SUPER GT 第7戦 オートポリス

2025 AUTOBACS SUPER GT Round7 AUTOPOLIS GT 3Hours RACE
オートポリスインターナショナルレーシングコース 4.674km 3hours
GT500 class winner:STANLEY CIVIC TYPE R-GT 山本 尚貴/牧野 任祐
(Honda CIVIC TYPE R-GT/STANLEY TEAM KUNIMITSU)
GT300 class winner:seven × seven PORSCHE GT3R 藤波 清斗/Harry King/近藤 翼
(PORSCHE 911 GT3R/seven × seven Racing) 

 オートバックス スーパーGT選手権、チャンピオン争いへの天王山となるオートポリス3時間レース。仕事が忙しくて感想を書けないうちに最終戦が来てしまいましたが、SUPER GT + KYOJOのオートポリス分の放送もまだ残ってるし私の中ではまだまだ余韻が残るレースです(笑)
 今年の3時間レースは富士とここの2回ですが、オートポリスは『抜きにくい!けどタイヤ摩耗も激しい!』ということで、トラック ポジションを重視するとあっさり抜かれるし、かといってトラックポジションを無視しすぎると抜けなくなって大損するので、より戦略が難しく耐久レース要素や2回の給油義務に変化が生まれやすいコースと言えます。いうても富士は車の力量がそのまんま結果になりやすいですからね。
 昨年は天候不良で土曜日に予選を行うことができず、日曜日に予選と決勝を詰め込んだバタバタの展開になり、GT300ではそのせいで『発表された正式予選結果がスタート直前に変更される』という運営として問題のある事案も発生しました。今年は変な不確定要素が入り込まないことを願います。

・レース前の話題

 GTアソシエイションの定例会見で重大発表があり、2年後の2027年からSUPER GTのタイヤがワンメイクになると発表しました。タイヤ開発によって費用が高騰し続け、とりわけGT300クラスではタイヤの購入費用がチーム運営の負担であることが主な要因ですが、競争を続ける限り性能は上向いて、運営側がいくら車の旋回速度を下げようとしても制度でそれを担保できず、環境対応のタイヤ開発も競争状態では行えず社会情勢とも合致しないことも理由にあると思われます。
 既にモータースポーツドットコムで同様の記事が噂として掲載されていた(あるいは反応を探るためあえて情報を流させた?)ため驚きという点では小さい物でしたが、その時点で私は「本当かどうか知らんけど、まあいずれはそうなるだろう。」というぐらいの印象でした。というのも、2年前にミシュランが撤退した際に私はこう書いていました。

ほんの10年前には『世界で唯一競争があることが魅力』だったはずのレースが『もやはこの競争には魅力がない』と言われた、と解釈しても過言ではありません。もちろんこうした表向きの理由だけが全てではないものの、世界で唯一といえるタイヤ競争がスゴイ!と運営側も報道側も宣伝しているシリーズが、ひょっとすると曲がり角に来ているのでは?とも思えます。案外数年後に『ああ、あのミシュラン撤退ってすごく転換点だったよね』となることがあるのかもしれません。

 これ以外にも、たぶん私はたまに『あまりにタイヤがレース結果に与える影響が大きすぎる』という否定的なことを何度か書いてきたと思いますが、今回の転換を後ろ向きではなくレースをより白熱させる、タイヤ競争に振り分けていた力を別の部分でレースの内容を濃くするための力に振り分ける好機であると前向きに捉えて運営にも制度設計に取り組んでもらえればと思います。
 2019年末のDTMとの特別交流戦でハンコックのワンメイクになった際、普段なら最後尾を走るナカジマレーシングが優勝して『そうか、タイヤが平等なら勝てるんだ』と感じた方は多かったと思います。そういう『誰が勝つか分からないレース』により焦点が当たれば、新たな魅力の創造につなげることも可能でしょう。

 そしてもう1つ、スバル/STIが今季限りでBRZ R&D SPORTに搭載しているEJ20型エンジンを『引退』させると発表しました。この発表の前には、モビリティリゾートもてぎで開催された合同テストで謎の旧型BRZが参加しEJ20とは異なるエンジン音を響かせていたという情報が伝えられていたため、こっちもやっぱり驚きという点では限られるものの、ようやくEJ20の後を継ぐエンジンの使用めどが立ったと思われます。

