2025 AUTOBACS SUPER GT Round8 MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL
「EJ、いいじぇ~、と言ってもらえるように頑張りたい。」とダジャレで大笑いの仲良しコンビでした。チャンピオン争い有力どころではリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R・ジョアン パウロ オリベイラ/平手 晃平が4位、グッドスマイル 初音ミク AMG・谷口 信輝/片岡 龍也が6位、CARGUY FERRARI 296 GT3・ザック オサリバン/小林 利徠斗が10位、ドライバー選手権1位のLEON PYRAMID AMG・蒲生 尚弥/菅波 冬悟は14位とあまり良い位置ではありません。でもまあどうせタイヤ無交換で気付いたら上におるやろう、知らんけど(笑)
ここから当然GT400クラスのBRZがマッハ号を追い立てて行く、と思ったら意外や意外、両者の差は3秒ほどで平行線になったかと思うと、その後はむしろ差が広がって行って山内が追いつきません。チームのレース後の情報によればエンジンに異音を感じたので安全性重視のエンジン制御に切り替えた、とのこと。テレビ東京の番組でも山内の「エンジン音がデカい。」という無線が放送されており、車載映像動画を見てもよく分からないけどずっと乗ってるドライバーなら分かる異変があったと思われます。EJ20、もうおじいちゃん状態。
モビリティリゾートもてぎ 4.801km×63Laps=302.463km
GT500 class winner:au TOM'S GR Supra 坪井 翔/山下 健太
(TOYOTA GR Supra GT500/TGR TEAM au TOM'S)
GT300 class winner:マッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号 塩津 佑介/木村 偉織
(TOYOTA 86MC/TEAM MACH)
オートバックスSUPER GT 最終戦・ 未だにツインリンクと言いそうになるモビリティリゾートもてぎで す。真っすぐ走って90度曲がる、 を繰り返すもてぎはたぶん速度域の低いほぼ市販みたいな車でアマ チュアが走ると、十分な長さの直線があって制動能力の違いで抜けることも多いんだと思いますが、トッププロが 均衡する車で争うとまあそれはそれは抜けません。
GT500クラスはドライバー選手権1位・au TOM'S GR Supra・坪井 翔/山下 健太を軸にしたレースになるのは間違いなさ そうですが、 私は2基目のエンジンがなんか良さそうな気がするシビックに少し 期待。前戦優勝のSTANLEY CIVIC TYPE R-GT・山本 尚貴/牧野 任祐を対抗馬として注目しておきます。
一方GT300クラスは有効ポイント制の影響で計算がやや面倒く さいですが、もてぎは車両特性でやたら速い車がいくつかあって案外チャンピオン争いしている車両が優勝争いには絡まないパター ンも多くあります。チャンピオン争いの軸になるAMG GT3、GT-R ニスモ GT3、 296 GT3はいずれももてぎは『番車』ではなく並の車と思われるので、 優勝争いとチャンピオン争いは別の場所で起きるんじゃないかなあ と予想しました。
・レース前の話題
今年は既にトヨタ勢で石浦 宏明、 ホンダ勢で伊沢 拓也がGT500からの引退を表明してきました。 まあそうすると次はこの人だろうなあ、と思い浮かぶKONDO Racing・松田 次生がGT500引退を発表しました。今年の第6戦SUGOでの優勝でGT500通算25勝、 ここらが後進に道を譲る時期と判断したようです。 次生選手と言えばGT-Rオタクであり鉄道好きの面もありますから、個人的にはここから50代に向けて鉄道会社に就職して鉄道の運転士で新たな挑戦をしてみるのもいい のではとか勝手に思ったり。次生さん、どうでしょう?(笑)
・予選
