NASCAR プレイオフ 第2戦 ゲートウェイ

NASCAR Cup Series
Enjoy Illinois 300 presented by TicketSmarter
Worldwide Technology Raceway 1.25miles×240Laps(45/95/100)=300miles
winner:Denny Hamlin(Joe Gibbs Racing/Progressive Toyota Camry XSE)

 NASCARカップシリーズ、プレイオフ第2戦はワールドワイド テクノロジー レースウェイ、通称ゲートウェイ。カップシリーズの開催は2022年が初めてで今回が4回目ですが、過去3回はいずれも6月の第15戦で開催されたためプレイオフの開催は初めて。1周1.25マイルで左右非対称の卵型、と先週のダーリントンと文字だけを見れば似ていますが、バンク角は旋回半径の小さいターン1側が11度、ターン3側は9度しかなく見たい目はかなり平坦です。内側には赤白の縁石が敷いてあるのもオーバルとしては珍しい外観で、基本的に追い抜きが難しいトラックです。
 比較的長い直線と強力なブレーキを繰り返すために過去のレースではブレーキの熱に起因したタイヤの破損や、場合によってはブレーキそのものが砕け散るようなクラッシュが発生しており温度管理には要注意。また、抜けないので作戦的にトラック ポジション重視が成功しやすく、2輪交換や古いタイヤでのステイアウトが比較的多く用いられます。何も事故が起きないと非常に地味なレースになりがちです。今回のタイヤはアイオワで使ったのと同じものですが、アイオワ自体が特殊なので摩耗するのかしないのかイマイチピンと来ない(笑)

 またゲートウェイは2014年以降毎年クラフツマントラックシリーズが開催されてきましたが今年は12年ぶりに開催が無く、代わりに2010年以来15年ぶりにエクスフィニティーシリーズが併催されます。ちなみにその2010年はゲートウェイでのエクスフィニティーが年間2回開催された唯一のシーズンで、7月の勝者はカール エドワーズ、10月はケゼロウスキーが優勝しました。エドワーズは最終周のターン4でケゼロウスキーと接触して相手を回しながらの優勝、ケゼロウスキーを起点に後続は多重事故になり、両者の接触はこれ以前にもあったのでケゼロウスキーの父が「あいつがまた俺の息子を殺そうとした。」と激怒したことでわりと有名なレースだと思われます。

 当時のレースに出ていて今日も走ってる人はさすがに・・・いや、ジャスティン オールガイアーとマット ディベネデトーがおるな(笑)あとはブライアン ケゼロウスキー、ケビン ハムリン、ドリュー へリング、ブライアン マクレイノルズといった現在はスポッターやクルー チーフをやってる人がまだ現役ドライバーの時代でここを走っていますね。

・ちょっとしたデータ

 Gen7とともに始まったゲートウェイのカップ戦。過去の優勝者は2022年から順にロガーノ、カイル、シンドリックとなっており、カイルはこのレースを最後に84戦未勝利の状態が続いています。この3戦を全て5位以内で終えた唯一のドライバーはロガーノで、平均順位は全ドライバー中ぶっちぎりの3.0を記録。平均順位の上位はシンドリック、ラーソン、ベル、ブレイニーが続きます。ただ昨年のレースではベルとブレイニーが優勝争いしていましたが、残り20周でベルのエンジンが壊れ、残り1周でブレイニーがガス欠。本当ならこの2人はもっと数字が良いはずですね。
 逆にプレイオフ選手で相性が悪いのはウォーレスでここでの最上位は21位。出走回数が少ないとはいえ彼の通算で最も平均順位が悪いオーバルです。またボウマンも最高位が2022年の13位でトップ10経験がありません。次ラウンド進出に向けて優勝か大量点が欲しい中であまり耳にしたくない数字です。

 なお、ゲートウェイは昨年はエンジン破損とガス欠というドラマがありましたが、2022年、2023年はいずれみオーバータイムでの決着でした。また『プレイオフ第2戦』という括りでは過去3年で2度はプレイオフ選手以外が優勝。2022年はウォーレスがカンザスで、昨年はブッシャーがワトキンスグレンで勝っており、これらの話を総合すると、、、今度こそカイルが勝つべき時ですね。(←頑張って毎回期待すべき点を探る)

