NASCAR 第25戦 リッチモンド

NASCAR Cup Series
Cook Out 400
Richmond Raceway 0.75miles×400Laps(70/160/170)=300miles
winner:Austin Dillon(Richard Childress Racing/Bass Pro/Winchester Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR カップ シリーズ、レギュラー シーズンはいよいよ残り2戦で大詰めとなりました。第25戦は0.75マイルでハイバンクのショート トラック・リッチモンド。2週間前に開催されたアイオワの"元ネタ"となった場所で、ショートトラックのスーパー スピードウェイとかいうよく分からん2つ名で呼ばれることもあります。先週のワトキンスグレンも『ロードコースのスーパースピードウェイ』という変な2つ名がありますけど^^;
 バンク角が14度もあるのでずーーーと左にハンドルを切りつつも高い速度で曲がり続けるため、とにかくタイヤの摩耗が激しいのがリッチモンド。1953年に初開催、1955年以降は毎年カップシリーズが開催されており、1959年以降は年間2回開催を維持してきましたが(ただし2020年はCOVID-19感染拡大の影響で1戦が中止)今年は半世紀以上ぶりに1回だけの開催となりました。なお当初は1周0.5マイルで1968年までは未舗装路面、1988年から現行の0.75マイル・Dシェイプになっています。
 昨年の夏のレースは公式戦として史上初めてオプションとプライムの2種類のタイヤが用いられました。今年はそういう小細工はありませんが、グッドイヤーが持ってきたタイヤは右側が昨年オプションとして使用されたD-5256というタイヤなので、昨年の基準で言えば全部オプションタイヤです。左側は昨年よりさらに柔らかいD-5254というタイヤ、この2つの組み合わせは今シーズンに既に3回ありましたが、そのうち2回は開幕前のボウマン グレイとオールスター戦のノース ウィルクスボロでポイント レースではありません。公式戦での使用実績は第7戦マーティンズビルの一度だけになっています。
 ステージ1の70周はなんとか摩耗に耐えつつノーピットで走り切りたいところですが、ステージ2以降は50周×3の2ピット作戦とみられます。リッチモンドは1周25秒ぐらいしかかからないので、コーションが出ない場合20分ちょっと走って新しいタイヤが投入されるという非常に慌ただしい展開、グランツーリスモのタイヤ消耗倍率8倍とかそういう設定に似てるなといつも思いますね。

・ちょっとしたデータ

 Gen7でこれまで6回開催されているリッチモンド。昨年夏の優勝者はオースティン ディロンでしたが、オーバータイムから最後の争いで明らかに無謀な運転でジョーイ ロガーノに体当たりし、流れでデニー ハムリンも撃墜しての優勝は度が過ぎたものと判断されました。結果『記録としては優勝だがプレイオフ進出要件としての優勝には数えない』という厳しい判断が下されてディロンはプレイオフ進出を逃しました。まあそもそもは残り2周で他のドライバーが事故ってコーションを出したのもいけなかったんですけど(笑)
伝説の迷シーン(。∀゜)

 他にGen7のリッチモンドでの優勝者はハムリンが2勝、カイル ラーソンとクリス ブッシャーが各1勝、そして今は引退しているケビン ハービックが1勝です。ハムリンはリッチモンド通算5勝を挙げており、Gen7のリッチモンドでは1戦を除いて全て4位以内ととんでもない好成績です。通算勝利でハムリンを上回るのは通算6勝のカイル ブッシュのみですが、最後に勝ったのは2018年です。以降の成績も決して悪くはないんですけどね。
 クリストファー ベルも過去6戦のリッチモンドで5戦が6位以内、平均順位7.3と好相性。昨年の夏も本来なら彼の独壇場という感じだったんですがピットでの速度違反で後退しました。ベルが現在リッチモンドで3戦連続速度違反という不名誉な記録を継続中、今回はトラック上でだけ速さを見せてリッチモンド初勝利と行きたいところです。
 昨年ディロンにぶち壊されたロガーノはあのまま勝っていたとすればリッチモンドで5戦連続7位以内となっており、通算でもリッチモンドは2勝して平均順位10.0と好相性。ロガーノにとって10戦以上出場経験のあるトラックでは2番目の好成績です。ロガーノは今季のトップ5フィニッシュがまだ2回だけと昨年から引き続いて『優勝はしてるけど成績全体は・・・』な状態ですが、好相性のリッチモンドでプレイオフに向けた流れを作りたいところでしょう。
 一方でショートトラックで速い!といえばチームメイトのライアン ブレイニー、アイオワでも速かったしリッチモンドもさぞかし相性が、と思ったらこれが意外なことに通算17戦で一度もトップ5フィニッシュが無く最高位は7位、トップ10フィニッシュすら3回しかありません。ブレイニーがトップ5フィニッシュを経験していないオーバルは唯一リッチモンドだけで、平均順位19.5はシャーロットに次いで2番目に悪い数字となっています。何でこんなに相性が悪いのかけっこう謎なので、ある意味でこのレースはブレイニーも注目したいと思います。