GT300の予選はラストEJ20型エンジンのSUBARU BRZ R&D SPORT・山内 英輝が通算16度目のポール ポジション獲得。エンジン性能で劣るBRZはストップ&ゴーで本来不利ですが、まあ何せスロットルを開けるのが速いから旋回と脱出、あとは限られた中速コーナーが速いんでしょうね。さらに驚かされるのは、予選2位のマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号・木村 偉織に対して1.071秒という大差を付けたことでした。偉織選手から1秒差はどこかというと16位になるので異様な差、タイム合算制度でも1秒差なんてなかったですよ^^;
「EJ、いいじぇ~、と言ってもらえるように頑張りたい。」とダジャレで大笑いの仲良しコンビでした。チャンピオン争い有力どころではリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R・ジョアン パウロ オリベイラ/平手 晃平が4位、グッドスマイル 初音ミク AMG・谷口 信輝/片岡 龍也が6位、CARGUY FERRARI 296 GT3・ザック オサリバン/小林 利徠斗が10位、ドライバー選手権1位のLEON PYRAMID AMG・蒲生 尚弥/菅波 冬悟は14位とあまり良い位置ではありません。でもまあどうせタイヤ無交換で気付いたら上におるやろう、知らんけど(笑)
GT500はトムス圧勝劇を阻止すべく、KeePer CERUMO GR Supra・大湯 都史樹がポールポジションを獲得。auトムス・坪井は0.175秒届きませんでした。両者の差はほぼセクター1だけで付いており、ここで大湯が0.179秒速い、というか坪井曰く『置きに行った』結果。セクター2は坪井が0.03秒、セクター3は大湯が0.025秒、そしてセクター4は大湯が0.001秒速いだけで、ゴーストで映像を合成したらセクター2以降ほとんど重なって1台に見えてるはずです。これ、マジで映像見てみたいんですけど公式さん作ってくれません?(笑)
セルモのこの1点は意外と影響があり、第7戦終了時点で両者の差は9.5点だったので仮にセルモが優勝してもauトムスは3位で0.5点差のチャンピオンになれます。ところが1点追加して8.5点差になると逆に0.5点差でセルモの勝ちになります。トムスは「3位じゃダメなんです、2位じゃないと!」になってしまうので、確実にセルモの後ろに付ける必要が出てきました。
一方でドライバー選手権2位・ENEOS X PRIME GR Supra・大嶋 和也/福住 仁嶺はQ1敗退でまさかの13位。大嶋がタイヤを温めている道中でスピンしてしまい、これで予定が狂ったのか計測周回ではWedsSport ADVAN GR Supra・国本 雄資に追いつきすぎてしまいました。一旦距離を取ってやり直せばよかった、と予選後に少し後悔。
そして私が期待したシビックでしたがやや不発で、最上位は7位のスタンレーシビック・山本/牧野。上位との間に4台のZが挟まる結果となってちょっと厳しい立場です。ところでホンダの2基目のエンジン、心なしか従来よりもタービンとトランスミッションからの音『ヒーーーーーーン』がよく聞こえてトヨタに似た音になってません?ちょっとエンジンの特性をいじって高回転寄りに振った仕様なのかなとか思ったんですが、サーキットによってマイク位置が違うし、参考になる予選の映像を特に持って無いので気のせいかもしれませんけど。
・決勝
[GT500]
GT500の勝負は一瞬で動きました。スタート直後、キーパーセルモ・石浦に対してauトムス・坪井が早速後ろに付けていくと、ターン3で石浦がブロックのライン。すると坪井はラインを交差させてターン3を立ち上がり、、、というところでカメラの画角から外れましたが、次に映像に映ると
あれ、もう抜いてるやん(;・∀・)どうやら坪井の方がタイヤの発熱が早かったようで、石浦はブロックに行ったものの見事につられてしまう形になりました。この左右2分割表示、去年までは両クラスとも16:9画面を維持した上で並べてたのですごくちっさい画面だったんですが今年は大きさを重視してサイドカットでトリミングしてるので、ちょうどこの攻防がトリミングで切れた画面端で起きてたっぽいんですよねえ。
石浦は立ち上がりが鈍ったことでTRS IMPUL with SDG Z・ベルトラン バゲットにも抜かれて3位に後退。これでトムスはリーダーになった上に間に壁まで挟んで非常に有利な展開となりました。この後ピット サイクルまで石浦はバゲットの背中を見続けることになり、坪井は6秒以上差を広げることになりました。