・レース前の話題

 ハース ファクトリー レーシングが来シーズンからシボレーに車両を変更すると発表しました。併せてヘンドリック モータースポーツとの提携も発表されています。ハースファクトリーの前身となるスチュワートハースレーシングは2017年からフォードを使用していましたがそれ以前はシボレーを使用しており、そして元をたどると源流のハース CNC レーシングは元々ヘンドリックのスポンサーだった立場からジーン ハースが独立してチームを興したところから始まっています。スチュワートが去り、組織が小型化される中で経済的な魅力はシボレーにあると映ったんでしょうか。フォードはお客さんが減ってしまいましたね、特にエクスフィニティーでユーザーが少ないですけど大丈夫でしょうか^^;

 そんなフォードですが、競技部門の名称を『フォード パフォーマンス』から『フォード レーシング』に変更すると発表しました。エクスフィニティーのユーザーが減って来て危機感を感じたから、ではなくおそらく来年からはF1へのPU供給も始まりますし、世界的なブランド戦略としてよりモータースポーツ活動を訴求するためと思われます。

 最後に、依然として続くNASCARと23XI レーシング/フロント ロウ モータースポーツによる反トラスト訴訟問題。両チームは『裁判終結までチャーター保有チームの地位を認める仮差し止め』を請求し、昨年11月には認められたものの今年6月の審理でこれが取り消され、以降はオープン チームとして参加しています。この取り消し採決の無効を訴える審理が行われたものの、9月2日に再び司法はNASCARに有利な判決を下し、両チームのチャーター資格は回復しませんでした。
 現状、合計で36あるチャーターのうち4つは23XI/FRMが『所有していた』もの、2つはスチュワートハース解散に伴って両チームが1つずつ購入するはずがNASCARに承認されていないもので、計6つが宙に浮いています。この判決を前にNASCARは、もしこのままチャーターが誰の所有でもないままであれば、現在チャーターを有するチームには追加の分配金が最大で150万ドル支払われる、とする書簡を送りました。
 資料によれば、両チームが暫定的にチャーター資格を持った状態で参戦した最初の20戦で両チームには合計2514万6300ドル(約37億円)が支払われており、第21戦以降両チームがオープンとなったことで支払先が無くなった分配金も、この数字から1戦平均で考えるとおよそ2000万ドル存在します。既に支払った分を返還させ、宙に浮いた分配金を30チームに均等に再分配すると、チャーター1つあたりの金額がおよそ150万ドルになります。
 NASCARは併せて、両チームが主張する『回復不可能な損害』が生じていないと主張するために、以前には『売却可能』と示唆していた元SHRのチャーターを裁判終了まで触らないことを保証するなど裁判戦略を進め、そしてライバルのチームには追加分配金という実利で2チームとそれ以外が協力しにくいように分断も巧みに扱っています。状況としては非常に2チームには不利で、この資料からはチャーター無しでは年間の収益が数十億円単位で減少することが読み取れます。判決は12月にも言い渡される予定ですが、どう転んでも参加チームや運営との軋轢が残りそうです。

・Xfinity Series Nu Way 200 Sauced by Blues Hog

 Nu Wayで検索すると頭皮ブラシが真っ先に出てきましたが、それとは関係なく地元の建設会社でした(笑)そんなヌーウェイとバーベキューソースを作っているブルース ホッグが共同スポンサーのエクスフィニティー、3連勝中のジリッチを誰も止められず。ポールスタートからステージ1を制して以降も上位でレースを続けると、コーション連発で荒れた最終ステージでも強さを発揮。結局160周のうち121周をリードする圧勝でシリーズ最多タイ記録となる4連勝を達成。今シーズン通算9勝目を挙げました。

