F1 第12戦 イギリス

Formula 1 Qatar Airways British Grand Prix
Silverstone Circuit 5.891km×52Laps(-0.134km)=306.198km
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)

 F1 第12戦 イギリス、ひょっとすると映画の公開でF1に関心を持ってこの辺で初めて見ることにしてみた人もいるかもしれません。ひねくれ者の私はどうしても『ネットフリックスのドキュメンタリーでアメリカの視聴者が増えたから2匹目のドジョウを狙っただけでしょ?』と思ってるんですけどね。ちなみに私は競技を見たいのであって演劇を見たいわけではないので今のところ映画を見る予定は無いです、昔の何かをモチーフにするラッシュやフォード vs フェラーリとはちょっと自分の中で違うんですよね~。

 さておなじみイギリスGPのシルバーストーン サーキットは1950年にF1世界選手権としての初めてのレースが開催されたF1元祖の地。ややこしいですが『グランプリ』という名称のレースが初めて開催されたのはフランスで、両者の意味合いは微妙に異なります。日本における『映画発祥の地』が大阪、神戸、京都の3か所にあるのと似たようなもんですね、いや全然違うか(笑)
 お馴染み高速コーナー満載、空力効率の高さが求められるシルバーストーン、とにかく抜けないコースです。今年は昨年よりもタイヤが1段階柔らかい配分でC2~C4と設定されていますが、最近はどのチームも上手いこと対応するので結局そんなに変わらない結果になりますね。ちなみに『だったらもっと柔らかくすればいいんじゃないの?』と思うかもしれませんが、高速・高荷重のサーキットにあんまり柔らかいものを持ち込むとタイヤがブリスターだらけになってぶっ壊れてしまいレースにならないので、専用タイヤでも作らない限りは難しい話と思われます。

 昨年のイギリスは予選も決勝も雨が関わり、予選ではイギリス人ドライバーが1位から3位を独占。決勝ではハミルトンが通算104勝目を挙げてイギリスの地元パワーを見せつけられました。神ってる、って表現はもう古いんでしょうかね?私は広島東洋カープでしか聞いたことがないのでいつ流行って誰がどのぐらい使ってたのかもよく知らないんですけど。まあ何せ去年のハミルトンは神ってました(笑)

・練習走行

 FP1はハミルトンが最速でノリス、ピアストリのトップ3。FP2ではノリス、ルクレール、ハミルトン、そしてFP3はルクレール、ピアストリ、フェルスタッペンの順となってなんだか順列組み合わせみたいな顔ぶれになりました。それだけ僅差ってことですかね。FP3ではボルトレートが高速コーナーですっ飛んでしまい、飛び出して芝生で跳ねた拍子にサスペンションが折れるなかなか怖い回り方をしました。あんまり見ない壊し方でしたね。

・予選

 ノリス、ピアストリ、ハミルトン、フェルスタッペンの4人による次元の高いポール争いという感じでQ3へ、1回目のアタックではピアストリが1分24秒995で最速、0.1秒ほどの差でハミルトンが続きノリス、フェルスタッペンも僅差でした。
 期待が高まる2回目のアタック、最初に戻ってきたノリスは最速を更新すると思いきや、ちょっと力が入りすぎたのかターン16で縁石にノリスぎて0.015秒届かず。このくだり、日本、マイアミに続いて今年3回目だと思いますが、冗談抜きに気合が入りすぎるとノリスはちょっとステアリングを切り込むタイミングを誤ってしまう癖があるようにも思います。
 続いてピアストリがやってきましたが、こちらはターン17の立ち上がりで少しふらついてしまって自己記録更新ならず、続いてハミルトンがこの2人を上回るペースでやってきましたが、ターン16の手前で不用意に砂を踏んだことでリズムが狂ったのか最後のコーナー2つでタイムを落としました。
 そして最後にやってきたのはフェルスタッペン、なんとセクター2まででピアストリの記録に対して0.2秒以上更新した状態で、最終セクターは他の3人と同様にまとめきれなかったものの、大逆転でピレリポールを獲得しました。
ピエール北川「あ~、ノリスが乗りすぎた~」

