NASCAR 第23戦 アイオワ

NASCAR Cup Series
Iowa Corn 350 Powered by Ethanol
Iowa Speedway 0.875miles×350Laps(70/140/140)=306.25miles
winner:William Byron(Hendrick Motorsports/Raptor Chevrolet Camaro ZL1)

 NASCAR カップ シリーズ、レギュラー シーズンは残り4戦。8月最初のレースとなる第23戦はアイオワ、カップシリーズは昨年初開催されたばかり、2006年開場の比較的新しいトラックです。1周が0.875マイルという実に中途半端な距離、ターンのバンク角が12~14°、フロントストレッチにも10°あり、バンク角の高いショート トラックです。先週のインディ依ナポリスはバンク角が9.2°しかありませんでしたのでこっちの方が高バンクですね。1周0.75マイルのリッチモンド レースウェイを一回り大きくした雰囲気で、これはリッチモンドで通算6勝を挙げたラスティー ウォーレスが設計に携わったことと関係しています。
 昨年カップシリーズ初開催にあたって路面を再舗装しましたが、NASCARとするとできれば古びた舗装はそのまま直さず使いたいと思っていました。結局そのままではダメだということで再舗装したものの、全域ではなくおおよそターンの内側半分だけ再舗装したので外側は古い舗装が残っています。昨年のレースではタイヤへの攻撃性がけっこう高かったようで、エクスフィニティー シリーズ、カップシリーズともタイヤが壊れるドライバーが相次ぎました。トラックの形状としてバックストレッチの僅かな時間を除きほとんどステアリングを左に切りっぱなしなので、右側のタイヤには負荷がかかり続けるのが大きな課題です。A.J.アルメンディンガーは昨年エクスフィニティー、カップと連続でタイヤが壊れてリタイアする憂き目に遭っていました。
 一方で親戚のリッチモンドはタイヤの性能劣化が非常に激しくてみるみるうちにペースが落ちて行き、ステージ中に2回タイヤ交換した方が速いという特異な性質で知られていますが、アイオワは旋回半径が少し大きいせいかタイムの落ち幅自体はそこまで酷くありませんでした。大外のラインは舗装が古くて追い抜きにはあまり使えないので、昨年のレースを見た限りではタイヤの履歴差があるからと言ってリッチモンドほどバカスカ抜いて行けるわけではなさそうです。ただロング ランでいかにペースを落とさず走れるか、というのが重要なのは変わりません。

・ちょっとしたデータ

 2回目なので特にデータもないですが、昨年のレースはライアン ブレイニーが優勝。カイル ラーソンも速さを見せていました。カップシリーズでのここ14回のレースではラーソンとデニー ハムリンがそれぞれ4勝、ブレイニーが3勝と大半をこの3人で制しており、ハムリンは直近のショートトラック5戦が全て5位以内。最後にトップ5を逃したのが去年のアイオワで、セッティングをミスったのか異様に遅く、コーション運で順位を挽回したと思ったらラーソンのクラッシュに巻き込まれて撃沈しました。
 また、アイオワは6月にグッドイヤーがタイヤのテストを行っており、各自動車メーカーを代表してカイル ブッシュ、オースティン シンドリック、チェイス ブリスコーが参加。この時の経験をもとにグッドイヤーは左右とも新たなタイヤを持ち込みました。データは各チームで共有され、テストの際は誰がどのタイヤを履いているのか伝えないはずなので公平性が担保されているとされてはいるものの、当該チームとドライバーには多少の利益がある可能性が考えられます。

・レース前の話題

 FOXスポーツの親会社であるFOXコーポレーションが、ペンスキー エンタテインメントの株式の33%を取得したことが発表されました。ペンスキーエンタはロジャー ペンスキーが主導するペンスキー グループの1つであり、NTT インディーカー シリーズやインディアナポリス モーター スピードウェイなどを有しています。同時にFOXはインディーカーシリーズの放映権契約延長も行いました(当たり前)。
 今年からインディーカー中継を行っているFOX、インディアナポリス 500の視聴者数は前年を4割上回る701万人を記録するなどシリーズ全体の視聴者数が多少は増加しており、ペンスキーエンタへの出資を通じてさらなる経営効果を見込んでいるようです。取引額は非公表ですが関係筋によれば150億円以上の大型取引のようです。ペンスキーエンタとチーム ペンスキーはグループ内の別の会社なのでNASCARとは直接関係がありませんが、間接的に参戦チームと放送局が利害関係者になっていますので公平性に疑念が起きるようなことは無いようにしていただきたいですね。

