NASCAR 第17戦 ポコノー

NASCAR Cup Series
The Great American Getaway 400 Presented by VISITPA.com
Pocono Raceway 2.5miles×160Laps(30/65/65)=400miles
winner:Chase Briscoe(Joe Gibbs Racing/Bass Pro Shops Toyota Camry XSE)

 NASCAR カップ シリーズはレギュラー シーズンが残り10戦となりました。第17戦はオーバルで唯一ターンが3つしかない特殊な高速トラック・ポコノー。ターンのバンク角が低くて結構なブレーキも必要、抜きどころが無いトラックです。イベント名をぼんやり見ていたら一瞬ゲートウェイと間違いそうですが、ゲタウェイ=休暇ということで長期休暇でペンシルベニア州を満喫しませんか?というような観光局みたいなところがスポンサーですね。
 1周が長いトラックで抜きにくいので作戦的にはロード コース作戦が使えるトラック、航続距離が約100マイル=約40周なので基本は40周×4の3ストップ作戦となり、そこに事前に分かっているステージ間コーションをどう組み合わせるかの戦略ゲームになることが多いです。その1つの結果として、これまでポコノーでステージ2の勝者が優勝したことはありません。昨年と比べると左右ともタイヤが柔らかい仕様になっているので、運営的にはもうちょっと追い抜きが増えて戦略だけではないレースになって欲しいところでしょうか。タイヤが減れば燃料だけを考えて作戦を立てられなくなるので動きは増えることになりますがどうなるでしょうか。

・イン-シーズン チャレンジ

 レースに付随して勝手に行われている新たな賞金イベント・インシーズンチャレンジ。第14戦ナッシュビル終了時点での選手権ポイント上位32人に出場権があり、第15戦ミシガンから今回のポコノーまでの3戦の平均順位で『シード権』が確定します。放送でどこまで取り上げられるのか分かりませんが頭の片隅ぐらいに入れておきましょう。

・ちょっとしたデータ

 ポコノーはかつては年間2回開催でしたが2022年以降は年間1回になったので、Gen7で開催されたレースはこれまでに3回。優勝者は古い方からチェイス エリオット、デニー ハムリン、ライアン ブレイニーですが、平均順位だと未勝利のタイラー レディックが2位、2位、6位と惜しい結果で平均3.3で最良。チェイス、クリストファー ベル、バッバ ウォーレスが続きます。ちなみに引退してますがマーティン トゥルーエックス ジュニアは3戦ともトップ10フィニッシュして平均順位6.0と好相性でした。
 通算ならハムリンが歴代最多の7勝を挙げています。カイル ブッシュがこれに続く通算4勝ですが、Gen7になってからは昨年はクラッシュ、2022年はレース後車検で失格となって良い思い出がありません。ロス チャステインも過去3年で2回クラッシュ、通算9戦でポコノーは一昨年の13位が最上位、リード ラップ フィニッシュもこの一度だけであまり結果が出ていません。
 ちなみにポコノーでは歴代で4人のドライバーがカップシリーズ初勝利を挙げており、ハムリン、ブレイニー、クリス ブッシャーの3人が現役。残る1人は1998年のジェレミー メイフィールドです。

・レース前の話題

 久々に裁判のお話。23XI レーシングとフロント ロウ モータースポーツは2025年からのNASCAR参加憲章の内容を承諾できずに契約をしなかったため、NASCAR側がチャーター使用権を剥奪。チャーター権が無いと収益分配金がほとんど貰えず経営に甚大な被害を受けるため、両チームはNASCARに対して『独占的な地位を濫用してチーム側に損害を与えている』として提訴を行うとともに、裁判が決着するまでの間はNASCAR側のチャーター剥奪処分を差し止めるように申請を出しました。
 これが昨年12月に裁判所に認められて両チームは参加契約を締結していないままチャーター保有チームと同じ立場で参戦を行ってきましたが、去る6月5日に第四巡回区控訴裁判所はこの仮差し止め命令を破棄する決定を下しました。NASCAR側に有利な判決と言えます。両チームはこの決定に対する再審理の申し立てを行うことが認められているため即時発行されてはいませんが、判断が覆らないとチームが不安定な立場におかれる可能性があります。

