Formula 1 MSC Cruises Grande Prêmio de São Paulo 2025
FP1最速はノリスで2位は0.023秒差でピアストリ。0.6秒ほど離れた3位がニコ ヒュルケンベルグで、フェルナンド アロンソを挟んで5位にはガブリエル ボルトレート。ザウバーはなぜか3位と5位で好調でした。フェラーリは目先の速さを追っていないようでシャルル ルクレールが18位、ルイス ハミルトンが19位。下にいるのは角田だけでした。
・決勝
内側を走るぶんだけ先に減速を開始、アントネッリはタイヤがソフトだということもあってそれよりも減速の開始が遅く、ターンに向かってステアリングを切り始めた時点ではピアストリの前車軸はアントネッリ車の中心部分ぐらいまで下がっていました。ミラーよりちょっと後ろです。
で、ここからアントネッリは内側に切り込んで行き、ピアストリは接触したら困るのでステアリングを切り足してブレーキも足したとは思いますが左前輪がロックし、そして残念ながら接触を回避できずターン1で接触しました。ガイドラインに従えば、権利の無いコーナーで引かずに接触したからアントネッリが悪い、ということになります。ただ、ピアストリにペナルティーが出た、レーシング インシデントと判断されなかった、ということは、ピアストリだけが悪いということとイコールではないと私は思います。
Autódromo José Carlos Pace 4.309km×71Laps(-0.06km)=305.879km
Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)
2025年のF1世界選手権はとうとう残り4戦。第21戦はサンパウロの名前が冠されたブラジルです。地形に合わせて作られた1周4.3kmの短いコースでありながら、高速・低速の双方の性能が試されて旋回ブレーキも多く、古いサーキットにありがちな『現代のF1だと狭くて小さいから抜けない』ということもないので、けっこう奇跡的な素晴らしいサーキットじゃないかと思います。
短いがゆえに予選は僅差で波乱も起きやすく、メキシコシティーほどではないけど標高が高いのでPU性能も要求され、11月開催だと暑いのでタイヤも上手く使う力量が試され、そして急な天候変化の可能性も比較的高い、とレースに求められる要素がほとんど全部入ってますしね。加えてここはスプリント開催の週末ですから、チャンピオン争いに最も変動を与えるのはこのレースではないかと思っています。
最近のピレリは2ストップ戦略を促すために変な設定でタイヤを持ってくることが多いですが、今回は昨年のサンパウロより1段階固い設定でソフトC4~ハードC2の設定。昨年に再舗装が行われたものの雨が多くてじゅうぶんなデータを集めることができず、その状態で『再舗装から1年経った路面がどういう状況なのか』まで判断することが難しいので保守的に見積もりました。
ドライバー選手権、前戦メキシコシティーでランド ノリスが半年ぶりにオスカー ピアストリを逆転して僅か1点差ながら1位を奪還。残り4戦でほぼ横並びのプレイオフ状態です。そこに、プレイオフ ポイントが足りてない感じの36点差でマックス フェルスタッペンがギリギリで圏内にいる状態。ただ夏休み明けからは最も点数を挙げている選手でほぼ一方的に追い上げており、ここでマクラーレンの2人より稼ぐことができればいよいよ射程圏という感じです。そんな上手いこと行くわけが、と思いつつ期待はしてしまう週末です。
・レース前の話題
アルピーヌはフランコ コラピントと来季もドライバー契約を結んだと発表。アルゼンチン出身だけに発表を母国に近いブラジルの直前にしたのかな?とか思ったりしますが、ともあれこれでアルピーヌはピエール ガスリーとコラピントの組み合わせになりました。
・練習走行
スプリントにつき1回しかない大事な調整機会、開始僅か10分ほどで角田 祐毅がクラッシュ。ターン4出口にある縁石は攻めるとついつい跨いでしまいますが、乗り方が悪いとタイヤが路面にきちんと設置せずすっ飛びますね、グランツーリスモでもここはよくやるんだ。
FP1最速はノリスで2位は0.023秒差でピアストリ。0.6秒ほど離れた3位がニコ ヒュルケンベルグで、フェルナンド アロンソを挟んで5位にはガブリエル ボルトレート。ザウバーはなぜか3位と5位で好調でした。フェラーリは目先の速さを追っていないようでシャルル ルクレールが18位、ルイス ハミルトンが19位。下にいるのは角田だけでした。
・スプリント予選
時間とともに路面温度が急低下しているせいか、SQ2で突然フェルナンド アロンソが1分9秒330を記録して、これを誰も抜けずこのセッション最速になるというちょっとした波乱が発生。SQ2では8位止まりだったフェルスタッペンはSQ1と操縦性が激変したのか「車壊れてるぞ!乗ってられっか!」と激怒。
