NASCAR 第16戦 メキシコ

NASCAR Cup Series
Viva Mexico 250
Autódromo Hermanos Rodríguez 2.42miles×100Laps(20/25/55)=242miles
winner:Shane Van Gisbergen(Trackhouse Racing/Safety Culture Chevrolet Camaro ZL1)


 さあやってきました、NASCAR カップシリーズにとって21世紀初の海外レース・第16戦メキシコです。F1世界選手権でもABB FIA フォーミュラ E 世界選手権でもお馴染みのアウトドローモ エルマノス ロドリゲスが舞台となります。エクスフィニティー シリーズは2005年~2008年にここでレースを行っていますが、カップシリーズの選手権レースがアメリカ国外で開催されたのは過去に1952年と1958年にいずれもカナダで開催された2例があるのみで史上3回目です。ちなみに1958年に開催されたレースではリー ペティーが優勝したんですが、同時に彼の息子であるリチャード ペティーがデビューしたレースとして知られています。NASCAR界のキングは実はアメリカ国外のレースからその歩みが始まったわけですね。

 話をメキシコに戻すと、今回NASCARで使用するレイアウトはF1と少しだけ違います。F1はターン1~3の90度コーナー3連発を終えたらものすごくせせこましいターン4~6がありますが、今回NASCARではここを使わずにF1で言うターン4の手前で右折、ちょっとだけコースが省略されています。1周の長さはNASCARあるあるで情報源によってまちまちなので、とりあえず2.42マイルとしておきます。

 オーバルならカップカーの航続距離は約90マイルですが、高地&ロードコースなので航続距離がどのぐらいになるのかは実際に見てみないとよく分かりません。エンジンが燃えないから燃料を食いにくい一方でストップ&ゴーの低速レイアウトは燃料を食うので、まあたぶん75マイルぐらいで30周かそこらだろうと雑予想。作戦はいつものロードコース作戦でステージ1と2は給油不要なのでステージ終了2~3周前にピットに入って給油とタイヤ交換、最終ステージは逆算で早めに入る人と、タイヤのことを考えて均等割りする人のせめぎあいと想像します。直近7戦のロードコース戦ではステージ勝者はレースで優勝しておらず、レースで勝つにはステージポイントは捨てるのが定石となっています。
 またこのトラックは普段のオーバルと違って右回りなので、ワトキンスグレンと同様に右側ピットの構造となります。普段とクルーの動きが異なるのでどうしても慣れた動きよりは時間がかかったり、思わぬ作業ミスをしやすいのでピット作業の正確性も非常に重要です。なお、一時期は右側ピットの違和感を解消するためにあえてピット ウォール側から先にタイヤ交換して普段と同じ右側→左側の流れにするチームもありましたが、走行レーン側のタイヤを後から交換するとクルーが撥ねられる危険性が高いため、現在は『4輪を交換するならウォールに遠い側のタイヤから』と規則で定められておりこの作戦は使えません。

 作戦以上に参加者の頭を悩ませるかもしれないのが熱の問題で、F1でも言われますが標高約2200mで空気が非常に薄いのでブレーキやエンジンの冷却が難しくなり、そもそもエンジンがちゃんと薄い空気に合わせて調整されていないとちゃんと燃焼しないので性能が上手く出ない恐れもあります。普段のシリーズで最も標高が高いのはラスベガスの海抜約600mだそうですが、全然比較になりませんね。近年は非常に信頼性の高い車両で車が壊れるような事案は少ないカップシリーズですが、今回は気を付けないといけないというのは参加する皆さんが持っている印象のようです。もちろん空気が薄いからドライバーもしんどいです。

