フォーミュラE 開幕戦 サンパウロ

ABB FIA Formula E World Championship
2025 Google Cloud São Paulo E-Prix
São Paulo Street Circuit Zero Lap(2.642km)+2.933km×30Laps=90.632km
Reference Lap Time for FCY/SC 3:30
Race Energy 38.5kWh
winner:Jake Dennis(Andretti Formula E/Porsche 99X Electric)

 F1世界選手権がようやく最終戦を迎えようかというその(時間的にも地理的にも)裏側で、ABB フォーミュラ E 世界選手権のシーズン12が開幕しました。シーズン13から導入予定のGen4車両は予定通りに製造が進んでチーム側に順次引き渡されているようで、今シーズンが現行のGen3Evo最後の1年となるはずです。
運営側のGen4開発車

 ちなみに従来の流れから言うと概ね4~5年おきに新車に切り替わっていくのでGen4も同様になるのが基本線ですが、技術の先端を行くフォーミュラEですから導入したい新たな技術があるのなら必ずしもその期間を待たずに新車に切り替える可能性も排除しない、というような話もあります。まあ実際そこまでのことはなかなか無いし、そうまでして取り入れたい技術って1年やそこらでは開発に取り込めないので結局4年サイクルの中に入ると思いますけどね。
 開幕戦は2年連続でサンパウロ、細長い形状で長い直線と直角コーナーとシケインで構成されるザ・市街地サーキットです。シケインがけっこう事故多発スポットで、道幅もそんなに広くないし高温の環境はタイヤにも車にも厳しいのでちゃんと最後まで考えて競争しないといけません。昨シーズンはテストからボロボロ、予選でも酷い目にあったミッチ エバンスがビリからスタートして優勝する奇跡、シーズン10も熱害との戦いでみんな安全装置が働いて加速がままならない中、サム バードが最後にもうひと踏みして最後の最後に大逆転しました。
 レース距離は昨年より1周少ない実質31周、単独開催イベントかつ遠方なのでピットブーストも無く、走り方としてはチーム側とすれば基本的な部分は把握済み。あとは実際の気象条件に合わせてどう熱害を回避するかとなりそうです。

・シーズン12の規則変更点

 昨シーズンから基本的に変わらない今シーズン、パワートレインのハード面は開発禁止なのでソフトウェア開発のみでシーズン11と全く同じ車ですが、競技規則ではいくつか変更点があります。
 まず予選について、グループ予選での『最初の6分以内に最低1回は計測を行いなさい』という義務が撤廃されました。また計測の概念についても規定が追加されており、練習走行でも予選でもコース上でコントロール ラインを通過したものだけが記録として残り、ピットに入った周は記録として数えられないことになりました。予選が中止になった場合に練習走行の記録を採用することと、練習すらできなかった場合は選手権順位に基づいてグリッドを決定することも併せてきちんと明文化されており、たぶん変な問題が起きないようにするためだと思われます。

 決勝については、昨年さんざん問題になったアタックモード使い残し問題を解決するため、規則が『割り当てられたアタックモードを全て使用する必要があるが、時間を使い切る必要はない』へと変更されました。これでレース終了までにアタックモードを起動さえすれば罰則を受けなくなります。
 また、SC導入時に周回遅れの車両がいた場合、その人はコース脇に避けてリード ラップの人を全て先行させて隊列の後方に付くNASCARのような方式になりました。まあフォーミュラEの周回遅れってよっぽど車が壊れた人でもいない限り滅多にいないですが、無駄な混乱を引き起こさないような措置ですね。

 ちなみに、昨シーズンからドライバー、チームに加えてマニュファクチャラーも世界選手権の表彰規定に加わりましたが、実は昨年の規則書は前年をコピペしてしまったのか『この選手権はFIAの所有物であり、ドライバー、チームの2つのフォーミュラE世界チャンピオンのタイトルで構成される』とマニュファクチャラーが抜け落ちていた模様。いや、実際すごい文章量なんで時々誤植の修正ってあるんですけど、これは致命的にやっちゃってましたね。規則を厳密に解釈したら去年のマニュファクチャラー王者は非公式ということに・・・今回発行された規則で修正されました(´・ω・`)