SQ3になるとさすがにノリスが本領を発揮し、確実性を重視して2回計測する組み立ての2回目で1分9秒243を記録。結果として2位以下はノリスの最初の記録にも僅かに届いておらず、盤石という感じでスプリントのポールを手にしました。2位はアンドレア キミ アントネッリ、3位にピアストリ。ピアストリは1回目の計測の際にターン1でミスって上手く行かなかったので、そのぶん2回目も本当に攻め切ったとは言えない内容だったかもしれません。
4位からジョージ ラッセル、アロンソ、フェルスタッペン、ランス ストロール、シャルル ルクレール、アイザック ハジャー、ニコ ヒュルケンベルグのトップ10。角田はSQ1で落ちて18位です。しかし国際映像の予選トップ10表示、順番は合ってるんですけど記録はなぜかQ1のものになってるので明らかに遅い上に、この通りだとすると順位と記録に整合性が取れていません(笑)
・スプリント(24周)
深夜に雨が降ったようで路面が多少濡れてはいるものの、かといってインターミディエイトを使うには乾いた部分が多すぎる難しい状況。ラッセル、アントネッリ、フェルスタッペンなど上位の偶数列選手がソフトを、他は多くがミディアムを選択しました。スタート直後のけっこう怖い攻防を経てノリス、アントネッリ、ピアストリ、ラッセル、フェルスタッペンの順位である程度落ち着きましたが、
6周目にピアストリが単独スピンしてクラッシュ。さらにほぼ同じ場所でヒュルケンベルグとコラピントもクラッシュしてSC導入、コース整備と回収作業のためにレッド フラッグとなりました。3人ともターン3内側の白線や縁石にあった水に乗って急に姿勢を乱したことが原因ですが、どうやら先頭のノリスが水のたまった部分を最初に踏んで拡散した模様。レース後ラッセルが『マリオカートのバナナの皮のようだ』と形容したとか。
中断によってスプリントでは珍しくタイヤ交換の機会になるわけですが、どのチームも予選以降に残したいタイヤが決まっているので事実上の選択肢が無くノリスがソフト、アントネッリ、ラッセル、フェルスタッペンがミディアム、とスタートとは単純に逆さまになりました。リスタート以降はソフトを履いたノリスが終盤にかけてアントネッリに追いかけられましたが、抜かれるほど致命的に遅くはならず上手く対処してスプリントを制しました。
アントネッリ、ラッセルの2位・3位でメルセデスはありがたい13点を獲得。フェルスタッペンは相変わらず挙動に不満で4位が限界。5位にルクレール、アロンソは5位リスタートでしたがソフトで苦労、必死で守っていましたがルクレールには負けて6位でした、それでもお見事ですね。7位ハミルトン、8位はなぜか分からんけど調子が良いらしいガスリーでした。
また最終周のターン1ではガブリエル ボルトレートが大クラッシュ、ちょっと無理な距離からターン1で抜きにかかって内側に車を動かしたものの、DRSが閉じるより前にステアリングを急に切った上に乾ききっていない方向へ動いたのでその瞬間に制御不能になりました。あれは飛びこんだってたぶん止まれないから抜けないかぶつかるだけで、ちょっと余分なクラッシュでしたね、というか巻き添えが出てたらけっこう危ない事故でした。
・予選
ボルトレートの修理作業を待ちたかったからでは無いと思いますが、設備修復作業のため開始が予定より5分遅延。いざQ1が始まるとフェルスタッペンの調子が全く上がらず、なんと15位のヒュルケンベルグに0.066秒届かず2021年ロシア以来となるQ1脱落。F1公式サイトによるとフェルスタッペンのQ1落ちは通算7度目ですが、過去6回は全てPU交換によるグリッド降格が確定していることを理由とした意図的なもので、実力によるQ1落ちは自身初でした。ちなみにQ1をギリギリ通ったヒュルケンベルグはQ2でもギリギリの10位でアロンソとハミルトンの元王者を下し今季初のQ3へ。これで上位10人にチャンピオン経験者がいなくなりました。
そしてQ3、1回目の計測でノリスがさぞかし良い記録を出すだろう、と思ったらターン1で大失敗してまさかのドベ。対するピアストリは1分9秒897で暫定1位となってノリスにはいや~な状況となります。
シーズン中盤までだとこのパターンでノリスは4位とか中途半端な順位に終わることが多かったですが、ここは2回目の計測で1分9秒511を記録、さっきのピアストリを大きく突き放して暫定1位となると、これを誰も更新できずピレリ ポール ポジションを獲得しました、今季6度目・通算15度目。スプリント予選に続いて2位にアントネッリ。アントネッリは予選自己最上位で、19歳76日は1列目からスタートする選手としては史上3番目の年少記録です。3位はルクレール、ピアストリは2回目の計測で自己記録を超えられず4位止まりでした。