・レース前の話題

 先週のエクスフィニティー シリーズ、優勝したコナー ジリッチがレース後に車の屋根の上に登ったところ足を滑らせて転落し、鎖骨を骨折する事故がありました。NASCARとしては今のところ屋根に上る行為を禁止する通達を出すようなことはしていませんが、ウインドウ ネットの位置や足の置き方など事故に繋がりやすい危険個所があったと考えられるため、各自に危険性が無いか注意深く行動することが求められそうです。

 次に、NASCARは来週にも2026年の年間日程を発表するとみられています。来週なんだからもう待ってたら良いだろうとは思うものの、ジ アスレティックは匿名の関係筋の情報として、来年のオールスター戦をドーバーで開催することが検討されていると報じました。そうするとノースウィルクスボロはどうなるんだ?という話ですが、代わって公式戦に組み込まれるのではないかとのことです。というか話の順序としてはノースウィルクスボロを公式戦に入れたい、というのが先にあるんだと思いますが、両トラックともスピードウェイ モータースポーツ所有のトラックであるため経営判断として入れ替えること自体はそこまで難しくありません。ジアスレティックによるとオールスター開催地の最終判断はまだ行われていないとのことで、ギリギリまで調整を行っている模様です。

 最後に、来年からクラフツマン トラック シリーズに復帰予定のラム。早ければ2027年にもカップシリーズへ参戦する意向を示していますが、現時点ではトラックシリーズすらどのチームと組んで参戦するのか明らかになっていません。そんな中、コウリッグ レーシングの社長・クリス ライスはラム側と話し合いの機会があったことを否定しませんでした。彼は参戦している全チームが同様にラムと交渉する機会があったと考えているものの、関係者の間ではラムの最初の協力者としてコウリッグが選ばれる可能性が高いのではないか、と考えられているようです。
 その場合、コウリッグはトラックシリーズにチームを有していないため共同で新規チームを設立して参戦することになり、カップシリーズとエクスフィニティー シリーズは2026年にラムの車両が無いため、引き続きシボレーを使用できるように許諾を得る必要があるとのこと。これは現在参戦しているチームがラムに鞍替えする場合には必ず発生する問題ですね。

・NASCAR Whelen Modified Tour Virginia is for Racing Lovers 150

 リッチモンドはウィーレン モディファイド ツアーが併催、モディファイドツアーは40年の歴史を持つシリーズですがカップシリーズ頂点とした枠組みと少し離れた独自の地方レース文化といった感じで、NASCAR公認シリーズで唯一"オープン ホイール"です。レースはコーションとタイヤ戦略がかみ合ったクレイグ ラッツがレース中盤から優勢。108周目のリスタートから一旦はドライバー選手権1位・オースティン ビアーズが先行しましたが、ラッツはタイヤが減ってからの安定性に優れており残り8周でビアーズを逆転、そのままチェッカー受けて今シーズン2勝目を挙げました。

 コリー ラジョーイが5位、ライアン プリースは8位でした。ちなみにモディファイドの車両、映像で見ていてむっちゃ速いなあと思ったんですがカップシリーズと比べて300kgほど軽量な車体にカップと同等のエンジンを積んでいるため、リッチモンドの予選タイムではカップ車両を0.5秒以上上回っていました。ショート トラックならおそろしい速さです(笑)