 辛気臭い話題の後は明るい話題、来年からクラフツマン トラック シリーズに復帰するラムの最高経営責任者・ティム クニスキスはポッドキャスト番組にゲスト出演し、その中でカップシリーズ参戦について

「カップレースに参戦するにはもう少し時間がかかるでしょう。目標は、(トラックシリーズ復帰の)1年後にカップレースに参戦することです。皆さんからはそんなことは夢にも思っていない、絶対に無理だと言われますが、私たちの伝統から得られるいくつかの要素が開発期間を短縮できると考えています。もしかしたら、来年はトラックレースでデイトナに参戦し、翌年にはカップレースでデイトナに参戦できるかもしれません。」

 と早期のカップシリーズ参戦に含みを持たせました。実現性は別にして、ラムが早い段階でカップにも参戦する意思があることははっきりとしましたね。

・Craftsman Truck Series Millertech Battery 200

 クラフツマン トラック シリーズは残り19周のリスタートで思わぬ波乱。リーダーのコリー ハイムが右後輪のパンクによりターン2の先で隊列を外れてピットへ。これでリスタートでコントロール カーの立場になったのは1列目に並んでいたレイン リッグスのはずでしたが、2列目にいてハイムの抜けた場所を前に詰めたカーソン ホースバーが先行してコントロールカーのようにリスタート。これでリスタート違反を取られました。
 結果としてライバル2人が立て続けに消えたリッグス、そのままタナー グレイを寄せ付けずに優勝し今季初・通算3勝目を挙げました。予選2位でこのところ上位を走る場面が増えてきた22歳・ケイデン ハニーカットは今季2度目の3位でした。

・Xfinity Series Explore The Pocono Mountain 250

 このレースの大きな話題はコナー ジリッチのクルー チーフをデイル アーンハート ジュニアが担当することでした。本来のクルーチーフ・マーディー リンドリーはナッシュビルのレース後車検で複数のナットが脱落していたことから出場停止処分を受けており、その代役でした。リンドリーの父・ブッチ リンドリーはデイルジュニアの父・デイル アーンハートと現役時代に縁があり、それ以来両家には縁がありました。今回リンドリーが出場停止になることを受けて、彼がチームのオーナーであるデイルジュニアに声をかけて実現したようです。
 そんな中で始まったレース、チェイスがこちらにも出場しており予選1位から最終的にこのレース最多の38周をリードしましたが、レースの終盤にコーションが相次いだことが影響。残り13周のリスタートで内側にいたジャスティン オールガイアーが無理に突っ込んだので外へ押し出されて順位を下げてしまいました。これで優勝争いはジェシー ラブとジリッチの若手2人になりましたが、残り4周でジリッチが前に出てそのまま優勝。エクスフィニティー通算3勝目でオーバルでは初勝利となりました。ジュニアさんは代役クルーチーフでまさかの優勝、スターはやっぱり持っています。チェイスは4位に終わりました。

・カップシリーズ
 予選

 ブッシュ ライト ポール賞はハムリンが獲得しました、今季初で通算44回目、ポコノーでは通算5回目です。2位からブッシャー、ホースバー、ジョン ハンター ネメチェック、コール カスター、チェイス ブリスコー、タイ ギブス、レディック、ベル、ダニエル スアレスのトップ10。
 ドライバー選手権1位で練習走行でも最速だったウイリアム バイロンですが、ターン2でクラッシュしてしまい31位、出走順でバイロンの次だったチェイスはこの影響を受けてしまい18位でした。また練習走行で2位だったウォーレスも予選に出ようと思ったら車が動かない不具合が発生して記録無し。練習走行トップ2がいずれも後方からスタートになっています。

