もあります。ラジョーイが別の車で出てしまってるのでその場合デイビッド レーガンが待機しています。
 ラウシュの99番と言えば2004年~2014年にカール エドワーズが背負ってアフラックのアヒルちゃんのスキームで大人気を博していましたが、エドワーズのファン的にはヒゲのおっさんが99番を背負うのはちょっと複雑かもしれません(っ ◠‿:;..., あ、ちなみに2016年に1戦だけラウシュから99番を付けて出た選手がいるのでラジョーイはそれ以来になるんですが、それは一体誰でしょう。私は1ミクロンたりとも記憶していない超マニアッククイズ、正解は最後に(笑)
 ハイムは昨年のクラフツマン トラック シリーズで圧倒的な力を見せてチャンピオンを獲得したトヨタ陣営期待の若手、今季はすでに発表されているだけでカップシリーズの12戦に出場すると発表されており、これ以上の時間を下部カテゴリーで過ごすよりも来年以降のカップフル参戦を見据えてこちらの現場を重視する活動となっています。一方47歳のメアーズは2019年に引退したと思ったら近年『通算500戦出場を達成したいねん!』と活動を再開させましたが、出場の壁が高いデイトナ500で495戦目を数えられれば幸先が良いしこの先の出場にスポンサーも付きやすくなるでしょう。

 スポット参戦の選手の決勝進出への条件は、まず予選でオープン枠の中で上位2人に入ることが出来れば、その段階で決勝出場権が手に入ります。残る2枠はデュエルでの順位次第となり、デュエル1、デュエル2それぞれでオープン枠最上位だった1人ずつが決勝出場権を得ます。ここで今年はわりと本番直前になって規則に変更があり、昨年までは『オープン枠でデュエル最上位だった選手がオープン枠で予選最上位だった選手と同じ場合は、出場権はオープン枠予選で3位(4位)だった人が得る』という変な規則で分かりにくかったんですが、これが『予選で既に出場権を得た人を除く最上位』に変更されました。
 また、オープン枠から晴れて決勝へ進んだ4人のスタート順位についても微妙に変な規定だったのが変更されて、単純にデュエルの順位に基づいて配置されることになっています。オープン暫定免除枠は適用されると賞金もポイントも貰えない、という規定になっています。

 なお、今回の予選を前にしてNASCARは予選時の規則を厳格化し『ウインドウ ネットに手を触れるなど気流を操作する』行為を禁止事項としました。これは2024年にジョーイ ロガーノが水かきのようなものが付いた特殊な手袋を装着し、左手をウインドウネットに添えることで空気抵抗を削減する気流操作を行っていたことに端を発した規則です。ロガーノはこの変な手袋で罰金処分を受けましたが、普通の手袋でも網に手を添えたら違反です。


・レース前の話題

 契約関係の話が色々出てきており、まずカイル ラーソンがヘンドリック モータースポーツと5年間の契約延長で合意して2031年まで所属することが発表されました。また、スパイアー モータースポーツはカーソン ホースバーと『長期間』の契約延長に合意したと発表、他チームも手を伸ばしているんじゃないかという話もあった23歳ですが、当面はスパイアーで戦い続けるようです。いやでもスパイアーって契約しても何かの拍子に掌を返すところがあるし、実際のところは分かりませんね。どうしても欲しいチームに『じゃあ契約買い取って』と高値で売る気かもしれんし(邪推)

 一方、オライリー オート パーツ シリーズでは「?」な展開が発生。当初シグマ パフォーマンス サービシーズが買収し新たな体制で参戦すると発表されていたAM レーシングが1月30日になって『売却は正式に完了しませんでした』と発表。急転AMレーシングとして活動を継続することになりました。ドライバーには昨年ビッグ マシーン レーシングで1勝を挙げているニック サンチェスがフル参戦することが発表されました。

