F1 第17戦 アゼルバイジャン

Formula 1 Qatar Airways Azerbaijan Grand Prix 2-25
Baku City Circuit 6.003km×51Laps(-0.104km)=306.049km
winner:Max Verstappen(Oracle Red Bull Racing/Red Bull Racing RB21-Honda RBPT)

 F1 第17戦 アゼルバイジャン、レースの前後の週末にいずれもレースが開催されない、スタンド アローンなどと表現される日程のイベントです。2016年にヨーロッパGPとして初開催、翌年からアゼルバイジャンの名前になりました。実質的に約2kmもある長い長い長い長い直線と直角コーナー、あとはせせこましい地域をすり抜ける1周6kmのヤバい市街地コース。この週末には2030年までの開催契約が延長されました。画像右手にある和同開珎みたいな形の建物はクレッセント ホテルという名前のホテルだそうで。
 ドライバー選手権ではオスカー ピアストリが2位のランド ノリスに対して31点差と優勢な状況。2戦前のオランダでノリスの車が壊れてしまった影響がまともに出ています。マクラーレンは前戦イタリアではピット作業の失敗で順位が入れ替わってしまった彼らを指示によって入れ替える独自の管理手法を見せ、とにかく徹底的に公平に扱おうとする堅い意志がみられました。ピットも常に2人の扱いに神経質です。
 ただ、コンストラクターズ選手権では今回マクラーレンが2人とも表彰台に上がれば無条件でチャンピオン確定となっておりお祝いは秒読み。まあ今回決めようが決めまいが逆転される可能性は無いに等しいのでそこまで意識はしていないでしょう。ただお祝いの酒とつまみは今回決まらなければ2週間後に持ち越しになるので、買っておくかやめとくか発注担当者さんは気を揉むかもしれません(大嘘)

 一方そんなチャンピオン争いに対して前戦イタリアで優勝し一矢報いたマックス フェルスタッペン。あんまり個別の空力やらなんやらに興味のない私はF1GPニュースで初めて理解したんですが、リア ウイングをFP3の途中から超低ダウンフォース仕様に交換して、ちょっと試しただけで予選に臨んでいました。F1公式の練習走行ハイライト動画を見ると、確かにフェルスタッペンの映像は最初は

 リアウイング上端が真っ直ぐなウイングでしたが、最後のスロー映像で拡大されている姿では

 上辺の一部が削り取られたような形状です。こんなこともあろうかとスタッフさんが夜の間に削っておいたものを実戦投入したそうで、そこですぐに限界を見極めてQ3では完璧にまとめたわけですから、やはり彼はとんでもないなと思います。角田はタイヤの摩耗が酷くなると怖いのでこのウイングを選びませんでした。選んでいたら前の車を抜けたかもしれないし予選が速かったかもしれない反面、まともに制御できなかったり、予定通りのウイングでもけっこうタイヤ摩耗で苦しんでいたので酷い摩耗になって結果は同じだったかもしれません。こういうことができてしまうのがフェルスタッペンで、その他大勢の選手との違いだなと改めて感じる話でした。

