Formula 1 Moët & Chandon Belgian Grand Prix 2025
Circuit de Spa-Francorchamps 7.004km×44Laps(‐0.124km)=308.052km
winner:Oscar Piastri(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)
2週間ぶりのF1、第13戦はベルギー。次戦・ハンガリーとの2週連続開催を終えると一応夏休みということになります。お馴染みのスパ-フランコルシャンは今年3度目のスプリント形式の週末となっており夏休み前に大忙し。スパでのスプリントは2023年以来2年ぶりです。
今回はタイヤの設定がやや特殊になっており、ハードはC1が使用されますがミディアムは1つ飛んでC3、ソフトがC4となっています。なんとしてでもタイヤに起因したレース展開の動きを作り出したい運営の意図が伺えますが、まあだいたいチーム側がきちんと適応して何も起きないものです、期待しないでおきましょう(笑)
・レース前の話題
前戦イギリス終了からわずか3日後、オラクル レッド ブル レーシングはチーム代表のクリスチャン ホーナーを解任すると発表しました。後任としてレーシング ブルズからローラン メキーズが移籍してきて、言ってみれば角田 祐毅に次ぐ今季2度目の昇格人事です(?)
ピットで椅子に座って貧乏ゆすりしている姿が有名なホーナー、元々はドライバーでF3などを走っていました。国際F3000に参戦するため自らアーデン インターナショナルというチームを立ち上げ、選手としてはパッとしませんでしたがその後はチームを指揮する立場として活動を続けました。日本でも走っていたビヨン ビルドハイムはアーデンで走ったことがある選手です。レッドブルとはアーデン時代にスポンサーとして繋がりがあり、2005年にレッドブルがジャガーを買収して参戦するとなった際にマネージメント手腕を買われて声をかけられました。
以後2005年のレッドブルレーシング創設以来チーム代表として活動を続け、セバスチャン ベッテル、マックス フェルスタッペンという2度の圧倒的支配の時代を構築。強力な推進力で組織をけん引するトップ ダウン型の統率者という感じですが、2024年には女性社員からのハラスメント被害を申告されるなど(チーム側の調査では問題なしとされたが、後に現在この問題はイギリス国内で報道禁止の措置が出されており、2026年1月に裁判所で審理が行われることが明らかとなってまだ完全には終わっていないとされている)、このところは組織内の派閥争いというような雰囲気が漂っていました。
今回の解任理由についてチームは説明をしていませんが、最近フェルスタッペンがメルセデスに移籍するのではないかとする噂が絶えず、フェルスタッペン引き留め対策としてホーナーの解任が絶対条件だったのではないか、といった憶測が飛んでいます。一方で上記ハラスメントの問題に関連しているのではないかとする見方もあり、詳細はとにかく謎です。とかくレッドブルはここ数年で要職にあった人物の移籍が相次いでおり、強豪チームも必ずどこかでこうなるんだな、と感じる次第です。
なおレーシングブルズはレーシング ディレクターだったアラン パーメインが代表に就任、ナンバー2がナンバー1に繰り上がる昇進人事ですかね。
・練習走行
スプリント方式のため1回しかない貴重な練習走行、最速はオスカー ピアストリでした。2位のフェルスタッペンは0.404秒差、以下ランド ノリス、ジョージ ラッセル、シャルル ルクレール、アンドレア キミ アントネッリ、ルイス ハミルトンと続きました。
・スプリント予選
SQ1は新旧メルセデスドライバーがお騒がせ、早々にアントネッリがターン14でスピンしてコース上を砂だらけにすると、チェッカーが振られて当落線上の人が続々と戻ってくるはずのセッション最終盤にハミルトンが最後のシケインでスピン。コース脇に止まっているのでイエロー フラッグが振られて後続の人が影響を受けました。ハミルトン18位、アントネッリ20位で脱落。
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| 目くらましの中に突っ込んでいったラッセル |