 そして1つ心配な情報も、昨年は最終戦で失意のシーズン2位、12月に父親を火事で亡くしたデニー ハムリン。ザクラッシュには出場して走っていましたが、2023年11月に手術を受けた右肩の負傷箇所に痛みが再発しており、治らないままシーズンを戦うことになりそうだと明らかにしました。12月の実家の火災後に焼け跡から両親の所持品を探そうとしていた際に転倒し悪化したとのこと。それ以前から痛みは再発していたようですが、わざわざそれを公表するぐらいあんまり状態はよろしくないと思われます。
 
・予選

 さあまずは栄光のデイトナ500ポールを決める予選。全員がまず1回の計測をして、上位10人が第2ラウンドに進む2ラウンド制は今年も変わらず。そして栄えあるブッシュ ライト ポール賞を獲得したのはカイル ブッシュでした。カイルは21回目のデイトナで初のポール獲得、これまでデイトナ500での優勝は無いんですが、カップシリーズの歴史上『21回目以上のデイトナ500出場で初優勝した』というドライバーはいません。最も遅かったのは1998年のデイル アーンハートで20回目、同じリチャード チルドレス レーシングの選手として伝説のデイルシニアを超えられるでしょうか。
 そして2位はチェイス ブリスコーが獲得しました。デイトナ500で最後にポール トゥー ウィンが達成されたのは2000年のデイル ジャレットまで遡るので『あれ?予選順位どうでもよくね?』とか思ってしまいますが、それでも実は勝率13.43%はスタート順位別で最高。2位と併せて1列目スタートでの勝率は23.88%とそこそこ高い気がしてきます。まあ1位から39位までバラバラに勝者が生まれてるんですけどね。
 
 そしてオープン枠では唯一Q2に進んだハイムが5番手、オールガイアーがQ1落ちも全体14位となり決勝進出確定。ラジョーイはオールガイアーに0.004秒及ばず決勝進出を手に出来ませんでした。

・America 250 Florida Duel 1

 デュエル1は残り5周で起きた多重事故でオーバータイムへ。外側はロガーノ-ライアン ブレイニーのペンスキー勢、内側はケゼロウスキー-ラジョーイとRFK勢が並んでおり、このままRFKは協力して走ってラジョーイが決勝ね、と思ったらそうはなりませんでした。最終周のバックストレッチで外レーンが大きく車速を伸ばすと、勢いを失った内側ではなんとラジョーイが後ろから押された拍子に姿勢を乱してクラッシュ。これでコーションが出てレースは終了、デュエル1の勝者はロガーノとなりブレイニー、オースティン ディロン、ケゼロウスキー、ジョン ハンター ネメチェックが続きました。彼らが本戦での内側2~6列目スタートになります。
 そしてオープン枠の争いはというと、ラジョーイの事故をすり抜けたメアーズがなんとオープン勢で最上位。メアーズは途中ピットに入る際にスピンしてコーションを呼び、芝生で立ち往生して一時は周回遅れになっていましたが、ほとんど奇跡的な結果でした。この組で走ったジョンソンはオープン暫定免除により41位で決勝スタートを確定、ラジョーイとスミスが予選落ちとなりました。あれ?ロガーノイメチェンしました?

・America 250 Florida Duel 2

 デュエル2は注目ルーキー・コナー ジリッシュが『なぜか1人だけポツンとピットに入る』という謎の洗礼を受けたもののコーションなく進み、ピット サイクル後に先頭に出たチェイス エリオットが逃げ切って勝利。ホースバー、ラーソン、マイケル マクダウル、クリストファー ベルと続いて彼らが決勝の外側2列目以降のスタート順位になります。チェイスは雰囲気変わりませんね。

 そしてオープン枠の争いはというとそもそもこっちに割り当てられたのがオールガイアー、アルフレード、マクラウド、イェリーという微妙な顔ぶれ。安全のためオールガイアーは後方に下がったらマクラウドとイェリーのところはそもそも車があんまり速くないので、結果的にアルフレードも相手を見て終盤は無理せず後方を走った模様。堅実にアルフレードが決勝へ進んだ、はずだったんですがなんとレース後に車両規定違反で失格になりました。本来装着されているべき冷却ホースが装着されていなかった、というもので、これで繰り上がりでマクラウドが本戦への出場権を手にしました。