・チーム/ドライバー体制

 開幕前にまとめた記事を書けなかったので簡単に。全くドライバーが替わらなかったのは日産、マヒンドラ、ローラ ヤマハの3チーム。残りの7チームでは主に『マクラーレンの消滅』『ニック キャシディーのジャガー離脱』『アントニオ フェリックス ダ コスタのポルシェ離脱』の3つを軸にしてあっちこっちに移動がありました。
 まずキャシディーがジャガーのレース管理の下手さに嫌気がさしたか離脱し、これをステランティスが獲得してマセラティーMSGから改称したシトロエンに加入。さらにマクラーレン消滅で浮いたテイラー バーナードにもステランティスが手を出してDSペンスキーにねじ込みました。この結果ジャン エリック ベルニュがDSからシトロエンにグループ内で転籍、ストフェル バンドーンは『契約がある』としていましたが結局ステアランティス内にフォーミュラEの居場所がなくなりました(´・ω・`)
 チームメイト・パスカル ベアラインと仲が悪すぎる上にチームからの信頼もイマイチだったダコスタはとうとうポルシェを離れ、キャシディーの抜けた穴を埋めるためにジャガーへ移籍。ダコスタの後任にはいわば2年越しにニコ ミュラーがアンドレッティーからの『昇格』を果たしました。アンドレッティーはミュラーの後任にフェリペ ドルゴビッチを起用。2022年のFIA F2選手権チャンピオンでアストン マーティン F1のリザーブを務めていましたが、待てど暮らせどF1への道が開かれないのでとうとうフォーミュラEに軸足を移した形です。

 またジャガーでリザーブだったジョエル エリクソンはカスタマーであるエンビジョンの正ドライバーになり、ロビン フラインスは放出。クープラ キロはデイビッド ベックマンを1年で見切り、今シーズン唯一の完全なフォーミュラE初参戦となるジョゼップ マリア マルティー ソブレペーラ、通称ペペ マルティーを起用します。20歳のマルティーは2021年にカートから4輪に転向したばかり、2022年のフォーミュラ リージョナル アジアでは未勝利ながら年間選手権で2位。1位がアーサー ルクレール、3位はアイザック ハジャーでした。直近の2025年はFIA F2にカンポス レーシングから2年連続で参戦し3勝して選手権8位、チームメイトは来年からF1に乗るアービッド リンブラッドでした。

 こうした玉突き移籍の結果フラインス、バンドーンに加えてマセラティーにいたジェイク ヒューズも職場を失いました。マクラーレンの消滅でバードはそもそも移籍市場の話題にもなっていない状態でフォーミュラE完全引退かと思ったら、なんと日産からリザーブでお声がかかって契約しました。Gen4車両の開発に経験者の知識が有益で、かつノーマン ナトーがアレだったら途中で入れ替える考えもありそうです。なおバードは国際映像の解説陣にも加わっています。
 バンドーンに関してはプジョーからWECにも出場していましたが、来年はジェネシスに移籍する話が進んでいたとみられます。しかし彼とするとフォーミュラEにもこだわりがあり、一方でジェネシスの代表・シリル アビテブールは掛け持ち選手を望まなかったため破談したとの噂。
 バンドーンは一旦はプジョーから離れる声明を出しており、そこにバーナード加入の煽りでフォーミュラEの契約も消えて完全にさようならステランティスの状態だったんですが、その後にベルニュがWECプジョーの仕事を辞退して空きが発生、結局プジョーのWECに呼び戻され、そしてフォーミュラE活動継続の道筋としてなぜかエリクソンの後任でジャガーのリザーブに収まりました、どないなっとんねん(笑)
 
