F1 第11戦 オーストリア

Formula 1 MSC Cruises Austrian Grand Prix 2025
Red Bull Ring 4.326km×71Laps(-0.128km)=307.018km
※エクストラ フォーメーション ラップにより1周減算
winner:Lando Norris(McLaren Formula 1 Team/McLaren MCL39-Mercedes)

 F1 世界選手権 第11戦 オーストリア、おなじみコース外を走ってルールを破った人がルールが悪いと文句を言うレッド ブル リンクです。2023年に週末を通じて1200件ものコース外走行嫌疑が発生したため、昨年から対策として一部のターンで縁石の外側にちょびっとだけ砂を敷くことになり、これは意外と効果的で安全性への影響も軽微なので今年も継続採用されています。そしてレッドブルリンク、なんとこの週末に2041年までの開催契約が結ばれたと発表されました、2041年っていつだよ。。。

 前戦カナダではチャンピオンを争うオスカー ピアストリとランド ノリスがとうとう接触、大失敗をしてしまったノリスはなんとか1週間の休みを挟んだこのレースで自信とチームの信頼を建て直さなければなりません。しかし今回のレッドブルリンクとノリスといえば、昨年はマックス フェルスタッペンと優勝争いする中で接触したいやーな記憶があるトラック。本人とすると攻めたいけどそれを思いとどまらせる嫌な記憶が2つも重なってしまう週末です、大げさではなくドライバーとしての真価が試されそうです。

・レース前の話題

 裁定についてクレームがつくことが多いFIA、内々で運用の方針として使用していたペナルティー ガイドラインとドライビング スタンダード ガイドラインと呼ばれるものが一般に公開されました。
 ペナルティーガイドラインでは何をするとどのようなペナルティを与えられるのかということに関する指針が、ドライビングスタンダードガイドラインでは追い抜き等に関してどうすればコーナーで権利が与えられるのか、どういった追い抜きはやってはいけないのか、といった基本的な方針が書かれています。
 今のところ私はざっと1ページ目のところを大まかに目を通しただけで、もちろん真面目に 読み込もうという気はありませんが何かあった時に参考資料として使うかもしれないので一応書面のダウンロードだけはしておきました。興味のある方はこちらのサイトからダウンロードが可能ですのでご利用ください。


 PDF 形式になっていて Chrome のブラウザで見ていると翻訳ボタンは押せない仕様ですが、最近はGoogleレンズを使用して範囲指定すると表示された文章をそのままテキストとして認識し、翻訳やAIによる要約をすることが可能になっているので英語の文章でもある程度の内容は簡単に把握することができるかと思います。

・練習走行

 FP1の最速は前戦カナダの優勝者・ジョージ ラッセル。2番手にフェルスタッペン、3番手がピアストリ。そして続く4番手には今回ノリスの車を使用して練習走行デビューした19歳のアイルランド人選手・アレクサンダー ダンが入りました。いきなりの4番手はなかなかの 高評価につながりそうです。またフェラーリも21歳のディーノ ベガノビッチを起用し18位でした。ディーノっていかにもフェラーリの選手っぽい名前ですが、両親はボスニア ヘルツェゴビナ出身でスウェーデンに移住した後に彼が生まれたのでスウェーデンとボスニアの二重国籍だそうです。

 その後のFP2、FP3はいずれもノリス、ピアストリのワンツー、今週末はまたマクラーレンが速そう。そういえばフランコ コラピントは最初の発表の内容に従えばこのレースでお試し5レース試用期間が終了ですが、FP1から16位、20位、19位でいずれもチームメイトのピエール ガスリーより下位でした。テスト内容が分からないですから一概には言えないものの印象としては・・・ですね。

・予選

 角田 裕毅はQ1で18位になってしまい脱落。車のバランスが2回目のアタックで変わってしまって全くうまくまとまらなかったということですが、日本のファンは初っ端からがっかりかもしれません。一方でガブリエル ボルトレートがQ2で5位に入って自身初のQ3に進出します、ブラジルのファンは大喜びかもしれません。
 Q3、ノリスは1回目のアタックで記録した1分4秒268が既に2位に0.2秒以上の大差。そして2回目のアタックはさらにこれを更新して心理的な節目を超える1分3秒971へとさらに更新しました。一方でライバル勢には不運が襲い、ピアストリはこれからアタックに入ろうかというところで最終コーナーですっ飛んだガスリーに起因するイエロー フラッグに引っかかってアタックに入ることすらできず終戦。同じくフェルスタッペンも最終セクターでこのイエローに引っかかってしまい、記録を更新できませんでした。コース外が全て舗装されていればガスリーははみ出すだけで済んだわけですから、アタックできなかったからと言って文句は言えませんね。

