一昨年は年間の成績で言えば10位以下のパッとしない成績だったジョーイ ロガーノがチャンピオンを獲得、昨年はチャンピオンに片手が届いていたデニー ハムリンが残り3周での不運なコーションでチャンピオンを逃し、その制度設計について疑問の声が多く寄せられていたNASCARの現行プレイオフ制度。1月12日にNASCARは会見を開き、2026年はなんと2013年以前に採用されていた『チェイス制度』に近い形態へと変更されることが発表されました。
2014年から昨年まで12年間使用されたプレイオフ制度は基本的に優勝=プレイオフ進出となる制度で、カップ シリーズならレギュラー シーズン26戦を戦って16人がプレイオフに進出し、プレイオフの10戦を戦いました。3戦ごとに成績下位4人が脱落し、最終戦は4人が全員5000点の同点で勝負=最終戦で最上位だった人がチャンピオンという制度でした。これは旧プレイオフ制度だと最終戦よりも前にチャンピオンの行方がほぼ決まってしまって最後が消化試合のようになってしまうので、これを防いで絶対にどんなことがあろうと最終戦が強制同点決勝一発勝負にさせて注目度を高める目的でした。鉄オタ選手権の最終問題は100ポイント差し上げます!みたいなやつです。
いつも書いていますが、この制度だと開幕から35連勝して一度たりとも1位を譲らなかった最凶最悪の無敵ドライバーがいたとしても、最終戦の最後に周回遅れに体当たりされて事故ったらチャンピオンにはなれないというある意味極めて理不尽な制度です。それでもこの制度導入以降、わりと納得のいく顔ぶれの4人が勝ち残って見ごたえのあるレースを展開し、妥当と思える選手が最終戦を制してきたのでみんななんとなくそんなもんだと思って受け入れられていました。
ところが上記の通り2024年のロガーノが年間を通してみると明らかに成績に安定感が無くて『制度上で重要なレースだけうまく勝った』というような結果、統計数値上も歴代のチャンピオンから見て大きく見劣りする内容だったので疑問の声が噴出。いや、正直これは最初からそういう制度なんだから実際に理不尽チャンピオンが出た時だけ文句を言うのはおかしいと思うので、そこに文句を言って良いのはそれまでのシーズンでも文句を言っていた人だけだと思うんですが、まあそんな正論は通らないので急激に制度変更に向けた機運が高まっていました。
そして今回の記者会見で発表された新たな制度は、箇条書きするとカップシリーズでは
・レギュラーシーズン26戦/プレイオフ10戦の配分は維持
・プレイオフ進出権はレギュラーシーズンの獲得ポイント順で決定
・プレイオフ進出者は16人
・チャンピオンはプレイオフ全10戦のポイントで競う
・優勝者の獲得ポイントを55点に増加
・ステージ ポイント制は維持、プレイオフ ポイント制は廃止
となりました。単純なポイントで競う制度になったので勝利数そのものは意味が薄れる一方で、従来40点だった優勝の獲得ポイントが55点と明確に大きくなることで価値を高めています。脱落方式ではなくなったのでプレイオフポイント制度は制度上取り込むことがほとんどできず必然的に廃止になりました。
方や、レギュラーシーズン順位に応じて与えられていたプレイオフポイントのボーナスの考え方は新制度にもそのまま持ち込まれる形になります。レギュラーシーズン順位に応じてプレイオフ開始時点の持ちポイントが異なり、
1位 2100
2位 2075
3位 2065
4位 2060
・
・
・
15位 2005
16位 2000
となります。基礎点は2000点で、レギュラーシーズンを制した人はボーナス100点、2位は75点、3位65点、というような考え方。4位以下は順位が1つ下がるごとに5点ずつ減って行って16位の人は基礎点無しの2000点スタートです。レギュラーシーズン1位はプレイオフでもかなり優遇してスタートできる仕組みですね。この状態でプレイオフの10戦を争って最終的にポイントが最も多かった人がチャンピオンです。最終戦前にさっさと決まってしまって消化試合になっても文句を言わないように、文句を言って良いのはロガーノのチャンピオンに文句を付けていない人だけです(笑)