・ステージ1


 本日のグランドマーシャルはポコノー通算3勝、来年のNASCAR殿堂入りが決まっているカート ブッシュ。雨で2時間ほど開始が遅れたようですが快晴のもとスタートし、まずはハムリンがリード、ブッシャーがずっと後ろにへばりついています。後方ではバイロンがスタートから順位を爆上げ、15周もしないうちにすでに19位まで浮上しておりいずれトップ10圏内に入って下手すると優勝争いに加わりそうな雰囲気です 。
 スタートから3位に着けていたのはホースバーでしたが、18周目のターン3で突然ドリフト大会を開催、事故らず見事に立て直すあたりに若かりし頃のカイルのような才能の高さを感じますが、この我慢比べの展開の中で順位を下げてしまいます。あれだけ滑らせるとタイヤにもよろしくありません。
 30周と短いステージ1はそのまま終盤へ、リーダーから概ね15秒差以内にいる選手はロードコース作戦が使えるので5位から11位あたりの選手が作戦実行、リーダーのハムリンを含め上位4人はそのまま走り切ってハムリンがステージ1を制しました。ブッシャー、レディック、ブリスコー、エリック ジョーンズが続きました。ロードコース作戦の人がいるためですがバイロンはステージ9位です。

・ステージ2

 先ほどステージを走り切った人はステージ間コーションでピットへ 。これでロードコース作戦の人が前に来てステージ2はケゼロウスキーとホースバーの1列目でリスタート、ケゼロウスキーはステージ1で元々8位あたりにいました。ピット組ではブッシャーがピット内でハムリンを逆転しており、いずれも5列目からのリスタートです。36周目にリスタートしてまずはケゼロウスキーとホースバーがワンツー、ハムリンはうまくスタートから抜け出してステイアウト組数人をかわすことに成功しましたが、ブッシャーは上手く抜けることができませんでした。

 41周目、ライリー ハーブストがターン1で単独クラッシュして2回目のコーションが発生、右前のタイヤが壊れてのクラッシュとみられますがポコノーでこの事故り方はブレーキが疑われます。計算上ここはピットに入っても残りの給油回数が変わらないので上位7人を含めそれなりの人数はステイアウトしました。リスタートで埋まってしまって8位にとどまっていたブッシャーは戦略が狂ったと思われ、ここで4輪交換と給油でステージ1で争っていたハムリンとは別の道を行くことになりました。
 また、このピットではシェイン バン ギスバーゲンがお隣さんのA.J. アルメンディンガーのクルーが持っていた車輪と接触。跳ね飛ばした車輪がギスバーゲンのクルーに直撃するという怖い場面がありました。ギスバーゲンも無線で「タイヤに当たったと思うんだけど、人じゃないよね?」と確認。当たったのはタイヤなんだけど結局それが人間に当たってるのでかなり心配ですが、どうやら大丈夫だったようです。

 49周目にリスタートしましたが、6周後に今度はウォーレスの右前タイヤがパンクしてターン2でクラッシュ、コーションが発生。これは映像にばっちりブレーキが砕け散る様子が映っていました。23XIレーシングに相次いで同じ問題が発生したので残るチームメイト・レディックにも無線で確認したところ、やっぱりブレーキの感触はよろしくないとのこと。バランスを後ろ寄りにするよう言われたみたいですが、このトラックで後ろ寄りのバランスは速くないですね。結局レディックは一時ピットで作業を行うなど本調子で走ることができずこのレース32位でした。