・Craftsman Truck Series eero 250

 トラックシリーズはこれがレギュラーシーズンの最終戦。2番手スタートでリッチモンドを得意としているタイ マジェスキーがステージ1・2を独走し優勝へ向かって突き進んでいましたが、最終ステージ・200周目に周回遅れのチームメイト・マット クラフトンがミスってぶつかってきました。これで水を注されたマジェスキー、最低限の損失で2番手からリスタートしたものの混戦でボコられてさらに順位を下げ、挽回する時間がありませんでした。結果ポールシッターのコリー ハイムが優勝して今季7勝目を挙げ、レギュラーシーズン王者と合わせてプレイオフポイントを65点も持った状態の第1シードでプレイオフへと向かいます。

 なお、ダートレースで重傷を負ったスチュワート フリーズンは1勝しているため免除申請が通ればプレイオフの資格を残す権利がありましたが、今季中の復帰が困難であることからフリーズンは申請を行いませんでした。ハルマー フリーズン レーシングは残りのレースでケイデン ハニーカットを起用することになり、このレースでは10位でした。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュ ライト ポール賞はなんとプリースが獲得しました、一昨年のマーティンズビル以来通算2度目です。モディファイドツアーの経験が豊富なプリースはショートトラックに比較的強く、経験が活きた形です。2位からタイラー レディック、A.J.アルメンディンガー、ハムリン、チェイス エリオット、ブラッド ケゼロウスキー、バッバ ウォーレス、ベル、アレックス ボウマン、マイケル マクダウルのトップ10でした。昨年はアレでしたはリッチモンドは割と相性が良いA.ディロンが11位、ブレイニーは20位、カイルは28位。ロガーノは練習走行でタイヤの破損からクラッシュしてしまい、予選を走れず最下位でした。

☆タイヤセット数に懸念?

 最初に書いた通り、今回使用するタイヤは昨年"オプション"として使用された柔らかいタイヤで、使用可能セット数は決勝用の新品8セットと、予選で使用して持ち越す中古1セットの合計9セットです。これについてケゼロウスキーは

「もしかしたら間違っているかもしれない。もしかしたら何かが変わって、夜間走行になればタイヤの寿命が練習走行で見てきたよりも延びるかもしれない。でも、今のところは状況が良くない。」

と発言。アレックス ボウマンのクルー チーフ・ブレイク ハリスも

「タイヤが足りなくてつまらない。誰も追い越せないし戦略を崩すこともできない。ステージ1で止まるドライバーはいないし、ステージ2とステージ3は2ストップで、しかもレース中ずっと1セット1コーション。必要なときまでタイヤを交換できないんだ。」

注:合計9セット、予定通りに走ってもステージ1で1セット、ステージ2と3は3セットずつ、計7セットを消費するので、コーションが出て予定外の状況で注ぎ込めるタイヤは計算上2セットしかない。

 と話しました。NASCARは場合によっては追加のタイヤを供給することが可能で、こうした発言は催促という側面もありそうですが、NASCAR側は今のところ追加する必要は無いと考えているどころか、タイヤが減りまくる様子を予定通りだと眺めています。練習走行では40周走ったタイヤは新品より1周3秒遅くなったということです。割合で言うと113%ぐらいになった、と書いたらちょっとレースを知ってる人なら「え、ウエット タイヤ?」と思うような数字。例えば鈴鹿サーキットのGT500で例えると1分50秒で走っていたのが10周後に2分4秒になったような感じです(笑)さあどうなるでしょうか。

・ステージ1

 「Saturday Night Short Track Racing!Let's GO!」、リー ディフィーの実況はちょっと古臭い言葉の選び方がNASCARっぽくて非常に気に入っています。ポールシッターのプリースが自分のペースでレースを先導しますが、猛烈タイヤ消耗レースに強みを持つハムリンがじわじわと追い上げてきます。70周をどう走るのかと思って見ていると、なんと31周目に19位のウイリアム バイロンが早くもピットへ。どうやらピットに入っても19秒+静止時間ぐらいの損失で済むので、あまりに摩耗が酷い今回の設定ではこっちの方が理論上速いという話。ただここでタイヤを2セット使うと戦略の自由度は当然狭くなります。どんだけタイヤ柔らかいねん。
 これはタイヤの使い方が上手いハムリンも同様で、2位まで自力で上げた後の35周目にタイヤを換えました。一方でプリースは周囲に流されずそのまま走行を継続します。どうやらステージ1では勝て無さそうですがタイヤを1セット節約してそこそこの順位で終えられたらそれでよし、目標は優勝のみ、という感じです。