 地元イリノイ州出身・15年ぶりにここを走ったオールガイアーはステージ2を制しましたが、最終ステージでリスタート時の多重事故に巻き込まれて28位でした。エクスフィニティーはこれでレギュラー シーズンが終了、レギュラーシーズンのチャンピオンも獲得したジリッチは2064点という大量点を持ってプレイオフに入ります。また、プレイオフ最終枠はハリソン バートンとジェブ バートンによる親戚対決でしたが、ジェブが109周目にクラッシュしてあっさりと決着。20周後にはハリソンもぶつけられてスピンしましたが、こちらは22位で完走しました。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュライトポール賞は2戦連続でハムリンが獲得。2位からラーソン、ブリスコー、チャステイン、ブレイニー、バイロン、レディック、ベル、シンドリックと9位までプレイオフ選手で10位にゼイン スミス。他のプレイオフ選手は12位ベリー、13位ロガーノ、14位ウォーレス、15位ディロン、18位ギスバーゲン、19位チェイス、25位ボウマンでした。ブレーキが重要で平坦なトラックなのでギスバーゲンとすると他のオーバルよりはまだいくらか戦える余地がある気がしますが、どこまで戦えるでしょうか。

・ステージ1

 現地会場では名物なのかバックストレッチでド派手な爆破演出、近くの高速道路の人は大丈夫なのか心配になります(笑)布袋 寅泰のBATTLE WITHOUT HONOR OR HUMANITYが流れているっぽい中でスタート。ハムリンは7周をリードしたものの、練習走行から速さを見せているというラーソンがいとも簡単にハムリンをかわしました。他のドライバーより1周0.3秒近く速い様子で、20周しただけでハムリンとの差が3.8秒まで拡大しました。
 このまま5行でステージ1が終わるかと思ったら、27周目にターン2出口でカイルが単独スピンしてコーション発生。単に車がルースで簡単に回っている様子で、こういう単純ミスがある時のカイルは長い不調のトンネルにいることが多いですね・・・
 このコーションでラーソンと中団の多くはピットに入った一方で、2位ハムリン以下8人はステイアウトを選択。そしてタイヤの交換本数でも判断が分かれてラーソンはとりあえず6列目からのリスタートで集団へ入りました。レディック陣営はナットを締め損ねると「トヨタのピットへ入れ!」と雑な指示でハムリン陣営を頼って締め直しました。規則が明文化されたせいでみんなこれをやるようになりましたね。

 33周目にリスタート、前方ではブリスコーがハムリンをかわしてリード チェンジですがそんなことより目が点になったのがラーソンで、誰も走らない大外からゴボウ抜きして1周で5位になると翌周には3位まで浮上、リードを取り返すのは時間の問題でした。ところが36周目、

 ベリーが先週に続いて2戦連続となるクラッシュ。チェイスに軽く押されたらスピンし、運悪く結構な勢いで左前輪を叩きつけるように壁に当たってしまいました。サスペンションが明後日の方向を向く明らかに修理不能な姿になってそのままリタイア。ウッド ブラザーズ レーシングを応援する私とすると辛い場面です。
 このコーションはブリスコーの助けになりました、42周目のリスタートからステージ1の残る4周でラーソンを抑え切ることに成功し、ステージ1を制してプレイオフ ポイント1点を追加しました。ラーソン、ハムリン、バイロン、ブレイニー、ウォーレス、ベル、チャステイン、スミス、チェイスのトップ10。ギスバーゲンはコーションで2輪交換してステージポイントを狙いに行きましたが、チェイスに競り負けて12位に終わり加点できませんでした。



・ステージ2

 今度はブリスコーを筆頭にまだ一度もピットに入っていない面々と中団勢がピットに入り、ラーソンなど1度は給油している人たちがステイアウト。53周目にリスタートしてラーソンがリードします。ブリスコーは12列目からのリスタートで集団戦を強いられますが、言ってるそばから61周目に3ワイドの争いでブレーキをロックさせました。14位を争っていたスアレスにぶつけてしまい、コーションの起因となりました。
 ここでも作戦は分岐、リーダーのラーソンはステイアウトしますが2位のウォーレスはピットに入るなど動きがバラバラです。ステージ2という括りで見ればここで給油すれば走り切れるんですが、レース全体の括りで見るとここで給油してもしなくても残り2回給油が必要なのは変わりません。どっちが正解なんでしょう。

 66周目にリスタートしますが、今度はタイ ディロンのクラッシュによりコーション。原因は、なんと兄に突き飛ばされていました。弟ディロンの今回のスポンサーはスポーツ賭博運営会社のドラフトキングス。ドラフトキングスと言えば今年初開催されたイン シーズン チャレンジのスポンサーで、ディロンは第32シードからまさかの決勝進出で大いに盛り上げてくれました。ドラフトキングスはコウリッグ レーシングと弟ディロンの『独占スポーツ賭博運営会社』に就く契約を結んだと発表されており、おそらくあの番狂わせで企画の注目度が上がったことが関係していると見られます。そう考えると、勝てなかったですけどコウリッグはかなり儲かったことになりそうですね。
いや、嬉しく無いです・・・