 トラック上に話を戻すと、ステージ1終了前にピットに入った人を中心に燃料を半分以上使っているので、ここは多くのドライバーがピットへ。ところがリーダーのケゼロウスキーはなぜかピット入り口が開放される前に1人だけ先にピットに入ってしまいました。どうやら完全に本人の勘違い、思い込みでピットに入ってしまったようです、後ろにいたホースバーもうっかり釣られそうになりました。謎の失敗によりケゼロウスキー後退。
 ここは10人がステイアウトして61周目、ジョーイ ロガーノとオースティン シンドリックの1列目でリスタートしました 。2周後にアレックス ボウマンがロガーノをかわしてリードを奪い、一方でロガーノの後ろにはリッキー ステンハウス ジュニアとホースバーが並んで走っています。先週メキシコで揉めたばかりの2人、ステンハウスは「アメリカに戻ったらぶっ潰してやるからな!」とか言ってたので嫌でも煽るテレビ局、じゃないやストリーミング局。今日は何も起こりませんように 。

 その後73周目にマイケル マクダウルの右前タイヤがパンクしてトラック上に破片が落ちますがコーションなくしばらくレースは進行。でもどう見てもまあまあ細長い破片が落ちており、結局78周目になって4回目のコーションとなりました、なぜこれほど長期間放置した運営よ(笑)このコーションで多くのドライバーがピットに入りましたがステンハウスとホースバーはいずれもステイアウト。
 81周目、残りちょうど80周でリスタートとなり、前に出たのはこのデンジャラスな2人のどちらでもなく、2列目からリスタートしたブリスコーでした。ステンハウスは2回目のコーションで、ホースバーはステージ1の終盤にピットに入ったドライバーでそれなりにタイヤが古いですが、ブリスコーは75周目にアンダー グリーンでピットに入ってすぐにコーションを拾ったのでタイヤが圧倒的に新しい状態でした。その前の給油がステージ1終了後の31周目でしたから、燃料がもう残って無いのとひょっとしたらマクダウルのデブリーがいずれコーションになると読んだかもしれません。
 このリスタートは2周後に後方でカイルの単独スピンをきっかけに多重事故が発生してまたもやコーション、ホースバーはそろそろ燃料が空っぽでしょうからちょうどピットへ、ブリスコーとステンハウスはステイアウトで88周目にリスタートとなり、そのままブリスコーがステージ2を制しました。ジョッシュ ベリー、チェイス、バイロン、ブッシャー、ハムリンのトップ6。さっきのコーションでピットに入ったホースバーがステージ10位、一方ステイアウトしたステンハウスはタイヤが古いせいか11位だったのでちょっと作戦ミスでしょうか。

・ファイナル ステージ

 ザックリ言って最後の給油が4回目のコーションより前の人は給油が残り2回必要なので、このステージ間コーションでピットに入りました。順位的にはかなり後ろに下がってしまいますが、最後の給油はあと20周分ぐらいの燃料を足せば良いだけになるので作戦の幅はあります。ただしピットのタイミングを遅らせるとコーションが出た時にほぼ権利がなくなりますので、幅があってもそれを有効活用できるかはわりと運しだいです。
 101周目、残り60周でリスタート、まずはブリスコーとブッシャーが前に出て3番手にはハムリンがいます。途中一旦は作戦が分かれたブッシャーとハムリンですが、いずれも4回目のコーションで給油と4輪交換、残り給油1回ということで同じ条件の争いに戻っていました。
 そのまま落ち着いた展開でレースは進み118周目になると中団のドライバーでいよいよ最後の給油が始まりました。ブリスコーも119周目に目いっぱい飛ばした様子で後続を少し引き離してピットへ 。さらに120周目にハムリン、121周目にブッシャーと続き、ピット後の位置関係はブリスコー、ハムリン、ブッシャー。ただブリスコーはえらくピット前と比べて後続を引き離しているので給油時間短すぎる気もします。
 一方で普通に戦うと勝負権がない人たちは逆張りでピットに入るのを遅らせていましたが、125周目にギスバーゲンが単独でスピンして7回目のコーションが発生。すでにピットに入っていた人たちはある種想定内の出来事で、引っ張っていた人たちにとっては最悪の展開になってしまいます。しかしちょうどこのタイミングでピットにはブレイニーが入っており、さすがにブリスコーの前で合流していきなり先頭!とはなりませんでしたが、燃料とタイヤが万全の状態でハムリンの後ろ・3位に付けました。ピットサイクル前は4位だったので丸儲けです。
 丸儲けしたブレイニーと対照的だったのはケゼロウスキーでした。クルー チーフは古いタイヤで走ることによる損失がけっこうあるのでピットに入るように指示していましたが、ケゼロウスキー自身はクリーン エアーで自分のペースを保って走り、なるべく引っ張ることで勝機を見いだせると信じてステイアウトを主張。その直後にコーションが出ていました。開いていないピットに入ってペナルティー、入れと言われたピットに入らずペナルティー級の損害、全て裏目に出ています。