 ハムリンは59周目にはプリースを捕まえますが、同時に後ろから自分より1周だけタイヤの新しいレディックに攻められてもいました。60周目にハムリンはプリースを外から抜こうとしますが、ミスって壁に接触しレディックの方が先にプリースをかわしました、まさに2台同時抜き。その後は独走して、2位を3秒以上引き離しステージ1を制しました。2位はチームメイトのウォーレスで、ハムリンはぶつけた時にトー リンクを曲げたらしくペースが上がらず3位でした。ディロン、オースティン シンドリック、ベル、ブレイニー、ケゼロウスキー、ジョッシュ ベリー、ダニエル スアレスのトップ10。ノーピット作戦はチェイスの13位が最上位のようで、プリースはズルズル下がって15位でした。また、1ピット組でも早めにタイヤを換えた人は40周する前にペースが落ちて終盤に崩れていました。
Stage 1 winner:Tyler Reddick
 
 どうでも良いですけどこのチャンバ カジノのスキーム、後輪の上あたりの青いデカールがどうしても『外装が壊れて青いテープを貼って修理した』みたいに見えて仕方ありませんでした(笑)

・ステージ2

 ステージ間コーションのピットは波乱の渦、ハムリンはピット作業で失敗した上に速度違反で後方へ転落、トーリンクを直す時間がないわ集団に埋まるわで最悪です。またチェイスもピット ボックスに入る際にお隣さんのチェイス ブリスコーを邪魔したと判断されてペナルティーで後方リスタート。自分の1つ手前のピット ボックスに既に車両が進入している場合には、路面に書かれたオレンジ色の線に沿って邪魔にならないように入ることが求められる規則です。リッチモンドは狭いし曲がってるし入り口も難しいし、シーズン屈指のペナ地獄ですね。

 ステージ2はピットで僚友を逆転したウォーレスを先頭にリスタート、ベルがしばらくの間は背後に迫っていましたが、あれこれやってる間に先にタイヤを傷めてしまったのか110周を過ぎたころから引き離され、リスタート直後に抜いていたレディックに120周目に抜き返されました、ペース配分大事。この120周目あたりからはピットサイクルとなり、リーダーのウォーレスは後ろの動きに過剰反応せず130周目にピットに入りました。先に入ったドライバーにかなりアンダーカットされましたが、何せ数周のタイヤ履歴差で別カテゴリーみたいな速度差になりますから、極端な話デイトナ並に見た目上の順位があまり意味をなしません(笑)仮に40周で1.5秒遅くなるという控えめな数字で計算しても、デグラデーション レートが1周あたり0.0375秒、4周の履歴差で計算上はラップタイムが0.15秒も違ってきます。

 ウォーレスは164周目にレディックを抜いて再びリーダーに、毎周0.2秒ほど速いようでここから10周であっという間に2秒差を付けました。しかし周回数的にそろそろ2回目のピットサイクルのお時間が到来というとにかくせわしない展開で、大半のドライバーが170周を過ぎたあたりから一斉にこのステージ2回目のピット作業を終えていきました。ところが181周目

 スアレスがタイヤの古いタイ ギブスをターンでごつごつと押していき、ギブスがたまらず姿勢を乱しました。不運にもそこを通りがかったのがレディック、2人まとめて外から抜いてやろうとしたらふらついたギブス君がぶつかってしまい、レディックがクラッシュしてコーションとなりました。スアレスはレディックより3周早くタイヤを交換して大胆にアンダーカット、見た目上はピット組2位という好位置に付けておりクルー チーフからも無線で「コーション出すなよ。」と丁寧な走りを求められていたようですが、勢い余ってやらかしました。