今回の制度変更により、常に上位で安定して戦っている有力どころは3戦毎に多大な重圧に晒される環境からは解放され、プレイオフは10戦を見据えた安定したレース運びをある程度重視できるようになりました。昨年までの制度ではレギュラーシーズン序盤である程度の成績を出せた選手は、あとはプレイオフポイントをいかに貯めておくかの方に重点が移ってレース結果よりもステージ勝利、5位になるぐらいだったら一か八かの優勝狙いでプレイオフポイントがもらえない2位以下は2位も25位も同じ、という戦い方がありましたが、あまり極端な戦術はとりにくくなりそうです。
一方、どこかで優勝して一発プレイオフ進出を決め、チャンピオンを狙うというよりはオーナー ポイントで16位以内を確定させて分配金を多く手にしたいと思っていた中堅~下位チームにとってはプレイオフの壁が高くなって戦略の再考を迫られることになりそうです。特にロード コースを得意とし、ここで勝ってプレイオフに滑り込むことを期待されている選手/チームは真価を問われそうです。
・2025年にチェイス制度があったら?
当然気になるのは、昨年シーズンがもしこの新しい『チェイス制度』で開催されていたなら誰がプレイオフに進み、誰がチャンピオンだったのか?ということになります。もちろん制度が違えばレースの進め方は違うので単純比較はできないわけですが、そんな疑問にアメリカのいくつかのサイトが早くも応えていました。まず、レギュラーシーズン26戦を終えてプレイオフに進んだ16人は1位から順に
ウイリアム バイロン
カイル ラーソン
デニー ハムリン
ライアン ブレイニー
クリストファー ベル
チェイス エリオット
チェイス ブリスコー
タイラー レディック
アレックス ボウマン
バッバ ウォーレス
クリス ブッシャー
ジョーイ ロガーノ
ロス チャステイン
ライアン プリース
オースティン シンドリック
シェイン バン ギスバーゲン
となったようです。ギスバーゲンは現実世界ではレギュラーシーズン4勝でプレイオフに進んだようなもので、オーバルがダメだから新制度ではプレイオフに全く手が届かないだろう、という印象ですが、実際は新プレイオフ制度を適用した仮想選手権でも優勝=55点という恩恵を4回も受けたらなんとギリギリでプレイオフに進んでいます。タイ ギブスは僅差の17位で脱落です。
一方でジョッシュ ベリー、オースティン ディロンは現実世界では1勝してプレイオフには進みましたが、新制度を使った仮想世界だとそれではプレイオフに全然届きません。RFK レーシングのブッシャーとプリースは安定してポイントは獲れていたのでこの制度だとプレイオフへ進むことができます、これはドライバー一覧の記事でも触れた内容ですね。
そしてプレイオフ10戦を新制度で行っていたと仮定した場合、これはサイトによって微妙に計算結果がズレてはいるんですが、どうやらチャンピオンはやっぱりラーソンが獲ったようです。2位からベル、ブリスコー、ブレイニー、バイロン、ハムリンと続き、数字上で最終戦までチャンピオンの可能性があったのはこの6人でした。ただハムリンはかなり離されていて現実には厳しい数字です。ギスバーゲンはプレイオフポイント制度がありませんので、2000点からスタートしてローバルで優勝した55点ぐらいしか大量点が無く最終順位は15位、最下位はシンドリックとなりました。
当然の帰結と考えるのか、新たな制度が思いつかず仕方なく昔に戻ってしまった退化と考えるかは人それぞれでしょうね。なお、オライリー オート パーツ シリーズとクラフツマン トラック シリーズもプレイオフ制度は同様に改められ、プレイオフ進出人数はオライリーが12人、トラックが10人です。人数は少ないんですがどうやらプレイオフ開始時点での持ちポイントはカップと同様らしいので、トラックの10位の人なら2030点が持ちポイントになるっぽいです。

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