 コーション中の現地情報でやはりブリスコーは給油時間短すぎ問題により燃料が不足している様子、とりあえず131周目にリスタートします。ブリスコーがガス欠で脱落すると仮定したら今の2番手争いが実質的な優勝争いになるので、リスタートでブレイニーがハムリンを攻めていましたが、ここはターン1から先のストレートでブリスコーがハムリンをドラフトに入れてあげてました。チームで上手く助け合ってブリスコー、ハムリン、ブレイニーの順となります。

  ブリスコーは可能な限り燃費走行しながらリードを維持、ハムリンとブレイニーは後ろからじーっと付いている様子で、そのまま動きが無く残りは10周を切りました。ハムリンとしてもそろそろ動きを見せたいところなんですが、映像を見ているとどうもブリスコーとの差が0.4秒を切るとダウンフォースが抜けて車がかなりタイトになってしまう様子、ここから距離を詰めることができません。
 ブリスコーはショート シフトとターン入り口でのちょっとしたスロットルの調節でハムリンに追いつかれないようにしながらコツコツと節約し続け、追いかける側が期待するガス欠が待てど暮らせど起こりません。残りが5周を切るともうハムリンが自力でブリスコーを抜けそうにないのは明らかで、あとはブリスコーの燃料が足りるかどうか、あとは誰かがやらかしてオーバータイムになるかどうかだけの問題。
 アベマの解説では残り10周あたりで「ブリスコーはさっきより回転数を上げてるから足りることが分かって飛ばし始めたんじゃないか。」と言っていましたが、実際そんなに変わっていないどころか残り3周あたりからはストレートの終盤でスロットル半分戻し、8000rpmあたりで4速から5速に上げており、ハムリンが来ないと見てさらに慎重を期して燃料を節約しに行っているように見えます。
 そんな努力のおかげでとうとうホワイト フラッグ、ブリスコーは最後まで燃料ケチケチ走行を続け、ハムリンもブレイニーも見えてはいるのに捕まえることができませんでした。チェイス ブリスコーが"独り燃費レース"を制して今季&ジョー ギブス レーシング移籍後の初勝利、通算3勝目を挙げました。

「本当に大変だった。ちょっと変な感じだったよ、激しく運転していたわけでも、限界ギリギリだったわけでもなかったんだ。でも、おそらく史上最高のドライバーに追われているのは本当に辛かったよ。燃料を節約したり、その他あらゆることを意識していたんだ。レース ファンのみんな、ありがとう。ここへ来るたびにチケットは完売で、満員の観客の前でのレースは信じられないほど素晴らしいものなんだ。僕らのチームにとって最高の一日だった。今年初めて本当に良いレースができたと思っている。バス プロ ショップス、ジョニー モリス、そしてトヨタをビクトリー レーンに導くことができたのは、本当に素晴らしい経験さ。ジョーギブスレーシングは僕に大きなチャンスを与えてくれた。誰もが僕を第一候補に挙げていたわけではなかったと思うけど、ここまで来てようやく勝利を収めることができて、本当に最高の気分だよ。」