 このコーションで得をしたのが2人、リーダーのラーソンはまだ2回目のピット作業を行っておらず、またプリースは逆に3ストップ作戦でかっ飛ばしていてちょうど2回目と3回目の間でした。この2人は4輪交換と給油を行って8列目からのリスタート、前を走るドライバーは全員中古タイヤでステイ アウトなのでここから先の40周がむっちゃ有利です。
 189周目/ステージ残り42周でリスタートすると早速プリースとラーソンが新しいタイヤで順位を上げ、ようとしたら前方で並走されて行き場が無くあんまり抜けずにあっちこっち動き回っています。すると2周後にコディー ウェアーが後ろから当てられてスピンしコーション、小休止。

 197周目にリスタートすると今度もプリースが人のいない外側のラインで4人をゴボウ抜き。しかしこのランも短命で、翌周のバックストレッチから13位あたりでもう何がどうなったのかよく分からん連鎖的な接触が発生し、デイトナ並の多重事故が発生。その中でチェイスが貰い事故で車両中破。チェイスは前戦までブリストルで1周遅れだった以外は全てリードラップで完走、つまり24戦をほぼ全周走破してこの事故の瞬間まで記録を継続していましたが、今日はこれ以上走ることができませんでした。

 多重事故になった最終的な要因はターン3入口でカイルがブリスコーに追突したことだったと思いますが、これがブリスコーの減速が早かったのか、カイルの突っ込みすぎだったのか、あるいはその前の軽い接触で何か壊れて止まれなかったのか、状況がはっきりしませんでした。チェイスは事故現場よりかなり後方を走っていたのでなんとか最低限の接触だけで切り抜けられそうで、やれやれ助かった、あとは全力でこの場から立ち去るぞ、とアクセルを踏んだ直後にふらーっと内側に降りてきたカイルと接触していました。事故現場を見たらブレーキを踏むな、全速力でそこから立ち去れ、なんて言ったりしますけどたまにはこういう不運もあります。

 レッド フラッグ出してもいんじゃないかと思うぐらいの事案でコーション周回が長引き214周目/ステージ残り17周でリスタート。ウォーレスは何回リスタートしても危なげなくリードを守ります。プリースはさすがに同じタイヤで3回もリスタートすると賞味期限切れと言う感じで1つしか順位を上げることができません。そのままステージ2はウォーレスが制し、スアレス、ブレイニー、ディロン、プリース、アレックス ボウマン、カーソン ホースバー、シンドリック、バイロン、ラーソンのトップ10でした。
Stage 2 winner:Bubba Wallace

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションでマイケル マクダウルが2輪交換の無謀な勝負。一方ステージ2を11位で終えたベルは左前輪のナットが全く締まっておらず、大慌てで呼び止められました。戻って締め直したのでペナルティーは回避したもののリスタートはリードラップ最後尾です。多くのドライバーは残りのタイヤが3セットとなっており、スティーブ レターテの解説によれば160周弱ある最終ステージでは理論上は3ストップが有利。ただ終盤にコーションが出てももうタイヤ在庫がないのが課題だとしています。3ストップが速いってマジっすか。

 241周目にリスタート、翌周にウォーレス、マクダウル、ディロンの3ワイドの争いが発生して内側からディロンが前に出ました。ディロンはここからむちゃくちゃ飛ばして20周でウォーレスを2秒以上引き離します。これだけペースが違うとなると戦略が違うんじゃないかという気もしますが、SUPER GTだと下手したら1時間ぐらい答えが出ないですがこのレースは10分もすればだいたい答えが分かります(笑)
 280周目あたりから3ストップ作戦のドライバーがピットに入り始め、290周目あたりという2回か3回か分かりにくいタイミングでもピットの繁忙期が続きます。そんな中でリーダーのディロンは動かないのでどうやら2ストップの様子、2位は285周目にブレイニーがウォーレスをかわしており、ウォーレスにはステージ2ほどの勢いが感じられません。
 すると291周目、2位・ブレイニーと3位・ウォーレスが同時にピットに入りますが、ウォーレスはどう見ても左前輪のナットを締める前に出て行きました。クルーチーフからの静止の掛け声もむなしくウォーレスはピット走路上で脱輪しましたが、指示を受けてブリスコーのピットへ立ち寄ると、転がったタイヤもなんか上手いこと自分の車体で止めました。ブリスコー陣営は大慌てで事態を呑み込んでウォーレスの車輪を装着、自分のピット以外で作業したウォーレスにはペナルティーが出ますが、脱輪したまま1周することを思えば被害は最小限です。