スプリントのポール ポジションは1分40秒510を記録したピアストリ、2位のフェルスタッペンに0.477秒の大差が付きました。3位ノリス、4位ルクレール。そしてハースのエステバン オコンが5位、カルロス サインツを挟んで7位にもハースのオリバー ベアマン。今週はハースの出番でしょうか、直線が速いんですね。
・スプリント
ポールシッターのピアストリはターン1を上手く立ち上がり、フェルスタッペンはちょっと滑ったように見えましたが、結果としてこの距離感がケメル ストレートでスリップストリームを使うのに最適だった模様。元々ダウンフォースを削り気味のRB21は見事にMCL39を仕留めてフェルスタッペンがターン5の手前でリードを奪うと、その後はいくらピアストリがDRSを使っても勝負できる距離になりませんでした。今回は通算21回目の開催となったスプリントでフェルスタッペンはこれが通算12勝目。でもピアストリは抜けねえ!くそ!というよりは選手権も考えて無理はしていない様子でした。3位ノリス、4位ルクレール。ほぼ動きの無いレースでした。
・予選
翌日の決勝が雨ではないかという話なので、セッティングをどうするかが悩みどころ。Q1開始時はピット内の行列と先陣争いからランス ストロールがニコ ヒュルケンベルグのウイングを踏んづけて行く事件発生。ザウバーは予選を1mmも走らないうちからウイング1つ分の製造費用が飛んで行きました。そんなQ1でハミルトンはターン4のトラック リミット違反により最速記録が取り消されて16位、スプリント予選に続いて初戦敗退。
Q3ではノリスが1回目のアタックで出した1分40秒562がかなりまとまった走りだったらしく、2回目のアタックでノリス本人を含めて誰も更新できませんでした。ノリスが通算13回目のピレリ ポール ポジション。2位にピアストリ、3位はルクレール。気合を入れて逆転を狙っていたフェルスタッペンはターン1出口で滑ってしまい4位。アレクサンダー アルボン、ジョージ ラッセル、そして角田が7位に入りました。
角田はスプリント後に新しいフロアに交換しており、急いで交換してくれたチームに応えた形。報道をまとめると元々新型フロアは3つ用意されていて、スプリントがあるから当初は破損警戒でフェルスタッペンに予備を2つあてがって角田用は無し、これがスプリントを終えたので予備の1つを割り当ててもらえたみたいです。でもフェルスタッペンと同一仕様、ではなくフェルスタッペンに近いもの、だそうで設計が1世代古いんかな。
・決勝
予想通り雨になりましたがそんなことより開始5分前のオープニングテーマ曲が突然違う曲になっています。たぶん映画のF1絡みだろうなあと思ったらやっぱりそうでした、見た方はきっと喜んだ方も多いんでしょうね。でもその後はいつものブライアン テイラーに戻りました(笑)
前戦イギリスと同様にSC先導でのフォーメーション ラップとなってとりあえず視界は悪そう。1周してみて無理っぽいので一旦スタート手順はお預けになりました。結局当初の開始予定時刻から見て1時間20分遅れ、SC先導でレース開始ということでピットを出た段階から1周目として再開されました。
5周目にSC退出、ローリングによって実質的なスタートとなりますが、ノリスはピアストリに張り付かれた上にターン1の脱出でやや失敗、これでスリップを使われてケメルストレートでピアストリが前に出ました。スパはわりと2位スタートの人が前に出てしまうことがありますね、ローリングスタートでも変わりませんでした。
この2人が逃げていく一方3位のルクレールはダウンフォースが少ないセッティングのため序盤からフェルスタッペンに追い回されてコーナーでヨレヨレ。しかしDRSがないとこれを抜くのは困難で、フェルスタッペンはひたすら付き合わされてマクラーレンの姿が遠ざかっていきました。フェルスタッペンは雨対策で予選以降はダウンフォースを増やしたらしいので余計に抜くことができません。
路面が乾くのはけっこう早く、11周目に13位のハミルトンがインターミディエイトからミディアムへ交換し実験台に。これがセクター2で早速速さを見せていたことから12周目にピアストリ、ルクレール、フェルスタッペンなどほとんどのドライバーはピットに入りみんなミディアムに交換していきました。
