F1 第14戦 ハンガリー

Formula 1 Lenovo Hungarian Grand Prix
Hungaroring 4.381km×70Laps(-0.04km)=306.63km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)

 夏休み前最後のF1、第14戦ハンガリー。今回が40回目のハンガリーGP開催ということでサーキットは昨年から大幅な改修工事を開始しました。日本のサイトだと改修費用100億円超とあちこちに書いてあるんですが、ハンガリーのサイトを見ると関連施設全体を含めて総工費2億5000万ユーロ、400億円を超えるような巨大改装計画のようです。おかげで色々と綺麗になり、完全に全ての工事が終わるのは来年になるそうですが、もう現時点で観客席やピット施設などの主要な部分は完了しました。
 そんなハンガロリンク、まあ何せ抜けない低速コースで毎年ジリジリとするレース展開になります。昔からサーキットのモナコだかなんだかあだ名が付いていた気がしますが、確かにモナコぐらいウイングがデカいし抜けません。ただタイヤの摩耗がけっこう激しいのと夏場で暑いので、戦略でどうにかするレースになります。平均速度が遅い分だけレース時間も長いので、私はこのレースをシーズン随一の耐久レースだと思っています。
 去年はマクラーレンが予選でワンツーを取り、ポールはノリスだったもののターン1の攻防でピアストリが先行。その後レース展開の綾でノリスが前には出たもののチーム内序列として優先権はピアストリにあったので、その後は無線で延々とノリスを説得。ノリスが嫌がらせみたいにピアストリを引き離しておいて、最後の最後に順位を譲ってあげてピアストリがF1初優勝を挙げた、というなかなか印象深いレースでした。あれから1年経って、もう立場が逆転してる感^^;

・練習走行

 7月29日にめでたく44歳の誕生日を迎えた異世界おじさん・フェルナンド アロンソ。中年らしく(?)腰を痛めたとのことでFP1を欠場してフォーミュラEでもお馴染みのフェリペ ドルゴビッチが代走しました。ただ午後のFP2は元気に走行、なんと5位でした。
 昨年もマクラーレンが速かったのでこの週末に速いのは予想通り。金曜日のFP1、FP2はいずれもノリス、ピアストリ、ルクレールのトップ3で、土曜日のFP3はピアストリ、ノリス、ルクレールの順となりました。レッドブルはフェルスタッペンですら苦戦、安定感がないわ、安定感を足したら曲がらないわでどうにもなりません。とにかくこの車はどっかにすっ飛びそうな状態にして回頭性を与え、あとは腕でどうにかしてようやく戦える車の様子。今回はその釣り合いが取れないまま予選の時間が来てしまいました。

・予選

 サーキットの西側で豪雨が降っているらしく、開始時点で50℃を超えていた路面温度は時間とともにみるみる低下、一時的には少しだけ雨も降りました。そんな予選、Q1で角田は15位に0.024秒届かず16位で脱落。今回フェルスタッペンとの差は0.14秒ほどなので相対比較で言うとここ最近では上手く行った方なんですが、チームまるごと苦戦していることが改めて分かります。何せアイザック ハジャーは3位でQ1を通過し、セッション最後に角田を蹴落としたのもローソンでした。どう考えてもRB21よりVCARB02の方が安定して走らせる分には良い車なんでしょうね。ただそれをやると絶対優勝争いができない。

 Q3、とうとう路面温度は36℃まで低下してこれがどうも予選の隠し味になった模様。1回目の計測ではピアストリが1分15秒398を記録し、ノリスが0.096秒差の2位。新品タイヤの在庫の関係もありますが3位以下はそれなりに離れていました。ところが2回目のアタックで突然ルクレールが覚醒、1分15秒372とわずかにピアストリを逆転。ピアストリは自己記録を更新できず、ノリスも0.041秒届かない3位でした。さらにラッセルも0.053秒差の4位、アロンソおじさんが0.109秒差の5位と信じられない僅差の決着でした。

 ルクレールはというと本人もそんなに速いとは思っていなかったようで、無線で1位だと聞かされて「え!?」と率直な反応。ルクレールが今季初・通算27回目のピレリポールを獲得しました。ピアストリ、ノリス、ラッセル、アロンソ、ランス ストロールと続き、7位にガブリエル ボルトレート。フェルスタッペンは「アウト ラップから全然グリップが無くて氷の上を走ってるようだ。」と文句タラタラで8位、ローソン、ハジャーが続きました。


・決勝

 大半がミディアムを選択。スタートからノリスが動き回ってピアストリを煽りまくりましたが、ちょっと暴れすぎたのか逆にターン1から先でラッセル、アロンソに抜かれて5位後退でしょんぼり。去年はポールスタートからフェルスタッペンとゴタゴタやりあって3位に落ちていましたが、今年も状況は違いますがやっぱり2つ落としました。
呑み込まれた!