アイザック ハジャー、ラッセル、リアム ローソン、オリバー ベアマン、ガスリー、ヒュルケンベルグのトップ10。つまりレッド ブルとしては本家が壊滅状態だったのに子分は好調でした。じゃあフェルスタッペンがこっちに乗ったらいいんじゃね?とか思うわけですが、この車が出せる最大ダウンフォース量≒限界コーナリング速度はRB21よりも低いため、どれだけ運転手さんが頑張ってもMCL39に対抗する速さは引き出しようがない、という現実があると考えられます。ザックリ言えば、フェルスタッペンならずっと3~5位を獲り続けられるかもしれませんが一度も1位にはなれない車です。
気温が17℃、路面温度も31℃ほどと曇っていてえらく寒そうに見える天候。ポールシッターのノリスがミディアム、2位のアントネッリはソフトを選択。上位10人はソフトとハードが半々です。フェルスタッペンは予選が壊滅的だったのでPU交換とセッティング変更を施しピット レーンからスタート、タイヤもハードで上位とは全く異なる立場を選択しました。しかしこんだけ路面温度が低いとハードは役に立たないのでは・・・
上位勢はタイヤがじゅうぶんに温まっていないであろう中で比較的落ち着いたスタートでしたが、ターン10でボルトレートがクラッシュして動けなくなったのでSC導入。SC導入前にはフロントストレッチでハミルトンがコラピントに追突してウイングを落っことす事故も別件で発生しました。
ボルトレートは左右に切り返す区間で中途半端にランス ストロールの外側に並んでしまって行き場を失っており、まあできればストロールには変な0.7台分ぐらいの場所を開けずにちゃんと見ていて欲しかったところですが責任はボルトレート側。スプリントに続いてのクラッシュに、観客席でがっかりしている子供の様子が映し出されました。そういえば2017年のスペインでライコネンがリタイアし、号泣したライコネンファンらしき子供がフェラーリのガレージに招待してもらったやつありましたね(笑)
ハミルトンの方はスリップストリームに入っていてどうやってターン1で並ぶか間合いを計っていたらうっかりコツンと行った感じ。コラピントも左に行くのか右に行くのか分かりにくい中途半端な動きには見え、これまたコラピントももうちょっと相手に信頼してもらえる動きをしてはほしいところですが悪いのは突っ込んだハミルトンだと思います。ターン12から先は事実上は直線でも名義上はずっと『ターン』ですしね。ハミルトンはスタート直後のターン1では左リアをカルロス サインツにつつかれて順位を下げてたので、ちょっと精神が乱れてたかもしれません。
6周目にリスタートしますが、ノリスが後続を引き付けまくった末にアントネッリをうまくだまして加速。出遅れたアントネッリに外からルクレール、内からピアストリが並んでいきなり2位争いが3ワイドに、ピアストリが内側に飛び込んでアントネッリとルクレールの一挙2人抜きも視野に入っていましたが
またもや事故発生、ピアストリがアントネッリと接触し、弾かれたアントネッリが外にいたルクレールにけっこうな勢いでぶつかりました。ピアストリは当たったけど無事、アントネッリは普通ならスピンしていたところ、ルクレールに当たったおかげで立て直してターン2不通過だけで済んで車もほぼ壊れていませんでした。ルクレールだけが左後輪のパンク、だけでは済まない損傷を受けておりターン4の手前で車を自主退避させリタイアする大被害者、これで今度はVSC導入となりました。
ちょうど9周目に入るところでVSCが解除され、ピアストリが最初の数コーナーだけノリスを狙っていましたがさすがに抜けはせず、そしてさっきの接触に対して10秒加算のペナルティーが出たのでノリスを抜くことはもう諦めるしかなくなりました。その後ノリスは毎周0.2~0.3秒ずつ、このサーキットの長さを考えるとけっこうな勢いでピアストリを引き離していき16周目には早くも3秒差、22周目には5秒差まで拡大して独走しました。3位アントネッリ、4位ラッセルもマクラーレンの2人には追いつけず、これはもうノリスの勝ちね。
と思ったら想定外の人が1人いました、フェルスタッペンです。ピットからスタートし、破片でも踏んだのかタイヤがパンクしたのでVSC中の7周目にタイヤ交換。ここで新品ミディアムに交換すると空いた場所で飛ばしまくり、誰かに詰まることも無く追い抜きも繰り返し、そしてピットのサイクルがズレているので多くのドライバーがピットに入る中で着実に順位が上がって22周目には早くも4位まで浮上。この段階でノリスよりもペースが速く、タイヤ交換直後は16秒差のほぼ最後尾だったものが、この段階で19秒差。つまり後ろから追い上げながら15周してたった3秒しか離されていないわけです。これ、速くね?
