SUPER GT 第4戦 富士

2025 AUTOBACS SUPER GT Round4
FUJI GT SPRINT RACE
富士スピードウェイ

混走決勝 4.563km×35Laps=159.705km
GT500 class winner:au TOM'S GR Supra 坪井 翔
(Toyota GR Supra GT500/TGR TEAM au TOM'S)
GT300 class winner:D'station Vantage GT3 Charles Fagg
(Aston Martin Vantage GT3 EVO/D'station Racing)

クラス別決勝 4.563km 50分
GT500 class winner:ENEOS X PRIME GR Supra 福住 仁嶺
(Toyota GR Supra GT500/TGR TEAM ENEOS ROOKIE)
GT300 class winner:D'station Vantage GT3 藤井 誠暢
(Aston Martin Vantage GT3/D'station Racing)

 オートバックス スーパー GT選手権・第4戦は従来のシリーズの考え方をひっくり返す珍しいレースでした。このシリーズの基本的な項目は

・GT500クラスとGT300クラスの2クラス混走
・2人以上のドライバーが同じ車に交代して乗車する
・250km~1000kmの長距離を走るセミ耐久、または耐久レース
・レース結果に応じてサクセスウエイトが与えられる
・コース上だけでなくピット作業や作戦の戦いも激しい

 といったあたりでしたが、これらを全否定(笑)いわばかなり実験的な試みで

・土曜日と日曜日にそれぞれ予選・決勝を開催
・ドライバーは各日に1人が乗車
・レース距離は160km程度
・サクセスウエイトなし
・レース中のピット作業義務無し
・日曜日は混走もせずクラスごとに決勝レースを開催

 となっています。過去にシーズン終了後の非選手権としてクラス別開催を行ったことはあるほか、2003年にSARSの影響でマレーシアでのレースが中止となった際には代替として富士で今回と似た趣旨の短距離レースが急遽組まれました。ただ、この時は日曜日に決勝の第1ヒート30周、間を空けてすぐに第2ヒート50周を行い、この第2ヒートはピット義務有りという設定でした。これが悪天候によって大幅に予定が狂ったので両ヒートともピット義務なしの短距離レースに変更されていました。
 当時J SKY SPORTSには『GTコックピット』というJGTCのレースを車載映像を中心にした15分のダイジェストで振り返る番組があって、スカイラインGT-Rが圧倒したこのレースで「もはや、GT-Rの敵は、GT-Rのみとなっていた」とかいうナレーションがあったと思います。かっこよかったなあ、あの番組。

 そんなことは置いといて、これに対して今回は最初から予定されたレースとして短距離戦を2発。しかも、『2つのレースを合計して総合結果を決める』のではなく『それぞれのレースで優勝者と選手権ポイントが与えられる』という点でも異例です。得点は各日とも通常の半分となっているので、GT500で優勝したら10点、GT300なら12.5点。ポール ポジションに与えられる1点も半分になって0.5です。ポイント表がちょっと気持ち悪くなります(笑)
 2レースでの総合優勝形式ならレースを通じて正式な優勝者は1人だから問題ないですが、今回はそれぞれが正式な優勝者なのでこのレース以降はSUPER GTの通算レース開催数と歴代優勝者の優勝回数の合計が合わなくなりますね。でも選手権ポイント表は『第4戦 18.5』みたいな合計獲得ポイントとしてしか数字に上がってこないので後から見返したら状況整理が難しくなりそうな気もします。
 サクセスウエイトも無いので、例年なら選手権上位のチームは厳しいハンデでノロノロコツコツ走って数点を獲りに行くしかない時期ですが、ハンデ無しのためここでまた大量点を獲ることも可能になります。選手権が独走状態になってしまう危険性もあるわけですが、まあ何はともあれやってから考える爆走坂東アソシエイション。

 チームとして考えるのはドライバーの起用法で、基本は経験値の高い選手が土曜日を担当することになります。というのも、両日とも練習→予選→決勝を1人で担当するので、とりあえず初日の練習走行できちんと車のセッティングやタイヤ選択の方向性を見つける必要があり、なおかつ決勝も混走で難易度が高いからです。日曜日は仕上がった車で、混走しないので目の前の戦いに集中して、速さはあるけどまだGTの経験が少ない若手を起用、みたいなパターンが定石と思われます。GT300の中団~後方チームだと選手の構成が全然違うのでどうなるか分かりませんけど。