 結果として誰もノリスの記録に全くかすりもせず、この短いサーキットで1位と2位の差が0.521秒という大差でピレリ ポール ポジションを獲得しました。スタート順位はノリス、 シャルル ルクレール、ピアストリ、ルイス ハミルトン、ラッセル、リアム ローソン、フェルスタッペン、そしてボルトレートの順番となりました。角田は18位ですが、カルロス サインツもウィリアムズ移籍後最も悪い予選19位となりました、お互いに励まし合いましょう。

・決勝

 タイヤ選択は15人がミディアムでのスタート、各者がフォーメーション ラップに入りますがサインツは1速にギアが噛んで動かないようでグリッド上に取り残されます。予選の成績が悪いだけならまだしもこのままでは決勝を始めることすらできません。これでスタート見送りになり一旦引き上げたクルーの皆さんが再びグリッド上へ。他の皆さんが1周してくる頃に サインツは人の手を借りてようやく車が動きましたが、とりあえず一周してピットレーンに入ったら後輪のブレーキのあたりから出火。ブレーキを引きずって走ってきたかような症状で、もちろんそのままガレージへ。

 この問題で当初の予定から15分遅れで改めてフォーメーションをやり直しレース開始、当然1周減算されて70周の決勝に。スタートで前に出たノリスはすぐさま内側に動いてルクレールをけっこう強烈に抑え込み、これで頭を抑えられたらクレールに代わってピアストリが2番手に浮上します。さらにターン3では9位スタートのアンドレア キミ アントネッリがミサイルになってしまい、ただそこにいただけのフェルスタッペンに命中。これで2台ともその場を動くことができなくなりSC導入となりました。
 アントネッリ曰く「ブレーキングは遅すぎたわけではなかったけど、リアムを避けようとした際にリア ブレーキがロックしてしまった」そうなんですが、避けようとして≒追突しそうになっているわけで、つまりそれはブレーキが遅すぎたと思うんですけどね。基本的に先日のNASCARカップシリーズのメキシコ戦でカイルが事故ったのと同じやつだと思います。

 2台止まっていた割には片付けが早く4周目にリスタート、ここからはノリスとピアストリによる追いかけっこになりますが、11周目にノリスがターン1で少し失敗。ピアストリがDRSを使ってターン3で前に出た!かと思いきやラインを交差させてノリスがターン4で再逆転。ノリスは14周目にも最終区間で失敗してとっちらかってしまい、再びピアストリに迫られましたがここもこらえて何とかリードを維持します。
 20周目、ピアストリがまたまた攻撃に出ましたがこれは距離が遠いのに無理に突っ込みすぎ。同士討ち寸前の危ない場面となって結果的にはピアストリが少し離されました。正直これはやらかした、また同士討ちだと思いましたね、当たらんでよかった。ノリスはこの周を終えてピットへ、少しタイヤ交換に手間取ってしまって静止時間3.1秒です。
危ない!

 これに対してピアストリはクリーン エアーの中でしばらく走り続けることを選択、エンジニアからは「早めに入ってノリスの1.5秒後方で戻るか、もう少し引っ張って4秒後方になるか」と質問されますが、ピアストリの返答は4秒差でした。多少差がついてもタイヤに多くの履歴差を作りたい、中途半端に後ろを走っていても変わらないという考えですね。結局ピアストリは24周を終えてタイヤを交換しますが、なぜか平等にこっちもピット作業に躓いて3.4秒の静止時間、結果タイヤの履歴差は4周ですが、追いかける差は想定された4秒ではなく6秒になってしまいました。
 ピアストリがミラーから消えたためかノリスはここからしばらく落ち着いたペースで走行し、両者の差は当初はあまり詰まりません。しかし40周目あたりになるとノリスの前方に複数の周回遅れが出現、周回遅れと3秒ぐらいの差になると多少は高速コーナーで影響が出てくるのか、ピアストリが徐々に差を詰めてきます。
 しかし結局ノリスとピアストリの差は3.7秒という状態で、52周目にノリスから先に2回目のタイヤ交換へ。その直前にはノリスに対して時々マクラーレンの無線に出てくるおなじみの謎の暗号『ジャーマニー シチュエイション』という単語が出てきます。タイヤ履歴差で後ろの選手が追い上げてくる状況、という意味かなあと思ってるんですが。
 じゃあ今回ピアストリは何周の履歴差を築くのかと思ったら、既に4秒近い差があるのをさらに広げるのはよろしくないためか翌周にすぐピットに入りました。ここでマクラーレンのクルーは気合の入ったタイヤ交換を見せて静止時間2秒、これでピット前よりもむしろノリスとの差が僅かに縮まった状態でコースに戻りました。
 ところが戻った直後に思わぬ落とし穴、目の前で周回遅れの角田とコラピントが争っていてちょっと邪魔な上に、コラピントは全くミラーを見ていなかったようでターン3から4にかけての直線でピアストリが完全にコース外に押し出されてしまいました。はみ出しただけで済んでまだよかったものの、これで0.8秒ほど失ってしまってノリスとの差が4.3秒に開いてしまいます、こんなことならあと2周ぐらい引っ張ればよかった。