 元々はWRCで1990年代から使用されていたエンジンが土台となり、既に市販車としては使用されていないのに現在まで改良が重ねられてGT300で使われ続けたEJ20。STI/R&Dスポーツでの参戦となった2009年のレガシィから数えても16年、実際はそれ以前からクスコレーシングがインプレッサのエンジンとして1998年から使用しており、27年は使い続けている最古参エンジンでした。
 独特の音は画面の外に車両がいても「あ、ここにBRZおるな。」とすぐ判別できるものでファンも多いと思いますが、600馬力近い最高出力が当たり前の現在のGT300で戦うには3バール近いとんでもない過給圧をかけることになって明らかに負荷が大きく、そのせいかたびたびレース距離に耐えられず破損。今年の第2戦でも優勝目前に壊れる悲劇がありました。
 R&Dスポーツでは以前から新しいエンジンの開発についての言及が何度かありはしたものの、高耐久のEJ20に代わる有益なベースエンジンが無いために言うほど簡単ではなかったらしくすっかり音沙汰が無くなったような印象でしたが、どの型式が選ばれたのかファンとしても興味津々でしょう。最初は不具合も多いでしょうが生みの苦しみとして見て行きたいなと思います。

・予選

 公式練習の段階から雨が降ったりやんだり、天候が不安定だった予選。GT300のQ2開始前に雨が降って来てウエット タイヤの出番が来ましたが、結果としてはスリックで周回するのが正解でした。そんな難しい予選でのポール ポジションは2戦連続でCARGUY FERRARI 296 GT3(50kg/給油速度制限)・小林 利徠斗でした。Q1のザック オサリバンもA組の最速でしたから2戦連続で両セッション制覇です。それにしても感情の上下動が少なくて独特の雰囲気。

 2位は利徠斗くんに抜かれるまで暫定1位だったVenteny Lamborghini GT3(33kg)・小暮 卓史/元嶋 佑弥でした。ベンテニーウラカンはQ1・B組の最速で公式練習でも最速だったので、順当に上位に来たけどポールは獲られたという感じですかね。3位はGTA車両のHYPER WATER INGING GR86 GT(50kg/給油速度制限)・堤 優威/平良 響/卜部 和久、4位にドライバー選手権1位のLEON PYRAMID AMG GT3(50kg/給油速度制限)・蒲生 尚弥/菅波 冬悟/黒沢治樹が続きます。
 なお、SUBARU BRZ R&D SPORT(44kg)はQ1・A組で2番手タイムを出した後のセッション終了間際にエンジン関係の部品が壊れたようでオイルをドバドバ吐き出し、自分でそのオイルを踏んでスピン。Q2に進んだものの走れないので予選18位となり、見ている方は「ああ、やっぱりEJ20限界やなあ。」と思わずにいられませんでした。また雨に足を掬われてQ2でクラッシュしたGAINER TANAX Z(26kg)は、量産車フレームを使用して作成している車両なので内部の破損に対する懸念があり、万が一レース中にウイングにかかる大きなダウンフォースが原因で車がぶっ壊れたら危険なので、チームの判断で安全性を理由に決勝に参加しませんでした。

 そしてGT500の予選はQ2がもう完全に雨。残り5分あたりから明らかに条件が悪化しており、この時にENEOS X PRIME GR Supra(36kg/-1)・福住 仁嶺が記録した1分39秒853はもう超えられないだろう、おしまーい、と思いました。しかし私はタイヤ開発競争が生み出したウエットタイヤを舐めていました、F1ならもうみんなピットに帰ってるような雰囲気の中でMOTUL AUTECH Z(29kg)・千代 勝正が0.008秒だけ上回って見せると、さらにNittera MOTUL Z(17kg)・佐々木 大樹が0.385秒も千代を上回る最速。さすがにここから先はもう更新できそうになく、佐々木が2023年第4戦富士以来2年ぶりのポールポジションを獲得しました。
更新できる見た目じゃない(笑)

 予選後のインタビューでは感極まって涙した上に、なんだか意味深な言い回しの発言を残したためそこも注目されることになりました。日産は経営環境が厳しいため、ニスモ運営の2台を1台に減車して3台体制になるのでは、という噂が出ており、関係あるんじゃないのかと言われています。まあ単純に本人の契約の話かもしれないので、話を結び付けてしまって良いのかはちょっと分からないですけどね。AJアルメンディンガーの優勝インタビュー思い出した。