・ちょっとしたデータ

 初開催でデータも何もあったもんじゃないですが、過去にエクスフィニティーが開催された4戦での優勝者はというと、マーティン トゥルーエックス ジュニア、ハムリン、ファン パブロ モントーヤ、カイルの4人。なんと2人がまだ現役選手ではないですか!ただ後述しますがハムリンは今回のレースを欠場しますので、NASCAR3大全国シリーズでエルマノスロドリゲスの優勝を唯一知っているのはカイルということになります。他にエクスフィニティーのメキシコ経験者はケゼロウスキーがいます。またメキシコ シリーズでスアレスが3度優勝経験を持っていますね。
 今回はロードコースですので、せっかくだから2023年以降今年のオースティンまでのロードコース直近10戦のデータを調べてみましたが、この10戦で最も平均順位が良いドライバー、誰だか分かります?実はブッシャーです。平均順位は7.3、10戦中8戦で8位以内に入っておりトップ10フィニッシュ8回も最多でした。2022年にGen7車両が導入されて以降に範囲を広げても平均順位8.7は最高の数字です。先週は燃費レースを上手く切り抜けて2位を手にしたブッシャー、良い流れで得意のロードコースを迎えることになります。
 平均順位でこれに続くのはベル、レディック、バイロン、チェイス、チャステイン。そしてカイル ブッシュ、カイル ラーソンと2人のカイルが並んでいます。優勝回数ならバイロンとラーソンが2勝で最多タイ、トップ5回数ならバイロンの6回が最多です。チェイスはロードコース通算7勝ですが、2021年のロード アメリカを最後に勝っておらずGen7のロードは未勝利、こう書き続けてもう2年ぐらいになります。
 
 一方で、直近11箇所のカップシリーズ初開催トラックではチェイスが3勝、ロガーノとブレイニーが2勝と初物にはなぜか強い傾向。近年の初開催はロードコースが多かった、というのもありますが、ロガーノは開幕前のザ クラッシュでも初開催のLAコロシアムで優勝するなど目立つ場面で何かやってくれます。

・レース前の話題

 先週のミシガンで優勝したハムリンですが、婚約者のジョーダン フィッシュさんが第3子を出産間近という状態から思った以上に時間が経過。今週はメキシコへの移動なので急に呼び出されてもすぐ駆け付けられないため、『メキシコへの出発時間の時点でまだ生まれていなければメキシコへは行かない』としていました。最終的に現地6月11日に待望の第3子が誕生し、ハムリンはメキシコには行かないことを最終決定しました。プレイオフ免除規定を申請してすぐにNASCARに受理されたため、ハムリンのプレイオフ出場権やプレイオフ ポイントは維持されます。というわけでライアン トゥルーエックスにとうとう出番が来ましたが、まさか出番がロードコースになるとは本人も思わなかったのでは^^;

 そしてもう1人、ミシガンで結構大きな衝撃のクラッシュをしてしまったボウマンについて、背中の痛みがあったためにその後病院を受診したようです。大きな問題があったわけではないようで今週のレースに参加しますが、背中や首というのは怖いので万一に備えてアンソニー アルフレードが代走として待機しています。アルフレードはエクスフィニティーに出場するため元々現地入りしており、ヘンドリックのシミュレーター担当として普段からチームと仕事を行っています。おそらくこのコースと車両もシミュレーターで走っていると思われます。

・Xfinity Series The Chilango 150

 母国のヒーロー・スアレスがJR モータースポーツから参戦しましたが、気合が入りすぎたかなんと予選でクラッシュ。記録上は9分50秒とかいうのが一応計測されていますが実質記録無し、スアレスの車両はJRMの普段はレースに出ていない5台目の車両なのでオーナー ポイントが無く、普通なら予選落ちになっているはずでした。しかし今回はNASCARが『国際的な選手に対する特例枠』を設定していたので、チームはこの枠を使用して参戦。車の前部がけっこう壊れたのでバックアップ車両で最後尾から、本来ならクエイカー ステイトの鮮やかな緑色だった車はほぼ真っ黒の状態での出場です。

 レースはコナー ジリッチとタイ ギブスの1列目でスタートして多くの場面でこの2人が優勝を争っていましたが、初開催ということもあってあっちこっちで接触やらスピンやら荒れ気味。そんな中をスアレスは少しずつ順位を上げて行くと、この3人がトップ3でリスタートした47周目にまさかの展開。3ワイドの争いからターン1でジリッチが、ターン3でギブスがいずれも接触でスピンして多重事故の餌食となりスアレスがとうとうリーダーになる奇跡の展開。

 その後はテイラー グレイの猛攻撃をなんとか耐えぬき、なんとスアレスが最後尾スタート、予選落ち寸前の大失敗から挽回しての優勝で母国のファンの大歓声に応えました。エクスフィニティーでの優勝はチャンピオンを獲った2016年の最終戦ホームステッド以来、通算4勝目でした。

 なお、このレースにはベルも出場して上位を争っていましたがエンジンが壊れてリタイア。また普段はトラックシリーズに出場している20歳のメキシコ人選手・アンドレス ペレス デ ララがエクスフィニティーに初参戦して30位でした。