 スタート順位はフェルスタッペン、ピアストリ、ノリスのトップ3に、テレビに映ってないけどしれっと速かったラッセルが4位。ハミルトン、ルクレール、アントネッリの順。オリバー ベアマンが予選8位でしたがFP3のレッド フラッグ時にピット入り口で事故るという大失敗をやったので10グリッド降格となっています。角田は予選12位で11位スタート、なぜかQ2の本命アタックの際に出力がきちんと出ない不具合があって損したようです。なお、今回もアルピーヌからちゃんと出場できたコラピントでしたが予選20位でした。

・決勝

 本番前に雨が降ってしまいました。スタート時点ではすでに日差しが出ていて雨は降っていないものの路面には水が多いためタイヤはみんなインターミディエイトを選択、しかもこの後もう一度大雨が来る予想が出ています。運営はSC先導のもとフォーメーション ラップを行ってスタートの方式を判断することとしましたが、1周しただけでグリッド スタートを選択します。するとここで3人はピットに行ってしまってタイヤをスリックに交換。
 ちょっと歯抜けの状態で 決勝がスタートしフェルスタッペン、ピアストリ、ノリスの順となります。各者はかなり慎重な走りを見せていましたが、ターン5でオコンとローソンが接触、これでローソンの車がぶっ壊れてしまってコース外から動けそうもなかったのでVSCとなりました。このVSCでさらに何人かタイヤを交換しましたが、コース序盤はかなり乾いている一方で終盤の方はかなり水しぶきが上がっている状態、結果から言えばスリックで無事に走るのはほぼ無理でした。


 4周目にはVSCが解除されますが、今度はボルトレートが単独でターン2の外に飛び出し、現場からは自力で脱出してくれたんですが結局コース途中で帰還を断念して車を止めてしまったため6周目に入るあたりで2度目のVSCとなりました。
 7周目にVSC解除、コース上はインターが11人、スリックに換えた人が6人、脱落した人が2人でコラピントは車に問題があってスタートもできずにひっそりとリタイア。DRSも解禁されてだいぶ路面は乾いているんですが、今インターで走ってる人はもうすぐ降るという次の雨に備えて耐えたいところ。そんな中でフェルスタッペンとピアストリが激しい1位争いを展開しましたが、フェルスタッペンはかなりダウンフォースを削ったセッティングなので高速コーナーで車がずるずると滑っており、いくら直線が早いといってもさすがに耐えきれず8周目にピアストリが前に出ました。
 11周目、とうとうえげつない雨が降ってきてスリックを履いていた人はここでインターミディエイトへ、基本的にはスタートからインターで我慢した人たちが正解でした。コース上ではピアストリが独走してフェルスタッペンは5秒以上離され、さらにターン13で飛び出してノリスに抜かれて3位に後退しました。あまりに雨量が多くて溝が減った今のタイヤでは厳しいと判断されたか、この上位3人は11周目を終えて一斉にピットへ。
 ところがここでノリスに悲劇、ピアストリとの連続タイヤ交換でクルーの方もちょっと慌ててしまったのか、左前輪がなかなか外れなくてピット内でフェルスタッペンに逆転されてしまいました。その後13周目あたりからさらに雨量が増えて視界不良になってしまったため 14周目にSCが導入されます、この時点で14秒以上の大差を付けていたピアストリには残念なお知らせ。
これは無理(笑)