300kmレースだとそれほど大きくレースを動かすことはできないGT500のピットサイクル、まず22周目にインパルとセルモが同時にピットに入ると、おそらく石浦が燃費走行してきたと思われるセルモがピット内で逆転。実質2位となって大湯へと交替しました。これを見て翌周にトムスも坪井をピットに呼びヤマケンに交代しますが、ここで右前輪のナットを1回締めて、もう1回締め直すちょっと怖い動き。時間的にはほとんど損してない雰囲気ですが、ナットの締まり具合とセルモとの位置関係が気になります。
と思ったらそのセルモ、大湯が90度コーナーで砂場に突っ込んでしまいました。なんとか引退する石浦先輩にために、とリスクを取った攻めの走りをしていたようですが行き過ぎになっててしまいアイナジエンド、これで大湯が山下を捉えるのは絶望的です。車が壊れない限りauトムス優勝濃厚、植毛成功!と思ったらさすがは最終戦、そう簡単に済みませんでした。
24周目にピットに入ったスタンレーチーム国光がタイヤ無交換の大博打、いや、正直言うと7位スタートの時点でなんかやってくる気がしてたのである程度想定内だったんですが、これで10秒差の実質1位になりました。しかしいくらNSXの神様・山本がタイヤを労わって走っても24周+予選で4周使った古いタイヤでは後を託された牧野も速くは走れず、山下が1周1秒以上差を縮めてきて順位を守るのはさすがに無理そう。牧野は29周目のターン3で打つ手無く山下に抜かれ、さらにインパルの平峰 一貴にもすぐ抜かれて3位となりました。
ここから山下はチャンピオンに向けて今度こそトップ独走、と思ったらタイヤが合ってないのか平峰に追い回されることになり、そうしている間にMOTUL AUTECH Z・千代 勝正も追いついて予想外の三つ巴優勝争いに。チャンピオンを考えたらヤマケンは抜かれても全然問題が無く、どっちみち牧野は古いタイヤで苦戦、大湯はフラット スポットを作ってしまったタイヤで後続の蓋になっていて追いついてくる状況ではありません。
それでも、抜かれてチャンピオンは格好悪いので山下は要所を抑えた走り方でなかなか隙を与えず、仕掛けてきそうな時はきちんとブロック。ブロックしてペースが落ちると平峰に千代が攻撃し、その間に少しだけ落ち着く時間ができて、ということを何度か繰り返すうちに最終周になりました。1秒前後の差を維持したまま戻ってきた山下、最終コーナーでGT300に引っかかったので見た目上ものすごい僅差で平峰を下し、これでau TOM'S GR SupraはGT500クラス前人未到の3連覇。坪井は3年連続4度目のチャンピオンでロニー クインタレッリと並ぶ歴代最多タイとなり、山下も2年連続チャンピオンとなりました。
だいたい圧倒的に強いところがあると倒して欲しいもんですが、20年以上GTを見てきて連覇の凄さ、珍しさを知ってるので今年はトムスの3連覇をぜひ見てみたいと思ってシーズンを見ていました。だから達成できてうれしかったですね。あ、これ今まで1回も書いたことなかったか、トムス応援してたんですよ(笑)
そして2位でチェッカーを受けたはずのインパルでしたが、なんとスキッド ブロックの厚みが規定以下まで削れていたため暫定表彰式が終わったあとに失格になってしまいました。これで2位はモチュールオーテックZ・千代 勝正/高星 明誠のものとなり、1位から26秒遅れではありますが3位にスタンレーシビック・山本/牧野が入りました。シビックの最終戦はタイヤ無交換で表彰台、3メーカーが仲良く揃って運営的にはありがたい終わり方でした。
[GT300]
ある種想定通りの終わり方だったGT500とは違いGT300は脳ミソフル回転でした。スタートからBRZ R&Dスポーツ・井口 卓人が逃げて5周目には既にマッハ号・塩津に5秒差。まあどうせタイヤ無交換だろうなあという塩津の後ろには、無交換かもしれないGreen Brave GR Supra GT・野中 誠太と、まあ確実に4輪交換するであろうリアライズGT-R・平手が付けていました。
そんな中で7周目に接触事故に起因したFCYが宣言されますが、これがちょうど野中が塩津を抜こうとしている最中の出来事でした。中継映像では野中が抜いた後にFCYが導入されて80km/h制限になりましたが、FCYは導入10秒前の宣言段階で全ポストでイエロー フラッグ掲示=追い越し禁止です。たぶんFCY宣言の時点で位置関係がかなり微妙な横並びだったと思いますが、FCY解除後に野中が塩津に順位を返しました。実際にはどちらが前だったのか、という真相は不明ですがペナルティーの発生もなく仕切り直しです。