・レース前の話題

 もうずいぶん前のようですが、オランダGPでカルロス サインツがリアム ローソンと接触してタイヤをパンクした上に10秒加算ペナルティーを食らい、判定に納得いかないウイリアムズが再審を請求していました。レース中もサインツは当初「あいつバカだろ。いっつも同じだ。」とローソンを無線で批判していたのに、実際は自分がペナルティーを食らったので世界の視聴者の笑いもの(?)になり、無線で「人生最悪の判定だ。レース後は絶対スチュワードんとこ殴り込みにいくぞ。」と激怒。
 レース中に発行されるタイム加算ペナルティー等はレース後に覆しようが無いので通常は相手にされないものですが、ウイリアムズが証拠を揃えて再審請求するとFIAはこれを受理して聴聞を開き、その結果ローソンが滑ってしまったことでサインツに接触したと認定。サインツ側に責任のある事故→ローソンの過失と判断がひっくり返りました。タイム加算は取り消せないものの、出場停止処分に影響のあるサインツに対するペナルティー ポイントは取り消されました。
 私もあれは見ていて、仮にドライビング スタンダード ガイドラインに従えばサインツが引くべき事案だったとしても『引くべき→引かずにぶつかったらペナルティー』は判定が極端で、そもそも流れからして接触はレーシング インシデントの範囲内に見えました。ガイドラインに極端に引っ張られすぎて『普通に流れを見る』という視点が欠けてるようにも思います。ガイドラインは画一的基準ではなく参照基準だ、と明示されていても結局文言でああだこうだ言う人が出てしまうから「明確な基準を出せ!」という批判は私はあんまり賛同しないんですよね。基準を出したら絶対「基準がおかしい!」という批判を同じ人が言い出すので(笑)

・練習走行

 FP1はノリス、ピアストリが1位・2位でしたがノリスは最初にコースに出た際にピトー管の保護具を外し忘れたまま送り出されてしまって呼び戻され、ピアストリはPUに不具合が出て走行を途中で終了。午後のFP2では今度はノリスが壁に当ててしまい、そんなマクラーレンを差し置いてルイス ハミルトン、シャルル ルクレールのフェラーリ勢が1位・2位に並びました。そんなわけで金曜日は締まらなかったマクラーレンですが、土曜日のFP3はノリス、フェルスタッペン、ピアストリのトップ3でいつもの流れに戻りました。全体的な流れはノリスですが、これが予選でひっくり返るんですよねえ。

 また、今回のタイヤはソフトC6~ハードC4の最も柔らかい設定になっているため、走行を重ねる中で「ひょっとして予選でもミディアムの方が速いんじゃね?」説が浮上し、どのタイヤを残してどう使うのかは多少判断が分かれそうです。

・予選

 Q1から大荒れ、アレクサンダー アルボンがターン1の内壁にぶつけるちょっと格好悪い失敗でレッド フラッグの原因となると、ニコ ヒュルケンベルグがターン4を曲がれず壁に当たって2回目のレッド。さらにQ1終了直前にもターン4でピエール ガスリーがターン4を曲がれず退避路に逃げると、後ろから来たフランコ コラピントは同じターン4でクラッシュ。計3回のレッドフラッグでQ1だけで40分近く費やしました。
 Q2でもオリバー ベアマンのクラッシュがあり、本来ならインタビューをやってる時間にようやくQ2が終了。時間がかかりすぎてQ3が始まるころに僅かながら雨が降って来てしまい、ただでさえタイヤが冷えやすい、しかもミディアムを使う人も多い中では悪条件の重ねがけ。Q3が始まってもアタックに入って早々にジョージ ラッセルがターン4で飛び出し、後ろを走るノリスはイエロー フラッグに阻まれて記録を出せず、さらにターン15でルクレールがクラッシュして5度目のレッドフラッグ、もうやだ(笑)
 この時点では3人しか計測できておらず1位はカルロス サインツ、このまま雨が強まるようならまさかのピレリ ポール ポジションなのでちょっとソワソワ。だいぶ陽が傾いてきた現地17時37分、残り7分7秒でQ3が再開されて路面状況が不透明な中で各者が急いで計測に向かいますが、今度はピアストリがターン3でクラッシュ、レッドフラッグ6回目で予選としてはF1史上最多の新記録です☆
ぐぎゃ・・・

 もはや決勝レースよりも尺が長くなってしまい日没も迫る中で残り3分41秒で再開、一部で小雨がぱらつく神経質な状況でサインツの記録を更新できたのは超人フェルスタッペンだけでした。2戦連続・今季6度目のピレリポールで今週もチャンピオン争いに水を注しにかかります。サインツは最初に出した記録で2位を確保、3位はリアム ローソンが入りました。ローソンも最初に記録を出した3人のうちの1人でしたが、最後に自力で記録を更新しての3位で価値があります。
 4位からアンドレア キミ アントネッリ、ジョージ ラッセル、角田 祐毅と続き、ノリスは壁に軽くぶつけてしまって7位止まり、せっかくピアストリが自爆したのに自分も上位に行けませんでした。ピアストリは9位、ルクレールは10位です。