 次は来年の日程のお話、ジ アスレティックが関係者の話として来シーズンはメキシコシティーでのレースが開催されない見込みだと報じました。来年はFIFAワールドカップが開催されることからメキシコで開催する日程上の制約が大きく、代替の日程を確保できないため2027年の開催に目を向けたとしています。代わってシカゴランド スピードウェイでレースが開催されると伝えています。

 最後に1つ心配なニュース、クラフツマン トラック シリーズのスチュワート フリーズンが母国カナダ・オートドローム ドラモンドでのダート モディファイド レースに参戦したところ大クラッシュ。壁に衝突して出火しながら横転した後にさらに他車にも衝突されて車両が大破しました。骨盤骨折と下肢の複雑骨折により重傷を負ったフリーズン、ケベック州の病院に搬送されて数日を過ごした後にアメリカに戻り、8月1日に数時間に及ぶ手術を受けました。現在回復には向かっているということですが、かなり時間がかかりそうです。

・ARCA Menards Series Atlas 150

 元々予定されていた2回を含めて計8回のコーションが出たARCA メナーズ シリーズ。ポールシッターのブレント クルーズと2位スタート・ブレンダン クイーンがずっと優勝争いしていましたが、3回目のリスタート以降はクイーンが優勢。レース終盤に周回遅れに引っかかったタイミングで追いつかれて軽くクルーズに接触されたものの踏ん張ってそのまま逃げ切り、"バタービーン"クイーンが今季5勝目を挙げました。

・Xfinity Series Hy-Vee Perks 250

 ステージ2以降ロス チャステインが優勝に向かって非常に良い走りを見せていましたが、残り49周で6回目のコーションが発生するとレースの状況が一変。作戦がバラけたことでその後は大混戦となり、結局は残り17周で迎えたリスタートで上手く抜け出したサム メイヤーがそのまま逃げ切ることに成功。今季初勝利を挙げ、これがハース ファクトリー レーシングとしても初勝利となりました。メイヤーは昨年に続いてアイオワ2連勝です。

 チャステインは3位、4連勝を狙ったコナー ジリッチは4位でした。また、このレースを前に突然コウリッグ レーシングがジョッシュ ウイリアムズと契約を解消すると発表され、代わって出場したカーソン ホースバーが6位に入りました。前戦での危険行為により出場停止となったオースティン ヒルの代役としてオースティン ディロンが出場しましたが、開始早々2周目にミスったライアン シーグに当てられる不運もあり14位でした。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュ ライト ポール賞はなんとまたチェイス ブリスコーでした、今季6度目。2位からウイリアム バイロン、ラーソン、シンドリック、ブラッド ケゼロウスキー、ブレイニー、ホースバー、チェイス エリオット、アルメンディンガー、ジャスティン ヘイリーのトップ10。ハムリンは練習走行で壁にぶつけたそうですが予選は11位、カイルも練習でクラッシュして予選を走れず記録無し、後方スタートとなります。

・ステージ1

 スタートで先行したのはバイロン。ブリスコーはタイヤ内圧を低めにしているのか寝起きが悪くあっという間に4位まで後退し、落ち着くまでに7周ほどかかっていました。昨年のブレイニーも寝起きの悪い車で優勝しているので、こうしたセッティング特性は頭の片隅に入れておきます。
 レース序盤は無風でしたが35周目あたりでバイロンが周回遅れのノア グレッグソンを全く抜けずに詰まってしまい、次第にトラック上は上位6人ほどと周回遅れ数名による大渋滞が発生。2位のケゼロウスキーがこの隙に抜いてやろうと何度も並びにかかりますが、バイロンは「ロング ランで曲がらん!」と無線で吠えつつ必死に耐えていました。しかしブレーキの感触もあまりよろしくないようで、ステージ残り3周で根負けしたようにラインを外れてしまいケゼロウスキーにかわされました。ベテランが粘り勝ちでステージ1を制し、シンドリック、バイロン、ブレイニー、ブリスコー、ラーソン、ホースバー、チェイス、アルメンディンガー、ヘイリーのトップ10。予選順位とそんなに変わらないですね。