・練習走行

 さあいよいよFP1で本格的に開幕や!と思ったらなんと運営上必要な部分で通信障害が発生したようで、何度か延期を繰り返して復旧を試みたものの回復できずFP1が中止になりました(笑)というわけで走行できたのはFP2のみ、最速はベアラインの1分9秒853でニック デ フリース、ダニエル ティクタムが続きました。300kWでの最速はエバンスの1分12秒029、これにダコスタ、ティクタム、ベアライン、キャシディーが続きました。パワートレインとしてはポルシェ、ジャガー、マヒンドラが良さそうですね。

・グループ予選

 選手権ポイントが無い開幕戦だけは各チームが任意でドライバーをいずれかの組に振り分けるためグループ内でのチーム被りがありません。A組の予選が始まってみると、特に前輪のタイヤ温度と内圧を最適値に持っていくためにどのドライバーもぐるぐると周回。そして制限時間ギリギリで最終コーナーに渋滞ができるお約束。
 最後にゆっくり走ったら準備が台無しじゃないだろうかといつも思うわけですが、そんな中で最速はダコスタの1分12秒140でした。ジャガー移籍から即結果が出て車を降りてからもゴキゲンです。ベルニュ、エドアルド モルターラ、ジェイク デニスが続き、昨シーズンのチャンピオン・オリバー ロウランドは5位で脱落。ここにすっかり忘れていたけど昨シーズン最終戦で受けた3グリッド降格ペナルティーを受けるので後方スタート確定です。
 
 B組もみなさんタイヤをゆっくりと目覚めさせながら周回を重ねてSUPER GTのような予選の流れですが、残り3分を切ったところでドルゴビッチがターン4の壁にぶつけてしまい、自走不能になってレッド フラッグが出てしまいました。残り約2分半で再開して一斉にコースへ、ここまで実質的にはまだ誰もちゃんと計測をしていません。

菱沼「盆と正月がいっぺんに来たようなグループB!」

 謎の掛け声とともに各選手はアウト→アタックの一発勝負になりました。最速はナトーで1分12秒308、ベアライン、デフリース、ティクタムのトップ4。エバンスは5位で脱落しました。なおローラヤマハはどうも駆動系に問題があるようで、A組のゼイン マローニー、B組のルーカス ディ グラッシとも途中でガレージに引っ込んでしまいました。ディグラッシはFP2も同様に途中で走行をやめていました。

・デュエルス

 準々決勝、ベアラインだけが1分10秒を切る飛び抜けた速さを見せましたが、規則で禁止されているピット内での車輪空転を行った嫌疑がかけられます。これは今年の競技規則で禁止事項に新たに付け加えられていました。とりあえずそのまま準決勝へと話が進み、ベアラインはここもティクタムを僅差で破って決勝へ。対戦相手はデニスとなります。
 しかし準決勝終了直後、さっきの嫌疑について規則違反の裁定が下り3グリッド降格のペナルティーが発効されました。ベアラインはこれで4位以下のスタートが確定ですが、もし予選1位なら3点貰って先頭走者を回避できるんだからむしろ得してるのではとか思わなくもなかったり(笑)
 そんなことになるとちょっとつまらんのでデニスに勝ってほしいデュエルス決勝。しかしデニスはターン1でわずかに行き過ぎたっぽくてターン2が窮屈になっている様子。一方ベアラインの方は全く破綻のない動きで、1分9秒812を記録。結局デュエルスの3走すべて1分9秒8でまとめるという安定感で今年最初のジュリアス ベア ポール ポジションを獲得、そして3グリッド降格しました。
ドヤ顔

 スタート順位としてはデニス、ティクタム、モルターラ、ベアライン、デフリース、ダコスタ、ナトー、ベルニュの順。ロウランドは13位スタートとなりました。ちなみにベアラインは昨年もポールでしたがデュエルス決勝の記録は1分9秒851、準決勝も1分9秒859だったので、2年越しにデュエルス5セッションを全てほぼ同タイムで走っていますし、なんならFP2も同様です。今年は昨年より路面温度が2℃ほど高いんですが、この数字見てギョッとしました。