 その後ノリスはアロンソを抜いたもののラッセルは抜けずに停滞。ノリスに限らずその他のドライバーも前の人を抜けずに我慢比べとなりました。こうなればもちろん頼みの綱はピット戦略で18周目、ルクレールから2.5秒差のピアストリがまずピットに入りアンダーカットを狙って揺さぶります。翌周にルクレールが対応しきっちりとアンダーカットを阻止しました。
 一方その後ろの3位争いはルクレールと同じ19周目にラッセルが先にピットに入りアンダーカットを未然に阻止、ラッセルに引っかかっていたノリスは逆張りのステイアウトです。ラッセルに捕まっている時点から既に「タイヤ死んだわ。」と言っており、当初ウィル ジョセフから提示された戦略も「プランA、目標マイナス5(=元々自分たちで予定していたピットの周回数よりも5周短くする)」と2ストップを示唆するもの。ところが前が開けたら一転して引っ張っています。

 結局ノリスは1ストップに頭を切り替えたようで30周目近辺を目指して孤独な戦い。ルクレールに追いつかれることなく31周を走りきってピットに入りミディアムからハードへ、これで残り39周を走りきりに行きます。長い道のりなので当然タイヤを大事に使う、と思ったらノリスはファステストをバンバン更新しながら走行、ターン12ではみ出してコース上の砂利を増やしつつも思った以上に飛ばしています。

 これに2ストップで対抗する上位2人。ルクレールから1.5秒差にいるピアストリに対して「ボックス トゥー オーバーテイク」の指示。そのまま読むと「追い抜くためにピットに入れ」ですが、これは意味合いとしては「(相手がピットに入らなかったのなら)追い抜くためにピットに入れ。(相手が入ったらそのまま留まれ)」という意味が全部含まれています。これを聞いたルクレール陣営はアンダーカット阻止のため40周目に先にピットへ、マクラーレンは無線を使って相手を釣りだし、ここからは自分たちの望むところまでは飛ばしていってタイヤの履歴差を作る時間になります。
 ピアストリはルクレールを抜かない限りノリスには挑戦できないんですが、どちらかというとノリスに勝つための戦略でルクレールはどうにかする、という逆の発想で腹をくくっている様子。2回目のタイヤ交換を行ったのはルクレールより5周も遅い45周目でした。これでノリスがリーダーとなり2位のルクレールが7秒差、さらに5秒離れてピアストリです。ノリスはタイヤが古いんですけどルクレールよりも速く走れており、それだけマクラーレンが速い、というかどうもルクレールがあんまり速くなくなってきた模様。
 ピアストリはなんか遅い人に詰まったらもうおしまいですが、51周目になんと一発であっさりルクレールを抜いてマクラーレンのワンツー、その差は9秒。抜かれたルクレールはレースの中盤から無線で何かしらのマネージメント方法についてエンジニアに不満をぶつけており、3位に落ちたこの段階でもさらに怒りを爆発させて「これで3位に入ったら奇跡やで。」とまで言い放ちました。

 マクラーレン対決は14周のタイヤ履歴差でピアストリが猛追、58周目には4秒差となり追いつきそうな雰囲気となると、周回遅れも現れて64周目にはもう1.3秒差となりました。いよいよ作戦違いのマクラーレンによる正面からの争い勃発。残り3周になってピアストリがDRSを取ると、ここから2周続けてターン1でちょっと危ない飛び込み。オーストリアGPでもターン4で一度同じような動きを見せて怒られていましたが、今回も特に2発目は当たるかと思いました。グランツーリスモでレースをよく分かっていない人がやりがちなやつです。