その後12周目に改めて野中が塩津を抜くと、争って失速した隙を衝いて後ろで見ていた平手もV字コーナーでイン側突入。非常に思い切りの良い動きで塩津を抜いて3位となり、この段階では平手がチャンピオン争いで優位な立場となりました。レオンAMG・菅波はまだ11位あたりにいます。
2位になった野中は井口よりもちょっと速いかな、ぐらいのペースで周回して両者の差は7秒ほど。マッハ号は抜かれた後も少しずつ離されていき、塩津は井口から17秒ほどの差になった状態で19周目にピットに入りました。やっぱりタイヤは無交換でドライバーを木村に交代、他が動いてみないと実質順位はよく分からず。その4周後にコンドー レーシングが平手をピットに呼び、4輪交換してオリベイラに交代してもちろんマッハ号の後ろに回ります。GT-R GT3で4輪交換以外の作戦ってほとんど見たことないですね。
さらに遅れること3周、26周目にR&Dスポーツも動いて井口から山内へ交替しもちろん4輪交換。スバル公式ライブ配信を見るとピット作業時間が50秒とマッハ号の倍近くかかっており、山内がピットを出たらもう木村偉織は目の前でターン1に飛び込んでいきました。まあ言うてもペースは速いからここから追いかけることになるんでしょうけど、作業時間で20秒以上違うとなかなかキツイですね。元々もてぎは燃費が悪くなるレイアウトで、そこに燃費が良くないEJ20の組み合わせですから給油量が多いし、たぶんエンジン性能もいくぶん抑えた燃費走行必須だろうと思います、アンチラグをバラバラバラバラバラバラバラバラ効かせて決勝は走れないでしょうね。
2位のグリーンブレイブは相手を見て動く戦略だったようで、続く27周目にピットに入ると前輪2本だけを交換して吉田へと交替。これでBRZをオーバーカット、マッハ号よりも前で合流することに成功して実質1位で後半戦に入りました。ところが交換した前輪になかなか熱が入らなかったようで、マッハ号・木村が29周目に吉田を抜いて実質1位の座を奪うと、なおもペースが上がらない吉田を32周目に山内もかわしました。グリーンブレイブはタイヤの発動状況だけが誤算っぽいですね。
ここから当然GT400クラスのBRZがマッハ号を追い立てて行く、と思ったら意外や意外、両者の差は3秒ほどで平行線になったかと思うと、その後はむしろ差が広がって行って山内が追いつきません。チームのレース後の情報によればエンジンに異音を感じたので安全性重視のエンジン制御に切り替えた、とのこと。テレビ東京の番組でも山内の「エンジン音がデカい。」という無線が放送されており、車載映像動画を見てもよく分からないけどずっと乗ってるドライバーなら分かる異変があったと思われます。EJ20、もうおじいちゃん状態。
これで当面は木村を追えるドライバーがいなくなり、逆に山内の後ろにはようやくタイヤが起きたらしい吉田に加えて、後輪2輪だけ交換して7位スタートから上げてきたseven × seven PORSCHE GT3R・ハリー キング、そしてリアライズGT-R・オリベイラが続く展開。レオンAMGはというと20周目にピットに入って前輪だけを交換して蒲生に交替しており、6位を走行して前には追いつかないけど後ろも追いついて来ない状態でした。もし蒲生が6位のままならオリベイラが4位以下の場合は蒲生/菅波が、オリベイラが3位になると平手がチャンピオンになります。さあ、他の選手を巻き込んだ最後の争いです、楽しいですね(笑)
オリベイラは中継映像で確認可能な範囲では元々山内から15秒以上離されており、たぶんピット直後はもっと離されていたと思われます。しかしいかんせん山内がペースを上げられず、しかし特性が似たGTA-GT300車両であるGRスープラGT・吉田もこれを抜けず完全に蓋になったのでオリベイラが追いついていきます。残り10周の段階でまだ7秒あった2位から5位の差が3周後にはたった2秒差に。前の3人が争えば争うほどオリベイラにチャンスが訪れる状況です。
やがて4人が完全に1か所に集まると、さっきまでは機会をうかがう側だった吉田が今度はキングに追い立てられて急に防戦に回り、おかげで手負いの山内とEJ20には少し助かる展開。残り5周、ターン1で内側をブロックしに動いた吉田、の一瞬の心の隙間を衝いてキングがさらに内側に急に動いて抜きにかかりましたが、非常にフェアーな攻め方だったので外側の吉田が旋回速度で対抗してなんとか3位を死守。その後もキングに追われまくります。