 エネオスルーキーレーシングは3位ですが選手権2位の立場としては上々の予選。選手権1位のau TOM'S GR Supra(44kg/-1)・坪井 翔・山下 健太もしぶとく7位でした。1回タイムを出した後に、ハードからソフトに交換したのか一度ピットでタイヤ交換しましたが、さすがにウォーマーも無いレースで100秒サーキットを走って、10分間に2回もタイヤに熱を入れてアタックするのは無理でした。
 ちなみにトヨタ陣営はQ1でDeloitte TOM'S GR Supra(44kg)・笹原 右京が後続の同じGRスープラ勢のアタックを妨害してしまい、予選後にちょっと不穏な空気が流れました。笹原にペナルティーは出ませんでしたが、自分はタイヤを温めている、後ろはもうアタック中、という状況が伝わっておらず、また笹原もミラーに映る車両からそうした判断ができなかったようで、ちょっと気になる位置にいたとかいう次元ではなく完全にライン上に居座っていました。笹原にペナルティーは出ませんでしたが、制度的にもうちょっと罰則対応など設計しておいた方が良いんじゃないかと思いますね。相手が別メーカーだったらそれもまた大きな騒動になりかねません。

・決勝

 大気の状態は引き続き不安定ながらとりあえず雨が降らなかった決勝。GT500クラスは珍しく序盤に波乱が続きました。スタート直後のターン1で4位スタートのKeePer CERUMO GR Supra(43kg)・大湯 都史樹が5位スタートのTRS IMPUL with SDG Z(28kg)・ベルトラン バゲットに引っかけられてスピンし最後尾へ転落。
 さらに12周目には7位のModulo CIVIC TYPE R-GT(9kg)・伊沢 拓也に対してリアライズコーポレーション ADVAN Z(21kg)・松田 次生が外から並んでいたターン3手前で押し出されてしまい、ここは芝生で全然止まれないのでバリアに衝突。当たった見た目以上に派手に車が壊れてしまいSC導入となりました、伊沢さん、ミラー見てなかったんでしょうか。これらはバゲットと伊沢にそれぞれドライブスルーのペナルティー、バゲットのペナルティーはこのSC前の時点で既に発行されていましたが、GT300の集団に戻らないようにするためかインパルが消化を遅らせていたらSCが出て、逆に損をしてしまいました。消化してたらほぼ帳消しにできたのにねえ。


 17周目・残り2時間27分ほどでリスタートされると、ここから先が3時間レースの真骨頂という感じになりました。好調だったのは6位スタートのデロイトトムス・笹原で、前の2台が消えたこともありますが19周目に3位、24周目に周回遅れも利用しながら2位、そして二テラZ・佐々木も28周目にかわして先頭に出ました。auトムスもこの時5位でウエイトなりに堅実に走っており、トムスは相変わらず強いです。

 他方でこの段階で既に1回目の給油を終わらせてアンダーカットを狙ったチームが3つありました。オートポリスの場合、ラップタイム・航続距離・タイヤの寿命から考えてざっくり1スティントは20周~40周の間で選択の余地があります。33/33/34もあれば、25/35/40というのもありでしょう。そんな中で1周目にスピンしたセルモは何かを起こすためになんと大湯が21周目にもうピットへ。1回目の給油を早めた場合、満タンにするための給油時間は単にそこまでに使用した燃料分しか入れようがありません。今回4周ほどFCY/SCがありましたので、実質20周以下の燃料しか使っていないですから当然給油時間も短くて、この後1回目のピット サイクルを終えたら先頭に出ます。
 とはいえオートポリスはタイヤの摩耗がハゲしいのでタイヤが古いと抜かれやすいし、しかも早めに入る作戦は燃料が満タンから始まって車も重いし燃費走行も必要。他方で均等割りに近づけていった場合には燃料搭載量が最初から少なく済み、タイヤの摩耗速度にも影響します。当然デロイトトムスが順番にさばいていくだろう、と思ったら笹原は10周以上履歴の浅いタイヤで案外前に出れません。アンダーカット3人衆の1人・WedsSports ADVAN GR Supra(13kg)・国本 雄資をなかなか抜けず停滞し、セルモからすると願っても無い好機です。

 さらにトムスにとって最悪なことに、笹原に追いついたauトムス・坪井が57周目の第1ヘアピンで突っ込みすぎて追突してしまい、おそらく衝撃で前照灯が消えました(´・ω・`)

 こうした問題もあってセルモはなんと58周目に2回目のピットに入るまでリードを譲らず、少なくともほぼ最後尾だったことを考えれば作戦は既に7割がた成功です。一方でトムスは同士討ち危機でヒヤッとする中で、背筋が凍る問題がさらに発生。1回目の給油を40周まで遅らせる完全逆張り作戦だったSTANLEY CIVIC TYPE R-GT(32kg)・牧野 任祐が猛烈な勢いで追いついており、58周目の最終コーナーで真後ろに付かれると、なんとその前方ではタイヤがバーストしたRUNUP RIVAUX GT-Rがコース右端を走行、
マジか!