・ステージ2

 ステージ間コーションで全者ピットへ、ケゼロウスキー陣営は作業に時間がかかってしまい、ブリスコー、バイロン、ブレイニー、ケゼロウスキーの順でピットを出たので1列目はスタート時点に戻りましたね。このピットではアレックス ボウマン、ライアン プリースが速度違反。アイオワはピット出口付近で道が少し左に曲がっており、内側を走ると違反しやすくなる構造です。みんなピット前に注意はされていたと思うんですがやっぱりやってしまいますね。

 リスタートではバイロンが出遅れてしまい、ブリスコーは最初の3周ぐらい動きが鈍そうでしたが後ろが争ってくれたことでリードを維持、自分の流れに持ち込みます。2位はブレイニー、3位はバイロンとケゼロウスキーがしばしさっきのバトルの続きを展開し、ケゼロウスキーが今回も前に出ました。
 リーダー争いは快走するブリスコーにブレイニーが接近、ブレイニーはステージ1でチャタリングがあり、これが解消されたという情報なのでさっきは本調子ではなかった模様。ここからしばらくブリスコーとブレイニーの追いかけっこが続きました。ショートトラックとはいえ速度域が高いので後方乱気流の影響をそこそこ受けてしまうで抜くのが簡単ではありません。すると131周目、周回遅れも絡む中でブレイニーが少しラインを外れてしまい、その隙を見逃さず3位のケゼロウスキーが2位浮上。ちょうどリーダーのブリスコーの前にいる周回遅れはケゼロウスキーの部下・プリースなので、RFKレーシングは非常に良い状態です(え)

 140周目あたりからステージの中間地点ということでピットに入る選手が出始めますが、上位勢は昨年と同様にあまり早くは動かない戦略。最初に動いたのはリーダーのブリスコーで155周目/ステージ85周目でした。しかしケゼロウスキーはまだまだ引っ張っており燃料が無くなるまで走りそうな雰囲気。もし170周あたりまで引っ張ると、この後ステージ間コーションをステイアウトして残り1ピットで走り切ることが可能になります。プリースが相変わらずリードラップ最後尾で粘っているのでケゼロウスキーからすると部下に行く手を阻まれてるんですが、170周目にシェイン バン ギスバーゲンが単独スピンしてしまい、既にピットに入った人が最も恐れていたコーションが発生しました。我慢した人大正解。
 大正解のみなさんはもちろんピットへ、しかしRFKのクルーはまた共同オーナーを先頭で送り出すことができず、ブレイニーが先にピットを出て行きました。多くのドライバーは既にアンダー グリーンでピットに入って周回遅れになっていたのでウエイブ アラウンドでリード ラップに復帰、さっきまでリーダーだったブリスコーは9列目リスタートとかなり下がってしまいました。
 177周目にリスタートしブレイニーとケゼロウスキーによる激しい争いが展開されましたが、3周後にコディー ウェアーのスピンでコーション。さっきウエイブアラウンドした人たちはこのコーションでピットに入れるので一息つくことができ、作戦の大きな差もとりあえず無くなります。

 186周目/ステージ残り25周でリスタート、2周ほどかけてケゼロウスキーがブレイニーをかわしました。スポッターも「クリアクリアクリアクリアクリア!」と前に出た瞬間に超絶早口。そのまま後続を大きく引き離していきましたが、203周目にタイ ディロンがクラッシュしてコーション発生。内側にいたトッド ギリランドが流れてきて当てられており、ちょうど前日のエクスフィニティーで兄が当てられたのと似た状況でした。