 なお、本来なら現地14時30分に開始予定の決勝ですが、天候状況への不安からスタート手順の開始が1時間繰り上げられて13時30分に開始されることが発表されています。グリーン フラッグは14時13分ごろとのこと。何かしらの方法でリアルタイムで見ようとしている方は時間にご注意ください。

・Craftsman Truck Series Fresh From Florida 250

 ここからは併催シリーズ、注目選手も多数参戦したトラックシリーズから。その中の1人・人気YouTuberで昨年から本格的にARCAシリーズにも参戦し始めたクリータス マクファーランド(本名ではない)は6周目に早々にスピンして脱落。トニー スチュワートも36周目に貰い事故で脱落し、ホースバーも2回ほどスピンしてとっ散らかりました。
 オーバータイムとなったレースは終盤までなんか地に足が付いていない展開が続き、最後は上位3人が優勝を目指して激しく車を互いに寄せ合う混戦、の脇をすり抜けたC.スミスがなんと優勝をかっさらっていきました(笑)昨年の第10戦ノースウィルクスボロ以来となる通算8勝目。



・ARCA Menards Series General Tire 200

 明日のスター候補がいる、かもしれないARCA メナーズ シリーズ。車が壊れたりなんやかんやでコーションが多く残り2周でリスタートしましたが、なんと最前列を走るジェイク フィンチが押されてスピンし、隣にいたガス ディーンを巻き添えにクラッシュする共倒れ。これでオーバータイムとなったレース、さっきフィンチを押した張本人であるジオ ルジェーロが制してARCAシリーズ初優勝を挙げました。トラックでは惜しくも2位だったのでもうちょっとで連勝でした。
 ちなみにこのレース、ラムとドキュメンタリー番組の共同企画で見事今年のクラフツマン トラック シリーズフル参戦を手にしたティモシー タイレルが走っていたんですが、何せ後押しするのはラム、車のスポンサーになるのもラム。でもARCAにラムの車は無いもんだから

 でかでかとラムと書かれたシボレーで走ってました、トヨタの車にホンダって書いてあるようなもんですから目を引きますね(笑)タイレルは6周目にちょっと慌てた進路変更をしたら後ろから押されてしまいスピン、結局車が壊れたようで完走できず38位でした。マクファーランドはデイトナでは初の完走を果たして11位、レーシングリファレンスインフォだと本名の『ギャレット ミッチェル』で登録されてるから名前が見つけられん。また唯一の日本人選手・古賀 琢麻はリード ラップで完走して16位でした。

・O'Reilly Auto Parts Series United Rentals 300

 スタートと同時に中団で玉突き事故、ステージ1終盤に多重クラッシュ、といやな予感しかしないオライリーシリーズ。その後も複数の多重事故でテープだらけの車が上位を走るデイトナらしい光景になりますが、そんな状況と無縁だったのがデイトナで無類の強さを誇るオースティン ヒルでした。ステージ1・2を連取すると最終ステージも的確にコーション中のタイヤ交換を決断。最終周も後続をきちんと抑え込み、シリーズ通算15勝目、デイトナでは4勝目となりました。


 


クイズの答え:ライアン リード

 2016年の第32戦タラデガに99番で出場して26位でした。リードがカップシリーズに出場したのはこの一度きりですが、彼は免疫疾患である1型糖尿病を患っておりレース活動は難しいと医師に告げられながらも活動を継続し、同じ1型糖尿病患者の支援活動も行うなどしました。1型糖尿病患者がカップシリーズに出場したのはこれが史上初だったとのこと。オライリーシリーズでは開幕戦デイトナで2度優勝しています。




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