・カップシリーズ
 予選

 雨が降りそうだったので予定を変更して全車出走・45分間という形式を採用した予選。結果として30分ほどで雨が降って来たのでそこで予選は終了となりましたが、ブッシュライトポールはシェイン バン ギスバーゲンが獲得しました。2位はライアン プリース、3位にチャステイン。4位以下はギブス、マクダウル、ラーソン、トッド ギリランド、A.J.アルメンディンガー、ロガーノ、スアレスのトップ10でした。カイルが11位、チェイスは12位、ブッシャーは16位、代走のトゥルーエックスは36位で、下にいるのはスポット参戦のキャサリン レッグだけでした。
 決勝も雨が予想されていますが、雨でもウエット ウエザー タイヤが用意されているのでレースを行うことはできます。そういえばサーキット オブ ジ アメリカズの初開催レースも雨でグダグダになり、シカゴ市街地の初開催も雨で波乱が起きましたね。その雨のシカゴでカップシリーズ初参戦初優勝の偉業を達成したのがギスバーゲンだったわけですが、経験値の差が少ない、むしろ雨になれば自分の方が経験値が多いという環境は彼に見方することになるんでしょうか。とりあえずあまりに荒れたレースは収拾付かないのでほどほどでお願いします(笑)


・ステージ1

 めっちゃ曇ってるけど雨は降っていない状態で決勝の時間を迎えましたが、やはりこの先に雨の可能性がある模様。アベマの実況解説はふたたび増田 隆生/古賀 琢麻コンビ。スティーブ レターテの解説で航続距離は約30周と言っているので私のヤマカンはだいたい合っている模様です(笑)グランド マーシャルはなんとジェフ ゴードン、古賀さんによるとひょっとしたら来年はARCAシリーズもメキシコに遠征してここを走るかも、とのこと。しかしエクスフィニティーはまだしもARCA規模のチームで海外遠征って費用的に経営が大変そうなんですけどどうなんでしょうね?
 でもF1と逆回りではないですし、私の調べた内容が間違っていなければ海外のポイントレースが初でもないので微妙に説明に誤りがありますね。もちろん近代NASCARとしては初なんですけど。

 いよいよレースはグリーン フラッグ、まずはチャステインが良い動きで2位となりましたが、ターン10あたりまで走ったらいよいよ雨が本気で降って来ていきなりのコーション。これで各陣営がタイヤ交換のためピットに入り、チャステインがピット内でSVGを逆転しました。ただブッシャーとシンドリックはスリックのままでステイアウトし5周目にリスタート、当然スリック勢は動きが悪いので後続がすぐに詰まる形になり、なんか上手いこと3列目からギブスが前に出ました。


 ワイパーを動かしていない車もいるので雨の降り具合はほどほどにも見え、スリックの2人も遅いけど致命的ではない様子。ウエットを履いていてもわりとふらふらのツルツルでの走行でしたが、7周目のターン1へのブレーキでカイルがいきなり回ってしまい、ラーソン、アルメンディンガー、ブリスコーなど前方にいたドライバーを吹っ飛ばして多重事故、コーションとなりました。ラーソンは完全に右前のサスペンションを壊し、一生懸命修理して走りましたが42周遅れの36位でこのレースを終えました。

 カイル曰く、その前の周のターン11でブレーキを突っ込めたので、じゃあターン1も攻めてみようと試したら全然止まらず、どう考えても止まらなくて前の人に突っ込んでしまうのでどっちかに回って人のいない場所にすっ飛んでくれ、とやってみたけどダメだったので巻き込んだ人ごめんなさい、とのことです。

 10周目にリスタート、なんだか動きに落ち着きのないギブス君をターン4でSVGがかわしてリードを奪還。舗装の関係かターン6あたりはやたらと路面がじゃぶじゃぶな一方で、ストレートからターン4あたりまではライン上が乾いていてギスバーゲンも濡れた路面を選んで走っています。そんな中で15周目終了時点、リスタートからたった6周経過しただけですが、ギスバーゲンはギブスに対して約5秒差、3位のプリースはそこからさらに6秒差とかなり大差の展開です、この条件ではSVGが圧倒的。一方地元の星・スアレスは3列目リスタートから白線の外側を走りまくって最初は順位を上げていましたが、タイヤを潰したのか数周したら今度は順位を下げる方向へ。
 16周目、ここでベルがピットに入ってスリックに交換。おそらくシンドリックだけがスタートからスリックのまま走り続けていて参考指標になっていたと思われます。ここからロードコース作戦のついでにタイヤをスリックに交換する流れとなり、ギブスはステージ残り3周、ギスバーゲンは定石通り残り2周でピットへ。入らずにステージ勝利を取りに行ったのはプリースで、ブレイニーを僅差で下してステージ1を制しました。ギスバーゲンはステージ17位でスリック交換組ではもちろん先頭でした。