・決勝

 なんとポールのフェルスタッペン、5位ラッセル、6位角田がハードを選択してスタート。フェルスタッペンからすると強豪が全然近くにいないのでハードでもじゅうぶん競争力があり、しかも夜に雨が降って路面の状態が良くないので攻撃性の高い路面への対応や、少し可能性がある雨への対応など幅広く問題に対処できるためと思われます。それにしてもタイヤが3種類選択制になって以降、ポールシッターが最も固いタイヤでスタートするのって史上何回目なんでしょうね、珍しい事案です。
 前日の予選も昼間のSUPER GTも荒れまくったのでちょっと胸騒ぎを覚えつつのスタート、スタートでサインツに抜かれることだけがちょっと怖いフェルスタッペンは抜群の出だしで1位のままターン1に入り優勝ムーブ。ただ中盤では一瞬スタート状態を示すピット側の点灯パネルに黄色が出たのが気になります。小さい画面を見ているであろうフジテレビNEXT放送陣は全然気にもしていないようですが誰か車が動かなかったんでしょうか、、、ピアストリがビリになっとる( ゚Д゚)

 たぶんさっきの黄色はピアストリやなあ、これはちょっと選手権が分からんようにn
ぶしゃ・・・

 ターン5、ピアストリ、クラッシュ。ビリになって焦ったか前の人とラインを変えながら順位を上げようとして全然止まれずに刺さりました。もちろんSC導入でもちろんピアストリはリタイア。1年以上続けてきた34戦連続得点と44戦連続完走の記録ももちろん途絶えました。もちろん本人はレース後に大反省です。もちろん、、、もうないや(笑)
 4周目にリスタートすると、あとはフェルスタッペンを遮るものは何もありませんでした。予想通り誰も追いついて来ず、作戦を乱すような中途半端なタイミングのSC導入も混乱を招く雨も無し。1分46秒台からじわじわとペースを上げて44秒後半で安定的に推移させ、後ろの人が全員ピットに入ったのを確認してから40周を終えてようやくピットに入ってタイヤを交換。ハード40→ミディアム11の、たぶん義務がなかったらハードでそのまま走り切るようなレースで前戦に続く2連勝で今季4勝目・通算67勝目。ポール、ファステスト ラップ、全周リードの優勝で自身通算6度目のグランドスラムも達成。ハミルトンと並ぶ歴代2位タイで、史上最多のジム クラークまであと2回です。
 レース時間1時間33分26秒408、予選より早く終わって当ブログの割いた尺も予選の半分といったところでしょうか(笑)いや、正直私は過去のここでのレースの記憶から、タイムが落ちないからと延々走った結果バーストするのが怖いなと思ってたので、壊れずに走ってくれてよかったです。

 そんなフェルスタッペンよりも興味が向かうのはサインツ、ローソンの予選サプライズ2名。このうちローソンはけっこう直線が速いのでメルセデスの2人を従えて20周目まで3位でピットに入りましたが、やはり自力に勝るメルセデス勢は前が開けると速いのでアントネッリはアンダーカット、ラッセルはオーバーカットでいずれもローソンを抜きました。
 一方のサインツはそのローソンの壁のおかげでレース序盤にメルセデス勢との間にじゅうぶんな差を築くことに成功。27周目、ラッセルに2秒ほどの差を残した状態でピットに入ってミディアムからハードへ交換。この段階でほぼ3位以内の確保にはめどが立っており、ラッセルとどっちが2位なのか、という見えない争いになりました。
 ラッセルはサインツに対して19.5秒差というオーバーカットするには計算上かなりギリギリの数字でピットに入りました、がピットを出たら1.2秒ほど前方へ。ラッセルはピット入り口のシケイン状の箇所も出口の90度コーナーもむっちゃ攻め込んでいており、作業も静止時間2.3秒とこのレース全体6番手の好記録。なおかつ、後から記録を見たらこの周のサインツはミスったのかエナジーを一旦使い切ってしまって出力が落ちたのか、前の周より0.7秒も遅く戻ってきていました。サインツ、あと一歩のところで2位は守れませんでした。