  これ、今年のラスベガスでベル陣営が締め損ねたナットをブリスコーのクルーに締めてもらった後に規則で明文化されたもので、ナットが締まっていない、アジャスト レンチや給油缶が刺さったまま、などの安全上の理由であれば他所のクルーに作業してもらっても『ピットボックス外で作業した』という扱いでペナルティーを受けるだけで済むことになっています。明文化は言い換えればいざという時にチームメイトのクルーなどに助けてもらうことを容認するものと言え、今回ウォーレス陣営も苦肉の策で咄嗟に対応しました。前回も今回も締めてあげたのがブリスコー陣営なのがちょっと面白いですが、外れた車輪を車両で偶然受け止めていなければさすがに助けようがなかったので運がよかったと思います。

 ピットの騒動はこれだけでお腹いっぱいなんですけどこの後も騒がしい時間が続き、トラック上ではギブスの左前輪あたりから明らかに火が出ていて「ブレーキが効かない」と言いながらも走行を継続。そのころピットの入り口ではベルがコミットメント ラインを踏んでピットに入ってしまったのでペナルティーを受け、リッチモンド3連続速度違反に続いて今回はコミットメントライン バイオーレーションでペナルティー。理由は違えど不名誉な連続ペナルティー記録継続です^^;

 ピットが騒がしすぎて素通りになっていましたが、優勝争いはと言うとディロンはブレイニーの翌周にピットに入りましたがアンダーカットされました。これでブレイニーが実質1位ですが、ディロンはコツコツと追い上げて行き329周目にはテール トゥー ノーズ。ただタイヤの履歴差は1周だけなのでブレイニーもここから粘り、今日のレースでなかなか無い好バトルとなりました。10周以上にわたって並走、その間にはタイヤの新しい周回遅れが抜いてくるので非常に厄介でしたが、340周目にようやくディロンが前に出ました。ところが出たと思った矢先にすぐアンダーカット阻止のためディロンが先にピットに入りました。あと60周もありますけど大丈夫ですか?

 こうなるとちょっと履歴差を作ってから動くのが得策のブレイニー、「右リアのグリップがもう無えよ!」とキレながらディロンの4周後・345周目にタイヤを換えました。ピットを出たらディロンとの差は約7.7秒で残りは50周ちょっとです。さあディロン、去年ここに落としてきたモノをいよいよ取り返す時が来たか!
 しかしブレイニーは毎周0.2秒ほど速いペースで追い上げて残り40周でディロンとの差は4.6秒。これが10周後には3.4秒差となります。割り算するとこの10周では1周あたり0.12秒しか追いついていないのでちょっと鈍ったか?と思ったらやはりその通りで両者の差は平行線になっていき、やがて拡大に転じました。どうやら最初に飛ばしすぎたブレイニー、一気にペースが落ちて残り16周でボウマンに抜かれて3位に後退。ディロンとボウマンの差は3.6秒で、さすがにこれは追いつきそうにありません。あとは誰かが残り2周で事故らなければ、と誰もが思うでしょう。もしまた起きたらさすがにリチャード チルドレスがブチ切れてすぐにピットに殴り込みに来そう(笑)

 チルドレス御大にぶん殴られるのは嫌なので(?)今年は何も起きずにそのままホワイト フラッグ。

「昨年のリッチモンドは物議を醸しました。ジョーイロガーノと接触、デニーハムリンと接触。今年は誰とも接触しませんでした!オースティンディロンがプレイオフ進出!」

 非常にベタなんですけどディフィーの実況ってなんか言い回しとテンポと声がすごくいいんですよねえ。というわけで今年は誰にもぶつかることなくディロンがリッチモンドで2年連続の優勝。レース後車検も無事に通過してプレイオフ進出を決めました。今季スチュワート-ハース レーシングから加入してきて新たにクルーチーフとなったリチャード ボズウェルは移籍後初優勝です。昨年はブリスコーのクルーチーフとして第26戦ダーリントンで優勝しており、彼にとってカップシリーズ通算2勝目&2年連続で土壇場でドライバーがプレイオフに滑り込む『持ってる』男です。

ーオースティン ディロン、プレイオフへようこそ。昨年の展開を考えると、満員の観客の前で正しい形で勝利を収めて戻ってきたというのは、あなたにとってどれほど重要でしたか?