・ステージ2

 なんとマクダウルなど4人がウエットタイヤのままステイアウト、25周目にリスタートするとこの人たちが遅いのでまたごちゃつき、またもやギブス君が抜け出して今日はとても慎重に見えるギスバーゲンが続きます。後方はリスタートからの3周ほど毎周のように誰かしら接触で回っていますが、全員自力で走れているのでレースは続行。ギブスはとりあえずギスバーゲンとの差を広げて2秒弱まで逃げていましたが、32周目にトゥルーエックスがスピンすると道のど真ん中の危なそうなところに止まったので、自力で移動する前にコーションが出ました。ギブス君残念。

 逆算するとこのコーションでピットに入ったら展開次第ではあと1回の給油で行けそうな境界線ぐらいかなと思いましたが、上位勢はそんな危ない橋は渡らずステイアウトが主流、35周目にリスタート。ギブスが引き続きリードしてギスバーゲンが続き、3位はシンドリックでしたがおそらくスタートからそのまま走り続けているので古いタイヤ、ベルにかわされて4位になりました。でもここまで来ると他の人とピット戦略に大きな差は無く、今はちょっと我慢するタイミングで、結局41周して最初のピットに入ったようです。雨でスタートしてコーションもありましたけどかなり走れますね。

 そのままステージ2はギブスとギスバーゲンが接近したまま終盤へ、当然残り2周で一緒にピットに入る、と思ったらなんとギスバーゲンはステイアウトを選択しました。ギスバーゲンがそのままステージ2の勝者、同じくステイアウトしたベルと4秒以上の差があったので最後の1周はむっちゃ燃料を節約してゆっくり帰ってきました。わざわざ優勝を捨て点数を獲りに行くとは思えないので、ステージ間コーションもステイアウトしてあと1回の給油で走り切る計算が立っていると考えるのが妥当。最後の給油が18周目、給油後にコーションが既に2回で今からステージ間コーション。シンドリックを参考にすればなんとか3回のコーションを含んだこのスティントで42周ぐらいして残り40周まで行ければ足りそうですが、そんなに上手いこと行く!?

・ファイナル ステージ

 やはりギスバーゲンもベルもステイアウトして50周目にリスタート、残りは51周です。どうも今日はリスタートの出足で遅れる傾向のギスバーゲン、今回も出遅れてベルに先行を許し、ターン1で取り返そうとブレーキを遅らせたらロックして行き過ぎ。結局ターン4まで争ってベルに抜かれてしまいます。しかしベルはここまでの流れでギブスほどの速さを持っておらず、52周目のターン11でちょっと暴れてしまってギスバーゲンにかわされました。ベルはステージ1でギスバーゲンより2周早くピットに入っているので計算上は先に動くはずで、彼の動きを見るとギスバーゲンの動向もある程度予想できるはずです。
 その後ギスバーゲンは2位のベルに4秒以上の差を付けて独走。ベルは周を追うごとにタイヤがしんどくなっている様子で61周目、ギブスが真後ろに追いついてきたところでようやくピットに入りました、45周走った計算で残りは39周です。ということはギスバーゲンも燃料はそろそろ空っぽで、やはりベルの2周後・63周目にピットに入って4輪交換と目いっぱいの給油。これでひとまずギブスがリーダーとなり、こっちは43周目にタイヤを換えているし燃料もまだたくさんあるので前に誰もいない今から攻めまくって、タイヤ履歴差を作って終盤勝負が勝つための道筋でしょう。お、なんかちょっとF1的な展開やぞ。