後ろで見ているオリベイラからすると3位が必要なわけで、残り周回数が少ない中で変にキングに仕掛けて抜き切れないと、その間に3位が逃げてしまったら意味なし。自ずと慎重に一撃の機会を狙いすますことになります。かつてのオリベイラならお構いなしにまずキング相手にガリガリ仕掛けてたような気もするんですけど、冷静な走りはベテランの風格。
しかしなかなか何も起こらず気づけば残りは2周。ここでキングが再び動きを見せて、ターン1で外から仕掛けて揺さぶった上でターン3でまた不意打ちの飛び込み。不意打ちでもちゃんと相手のラインを残してるからこの人は上手いなと思いますが、ちょっと側面が接触しつつもとうとうキングが前に出ました。そしてオリベイラも待ってましたとばかりに立ち上がりが鈍った吉田をターン4で抜いてセットで浮上。これで後はキングを抜くか抜かないか、という単純な構図です。でもあと1周半しかない。まあそんなに上手く話しが進むはずが、
と思ったら巨体を振り回すオリベイラはなんと最終周の90度コーナーでキングの外に完全に車を並べました。ただ、ここは内側が圧倒的に有利なコーナーでブレーキング競争でも911は優勢。並走したまま立体交差をくぐることができれば抜ける可能性がありましたが、キングのこれまた絶妙のギリッギリなブロックを見せたので打ち破ることはできませんでした。ここの争いがハゲしすぎてあんまり映らなかったマッハ号、ついにチーム初勝利の時、と思ったらうわああ失速してる!ガス欠!!!
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と思ったら早とちり。GT500の車両がガス欠でチェッカー目前に止まりそうになっており、イエロー フラッグが出てたからとりあえず抜かないように減速しただけのようでした。ビビりましたが改めてマッハ車検エアバスター MC86 マッハ号がGT300最初のチェッカーを受け、玉中 哲二がチーム代表として自社チームで参戦した2003年から数えて23年目での初優勝。マッハ号という強烈な車両としてはその前年・2002年にA&S レーシングがモスラー MT 900Rを投入してから24年目での初優勝です。モスラー時代のマッハ号とかもう知らん人の方が多いんちゃうかな(笑)
2位にBRZ R&Dスポーツ、勝てなかったもののガタガタのEJ20を最後まで絞り出した、という感じでした。3位にセブンバイセブン911、リアライズGT-R・JPオリベイラは数字上0.268秒届かず4位でした、直線で黄旗出てたはずだから最後は抜きようもありませんでしたね。そしてグリーンブレイブを挟んで6位にレオンAMGが入り、この瞬間にレオンピラミッドAMG・蒲生/菅波のチャンピオンが決定しました、平手との差は僅か1点。蒲生とチームは2018年以来2度目、菅波は初のチャンピオンです。
チーム選手権でもK2 レオン R&D レーシングとコンドーレーシングは同点となり、優勝回数の差でレオンがチャンピオン、2冠です。お互いに「あの時余分に1点獲れたから」「あの時もう1点あれば」の世界ですね。
GT500は予想より優勝争いという点では接近戦になったものの、チャンピオン争い、さらに言えば開幕から最終戦までの展開についてはある程度想像通りというか、auトムスが今年も強さをいかんなく発揮しました。チーフ エンジニアを務める吉武 聡がオートスポーツwebに寄稿したコラムによれば、この週末の走り出しはちょっとマズい状況で、そこから立て直しての勝利だったので見た目ほど楽ではなかったとのことですが、言ってしまえばそれはどのチームにもある話でむしろ最初から完璧な方が少ないでしょう。
マズいと思ったところからすぐ立て直せるからこそのチャンピオンで、吉武さんを含めトムスの技術陣と、作業を担当するメカニック陣と、そしてドライバーがみんなミスなく、ミスがあったとしてもその損失を最小限にする戦いを3年続けてきた成果に他なりません。そもそもエンジニアさんがレース後にわざわざ裏側を専門媒体の無料記事で話してくれるぐらいだから組織としてかなりゆとりも自信もあるんでしょう。