「いやもう最高だよ。神様に感謝したい。本当に勝ちたかったんだ。去年はその過程を経験するだけで本当に辛かった。でも今年は最高だよ。ああ、リッチモンドが大好きさ。ウィンチェスター バス プロ ショップスのシボレーは本当にいい車だよ。この1週間は振り回されていた、体調があまり良くなかったんだ。実はここ2週間、肋骨を骨折しながらレースに出場しているんだ。ああ、最高だった。」

ーこのチーム、そしてRCRの組織全体が経験したすべての感情、1年間待った甲斐があったと思いますか?

「もちろんさ。神にはタイミングがある、そのタイミングが最高のタイミングだった。妻と子供たちがここに来て一緒に祝ってくれるのが本当に素晴らしい。本当に嬉しいよ。父はレース前に一緒に祈ってくれた。狩猟場で餌場を作ってくれていた。本当に特別なことだ。これらすべてが私にとって大きな意味を持っている。祖父は浮き沈みの多い私を信じてくれて、本当に感謝している。この3番の車のドライバーを交代するのは簡単だったかもしれない。今日は本当に最高の気分さ。」
※ディロンのお家には農業やら狩猟やらが出来る広大な土地を持っている

ーこの場所の何があなたを生き生きとさせるのですか?

「タイヤ マネージメントだね。ハイグリップになるとこの手のトラックではおそらく私が一番遅くなってしまう。しかしこういった場所で丁寧に管理することに関しては、私は上位を争うことができるんだ。」

ーRCRのために仕事をするというのはどういった心境でしょう?最後の数周は会社全体の重荷を背負っていると感じましたか?

「本当に大好きだよ。ノースカロライナへようこそ。線路を渡れば、皆が一人のために、一人が皆のためになる。祖父と家族のために運転できることに本当に興奮しているんだ。」
※RCRのショップは西隣に鉄道の線路が通っており、踏切を横断して敷地に入る



 ディロンが肋骨を折った原因はレース後の優勝記者会見で明かされ、アイオワのレース前の話で、狩猟の準備をして道具を取ろうとしたら梯子から落っこちて、固い箱の上に体を強打して折れてしまったそうです、レース関係ないんかい。ディロンはカップシリーズの今シーズン14人目の勝者で、ポイントでプレイオフに進出できる枠はあと2となってレギュラーシーズン最終戦となります。
 そのプレイオフ順位で当落線上の16位なのがボウマンですが、このレースを2位で終えました。勝てれば最高でしたがポイントで競っていたクリス ブッシャーとプリースが下位に沈んだため大きな成果となり、ポイント17位のブッシャーとは60点差があります。1レースで獲得できる最大の点数は61点ですが、それはイコール優勝ですので17位以下のドライバーが勝たない限りポイント枠で生き残ることは確定しました。ポイント15位のレディックがクラッシュで撃沈したので、上との差も29点で追いつく可能性もあります。
 
 レース結果に戻ると3位からブレイニー、ロガーノ、シンドリックとチーム ペンスキーが並び6位にラーソン。7位は結果としてレディックを破壊したスアレス、8位ベリー、9位ケゼロウスキー、10位にハムリンでした。レギュラーシーズンチャンピオン争いで1位のバイロンはこのレース12位でしたが、追いかけるチェイスが撃沈したため最終戦を待たずしてレギュラーシーズンのチャンピオンが確定しました。

 14位にはシェイン バン ギスバーゲン、ロードコースで無双するおじさんはレース中に独自の大外ラインを走って前の車をかわすなどオーバルの戦い方を色々と研究している様子が見てとれ、マネージメントが必要なこのレースで今季のオーバルではシャーロットと並ぶ自己最高位を記録しました。なおカップシリーズのオーバル最上位は昨年のマーティンズビルでの12位です。
 一方でちょっと惜しかったのはホースバー、最終ステージを5列目からリスタートするとタイヤがもたないので開き直って3ストップ作戦に挑戦。ところが1回目のピット時に上手く減速できずピットに入り損ねるドライバー側の失敗があると、2回目・3回目はいずれもタイヤ交換作業でクルー側にも失敗。3ストップで3回全部失敗するという逆にすごい結果になって15位止まりでした。