・決勝

 気温32℃、路面温度54℃ほどの決勝。スタート時の信号点灯に『プッ、プッ、プッ』とあのF1と同じ安っぽい効果音演出が増えています、個人的にはあれいらない。そういえばF1のあの効果音ってわりとしょっちゅう『プッ、、、プップッ、、プッ、プッ』みたいに間隔が不規則になってるように中継映像では見えるんですけど、信号と同期せず誰か手動でボタン押してるんですかね?
 そんなことはさておきいきなりの波乱はターン1で、デフリースが勢いよく発進したものの減速でティクタムに追突しそうになって急に左折。接触は避けられずティクタムの左後輪にぶつけると、ふらついた勢いでチームメイトのモルターラにもぶつけて2人ともシケイン不通過。今回の規則ではシケインを曲がれなかったら指定された走路を通り、なおかつ一時停止してからの合流が求められるNASCAR的な司令が出ていましたがモルターラは無視、デフリースは完全な一時停止まではいかないものの減速を行いました。

 ぶつけられたティクタムはパンクでピットに入りますがジャッキが故障して作業が混乱。さらにピットで作業を行う場合、作業員の安全のために車両は『レディー トゥー ムーブ(走行準備完了)』の状態を解除するよう定められていますが、これをしなかったのでペナルティー。さらに発進時に空転もやらかしていたのでこれもペナルティー、都合ドライブスルー ペナルティーが2回課せられました。もうリタイアしたいティクタムですが、消化しないと次戦のグリッド降格になるのでしぶしぶ壊れた車で走って16周でリタイアしました。

 さてレースに戻ると、最初のシケイン無視についてデフリースは許してもらえましたがモルターラは許してもらえず5秒加算のペナルティーが課せられました。車自体は元気なようでとりあえず上位戦線にとどまっていますが、F1だと無力化されることも多い5秒ペナはタイム差が付かないこのレースだとけっこう効くことが多いです。いずれにせよマヒンドラは自滅ですね。
 その後5周目辺りから1回目のアタックモードに入る人が出てきたものの、考え方がバラバラなようで実質の順位がわからなくなり、ほぼ全員が1回目を使い終えた17周目の段階で状況としては数珠繋ぎ。上位にいるのはデニス、キャシディー、ベアライン、ダコスタといったやはり実績のある顔ぶれが中心です。

 そして22周目辺りから上位勢が2回目のアタックに入り始めていよいよ最後の勝負どころに入りましたが、そうすると何か起きるもので23周目のターン5で事故発生!ディグラッシがモルターラを壁に挟んでしまい、ディグラッシの車がぶっ壊れました。道路のど真ん中で走行不能になって即座にSC導入、アタックに入った人はほとんど何の恩恵も受けることなく終了となりました。

 これで得をしたのは先に2回目のアタックを使って見た目上1位に出ていたロウランドと2位のキャシディー。そして3位のデニスは周囲がアタックに入って一時的に順位が上がったところだったので、自分だけアタック1回残しで3位という絶好の位置。怖いのはリスタート後アタックに入ったら後続に大量に抜かれることと、SC導入で全体にエナジー管理が楽になってアタックの無い人もまあまあ速くなる可能性があることでしょうか。

 27周目にリスタート、残り4周。デニスはすぐにアタックを使って5位で合流すると前の人をさっさと抜いて、28周目に入る頃にはもうリードを奪いました。そして同じ頃、ターン10でエバンスが壁に突っ込んで止まっており、動けなかったので先頭集団が現場に辿り着く前にFCYが宣言されてふたたびレースは一時休止、のはずでした。