ノリスは30周目に1回目のタイヤ交換を行ってソフトに交換し、これで最後まで走れないだろうから2ストップ濃厚。一方フェルスタッペンは34周目に"2回目"のタイヤ交換で2セット目の新品ミディアムに交換しました。残り37周はミディアムで走り切る実質1ストップの戦略もじゅうぶんありえます。もしそうなら周囲のドライバーはみんな2ストップが濃厚なので、フェルスタッペンはタイヤが古くなるとはいえ実質1位とみなせる立場、これはまさかの展開です。今回1時50分に起きてリアルタイムで見てたんで深夜なんですが、これは目が離せませんでした。
50周目、ノリスが2回目のタイヤ交換を行ってミディアムに交換しフェルスタッペンの8秒ほど後方で復帰。とうとうフェルスタッペンがラップ リードを記録して奇跡のドラマに期待が高まりますが、現実的にはタイヤの履歴差が大きすぎてノリスの方が1周0.5秒近く速い状況。ミディアムで最後まで走り切る=37周するのはけっこうな長旅で、レッドブルは現実的な行動を取って54周目にフェルスタッペンをピットに呼びました。新品ソフトを投入してノリスから14秒差の4位で合流。あとは元気なタイヤでどこまで抜けるかの勝負です。
62周目、フェルスタッペンはラッセルを捕まえると63周目のターン1でスパッと抜いて3位、ここから4周ほどでアントネッリにも追いつきました。ただソフトで10周もかっ飛ばすとさすがにミディアムに対する優位性も少なくなってきたのか先ほどと同じようには行かず。70周目のターン12では立ち上がりで後ろがズルっと行っており、ここで路面を上手く蹴飛ばせないならもう抜くのは無理っぽい感じでした。
前戦メキシコシティーに続き、あまりに最後の2位争いがハゲしいのでノリスはチェッカー10秒前ぐらいまで映像に映ってきませんでしたが、2戦連続のポール トゥー ウイン、かつスプリントも制した最大ポイント・33点獲得の完璧な週末になりました。今季7勝目で勝利数でもピアストリに並びました。なおマクラーレンの選手がブラジルで優勝するのは2012年のジェンソン バトン以来です。
アントネッリが自己最高位の2位、フェルスタッペンは3位で大逆転チャンピオンの可能性は限りなく遠のきましたが、ピットレーンからスタートして表彰台に乗るのは2014年ハンガリーでのハミルトン以来11年ぶり・史上8人目の希少な記録です。ピットレーンから優勝した人はさすがに過去にいないみたいですね。
4位にラッセル、ピットで10秒ペナルティーを消化して順位を下げたピアストリは5位にとどまり、ドライバー選手権で1位ノリスと2位ピアストリの差が24点となりました。ついこの間までは逆さまでこれぐらい点差がついてたんですけど見事なまでに立場がひっくり返り、ノリスがこの週末でチャンピオンに大きく近づきました。
6位ベアマン、7位はローソン。ローソンはソフトでスタートして19周目にミディアムに交換すると、なんとそのまま残りの52周をミディアムで強行突破してみせました。このチームはここ数年ガスリーも角田も時々こういう作戦で上手いこと点数を稼いできましたが、今回はローソンが上手く成功させました。相棒のハジャーも8位で続き、ヒュルケンベルグ、ガスリーが続くトップ10でした。
角田は最悪なレースで、ハードでスタートして13位まで上がったもののSC導入でハードを捨ててミディアムへ。そこまでは良かったんですが、SCからのリスタート後にターン8でちょっとブレーキの位置を間違えたような感じで目の前のコラピントに突っ込みそうになって内側に避けつつ飛び込みました。相手がコラピントだけなら結果論として果敢な追い抜きで終わったんですが、リスタート直後の集団なので当然車が連なっており2台前にいたストロールにぶつけました。スピンさせてしまいどう考えても責任があるので10秒加算ペナ。これを2回目のピット作業時に消化したはずが、クルーが車を触っていたようで消化していないと判断されてもう1回10秒ペナ。完走した中で最下位となる17位でした。