 このコーションで上位勢はステイアウトしますが中団は新しいタイヤを求めてピットへ。209周目/ステージ残り2周で短距離戦のリスタートとなりケゼロウスキーはとっとと逃亡してステージ2も制しました。ブレイニー、シンドリック、ギブスと続き、このリスタートで8位から一気に順位を上げたカイルが5位。ジョッシュ ベリー、ボウマン、エリック ジョーンズ、プリース、兄.ディロンのトップ10でした。
 また186周目と209周目、この2回のリスタートではいずれもラーソンとチェイスが接触、今回はラーソンがスピン寸前でした、いいぞもっとやれ(笑)混戦なので仕方ないですけどこの2人は時々険悪なぐらいやり合うことありますよね。またホースバーも接触でスピンしましたが、リスタート直後で後続がおらず自走できそうだったので運営はコーションを出しませんでした。これは良い判断だったと思いますね。
もしラーソンが回っていたら後続は・・・^^;

・ファイナル ステージ

 ステージ間コーションではほとんど誰もピットに入らず220周目にリスタートしてケゼロウスキーが今回も圧倒しますが、翌周にハムリンがスピンしてコーション。どう考えても無理な4ワイドの真ん中でターン3に入り、勢いがありすぎて自分から外に流れて回りました。ハムリン、本日は非常に不調です。このコーションでまた中団~後方の人がピットへ。残り120周以上ありますがコーションが連発するとひょっとしたら最後まで行けるかもしれないので、ここで入った人の存在は頭の片隅に入れておくことにします。その筆頭はブリスコーですが、レース冒頭には出足が悪いけど距離を走ったら速いかもしれない人としても頭の片隅に入れたので、なんというかお気に入り登録した商品ページをさらにブックマーク登録したような状態でしょうか(謎)

 228周目にリスタートするも翌周にゼイン スミスがミスったホースバーにぶつけられてクラッシュしコーション、するとここでリーダーのケゼロウスキーがピットに入る選択をします。ここから先は基本的にレースを走り切れる燃料があると考えたらピットへ、まだだと思うならステイアウト、という考えになるので、ブレイニー以下の多くはまだちょっと早いと考えたことになります。グリーンだと航続距離はだいたい90マイル=105周ぐらいが基準かなあと思いますので、残り120周弱というのはまだコーション頼みの距離です。
 これで236周目のリスタートはブレイニー/シンドリックの1列目。ブレイニーが抜け出した、と思ったらシンドリックの逆襲が始まってチームメイトでのリーダー争いとなります。これをブレイニーが振り払ってリーダーの座を安泰にしましたが、ほどなく243周目にジョーンズがブリスコーに当てられてスピン。この2人の真後ろにケゼロウスキーがいて危うく巻き込まれるところでしたがなんとか回避しました。ブリスコーとケゼロウスキーはそれぞれ早めにピットを決断した戦略のトップ2でもありますから彼らの順位は常に見て観戦するのがポイントです。この辺が把握できないとレースがわけわからなくなりますので、NASCAR観戦は意外と頭を使います(笑)

 ここでブレイニー、ギブス、プリースといったところはピットに入りましたがシンドリックはステイアウト。基本的に決断が遅い人ほどリスタートで後ろに回っていくことになり、その代わりタイヤと燃料の条件が良くなっていきます。燃料ベースの話が主流になってはいますが、長距離を走ったタイヤはステージ2の映像を見てもコード部分が露出してかなりボロボロになっているものもあったので、燃料さえ足りればヨシ!という単純な話でもなさそうです。それと、リスタートとコーションを繰り返すとタイヤが発熱と冷却を繰り返し、細かい傷が付きやすい低いタイヤ内圧で走り始めてこの膨張/収縮を繰り返すと、その課程で穴が開いてバーストしやすいというリスクも多少あると思われます。

 250周目にリスタート、シンドリックがリードしていましたがそこらじゅうでえらくハゲしい争いが展開され、3周後に多重事故発生。3ワイドの内側に飛び込んだブリスコーが滑って外側にいたレディックとベルをまとめてやっつけました、「1000%俺のミス、すまん。」とブリスコー。背後にいたケゼロウスキーはこの事故も回避、今日は流れが来ている気がする。そしてブリスコーはこれで既にトヨタのドライバーばっかり3人倒しましたけど本人はいたって無事です(笑)
※決してチャステインが犯人ではない