・レース前の話題

 TGR TEAM KeePer CERUMOの石浦 宏明が今シーズン限りでGT500の活動を終了すると発表しました。2008年からGT500クラスに乗り続けており今年が18年目、44歳なのでF1のアロンソ、NASCARのハムリンあたりとだいたい同世代ですね。2015年からセルモ一筋、2019年にはセルモの取締役になって会社組織の中にも組み込まれています。
 今年の第2戦で6年ぶりに優勝したばかりですが、若手が台頭してくる中でそろそろ道を譲るべき時だと昨年あたりから考えていたとのこと。ドライバーとして引退するわけではないので元々発表は考えていなかったそうですが、2年前にはチームメイトの立川 祐路もシーズン中に引退を表明して戦ったため、それに倣うように発表を決めたそうです。当時立川選手から引退を誘われて断ってましたね(笑)
さっそく旗を持つ立川監督

 石浦選手といえば、最近はもやは当たり前になっている『若い頃からカートをやって、メーカー系のスクールで好成績を挙げて、メーカー育成選手になって4輪に進む』という流れを経ていない現在では希少な存在として知られています。本格的なカートのデビューが17歳と遅く、しかし非常に能力があったので21歳でトヨタのスクールに入って好成績だったものの、21歳という年齢を理由に選考漏れ。年齢制限なんて書いてなかったぞ、だったら最初から書いといてくれ、というのが率直な感想。
 その後もなんとかレース活動を続けるものの上に上がる機会がないまま資金が底を尽き、最後の100万円に全てを賭け、それまでに知り合った関係者の人の支えで中古部品を継ぎはぎしたような車を用意して、全日本F3の開幕前テストに本人曰く『勝手に混ざり込んで』参加。この急造車両で石浦は好タイムを記録し、これが関係者の目に留まってトヨタの選手枠に入れてもらうことができた、もちろん今回は年齢を理由に断られることもなく、という嘘みたいな話です。この話、オートスポーツ誌に一度掲載され、後年パンデミックで取材機会が少なかったからなのか何なのか、再編集してもう一度誌面に登場したというこれまたなかなか希少なお話でした。

[土曜日]

・予選

 まずは土曜日の予選、GT500のポール ポジションは前戦マレーシアに続いてWedsSport ADVAN GR Supra・阪口 晴南でした。0.053秒差でau TOM'S GR Supra・坪井 翔が続きましたが1コーナーでいきなり失敗したそうです。3位はKeePer CERUMO GR Supra・大湯 都史樹、彼の速さが石浦選手の決断に影響したようです。脇坂 寿一におけるアンドレ ロッテラー的な存在でしょうか、いや違うか。

 GT300のポールはHYPER WATER INGING GR 86 GT・平良 響が獲得。2位はSUBARU BRZ R&D SPORT・山内 英輝、3位はCARGUY FERRARI 296 GT3・小林 利徠斗でした。トカリくんがんばって~。ちなみに利徠斗選手、第2戦では道中にうっかりUNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI・片山 義章と接触した場面があったんですが、レース後すぐ謝りに来ていたそうです。失敗して当てたらすぐ謝る、ゲームだろうとリアルだろうと大事。バーチャル経由でリアルの世界を夢見る方もたぶんいらっしゃると思いますが、ゲームでも間違えて当てたらちゃんとすぐ謝って失敗を認める心と視野は持っていないと、たぶんリアルでも成功しないし人として信用されないのでそもそも機会が来ないんじゃないかと私は思いますね。言い方は悪いですけどゲームですら謝れない人がリアルでは謝れないと思います。

・混走決勝

 GT500はタイヤの目覚めが悪い様子の阪口に少し詰まるような争いで、後ろで坪井と大湯が2位争いで抜きつ抜かれつ。しかし10位スタートのENEOS X PRIME GR Supra・大嶋 和也がターン3で接触からクラッシュしてしまいSC導入、一旦仕切り直し。大嶋選手は並走の内側でターン3に入りましたがちょっと冷えたタイヤに対して旋回速度が高かったために外へ流れ、外の車に寄りかかって接触したように見えましたね。
 6周目にリスタートすると坪井選手は目の色を変えたように積極的に仕掛け、ターン2つで阪口選手をかわすと、終盤には少し雨も降りましたが2位の大湯選手を攻撃範囲外に置いたまま逃げ切りました。「もうauが速いのは分かったからええって・・・」というお客さんがそれなりにいそうですが、ウエイトを積んでも速いチャンピオンが降ろして遅いはずが無くまずは混走決勝を制しました。