 ここまでのレース、スリックを履いておそらく唯一得をしたのはストロールでした。2回目のVSC中となる6周目にソフトに交換、『どうせすぐ雨が降るって分かってるのに意味ないんじゃないの?』という見方を覆し、ここからの数周だけソフトでかっ飛ばしたことでインターの選手を次々と交わして順位を上げました。もしインターを履いた選手が誰もタイヤを換えなければ自分だけが2ピットで不利でしたが、他のドライバーも大雨のタイミングで新しいインターに交換したためにスリック稼いだ順位がまるまる利益として手元に残りました、これは賭けだったのかもしれませんが会心でしたね。

 18周目にリスタート、どうやら雨はほぼ止んだようでドライバーの視界には一部青空も見えています。おそらくここを超えてしまえばもう雨は降らない様子でしたが、リスタートから半周ほどしたところ、ターン9でハジャーが視界不良でアントネッリにまともに追突、クラッシュして再びSCとなります。追突されたアントネッリも結局リタイアとなり、フル参戦1年目の選手はこれでベアマン以外の全員が既にリタイア・・・
 21周目にSC終了のお知らせが出ますが、セクター3に入って隊列の先導を任されたピアストリがハンガー ストレートの終盤で急減速。フェルスタッペンは危うく追突しそうになり、後続も大渋滞してごちゃつきました。そんな中でピアストリが加速を始めますが、続いたフェルスタッペンはターン13で単独スピン。まさかの事態でフェルスタッペンは10位まで順位を落とし、ピアストリの方はSC手順違反の疑いで審議になりました。

 ピアストリは違反が認められて10秒加算のペナルティー、既に3番手以降に対しては10秒以上の差がついているため、実質的に1位がノリス、2位にピアストリでマクラーレンのワンツーであることには違いありません。その3位を行くのはストロールでしたが、背後にはザウバーのヒュルケンベルグが登場。他の人と違って9周目に2セット目のインターを投入しさっきの大雨ではステイ アウトして一気に順位を上げていました。もし3位に入れば初の表彰台でちょっとワクワクしますが、なんやかんやあって出遅れているハミルトンも後ろに来ていますからまあそのうち抜かれるだろうと期待しすぎないで観察。

 34周目、だいぶ路面が乾いてきたことで止められていたDRSの使用が解禁、これですぐさまヒュルケンベルグはストロールをかわしますが、ハミルトンも同様に抜いて付いてきました。ああ、やっぱ無理だ~、と思ったらここからヒュルケンベルグはハミルトンとそん色ない速さを見せて接近を許しませんでした。そうこうしている間にさらに路面は乾いていよいよドライバーとチームの力が試されるお時間です。
 37周目、8位を走っていたアロンソがスリックへの乗り換え第1号。しかしピットを出てみたらむちゃくちゃ遅いのでちょっと早すぎた様子。翌周にはラッセルも挑戦してみますがこっちもターン12でスピンして豪快にコース外をかっとび失敗、ラッセルいわく「さっきより 路面が濡れている。」そうですが雨は降っていませんので気のせいです。ひょっとして貴方の汗では?(笑)
 続いての挑戦者は41周目、ヒュルケンベルグを抜けず4位にとどまっていたハミルトン、残り11周をソフトでの挑戦ですが、いきなりターン3ではみ出しました、スリックの人がほぼ全員ミスってる^^;
 この辺りで4位以下のドライバーも一斉に動き、相手が動いたのを見て翌周にヒュルケンベルグもミディアムを履いてコースへ。ハミルトンが先にミスっていたので3位で入って3位のまま戻ることができました。この後マクラーレンの2人もピアストリから順にタイヤ交換、10秒ペナルティーをここで消化しますので自動的にノリスが前に出ます。
 そのままノリスが今シーズン4勝目、母国イギリスで初優勝を挙げました。ピアストリはちょっとペナルティーに不満を漏らしつつも2位、マクラーレンは2戦連続・今季5度目のワンツーフィニッシュで2001年以降のチーム最多記録となりました。ノリスはイギリスGPで優勝した13人目のイギリス人ドライバーであり、マクラーレンとしては2008年のハミルトン以来17年ぶりのイギリスGP優勝でした。チェッカーを受ける際にスリックで水たまりに突っ込んで行ったので、事故るんじゃないかとちょっと心配になりました。