 もちろんお兄ちゃんは無線で謝罪、あんまりスポーツ賭博の話をしてると警察に目を付けられそうなのでこのあたりにして、コーション発生により今度はさっきのステイアウト組がピットに入ります。この中でベルが最初にピットを出て今のところ『裏の1位』です。83周目、ウォーレスを先頭にリスタートし、こっちが『表の1位』。ただ表裏が頻繁に入れ替わるので仕事終わりで疲れた脳ミソが話に付いて行きません(笑)
 ウォーレスは2位ロガーノを寄せ付けずに一人旅。一方で裏社会のリーダー・ベルはリスタートから次々と順位を上げていきましたが、ロガーノを捉えても抜くことができずに延々と緑色のマスタングの後ろ姿を見続けることになります。また5位争いでもブレイニーとラーソンが全く同じ構図でラーソンが完全にハマっていましたが、134周目にちょっとラーソンが攻め方を変えようとして突っ込みすぎた模様。ブレイニーをひっかけてしまって回してしまいコーション発生です。

 リードラップ選手は2人を除いてピットへ、ウォーレスはピットを先頭で出ました。ここまでだいぶばらけていた戦略がここで一旦揃って、基本はもうあと1回のピットで最後まで走ることになりそうです。ここでボウマン陣営は先週に続いてまたピット作業失敗、なぜこう上手く行かないのか。
 140周目=ステージ残り1周だけのリスタート、ステイアウトしたケゼロウスキーは全くターンで踏ん張れず、これを難なくかわしたウォーレスがステージ2を制しました。ケゼロウスキーは2位を確保、ロガーノ、ラーソン、ベル、兄ディロン、ハムリン、チェイス、ネメチェック、チャステインのトップ10です。ネメチェックの姿が今週も画面に映ってますね。

・ファイナル ステージ

 当然ながら大半の選手はステイアウト。148周目/残り93周でリスタートしウォーレスが引き続きリーダーですが、ここで2位にラーソンが上がってきました。すると2周後、トラック上にデッカイ金属板が落下していて本日8回目のコーションが発生。何が落ちているのか正体が分からず放送席がクイズ状態でしたが、正体は『1』と書かれたブレーキ目標の看板でした。「ちゃんと同じ場所に付けてくれよ。」とか無線でドライバーが冷やかしていたようです。ここで後方のドライバーは『あわよくばこれを最後の給油に』とピットへ。これがハマるレース展開って限られてるんですけど、アイオワではまさにそれでバイロンが勝ってますからねえ。
取り付け工事中

 看板を付け直して156周目にリスタートしますがさらなるハプニング、ウォーレスが全然加速せず出遅れて後ろにいるラーソンもろとも玉突き事故で順位を下げ、ハムリンがリーダーとなります。ここにギスバーゲンがターン3でスピンする事案も発生してまたもやコーション発生。リスタート時のウォーレスはギアが噛んで変速できなかったらしく、車載映像ではガリガリとヤバい音が聞こえます。「5番には申し訳ない。」と語るウォーレスのクルー チーフ・チャールズ デナイク。
 このコーションでウォーレス、ラーソンなどは最後の給油と考えてピットへ。ウォーレスは順位を下げたくないので給油しかしませんでした。ラーソンは2輪交換でしたが、ディフューザー部にあるルーフ フラップ連動のディフューザー フラップがなぜか作動状態になっていたので再ピット。さっきのリスタート玉突き事故で後ろから押された時に、偶然留め具が外れていました。これで順位が下がるのでついでに左側のタイヤも交換し結果的には4輪交換。