 ところがこのFCYへの減速時にマルティーが眼の前で並んでいたミュラーとダコスタ、2人の車両の双方に乗り上げて飛翔。マルティーの車は前方に飛びながら側方にも回転するアクロバティックムーブ、一旦横転してからさらに側転して着地する360度回転の大事故になりました。右前部から出火したのでマルティー緊急脱出、レッドフラッグでレースは完全に止まりました。ミュラーの無線だとダコスタはFCY開始までのカウントが0になるよりも前、思ったより早い段階から減速を開始した、とのこと。ただそれでもマルティーは速度が出すぎた状態で後ろからぶつかってきた、と言っています。

 一方レース後のマルティーの話によると、やはりダコスタは減速の開始が早かったようで自身としては「前に誰もいなければ合法だった。」との見解。シミュレーターや開幕前テストでは『FCY時にいかにギリギリで減速するか』に主眼を置いていたものの、実際に他の選手がどうするかへの理解が不足していたという趣旨の話をしました。彼がF2で経験するVSCとは制度が異なりますしね。
 複数のチームからは、今回レース ディレクター・マレク ハナチェフスキーの声が聞き取りにくかったという証言があり、中継では車載映像が途切れている場面も多かったのでコントロール タワーから遠い側で無線通信の状態が良くなかった可能性がありますが、それでも新人さんの単純ミスが招いた大事故だった、という点には間違いは無さそうです。大破した車両代も高く付きそう(っ ◠‿:;...,
頭上を車が飛んで行ったダコスタの車載・・・

 大事故のわりに意外と短い15分ほどの中断でレッドフラッグ解除、なんとローリング スタートで30周目の1周だけちゃんとレースすることに。といっても上位勢がアタックの手札も無く、節約の必要も無くて車も冷えててさっき大事故を見てたら争いは起きるはずもなく、ほぼリスタート順のままで決着しました。優勝はジェイク デニス、昨年は未勝利だったのでシーズン10 第2戦ディリーヤ以来ほぼ2年ぶりの通算7勝目です。レース時間 59分23秒013はレッドフラッグによる中断が発生したレースとしては史上最短でした。

 トロフィー贈呈者はサンパウロ観光局の偉い人みたいですけどロマーリオのTシャツ着てるのがいかにもブラジルって感じですね。まあロマーリオってリオデジャネイロ出身で、国内クラブでもサンパウロとはライバル関係にあるバスコ ダ ガマにいたので、何というか東京E-Prixで都知事が田中 将大の日本代表ユニフォーム着て出て来たような感じじゃないかと思うんですけど、まあ国民的英雄のブラジル代表ユニフォームだから問題ないんだろう(笑)
 2位ロウランド、3位キャシディー。ロウランドは明らかに幸運、デニスもそうですがキャシディーは普通に行ったら勝ってた可能性のあるうちの1人だったので3位は良い結果なんだけどでも・・・という感じでしょうか。4位からベアライン、ミュラー、グンター、エリクソン、セバスチャン ブエミ、デフリース、ゼイン マローニーのトップ10。デフリースは最終周にアタック6分を使って順位を上げており、旧規定なら未消化でペナルティー、レッドフラッグ終了でも未消化ペナルティーでしたから最後の最後に助かりました。
 またマローニーは昨年は一度も入賞できなかったので参戦2年目でようやくの初入賞。レース終了時点では11位でしたが、レース後にドルゴビッチに対してFCY速度違反のペナルティーが出たため繰り上がりました。ドルゴビッチは逆に初入賞を逃しましたね。


