フォーミュラ E 最終戦 ロンドン

ABB FIAFormula E World Championship
2025 Marvel Fantastic Four London E-Prix
ExCel London 2.077km×34Laps(-0.11km)=70.508km
Race Enery:27kWh
Reference Lap Time for FCY/SC 3:15
winner:Nick Cassidy(Jaguar TCS Racing/Jaguar I-Type 7)
奥にいる列車はたぶんエリザベス線の345型


 フォーミュラE シーズン11最終戦のロンドンです。ポルシェと日産によるチーム/マニュファクチャラー選手権争いが見どころだと思っていたら、気づいたら日産とジャガーの2位・3位争いに展開が映ってしまった感がありますが、それはそれであの開幕からのジャガーの不振を思うと面白い展開です。日産からしたら冗談じゃないという話ですけどね。
 最終戦ということで来年のドライバーの契約状況が気になるところですが、この最終戦を走っていて来シーズンはフォーミュラEにいないであろうという選手はサム バードとロビン フラインスの模様。一方で日産のナトーはロンドンの週末を前にしてチームが契約の延長を決断したようです。
 大きな焦点はポルシェのダコスタで、チームと何か上手く行っていない彼が残るのか残らないのかで市場が動くとされています。ダコスタ離脱ならヒューズ、ティクタム、ニコ ミュラーといった顔ぶれが候補となり、彼らが動けば空いた席にまた誰かが動く可能性があります。
 そしてもう1つややこしいのはステランティスで、キャシディーはマセラティーMSGに加入したとみられますが、DSペンスキーがマクラーレン消滅の隙を衝いてテイラー バーナードと契約したとの噂。DSペンスキーはグンターとは複数年契約を結んでおり、この噂通りならベルニュが弾き出されますが、ベルニュはステランティスの契約ドライバーです。ならステランティス内で人事異動してマセラティーへ動かしたらどうかというと、バンドーンは来年も契約したと発表しており席が空いていません。
 とりあえずヒューズがはじき出されることだけは分かっているものの、4つの椅子に5人が座ろうとしてぎゅうぎゅうになっており、どうもバンドーンには契約の早期終了交渉をしているんじゃないかとも言われています。バンドーンからしたら"僕には契約がある"という話ですが、もしポルシェからダコスタが離脱するならそっちへ行くのは悪い話でもなく、けっこう複雑に絡み合っている様子です。
 
・練習走行

 昨日のポールシッター、でその後決勝で酷い目に遭ったエバンスがFP3の最速、1分6秒984で唯一6秒台に入りました。ベアライン、バンドーン、ティクタム、ナトーが続きました。また300kWに限ればベアライン、キャシディー、デフリース、ダコスタ、グンターとなってエバンスは7位でした。
がんばれナトー!

・グループ予選

 A組の開始7分ほど、ダコスタがターン1に向けてブレーキを踏んだら何か壊れてコース脇に車を止めてしまいレッドフラッグ。この時点でモルターラが記録していた1分8秒583は結果的にセッション再開後に誰も更新できず、A組を1位通過しました。これに0.038秒差でデフリースが続いてマヒンドラがワンツー、エバンス、キャシディーのジャガー勢が続きました。ロウランドは0.034秒及ばずグループ5位でデュエルスに進めず。
 B組、こちらはセッションの中断は無かったもののタイヤの状態を保つのがなかなか難しいらしく、結果として上位6人中5人は最終周以前に出していた記録が自己ベストになりました。最速はティクタムで1分8秒447を記録、グンター、ベアライン、バンドーンが続き、ナトーは0.088秒届かずグループ5位でした。日産は両組ともデュエルスに惜しくも届かず基本的に5列目から並んでスタートすることが決定。

・デュエルス

 A組はグループ予選1-2のマヒンドラに悲劇。デフリースはアウトラップ中にえらいタイヤをロックさせ、その影響が多少あったのかエバンスに0.038秒及ばず敗北。さらにモルターラはブレーキ バイ ワイヤーの不具合でターン1を止まりきれずにほぼ不戦敗になってどちらも準決勝に進めませんでした。
 これでA組準決勝はジャガーの同僚対決、仲良しキウイコンビが最後のレースで戦うので見る側は楽しみなところ、でしたがキャシディーはターン16で大失敗します。これでエバンスが勝つのかと思ったら、チームはキャシディーのドライバー選手権2位を支援するために八百長することを予め決めていたようで、エバンスは最後に減速して勝たせてあげました。