 してたと思ったら急に左折して低速で道路を横断。坪井と牧野は左右に分かれて、スパフランコルシャン伝説の3ワイドバトルのように左右から抜いていきました。マジこれ大事故起きたと思った。。。そして牧野は坪井を抜いて見た目上で2位、実質もトップ3圏内と考えられる順位まで上がってきました。予選12位で1回目の給油後も当然トラックポジションは失ってるので同じ12位あたりだったんですけど、どうやってこんなに抜いたんでしょうか、ただ物ではない任祐!(←むっちゃ古いネタ)
 見た目上の1位になったチーム国光は優勝のために次なる作戦へ、他のチームが57周目あたりから2回目のピットサイクルに入っていく中で、彼らは少し引っ張って64周目に2回目のピットへ。ただ周回数の刻みという意味では40周→24周と、このスティントを極端に短く切りました。おそらく1回目の給油でレースに必要な燃料の多くは補給済みでしょうから、ここでの給油時間はおそらく15秒ほど。ピット作業全体が約25秒という早業で実質1位のまま合流することに成功、タイヤは上位勢で最も新しいので選んだタイヤが大外れしていなければ優勝に大きく近づく瞬間でした。

 さらに2回目のピットサイクルを終えると、2位には11位スタートから36→21と刻んだARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #16(18kg)・佐藤 蓮が、3位にはこれまた35→23と刻んでいるモデューロシビック・大草 りきがいました。中嶋レーシングはドライブスルー受けてるから3回ピット通過してるんですけど、何でここにいるんでしょう・・・^^;

 スタンレーチーム国光はその後も全く危なげない走りを見せ、最終的に約26秒の大差を付けて3時間で102周を走り切り今シーズン初勝利。シビックにとっても今季初で、チームは2022年最終戦もてぎ以来約3年ぶりの優勝でした。さらに2位は最終周に逆転してモデューロシビック、抜かれてしまったARTA16号車が3位ですが、何にせよシビックでは初の表彰台独占です。ペナルティー差し引いたら、ひょっとしてモデューロはあれやってなければ勝ってたのでは・・・

 4位はアンダーカット作戦のギャンブルが大成功のセルモ、5位にウエッズスポーツ坂東で、結果として見ると上位3車は2回目の給油を短く切った組、それに続いたのは最初の給油を早めてトラックポジションを最初に獲った組だったことになります。給油の割り振りがレース結果をけっこう大きく動かしました。予選ワンツーのニスモは比較的均等割りに近い作戦でしたが、ニスモが6位、ニスモNDDPは7位となんとなく後悔が残りそうな結果でした。
 しかしトムスは後悔どころか結果も残りませんでした。2台とも第3スティントに入って急にエンジン出力が出なくなる問題が発生しリタイア。いずれもグリルにゴミが詰まりすぎて温度が上がりすぎたことが原因とみられます。デロイトトムスに関してはジュリアーノ アレジが66周目にセルモを抜こうとちょっと意地を張りすぎて第1ヘアピンではみ出していたので、この時に大量にグリルに土と芝を食べたのが主因と考えられます。湿ってて詰まりやすそうでしたしね。

 一方auトムスはなぜそこまで詰まったのかよく分からないみたいなんですが、映像を見ると67周目の直線でウエッズスポーツを追っていた際にスリップストリームに入らずラインをズラしているので、この時点で既に温度が上がっていたのではないかと推察できます。アレジが飛び出した時にヤマケンはその2秒ほど後方にいましたが巻き上げられた土煙の中を通過していることが確認でき、タイミングからするとこれも1つの要因だったんじゃないかと感じました。ひょっとすると追突で僅かに車体がへこみ、受圧部であるグリル付近の形状が変わってゴミを受け取りやすくなったんじゃないか、という気がしないでもないです。auトムスは2023年の第2戦から続いていた連続入賞記録がとうとう途切れましたね。