立場上1周待たされるしか無いノリスは13周目のタイヤ交換となり、ミディアムではなくハードを選択。タイヤ交換がやや遅かった上にタイヤの発熱も遅いので、ピアストリとの差はピット前の2秒から9秒近くに拡大しました。ただ3位のルクレールはまだかなり後方なのでここは落ち着いていくしかありません、2位に落ちて優先権を失ったのは自分だし仕方がない。
みんなこのタイヤで最後まで走り切るつもりですが、雨上がりの路面とミディアムの組み合わせは消耗が激しいため丁寧に使わないともたなくなります。唯一ハードを履いたノリスにとってはここが唯一の希望、ピアストリとするともう1回タイヤを換えた場合はルクレールの後ろに回ってしまうので、交換するならもっと離さないといけない、でもそのために飛ばして上手くいかなかったらただタイヤを潰すだけになるため力加減が難しいところ。ノリスは僅かずつピアストリとの差を縮めて26周目には8秒差としましたが、この周のターン10・11(プーオン)で飛び出して9秒差に逆戻り(+_+)
ピアストリはルクレールをウインドウ外に追いだすのではなくこのまま走り切る方向で走っているようで、ノリスは少しずつ距離を詰めていきましたが追いつくほどの時間はありませんでした。残り2周でようやく3秒差まで追いついたと思ったらターン1で失敗して1秒失いまた逆戻り、もうこれでさすがに諦めた様子で、ピアストリが今季6勝目・通算8勝目を挙げました。オーストラリア人選手による年間6勝は史上最多です。
ノリスが2位に入ってマクラーレンは今季6度目の1-2 フィニッシュ、チームとして1988年にアラン プロストとアイルトン セナで10回記録して以降の最多記録となりました。まだレースが残ってますからセナプロの更新にも期待がかかりますが、セナプロと聞くともう口も利かないチーム内争いが浮かぶのでチーム首脳陣はあんまり言ってほしくないかもしれません。
ルクレールは結局最後までフェルスタッペンを近寄らせずスパでは3年連続となる3位、4位のフェルスタッペンはイギリスでは晴れを想定した低ダウンフォースが裏目に出てしまい、今回は雨を想定した高ダウンフォースが裏目に出てしまいました。「5位を目指して孤独なレースを強いられた」というラッセルが5位、孤独なラッセルの5秒後方で6位にアルボン。そして予選で大失敗したハミルトンがスタートからの濡れた路面、そしてタイヤ交換の判断で大きく順位を上げて7位に入り、ドライバー オブ ザ デイも獲得しました。8位リアム ローソン、9位ガブリエル ボルトレート、10位はピエール ガスリーでした。
ボルトレートが入賞してますがザウバーがスパで入賞するのは2018年のマーカス エリクソン以来だそうです。角田はガスリーの後ろに付いていましたが全く抜けず、最後は後続に抜かれて13位。タイヤ交換が1周遅れてしまったことが致命傷でした。
それにしても何も起きないレースでした。雨でレースが出来ないよりはお客さんとすると遥かに良かったと思いますが、波乱も追い抜きも少なかったという点では「もうちょっと路面水量が多いうちにレースして波乱起こしてよ。」と思った方がいても不思議ではない感じ。同じ抜けないレースでも車が劣っていると思われるフェルスタッペンが徹底的に抑え込んで勝つなら面白いと感じ、そうでないと単調に見えるんだから勝手なものだとは思いますが、0.6秒差でターン1を立ち上がってあの長い全開区間を通って抜けない、というのはなかなかキツイですね。来年の車でどうなるのかは注目です。
ドライバー選手権ではピアストリとノリスの差が16点、まだまだ分からない点差ですが、今回のノリスは最初に抜かれてしまったのはまあ仕方ないし、抜き返せなかった結果もある程度仕方ないですけど追いかける途中に単独で2回失敗してしまった、というのが痛い点だったと感じました。今のピアストリを捕まえようと思ったらたとえ順位に関係ないところでも常に完璧な走りで相手にもミスできない心理的影響を与えないといけないでしょうから、「こいつそのうちミスりおるわ。」と思われると戦う前からちょっとマイナスになってしまいます。
次戦も抜けない上に平均速度も低くて耐久レース感すら感じるハンガリーです。
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