 一方B組はティクタムが異様な速さで1分7秒021、1分7秒037と誰も出せないタイムを連続で記録して見事に決勝へ。デュエルス決勝はキャシディー対ティクタムになります。ただティクタムは昨日エバンスにぶつけてしまったことで5グリッド降格が予め決まっているため、走る前からキャシディーの1位スタートは決まりました。
 デュエルス決勝、キャシディーはセクター2までほぼ互角でしたがさっきミスったターン16でややエイペックスに付けずティクタムには勝てませんでした。ティクタムもここまで2回と比べると少し記録が落ちましたが1分7秒278で自身初となるジュリアスベアポールを獲得、3点のボーナスとトロフィーを貰ってから5グリッド降格で6位スタートになります。
 ティクタムはグループ予選の段階から低速での車の回頭性がなんかやたら良いように見え、デュエルスもずっと同じ様子でした。ステアリングを切ったらちゃんと切っただけ反応があってそれが1周ちゃんと持続している印象で、たぶん昨日の予選もアウトラップでミスって無ければ同じぐらい行けたんだろうなと思いました。ちなみにクープラ キロのポールはもちろんチーム初で、NEXTEV NIO時代のシーズン3以来です。この年は開幕戦・香港でネルソン ピケがポールを獲ると、第4戦・メキシコシティーでもオリバー ターベイが獲得しておりそれ以来のポール。ただこのターベイの時はスーパー ポール最速のダニエル アプトがタイヤ内圧違反で失格、繰り上げられたポールでした。チームとして2回目のポールが繰り上げ、3回目はポールだけど降格です(笑)

 キャシディーはせっかく友達の予選を犠牲にして送り出してもらったのに3点を取れず無線で猛烈謝罪。スタート順位はキャシディー、グンター、エバンス、ベアライン、デフリース、ティクタム、バンドーン、モルターラのトップ8。ナトーが9位、ロウランドは10位で、このままだと日産はジャガーにひっくり返される!

・決勝

 マヒンドラにまた悲劇、モルターラはスタート直後に駆動系が壊れた模様。危ないので車を左端に寄せてゆっくり走りましたが、何せ道が狭いのでターン1で他者と接触してしまいました。どっちみち車が動かなくてモルターラはリタイア、今シーズンは表彰台2回で選手権9位、ベンチュリー時代のシーズン8以来久々の1桁順位でした。


 モルターラのトラブルを抜きにしてもそこらじゅうでガッシャガッシャと接触だらけ、リーダーのキャシディーは1分20秒台というむっちゃくちゃ遅いタイムからレースを始めたので後続は並び放題の当たり放題です。昨日はピットブーストもあったからもうちょっとみんな我慢してましたけど、今日はさらにエナジー管理が厳しくて遅いので1周走るごとに誰かのウイングが欠けていくような状態。もやは状況の理解不能(笑)
 とりあえずキャシディーはそんな大混戦でも周りをよく見て節約しながら順位だけは死守しています。2位〜3位あたりを走るエバンスも上手く露払いしている様子。そんな中で順位を上げるしか無い日産の2人は積極的なレースを仕掛けていましたが、ロウランドは9周目にアタックモードでデフリースを抜こうとして高速のターン15あたりで接触、ウイングを破損。デフリースはラインを残しきれなかったかもしれませんが、ラインが1本しかない上に凹凸で車が軽く離陸するような高速コーナーで外に並ぶ判断が間違っていた気がしますね。

 さらにターン17でバーナードが明らかに無茶な飛び込みでミュラーに体当たりすると、ターン18で内側の壁とグンターの両方に接触して失速し、そこにナトーが突っ込んで止まってしまいました。日産パワートレイン勢、コーナー3つでグダグダに。これでFCYが宣言されて一旦休戦モードとなり11周目に再開、リーダーのキャシディーはこのFCY直前にアタック2分を使っており、FCY中は無駄打ちになったものの約1分半はアタックの力で後続を引き離すことに成功しました。
 16周目、ウイングを折りながらも3位を走るロウランドはアタックを使って抜きに来るミュラーを鬼ブロックしますが、おそらくデフリースとの接触の件でかなり頭に血が上っているとみられ、強引な走りが映像からも明らか。アタックで前に出たミュラーをターン1で無理に抜き返そうと内側に突っ込んで止まり切れず、その先のターン2で接触。そのまま壁に当たってサスペンションも折れ走行不能になり、ミュラーもコース上で停止してSCとなりました。よく『最終戦だから車壊してもいいや!ってはっちゃける』みたいな冗談がありますけど今日のレースはマジでそう思える荒れ方です^^;