いやあ、リアタイ視聴する価値のあるレースでした。フェルスタッペンはPU交換のおかげでかなり抜きやすい車になっていたとは思いますが、内部の人も見ている人も『何で最初からこの車に仕上げられへんかったんや』という思いでしょう。じゃあ上位からスタートしてたら勝ってたんじゃね?というと、そうすると新品タイヤはあんまり残って無いしくたびれてきたPUを使うので、3位でスタートしてもやっぱり3位かもしれないので、案外言うほど簡単ではないのかもしれません。まあいずれにしてもRB21は僅かな部分の合わせこみが難しい車なんでしょう。
ノリスはメキシコからの流れを維持して良い形で大量点を持って行き、残りの3戦は精神的にだいぶ落ち着いた立場で戦うことができます。ただ1対1での勝負とは限らずレースでは他の人が順位争いに絡んでくることも多いですし、次のラスベガスはミスると一発リタイアの危険性がある開催地なので、緊張感と冷静さをいかに上手く自分の中で成立させるのか、考えないようにしようと思うと、既に考えないようにしようということを考えてしまって意識しているから、意識しないようにしておかないといけないんだけど、それはもう意識しないということを意識して・・・
・ピアストリは悪かったのか?
一方またやらかしてしまったピアストリですが、ターン1での接触は私の大好物(?)で、単にピアストリだけが悪いと決めつけて話を終わらせるものではなく、いくつかの論点が含まれていると思います。
まず、お馴染みドライビング スタンダード ガイドラインに沿いますと、攻撃側の選手は内側から仕掛けるなら、ターンのエイペックスの時点で前車軸が少なくとも先行車両のミラー位置まで到達している必要があり、ここに届いていない場合はそのコーナーの権利は完全に先行者のもの、後続車は引きなさい、という指針が示されています。今回、ピアストリは一旦ターン1の手前でほぼアントネッリの真横まで到達していましたが、
内側を走るぶんだけ先に減速を開始、アントネッリはタイヤがソフトだということもあってそれよりも減速の開始が遅く、ターンに向かってステアリングを切り始めた時点ではピアストリの前車軸はアントネッリ車の中心部分ぐらいまで下がっていました。ミラーよりちょっと後ろです。
で、ここからアントネッリは内側に切り込んで行き、ピアストリは接触したら困るのでステアリングを切り足してブレーキも足したとは思いますが左前輪がロックし、そして残念ながら接触を回避できずターン1で接触しました。ガイドラインに従えば、権利の無いコーナーで引かずに接触したからアントネッリが悪い、ということになります。ただ、ピアストリにペナルティーが出た、レーシング インシデントと判断されなかった、ということは、ピアストリだけが悪いということとイコールではないと私は思います。
アントネッリは内側に相手がいることをミラーで認識できていたと思います。確かに外にはルクレールがいて3ワイドの真ん中なのでかなり難しい立場ではあるんですが、いくらガイドライン上の考えでコーナーの権利があると言っても、どう考えてもまだ自分の車両長の中に相手が存在していて、引こうとしたって今さら自分の車両長の後ろまで下がれるわけもない状態で、1台分の空間を残さずにレコード ラインに近いところまで切り込んだら当たることは予見可能です。切り込むのが妥当かと言われたら、私にはそうは思えません。
ルクレールは3ワイドを理解していたのか分かりませんが、かなり外回りして安全策を取っていました。アントネッリが場所を残して接触を避ける努力をもう少ししていれば、両者は当たらない=ルクレールが弾き飛ばされることもなかった可能性が相当程度推認され、単に『自分のコーナーだから』という理由で締めてしまった動きが妥当だとは私には思えず、接触事故の責任の一部はアントネッリ側にもあるのではないかと思います。
鈴鹿で言えばターン1、デグナー、130Rみたいな高速コーナーで3ワイドの内側の人が鼻先だけ突っ込んできたら危険だし迷惑極まりないですが、ここは低速コーナー。そして減速を開始する直前までは並走状態ですから、流れから言えば相手の後ろに完全に下がるほどまでに早く減速するような走り方ってドライバーの側からするとたぶん選択肢にない、どちらかというとあり得ない動きだと思います。むしろそんなに急に減速されたら場合によっては後続車が予測できず危険です。