そのコラムでなるほどなと思わされたのがピット作業時のナット増し締めで、レース後に車輪を外して確認したら小さな金属片が挟まっており、メカニックが違和感を感じたので「あれ、今の本当に大丈夫か?」と思って念のため最後に瞬時に増し締めに動いたとのこと。吉武さん曰く、これをやったおかげで金属片を潰しながら奥までナットを締めることができており、やってなかったら脱輪リタイアの可能性すらあったそうです。ここでも組織の強靭性が機能してますね、まあ3連覇の起点は2023年開幕戦でナットを締め損ねて脱輪リタイアしたところから始まってますからね・・・
タイヤ無交換がさすがに無謀で3位に終わったチーム国光ですが、後半のトムスのペースがあんまり速くなかったので、普通に4輪交換していたら追いつけた可能性があったためにタラレバができてしまいました。吉武エンジニアもまた彼らのピット前のペースを脅威と感じていたことをコラムで明かしています。
ただ個人的には、どっちみちトムスが何かで潰れない限りは彼らにほぼチャンスはないわけですから『とりあえずトムスに何か起きた時に最も有利な位置にいられるための作戦』という点で決して悪くないなと思いながら見ていました。でも後からこうして振り返ると4輪交換でも最低限同じ位置にいれたのかなと思うと、正面からの勝負は見てみたかったですね。いや、正直エンジンがむっちゃ良くて追いつかれたけどなかなか抜かれない、みたいなワナがあるんじゃないかとシビックに過度な期待はしてましたけど(笑)
プロ野球で広島東洋カープが3年連続リーグ優勝した際には、カープの野球を見ていて本当に『各選手が"今自分に必要な役割は何か"を明確に理解し、基本に忠実で常に数手先まで考えた野球ができていて阪神とは雲泥の差だ』と思っていたんですが、今のトムスはまさにそんな雰囲気を感じます。まあさすがに4年も続くと飽きそうだしカープも4連覇はできなかったので来年はそろそろ別のところに頑張って欲しいです。そう言いつつもしプレリュードGTが開発大成功で無敵になったら掌返して秋ごろには「トムス頑張れ」と言ってることでしょう(笑)
GT300もずっと期待していたマッハ号が優勝して大満足。期待していると言いつつも2022年第2戦を最後に今年の第2戦まで約3年にわたって一度も入賞しておらず、タイヤ無交換で一時的に前を走っても結果には繋がっておらず、ほとんど上位争いからは消えていました。そんな中で今年はチーム2年目の塩津選手と新加入の偉織選手のコンビでしたが、第4戦の富士スプリント戦を見た時に『これ無交換とかやらんでも普通に速いよなあ』と思いました。
2人ともホンダのレーシングスクールを2019年に受講し、偉織選手はホンダ育成枠へ、塩津選手はその枠に入れず言ってみれば自力で細々と活動する状態に。結果ゲイナーを経てこのチームにたどり着いた塩津選手に対して、偉織選手も2024年限りでホンダをクビになってしまって道を絶たれることとなり、無職になりそうなところでまた彼もチームマッハに縁がありました。
ホンダの育成枠に入れなかった人と、入ったけど落とされた人のコンビですからそりゃあメーカー契約を続けるドライバーよりは格下ということにはなるんでしょうが、それでもスーパーフォーミュラまで進んで、怪我の代理選手として2戦だけとはいえGT500にも出場した経験がある偉織選手は並の選手から見れば遥かに高いレベルの存在。ひょっとするとスクール時代は互いに蹴落とすべき存在だったかもしれませんが、顔見知りで苦労も知る同期生の力はチーム力を明確に向上させたようです。
具体的に何がどう作用したのかはもちろん外からは分かりませんし、昨年はGT300全車に速度抑制のためにBoP重量と別に設定された『追加重量』がMC86は比率としてけっこう効いてしまってたんじゃないかと思うので、それが無くてBoP込み重量1150kgという本来の車だったのも大きいと思います。フォーミュラに乗ってる選手にとってはたぶん手懐けられると軽量でかっ飛ばしてちょっとアナログなところがすごく気持ち良い車だと思うので、2人の技量と上手いこと合致したんだろうと思いますね。
玉中代表はMC86が好きで、まだ新品エンジンの在庫が2基あるから使えるところまでこの車で行きたいと話しており、MC86マッハ号にはまだがんばってもらいたいですね。あ、最近GTを見始めた方はもう知らないかもしれませんが、MC86のエンジンはトヨタじゃありませんので、念のため。