 なおロウランドはこの接触に関して責任の多くがあると判断されて3グリッド降格のペナルティーが発行されており、シーズン12の開幕戦で忘れた頃にペナルティーを受けることになります。止まり切れず白線の祖おtに出たのに曲がれそうもない鋭角なラインで安全を確保せず復帰した、ということです。

 20周目にリスタート、キャシディー、デフリース、エバンスのトップ3ですがエバンスはさきほどのFCY中に速度違反があったということで5秒加算ペナルティー発効、またアタックを上位勢で唯一まだ未使用の状態です。後手に回っているとも言えますが、上手くアタックを使えば5秒ぐらい稼げるかもしれません。でも後続を引き離そうと思ったら1回はキャシディーの前に出るぐらいの展開が必要で、しかし基本的にチームはキャシディーを援護したいんだからあんまり変なこともできません。
 エバンスはこの周のうちにデフリースを抜いて2位となり、続く21周目にアタックを使って2位のまま合流することに成功。チームとして最大の得点を狙うならエバンスを前に出して離せるだけ離す必要があるでしょうが、エナジー残量はキャシディーが上位で最も残している状態、エバンスはけっこう使ってしまっていてそこまでの速さがなく、変なことをしてキャシディーの邪魔になったら最悪です。チームはこのまま順位を維持するように指示を出します。
 27周目、ジャガーの2人は同時に2回目のアタックへ、エバンスに対してはキャシディーに付いていくように指示が出るものの、エナジー残量が違うので付いて行ったら電池切れします、それは詐欺です(え)
 エバンスは「キャシディーのトウ(スリップストリーム)が欲しい、今日彼を助けただろ。助けが必要だ。」と予選を引き合いに出して援護を求めますが、エンジニアからは「今ニックはファステストを取りに行ってるから、それが済んだら戻って来る。」と返答。しかしアタックが続いている間キャシディーは逃げ続けて8秒以上の差になりました。
ワンツー体制は喜ばしいはずが・・・^^;

 最初にエバンスが「トウが欲しい」と言った段階ではキャシディーにもちゃんと伝わっていて「速く走るつもりは無いよ、このペースで行くって伝えて。」と言ってたのでキャシディーも無視するつもりは無かったとおもうんですが、残量の都合でキャシディーが普通に走ってもエバンスは追いつかなくなり、エバンスからすると話が違うのでエンジニアにキレる、という悪循環です。

 レースは2周が追加されて合計36周、エバンスに助け舟は全く訪れず自力で後続を一生懸命抑えています。でもいくら抑えても5秒加算があるので実質は彼らの後ろです。キャシディーは結局2位に13.581秒という大差を付けてこのロンドンの週末を2連勝で締めくくりました。記録上はポールシッターがティクタムなので参考記録というような位置づけですが、1位スタート、ファステストラップ、優勝、さらにフォーミュラEでは珍しい全周リードで"幻の"グランド スラムも達成です。
 フォーミュラEのグランドスラムはシーズン4のベルリンでアプト(なぜかこの記事に2度目の登場)が達成したのが史上初で、他にはシーズン6のベルリンでダコスタが、シーズン8・ロンドンとシーズン9・ローマでデニスが達成しています。

※正式なポールポジションスタートではないので参考記録扱いに表記を変更しました。

 エバンスはコース上では2位を守りましたが引き離せる状況ではなかったので5秒加算で5位まで転落。これで2位は2戦連続でデフリース、今シーズンは3度の2位でドライバー選手権8位。マヒンドラはシーズン4以降では最多となる年間5度の表彰台で、これもシーズン4以来となるチーム選手権4位を獲得しました。昨年まで5シーズン連続8位以下でしたから大躍進です。
 3位はブエミ、4位デニス、降格した5位のエバンスを挟んで6位からダコスタ、グンター、ベアライン、ルーカス ディ グラッシ、ベックマンのトップ10でした。ティクタムは接触やらSC手順違反やらガタガタで14位。ちなみにベックマンはこれが今季初入賞で、シーズン11で1点も獲れなかった選手はゼイン マローニーだけとなって終了しました。