 162周目にリスタート、リーダーはハムリンで2位にロガーノ。8回目のコーションで給油して頑張れば給油不要となっている選手ではボウマンが先頭で、展開次第では大逆転勝利です。ここからはハムリン、ボウマン、ウォーレスの3地点の様子を観察しながら観戦する必要があってなかなか見る方も大変。仕事終わりの疲れた脳ミソには(ry
 "見た目上"のリーダー争いはロガーノの方がハムリンよりもちょっと速いようで、今日これまでにも何度か見たような抜けそうで抜けない争い。どこでピットに入るかが悩みどころですが、194周目/残り46周で8位のブリスコーがピットに入り、しかも2輪交換で時間短縮。これを見たからか2周後にハムリンもピットに入りましたが、こちらは4輪交換でブリスコーにアンダーカットされました。ロガーノはさらに1周後に動き、当然どちらの前にも出れず実質3位の状態です。
 一方、燃料ギリギリで走り切ろうとしているであろうボウマンですが、同じ作戦のケゼロウスキーの方がちょっと速いようで抜かれてしまい、この作戦グループでは2番手に後退。また9回目のコーションで給油したグループでも、タイヤ無交換が仇となったかウォーレスが順位を下げてラーソン、バイロンに抜かれました。ラーソン、不具合による4輪交換が怪我の功名になってる感。

 ブリスコーにアンダーカットされたハムリン、とりあえず同じ作戦グループでは先頭にいないと勝負権が無いので猛攻撃を仕掛けますが、先週の優勝で自信も付いたかブリスコーがむっちゃ抑え込んできて抜けません。
 残り33周、実質2位にいるボウマンですがもはやこの作戦では厳しいと判断したかノーピットを諦めてピットに入り2輪交換を行います。ところがほぼ同時にフロントストレッチでタイディロンの車に異変発生。ブレーキが砕け散ったと思われ、ターン1でクラッシュしてコーションが出ました。ボウマン、あと1周待っておけば・・・
 ここでピットに入るかどうかはまちまち、9回目のコーションで動いた人はステイアウトすればとりあえず順位は上がるものの、さっきアンダー グリーンでタイヤを換えた人に対して30周ほど古いタイヤになります。タイヤの履歴差が大きいとあっさり抜かれてしまうのでここはピットへ。先ほどアンダー グリーンでタイヤを換えた10人はタイヤをまだそんなに使っていないし、ピットに入ったら順位が下がるだけなのでステイアウトしました。ピットに入った中では2輪交換が2人、その後ろにピット作業の速かったウォーレス、ラーソンが続きます。ただ2輪交換で賭けに出たギスバーゲンは痛恨の速度違反で隊列最後尾へ、高い勉強代を払いました。

 216周目・残り25周、唯一ステイアウトしたケゼロウスキーとハムリンの1列目でリスタート。50周以上使い込んだタイヤのケゼロウスキーは当然遅く、ターン1で内側からハムリン、大外からブリスコーが抜きにかかりました。ブリスコーもアンダーグリーンのピット作業で2輪しか換えていないので多少は影響があると思われ、内側からハムリンが先行。そしてここからブリスコーには反撃する力が無く、また別の戦略の選手が上がってくることもありませんでした。
 結果的にはこのレース最多・75周をリードしたハムリンがポール トゥー ウインで今季5勝目・通算59勝目を挙げました。ハムリンのPtoWはおそらく2022年の第14戦シャーロット以来で通算9回目です。もちろんこれでプレイオフ次ラウンド進出が確定しました。

ー 59はあなたにとって大切な記録ですが、トヨタにとっての200勝でもあります。どのような意味を持つでしょうか?

「はい、トヨタ、ジョーギブスレーシングの全員にとってとても大きなことです。プログレッシブ トヨタは終盤に素晴らしい仕上がりでした。この勝利をとても嬉しく思います。父が家で体調を崩していまして、父に元気を届けたいですし、家族全員がここにいます。素晴らしい一日でした。最高です。」

ー お父様の快方を願いますが、44歳という年齢でどのようにして常に向上し続けているのですか?

「とにかく一歩ずつ進むだけですね。僕にできるのは、とにかくこのゲームを学び続け、向上しようと努力し続けることだけです。毎週が少しずつ成長できる機会です。」

ー ご友人のビル マーリー(俳優・コメディアン、このレースのグランド マーシャル)はレース前に何を話していたんでしょうか?一瞬ですが車内にもいましたね?