「僕と一緒に仕事をしたことがある人なら誰でも、普段はオーバードライブで、いつも目標を外れていることを知っているだろう。確かにスピードを落とすと本当に大変なんだよ。父はいつも『スピードを落とせばきっと速く走れる』と言っていた、本当にその通りさ。素晴らしい一日だった。マリッサ、ブルックス、クーパー、コリンズに呼びかけたいね、みんながここにいて、この日を祝ってくれたらよかったのにと思うよ。本当に素晴らしい一日だった、改めてレースファンのみんなに感謝したい。」

※マリッサさんはパートナー、2人の間には2021年に誕生した長男と、2024年に双子で生まれた次男・長女がいます。

「僕は文字通り、ジョーギブスレーシングのホーム デポのユニフォームを着てスプリント カーのゲームでレースしてたんだ。さっき言ったように、彼らが僕にチャンスを与えてくれたおかげでコーチ(=ジョー ギブス)をビクトリーレーンに導くことができて、本当にやりがいを感じている。肩の荷が下りたような気がするよ。ここ2週間、妻に『絶対に勝たなきゃ』と言い続けてきたんだ。ようやくここに来てそれが叶って、最高の一日になったよ。」

 2位はコーション運でブリスコーに先行され、抜くのは困難だったと振り返ったハムリン。3位はクール スーツが壊れて暑かったブレイニーでした。4位からブッシャー、チェイス、ネメチェック。7位に今日は全く目立たなかったカイル ラーソン、8位はライアン プリース、そして後悔だらけのケゼロウスキーが9位でした。でもRFKレーシングは全員9位以内ですから良いレースでした、それだけに誰かは勝ちたかったところでしょうけど。10位にシンドリック、ホースバーは18位。追い上げに期待がかかったバイロンは一時上位にいたものの、リスタートの争いでタイヤカスに乗って順位を下げてしまい27位、ステンハウスは30位でした。


 ブリスコーの勝利というのはなかなか意外な結末でした。コーションが出る前にピットに入るとオトク、というのが基本パターンですがステージ2中盤で得してそのまま勝ちきってしまったというのはなかなか珍しく、冒頭に書きましたがステージ2勝者がレースに勝ったのは初めての出来事でした。私はブリスコーが確実にガス欠で脱落だと思っていたので、走り切っただけでも驚きましたがバーンナウトする燃料までちゃんとあったのでもう笑うしかありませんでしたね。
 本人がレース後に語った通り、わざと遅く走る、しかも全開率の高いオーバルで、というのは難易度が高いもの。しかも今回は普段のオーバルとはかなり走らせ方も違う三角形オーバルのポコノーです。普段からリフト&コーストを多用するF1やフォーミュラEのドライバーならまだしも、ここはストックカーのシリーズ。リズムを取るのも非常に大変だったはずで、見事な適応力だったと思います。

 視点を変えると、最後の給油の後にコーションが出たというのは燃料が足りなかった彼にとってはかなり助けになった可能性があります。ファイナルステージがずっとグリーンで進んでいたらさすがに燃料は足りなかったでしょう。また燃料節約走行でも普段のオーバルであればハムリンはラインを変えてどこかで仕掛けるようなこともできたかもしれませんが、ラインが一本しかないこのトラックでは仕掛けることが容易ではありませんでした。"燃費走行する"のも難しいけどここでは"燃費走行している相手を抜く"のも案外難しかったということが言えると思います。
 さらに何人かドライバーのレース後のコメントを見ているとラインを外れた場所のタイヤカスは結構影響があったようなんですが、冒頭にも書いた通り昨年と比べると柔らかいタイヤが使用されていましたので、摩耗しやすいタイヤのせいでタイヤカスが普段より多くなり、それがさらに追い抜きを難しくしていたというようなことも考えられます。ブリスコー自身もステージ2のリスタートの際にかなり順位を下げていたので争いの中でタイヤカスに乗っかって失敗したんじゃないかと思いますが、いろいろな面でブリスコーには運が向いていました。
 ちなみにブリスコーの燃料が少なかった要因ですが、クルー チーフの方からは待てと声が掛かっていたのに、騒音が大きくてブリスコーは全然聞こえていなかったと、いう単純な連携ミスでした。このせいで負けてたらめちゃくちゃショックだったでしょうね。。。