 そして3番手には最後尾スタートのヒュルゲンベルグが入りました、F1通算239戦目にして初の表彰台です。資本としては既にアウディーですが、ザウバーという名称のチームが表彰台に乗るのは2012年の小林 可夢偉以来13年ぶりです。またヒュルケンベルグは37歳での初表彰台で、これは1973年の第4戦スペインでジョージ フォルマーが39歳で記録して以来の年長記録、ドイツ人選手の表彰台は2021年のアゼルバイジャンでセバスチャン ベッテルが記録して以来でした。

 ちなみにフォルマーは1967年からUSAC チャンピオンシップ カー、いわゆるチャンプカーに出場していて1973年に39歳でシャドウからF1デビュー。これは史上最年長記録として残っており、デビュー戦となった第3戦南アフリカで6位に入賞し次のレースで3位に入りました。F1参戦はこの1年だけでしたが、ヒュルケンベルグの活躍で思わぬ歴史が掘り起こされました。かつてイチローもそんなようなことを言っていた気がします。イチローが262安打で年間最多記録、以前の記録保持者はジョージ シスラーの257本、これ試験に出ますので忘れないように。

 4位のハミルトンはシルバーストーンで12戦連続表彰台という偉業を継続していましたがとうとう記録が止まりました、フェルスタッペン、ガスリー、ストロール、アルボン、アロンソ、ラッセルのトップ10でした。ルクレールはスタート時にスリックを履いたところからもう全部グダグダになってしまって14位、角田はベアマンとの接触で10秒ペナルティーを受けたこともあって完走した中ではビリの15位でした。レッドブルは雨が降らないと思ってダウンフォースを削ったことが2人とも裏目に出たようです。

 今回は「そうそう、たまにはこういう予測不能でぐちゃぐちゃなレースが見たいのよ」というような典型のレースでした、ニコヒュルが3位になって本当に良かったです。本格参戦を来年に控えているザウバーことアウディーは最初から組織体制やらお金やらでごちゃついて、始まる前に崩壊しないか不安になるレベルでしたが最近のアップデートがけっこう機能している様子ですので、ようやく組織が同じ方向を向いてきちんと動き始めてきたのかなと感じます。
 昨年までレッドブルで要職を務めていたジョナサン ウィートリーが4月に代表に就任した、というのはおそらく大きな変化のきっかけだったと思いますし、そこに今回はヒュルケンベルグという元々こういう不安定な条件でものすごく強い選手がいて、上位勢がコケて、ドライバーの腕とピットの戦略がかみ合い、双方とも大きな目標を目前にしても慌てずに対応できていたのが印象的でした。月並みな表現ですけど負け癖が付いてあちこち細かい部分が行き届いていなかった組織に勝てる組織の人が目配りして意識改革が進んでいる感じです。

 一方で優勝争いはピアストリの失策によりノリスが勝ちましたが、マクラーレンとするとペナルティーには納得していない一方で、内心はホッとしたかもしれないと思いました。路面が乾いていく方向だったレース中盤、ノリスの方がピアストリよりも上手くタイヤを使って3.5秒ほどあった差を1秒ちょっとまで徐々に追い上げており、もしピアストリがペナルティー持ちでなければどっちが先にタイヤを換えるの換えないのという話になり、タイヤ交換直後も攻めた走りをしてより大きなリスクを抱えていたはず。
 タイヤ交換後もノリスの調子が良ければ今度は順位を維持するのしないので揉めることも目に見えていましたから、上手く直接対決を避けるためにペナルティーが結果としてとても役に立ってしまいました(笑)ノリスの2連勝でドライバー選手権での両者の差は8点となり、まだまだ面白く見れそうな展開になってくれました。次戦は2週間の休みを挟んでベルギーです。

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