「そうですね、僕から彼に『後ろにいる選手たちに声をかけて残りのレースは必ず後ろにいてくれるように』と頼んだんですよ、その通りになりましたね(笑)いやあ本当に素晴らしい勝利でした。"デニー タイム"の旗、それから、ポスターもすごくいい感じですね。えー、ブーイングは自由ですよ。あとは、僕の勝ち馬に乗るか、それともその馬に跳ね飛ばされるか、その違いですね。」

ー 今でもブーイングは好きですか?

「どんどんどうぞ~。」


 今日もファンを煽るハムリンでした。2位は「"みんなのお気に入りのドライバー"を倒してトヨタの200勝目を狙っていたけどタイヤの差で勝てなかった。」とブリスコー。ただ来週のブリストルにもかなり自信があるようです。3位はチェイス、4位には最後のコーションの際に暫定1位にいたため、ピットでタイヤを換えて最も新しいタイヤで猛追したブレイニーが入りました。5位からロガーノ、ネメチェック、ベル、ウォーレス、ブッシャー、タイ ギブスのトップ10。ラーソンは12位で、レース後はぶつけてしまったブレイニーと話し合いになりました。

 ・・・黄色いスーツで帽子が白に黒の縦じまだからなんか阪神タイガースっぽい(笑)もちろんラーソンは単純に自分の失敗なので謝罪しており、レース後の取材でも「すべて僕の責任ですね。でも、全く故意ではないですし彼がそれを理解してくれることを願ってます。もっとポイントを獲得できたはずだった彼の1日を台無しにしてしまいました。」と反省。
 他のプレイオフ選手はバイロンが11位、レディック16位、弟を回してしまった兄ディロン18位、シンドリック19位。チャステインはトップ10圏内でレースしていたのに、最後のグリーンフラッグピットで一時的に周回遅れになったタイミングでコーションが出たためフリー パスの位置となって順位を大幅に下げ24位止まりでした。ギスバーゲンが25位、ボウマンはなんと26位です。この結果、プレイオフ順位12位はシンドリック、13位のディロンとは11点差。ギスバーゲン、ボウマン、ベリーの順となり、なかなかポイントでひっくり返すのは難しそうです。

 なお、レース後にピットに戻るまでのクールダウン ラップでチャステインとギスバーゲンはターン3にある芝生の上を不規則に走行していました。この件がNASCARの目に留まり、ペナルティーとはならなかったものの規則の周知と今後は同様の行為がペナルティーに該当する可能性があることを全チームに通達しました。

 規則のセクション 6.4.2.1.Bには

「全ての車両は、チェッカーフラッグを受け取った時点、または悪天候によりレース終了が宣言された時点から押収されたとみなされる。車両はクールダウンラップ中またはピットロードにおいて、車検場所に報告する前のいかなる変更または調整も行ってはならない。」

と書かれてあるそうです。しかし芝生の上を走ると車体がレース終了直後の状態から変化するおそれがあります。極端な話、スプリッターなんかにインチキをしておいて、ここで芝生に叩きつけて壊してしまいバレないようにする、あるいは「ア~ソウイエバサッキマチガエテシバフニハイッチャッタカラソノトキニコワレタナハハハハハ」という言い訳をされるおそれがあるので容認できない、という話と思われます。なぜ2人が芝生を走ったのか謎ですが、プレイオフ終盤に向けてインチキを許さないようNASCARは厳格な態度を見せました。


 比較的距離の短い300マイルのレースでしたが、コーション10回で戦略の表裏が頻繁に入れ替わり、なかなか勝者が読めないレースでした。ゲートウェイはもうこれが定型スタイルという感じですね。とりあえずケゼロウスキーは最後のコーションでステイアウトせずピットに入っておけば、実際の結果である17位より遥かに良い結果になったんじゃないかと思うので選択が謎だったと思うんですが、逆張りの戦略で狙っていったラーソンなどのグループはなんとも中途半端なタイミングのコーションで見込みを完全に狂わされましたね。
 速さと流れで言えばギアが引っかからなければウォーレスがそのまま勝っていてもおかしくないレースだったと思うので、結果として2戦連続で確実に点数を稼いだとはいえプレイオフポイント5点を手にしたかったウォーレス陣営とするとけっこう悔しい結果だろうと思います、訴訟の流れもあんまり良くないですしね^^;
 ハムリンはレース序盤だけ見ればロングランで最速とは言えなかったですが、ピットのタイミングとアジャストできちんと合わせこんでくるあたりが59勝してるベテランの技術だろうなと素直に感心、今回ブーイングだけじゃなくて歓声もまあまあありましたね。もうインタビューでの煽り芸をみんな楽しみにしてるんじゃないかと。あとどうでも良いけどハムリンの煽りは和訳しにくいです、かなり意訳してるので間違ってたらごめんなさい(笑)