 残り11周、ノリスの前方に再び周回遅れの集団が姿を見せ、猛追するピアストリは2.5秒差まで接近。これが残り5周で2秒となります。ちょうど最終周に入ったところではフェルナンド アロンソとボルトレートが7位を激しく争う中にノリスが入って行かざるを得ず、一旦抜いたアロンソがDRSを使って抜き返しそうな動きを見せてすんごい怖かったですが、最後はなんか上手いことこの2人をピアストリとの間に挟みました。無事にノリスが最初にチェッカーを受け今季3勝目を挙げました、通算では7勝目です。

 マクラーレンのワンツーフィニッシュは今シーズン4回目、チームとしては2007年以来となる記録です。2007年は1年限りの伝説のコンビ・ハミルトンとアロンソの時代ですね。またレッドブルリンクで優勝したマクラーレンのドライバーは2001年のデイビッド クルサード以来でした。
 3位はルクレールでレッドブルリンクではこれが5回目の表彰台、彼にとって最も表彰台回数が多いトラックとなっています。4位はハミルトンでしたが、まあ何にせよ今日のフェラーリは対戦相手がいなくて1時間半の実践テスト状態でした。5位にラッセル、ローソンが自己最高位となる6位に入り、アロンソが7位、ボルトレートは偉人を抜けはしなかったものの8位でF1初入賞。9位には大先輩のニコ ヒュルケンベルグが最後尾スタートから追い上げてザウバーがダブル入賞。10位は17位スタートのエステバン オコンでした。

  一方レッドブルは2022年の第2戦から足掛け4シーズン・77戦連続で入賞していましたが、とうとう記録が途絶えました。歴代最長となるフェラーリの記録まであと4と迫っていました。フェルスタッペンが1周目に脱落したのが大きな要因ですが、上位勢の脱落により入賞のチャンスも十分にあった角田は結果としては16位で期待に応えられませんでした。15周目にコラピントを接触で回してしまい10秒加算のペナルティーを受けたことが大きな痛手となりました。

 レースの序盤15周目にもランス ストロールに対してターン3で接触により押し出している場面があり、この接触自体は不問とされたもののいずれも入るべきではないタイミングで後ろから飛び込んでいましたので、冷静さを欠いた走りに見えました。本人もコラピントとの接触に関してはもう1周待つべきだったのではないかとレース後に反省を口にしたようですが、とにかく車のバランスに関して一体何をどうしたらいいのかわからない、ということで相当穴にはまっているようです、これまでのレッドブルの選手と全く同じパターンですね。上手く行かない原因は怨念かも(´・ω・`)
 時々言われる『車がフェルスタッペン仕様』というのは語弊があると私は思います。以前にもRB21を新機動戦記ガンダムWのトールギスに例えましたが、絶対的な性能で言えば明らかにRB21はライバルに比べて劣っており、その劣っている中で『こことこことこことここを完璧に100%全部上手く動かしたらギリギリウイングガンダムと戦える!けど人間ではそれは無理(。∀゜)』というほぼムリゲーな状態を奇跡的にどうにか実現し、まるでRB21が速い車かのように走らせているのがフェルスタッペン、という方が考え方として妥当なのではないかと思います。同じ乗り方が出来なければピアストリもノリスもルクレールも歴代レッドブル挫折メンバーズと大きくは変わらない結果しか出せないかもしれず、そうであったとしても私は驚きません。

 さて今回のレース、ノリスは優勝でひとまず崩れかけた流れを立て直したと言えそうです。間違いなくこの週末に最も速いドライバーの1人であり、その速さを生かしての優勝であったと思いますが、ピアストリが真後ろにいたレース序盤に2度ミスを犯しており、速さはあったけどチームメイトからの重圧に対する精神的な対応という面ではまだ課題を感じました。
 点数をつけるなら ポール トゥー ウィンで100点満点!というわけではなくしいて言えば結果で勝って内容では反省点が多い75点ぐらいのレースの内容だったのかなとも思いますが、100点のレースをしても勝てないよりは75点のレースをしてもとりあえず勝つことが今の彼にとっては重要だったでしょうから、それも含めて自信に繋がる勝利だったのではないかと思います。ピアストリは1回やらかしそうになりましたけど落ち着いてましたね、たぶんコラピントに押し出された瞬間が一番焦ったと思います(笑)

 次戦は2週連続開催のイギリス、決勝は日本時間23時からなので私は全編録画かも、いや、実は今回もリアルタイムでは30周ぐらいしか見てなかったんですけどね(笑)なおコラピントは1周遅れの15位でした。

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