 11位スタートのDelloite TOM'S GR Supra・笹原 右京が3位に入ってGRスープラ表彰台独占どころかトップ5を独占、かつトムスは1-3でした。ウエッズスポーツ・阪口は4位で、タイヤの寝起きの問題が無ければもっと競り合えたと思うんですけどちょっとだけ発動が遅かったですね。でも路面温度が下がっても作動温度領域を外してガクっと来ることも無かったように見えるので、その点でヨコハマのタイヤは上手くバランスの取れた良いものだったのかなと思いました。非GRスープラクラスの最上位は6位に入ったTRS IMPUL with SDG Z・ベルトラン バゲットでした。

 GT300はインギング・平良がリードしていましたが後続を引き離すことはできず。一方で4位スタートのD'station Vantage GT3・チャーリー ファグは10周目には2位に浮上して平良を追い回しました。どうもペース的に負けている感のある平良、雨が降りそうで路面温度が下がっておりひょっとするとタイヤの作動温度領域を外れそうなのかな、と思いましたが雨がぱらつき始めた23周目にとうとう平良をかわしてファグが1位となりました。
 その後ファグはグッドスマイル 初音ミク AMG・片岡 龍也に追い回されますが、片岡自身もLEON PYRAMID AMG・蒲生 尚弥から攻撃を受ける場面があったため、これがファグにとっては好都合に働きました。ダンロップ、ヨコハマ、ブリヂストンのタイヤ三つ巴競争でもあったこのレースをファグが制し、0.785秒差で片岡、さらに0.45秒差で蒲生がチェッカーを受けました。GT300はなかなか盛り上がりましたね。利徠斗選手は惜しくも4位で表彰台ならず、ポールシッターの平良選手はやはり雨が降ってきたら一気に遅くなったそうで結果は6位でした。

[日曜日]

・予選

 大忙しの日曜日、GT500のポールは前日にクラッシュして長時間の作業を行って修復したエネオスGRスープラ・福住 仁嶺でした。2位はまたauトムス・山下 健太。GT500引退発表後初走行のキーパーセルモ・石浦が3位に入りました。GRスープラがトップ5を独占し、8位にもデロイトトムス・ジュリアーノ アレジが入りましたがなんとピット入り口の白線を踏んだためにこの記録が抹消。最後のアタックが今1つでチェッカーを受けずにピットに戻る判断をしたものの、無線で呼ぶのが遅すぎたのか完全に白線を跨いでいました、これは反省ですね。
デデーン、アレジ、アウト~

 GT300は前日の勝者Dステーションヴァンテージ・藤井 誠暢がポールを獲得。2位の初音ミクAMG・谷口 信輝に0.387秒差はけっこうな大差です。3位はハイパーウォーターインギング・堤 優威、4位にカーガイ296・ザック オサリバン。前日速かったところが引き続き速いですね。

・GT300決勝

 まずはGT300の単独決勝。3位スタートの堤がターン1でいきなり谷口の懐に飛び込んで2位を奪うと、以降は延々と藤井vs堤の争いでした。2人はずっと1~1.5秒差で走り続けましたがまあ何せ加速が速いヴァンテージ、GR86で抜くのはよっぽど相手が失敗してくれないと無理なわけですが、藤井選手は全然失敗してくれませんでした。まるでF1のレース展開かと思うぐらい順位は変わらずに50分間で31周を走破、最終的に1.271秒差でDステーションヴァンテージ・藤井が逃げ切りました。これで初のスプリントを2連勝、この週末で満点に近い25.5点を獲得しドライバー選手権で4.5点差の2位となりました。

 3位はレオンAMG・菅波 冬悟が入りドライバー選手権1位を守りました。4位にはマッハ車検 エアバスター MC86 マッハ号・木村 偉織が入りました。この車、ぺらっぺらのウイングで直線むっちゃ速いんですよね(笑)