 次戦はプレイオフ第1ラウンドの最終戦・ブリストル。土曜日夜のレースですのでお間違いなく。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
序盤を観ていると、ラーソンが無双するんじゃないかと思っていましたが、レース展開がコロコロ変わっていて、ヒールキャラになっているハムリンがシーズン最多の5勝目。ブリスコーも一度は落ちながらも、確実にリカバリー。強くなったなぁ、と言う感じがします。カットライン下の4人はみんなヤバイ気がしますね。ブリストルで勝てそうなドライバーはいないような気が。ボウマンが、ちょっと気の毒な気がします。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ボウマンはなぜこうもヘンドリックの悪い部分が全部集まるのか、という状態ですね。と言っても昔のヘンドリックは4人いたらだいたいこうでしたけど(笑)
 ゲートウェイは距離とちょっと特殊な性質の関係であんまり他では起きないような戦略ゲームのパターンになるので本当に目まぐるしいし、誰かブレーキ/タイヤが壊れるからグリーンのまま走り続けることも無くて、まあとにかくややこしいです。でもこれはこれでけっこう面白いんですよね、中堅チームも頑張ったら一発魅せられそうな雰囲気がありますし。
アールグレイ さんの投稿…
JRモータースポーツはこれで、エクスフィニティーの今のカレンダー内のトラックを完全制覇した様ですね。
勿論ロードコースなどはスポット参戦のカップドライバーに勝ってもらった部分もあるにしても、この様な記録はスケジュールの入れ替わりが激しいエクスフィニィティーでは凄いの一言です。
サンディエゴなど来年も新しいイベントがありますが、SVGや来年はカップ戦フル参戦が発表されたジリッシュがまたスポット参戦で勝ってくれる事でしょう。

ハムリンでトヨタカップ戦通算200勝というメモリアルを飾れた事はとても嬉しく感じました。
トヨタ内ではカップ戦の初優勝も飾り、チャンピオンを2度獲ったカイルが今までは代表的な扱いをされていた感じがありましたが、今ではハムリンが一番長くトヨタ車をドライブしている事になっているので、今年こそは阪神と同じくアレを果たしてハムリンのフル参戦20年目を最高の形で飾って欲しいです。

そして、トラックシリーズからトヨタ車で戦ってくれたビル・デイビスオーナーが亡くなられましたが、レベルを引き上げてくれたJGRは勿論、トヨタのカップ戦参戦開始時に採用してくれたMWR、レッドブルレーシング、ビルデイビスレーシングには改めて感謝したいです。
当時自分は結果を追ってただけのNASCARファンでしたが、参戦初期のトヨタは予選落ちも多かったイメージがあるので、そんな中でも当時ビルデイビスレーシング所属だったブレイニー父がトヨタのカップ戦初ポールを取ったことは嬉しい気持ちもありました。
トヨタのエクスフィニティー初勝利時のドライバーだったジェイソン・リフラーさんもスプリントカーレースの事故で亡くなってしまっているのを考えると、まだトラックシリーズの参戦から含めても20年ちょっとしか経っていないのに、服部さん含めてトヨタのNASCAR史に重要な人物が多く亡くなってしまっているのも辛いです。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 トヨタはNASCAR参戦にあたってとにかくアメリカ企業として存在すること、NASCARという文化に溶け込むことを重視していたという話を聞いたことがあるので、とりわけその初期に尽力した方々の意義と言うのは今振り返るとすごく大きいですね。レッドブルはちょっと放り投げちゃった感がありますしマイケルは後年ちょっとアレでしたが(笑)
 そんな土台の上にJGR200勝目を挙げたハムリンは期待大ですが、ブリスコーがけっこう調子よいので案外ひょろっとそのまま行ってしまうのではないかと私の中で急速に警戒度が向上しています。もし最終戦に2人とも残ったら、、、何も起きない方がおかしいので見てみたいです(下衆)