 なんとなく給油のタイミングを逸した感のある上位勢は引き続いてステイアウトし261周目にリスタートしますがこれまた3周後にギスバーゲンがスピン。カイルにかるーく当てられたようですが、えーっとこれでコーション何回目?10回目だそうです。このコーションでようやくシンドリックもピットに入りますが、チェイス、ベリー、バイロンの3人がなおステイアウト。最後まで走る燃料は無いとみられ、今さら中途半端にピットに入っても順位が下がるだけなのでタイヤ履歴差勝負、あるいは自分たち以外にもタイヤを求めて多数がピットに入りそうなタイミングのコーション待ちでしょうか。

 269周目にリスタート、今度こそ綺麗に流れる、と思ったらタイディロンがターン4でラーソンに押されてスピン。ラーソンは接触だらけのレース展開にかなり苛立っていたので「やったぞ!」と無線でヤケクソ状態です。続いて277周目のリスタートではバイロンがチェイスをかわしてリード。このあたりになると解説のスティーブ レターテはバイロンについて「燃料が足りるかはかなり微妙だけどひょっとしたら行けるかも」と位置づけています。最後に給油したのは206周目で144周=125マイル走る必要がありますからかなりのコーション走行が必要にはなりますが、そんなバイロンに味方をするようにリスタート4周後にまたもやコーション。今回は誰かの事故では無くギリランド車の窓が外れて落下していました、おいおい。

 ここでチェイスなど燃料足りない組はピットへ、調べたら彼の最後の給油は3回目のコーションの際でした。なお入らないのはバイロンとボウマン、ボウマンはステージ2終了後にピットに入った数少ないドライバーでした、バイロンよりちょっとだけ多く燃料を持っています。287周目にリスタート、引き続きバイロンがリードして2番手には2列目からブリスコーが浮上。ケゼロウスキーはちょっと出遅れてしまい、代わりにプリースが3位となっています。プリース、ステージ2中盤は周回遅れ寸前でしたがあの時ケゼロウスキーオーナー様を妨げてまでリードラップで粘ったことが今に活きています。
 ミシガンと先週のインディアナポリスでいずれも燃料ギャンブルに負けてガス欠しているバイロン、今日こそは勝ちたいですがブリスコーが迫ってきます。さらに部下から3位を取り返したケゼロウスキーも少しずつ差を縮めてきており、燃料とタイヤの条件ならこの3人で最良。残りが30周を切っても全く勝者が読めません。

 残り15周、周回遅れが複数現れる中でバイロンよりもブリスコーが引っかかってしまい、バイロンから1秒ほど離されました。こうなるとバイロンは逃げるよりもとにかく1秒差を活かして今のうちに徹底的な燃費走行です。残り10周でもブリスコーは1.4秒差と追いついて来ないので、バイロンは直線でスロットルを半分しか踏まず一気に燃費を改善、無線で後ろとの差が大きいことを再三伝えられています。そして3位のケゼロウスキーもブリスコーを抜けそうで抜けず、ここで争うからバイロンはさらに楽になっていきます。こ、これなら足りるかも。

 残り5周、バイロンのクルーはピットでお祈りモード。気づいたら4位のブレイニーが1周0.5秒以上速いペースで猛追しており、下手したらこの人が全部持っていくんじゃないかと思いましたが、ちょっとケゼロウスキー先輩に遠慮したのか一発でさばけずブリスコー渋滞の仲間入り。バイロンは1.3秒差を減らすこともなくとうとうホワイト フラッグを受け、背後に周回遅れのギスバーゲンを従えてそのまま350周目を走り切りチェッカーを受けました。開幕戦デイトナ500以来優勝が無く、トップ5フィニッシュも第14戦ナッシュビルを最後に無いプチ不調が続ていましたが、久しぶりの今季2勝目・通算15勝目です。ドライバー選手権1位も取り戻しました。万が一ガス欠したらギスバーゲンが押してくれたんだろうか、とか考えたり。

 燃料まだあるんかい!とみんなが突っ込むお約束。マーティー スナイダーからも今年2度燃費レースで敗れたことを聞かれ、

「今回の燃費はすごかったよね?燃費に関してはこれまでもうまくいかないことがたくさんあったけどルディー(クルーチーフ:ルディー フューグル)をはじめ、チームメイト、ここにいるエンジニア、ショップにいるエンジニア全員に本当に感謝している。このレース チーム全体で今年は本当に多くのことを経験した。成長痛もたくさんあったし、私たちにとっても大変だった。でも、今日は勝利できて本当に嬉しいよ。正直、車は良い感じだったのでとにかくレースを頑張って最後までそこにいようと努力した。そして最終的にそこにいられたんだ。幸運なことに燃料は最後まで十分に残っていた。でも、ちょうどそこで燃料切れになったみたいだから車を停めたんだ(笑)ラプター、シボレー、ミスター ヘンドリック、皆さん、リレイ、リバティー、みんなに感謝しているよ。」