また、ピアストリがタイヤをロックさせたので『強引に突っ込んだから止まれていない』と考える人もいると思いますが、映像を見る限りはロックしていてもちゃんとまだグリップ力は活きていてステアリングを切った方向に車は曲がっていましたから、完全にインベタでは曲がれないでしょうがタイヤ1~2本分外にズレるぐらいでじゅうぶん制御できている範囲だったと思います。もちろん『ピアストリは選手権を考えると無理せず引くべきだった』という側面もありますが、それはペナルティー云々とはまた違った方向からの話です。
次に、ガイドラインという面で考えると上記の通り位置関係で判断して考えることになるわけですが、じゃあピアストリはブレーキを一旦ちょびっと戻してアントネッリと張り合っていればターン1の権利はあったのか?という話になります。もしそうなった場合、おそらく止まれないのでアントネッリにぶつかるか、アントネッリが避けようと右に動いてルクレールとぶつかるか、ピアストリがアントネッリの内側を勢いよく通過した後に大外にいた無関係のルクレールと当たって弾き飛ばすか、といったオチが待っていると想像できます。
でも、ガイドライン上ではその動きならピアストリには権利があるわけですから、その無茶な動きのせいで外で残り2人がぶつかろうが、曲がり切れずにルクレールをコース外に押し出そうがペナルティー対象では無いことになってしまいます。コース外に自分もはみ出たらコース外を走って利益を得た、あるいは車両を制御できない状態で事故を招いた、と判断されてペナルティー対象ですが、自分が白線内に残っていれば相手を押し出しても良い、という運用になってしまう問題は前戦でのフェルスタッペンとハミルトンの話でも書きましたね。
事故を可能な限り避けようと減速と操舵を行った末に当たったらペナルティー、ブレーキを戻して突っ込んだらガイドラインに則った有効な追い抜き、これ、やっぱりおかしくないですか?そんなことを思いながらF1公式のジョリオン パーマーによる解説を見てたら、ジョリオンさんもだいたい同じことを言ってました。同じだったので自分の意見に一部ジョリオンさんの表現も引用させていただき合体させたのが上記内容なので動画の方もよろしければご覧いただけると幸いですが、何度も書いてるようにガイドラインの類型だけで考えるのは現実的ではないですし、本来『あくまで参考にする』はずの存在が実際は厳格な規則と化しています。運用を見直すか、最低でもガイドラインをもっと細かく切り刻んで対応できる事例を増やすべきではないかと思います。
今回の場合、もしアントネッリが1台分の空間をきちんと残して、それでも曲がり切れずにピアストリが突っ込んできたのならもうそれはピアストリだけの責任だと思います。しかし切り込んで進路を潰してしまったという点で、この2者の接触は私にはレーシング インシデントかせいぜいピアストリの5秒加算に見えました。それだと最大の被害者であるルクレールが救われない、という点を考えると、別の考えとしては2人とも5秒~10秒程度のペナルティーの両成敗というのもあるかもしれません。
ジョリオンさんは、ピアストリは間違ったことをしてないし、かといって3ワイドの真ん中に挟まれたアントネッリの厳しい立場も考慮すると切り込んだことにあまりつべこべ言うこともできず、ましてやリスタート直後でお互い激しく争ってるんだからレーシングインシデントじゃないか、と言ってますね。
さて、2025年のF1、2022年から4年間続いた現行の車両規定枠組みでのレースはいよいよあと3戦です。次戦はラスベガス、てっきりブラジルと連戦だと思ったら1週間休みが挟まって、ラスベガス→カタール→アブダビの3連戦でした。来年も同様の3連戦みたいですけど、ラ大陸を跨ぐような連戦ってやらない方向性のはずじゃなかったでしたっけ・・・?
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