 久々に熱かったGT500に対し、GT300は近藤 真彦じゃない方のマッチレースという感じでした。小林 利徠斗スタートのカーガイ296と元嶋スタートのベンテニーウラカンが2人で逃げて行き、まず28周目にカーガイ、続く29周目にJLOCが1回目のピットへ。ここでJLOCはお得意の後輪だけ交換を実行し、元嶋が先行して第2スティントに入ります。

 カーガイは小林からオサリバンに交代しての第2スティント、タイヤは4輪とも交換して新しいんですがウラカンは非常に速い上に直線も伸びるので全く抜けません。いつカメラで捉えてもずっと同じ光景で1秒以内の争いを延々と続けている様子。結局35周ぐらいずっとオサリバンはウラカンの後部だけを見続けて56周目に相手が2回目のピットに入ってくれるまで抜くことができませんでした。ずっと接近戦だったのに何も起きてないので公式ダイジェストに彼らの映像は全く入っていません(笑)
 ここでJLOCは元嶋から小暮へ交替、ちょうどランナップGT-Rの停止に伴うFCYが始まる直前だったので時間的にちょっと得もしました。オサリバンは62周目まで頑張って2回目のピットへ、再び小林に交代してコースに戻りますが当然前にいるのは小暮さんです。俺もウラカンのお尻を眺め続けるのか、と思ったかもしれませんが、なんと小暮に対してFCY手順違反ということでペナルティーが課せられてドライブスルー。これで相手が勝手にいなくなってカーガイ296が先頭に戻りました。戦わずして勝つ。

 と思ったらさらに波乱は続き、小林と小暮の双方に黄旗区間での追い越しでペナルティーが出ました。いずれも交代前の前任ドライバーの走行中の出来事ですが、ホームストレート後半での黄旗で、しかもピットから出てくる車両がちらほらといるという面倒な状況で、ピットから出てきた速度差のある車両を2人そろってうっかり抜いてしまった、というのがその理由でした。青いRC Fはピットを出たばかり、前方は黄旗、速度差がありますが抜いちゃいけないわけですね。デロイトトムス・笹原も同様ですがリタイアのためペナ未消化となりました。

 でも1位と2位が同時ピットなのでこの間での順位変動はなく、そして3位のseven × seven PORSCHE 911 GT3R(39kg)・ハリー キングとは25秒以上差があったので、カーガイはペナルティーを消化してもなお1位でした( ゚Д゚)
 ペナルティー消化後に小林とキングの差は一時1秒ほどになったものの、ここからまた離れて行って今度こそ勝負あり、と思ったらまだ波乱はありました。89周目にカーガイが突然のピット、なんと燃料が足りませんでした。レース残り9分、あと6周ほど残っている段階なので全然足りていませんから、給油作業そのものが失敗してるか、計算を間違えたか、何にせよ致命的に燃料不足でした。

 ちなみに小さく書かれたスポンサー・MODS CLINICは植毛かと思ったら脂肪吸引の美容施術の施設、ってこれ前にもどこかで書いたかな。脂肪ではなく優勝を吸引されたカーガイにかわり、思わぬ形で先頭に出たセブンバイセブン、そのまま逃げ切って参戦7戦目にしてGT300初優勝を達成。ポルシェの優勝はどうも2012年最終戦でのENDLESS TAISAN 911以来13年ぶりではないか、とのこと。

 勝てるレースを逃したカーガイが2位、チェッカー後に1周して帰って来る前にまたガス欠して止まってしまい、罰金10万円という地味に痛い処分も食らいました。どうやら計算上と実走で燃料残量が食い違っていたようです。296GT3といえばチームルマンの車両で過給圧の制御が上手く行かず、意図せず規定を超えて失格になる事案が以前にあって制御系に何かよく分からん不具合のような存在が考えられますが、ひょっとするとこれも似たような話なんじゃないかと思ってみたり。
 ベンテニーウラカンはペナルティー2枚重ねで3位、こっちも勝てそうなレースを落とした悔しさの反面、そんだけあっても3位というのは前向きに捉えることもできます。このところドライバー選手権で急進中・リアライズ日産メカニックチャレンジGT-R(50kg/給油速度制限)・ジョアン パオロ デ オリベイラ/平手 晃平は今回も14位スタートで4位とこのチームらしさを発揮、レオンAMGも6位に入りドライバー選手権1位を守りましたが、平手は気づけば僅か1.5点差の2位です。でもGT300は8戦中7戦の有効ポイント制なので、これを加味するともうちょっと離されています、マッチのとこは全戦入賞かつ優勝してないから消される点数が5.5点とライバルより多めです。できれば有効ポイント加味の順位も別途表記してほしい^^;
 インギングは上位2人と同様に黄旗追い越しによるドライブスルーがあり、何十秒もぶっちぎったわけではないので順位を落として12位でした。