 フューグルはここ最近、勝利に対して「必死さ」というのをよく口にしていたそうで、そんな中でのここ数か月のチームの雰囲気については

「お互いへの信頼は揺るがなかったよ。スピードはかつてないほど向上していると思う。それが自信を保っている大きな理由さ。毎週僕らは一緒に一生懸命練習し、準備万端で速く走ってきた。そして、たった一つでも僕らの思い通りの展開になればいいと思っていて、今日はそれが叶ったんだ。」

 ちなみに『リレイ』はスポンサーのリレイ ペイメンツ。物流関係の支払いをデジタル技術を通じて円滑に行うプラットフォームを提供する企業だそうで、遡れる範囲では2年前からバイロンのスポンサーになっています。稀にメインのスポンサーになっていますがまだリレイのスキームでの優勝はありません。でもリレイのサイトを見たらバイロンを応援するページがあって壁紙とかダウンロードできるっぽいのでバイロンのファンの方は必見です。


 2位はレース後もまず謝罪から話を始めたブリスコー。3位ケゼロウスキー、4位ブレイニー、5位プリースでした。それぞれ状況は違いますがみんなコーションのタイミングに絡んだ運・不運を言葉にしていたようです。6位からウォーレス、ボウマン、ホースバー、ジョーイ ロガーノ、オースティンディロンのトップ10でした。チェイスは14位、カイルは20位、ハムリン24位、ラーソンは28位でした。コーションが多すぎて最終的にリードラップでチェッカーを受けた人が30人もいました。
 6位のウォーレスはまさにこの荒れた展開を象徴する存在となり、最終ステージに接触だらけで修理のため一時2周遅れになっていましたが、連続フリー パスでリードラップに戻り、燃料とタイヤに余力じゅうぶんの車で猛烈に順位を上げての6位でした。日欧のレースじゃありえないでしょうね(笑)


 今回はレースの中盤までケゼロウスキーの期待大、最終ステージに入って戦略がばらけて行く中でも私はケゼロウスキー優位を見ていましたが、まさかいつピットに入ったかもよく分からないバイロンが最後まで走り切ってしまうとは想像もしていませんでした。結果論ですがギリランドの車から窓が外れた12回目のコーションが無ければさすがにバイロンの燃料が尽きたと思うので、優勝賞金のうち1万ドルはギリランドが希望する慈善団体に寄付したら良いんじゃないかと思います(笑)
 バイロンは144周を走りましたが、この144周のうちコーション周回だったのはおよそ1/3にあたる約50周もありました。グリーンで走ったのが95周ほど、情報源によってまちまちですがコーション中は燃料消費量が1/2~1/5ほどになるとされるので、50周のコーション周回はグリーン中に換算すると10~25周分ぐらいに相当します。足し算したらだいたい105~120周分ぐらいになりますから、ギリギリだったのは間違いないしコーションが1回少なかったら大惨事だったはずです。
 ケゼロウスキーが勝って新たな勝者が生まれた方がより面白かったしオーナー兼ドライバーに頑張ってもらいたいと思うので惜しかったなあ、というのが私の率直な感想でしたが、思い切った戦略で勝利を手繰り寄せたバイロンとヘンドリックの決断力と幸運には脱帽です。ここのところ結果が出ずに『このままプレイオフに突入して大丈夫?』というのは周囲も本人たちも感じていたと思いますが、オールラウンダーの怖いドライバーが戻ってきました。
 