・GT500決勝

 GT500の決勝、今回はトムスがスタート直後に1位をかっさらっていくこともなくポールシッターの福住が快走。50分は何も無ければ前日とほぼ変わらないレース距離なので、ヤマケンはタイヤをうまく使って終盤に仕掛ける考えだったようで終盤に差を詰めて行きましたが、さすがに同じ車、同じメーカーのタイヤでGT300の要素も無ければ逆転は難しく、福住がポール トゥー ウインとなりました。最初から決まっていたのかもしれませんが、Jスポーツの放送席に前日車を壊した大嶋選手がいたので、なかなか色々複雑な放送でした(笑)

 0.728秒差で山下、勝てませんでしたがドライバー選手権1位でここに挑み、この週末最多の17.5点を獲得してさらに選手権を優位にしました。合計56.5点となって50点を超えたためここからの2戦は最大ハンデが確定しています(。∀゜)
 3位もスタート順位と変わらず石浦選手、前とは20秒差、後ろとも約13秒差で前後に誰もいないチェッカーでしたけどファンの方はしっかりとその姿を見ることができてオトクだったかもしれません。また非GRスープラクラスの最上位はまたまた登場、4位の東京ラヂエーターインパルZ・平峰 一貴。レース中の接触で10秒加算のペナルティーがあったものの、後続との差が大きかったため着順と正式順位が変わりませんでした。

・GRスープラ GT500、9連勝

 GT500はまたもやGRスープラの一強体制でした。これで開幕から4戦・5連勝、それどころか昨年の第5戦SUGOから年を跨いで9連勝で、もうGT500クラスでは丸々1年GRスープラしか優勝していません。今回のレースに関しては映像からの見た目や事後情報からしてGRスープラはウイングを寝かせることができ、一方でZ NISMO GT500もシビック タイプR-GTもウイングを立てていたと思われます。
 富士は標高が高いのでダウンフォースは放っておいても少なくなり、高温の環境もまた同様。トムスを筆頭にGRスープラは車の動作解析が高い制度で行われ、車体と路面の距離を最適に保つためのセッティング、それに合わせたタイヤの事前想定が現場で有効に機能し、床下から最大限のダウンフォースが出せるのでウイングを立てる必要が無いのかなと感じます。これは昨年からずっと続いている話で、ベース車両が2020年から同じなので開発不可能領域部分の基本的な空力特性が変わらず、自分たちがいじった部分の変化に集中してデータを集めることを続けてきたのが一因ではないかと思います。

 他方でZとシビックはそもそもスケーリング後の車体形状がどちらかと言えば抵抗が少ない、というかシビックはどうやってもダウンフォースを得にくい形です。本来なら抵抗が少ないからむしろ最高速が伸びるはずで去年のシビックはまさにそうだったんですが、今回特にウエイトゼロで正面から争うとなった時に『最低でもこの量のダウンフォースは欲しい』という想定に対してウイングを立てないことには話が成り立たなかったと思われます。
 真っ先にプレチャンバー採用エンジンを投入した2018年ごろから数年はエンジン性能の優位性が顕著でしたが、今はほとんど性能の差が無くエンジンの力で押し通すこともできず、しかも昨年投入したシビックの車体形状は1年を経て『ああ、ここをもっとこういう形状にしたい』と思っても今年は開発凍結なので空力開発ができません。どっちみちNSX以外の何かにはしないといけなかったし、今後の伸びしろがどうなるかはまた別の話ですが、少なくとも現状はシビックであることが競争においてマイナスだという点は否めないですね。もちろんそれはホンダ自身もある程度織り込んではいたと思いますけど。