 ただそれ以上の波乱は起こらず2位ラッセル、3位サインツの順でレースを終えてサインツにとっては昨年の最終戦以来でウイリアムズ移籍後初の表彰台。ウイリアムズの表彰台は2021年ベルギーでのラッセル以来ですが、この時はレースがほぼ行われていない特殊な環境でしたので、ちゃんとレース距離を走った上での表彰台となると2017年のアゼルバイジャンでランス ストロールが記録して以来8年ぶりでした。久々ですね~スーパーカルロス。

 なおサインツはこれでマクラーレン、フェラーリ、ウイリアムズの名門3チームで表彰台を経験したことになり、これはアラン プロストに次ぐ史上2人目の記録です。プロ野球で言えば埼玉西武ライオンズ、千葉ロッテマリーンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、中日ドラゴンズの4チームで年間10勝以上を記録した涌井 秀章みたいなもんですかね(?)ちなみに涌井は中日以外の3チームでは最多勝も獲得しており、これは史上唯一の記録です。2025年9月23日時点で通算166勝167敗、サインツよりは勝ってますけど(当たり前)負け数の多さなんかもちょっとサインツ的(謎)

 4位アントネッリ、ローソンは5位ですが自己最上位。そのローソンを抜くことはできなかったものの角田は6位で終えてレッド ブル移籍後の最上位を記録。その角田を抜けずに集団に埋まったノリスは7位止まり、せっかくの大チャンスでピアストリとの差が6点しか縮まりま縁でした。ミディアムでスタートしたもののアンダーカットもオーバーカットもできずにあんまり打つ手がなく、おまけにピット作業でまた失敗がありました。アレックス ボウマン現象と名付けましょう。

 仮にボウマン現象がなければローソンかルクレールとターン2で並んで、でも冷えてるハードでは踏ん張れないから、というところで順位自体は変わらなかったかもしれませんが、うーん、コース上であとなんとか0.5秒でも稼いで前に出たかったですね。でもターン2で並んだ結果いつものあいつとぶつかって0点だった可能性もあるので、結局は予選でまとめられなかったのが全て。でもまとめられなかった遠因はピアストリのクラッシュで、それが遠因となって決勝でもピアストリは事故ったわけですから、何も無ければやっぱり6点しか追いつかないか、下手したら離されていた、とどこまでも前向きに捉えるしかないでしょう。明日明日!(ビッグボス流)
 ピアストリは予選の失敗から、たぶん10位あたりは事故が怖いのでそれを考えすぎてうっかりクラッチが繋がってしまい、とっ散らかっての事故だったと思います。一方ノリスの方も動きを見ているととにかくスタート直後は「あ~俺に近寄らんといて~ぶつかりたくない~」という雰囲気が滲み出ていました。逆転したいならそんなこと考えずに攻めるべきでしょ、と思うか、混戦でよく冷静だった、壊したらどうにもならん、と思うかはなかなか難しいところです。個人的には今回は後者ですかねえ。

 ちなみに2連勝でフェルスタッペンもピアストリと69点差まで順位を持ち直しています。低速のシンガポールはRB21が苦手とする傾向のある形状なのでさすがにこれ以上快進撃が続くとは思えないんですが、突如シンガポールでも速くなっていたら・・・ちょっと怖いですね。次戦のシンガポールはまた2週間後です。あ、コンストラクターズのチャンピオンは決まらなかったのでお酒は一旦片付けてください(笑)

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