 ところがギブスにとって最悪の展開、65周目にホースバーが最終コーナー手前に止まってしまい、後続車両の隙間で上手く復帰できずにずっと止まっていたので危なくて結局コーションが発生しました、ギブス君残念(2回目)。最後の給油を終わらせていない人たちは当然このコーションでピットへ、ギスバーゲンとベルが1列目、ギブスは7列目なのでけっこう遠い位置です、勝つにはあと2回ぐらいコーションが欲しいところ。
 69周目にリスタート、SVGは今回も出遅れ気味でしたがようやくリスタートを制してリードを維持、2位はベルをかわしたボウマンが来ました。お、去年と一昨年のシカゴ市街地勝者によるワンツーですね。4列目あたりではブリスコーがターン2内側に置いてある近道防止用バリアに接触して動かしてしまいましたが、そんなに固くないらしく本人は順位を下げたものの平然と走行。たぶんこれが動いても『縁石の内側に4輪全部入ったらペナルティー』という基本原理はあるのでたぶん大丈夫なんでしょう、知らんけど(笑)
もうぐちゃぐちゃ

 86周目、ギスバーゲンとボウマンの差は概ね2秒前後のまま数周にわたって推移しており何か起きない限り崩すのは難しそうでしたが、ここでようやくベルがボウマンをかわしました。譲るようにボウマンが下がったのでちょっと燃料かタイヤかブレーキか、どれか休めないとさらに悪化すると考えたような動きです。一方コーション前までは優勝候補だったギブスですが、リスタート後に9位まではすぐに上がれたものの、チャステインを抜けずに集団にハマってしまいそのまま動けなくなりました。何せここは後ろに付いてもドラフティングが効かないので1.3kmの直線があっても全然抜けないんですね。実際、直線ではドラフトに入らずラインをズラして冷却に努めている選手が非常に多かったですし、ドラフトに入った人も全然追いついていませんでした。

 残りが10周を切ると1位と2位の差は6秒を超えてテレビに映らない状態。ギスバーゲンからするとコーション出ないでくれの状態でクルー チーフ・スティーブン ドーランから「きっちりやれよ。」と攻めすぎないような助言。しかしこれに対してSVGは「ゆっくり走るように言うのやめて、集中したいから。」と遮断。ドライバーって変に抑えようとするとミスるんですよね。
 一方で中段はわりと同じ顔触れのドライバーがずっと争ってあっちこっちで接触による不満が溜まっているようにも見えるのでお客さんからすると誰かやらかせ状態ですが、なんとびっくり!結局何も起きず2位に17秒というカップシリーズではなかなかお目にかかれない大差でギスバーゲンがホワイトフラッグを受けました。
 燃料が無くなるようなことももちろんなく、最終結果は2位に16.567秒差というここ25年のカップシリーズでは2番目の大差。シェイン バン ギスバーゲン、2年前に衝撃のデビュー戦勝利を飾って以来となる通算2勝目、優勝者が17人を超えない限りプレイオフ進出です。なおギスバーゲンは第14戦ナッシュビル終了時点で選手権33位だったのでイン シーズン トーナメントの出場権はありません。

 あ、ちなみにここ25年間で最も大差の勝利は2009年秋のテキサス・ディッキーズ 500でカート ブッシュが記録した25.686秒差です。この週末、ノースカロライナからメキシコへの航空便に問題があり予定取りにメキシコに到着できない人もいました。SVGはそのうちの1人で、標高の高いメキシコシティーにじゅうぶん順応する時間が無いというのは楽な話ではありません。しかも彼は体調を崩していたようです。

「なんて1週間だったんだ。この1週間は本当に楽しかった。今日は具合が最低で両方の穴から漏れそうだったよ。あんまり良いもんじゃないね。セイフティー カルチャー、トラックハウス、シボレー、ECR エンジンに感謝しているよ。私たちのマシンは素晴らしかった。54番は僅差だったと思うけど、最後のスティントは周回を重ねるごとに車が小さくなっていくのをミラー越しに見ることができた。信じられないよ。」

 今回の車の感触が今まででどのぐらいだったか聞かれると

「確かに上位に入ってるね。これまで素晴らしいレースに何度か恵まれてきたけど、速度を落とすと集中力が途切れてしまうからリズムとルーティンを守ろうとしていたんだ。ジョッシュとスティーブンが本当に素晴らしい仕事をして、私を落ち着かせ集中力を高めてくれた。本当に素晴らしかったよ。」

 実はレース前にはフェルスタッペンと連絡を取り合っていたそうで、その中身については

「少し濡れた路面だったよね。どんなライン取りをするか、どうアプローチするか、といったことさ。本当にすごいヤツだよ、彼が今日(カナダGP)どうだったかは分からないけど、彼がうまくいってることを願うし、僕もこれで壁を越えられるといいね。」