 Zも基本は同じだと思いますが、開幕からインパルはそこそこ走れているのにニスモは同じブリヂストンのタイヤでも苦戦しています。レースを見ているとニスモは決勝でも100Rで火花を飛ばして走っており車の動かし方が違うことが見てとれ、予選でターン1のブレーキの際にバタバタ跳ねてロックさせて失敗している映像もあったので、なんとなくですが前下がりの車体姿勢、いわゆるレーキ角を付けて床下のダウンフォースを稼ぎ、そのかわりいくらかウイングを寝かせる方向性を取り、レーキありセットを成り立たせるには足を固めないといけないので、その結果乗りにくくタイヤの使い方も難しくなっているのではないか、と勝手に推測しました。インパルはそんなに火花を出していないのでたぶん方向性が違うと思います。
 ニスモは2年前までずっとミシュランだったのでエンジニア陣が持っているセッティングの基本概念がおそらく違っていて、トムスとは真逆に土台のタイヤのゴムとしての動作特性の解析から何からガラッと変わってしまい、加えて乗っかってる車体の空力特性もGT-R→Z→Z NISMOと変えてきている分予測モデルと現実の整合性など、情報量不足があって詰め切れていない状態が続いているんじゃないかと思います。昨年は雨が多くて練習走行の機会が少なかったのも地味に効いてる気がしますね。
 ここから先のレースはサクセスウエイトがあるのである程度シビック、Zニスモが主役になってくるとは思いますが、チャンピオンとなるとちょっと厳しそうですね。あ、もしトヨタ勢が取り逃がしたらこの文章による呪いが原因だと思います^^;

・GT300はこのままAMGか?

 おそらく300kmのレースだったとしてもヴァンテージは勝っていたんじゃないかと思いますが、まあとにかく富士では速い。車両特性的におそらくこの車は最終戦のもてぎでも速いでしょう。振り返れば開幕戦の岡山も速かったですし、特性としてけっこうAMGと近い、ゴツイ見た目によらず意外と小さいコーナーでも速いタイプの車かもしれません。そうするとAMGは意外とSUGO、オートポリスの山間クネクネサーキットも強いのでヴァンテージも実は速いかもしれず、サクセスウエイトはきついですけどタイヤの側で大外ししなければそこそこ戦える可能性は感じます。

 もっともK2レオンR&Dもグッドスマイルレーシングも長年同じ車とタイヤで戦って経験が豊富なので、彼らと比べると車がクソ重たい上に今年の規則で給油に時間がかかるここからの数戦はDステーションレーシングにとって大きな壁となるでしょうから、今年は2台のAMGが争う展開になるのかなあというのが今のところの個人的な予想です。

 それと今回ちょっと楽しく見たのがチーム マッハでした。日曜日の4位だけでなく土曜日も塩津 佑介が7位に入っています。このMC86はおそらく元々はトヨタ チーム タイランドが使用していた最も製造が新しい、私が勝手に後期型と呼んでいる個体だと思うのでマザーシャシーとしては新しい部類ですが、それでも2017年ごろから使用されてINGING、アルナージュを経てもう5シーズンは使っていて他チームの車両と比べると古株です。
 色々壊れてよく止まってる印象ですし、いつも長距離レースでは変速的な戦略で我が道を進んでいますが、個人的にはずっと『正面から勝負しても意外とまだまだ行けるんじゃない?』と思っています。今回の結果はまさにその一端を感じるものだったので、いっぺん普通の均等割りに近い作戦で力勝負も見てみたいですね。

・課題を来年につなげよう

 さて史上初のスプリント、初めての試みでたぶん色々と課題だらけだったと思いますが、一応は来年もやる意向でこれから課題の洗い出しを行っていくようです。とりあえず坪井選手がインタビューで言ってましたが、この方式はメカニックのみなさんがあまりに忙しすぎて大変だということで、せめて練習走行は金曜日にして分散させることができないか、という話が出ているそうで、これは非常に重要ですね。
 スタートについても、できれば密集した状態でスタートする俗に『インディーカー方式』と呼ばれるものを実施したかったものの、実際に走る人たちがちゃんと準備しないとただぶつかりまくってしらけるだけなので今回は採用せず。こちらも来年以降導入したい意向は引き続き持っているようです。ちなみに私はこの方式、インディーカーよりもNASCAR方式と言った方が良いんじゃないかと思ってるんですが。。。