 今回のレースは珍しくリアルタイムで見ましたが、正直3時間レースはそんなに期待していなかったですし、GT500の戦略はSCが挟まらなければ結局は均等割りに近い人が速いだろうと思っていたので、どっちの想像も良い意味で裏切られて面白いレースでした。最初に長い周回数をこなしてしまう作戦は、基本的にトラックポジションを全部捨ててしまうのでコース上で全部抜かなければならず、1回目と2回目の給油の間にSCが出る偶発的な助けが無いと損失が大きくて成功しないと思っていたので特に驚かされました。
 今回のシビック躍進には2基目のエンジンも貢献していたとレース後の話で明らかになり、なるほどホンダさんやってくれたなと納得。話を読む限り、あえて第7戦まで投入を遅らせてきたことで1000kmそこそこ走れば良い前提、かつ30℃を超えるような環境ではないということでかなり耐久性より性能に割り振ってきたようです。燃焼時の圧力設定や細かい部品の軽量化でしょうかね。
 ここ数年はさすがに現行のエンジン規定では開発がしつくされてほとんど3メーカーで差も無いし、伸びしろも少なくてあんまり存在を意識することもなくなってましたが、なるほどオートポリスであれだけ抜けるのはタイヤの履歴差やタイムの落ち幅だけではなくエンジンも必要だよなと合点が行きました。概念としてF1での超高速燃焼から得た知見なんかも活かされてたりするんでしょうかねえ、あれは精密に制御できないとエンジンぶっ壊れるのでそのままは採用できないでしょうけど。

 ある程度抜ける環境の整った車、予選では下位、という状況で逆張りし、そうしたら上位はアンダーカット戦略の人が前を抑え続けて理論上速い作戦の人が誰一人前に出られなかったので絶好の展開だったと言えます。いつも手元で各者のピットタイミングだけはメモを取りながら見てるんですが、興味深くて面白かったです。


 GT300は圧倒的に速い2台がペナ祭りでどっちも勝てない、というなんか1990年代みたいな結末になりましたが、ランナップGT-Rの動きはむちゃくちゃ危なかったし、車両を停めた場所からするとFCYの決断までに約3分というのは運営もちょっと判断が遅かったように思いました。ストレートの終盤、それもターン1の減速位置より手前の最高速が出る近辺で黄旗が出ると、クラス違いでもピットを出た車両でも抜くことができないので、けっこうレース展開への影響は大きくなります。
 2回目のピットサイクルにかかっていたのでFCYにもレースへの影響はあったでしょうが、ピットを出る車両をコース上の車両が抜けず、気づくのが遅れてうっかり急減速するというような状況は別の事故を招くおそれもあります。ランナップの動きからするとわざわざ危険な横断をしたのに自力で移動する可能性も低いですから、思い切ってもっと早く出しても良かったんじゃないかと個人的には思いました。だから黄旗追い越しは不運、ではなくちゃんと見ないといけないですけどね。
 ランナップはあの時ドライバーが誰だったのか分からないんですが、コース右側に停めてしまうと回収作業が大変だからレースを停めて迷惑かけないようにピットのある側に行こうとしたんだろうな、という意図は分かっても、さすがに後ろからGT500が来てるのにコース横断は危なすぎますし、後続車が予期できないです。オートポリスの右側は芝生部分が延々と狭いまま続くので瞬時に「右はダメだ!」と思ってしまったのかなあというところですが、次あったらもう素直に右側に停めてください^^;

 両クラスともドライバー選手権がずいぶんと僅差になり、2戦前の段階で想像していたよりも36倍ぐらい勝敗の行方が分からなくなりました。特にGT500はトムスのリードがたった6点まで縮小しており、消化試合感のないレースが期待できそうです。次戦は最終戦のもてぎです!ていうかもう今日です!!

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