 さすがにこれ以上のドラマはなくノリスが1ストップを完遂させて今季5勝目・通算9勝目。2位のピアストリとの差は0.698秒で今季最小でした。マクラーレンはこれで4戦連続ワンツーフィニッシュとなり、セナプロ時代の1988年以来チーム史上2度目です。

 3位はラッセルで今季6度目の表彰台、ルクレールは予言通り(?)に4位。ラッセルを防御する際に急な進路変更が危険行為とみなされて5秒加算のペナルティーも受けましたが順位は変わりませんでした。レース後になって車体に問題があってペースが上がらなくなったことが判明したとのことですが、何が悪かったのかはよく分かりません。途中ピアストリの無線で「ターン6で追い風だからルクレールも同じミスしてるぞ。」みたいなやつがあったので、はみ出して縁石で底を打ったりしたんでしょうかね。

 そしてなんとびっくり、ルクレールから21.5秒(5秒加算前)も離されていますが5位にアロンソ、もう練習走行減らした方が体力的にもいいんじゃないすか?とか思ってみたり。6位にはそのアロンソがマネージメント会社を通じて支援しているお客様・ボルトレート。7位はストロール、8位がローソンでなんとフェルスタッペンは9位止まり。10位にはアントネッリが入りました。この5位~10位で2ストップ戦略はフェルスタッペンのみ、ローソンはミディアムで40周も引っ張った一方で、アントネッリはミディアムを21周で交換して残りの49周をハードで走り切りました。途中で作戦が変わったのでかなりの長旅だったようです。
 アストン マーティンはベルギーでは全然競争力が無かったのに、ここでは最高に近い結果を出せたので一安心。ただF1公式サイトの情報によると、問題はなぜ速かったのか自分たちでもよく分かっていないことだそうです(笑)またボルトレートが6位に入りましたが、ザウバーにとっては2007年にニック ハイドフェルドが3位に入って以来となるハンガロリンクでのチーム最高成績でした。コンストラクターズ選手権で5位のウイリアムズに対し、アストンマーティンは18点差、ザウバーも19点差です。

 正直、スタートで何も無かったらピアストリがルクレールを抜いてそれで終わりだろうと思っていたので、作戦が分かれて面白いレースになったのは予想外で面白かったです。元々ノリスも2ストップの予定で、順位を下げてしまったから可能性に賭けて作戦を変更したということなので、もし普通にスタートで3位だったら勝てなかったかもしれないですね、怪我の功名です。

 チャンピオンを争う同一チームの2選手がで異なる戦略を採用すると、なんで俺の作戦がハズレなんだ、とか途中で一時的に追いついた際に譲る譲らないの問題も起きるので、かつてメルセデスが席巻していた頃もハミルトンとロズベルグは使用するタイヤの順序やピットの時期をズラしてのチームメイト攻略は認められても、ピット回数そのものを変更することは禁止事項でした。パパイヤ ルールではこれはありなんだなあ、と驚かされるばかりです。チーム代表・アンドレア ステラは肝が据わってますね。
 ちょうどいま発売中のオートスポーツ誌にピアストリのインタビュー記事があるんですが、彼はアンドレアの統率力、とりわけエンジニア出身でありながらまるで元F1ドライバーかのように選手の気持ちを汲んで取り計らってくれる人間力に非常に敬意を払っているようでした。アンドレアの求心力がこの危険極まりないダブルエースのチームをつなぎ止めているのかもしれません。
 ドライバー選手権ではピアストリがノリスに対して9点差の1位という状況で夏休みに入りました。もうこれはほとんど無いに等しい状況で後半戦に入りますね。それにしても今さらながら、このハゲしい争いに車の不具合によるリタイアが全く水を注さないというのはすごいです。F1は8月末のオランダでシーズンが再開となります。
 なお、1988年のマクラーレンは4連続ワンツーフィニッシュの後、第8戦イギリスでプロストがリタイアしたので記録が途絶え、次のレースからまた3連続でした。Wikipediaによればこのレースは大雨で、プロストはハンドリングが酷すぎて後方をさまようことになり「12位かそこらにとどまるために大事故で骨折するリスクを負えるかい」と『ハンドリング』を理由にリタイアしたそうです。今ならギアボックスとかてきとーに理由付けるでしょうね^^;

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