 それにしてもアイオワ、昨年新たに日程に加えられた際には『モントリオールでの開催契約がまとまらなかったから代替策として用意されていた』と報じられており、NASCAR的にはあくまで保険的な扱いなんだと思いますが去年も今年もお客さんがたくさん入っておりレースも白熱。カレンダー落ちするのはあまりにも勿体ない存在です。報道ではモントリオールは来年にエクスフィニティーとトラックが、再来年からカップが開催されるのではないかとされており、じゃあどこが代わりに無くなるんだ?という話ですが、同じロード コースのオースティンじゃないか、いやダーリントンの2回開催のうちの1回だ、という名前も挙がっており、必ずしもアイオワが短命とは限らないようです。個人的にもアイオワはかなり気に入っています。

 さて、次戦はレギュラーシーズン最後のロード コース戦となるワトキンスグレンです。その翌週はアイオワとよく似たリッチモンド、そしてレギュラーシーズン最終戦はガラポンのデイトナです(笑)

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
僕は、はっきり「推し」を書く性分なので(笑)、ブッシュ兄弟、AJ、そしてケセロウスキーであったので、今回はケセロウスキーでした。NASCAR観戦を始めたのも、ケーブルテレビと契約した2012年以降なので、2013年シーズンからになります。誰を応援しようかと考えた時に、前年度のチャンピオンと言うことで最初の推しに。そしてブッシュ兄弟、永久追放問題でAJが加わりました。ロガーノはフォンタナでのハムリン絡み、スチュワートとの乱闘で嫌いになりました。アイオワはインディでよく観ていて、カップ戦に入らないかな、とずっと思っていたので、このまま続いてほしいなと思っています。FOXかNBCかの記憶はありませんが、最終ピットを表示してくれたら・・・と思ったので、それが残念。フューエルウィンドウは、オーソドックスな1.5マイルが、60周前後なので、100周くらいかなぁと勝手に推測。アイオワは一時はインディ、エクスフィニティも撤退したので、残念だな・・・と思っていたんで、復帰して嬉しいな、と思っているところです。チェイスが2016年、バイロンとボウマンが2018年からヘンドリックからフル参戦。ベテランの多かったヘンドリックも世代交代・・・したものの、バイロンも27歳と若いとは言え、結構な古株に。ラーソンがジョンソンの後釜になってから5年目、今の4人体制が続いてるって、過去のヘンドリックにはない安定感ですね。「推し」ではないとは言え、もう少し頑張ってほしい気がします。プレーオフ進出は最低条件でしょう。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 今ヘンドリックの中で立場が不安定なのはボウマンだけ、彼ですら地味ながらトップ10フィニッシュ回数は全体2番手で決して悪いわけでもなく、ヘンドリックの4台目は・・・と言われたのはもう過去の話ですね。でもボウマンは優勝者が増えてだんだんプレイオフ争いの当落線に近づいてるので正念場に思えます、一応契約は来年まであるけど(笑)
アールグレイ さんの投稿…
フリーズンのクラッシュ、本当に命が助かっただけでも良かったというレベルですね。
退院して自宅に戻った画像を見ても、首を固定しているあたり復帰には時間もかかりそうです。
トニーやボウマンの様に、他のダートレースに出て負傷してカップシリーズを欠場してしまう事はありましたが、フリーズンはダートのスペシャリストからトラックシリーズにフル参戦を始めたドライバーの様なのでちょっとショックは自分としても大きいです。

バイロンはやっと燃費レースでも勝てたことが更に成長に繋がると思いますし、何かHMSの勝利自体も久しぶりのような感じがします。
バイロンのスポンサーはデュポンの塗装事業部門が買収されて独立したアクサルタかリバティ大学のイメージですが、最近はアクサルタのブランドでもあるラプターも多い感じがあります。
ラプターのスキームは毎年(何年か前のグレー一色は最高でした)格好良いとは思いますが、ゴードン時代からのファイヤースキームが見られる機会が減ったのが少し残念です。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ダートスプリントカーってインディーカーと同等レベルに危険な競技な気がするし、逆から言うとNASCARって安全なんだなあと改めて思う出来事でした。競技復帰がどうというよりまずは日常生活が戻ってくることを願います。

 ラプターのスキームって、私の中でどうしても「ラプター=フォードのピックアップトラックの車名」なもんですから、「シボレーでラプター」という違和感が未だにあります。でもラプターってシンプルでカッコいいんですよね。アクサルタのファイヤーパターンが減ると、スロウバックで堂々と「ジェフのスロウバックです!」と言えるという副産物(?)があります(笑)