※最初の話はオートスポーツwebだと「でも今日の走り自体は良くなくて、終始楽しめていたわけじゃない。」と書かれてるんですが、質問内容とその後の話からするとここは腹具合的な話じゃないかと思ったのでそっちの解釈で書きました、全然違ってたらごめんなさい。

 2位は「自分の力不足だった。シェインが走ってくれて嬉しい。ロードコースレースで良い成績を残さなければならないというプレッシャーは大きいが、彼は我々にとっての基準となる。」と勝者を称えたベル、3位はレース終盤にかけてコース上で他者をかわしていったチェイスでした。「水曜日は歩くことさえできなかった」というボウマンが4位、5位はマクダウルでした。マクダウルはウエットでステージ2開始後の28周目まで引っ張り、残りの72周を1ピットで走り切る実質2ストップ作戦で上手く順位を取ることに成功、一般的な戦略でステージ2終了前にピットに入った選手より前に行ってますから作戦成功でした。

 6位からネメチェック、ブリスコー、コール カスター、バイロン、ブッシャーのトップ10。ギブスは11位で「人生では上手く行かないこともある、とにかく努力し続けるしかない。」と絶好の勝機を逃してがっかりしていたようです。アルメンディンガーは序盤の貰い事故が響いて13位、チャステインは元気に走ってましたがあっちこっち当たりまくっていた1人で結局16位、スアレスは19位でした。

・ステンハウスとホースバー、一触即発

 レース後、ステンハウスがホースバーの車のところにやってきて車内に向かって猛抗議、「アメリカに戻ったら潰してやるからな!」と吠えました。ホースバーはこのレース接触やら自滅やらでボロボロでレースの終盤は周回遅れでしたが、その状態でいわゆるスタジアム セクションで2回もステンハウスと接触し、特に2回目は完全に回してしまいました。この2人はナッシュビルでも接触、正直私から見るとこの時の接触でホースバーに特に非は無さそうに見えたので、たぶんステンハウスからするとそれ以前から不満があっての流れだったと思いますが、この一件でむっちゃ怒っていました。先週2人は話し合いの機会を持ったという話だったんですが、それを経て周回遅れが2回もぶつかったらそりゃあこうなります。


 1回目はたぶん単純に取っ散らかった、2回目はわざとぶつけたというよりもう集中力が無くてぼーっと走ってたんじゃないかとも思いますけど、当てたこと自体が彼の責任なのは明らかでした。ステンハウスに対して「ボロボロだったんだ!」と言い返してはいたんですが、まくしたてるステンハウスの声に全部かき消されて全く聞いてもらえてませんでした(笑)

 なお、ホースバーはこの件とは別に、レース前の金曜日に行われたライブ配信でメキシコについて「糞穴」などと侮辱的な表現を行ったことから、チームから5万ドルの罰金と感受性プログラムの受講を命じられています。

 初開催のメキシコは大本命の圧勝でしたが、スタジアムセクションで当たりまくるし、レース後も喧嘩してるし、ある程度見せたいものは見せられたのかなと思います。航続距離はアンダーグリーンで40周弱、というのが実際の数字だったでしょうか。たぶん走らせ方でもだいぶ違ったんだと思いますが、先を上手く読んだ人が上位に来ました。
 ギスバーゲンはステージ2でギブスの後ろに回った時に徹底して燃料を節約していたんだなあというのが最終ステージになってなんとなく見えたわけですが、ギブスと彼の陣営はギスバーゲンがわざわざ違う戦略でリスクを取ることはないだろうとちょっと決めつけすぎて裏をかかれてしまったのかなあと思いました。仮にホースバーのスピンによるコーションが無かったとして、終盤に新しいタイヤで追いかけられたかどうかはなかなか予想が難しいですが、結局は作戦のズレが運を左右したわけですし、ベルはギスバーゲンと同じ作戦をより燃料が厳しい環境で託されていたわけで、結局はまだまだ経験と信頼が不足していたことが敗因だったとも言えます、まあでもそのうち勝てるでしょう。