・モルターラ、レース後にペナ取り消し

 ところでスタート直後のシケイン不通過でペナルティーを食らったモルターラ、ディグラッシにやられてリタイアでしたが、抗議があったのかレース後に改めて映像検証が行われて処分が取り消しになりました。モルターラは接触によって押し出された被害者なので、シケインを曲がり切れなかったら一時停止するようを定めた規定には違反していないと判定が変わりました。リタイアしているとはいえ、5秒ペナ未消化は次戦でのグリッド降格に繋がるおそれがあったので多少は助かりましたが、やってる側からしたらレース中にちゃんと見てくれ、というところでしょうか。
 また、17周目にはターン6でナトーとロウランドが接触する場面があってナトーがリタイアしていますが、この件はナトーがロウランドに対して残すべき空間を残さず壁に挟んだことが主因と判断されたようでナトーへの訓戒となっています。ただ、当初発効された文書では『1番が23番に接触』と書かれており、これだとロウランドがナトーにぶつけたことになるので『23番が1番に接触』と書き直した修正版が後から出されました。去年はロウランドが23だったから間違えたんでしょうか^^;

 ちなみにナトーはこのレースのファステスト ラップ・1分12秒239を記録したんですが、残念ながら昨年記録された最速には0.02秒届きませんでした。中継映像を最初からよく見ていると分かりますが、その記録保持者は・・・今年は走ってないベックマンです。


 というわけで今年も荒れて2年連続で車が横転したサンパウロでした。マネージメント競争の答え合わせをする時間に事故が起きて全部チャラになったので、何というかクイズ番組の出題だけ見て回答を見逃して、あとは最後の決勝早押しクイズのとこだけ見た、みたいな展開でした。通としてはやっぱり答え合わせを見たかったなあ・・・
 統計的には過去5シーズンのうち3回は開幕戦の優勝者がその年のチャンピオンになっており、デニス自身シーズン9で開幕戦優勝からチャンピオンになったので非常に幸先の良い滑り出しでした。ポルシェのパワートレインは今年も引き続き良さそうですし、デニスのマネージメントも相変わらず巧みなので変な取りこぼしをしないように走れば自ずと最後までチャンピオンを争えるでしょう。ただそのためにはポルシェのワークス、特にベアラインと戦う必要があります。
 そのポルシェに関してはGen4の導入に合わせて『4台のファクトリー チームを運営する』と発表されており、どうやら撤退したマクラーレンの参戦権を取得してポルシェのワークスを2チーム/4台体制にするというフォーミュラE初の試みを行う予定になっています。さらにおそらくはクープラキロに引き続きカスタマーとしてパワートレインを供給する『6台体制』となり、アンドレッティーは今季限りでポルシェとの契約を終えるのではないかとThe Raceは伝えています。
 ポルシェの後は日産と契約するのではないかという噂ですが、まあ何にせよデニスもアンドレッティーも強力な武器を持った状態で確実に戦える今季にもう一度栄冠を手にしておきたいのは言うまでもなく、今年もまたポルシェワークスvsデニスの喧嘩が何度か見られるかもしれません。ミュラーも去年のチームメイトですけどデニスさんはわりと容赦しない人ですし、ドルゴビッチくんにはあまり頼れないと思うので孤軍奮闘の戦いになるでしょう。
 日産もマクラーレン消滅で2台に減っちゃいましたけど去年の終盤に優位性を失った流れから見てとりあえず開幕戦の戦いは悪くはなかったと思います。ただいきなり身内で絡んで2人とも消えかけたのは心配なところで、首脳陣は上手く人間関係を回してあげないといけませんね。最悪だったのはマヒンドラだったと思います、せっかく速いのに全く結果にならず他陣営との実際のレースでの車の善し悪しを判断するところにすら行きませんでした。遅ればせながらGen4への参加を表明して、とりあえずチームにちゃんとやる気があって実際に向上してるのは良いことなんですけどね。

 次戦は年が明けた2026年1月10日、メキシコシティーでのハンコック メキシコシティー E-Prixです。ちなみに、開幕戦のフル動画はフォーミュラE公式サイトの無料会員登録をすれば公式サイトに置いてあるやつを見れるっぽいので、J SPORTS入ってないけどとりあえず見ておきたいという方はこちらへどうぞ。Googleアカウント連携でも登録可能です。

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