 さて、次戦は今年2回目のアトランタ、疑似直線レースもどきです。開催日が土曜日の夜ですのでうっかりネタバレが起きないようにお気をつけください。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
カートが出てきた時は、「おー」と思ったんですが、ポコノは予選のクラッシュでキャリアを終えることになった因縁の場所なだと、後になって思い返しました。ブリスコーは見事な走りで、契約がどのくらいかは知りませんが、それで来シーズンのシートは保証されたかな、って気が。昔、ジョーンズが、サザン500で優勝したことで契約延長が決まった・・・なんてことがありましたし。アベマの実況で、ハムリンがブリスコーに勝利を譲るのか何て会話がありましたが、スポンサーやポイントの関係もあるし、そんなことは有り得ないなんてやり取りがあり、リッチモンドのスピンゲートを思い出してしまいました。まぁ、あそこまで露骨なことをやるわけないでしょうが、あり得ないでしょうね。少し前までは、ハムリン、カイル、トゥレックス、ベルの4台で新旧交代が遅れていましたが、ベルチャンピオンシップに出るほどのトップドライバーになり、ギブスに加え、ブリスコーが定着すれば、ほぼ新旧交代となります。マーティンのラストイヤーは2013年で、54歳でしたから、ハムリンはあと10年・・・。最後のランキング2位は2009年だったので、50歳。その辺までハムリンはやる気かも(汗)。スポンサーにの恵まれ、本当にやるような気がします。ロブスターを思い切り嫌がっていたニューハンプシャー(ロードン)での優勝をまた観たい気がします。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 カートのキャリアが結果としてここで終わってしまったことはこのコメントを読むまで私も完全に忘れていました^^;
 順位操作はNASCARの場合はチーム戦じゃないからそもそもやろうとする動機があまりない上に、やったらとんでもない重罰を受ける可能性が高いから普通はやらないんですよね。増田さんが知らずに聞いたのか、視聴者の方が抱きそうな疑問をあえて考えて話題を振ったのか分かりませんが、できれば古賀選手には基本的に禁止行為であるという点も説明して欲しかったなあとは思いました。

 あ、ちなみにハムリンがロブスターを嫌がる動画はつい最近もNASCAR公式の『失敗した優勝セレブレーション集』みたいな動画で出てましたよ(笑)
アールグレイ さんの投稿…
JRモータースポーツは今年色々な事がありますね。
オールガイアーを擁してのカップシリーズデビュー、8番の書体の問題、サミースミスの自爆攻撃によるペナルティ、ジリッシュの代役で出場したラーソンが勝利を挙げる、スポット参戦したスアレスのあわや予選落ちからの特例枠利用での優勝、ジュニアクルーチーフの初優勝と話題が尽きません。
それでも若手の活躍などで色々な事情も乗り越えて勝っているのが流石強豪チームといったところです。

ブリスコーはデイトナ500でのポールから、あわや大量減点のペナルティーを受けそうになるなど大変なJGRでのスタートを切りましたが、最近の3戦連続ポールなどで勢いが増して来たところでとりあえず移籍後初勝利を飾れた事は良かったです。
燃費レースで勝てたのはとても大きいでしょうし、SHR最後の14番としても、トゥレックスの後任としても、これから楽しみに見ていきたいドライバーです。

バスプロショップスのスポンサーも、今年は全レースを担当してくれる様なのでドライバーが変わってもこのスキームが毎戦見られる事も嬉しくなります。
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 ブリスコーは振り返るとブリストルダートでの劇的結末(?)からある種のスター性と個性を備えたいいキャラクターで仕上がってここまで来たなあと思いましたね。ダートで鍛えたペダルワークは燃費レースでも案外活かされるのかもしれません。