 次戦はアメリカに戻りまして三角形オーバルのポコノーです。

コメント

日日不穏日記 さんの投稿…
アベマでは、カップ戦初の海外ポイントレースとは言っていましたが、50年代のカナダはグランドナショナルシリーズ時代だったので、ギリギリセーフだった?メキシコシティ入りの際にブルックリンじゃなくて、ミシガンと言っていたし、ゼイン・スミスになってたし。何だかなぁ、と。クルーチーフのストラテジーあってのギスバーゲンの勝利ではあるものの、燃費に加え、タイヤマネジメントをきちんと出来なければ、ここまでの圧勝は出来なかったわけで、ギスバーゲン凄いなー。F1がNASCARを取り上げることはまずないのに対し、NASCARは、F1を話題にしますね。コカ・コーラ600でも同日開催のインディ500とモナコGPの結果は流しているし。少し前に1994年のイモラの事故を同日開催のタラデガのレース中にセナの写真と戦績を紹介するYouTubeで観ました。優勝したアーンハートがセナに触れていたりとか。ま、フェルスタッペンはメキシコGPの最多勝ドライバー(5勝)なので、アドバイスはあったんでしょう。ポイントでリードしているレディックが、ロードでパッとしないこと、ペンスキー勢3人が優勝はしているのの、揃って振るわなかったのが気になります。
SCfromLA さんの投稿…
>日日不穏日記さん

 ドライバー名の読み方とかは視聴者の反応見て変えてたりするかもしれませんね。できれば放送前にここを読んでいただくと資料の間違いが少なくて良いのではないかと(←何様)
 ペンスキーはロードコースならシンドリックとブレイニーが同等でロガーノはちょっと落ちるかあというのが今の序列で、それでいて全体として見ればSVG、ラーソン、AJ、ベル、チェイスあたりから1段階落ちる感じなので、この先ロードコースが多い時期はちょっと目立たない季節になるかもしれませんね。案外RFKの中堅どころ2人の方がロードでは存在感ありますね~。
アールグレイ さんの投稿…
スアレスはエクスフィニティーでの事とはいえ、ギスバーゲン共々トラックハウスのドライバー2人で見事に決めましたね。

スアレスが特例枠を使ってるのは事情が事情だけに仕方ないのはありますが、何年か前にチェイスがエクスフィニティーにスポット参戦した時、雨で予選が中止になってオーナーズポイントでグリッドを決めた為予選落ちになったのを考えれば不公平感はありますし、カップドライバーなんだからカストロネベスと違ってちゃんと自力で予選通過しないといけない立場でしょと思いますが、それでも母国凱旋を飾れた事は、ブラジルやロサンゼルスでのクラッシュ時に行われたメキシコのNASCARシリーズにスポット参戦して色々なアピールをしたことが報われたと言っていいでしょう。

スアレスの真っ黒スキームは、たまにある予選落ちしたドライバーが既に予選通過した他チームの車両での出走枠を購入して決勝に参戦した時、このチーム本来のスキームの代わりに、ドライバー本人のスポンサーだけを急遽追加した物を思い出されます。
(1986年コカコーラ600で自チームの#43をプラクティスでクラッシュさせてしまい出走できなくなり、他チームの#6での出走枠を購入して緑ベースのカラーリングにSTPのスポンサーなどを移して出走したリチャードペティの例もあります)

SVGはポイント30位以内に入れずインシーズントーナメントの出場を逃すなど、まだオーバルに苦労しているところはありますが、それでも体調不良もあった中、シカゴストリートの時のように初物のロードコースという最大のチャンスでこれだけ差をつけてプレーオフの出場資格を手に入れた辺りは流石です。
ただ、去年のバートンのように30位以内ルールが無くなったお陰でプレーオフに出れるドライバーになる可能性は大きいので、本当にオーバルでの活躍もそろそろ求められるところだと思います。

フェルスタッペン、SVG共にFIAのドライバーカテゴライズがプラチナなので、いつかはレッドブル繋がりで耐久レースで組んでいるところも見てみたいです。

ホースバーは速さの他に問題児な部分も出てきたところが良いですねw
SCfromLA さんの投稿…
>アールグレイさん

 チェイスが雨のせいで強制予選落ちしたのはスポンサーもお客さんもみんながっかりな出来事だったと思うので、今回たまたまスアレスを救済する方法があってよかったなと思いましたね。気合入りすぎて自爆するのは評価としてはマイナス点でしたけど^^;

 ホースバーは問題児キャラなのか単にまだミスが多いのが勝手に問題児扱いされちゃったのかなかなか微妙ですけど、次代を担う選手としては小さくならずに走ってもらって「お前がいっつも俺の前でトロトロ走ってるからいけねえんだろ。」ぐらいの選手になってくれると面白いですね。