・短距離/混走/ハンデ無し、をどう見るか

 結局はここだと思うんですが、本来のSUPER GTのレースの趣旨とは対極にあるレースを組み込むことをヨシとするのかどうかで人それぞれ評価は分かれるだろうと思います。これはどう理由を付けてもほぼ好き嫌いの問題なので100%の正解は無いでしょう。個人的にはレース距離を延ばす方向一辺倒になっている最近の方針はあんまり好みではなかったので、新たな試みとしてはありだと思った、というかそういう大胆なことをやろうとした姿勢を評価したいなと思いました。1回目なので少々粗いのは大目に見るしかないでしょう。まあ個人的には「普通に300kmが一番いいんじゃない?」って思ってはいるんですけどね(笑)
 ここで「設計が粗いのは初めてだから仕方ない」と言うと「お金を貰って正式なレースとしてやるんだから未完成なものを提供するな」というごもっともなお叱りがまたありそうですが、NASCARほど巨大で財政基盤も人員も潤沢ではないGTアソシエイションで限度があり、完成品を出そうと思ったらずっと同じことしかできないのも現実だと思います。そのあたりは多少割り引くしかないかなと。

 GT300分離開催というのは昔からちょくちょく言われていたことでして、分けると特にGT300は普段より注目度が上がるのでスポンサーにとって利点があり、選手としても普段より注目されるのが意欲に繋がります。一方で混走が無いと追い抜きがそう簡単ではなく、不確定要素が減ってしまって特にGT500は動きが減るのが難点です。
 短距離走も同じような話で、性能調整で補いきれない燃費やら車両重量/特性から来るタイヤ戦略の幅やらが無くなるのでコース上の争いが増えやすく、車両の有利不利がある程度均される、またSC/FCYによる極端な運要素も無くなります。しかしこれは逆説的に戦略による順位変動や不確定要素を減らすので、味気ないレースになる可能性も高くなります。GT300はBoPをミスると参加者側で取り返す余地が小さいというのもあるでしょうか。

 ハンデが無いと強いところが強いなりに勝ってしまう可能性が高いので「なぜウエイトをなしにしたのか?」と感じた方もいると思いますが、概要発表によると『1対1のドライバーバトルに焦点を当てノーウェイトとする』とのことで、あくまでコース上での『ガチの勝負』を見せたいのが運営の意向でした。ただこれも来年に向けて、通常の1/4ぐらいのハンデとか、選手権順位で3層ぐらいにチームを振り分けて0・10・20kg程度の軽微なウエイトを乗せるとか、GTらしさを埋め込むのも一案ではあるかなと思いました。
 YouTubeのコメント欄を見ると「シーズン中盤にサクセスウエイトを0にして強いものが勝ってしまって意味がない」というような意見もある一方で「初めて現地観戦したが予選も決勝も見れて分かりやすく面白かった」という意見もあり、どう見たいかによって180度答えは変わるので結局は取捨選択になります。

 オーストラリアのレプコ スーパーカー選手権はスプリントと耐久がシーズンの中に混ぜられており、例えばスプリントだと金曜日に100km、土曜日と日曜日に200km・給油有りレースを1回ずつの週末に合計3レース、なんてやり方を行います。一方で同じシーズンにバサースト1000のような耐久レースも入っています。ですから特性の違うレースが同一シリーズに組み込まれている、というのは決してできない話ではないと思います。
 ただ、これは前戦の記事の際にスイカ男さんとのコメント欄の話であったんですが、国内最高峰GTカー選手権なら本来はもっとイベント数があってもよさそうなもので、短距離レースも頻繁に開催されればまたずいぶん違ったものになるし、クラス別レースでもてぎや鈴鹿を複数回使ったりもできそうなもの。そうできない要因はもちろんお金の問題もあるんですが、市場規模が小さい日本ではフォーミュラもGTも特にGT500は同じ人たちがチームも選手も関わっているので、既に今でもチームの皆さんは日程が詰まりすぎてこれ以上増やせない、ということがあると思われます。
 海外だとハコはハコ、フォーミュラはフォーミュラ、と分かれているかよっぽどでっかい組織のチームが両方やってるかぐらいのものでしょうから、こればっかりはどうしようもありません。ましてやGTは海外レースも開催したい考えなので、年間8戦の上限は動かしようもなく、そうするとスプリントはやれても1戦だけ、結果お試しみたいな内容に見えてしまう、というのが非常に悩ましい点には思えますね。ぶっちゃけ何やっても運営は絶対叩かれると思うので、色んな意見を拾ったり拾わなかったりしながら来年につなげて欲しいと思います。

 次戦は8月23日、24日に鈴鹿サーキットで普通の300kmレースです。一旦ゼロになったウエイトがいきなりどっさり乗るチームはドライバーが激変した車に苦労するかもしれませんね(笑)

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