 いやあ、ディロンですよ。彼がリッチモンドでなぜか速いのは感じていましたが、今年もこれだけ見事に決めてくるなんて、さすがに都合がよすぎて期待はあっても予想はできませんでした。彼自身がレース後のインタビューで「グリップが高いところだと遅いけどこういう場所だと速い」「祖父が自分をクビにするのは簡単だったはず」と、えらく達観してモノを見て、しかもそれをここで言ってしまうんだから驚きました。
 数字を見ると彼がタイヤ猛烈消耗レースで強いことは確認可能で、通算で平均順位が良いトラックは上から順にホームステッド、フォンタナ、アイオワ、リッチモンド、ダーリントンの順。アイオワは2回しか開催されていないので参考になりにくいですが、ホームステッド、リッチモンド、ダーリントンはシリーズ屈指のタイヤ鬼消耗トラックベスト3です。ロング ランでペースが落ちにくい走りができる、あるいはそういうセッティングをチームは得意とするけど、高いグリップで車高を維持してできるだけ車を動かさずにダウンフォースを発生させるような場所は苦手、という傾向が想像できます。
 それがディロンの走らせ方に、たとえばタイヤに適正な荷重を乗せきれないといった課題があることの裏返しなのか、RCRのエンジニア力の問題なのか、複合要因なのかは難しいところですが、「リッチモンドではやったる!」という気持ちはすごく入っていたんだろうと思うます。それゆえにわりとしょうもない理由で骨折して痛い、というのは自分に腹が立ったろうし、レースまでは穏やかではなかったろうと思いますがよく勝ちきりました。
 ポイントで言えば25位、ギスバーゲンより下にいるディロンはプレイオフで泡まつ候補と考えられてしまいますが、最初のラウンドには鬼消耗レースのダーリントンがありますから安易に脱落と決めてしまうのは早計だろうなと思っています。いや、こういうこと書いたらだいたいディロンはあかんねんな・・・(笑)

 事前に懸念された今回の『ウルトラ ソフト』なタイヤと在庫設定、なんというか2スペック制を採用せずとも実質的にそういう意味合いをもたせるような設定だったので、これは戦略的で面白かったと思う人と、在庫を見ながらレースするとかNASCARちゃうよ、と思う人ではっきり分かれそうな内容でしたね。コーション連発で在庫切れする事態にはならなかったので終わってみればそこまで大きな問題にはなっていないですが、来年はどうするんでしょうか。エンジン出力を上げるならさすがにタイヤがもたなさすぎる気はします^^;

 さあ、次戦はいよいよレギュラーシーズン最終戦・ガラポンデイトナです。次戦も土曜日夜の開催なのでお間違いなく!

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
前に書いていたプライベートブログの移転が済んだものの、その間パソコンを預けていたので、レースを観るのは厳しいと思ったんですが、何とか、間に合いました。ディロンが勝つと思った人は、皆無とは言わないにしても、万馬券並みじゃなかったんじゃないでしょうか。内容的にも、ディロンは勝つべきして買った内容で、去年の汚名を返上した形。フィニッシュでの実況には、腹を抱えて笑いました。何気にペンスキー3台が上位フィニッシュ。あまりにタイヤに厳しすぎるレースで、面白いと言って良いのか、微妙なところはありました。23Ⅺは、レディックは不運、ウォレスは不注意すぎで優勝争いから脱落。ディロンのプレーオフでの活躍をあれこれ予想するのは、懐かしい気がしますね。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 あの実況は笑うところだったんですか(笑)ペンスキーはベリーも含めると4人全員トップ10で強さがありましたけどディロンが異常な速さでした。クルーチーフの「最初の2周は丁寧に走れ」の助言とかも的確でしたし、なんかここだけ別世界みたいに自信あったんでしょうね。
 ディロンは泡沫候補扱いしてると急に1ヶ月ぐらい覚醒してまたすぐもとに戻ったりするので、すごく予想しにくい選手だと思います。全く才能が無い人は逆立ちしても勝てないですから能力はあるはずなんですけど、何が足りないのやら・・・