 そしてチーム/マニュファクチャラー選手権争いですが、もちろんポルシェは両タイトルを獲得。そして2位争いは日産のドライバーが壊滅状態だったので、ジャガーがなんとチーム/マニュファクチャラーの両選手権で逆転の2位を獲得しました。このレース限りで代表を退くバークレイさん、もう感動しすぎてカメラにいつもの顔力を見せてすらくれませんでした。また、ドライバー選手権2位争いでもキャシディーの猛烈な追い上げによってベアラインを最後の最後に逆転、キャシディーが2位となりました。大物ドライバー移籍あるあるですけど、これ移籍しない方が良かったんじゃないですか?(笑)
たぶんバークレイさん

・シーズン11総括

 ただでは終わらないフォーミュラE、開幕前には日産が圧倒するとまでは誰も思っていなかったですが、蓋を開けてみたら最強だった日産が終わってみたら3冠どころか1冠で、年間2位にすらなれないなんて誰が想像したでしょうか。勢力図の変動が大きすぎます。
 日産は第9戦東京を終えた時点で172点を獲得、1戦平均で19.1点でした。しかし第10戦以降の7戦で獲ったのはわずか35点、1戦平均で5点です。この期間だけを見ると、ローラ ヤマハ アプトの4点、マセラティー MSGの31点に続く3番目の少なさで下から数えた方が早いチームでした。代表のトマソ ボルペによると今回はトラクションの確保に苦戦し、350kWでも遅かったので制御系などで路面と合っていない部分があったのではないか、と語りました。
 ただ映像を見ただけの印象ですが、ベルリンでもロンドンでもロウランドの車は他の人よりもかなり跳ねていて車が固そうに見えました。ちょうどSUPER GTのニスモも同じ印象なんですが、固い足で路面を撫でてしまってタイヤの表面温度が上がりすぎたり、うまく路面を捕まえられていないように感じました。日産は確かに最良のパワートレインを開発しましたが、車両の動作解析の部分でレース屋さんとしての技術力と経験が足りず、多様な路面があるフォーミュラEにおいて今年のタイヤと車両の特性からサスペンションの動きを決めて行く過程で足りないものがあるのでは?と感じました。
 日程を見るとシーズン序盤はメキシコシティー、ジェッダ、モナコ、東京など比較的舗装が綺麗でグリップ力の高い路面が多かったですが、終盤はツルツルコンクリートのベルリン、ほとんど駐車場みたいな道路のロンドン、舗装は綺麗だけどターマックラリー並に砂だらけのジャカルタ、と摩擦係数の低い路面が多い構成でした。この辺は影響しているのかもしれません。ツボにハマると速いけど、自分たちの持っているセッティングの基本的な考えで対処できない路面の時に合わせられていない、という可能性はあります。
 言い換えるとジャガーの躍進はその低摩擦路面の時期と重なっています。ですからシーズン中に車の動作解析がしっかりして立て直した成果なのか、車両特性なのかまだはっきりしないかもしれないな、と時間が経ってから思いました。キャシディーは雨でも速かったですしね。ポルシェは年間を通じて車両を動かすという点に関しては一番安定して一貫性があった印象です。

 また、最終的にDSペンスキーを逆転して4位に入ったマヒンドラはなかなかの衝撃、ステランティスは日産ほど壊滅的では無いですけど本業で苦戦しており、MSGもチームとしてお金で苦しんでいるので、なんかそういうゴタゴタが一貫性の無いシーズンにも影響してるんじゃないかなあと思えてしまいました。マセラティーMSGはおそらく来シーズンはシトロエンMSGになります。

 来シーズンもまたドライバーがずいぶんと入れ替わって、勢力図もコロコロ変わるのでスタート地点がどこになるのか全く読めません。日産は8番目のチームの状態で始まる可能性もありますが、綺麗な路面で速い説がもし本当に当たっていたら開幕からまた独走する可能性もあって、どっちに転ぶのか全然分かりません。だからフォーミュラEって面白いんですよね。

 そして各チームは目の前のシーズン12の戦いに向けてソフトウェアとシミュレーション開発を進めつつも、新車となるシーズン13に向けたパワートレイン開発も並行して進めて行くことになります。


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