2人のドライバーが来年も契約するのか、今年の活躍でどこかへ引き抜かれて巣立ってしまうのか分かりませんけど、ぶっちゃけ日産は自社でドライバー育成の仕組みをほぼ持っていないので、表現は悪いですけど偉織選手のような他メーカーでふるい落とされてしまった中から掘り出し物の逸材を見極めて引き入れるのがけっこう重要な気はしますね。
そしてチャンピオン争い、シーズン中盤で私は『AMG同士の争いになるんじゃないか』的なことを書きましたが、最終結果は全然違っていて辛うじて『AMGが勝つ』という点でだけ予想が当たりました(笑)今年のGT300は優勝で25点という制度にして優勝のニンジンが大きい一攫千金制度にしつつ、それに付随してサクセスウエイトが増えても入賞圏が15位まで拡大されたので重くなってもコツコツ少量の点を積み重ねられる、という形の制度でした。
そこにさらに実ウエイト上限が50kgでそれ以降はピットの給油速度を制限するサクセス給油リストリクターなる制度を急に取り入れ、8戦中7戦の有効ポイント制まであったので変更点が一度に多すぎたんですが、終わってみた数字を見ると均衡化策としては成功したような形です。有効ポイント制はマレーシアのレースにAシード保有チームしか連れて行けないので、やむを得ず1戦欠場するB/Cシード保有チームへの対応という意味合いですが、やっぱりちょっとややこしいですね。
ちなみに、8戦の中でマレーシアを含むどれか1つの下位成績を計算から除外できるAシードと、その1戦が欠場したマレーシアに充当されることになるB/Cシードでは有効ポイント制でもやはり差はあります。サクセスウエイトを加味するとマレーシアを休んだら次のレースが相対的に軽くて上位に行きやすいとも言えるのでまるまる1戦分の影響にはなりにくいですが、シーズンが現状の枠組みのままならチャンピオンを獲るためにはAシード必須と考えられます。
カーガイ296・オサリバン/小林組は結局このレース7位でドライバー選手権は1位から2.5点差の3位となり史上最年少チャンピオンコンビとはなりませんでしたが、カーガイ MKS レーシングは昨年休会していたヨギボー レーシングの参加枠なのでCシード、マレーシアは欠場でした。開幕戦が17位で無得点、マレーシア欠場、ということで入賞したのは6戦。蒲生/菅波も平手も全戦入賞だったので7戦ぶんの得点が反映されたのに対し、オサリバン/小林は有効ポイント制でも1戦が無得点で6戦だけの点数でした。
もちろん開幕戦で入賞してれば、とか、そのタラレバはウエイトが増えてるから鈴鹿で勝ってないのでどっちみち意味がない、とかあるわけですが、マレーシアに行ってたら296には合ったコースのはずなのでそれなりの点数は稼いだ可能性があり、ひょっとしたらチャンピオン獲ってたかもしれないですね。最悪1戦はリタイアでも救われる、というのと、1戦リタイアしたらモロ影響する、ではやっぱり状況は違うのでAシードは必須です。カーガイはこの成績で来年はAシード権があると思いますが、利徠斗君はよりトヨタ育成に相応しいチームに動くんじゃないかなあとか思ったり。ドライバーが替わるとか296のBoPが厳しくなるとか、だいたいマイナス要素が絡んで翌年も好成績は続かないもんですよねえ。
まあ何にせよ、最終的にGT300は多くの車両がチャンピオンや優勝争いに絡んで多様な車種構成のレースをきちんと演出はできたので、シーズンとしては非常に見応えがあって面白かったですね。ウラカンGT3がちょっと気の毒なぐらい前年対比で遅かったので、極端な振れ幅のBoPはもうちょっと何とかしてほしい気はしました。あと、ハリーキングはあんまり争ってる姿を捉える機会が無かったので無警戒でしたが、このレースを見る限りかなり上手いので良ければ長く日本で活躍してもらいたいです(笑)
来年はGT500でプレリュードGTが登場、空力開発許可年です。そして両クラスともタイヤ開発競争が行われる最後のシーズンとなる予定で、なんかに似てるなあと思ったらプロ野球でも来年がセントラル リーグで指名打者制が採用されない最後のシーズンだからだなと思いました(謎)さあトムスの4連覇はあるのか、プレリュードの出来映えは、Z NISMO GT500は何台出てくるのか、運営はまたへんてこりんなルールを作るのか、もう今から開幕が楽しみですね。
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